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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】作業機械および作業機械を含むシステム
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20220620BHJP
   G01G 19/08 20060101ALI20220620BHJP
   G01G 19/52 20060101ALI20220620BHJP
   G01L 13/00 20060101ALI20220620BHJP
   G01G 19/44 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
E02F9/26 B
G01G19/08 A
G01G19/52 E
G01G19/52 Z
G01L13/00 C
G01G19/44 H
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2018124696
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2020002698
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-05-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大門 正樹
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-336390(JP,A)
【文献】国際公開第2006/098218(WO,A1)
【文献】特開2001-099701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
G01G 19/08
G01G 19/52
G01L 13/00
G01G 19/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バケットと、前記バケットを昇降するブームと、前記バケットおよび前記ブームの少なくとも一方を駆動する作業具シリンダとを有する作業機と、
掘削を含む作業状態の局面に関する情報を検知する作業局面検知部と、
前記作業具シリンダのシリンダ圧力を検知するシリンダ圧力検知部と、
前記作業局面検知部により検知された前記情報に基づいて前記作業機による作業局面を判別し、作業局面における掘削の判別が切り換わるときに、前記シリンダ圧力検知部により検知された前記シリンダ圧力の補正の切り換えを行なうコントローラと、を備えた、作業機械。
【請求項2】
前記コントローラは、作業局面が掘削であると判別した場合に前記シリンダ圧力を補正して前記作業具シリンダの補正後圧力を算出し、前記補正後圧力に基づいて前記バケット内の瞬時荷重を算出する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
車体と、
前記車体に取り付けられた走行装置と、をさらに備えた、請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記作業局面は、掘削後の積荷後進を含み、
前記コントローラは、作業局面が掘削から積荷後進に切り換わるときに前記シリンダ圧力の補正の切り換えを行なう、請求項3に記載の作業機械。
【請求項5】
前記コントローラは、
作業局面が掘削であると判別した場合に前記シリンダ圧力が参考値となるように前記シリンダ圧力を補正して前記補正後圧力に基づいて前記瞬時荷重を算出し、
作業局面が掘削後の積荷後進であると判別した場合に前記シリンダ圧力に基づいて前記瞬時荷重を算出する、請求項4に記載の作業機械。
【請求項6】
前記コントローラは、作業局面が掘削であると判別している間の全体に亘って、前記シリンダ圧力が参考値となるように前記シリンダ圧力を補正する、請求項5に記載の作業機械。
【請求項7】
前記走行装置の牽引力の算出に用いられる情報を検知する牽引力検知部をさらに備え、
前記コントローラは、作業局面が掘削であると判別した場合に、前記牽引力検知部により検知された前記牽引力の算出に用いられる情報に基づいて前記シリンダ圧力に含まれる牽引圧力を算出し、前記牽引圧力を前記シリンダ圧力から減じることによって前記シリンダ圧力を補正して前記補正後圧力を算出する、請求項4に記載の作業機械。
【請求項8】
車体と、
前記車体に取り付けられた走行装置と、
バケットと、前記バケットを昇降するブームと、前記バケットおよび前記ブームの少なくとも一方を駆動する作業具シリンダとを有する作業機と、
前記走行装置の牽引力の算出に用いられる情報を検知する牽引力検知部と、
前記作業具シリンダのシリンダ圧力を検知するシリンダ圧力検知部と、
前記牽引力検知部により検知された前記牽引力の算出に用いられる情報と前記シリンダ圧力とに基づいて前記バケット内の瞬時荷重を算出するコントローラと、を備え
前記コントローラは、前記牽引力検知部により検知された前記牽引力の算出に用いられる情報に基づいて前記シリンダ圧力に含まれる牽引圧力を算出し、前記牽引圧力を前記シリンダ圧力から減じることによって前記シリンダ圧力を補正して前記作業具シリンダの補正後圧力を算出し、前記補正後圧力に基づいて前記バケット内の瞬時荷重を算出する、作業機械。
【請求項9】
掘削を含む作業状態の局面に関する情報を検知する作業局面検知部をさらに備えた、請求項8に記載の作業機械。
【請求項10】
前記コントローラにより算出された前記瞬時荷重を報知する報知部をさらに備えた、請求項4または8に記載の作業機械。
【請求項11】
前記報知部は、表示部を含み、
前記コントローラは、作業局面として掘削後の積荷後進が開始されたと判別した場合に、前記シリンダ圧力に基づいて算出された前記瞬時荷重を現在の荷重値として前記表示部にリアルタイムで表示する、請求項10に記載の作業機械。
【請求項12】
前記コントローラは、作業局面が積荷後進から積荷前進へ切り換えられた時点において算出された前記瞬時荷重を積載重量として、積荷後進から積荷前進への切り換えを検知した時点から積込みを検知するまで前記表示部に表示し続ける、請求項11に記載の作業機械。
【請求項13】
前記表示部は、
作業局面が掘削と判別された場合に、前記バケット内の目標積載重量を表示し、
作業局面が掘削後の積荷後進と判別された場合に、前記バケット内の前記瞬時荷重を表示し、
作業局面が積荷後進から積荷前進に切り換えられた時点において算出された前記瞬時荷重を積載重量として、積荷後進から積荷前進への切り換えを検知した時点から積込みを検知するまで表示し続け、
作業局面が積込みであると判別された場合に、被積込み対象に積込まれた前記積載重量の積算値と、被積込み対象物における積込み可能容量から前記積載重量の積算値を減じた差分とを表示する、請求項12に記載の作業機械。
【請求項14】
前記コントローラは、前記シリンダ圧力検知部により検知された前記シリンダ圧力に平滑化処理を実施した後に前記シリンダ圧力の補正を行なう、請求項1または8に記載の作業機械。
【請求項15】
バケットと、前記バケットを昇降するブームと、前記バケットおよび前記ブームの少なくとも一方を駆動する作業具シリンダとを有する作業機と、
掘削を含む作業状態の局面に関する情報を検知する作業局面検知部と、
前記作業具シリンダのシリンダ圧力を検知するシリンダ圧力検知部と、
前記バケット内の荷重を表示する表示部と、
前記作業局面検知部により検知された前記情報に基づいて前記作業機による作業局面を判別し、作業局面における掘削の判別が切り換わる前には、前記表示部に参考値を表示し、作業局面における掘削の判別が切り換わった後には、前記シリンダ圧力に基づいて算出された荷重を表示するコントローラと、を備えた、作業機械。
【請求項16】
前記参考値は、所定値または無効値である、請求項15に記載の作業機械。
【請求項17】
作業機械を含むシステムであって、
バケットと、前記バケットを昇降するブームと、前記バケットおよび前記ブームの少なくとも一方を駆動する作業具シリンダとを有する作業機と、
掘削を含む作業状態の局面に関する情報を検知する作業局面検知部と、
前記作業具シリンダのシリンダ圧力を検知するシリンダ圧力検知部と、
前記作業局面検知部により検知された前記情報に基づいて前記作業機による作業局面を判別し、作業局面における掘削の判別が切り換わるときに前記シリンダ圧力の補正の切り換えを行なうコントローラと、を備えた、システム。
【請求項18】
作業機械を含むシステムであって、
車体と、
前記車体に取り付けられた走行装置と、
バケットと、前記バケットを昇降するブームと、前記バケットおよび前記ブームの少なくとも一方を駆動する作業具シリンダとを有する作業機と、
前記走行装置の牽引力の算出に用いられる情報を検知する牽引力検知部と、
前記作業具シリンダのシリンダ圧力を検知するシリンダ圧力検知部と、
前記牽引力検知部により検知された前記牽引力の算出に用いられる情報に基づいて前記シリンダ圧力に含まれる牽引圧力を算出し、前記牽引圧力を前記シリンダ圧力から減じることによって前記シリンダ圧力を補正して前記作業具シリンダの補正後圧力を算出し、前記補正後圧力に基づいて前記バケット内の瞬時荷重を算出するコントローラと、を備えた、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械および作業機械を含むシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホイールローダの生産性管理および燃費管理を行うため、生産量は重要である。また当該生産量を知るうえで、積載重量は重要である。ホイールローダにおいて積載重量を計測する技術は、たとえば特開2001-99701号公報(特許文献1)に開示されている。
【0003】
上記公報においては、掘削後のブーム上げ操作によりバケット内の積載重量が計測される。またブームの上昇開始時からブーム停止時点までの積載重量が所定回数求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-99701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダンプトラックへ複数回に分けて掘削積込みを行なう場合、ダンプトラックに積込む重量が超過することを避ける必要がある。このためダンプトラックに最後の積込みを行なうときには、掘削後に、バケット内の積載重量を、ダンプトラックの積込み容量とダンプトラックにおける現在の積込み重量との差分よりも小さい重量に調整する必要がある。
【0006】
上記公報に記載の積載重量を計測する手法では、バケット内の荷がダンプトラックの積込み容量を超えていることが検知された時点で、ホイールローダは掘削場から離れた位置までに走行している。このためバケット内の荷の一部を掘削場に戻って捨てて、再度計測してダンプトラックに積込もうとすると作業時間が増大する。
【0007】
またバケット内の荷がダンプトラックの積込み容量を超えていることが検知された場合、ダンプトラックの積込み容量を超えないように上記差分に合わせて、バケット内の荷の一部を残しながらダンプトラックに荷を積込むことは熟練のオペレータにとっても困難である。
【0008】
また上記公報に記載のように掘削後のブーム上げ操作により積載重量の計測を行なうと、走行距離が長い場合、ブームを上げ続けた状態では姿勢が不安定となるためブームを一度下げる必要がある。このためオペレータの操作が煩雑となる。
【0009】
本開示の目的は、短い作業時間および簡易な操作で積載重量を計測できる作業機械および作業機械を含むシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一の作業機械は、作業機と、作業局面検知部と、シリンダ圧力検知部と、コントローラとを備えている。作業機は、バケットと、バケットを昇降するブームと、バケットおよびブームの少なくとも一方を駆動する作業具シリンダとを有する。作業局面検知部は、掘削を含む作業状態の局面に関する情報を検知する。シリンダ圧力検知部は、作業具シリンダのシリンダ圧力を検知する。コントローラは、作業局面検知部により検知された情報に基づいて作業機による作業局面を判別し、作業局面における掘削の判別が切り換わるときに、シリンダ圧力検知部により検知されたシリンダ圧力の補正の切り換えを行なう。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、短い作業時間および簡易な操作で積載重量を計測できる作業機械および作業機械を含むシステムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係る作業機械の一例としてのホイールローダの側面図である。
図2】ホイールローダの概略ブロック図である。
図3】第1処理装置内の機能ブロックを示す図である。
図4】瞬時荷重ごとのブーム角と差圧との関係を示す図である。
図5】あるブーム角における差圧と積載重量との関係を示す図である。
図6】ホイールローダによる掘削作業、積込作業などの一連の工程を示す模式図である。
図7】ホイールローダの掘削作業、積込作業などの一連の工程の判定方法を示すテーブルである。
図8】実施の形態に係る作業機械の制御方法を示す第1のフロー図である。
図9】実施の形態に係る作業機械の制御方法を示す第2のフロー図である。
図10】ホイールローダの掘削作業、積込作業などの一連の工程におけるブーム角度、ブームシリンダ差圧、瞬時荷重および積載重量の変化の第1例を示す図である。
図11】ホイールローダの掘削作業、積込作業などの一連の工程におけるブーム角度、ブームシリンダ差圧、瞬時荷重および積載重量の変化の第2例を示す図である。
図12】表示部における表示内容の変化を示す図(A)~(D)である。
図13】ホイールローダの掘削作業、積込作業などの一連の工程におけるブーム角度、ブームシリンダ差圧、瞬時荷重および積載重量の変化例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一部品には、同一の符号を付している。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0014】
<全体構成>
実施の形態においては、作業機械の一例としてホイールローダ1について説明する。図1は、実施の形態に係る作業機械の一例としてのホイールローダ1の側面図である。
【0015】
図1に示すように、ホイールローダ1は、車体フレーム2と、作業機3と、走行装置4と、キャブ5とを備えている。車体フレーム2、キャブ5などからホイールローダ1の車体が構成されている。ホイールローダ1の車体には、作業機3および走行装置4が取り付けられている。
【0016】
走行装置4は、ホイールローダ1の車体を走行させるものであり、走行輪4a、4bを含んでいる。ホイールローダ1は、走行輪4a、4bが回転駆動されることにより自走可能であり、作業機3を用いて所望の作業を行うことができる。
【0017】
車体フレーム2は、前フレーム11と後フレーム12とを含んでいる。前フレーム11と後フレーム12とは、互いに左右方向に揺動可能に取り付けられている。前フレーム11と後フレーム12とには、ステアリングシリンダ13が取り付けられている。ステアリングシリンダ13は、油圧シリンダである。ステアリングシリンダ13がステアリングポンプ(図示せず)からの作動油によって伸縮することによって、ホイールローダ1の進行方向が左右に変更される。
【0018】
本明細書中において、ホイールローダ1が直進走行する方向を、ホイールローダ1の前後方向という。ホイールローダ1の前後方向において、車体フレーム2に対して作業機3が配置されている側を前方向とし、前方向と反対側を後方向とする。ホイールローダ1の左右方向とは、平面視において前後方向と直交する方向である。前方向を見て左右方向の右側、左側が、それぞれ右方向、左方向である。ホイールローダ1の上下方向とは、前後方向および左右方向によって定められる平面に直交する方向である。上下方向において地面のある側が下側、空のある側が上側である。
【0019】
前フレーム11には、作業機3および走行輪(前輪)4aが取り付けられている。作業機3は、作業具であるブーム14と、バケット6とを含んでいる。ブーム14の基端部は、ブームピン10によって前フレーム11に回転自在に取付けられている。バケット6は、ブーム14の先端に位置するバケットピン17によって、回転自在にブーム14に取付けられている。前フレーム11とブーム14とは、ブームシリンダ16により連結されている。ブームシリンダ16は、油圧シリンダであり作業具シリンダである。ブームシリンダ16が作業機ポンプ25(図2参照)からの作動油によって伸縮することによって、ブーム14が昇降する。ブームシリンダ16は、ブーム14を駆動する。
【0020】
作業機3は、ベルクランク18と、チルトシリンダ19と、チルトロッド15とをさらに含んでいる。ベルクランク18は、ブーム14のほぼ中央に位置する支持ピン18aによって、ブーム14に回転自在に支持されている。チルトシリンダ19は、ベルクランク18の基端部と前フレーム11とを連結している。チルトロッド15は、ベルクランク18の先端部とバケット6とを連結している。チルトシリンダ19は、油圧シリンダであり作業具シリンダである。チルトシリンダ19が作業機ポンプ25(図2参照)からの作動油によって伸縮することによって、バケット6が上下に回動する。チルトシリンダ19は、バケット6を駆動する。
【0021】
後フレーム12には、キャブ5および走行輪(後輪)4bが取り付けられている。キャブ5は、ブーム14の後方に配置されている。キャブ5は、車体フレーム2上に載置されている。キャブ5内には、オペレータが着座するシートおよび操作装置などが配置されている。
【0022】
図2は、ホイールローダ1の構成を示す概略ブロック図である。ホイールローダ1は、エンジン20、動力取り出し部22、動力伝達機構23、シリンダ駆動部24、第1角度検出器29、第2角度検出器48、および第1処理装置30(コントローラ)を有している。
【0023】
エンジン20は、たとえばディーゼルエンジンである。エンジン20に代えて、蓄電体により駆動するモータが用いられてもよく、またエンジンとモータとの双方が用いられてもよい。エンジン20の出力は、エンジン20のシリンダ内に噴射する燃料量を調整することにより制御される。回転センサ32は、エンジン20内部の回転軸の回転数を検出し、検出した回転数の信号を第1処理装置30へ出力する。
【0024】
動力取り出し部22は、エンジン20の出力を、動力伝達機構23とシリンダ駆動部24とに振り分ける装置である。
【0025】
動力伝達機構23は、エンジン20からの駆動力を前輪4aおよび後輪4bに伝達する機構であり、たとえばトランスミッションである。動力伝達機構23は、入力軸21の回転を変速して出力軸23aに出力する。
【0026】
動力伝達機構23の出力軸23aには、ホイールローダ1の車速を検出するための車速検出部27が取り付けられている。ホイールローダ1は、車速検出部27を含んでいる。車速検出部27はたとえば車速センサである。車速検出部27は、出力軸23aの回転速度を検出することにより、走行装置4によるホイールローダ1の移動速度を検出する。車速検出部27は、出力軸23aの回転速度を検出するための回転センサとして機能する。車速検出部27は、走行装置4による移動を検出する移動検出器として機能する。車速検出部27は、ホイールローダ1の車速を示す検出信号を第1処理装置30に出力する。
【0027】
シリンダ駆動部24は、作業機ポンプ25および制御弁26を有している。エンジン20の出力は、動力取り出し部22を介して、作業機ポンプ25に伝達される。作業機ポンプ25から吐出された作動油は、制御弁26を介して、ブームシリンダ16およびチルトシリンダ19に供給される。
【0028】
センサ33は、作業機ポンプ25の斜板の角度を検出し、検出した斜板角度の信号を第1処理装置30に出力する。また圧力センサ34は、作業機ポンプ25の吐出圧力を検出し、検出した吐出圧力の信号を第1処理装置30に出力する。
【0029】
ブームシリンダ16には、ブームシリンダ16の油室内の油圧を検出するための第1油圧検出器28a、28bが取り付けられている。ホイールローダ1は、第1油圧検出器28a、28bを含んでいる。第1油圧検出器28a、28bは、たとえばヘッド圧検出用の圧力センサ28aと、ボトム圧検出用の圧力センサ28bとを有している。
【0030】
圧力センサ28aは、ブームシリンダ16のヘッド側に取り付けられている。圧力センサ28aは、ブームシリンダ16のシリンダヘッド側油室内の作動油の圧力(ヘッド圧)を検出することができる。圧力センサ28aは、ブームシリンダ16のヘッド圧を示す検出信号を第1処理装置30に出力する。
【0031】
圧力センサ28bは、ブームシリンダ16のボトム側に取り付けられている。圧力センサ28bは、ブームシリンダ16のシリンダボトム側油室内の作動油の圧力(ボトム圧)を検出することができる。圧力センサ28bは、ブームシリンダ16のボトム圧を示す検出信号を第1処理装置30に出力する。
【0032】
第1角度検出器29は、たとえば、ブームピン10に取り付けられたポテンショメータである。第1角度検出器29は、ブーム14の持ち上がり角度(チルト角度)を表すブーム角度を検出する。第1角度検出器29は、ブーム角度を示す検出信号を第1処理装置30に出力する。
【0033】
具体的には、図1に示すように、ブーム角度θは、ブームピン10の中心から前方に延びる水平線LHに対する、ブームピン10の中心からバケットピン17の中心に向かう方向に延びる直線LBの角度である。直線LBが水平である場合をブーム角度θ=0°と定義する。直線LBが水平線LHよりも上方にある場合にブーム角度θを正とする。直線LBが水平線LHよりも下方にある場合にブーム角度θを負とする。
【0034】
なお第1角度検出器29は、ブームシリンダ16に配置されたストロークセンサであってもよい。
【0035】
第2角度検出器48は、たとえば、支持ピン18aに取り付けられたポテンショメータである。第2角度検出器48は、ブーム14に対するベルクランク18の角度(ベルクランク角度)を検出することにより、ブーム14に対するバケット6のチルト角度を表すバケット角度を検出する。第2角度検出器48は、バケット角度を示す検出信号を第1処理装置30に出力する。バケット角度はたとえば、バケットピン17の中心とバケット6の刃先6aとを結ぶ直線と、直線LBとの成す角度である。
【0036】
なお第2角度検出器48は、チルトシリンダ19に配置されたストロークセンサであってもよい。
【0037】
図2に示されるように、ホイールローダ1は、キャブ5内に、オペレータによって操作される操作装置を備えている。操作装置は、前後進切換装置49、アクセル操作装置51、ブーム操作装置52、変速操作装置53、バケット操作装置54、およびブレーキ操作装置58を含んでいる。
【0038】
前後進切換装置49は、前後進切換操作部材49aと、前後進切換検出センサ49bとを含んでいる。前後進切換操作部材49aは、車両の前進および後進の切り換えを指示するためにオペレータによって操作される。前後進切換操作部材49aは、前進(F)、中立(N)、および後進(R)の各位置に切り換えられることができる。前後進切換検出センサ49bは、前後進切換操作部材49aの位置を検出する。前後進切換検出センサ49bは、前後進切換操作部材49aの位置によって表される前後進指令の検出信号(前進、中立、後進)を第1処理装置30に出力する。前後進切換装置49は、前進(F)、中立(N)および後進(R)を切り換え可能な前後進切換レバーを含む。
【0039】
アクセル操作装置51は、アクセル操作部材51aと、アクセル操作検出部51bとを含んでいる。アクセル操作部材51aは、エンジン20の回転、トルクなどの出力のいずれかを設定するためにオペレータによって操作される。アクセル操作検出部51bは、アクセル操作部材51aの操作量(アクセル操作量)を検出する。アクセル操作検出部51bは、アクセル操作量を示す検出信号を第1処理装置30に出力する。
【0040】
ブレーキ操作装置58は、ブレーキ操作部材58aと、ブレーキ操作検出部58bとを含んでいる。ブレーキ操作部材58aは、ホイールローダ1の減速力を操作するために、オペレータによって操作される。ブレーキ操作検出部58bは、ブレーキ操作部材58aの操作量(ブレーキ操作量)を検出する。ブレーキ操作検出部58bは、ブレーキ操作量を示す検出信号を第1処理装置30に出力する。ブレーキ操作量としてブレーキオイルの圧力が用いられてもよい。
【0041】
ブーム操作装置52は、ブーム操作部材52aと、ブーム操作検出部52bとを含んでいる。ブーム操作部材52aは、ブーム14を上げ動作または下げ動作させるためにオペレータによって操作される。ブーム操作検出部52bは、ブーム操作部材52aの位置を検出する。ブーム操作検出部52bは、ブーム操作部材52aの位置によって表されるブーム14の上げ指令または下げ指令の検出信号を、第1処理装置30に出力する。
【0042】
変速操作装置53は、変速操作部材53aと、変速操作検出部53bとを含んでいる。変速操作部材53aは、動力伝達機構23における入力軸21から出力軸23aへの変速を制御するためにオペレータによって操作される。変速操作検出部53bは、変速操作部材53aの位置を検出する。変速操作検出部53bは、変速操作部材53aの位置によって表される変速の検出指令を、第1処理装置30に出力する。
【0043】
バケット操作装置54は、バケット操作部材54aと、バケット操作検出部54bとを含んでいる。バケット操作部材54aは、バケット6を掘削動作またはダンプ動作させるためにオペレータによって操作される。バケット操作検出部54bは、バケット操作部材54aの位置を検出する。バケット操作検出部54bは、バケット操作部材54aの位置によって表されるバケット6のチルトバック方向またはダンプ方向への動作指令の検出信号を、第1処理装置30に出力する。
【0044】
第1処理装置30は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などの記憶装置と、CPU(Central Processing Unit)などの演算装置を含むマイクロコンピュータで構成されている。第1処理装置30は、エンジン20、作業機3(ブームシリンダ16、チルトシリンダ19など)、動力伝達機構23、表示部40などの動作を制御する、ホイールローダ1のコントローラの機能の一部として実現されてもよい。
【0045】
ホイールローダ1は、表示部40および出力部45をさらに有している。表示部40は、キャブ5に配置された、オペレータが視認するモニタである。表示部40は、第1処理装置30によって計測された運搬作業情報を表示する。
【0046】
出力部45は、ホイールローダ1の外部に設置されたサーバ(第2処理装置70(コントローラ))に、運搬作業情報を出力する。出力部45は、たとえば、無線通信などの通信機能を有し、第2処理装置70の入力部71と通信してもよい。または、出力部45は、たとえば、第2処理装置70の入力部71がアクセス可能な携帯記憶装置(メモリカードなど)のインタフェースであってもよい。第2処理装置70は、モニタ機能にあたる表示部75を有しており、出力部45から出力された運搬作業情報を表示することができる。第2処理装置70は、第1処理装置30と同様、たとえばRAM、ROMなどの記憶装置と、CPUなどの演算装置を含むマイクロコンピュータで構成されている。
【0047】
第1角度検出器29、第2角度検出器48、第1油圧検出器28a、28b、前後進切換検出センサ49b、ブーム操作検出部52bおよびバケット操作検出部54bは、作業局面検知部に含まれる。作業局面検知部は、作業機3の作業状態の局面に関する情報(作業局面に関する情報を検知するものである。
【0048】
作業局面は、たとえば空荷前進、掘削、積荷後進、積荷前進、排土、後進・ブーム下げ、単純走行を含む。
【0049】
また作業機3の作業状態の局面に関する情報とは、前後進切換操作部材49aの位置によって表される前後進指令の検出信号(前進、中立、後進)、ブーム14の動作指令の検出信号(上げ、中立、下げ)、バケット6の動作指令の検出信号(ダンプ、中立、チルトバック)、およびブームシリンダ16の圧力検出信号(ヘッド圧とボトム圧との差圧)に関する情報を含む。
【0050】
作業局面と、作業機3の作業状態の局面に関する情報とについては、図7を用いて後に詳細に説明する。
【0051】
回転センサ32、センサ33、圧力センサ34、アクセル操作検出部51bなどは、牽引力検知部に含まれる。牽引力検知部は、走行装置4の牽引力の算出に用いられる情報(牽引力に関する情報を検知する。
【0052】
<第1処理装置30内の機能ブロック>
図2に示される第1処理装置30は、上記作業局面検知部により検知された情報に基づいて作業機3による作業局面を判別する機能を有する。第1処理装置30は、作業局面における掘削の判別が切り換わるときにブーム圧力(圧力センサ28aにより検出されたヘッド圧と圧力センサ28bにより検出されたボトム圧との差圧であって平滑化処理が実施された後の出力値)の補正の切り換えを行なう機能を有する。
【0053】
また第1処理装置30は、作業局面が掘削であると判別した場合にブーム圧力を補正してブームシリンダの補正後圧力を算出する機能を有する。第1処理装置30は、上記補正後圧力に基づいてバケット6内の積載重量を算出する機能を有する。
【0054】
また第1処理装置30は、牽引力検知部32~34、51bにより検知された牽引力に関する情報に基づいてブーム圧力に含まれる牽引圧力を算出する機能を有する。第1処理装置30は、上記牽引圧力をブーム圧力から減じることによってブーム圧力を補正してブームシリンダの補正後圧力を算出する機能を有する。第1処理装置30は、上記補正後圧力に基づいてバケット6内の瞬時荷重を算出する機能を有する。
【0055】
以下、上記機能を有する第1処理装置30の機能ブロックについて説明する。
図3は、第1処理装置内の機能ブロックを示す図である。図3に示されるように、第1処理装置30は、たとえば作業局面判別部30aと、ブーム圧力補正部30bと、積載重量算出部30cと、牽引圧力算出部30dと、積載重量出力部30eと、積載重量積算部30fと、積算値出力部30gと、ブーム角検知部30hと、差圧検知部30iと、記憶部30jとを主に有している。
【0056】
作業局面判別部30aは、作業機3の作業局面を判別する。作業局面判別部30aは、作業局面検知部により検知された作業機3の作業状態の局面に関する情報を取得する。一例として作業局面判別部30aは、前後進切換装置49から出力された前後進指令の検出信号と、ブーム操作装置52から出力されたブーム14の動作指令の検出信号と、バケット操作装置54から出力されたバケット6の動作指令の検出信号と、圧力センサ28bから出力されたブームシリンダ16の圧力検出信号とを取得する。
【0057】
作業局面判別部30aは、取得した作業状態の局面に関する情報に基づいて、図7に示されるテーブルを参照して作業局面を判別する。この作業局面の判別については、図7を用いて後に詳細に説明する。
【0058】
作業局面判別部30aは、判別した作業局面を表す信号をブーム圧力補正部30bへ出力する。
【0059】
一方、差圧検知部30iは、圧力センサ28aから出力されたブームシリンダ16のヘッド圧を示す検出信号と、圧力センサ28bから出力されたブームシリンダ16のボトム圧を示す検出信号とに基づいて、ブームシリンダ16のヘッド圧とボトム圧との差圧を算出する。また差圧検知部30iは、算出された差圧に平滑化処理を実施する。平滑化処理とは、過去検出値を含め積算平均する手法であり、ローパスフィルタなどでも可能である。差圧検知部30iは、その平滑化処理された差圧の信号(ブーム圧力の信号)をブーム圧力補正部30bへ出力する。
【0060】
牽引圧力算出部30dは、回転センサ32で検出されるエンジン20内部の回転軸の回転数、センサ33で検出される作業機ポンプ25の斜板の角度、圧力センサ34で検出される作業機ポンプ25の吐出圧力、アクセル操作検出部51bにより検出されるアクセル操作部材51aにおける操作量などに基づいて牽引圧力を算出する。牽引圧力算出部30dは、算出した牽引圧力の信号をブーム圧力補正部30bへ出力する。
【0061】
ブーム圧力補正部30bは、作業局面判別部30aから出力された作業局面を表す信号と、差圧検知部30iから出力されたブーム圧力の信号と、牽引圧力算出部30dから出力された牽引圧力の信号とを取得する。ブーム圧力補正部30bは、作業局面判別部30aにより判別された作業局面が掘削である場合には、ブーム圧力を補正してブームシリンダ16の補正後圧力を算出する。
【0062】
ブーム圧力の補正は、図10および図11を用いて後に詳細に説明する。
ブーム圧力補正部30bによって算出された上記補正後圧力の信号は、積載重量算出部30cに出力される。
【0063】
積載重量算出部30cは、ブーム角検知部30hから出力されたブーム角度信号と、ブーム圧力補正部30bによって算出された上記補正後圧力の信号とに基づいてバケット6内の積載重量(または瞬時荷重)を算出する。
【0064】
ブーム角検知部30hは、第1角度検出器29から出力されたブーム角度を示す検出信号を受けてブーム角度を算出し、その算出したブーム角度の信号を積載重量算出部30cへ出力する。
【0065】
積載重量算出部30cにおける積載重量(または瞬時荷重)の算出方法は、図4および図5を用いて後に詳細に説明する。積載重量算出部30cにて算出されたバケット6内の積載重量(または瞬時荷重)の信号は、積載重量出力部30eへ出力される。
【0066】
積載重量出力部30eは、積載重量算出部30cで算出された積載重量(または瞬時荷重)の信号を積載重量積算部30f、記憶部30jおよび表示部40に出力する。記憶部30jは、積載重量出力部30eから出力された積載重量を記憶する。表示部40は、積載重量または瞬時荷重を画面などに表示する。また積載重量出力部30eは、積載重量(または瞬時荷重)の信号を出力部45(図2)に出力してもよい。出力部45に出力された積載重量(または瞬時荷重)の信号は、第2処理装置70に出力され、第2処理装置70の表示部75に表示されてもよい。上記のように表示部40、75の各々は、バケット内の荷重を表示する。
【0067】
積載重量積算部30fは、積載重量出力部30eからの積載重量信号を受けて、記憶部30jに記憶されたこれまでの積載重量に今回の積載重量を積算する。積載重量積算部30fは、積算した積載重量の積算値の信号を積算値出力部30gに出力する。
【0068】
積算値出力部30gは、積載重量積算部30fからの積算値信号を受けて、積載重量積算部30fで積算された積算値信号を記憶部30jおよび表示部40に出力する。記憶部30jは、積算値出力部30gから出力された積載重量の積算値を記憶する。表示部40は、積載重量の積算値を画面などに表示する。また積算値出力部30gは、積算値信号を出力部45(図2)に出力してもよい。出力部45に出力された積算値信号は、第2処理装置70に出力され、第2処理装置70の表示部75にて表示されてもよい。
【0069】
<瞬時荷重の算出方法>
次に、瞬時荷重の算出方法について、まず概略を説明する。
【0070】
図4に、瞬時荷重ごとのブーム角θと差圧Pτとの関係の一例を示す。図4において、カーブA、B、Cはそれぞれ、バケット6が空、1/2積載、満杯積載の場合を示している。予め計測された2個以上の瞬時荷重におけるブーム角θと差圧Pτとの関係のグラフに基づき、図5に示すようにブーム角θごとの瞬時荷重と差圧Pτとの関係のグラフを求めることができる。従って、ブーム角θと差圧Pτとが判明すると、各差圧サンプリング時における瞬時荷重を求めることができる。
【0071】
たとえば、図4に示されるように、ある時刻mkにおいてブーム角θ=θk、差圧Pτ=Pτkであったとすると、図5から瞬時荷重WNを求めることが可能となる。すなわち、図5は、ブーム角θ=θkにおける、差圧と瞬時荷重Wとの関係を示すグラフである。ここで、PτAとは、ブーム角θ=θkにおける、バケット6が空の場合の差圧である。WAとは、ブーム角θ=θkにおける、空荷の瞬時荷重である。また、PτCとは、ブーム角θ=θkにおける、バケット6が満杯積載の場合の差圧である。WCとは、ブーム角θ=θkにおける、満杯積載の瞬時荷重である。PτkがPτAとPτCとの間に位置する場合、線形補間を行うことにより、瞬時荷重WNを決定する。あるいは、このような関係を予め記憶した数値テーブルに基づいて、瞬時荷重WNを求めることも可能である。
【0072】
<掘削積込動作とその判定>
本実施の形態のホイールローダ1は、土砂などの掘削対象物をバケット6に掬い取る掘削動作と、バケット6内の荷(掘削対象物100)をダンプトラック200の荷台(被積込み対象)などの運搬機械に積み込む積込動作とを実行する。図6は、実施の形態に基づくホイールローダ1の掘削動作および積込動作を構成する一連の工程の例を示す模式図である。ホイールローダ1は、次のような複数の工程を順次に行うことを繰り返して、掘削対象物100を掘削し、ダンプトラック200などの運搬機械に掘削対象物100を積み込んでいる。
【0073】
図6(A)に示されるように、ホイールローダ1は、掘削対象物100に向かって前進する。この空荷前進工程において、オペレータは、ブームシリンダ16およびチルトシリンダ19を操作して、作業機3をブーム14の先端が低い位置にありバケット6が水平を向いた掘削姿勢にして、ホイールローダ1を掘削対象物100に向けて前進させる。
【0074】
図6(B)に示されるように、バケット6の刃先6aが掘削対象物100に食い込むまで、オペレータはホイールローダ1を前進させる。この掘削(突込み)工程において、バケット6の刃先6aが掘削対象物100に食い込む。
【0075】
図6(C)に示されるように、その後オペレータは、ブームシリンダ16を操作してバケット6を上昇させるとともに、チルトシリンダ19を操作してバケット6をチルトバックさせる。この掘削(掬込み)工程により、図中の曲線矢印のようにバケット軌跡Lに沿ってバケット6が上昇し、バケット6内に掘削対象物100が掬い込まれる。これにより、掘削対象物100を掬い取る掘削作業が実行される。
【0076】
掘削対象物100の種類によって、バケット6を1回チルトバックさせるだけで掬込み工程が完了する場合がある。または、掬込み工程において、バケット6をチルトバックさせ、中立にし、再びチルトバックさせるという動作を繰り返す場合もある。
【0077】
図6(D)に示されるように、バケット6に掘削対象物100が掬い込まれた後、オペレータは、積荷後進工程にて、ホイールローダ1を後進させる。オペレータは、後退しながらブーム上げをしてもよく、図6(E)にて前進しながらブーム上げをしてもよい。
【0078】
図6(E)に示されるように、オペレータは、バケット6を上昇させた状態を維持しながら、またはバケット6を上昇させながら、ホイールローダ1を前進させてダンプトラック200に接近させる。この積荷前進工程により、バケット6はダンプトラック200の荷台のほぼ真上に位置する。
【0079】
図6(F)に示されるように、オペレータは、所定位置でバケット6をダンプして、バケット6内の荷(掘削対象物)をダンプトラック200の荷台上に積み込む。この工程は、いわゆる排土工程である。この後、オペレータは、ホイールローダ1を後進させながらブーム14を下げ、バケット6を掘削姿勢に戻す。
【0080】
以上が、掘削積込作業の1サイクルをなす典型的な工程である。
図7は、ホイールローダ1の掘削作業および積込作業を構成する一連の工程の判定方法を示すテーブルである。
【0081】
図7に示したテーブルにおいて、一番上の「作業工程」の行には、図6(A)~図6(F)に示した作業工程の名称が示されている。その下の「前後進切換レバー」、「作業機操作」および「作業機シリンダ圧力」の行には、現在の作業工程がどの工程であるかを判定するために第1処理装置30(図2図3)が使用する、各種の判断条件が示されている。
【0082】
より詳細には、「前後進切換レバー」の行には、前後進切換レバーについての判定条件が丸印で示されている。
【0083】
「作業機操作」の行には、作業機3に対するオペレータの操作についての判定条件が丸印で示されている。より詳細には、「ブーム」の行にはブーム14に対する操作に関する判定条件が示されており、「バケット」の行にはバケット6に対する操作に関する判定条件が示されている。
【0084】
「作業機シリンダ圧力」の行には、作業機3のシリンダの現在の油圧、たとえばブームシリンダ16のシリンダボトム室の油圧、についての判定条件が示されている。ここで、油圧に関して、4つの基準値A、B、C、Pが予め設定され、これら基準値A、B、C、Pにより複数の圧力範囲(基準値P未満の範囲、基準値AからCの範囲、基準値BからPの範囲、基準値C未満の範囲)が定義され、これらの圧力範囲が上記判断条件として設定されている。4つの基準値A、B、C、Pの大きさは、A>B>C>Pとなっている。
【0085】
以上のような作業工程ごとの「前後進切換レバー」、「ブーム」、「バケット」「作業機シリンダ圧力」の判定条件の組み合わせを用いることにより、第1処理装置30は、現在行われている工程がどの工程なのかが判別可能である。
【0086】
図7に示した制御を行う場合の第1処理装置30の具体的動作を以下に説明する。
図7に示した各作業工程に対応する「前後進切換レバー」、「ブーム」、「バケット」および「作業機シリンダ圧力」の判定条件の組み合わせが、記憶部30j(図2)に予め格納されている。第1処理装置30は、前後進切換装置49からの信号に基づいて、現在選択されている前後進切換レバー(F、N、R)を把握する。第1処理装置30は、ブーム操作検出部52bからの信号に基づいて、ブーム14に対する現在の操作の種類(下げ、中立または上げ)を把握する。第1処理装置30は、バケット操作検出部54bからの信号に基づいて、バケット6に対する現在の操作の種類(ダンプ、中立またはチルトバック)を把握する。さらに、第1処理装置30は、図2に示した圧力センサ28bからの信号に基づいて、ブームシリンダ16のシリンダボトム室の現在の油圧を把握する。
【0087】
第1処理装置30は、把握された現在の前後進切換レバー、ブーム操作種類、バケット操作種類およびリフトシリンダ油圧の組み合わせ(つまり現在の作業状態)を、予め記憶してある各作業工程に対応する「前後進切換レバー」、「ブーム」、「バケット」および「作業機シリンダ圧力」の判定条件の組み合わせと対照する。この対照する処理の結果として、第1処理装置30は、現在の作業状態に最も良く一致する判定条件の組み合わせがどの作業工程に対応するのかを判定する。
【0088】
ここで、図6に示す掘削積込動作に対応する判定条件の組み合わせは、具体的には次のとおりである。
【0089】
空荷前進工程においては、前後進切換レバーがFであり、ブーム操作とバケット操作とがともに中立であり、作業機シリンダ圧力が基準値P未満である。
【0090】
掘削(突込み)工程においては、前後進切換レバーがF、ブーム操作とバケット操作とが共に中立、作業機シリンダ圧力が基準値AからCの範囲である。前後進切換レバーの代替として作業具(バケット、ブーム)の操作がパラメータとされてもよい。
【0091】
掘削(掬込み)工程においては、前後進切換レバーがFまたはR、ブーム操作が上げまたは中立、バケット操作がチルトバック、作業機シリンダ圧力が基準値AからCの範囲である。バケット操作については、チルトバックと中立とが交互に繰り返される判定条件をさらに追加してもよい。掘削対象物の状態によっては、バケット6をチルトバックさせ、中立にし、再びチルトバックさせるという動作を繰り返す場合があるからである。
【0092】
積荷後進工程においては、前後進切換レバーがR、ブーム操作が中立または上げ、バケット操作が中立、作業機シリンダ圧力が基準値BからPの範囲である。前後進切換レバーに基づく判定以外に、実車速に基づく判定が行われてもよい。
【0093】
積荷前進工程においては、前後進切換レバーがF、ブーム操作が上げまたは中立、バケット操作が中立、作業機シリンダ圧力が基準値BからPの範囲である。
【0094】
排土工程においては、前後進切換レバーがF、ブーム操作が上げまたは中立、バケット操作がダンプ、作業機シリンダ圧力が基準値BからPの範囲である。
【0095】
後進・ブーム下げ工程においては、前後進切換レバーがR、ブーム操作が下げ、バケット操作がチルトバック、作業機シリンダ圧力が基準値P未満である。
【0096】
<積載重量の計測フロー>
本実施の形態のホイールローダ1は、上記の掘削積込動作において、バケット6内の積載重量を計測し、かつ積載重量の積算値を算出する。
【0097】
図8は、上記掘削積込動作における積載重量の計測方法を含む作業機械の制御方法を示す第1のフロー図である。
【0098】
図6図7に示されるように、ホイールローダ1は掘削積込動作において一連の動作を行なう。この掘削積込の一連の動作における現在の作業局面を知るために、作業局面に関する情報が取得される(ステップS1:図8)。
【0099】
この作業状態の局面に関する情報は、たとえば図3に示されるように、前後進切換装置49から出力された前後進指令の検出信号、ブーム操作装置52から出力されたブーム14の動作指令の検出信号、バケット操作装置54から出力されたバケット6の動作指令の検出信号、ブームシリンダ16の圧力検出信号などである。これらの作業状態の局面に関する情報は、作業局面判別部30aに入力される。
【0100】
作業局面判別部30aは、取得した作業状態の局面に関する情報に基づいて、図7に示されるテーブルを参照して作業局面を判別する(ステップS2:図8)。この作業局面の判別の結果、作業局面が掘削であると判断された場合、ブーム圧力(圧力センサ28aにより検出されたヘッド圧と圧力センサ28bにより検出されたボトム圧との差圧であって平滑化処理が実施された後の出力値)が補正される(ステップS3:図8)。
【0101】
ブーム圧力の補正として、たとえば以下の第1の補正および第2の補正のいずれかの補正が行われる。
【0102】
まず第1の補正においては、図10に示されるように、作業局面が掘削であると判別された場合、ブーム圧力が参考値となるようにブーム圧力が補正される。ここで参考値は、無効値と所定値とを含む。参考値とは、たとえば「0」の無効値である。ただし参考値は、「0」以外の所定値であってもよい。参考値は表示値に反映されてもよい。具体的には、作業局面における掘削の判別が切り換わる前には上記参考値が表示部40、75に表示されるように、コントローラ(第1処理装置30、第2処理装置70)が表示部40、75を制御してもよい。
【0103】
また第1の補正においては、作業局面が掘削から積荷後進へ切り換わった時点から積荷後進途中の所定のタイミングまでの間に、ブーム圧力に上記平滑化処理が実施されることによりブーム圧力が上記参考値から徐々に増加して計測値と同じとなるように補正される。
【0104】
また第1の補正においては、ブーム圧力が計測値と同じとなった後は、積込みが終わるまでブーム圧力は補正されない計測値とされる。計測値は表示値に反映されてもよい。具体的には、作業局面が掘削の判別が切り換わった後には上記計測値(シリンダ圧力に基づいて算出された荷重)が表示部40、75に表示されように、コントローラ(第1処理装置30、第2処理装置70)が表示部40、75を制御してもよい。
【0105】
次に第2の補正においては、図11に示されるように、牽引力に基づいて算出された牽引圧力がブーム圧力から減ぜられるようにブーム圧力が補正される。
【0106】
また第2の補正においては、牽引力が検出される間においてブーム圧力から牽引圧力が減ぜられる。このため作業局面が掘削から積荷後進へ切り換わった後も牽引力が検出される場合には、その牽引圧力がブーム圧力から減ぜられてもよい。
【0107】
また第2の補正においては、牽引力が検知されなくなった時点から積込みが終わるまでブーム圧力は補正されない計測値とされる。
【0108】
上記における牽引力は、以下のように算出される。
まずエンジンとトランスミッションの間にトルクコンバーターが用いられないダイレクトトランスミッション車における牽引力は以下の式(1)により算出される。
【0109】
牽引力[N]={(エンジン出力軸トルク[N・m]-ポンプ負荷トルク[N・m])×トランスミッション減速比×ディファレンシャル減速比×ファイナル減速比×トルク効率}/タイヤ有効径[m] ・・・(1)
またエンジンとトランスミッションの間にトルクコンバーターが用いられる車における牽引力は以下の式(2)により算出される。
【0110】
牽引力[N]={(エンジン回転数[rpm]/1000)2×tp[N・m/rpm2]×t×トランスミッション減速比×ディファレンシャル減速比×ファイナル減速比×トルク効率}/タイヤ有効径[m] ・・・(2)
また走行モータを複数備えるHST(Hydro-Static Transmission)車における牽引力は以下の式(3)により算出される。
【0111】
牽引力[kN]=β×F_max×R0/R ・・・(3)
上記式(3)におけるβは、以下の式(4)で表わされる。
【0112】
β={P×(Rm1×q1+Rm2×q2)}/{Pco×(Rm1×q1_max+Rm2×q2_max)} ・・・(4)
式(1)~(3)における括弧[]内には単位が示されている。また式(2)におけるtpはプライマルトルク係数であり、tはトルク比である。プライマルトルク係数tpおよびトルク比tのいずれもトランスミッションの特性値である。
【0113】
また式(3)におけるF_maxは最大牽引力(単位:kN)であり、R0はデフォルト負荷半径(単位:m)であり、Rはタイヤ負荷半径(単位:m)である。
【0114】
また式(4)におけるPはHST駆動差圧(単位:MPa)であり、Rm1は第1モータの減速比であり、q1は第1モータの容量(単位:cc/rev)であり、Rm2は第2モータの減速比であり、q2は第2モータの容量(単位:cc/rev)である。
【0115】
また式(4)におけるPcoはHSTカットオフ差圧(単位:MPa)であり、q1_maxは第1モータの最大容量(単位:cc/rev)であり、q2_maxは第2モータの最大容量(単位:cc/rev)である。
【0116】
式(1)におけるエンジン出力軸トルクは、図2に示されるエンジン20における噴射量とエンジン回転数との組合せにより取得される。エンジン20における噴射量は、アクセル操作検出部51bにより検出されるアクセル操作部材51aにおける操作量に基づいて算出される。エンジン回転数は、図2に示されるエンジン20の内部の回転軸の回転数を回転センサ32で検知することにより得られる。このようにして得られたエンジン回転数と噴射量とから、エンジン20におけるエンジン回転数と噴射量との組合せに関するテーブルを参照することにより、エンジン出力軸トルクが取得される。
【0117】
式(1)におけるポンプ負荷トルクは、図2に示される作業機ポンプ25のポンプ容量と吐出圧力とから算出される。作業機ポンプ25のポンプ容量は、図2に示されるセンサ33により作業機ポンプ25の斜板の角度が検出されることにより算出される。作業機ポンプ25の吐出圧力は、図2に示される圧力センサ34により検出される。
【0118】
式(2)におけるエンジン回転数は、図2に示されるエンジン20の内部の回転軸の回転数を回転センサ32で検知することにより得られる。
【0119】
式(1)、(2)におけるトランスミッション減速比、ディファレンシャル減速比、ファイナル減速比、トルク効率、tp、tの各々は定数である。
【0120】
上記第1の補正または第2の補正により算出された補正後圧力の信号は、図3に示されるようにブーム圧力補正部30bから積載重量算出部30cへ出力される。積載重量算出部30cは、ブーム角検知部30hから出力されたブーム角度信号と、ブーム圧力補正部30bによって算出された上記補正後圧力の信号とに基づいてバケット6内の積載重量として瞬時荷重を算出する(ステップS4:図8)。瞬時荷重は、上記において図4および図5を用いて説明したように算出される。
【0121】
なお作業局面が作業局面判別部30aにより掘削以外と判別された場合(ステップS2:図8)、図3に示されるようにブーム圧力補正部30bは、差圧検知部30iから出力されたブームシリンダ16のヘッド圧とボトム圧との差圧の信号(ブーム圧力の信号)を補正せずに積載重量算出部30cへ出力する。積載重量算出部30cは、上記ブーム圧力の信号と、ブーム角検知部30hから出力されたブーム角度信号とに基づいてバケット6内の瞬時荷重を算出する(ステップS4:図8)。
【0122】
上記のように第1の補正および第2の補正の双方において、作業局面が掘削から別の局面(たとえば積荷後進)に切り換わったと判別されたときに、ブーム圧力の補正の切り換えが行われる。第1の補正および第2の補正の双方において、作業局面が掘削からたとえば積荷後進に切り換わったと判別されると、ブーム圧力補正部30bはブーム圧力の信号を補正せずに積載重量算出部30cへ出力する。
【0123】
ただし第2の補正の場合、ブーム圧力補正部30bは、牽引力検知部32~34、51bにより牽引力が検知され、その牽引力に基づいて算出された牽引圧力がブーム圧力補正部30bに出力される間は、積荷後進であってもブーム圧力を補正して、補正後圧力を積載重量算出部30cへ出力してもよい。
【0124】
図3に示されるように積載重量算出部30cによって算出された瞬時荷重は、積載重量算出部30cから積載重量出力部30eへ出力される。積載重量出力部30eは、瞬時荷重を表示部40へ出力する。これにより表示部40には、瞬時荷重がリアルタイムで表示される(ステップS5:図8)。
【0125】
ホイールローダ1が積荷後進において所定の距離だけ後進した後に、オペレータは積荷後進から積荷前進の切換操作を行う。図3に示される作業局面判別部30aにより作業局面が積荷後進から積荷前進へ切り換えられたか否かが判別される(ステップS6:図8)。
【0126】
積荷後進から積荷前進への移行の検知は、たとえばオペレータが図2に示す前後進切換装置49の前後進切換操作部材49aを後進(R)の位置から前進(F)の位置へ操作したか否かにより行われる。積荷後進から積荷前進へ切り換えられた場合、図3に示される前後進切換装置49(前後進切換検出センサ49b)から前進を示す信号(前後進切換信号)が作業局面判別部30aへ出力される。このため作業局面判別部30aはこの前進信号に基づいて積荷後進から積荷前進へ切り換えられたことを検知することができる。
【0127】
また積荷後進から積荷前進への移行の検知は、たとえば図2に示す車速検出部27により検知されたホイールローダ1の移動速度の検知により行われてもよい。積荷後進から積荷前進へ切り換えられた場合、車速検出部27により検知されるホイールローダ1の移動速度は後進方向の速度から前進方向の速度になる。このため図3に示される作業局面判別部30aは、車速検出部27から出力される前進を示すホイールローダ1の移動速度の信号(前後進切換信号)に基づいて積荷後進から積荷前進へ切り換えられたことを検知することができる。
【0128】
また撮像装置によりホイールローダ1の走行状態が撮像され、その撮像画像に基づいて積荷後進から積荷前進へ切り換えられたことが検知されてもよい。
【0129】
作業局面判別部30aにより作業局面が積荷後進から積荷前進へ切り換えられたと判別された場合、積荷後進から積荷前進へ切り換えられた時点での瞬時荷重が積載重量として算出される(ステップS7:図8)。
【0130】
この場合、上記と同様、図3に示されるようにブーム圧力補正部30bは、差圧検知部30iから出力されたブームシリンダ16のヘッド圧とボトム圧との差圧の信号(ブーム圧力の信号)を補正せずに積載重量算出部30cへ出力する。積載重量算出部30cは、上記ブーム圧力の信号と、ブーム角検知部30hから出力されたブーム角度信号とに基づいてバケット6内の瞬時荷重を積載重量として算出する。
【0131】
積載重量算出部30cによって算出された積載重量は、積載重量算出部30cから積載重量出力部30eへ出力される。積載重量出力部30eは、積載重量を表示部40へ出力する。これにより表示部40には、積載重量を固定値として表示される(ステップS8:図8)。この積載重量は、積荷後進から積荷前進への切り換えを検知した時点から作業局面が積込みであると判別されるまで表示部40に固定値として表示され続ける。
【0132】
また積載重量出力部30eは、積載重量を記憶部30jへ出力する。記憶部30jは、積載重量出力部30eから出力された積載重量を記憶する。
【0133】
上記の掘削積込動作が繰り返し行われる。1回の掘削積込動作毎に出力された積載重量に基づいて、積載重量が積算される。
【0134】
図3に示されるように、積載重量の積算は、積載重量積算部30fにより行われる。積載重量積算部30fは、記憶部30jに記憶された前回までの積載重量の積算値に今回の積載重量を自動で積算する(つまり複数の積載重量を自動で積算する)。積算された積算値は、積載重量積算部30fから出力され、積算値出力部30gへ入力される。積算された積算値は、積算値出力部30gにより記憶部30jに記憶され、表示部40に表示され、また第2処理装置70の表示部75にて表示される。
【0135】
オペレータは、上記の繰り返される掘削積込動作中において、図8のステップS5にて表示部40にリアルタイムで表示された瞬時荷重を確認することができる。具体的にはオペレータは、上記掘削積込動作における掘削終了直後(積荷後進開始直後)に表示部40にて瞬時荷重を確認することができる。オペレータは、その瞬時荷重を被積込み対象(たとえばダンプトラックの荷台)に積込んだ場合、積載重量の積算値が被積込み対象における積込み可能容量を超えるか否かを判断する。オペレータは、積載重量の積算値が被積込み対象における積込み可能容量を超えると判断した場合、バケット6内の荷の一部を掘削場またはその近傍にて捨てる。これにより積載重量の積算値が被積込み対象における積込み可能容量を超えないように瞬時荷重が調整される。
【0136】
オペレータは、上記のように瞬時荷重を調整した後、掘削場からホイールローダ1を後進(積荷後進)させるよう操作する。そしてホイールローダ1が所定距離だけ後進した後に積荷前進に切り換え、被積込み対象に近づいたところでバケット6をダンプして、バケット6内の荷(掘削対象物)をダンプトラック200の荷台上に積み込む。これによりダンプトラックの積込み容量を超えることなく、上記掘削積込動作を終えることができる。
【0137】
以上のように、本実施の形態の掘削積込動作における積載重量の計測および積算を含む作業機械の制御は行われる。
【0138】
図9は、上記掘削積込動作における積載重量の計測方法を含む作業機械の制御方法を示す第2のフロー図である。図9に示された第2のフローは、上記の牽引圧力をブーム圧力から減算する補正に関する。
【0139】
図9に示されるように、第2のフローにおいては、図8に示す第1のフローと同様、ホイールローダ1は掘削積込動作において一連の動作を行なう。この掘削積込の一連の動作における現在の作業局面を知るために、作業状態の局面に関する情報が取得される(ステップS1)。
【0140】
この作業状態の局面に関する情報は、たとえば図3に示されるように、前後進切換装置49から出力された前後進指令の検出信号、ブーム操作装置52から出力されたブーム14の動作指令の検出信号、バケット操作装置54から出力されたバケット6の動作指令の検出信号、ブームシリンダ16の圧力検出信号などである。これらの作業状態の局面に関する情報は、作業局面判別部30aに入力される。
【0141】
作業局面判別部30aは、取得した作業状態の局面に関する情報に基づいて、図7に示されるテーブルを参照して作業局面を判別する(ステップS2)。この作業局面の判別の結果、作業局面が掘削であると判断された場合、牽引力の算出に用いられる情報が検知される(ステップS11)。牽引力の算出に用いられる情報は、たとえば図2に示されるように回転センサ32で検出されるエンジン20内部の回転軸の回転数、センサ33で検出される作業機ポンプ25の斜板の角度、圧力センサ34で検出される作業機ポンプ25の吐出圧力、アクセル操作検出部51bにより検出されるアクセル操作部材51aにおける操作量などを含む。
【0142】
この牽引力の算出に用いられる情報に基づいて上式(1)、(2)または(3)を用いて牽引力が算出され、その牽引力に基づいて牽引圧力が算出される(ステップS12)。そして算出された牽引圧力に基づいてブーム圧力が補正される(ステップS3)。
【0143】
この後の工程は上述した第1のフローと同じであるため、その説明を繰り返さない。
この第2のフローの場合には、牽引力が検知される期間中においてブーム圧力が補正されるため、作業局面を判別する工程が不要となる。
【0144】
<表示部40における表示内容>
図12は、表示部40における表示内容の変化を示す図(A)~(D)である。図12(A)に示されるように、作業局面が空荷前進および掘削時と判別された場合には、表示部40には、バケット6内の目標積載重量が表示される。たとえば表示部40における「今回」の円弧形状の表示メーター部に「100%」の位置まで円弧形状に沿って延びる目標の積載重量%が補足で表示される。
【0145】
図12(B)に示されるように、作業局面が積荷後進と判別された場合には、表示部40には、バケット6内の現在の瞬時荷重が表示される。たとえば表示部40における「今回」の円弧形状の表示メーター部に、円弧形状に沿って延びる現在の瞬時荷重%がリアルタイムで表示される。
【0146】
オペレータは表示部40を確認し、積荷後進時における現在の瞬時荷重が目標の積載重量%(たとえば100%)を越えている場合、バケット6から荷の一部を捨てる操作を行う。これによりバケット6内の荷重を調整可能である。このときの瞬時荷重はたとえば第1の色彩で表示される。
【0147】
図12(C)に示されるように、作業局面が積荷後進から積荷前進へ切り換わったことを検知した時点において算出された瞬時荷重が固定値の積載重量として表示部40に表示される。この固定値としての積載重量は、積荷後進から積荷前進への切り換えを検知した時点から積込みを検知するまで表示部40に表示され続ける。
【0148】
たとえば表示部40における「今回」の円弧形状の表示メーター部に、円弧形状に沿って延びる積載重量%が固定値として表示される。積荷後進から積荷前進に切り換わる時点ではバケット6内の荷重の測定値は安定している。このため、誤差の少ない測定値の表示が可能となる。
【0149】
この固定値としての積載重量は、瞬時荷重の表示における第1の色彩とは異なる第2の色彩で表示される。これによりオペレータは、固定値としての積載重量が表示されたことを視覚にて容易に認識することができる。
【0150】
図12(D)に示されるように、被積込み対象に積込まれた積載重量の積算値と、被積込み対象における積込み可能容量から積載重量の積算値を減じた差分とが表示される。たとえば表示部40における「残り」の円弧形状の表示メーター部に、被積込み対象に積込まれた積載重量の積算値が円弧形状に沿って延びるように表示される。また「残り」の表示の下に、被積込み対象における積込み可能容量から積載重量の積算値を減じた差分が数値として表示される。
【0151】
<ブーム角度、ブームボトム圧、瞬時荷重および積載重量の変化>
本発明者は、本実施の形態に係るホイールローダ1の掘削積込の一連の動作におけるブーム角度、ブームシリンダ差圧、瞬時荷重および積載重量の変化について調べた。その結果を、図13に示す。
【0152】
図13の結果から、ブーム角度、ブームシリンダ差圧および瞬時荷重の各々は、掘削時および排土時には大きく変化することが分かる。またブーム角度、ブームシリンダ差圧および瞬時荷重の各々は、積荷後進時の前半においても大きく変化することが分かる。これに対して積荷後進時の後半および積荷前進時の各々においては、ブーム角度、ブームシリンダ差圧および瞬時荷重の各々の経時的な変化は小さく抑えられている。特に積荷後進から積荷前進に切り換わる直前には、ブームシリンダ差圧および瞬時荷重の各々の経時的な変化が極めて小さく、ブームシリンダ差圧および瞬時荷重の各々が安定していることが分かる。
【0153】
<実施の形態における効果>
本実施の形態においては図13に示されるように、掘削時においてはブームシリンダ差圧(ブーム圧力)の経時的な変動が大きい。このため本実施の形態においては作業局面が掘削であると判別された場合、ブーム圧力が補正され、その補正後圧力に基づいてバケット6内の瞬時荷重が算出される。これにより掘削中または掘削終了直後に、バケット6内の瞬時荷重が被積込み対象(たとえばダンプトラックの荷台)の積込み容量を超過しているか否かを知ることができる。よってバケット6内の荷の一部を捨てるために掘削場へ戻る時間を短縮でき、作業時間の増大を抑制することができる。
【0154】
また上記のとおり掘削場へ戻る時間を短縮できるため、バケット6内の荷の一部を残しながら被積込み対象に荷を積込む必要はない。よって積込み操作も容易となる。
【0155】
また上記公報のように積載重量の計測のためにブーム上げ操作をする必要もない。このためブームを下げる必要がなく、オペレータの操作が簡易となる。
【0156】
以上より本実施の形態によれば、短い作業時間および簡易な操作で積載重量を計測できる作業機械および作業機械を含むシステムを実現することができる。
【0157】
また本実施の形態においては図2に示されるように、ホイールローダ1は走行装置4を有している。このため走行装置4の後進と前進との切り換わりに基づいて作業局面が掘削か否かを判別することができる。
【0158】
また本実施の形態においては図10に示されるように、作業局面が掘削である場合にはブーム圧力が参考値(たとえば「0」)となるようにブーム圧力が補正されて、その補正後圧力に基づいて瞬時荷重が算出される。また作業局面が積荷後進である場合にはブーム圧力の計測値に基づいて瞬時荷重が算出される。これによりオペレータがブーム圧力の安定しない掘削時における測定荷重に基づいてバケット6内の荷を捨てるか否かの判断を行なうことが防止される。
【0159】
また本実施の形態においては図10に示されるように、作業局面が掘削であると判別している間の全体に亘って、ブーム圧力が参考値となるように補正される。これによりブーム圧力の安定しない掘削時の全体において、オペレータがバケット6内の荷を捨てるか否かの判断を行なうことが防止される。
【0160】
また本実施の形態においては図11に示されるように、牽引圧力がブーム圧力から減じられることによってブーム圧力が補正される。掘削時におけるブームシリンダ16の圧力には、走行装置4の走行に起因した牽引力が作用する。この牽引力は、掘削時におけるブーム圧力を不安定にする一因となっている。このため牽引力を減算するようにブーム圧力が補正されることで、より正確な瞬時荷重の算出が可能となる。
【0161】
また本実施の形態においては図2に示されるように、コントローラ(第1処理装置30、第2処理装置70)により算出された瞬時荷重を報知する報知部(表示部40、75)が設けられている。これによりオペレータなどは報知された瞬時荷重を確認して、バケット6内の荷を捨てるなどの操作を実行することができる。
【0162】
なお報知部は表示部40、75だけに限られず、音声で報知するスピーカーであってもよい。
【0163】
また本実施の形態においては図10および図11に示されるように、コントローラ(第1処理装置30、第2処理装置70)は、作業局面として積荷後進が開始されたと判別した場合、算出された瞬時荷重を現在の荷重値として表示部40、75にリアルタイムで表示する。これによりバケット6内の荷が捨てられた場合に、オペレータなどは荷を捨てた後のバケット6内の瞬時荷重を即座に確認することができる。このためバケット6内の荷重値の調整が容易となる。
【0164】
また本実施の形態においては図10および図11に示されるように、コントローラ(第1処理装置30、第2処理装置70)は、積荷後進から積荷前進へ切り換えられた時点で算出された瞬時荷重を積載重量として、上記切り換えを検知した時点から積込みの判別がされるまで表示部40、75に表示し続ける。これによりオペレータなどが積載重量を確認することが容易となる。
【0165】
また本実施の形態においては図12(A)~図12(D)に示されるように、表示部40、75は、目標積載重量(図12(A))、瞬時荷重(図12(B)))、積載重量(図12(C))、および積載重量の積算値、積込み可能容量から前記積載重量の積算値を減じた差分(図12(D))を表示する。これによりオペレータは表示部40などの情報に基づいてバケット6内の荷を掘削直後に捨てることが可能となり、かつ上記積載重量、上記積算値および上記差分を視認することが容易となる。
【0166】
前後進切換センサとしては、たとえばGPS(Global Positioning System)による車速検出、ステレオカメラを用いた車速検出、トランスミッション出力軸の回転センサを用いた車速検出、トランスミッション入力軸の回転センサとトランスミッション変速比とを用いた車速検出などが用いられてもよい。また前後進切換センサは、上記に限定されず、要するに車体の進行方向が検出できるものであればよい。
【0167】
なお上記実施の形態においては積載重量がブームシリンダ16のヘッド圧およびボトム圧の差圧とブーム角度とから算出される場合について説明したが、積載重量はブームシリンダ16のボトム圧とブーム角度とから算出されてもよい。この場合、図2における圧力センサ28aは不要である。
【0168】
また上記実施の形態においては、図8および図9に示されるように、コントローラ30、70が、作業局面における掘削の判別が切り換わるときにブーム圧力の補正の切り換えを行なうことについて説明したが、作業局面における掘削の判別が切り換わるときにバケット6およびブーム14の少なくとも一方を駆動する作業具シリンダ(ブームシリンダ16、チルトシリンダ19)のシリンダ圧力の補正の切り換えを行なってもよい。
【0169】
また上記実施の形態においては、図8および図9に示されるように、コントローラ30、70が、ブーム圧力を補正してブームシリンダ16の補正後圧力を算出し、その補正後圧力に基づいてバケット6内の瞬時荷重を算出する場合について説明した。本開示はこれに限定されず、コントローラ30、70が、バケット6およびブーム14の少なくとも一方の作業具を駆動する作業具シリンダ(ブームシリンダ16、チルトシリンダ19)のシリンダ圧力を補正して補正後圧力を算出し、その補正後圧力に基づいてバケット6内の瞬時荷重を算出してもよい。
【0170】
また上記実施の形態においては、図8および図9に示されるように、コントローラ30、70が、作業局面が掘削であると判別した場合にブーム圧力が参考値となるようにブーム圧力を補正する場合について説明した。本開示はこれに限定されず、作業局面が掘削であると判別した場合にバケット6およびブーム14の少なくとも一方の作業具を駆動する作業具シリンダ(ブームシリンダ16、チルトシリンダ19)のシリンダ圧力が参考値となるようにそのシリンダ圧力を補正してもよい。
【0171】
また上記実施の形態においては、図9に示されるように、コントローラ30、70が、作業局面が掘削であると判別した場合に牽引圧力をブーム圧力から減じることによってブーム圧力を補正して補正後圧力を算出する場合について説明した。本開示はこれに限定されず、コントローラ30、70が、作業局面が掘削であると判別した場合に牽引圧力を、バケット6およびブーム14の少なくとも一方を駆動する作業具シリンダ(ブームシリンダ16、チルトシリンダ19)のシリンダ圧力から減じることによってそのシリンダ圧力を補正して補正後圧力を算出してもよい。
【0172】
また上記実施の形態においては図3に示す機能ブロック30a~30jが第1処理装置30に含まれる場合について説明したが、これらの機能ブロック30a~30jは図2に示す第2処理装置70に含まれていてもよい。この場合、前後進切換装置49、車速検出部27、第1油圧検出器28a、28b、第1角度検出器29および第2角度検出器48の各々の検知信号は、図2に示す出力部45を通じて第2処理装置70へ出力されてもよい。
【0173】
またブーム操作装置52とバケット操作装置54とは、互いに一体化された操向レバー(モノレバー)であってもよい。この場合、1つの操向レバーがブーム操作装置52とバケット操作装置54とを兼ねる。
【0174】
また図2に示される第2処理装置70は、CAN(Controller Area Network)、LAN(Local Area Network)、無線LANなどにより出力部45との間で電気/電波信号の送受信を行ってもよい。
【0175】
また第2処理装置70は、第1処理装置30の入力情報を受け取って演算を行ってもよい。
【0176】
また上記実施の形態においては、上記の実施の形態の構成が適用される作業機械として図1に示すホイールローダ1について説明したが、上記の実施の形態の構成が適用される作業機械はホイールローダ1以外に、バケット6を有する作業機械であってもよく、たとえばバックホーローダーなどであってもよい。
【0177】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均などの意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0178】
1 ホイールローダ、2 車体フレーム、3 作業機、4 走行装置、4a 前輪、4b 後輪、5 キャブ、6 バケット、6a 刃先、10 ブームピン、11 前フレーム、12 後フレーム、13 ステアリングシリンダ、14 ブーム、15 チルトロッド、16 ブームシリンダ、17 バケットピン、18 ベルクランク、18a 支持ピン、19 チルトシリンダ、20 エンジン、21 入力軸、22 動力取り出し部、23 動力伝達機構、23a 出力軸、24 シリンダ駆動部、25 作業機ポンプ、26 制御弁、27 車速検出部、28a,28b,34 圧力センサ、29 第1角度検出器、30 第1処理装置、30a 作業局面判別部、30b ブーム圧力補正部、30c 積載重量算出部、30d 牽引圧力算出部、30e 積載重量出力部、30f 積載重量積算部、30g 積算値出力部、30h ブーム角検知部、30i 差圧検知部、30j 記憶部、32 回転センサ、33 センサ、40,75 表示部、45 出力部、48 第2角度検出器、49 前後進切換装置、49a 前後進切換操作部材、49b 前後進切換検出センサ、51 アクセル操作装置、51a アクセル操作部材、51b アクセル操作検出部、52 ブーム操作装置、52a ブーム操作部材、52b ブーム操作検出部、53 変速操作装置、53a 変速操作部材、53b 変速操作検出部、54 バケット操作装置、54a バケット操作部材、54b バケット操作検出部、58 ブレーキ操作装置、58a ブレーキ操作部材、58b ブレーキ操作検出部、70 第2処理装置、71 入力部、100 掘削対象物、200 ダンプトラック。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13