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特許7091198プラズマ処理装置および半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20220620BHJP
   C23C 16/52 20060101ALI20220620BHJP
   H01L 21/316 20060101ALN20220620BHJP
【FI】
H01L21/31 C
C23C16/52
H01L21/316 X
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018169612
(22)【出願日】2018-09-11
(65)【公開番号】P2020043227
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-03-18
(73)【特許権者】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 秀顯
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-343026(JP,A)
【文献】特開平11-176820(JP,A)
【文献】特開2005-068559(JP,A)
【文献】国際公開第2008/047838(WO,A1)
【文献】特開2002-050618(JP,A)
【文献】特開2012-216696(JP,A)
【文献】特開平06-053176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
C23C 16/52
H01L 21/316
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ化学気相成長法を用いて基板に成膜を行うプラズマ処理装置であって、
前記基板を収容可能な処理容器と、
前記処理容器の内部に配置される上部電極と、
前記上部電極に対向し、接地がされた下部電極および前記基板を加熱するヒータを有し、前記基板を載置する基板載置台と、
前記基板載置台の側面に前記下部電極とは離間して埋め込まれ、接地がされた第1の側面電極と、
前記基板載置台の外側であって、前記基板載置台と前記処理容器の側壁との間で前記第1の側面電極に対向する第2の側面電極と、
前記上部電極および前記第2の側面電極に電圧を印加する電源と、を備え
前記上部電極への電圧の印加と、前記第2の側面電極への電圧の印加とは、独立して行うことができる、
プラズマ処理装置。
【請求項2】
プラズマ化学気相成長法を用いて基板に成膜を行うプラズマ処理装置で実施される半導体装置の製造方法であって、
前記プラズマ処理装置は、
前記基板を収容可能な処理容器と、
前記処理容器の内部に配置される上部電極と、
前記上部電極に対向し、接地がされた下部電極および前記基板を加熱するヒータを有し、前記基板を載置する基板載置台と、
前記基板載置台の側面に前記下部電極とは離間して埋め込まれ、接地がされた第1の側面電極と、
前記基板載置台の外側であって、前記基板載置台と前記処理容器の側壁との間で前記第1の側面電極に対向する第2の側面電極と、
前記上部電極および前記第2の側面電極に電圧を印加する電源と、を備え、
前記第2の側面電極に電圧の印加を行って前記基板載置台の側面近傍にシーズニングガスのプラズマを生成し、前記基板載置台の側面にシーズニング膜を形成するシーズニングステップを含む、
半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記基板載置台をシーズニング処理の温度に降温する降温ステップと、
フッ素系ガスを用いて前記上部電極および前記基板載置台に対してドライクリーニング処理を行うドライクリーニングステップと、
前記基板載置台をプラズマ処理の温度に昇温する昇温ステップと、を含み、
前記シーズニングステップは、
前記ドライクリーニングステップ後であって、前記昇温ステップ前に行われる、
請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記シーズニングステップでは、
前記上部電極に電圧の印加を行って前記基板載置台の上方に前記シーズニングガスのプラズマを生成し、前記基板載置台の上面にシーズニング膜を形成する、
請求項または請求項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、プラズマ処理装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ化学気相成長法を用いて基板に成膜を行うプラズマ処理装置では、所定の処理時間が経過するごとにドライクリーニング処理をすることがある。ドライクリーニング処理後には、処理容器内の部材からのパーティクルを抑制するために処理容器内のシーズニング処理が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-228386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一つの実施形態は、ドライクリーニング処理後のパーティクルを抑制することができるプラズマ処理装置および半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のプラズマ処理装置は、プラズマ化学気相成長法を用いて基板に成膜を行うプラズマ処理装置であって、前記基板を収容可能な処理容器と、前記処理容器の内部に配置される上部電極と、前記上部電極に対向し、接地がされた下部電極および前記基板を加熱するヒータを有し、前記基板を載置する基板載置台と、前記基板載置台の側面に前記下部電極とは離間して埋め込まれ、接地がされた第1の側面電極と、前記基板載置台の外側であって、前記基板載置台と前記処理容器の側壁との間で前記第1の側面電極に対向する第2の側面電極と、前記上部電極および前記第2の側面電極に電圧を印加する電源と、を備え、前記上部電極への電圧の印加と、前記第2の側面電極への電圧の印加とは、独立して行うことができる
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、実施形態にかかるプラズマ処理装置の構成の一例を模式的に示す縦断面図である。
図2図2は、実施形態にかかるプラズマ処理装置のヒータペデスタルの周囲の構成を模式的に示す横断面図である。
図3図3は、実施形態にかかるプラズマ処理装置におけるウェハのプラズマ処理の様子を示す模式図である。
図4図4は、実施形態にかかるプラズマ処理装置におけるドライクリーニング処理の様子を示す模式図である。
図5図5は、実施形態にかかるプラズマ処理装置におけるシーズニング処理の様子を示す模式図である。
図6図6は、実施形態にかかるプラズマ処理装置での半導体装置の製造処理の手順の一例を示すフロー図である。
図7図7は、実施形態の変形例にかかるプラズマ処理装置のヒータペデスタルの周囲の構成を模式的に示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0008】
[プラズマ処理装置の構成例]
図1は、実施形態にかかるプラズマ処理装置1の構成の一例を模式的に示す縦断面図である。図2は、実施形態にかかるプラズマ処理装置1のヒータペデスタル13の周囲の構成を模式的に示す横断面図である。プラズマ処理装置1は、例えばPCVD(Plasma Chemical Vapor Deposition)装置として構成されている。
【0009】
図1に示すように、プラズマ処理装置1は、気密に構成された処理容器としてのチャンバ11を備える。チャンバ11の下部には、図示しない真空ポンプにより処理ガス等を排気するガス排気口11eが設けられている。
【0010】
チャンバ11内の天井付近には、上部電極としてのシャワーヘッド12が備え付けられている。シャワーヘッド12は、処理ガス等をチャンバ11内に噴出させる噴出口12gを備えるとともに、上部電極としても機能する。シャワーヘッド12には、図示しないガス供給管を介して図示しないガス供給装置が接続されている。シャワーヘッド12は、主に、例えばアルミニウム等により構成されている。
【0011】
チャンバ11内の下方であって、シャワーヘッド12と対向する位置には基板載置台としてのヒータペデスタル13が設置されている。ヒータペデスタル13は、基板としてのウェハWを載置するとともに、ヒータペデスタル13に内蔵されるヒータ(不図示)により載置したウェハWを加熱する。ヒータペデスタル13は、主に、例えばAlN等のセラミックにより構成されている。
【0012】
ヒータペデスタル13内の上面付近には下部電極13wが設けられている。ヒータペデスタル13がシャワーヘッド12と平行に対向して配置されることで、下部電極13wもまた、上部電極であるシャワーヘッド12と平行に対向している。シャワーヘッド12及びヒータペデスタル13内の下部電極13wにより、一対の平行平板電極が構成される。
【0013】
ヒータペデスタル13内の側面付近には側面電極13sが設けられている。側面電極13sは、ヒータペデスタル13の内周に沿うようリング状に構成されている。その様子を図2に示す。
【0014】
ヒータペデスタル13の外側には、側面電極13sと平行に対向するよう側面電極15sが設けられている。側面電極15sは、ヒータペデスタル13の外周を取り巻くようにリング状に構成されている。その様子を図2に示す。側面電極15s及びヒータペデスタル13内の側面電極13sにより、一対の平行平板電極が構成される。
【0015】
シャワーヘッド12と側面電極15sとは、それぞれ給電線16u,16sを介して高周波電源16gが接続されている。高周波電源16gからは、プラズマ処理時等に所定の周波数の高周波電力がシャワーヘッド12または側面電極15sに供給される。
【0016】
給電線16uには、シャワーヘッド12への高周波電力の供給を制御する制御回路16muが設けられている。制御回路16muは、高周波電源16gが高周波電力を発生させているときに、シャワーヘッド12への高周波電力の供給開始および供給停止を制御する。給電線16sには、側面電極15sへの高周波電力の供給を制御する制御回路16msが設けられている。制御回路16msは、高周波電源16gが高周波電力を発生させているときに、側面電極15sへの高周波電力の供給開始および供給停止を制御する。
【0017】
下部電極13wと側面電極13sとは、それぞれ接地線14w,14sを介して接地されている。
【0018】
プラズマ処理装置1が備える制御装置17は、チャンバ11内へのガスの供給、真空ポンプ、ヒータペデスタル13、高周波電源16g、制御回路16mu,16ms等の各部の動作を制御する。
【0019】
ウェハWをプラズマ処理する際には、加熱されたヒータペデスタル13上にウェハWが載置される。また、ガス排気口11eに接続される真空ポンプでチャンバ11内が真空引きされる。チャンバ11内が所定の圧力に達すると、ガス供給装置からシャワーヘッド12の噴出口12gを介して、チャンバ11内に処理ガス等のガスが供給される。チャンバ11内に供給されたガスは、図1中に矢印で示された経路Gを辿り、チャンバ11下方のガス排気口11eへと引かれていく。
【0020】
このとき、ヒータペデスタル13内の下部電極13wを接地した状態で、上部電極であるシャワーヘッド12に高周波電圧を印加して、ヒータペデスタル13上面の上方にプラズマPを発生させる。これにより、ヒータペデスタル13上に載置されたウェハWがプラズマ処理され、例えばウェハW上に所定材料の層が形成される。
【0021】
これに加えて、または、これに代えて、ヒータペデスタル13内の側面電極13sを接地した状態で、これに対向する側面電極15sに高周波電圧を印加して、ヒータペデスタル13の外周面近傍にプラズマPsを発生させることもできる。
【0022】
[プラズマ処理装置における処理の例]
次に、図3図5を用いて、プラズマ処理装置1における種々の処理の例について説明する。図3は、実施形態にかかるプラズマ処理装置1におけるウェハWのプラズマ処理の様子を示す模式図である。
【0023】
プラズマ処理装置1におけるプラズマ処理を開始するにあたり、チャンバ11内には、シャワーヘッド12及びヒータペデスタル13がインストールされる。これらのシャワーヘッド12及びヒータペデスタル13は、新品または洗浄済みである。新しくシャワーヘッド12及びヒータペデスタル13がインストールされた後には、ウェハWのプラズマ処理開始前に、所定時間のシーズニング処理が行われる。シーズニング処理については、後述する。
【0024】
図3に示すウェハWのプラズマ処理では、複数のウェハWが順次、チャンバ11内に搬入され、プラズマ処理される。図3の例では、かかるプラズマ処理により、例えばSiOやSiN等の絶縁層がウェハW上に成膜されることとする。この場合、処理ガスとして、例えば、シランガスとCO、O等との組み合わせ、または、シランガスとNH、N等との組み合わせが用いられる。
【0025】
所定温度に加熱されたヒータペデスタル13上にウェハWが載置され、ウェハWはプラズマ処理温度に加熱される。このとき、ウェハW上への成膜を促進するため、シャワーヘッド12の温度はヒータペデスタル13よりも低い温度に設定される。
【0026】
また、チャンバ11内が真空引きされると、上記のような処理ガスがチャンバ11内に供給される。また、高周波電源16gが発生させた高周波電力が、制御回路16muによりシャワーヘッド12に供給される。制御回路16msは側面電極15sへの高周波電力の供給を行わない。これにより、ウェハWを載置するヒータペデスタル13の上方にプラズマPが生成される。このように、ウェハWのプラズマ処理時には、ヒータペデスタル13側面近傍のプラズマPsは生成させない。
【0027】
所定時間、プラズマPの生成を継続すると、ウェハW上には所定の層厚で絶縁層が形成される。このようなプラズマ処理は、複数のウェハWに対して繰り返される。
【0028】
複数のウェハWがプラズマ処理されると、ウェハW上のみならず、チャンバ11内の所定箇所にも絶縁層と略同様の成分の堆積膜Dpが堆積される。図3において、シャワーヘッド12の下面(ヒータペデスタル13に対向する面)と側面、及びヒータペデスタル13の主に側面に堆積膜Dpが堆積された様子を示す。また、ヒータペデスタル13上面にも若干の堆積膜Dpが堆積される場合もある。
【0029】
これらの部材上の堆積膜Dpが厚くなり過ぎると、堆積膜Dp内で応力が生じ、部材から堆積膜Dpが剥離することがある。剥離した堆積膜Dpはパーティクル源となってウェハWやチャンバ11内を汚染する。そこで、所定枚数のウェハWを処理した後、ドライクリーニングにより堆積膜Dpを除去する。
【0030】
図4は、実施形態にかかるプラズマ処理装置1におけるドライクリーニング処理の様子を示す模式図である。
【0031】
図4に示すチャンバ11内のドライクリーニング処理では、例えばウェハWをヒータペデスタル13上に載置することなくドライクリーニング処理が行われる。ドライクリーニング処理時に使用されるクリーニングガスとしては、例えば、NF等のフッ素系のガスが用いられる。
【0032】
ドライクリーニング処理の開始前には、ヒータペデスタル13の温度をプラズマ処理時の温度より低い温度に降温する。具体的には、ヒータペデスタル13の温度を例えば500℃以下とする。
【0033】
そして、チャンバ11内を真空引きし、上記のようなクリーニングガスをチャンバ11内に供給する。また、高周波電源16gが発生させた高周波電力が、制御回路16muによりシャワーヘッド12に供給される。これにより、ヒータペデスタル13の上方にプラズマPが生成される。
【0034】
所定時間、プラズマPの生成を継続すると、シャワーヘッド12及びヒータペデスタル13等のチャンバ11内に堆積した堆積膜Dpが除去される。堆積膜Dpの除去後、ヒータペデスタル13は、フッ素系ガスのプラズマに曝される。これにより、ヒータペデスタル13の表面を構成するAlN等と、プラズマ中のフッ素ラジカルとが反応し、例えば、ヒータペデスタル13の表面にAlF等のフッ化物Dcが形成される。フッ化物Dcは、ヒータペデスタル13の上面だけでなく、例えば側面にも形成される。
【0035】
ヒータペデスタル13の側面は、原理的には、直接的にプラズマに曝されることはない。しかし、プラズマ中のフッ素ラジカル等の活性種がチャンバ11下方のガス排気口11e側に引かれ、活性を失わないまま、ヒータペデスタル13の側面付近にまで到達することがある。これにより、ヒータペデスタル13の側面にフッ化物Dcが形成されると考えられる。
【0036】
ドライクリーニング処理が終了すると、チャンバ11内の堆積膜Dpは略除去され、チャンバ11内の雰囲気は、ウェハWのプラズマ処理時の雰囲気とは大きく異なる状態になる。このままの状態で、ウェハWに対するプラズマ処理を開始してしまうと、プラズマ処理の状態が変化し、成膜特性が変動してしまう恐れがある。チャンバ11内部材からパーティクルが発生してしまう場合もある。そこで、ドライクリーニング後、プラズマ処理開始前に、チャンバ11内のシーズニング処理を行う。
【0037】
図5は、実施形態にかかるプラズマ処理装置1におけるシーズニング処理の様子を示す模式図である。
【0038】
図5に示すチャンバ11内のシーズニング処理では、例えばウェハWをヒータペデスタル13上に載置することなくシーズニング処理が行われる。シーズニング処理時に使用されるシーズニングガスとしては、例えば、ウェハWのプラズマ処理時と同一のガス系が用いられることが好ましい。これにより、チャンバ11内の雰囲気をウェハWのプラズマ処理時の雰囲気に戻すことができる。
【0039】
ヒータペデスタル13の温度を例えばドライクリーニング処理時の温度に維持したまま、チャンバ11内を真空引きし、上記のようなシーズニングガスをチャンバ11内に供給する。また、高周波電源16gが発生させた高周波電力が、制御回路16muによりシャワーヘッド12に供給される。さらに、高周波電力は、制御回路16msにより側面電極15sにも供給される。これにより、ヒータペデスタル13の上方にプラズマPが生成され、側面近傍にプラズマPsが生成される。
【0040】
所定時間、プラズマPの生成を継続すると、シャワーヘッド12の下面および側面、そして、ヒータペデスタル13の上面に、シーズニング膜Dsが形成される。また、所定時間、プラズマPsの生成を継続すると、ヒータペデスタル13の側面にもシーズニング膜Dsが形成される。これにより、シャワーヘッド12及びヒータペデスタル13の表面がシーズニング膜Dsに覆われるとともに、ヒータペデスタル13表面のフッ化物Dcもシーズニング膜Dsに覆われる。
【0041】
このシーズニング膜Dsは、ウェハWのプラズマ処理中に堆積される堆積膜Dpと略同様の成分である。ただし、チャンバ11内のシーズニング処理の時間は、ウェハWに対するプラズマ処理の累積時間よりも極めて短いため、シーズニング膜Dsは、堆積膜Dpよりも遥かに薄く、剥離するおそれがない。シーズニング膜Dsは、シャワーヘッド12及びヒータペデスタル13等のチャンバ11内部材の表面を薄くコーティングし、チャンバ11内雰囲気をウェハWへのプラズマ処理時の雰囲気に戻し、かつ、部材からのパーティクルを抑制する効果を有する。
【0042】
なお、シャワーヘッド12及び側面電極15sへの高周波電力供給によるプラズマP,Psの生成時間は、ヒータペデスタル13上面および側面のシーズニング膜Dsの形成速度に応じて、種々に変化させることができる。このとき、プラズマP,Psの生成時間は、同一であってもよいし異なっていてもよい。プラズマP,Psの生成時間を異ならせる場合には、プラズマP,Psの生成開始時点を同時にして生成終了時点を異ならせたり、プラズマP,Psの生成開始時点を異ならせて生成終了時点を同時にしたり、プラズマP,Psの生成開始時点および生成終了時点の両方を異ならせたりしてよい。
【0043】
シーズニング処理の終了後、ヒータペデスタル13の温度をプラズマ処理時の温度に昇温し、プラズマ処理装置1におけるウェハWへのプラズマ処理が再開される。この後、プラズマ処理、ドライクリーニング処理、及びシーズニング処理のサイクルが所定回数繰り返された後、シャワーヘッド12及びヒータペデスタル13はチャンバ11内から取り外され溶剤等を用いて洗浄(ウェットクリーニング)される。
【0044】
[半導体装置の製造処理の例]
次に、図6を用いて、プラズマ処理装置1における半導体装置の製造処理としての処理の例について説明する。図6は、実施形態にかかるプラズマ処理装置1での半導体装置の製造処理の手順の一例を示すフロー図である。
【0045】
図6に示すように、プラズマ処理装置1のチャンバ11に、シャワーヘッド12及びヒータペデスタル13等の部材がインストールされる(ステップS11)。チャンバ11が真空引きされると、例えばウェハWに対するプラズマ処理時と同様のガス系を用い、チャンバ11内のシーズニング処理が行われる(ステップS12)。これにより、チャンバ11内部材にシーズニング膜Dsが形成され、チャンバ11内雰囲気が、ウェハWへのプラズマ処理時と似通った雰囲気となる。よって、部材からのパーティクルやウェハWへの処理特性の変動等を抑えることができる。
【0046】
シーズニング処理後、ヒータペデスタル13を昇温し(ステップS13)、シーズニング処理されたチャンバ11内で、ウェハWに対するプラズマ処理が行われる(ステップS14)。所定の処理枚数に到達するまで、ウェハWへのプラズマ処理が繰り返される(ステップS15:No→ステップS14)。
【0047】
ウェハWの処理枚数が所定数に到達していたら(ステップS15:Yes)、プラズマ処理、ドライクリーニング処理、およびシーズニング処理のサイクルが所定回数に到達したか否かが判定される(ステップS16)。
【0048】
サイクルが所定回数に到達していなければ(ステップS16:No)、ヒータペデスタル13をプラズマ処理時の温度より低い温度に降温する(ステップS17)。そして、チャンバ11内のドライクリーニング処理を行って、シャワーヘッド12及びヒータペデスタル13等の堆積膜Dpを除去する(ステップS18)。このとき、ヒータペデスタル13の上面および側面に、フッ化物Dcが形成される。
【0049】
次に、チャンバ11内のシーズニング処理を行って、シャワーヘッド12及びヒータペデスタル13等にシーズニング膜Dsを形成する(ステップS12)。シーズニング膜Dsは、ヒータペデスタル13の上面および側面のフッ化物Dcを覆う。その後、ヒータペデスタル13をプラズマ処理時の温度に昇温する(ステップS13)。これ以降、さらにステップS14~S18の処理が行われる。このように、所定サイクルに到達するまで、ステップS12~S18の処理が繰り返される。
【0050】
サイクルが所定回数に到達したら(ステップS16:Yes)処理を終了する。これ以降、シャワーヘッド12及びヒータペデスタル13はアンインストールされ洗浄される。
【0051】
一方、プラズマ処理装置1においてプラズマ処理されたウェハWは、他の装置等による複数の処理を経る。これにより、ウェハW上に半導体装置が形成される。
【0052】
以上により、プラズマ処理装置1における半導体装置の製造処理としての処理が終了する。
【0053】
[比較例]
比較例のプラズマ処理装置は、例えば、側面電極13s,15s等を有さない。また、比較例のプラズマ処理装置の処理においては、例えば、ヒータペデスタルが常時、プラズマ処理時の温度に保たれる。このため、以下の課題が生じる。
【0054】
ドライクリーニング処理時およびシーズニング処理時、ヒータペデスタルはプラズマ処理時の高温に保たれている。このため、ヒータペデスタル表面に生成したフッ化物が昇華し、ヒータペデスタルより低温のシャワーヘッドに付着する。シャワーヘッドに付着したフッ化物は、パーティクル源となったり、ウェハに成膜される絶縁層の層厚のウェハ面内均一性を悪化させたりすることがある。
【0055】
また、シーズニング処理時にはヒータペデスタル上方でのみプラズマが生成されるため、ヒータペデスタルの上面にはシーズニング膜が形成されるものの、側面には形成されない。これにより、シーズニング処理を終えた後にも、ヒータペデスタル側面からフッ化物が昇華され続け、パーティクル発生及び均一性悪化の原因となり続ける。
【0056】
実施形態のプラズマ処理装置1では、ドライクリーニング処理時およびシーズニング処理時、ヒータペデスタル13の温度をプラズマ処理温度より低い温度に保つ。このため、ドライクリーニング処理によりヒータペデスタル13の表面にフッ化物Dcが生成しても、フッ化物Dcの昇華を抑制することができる。
【0057】
実施形態のプラズマ処理装置1では、シーズニング処理時、側面電極13s,15s間にプラズマPsを生成し、ヒータペデスタル13の側面にもシーズニング膜Dsを形成してフッ化物Dcを覆うことができる。これにより、シーズニング処理後、ヒータペデスタル13をプラズマ処理時の温度に昇温しても、フッ化物Dcが昇華しシャワーヘッド12に付着してしまうのを抑制することができる。
【0058】
実施形態のプラズマ処理装置1では、フッ化物Dcの昇華が抑制されるので、ドライクリーニング処理後のパーティクルを抑制することができる。また、成膜される絶縁層の層厚のウェハ面内均一性の悪化を抑制し、安定した成膜特性を得ることができる。
【0059】
実施形態のプラズマ処理装置1では、シーズニング処理時のプラズマP,Psの生成時間を同一にし、または、異ならせる。これにより、ヒータペデスタル13上面および側面のシーズニング膜Dsの形成速度に応じて、所望の膜厚のシーズニング膜Dsを形成することができる。実施形態のプラズマ処理装置1では、このように、シャワーヘッド12と側面電極15への高周波電力の供給を、それぞれ独立して行うことができるので、時々に応じて、プラズマの生成位置(プラズマP,Ps)を自由に組み合わせることができ、プラズマ処理装置1での処理のマージンが広がる。
【0060】
[変形例]
次に、図7を用いて、実施形態の変形例のプラズマ処理装置について説明する。図7は、実施形態の変形例にかかるプラズマ処理装置のヒータペデスタル13xの周囲の構成を模式的に示す横断面図である。変形例のプラズマ処理装置では、側面電極13sa,13sb,13sc,15sa,15sb,15scの形状が上述の実施形態とは異なる。
【0061】
図7に示すように、変形例のプラズマ処理装置は、ヒータペデスタル13x内に、ヒータペデスタル13xの内周に沿うよう、複数に分割された側面電極13sa,13sb,13scを備える。これらの側面電極13sa,13sb,13scは、それぞれ接地線14sa,14sb,14scを介して接地されている。
【0062】
また、変形例のプラズマ処理装置は、ヒータペデスタル13xの外周に、ヒータペデスタル13xの外周を取り囲むよう、複数に分割された側面電極15sa,15sb,15scを備える。個々の側面電極15sa,15sb,15scは、それぞれ給電線16sa,16sb,16scを介して高周波電源16gに接続される。
【0063】
図7には、それぞれ3つに分割された側面電極13sa,13sb,13sc,15sa,15sb,15scを示すが、側面電極は何分割されていてもよい。個々の側面電極は、互いに等しい大きさで、かつ、等間隔で配置されることが好ましい。
【0064】
[その他の変形例]
上述の実施形態または変形例の構成に加え、ドライクリーニング処理の終了後から、シーズニング処理を経て、所定期間のプラズマ処理により強固な堆積膜Dpが堆積されるまで、プラズマ処理装置のアイドリング時にシャワーヘッドから不活性ガスをチャンバ内に供給するようにしてもよい。これにより、万が一、ヒータペデスタルからフッ化物Dcが昇華しても、シャワーヘッドへの付着が抑制される。
【0065】
上述の実施形態では、ドライクリーニング処理およびシーズニング処理におけるヒータペデスタル13の温度を同一としたが、フッ化物Dcの昇華が抑制される温度であれば、ドライクリーニング処理時とシーズニング処理時とでヒータペデスタルの温度が異なっていてもよい。
【0066】
上述の実施形態では、ドライクリーニング処理時にはヒータペデスタル13側面近傍にプラズマPsを生成しないこととしたが、ヒータペデスタル上面のプラズマと共に生成してもよい。これにより、ヒータペデスタル側面の堆積膜Dpをより速やかに除去することができる。このときも、ヒータペデスタル上面および側面のプラズマ生成時間を同一にしても異ならせてもよい。
【0067】
上述の実施形態では、ウェハW上にSiOやSiN等の絶縁層を成膜することとしたが、プラズマ処理の例はこれに限られない。ウェハW上には、例えばカーボン(C)層、SiOやSiN等の絶縁層とSi層との積層構造、絶縁層と金属層との積層構造等が形成されてもよい。このうち、カーボン層は、例えば処理ガスとして、C、CH、アセチレン等のガスを用いて成膜することができる。
【0068】
上述の実施形態では、ドライクリーニング時のクリーニングガスをNF等としたが、このほか、SF、F、CF、CHxFy等のフッ素系ガスを用いてもよい。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0070】
1…プラズマ処理装置、11…チャンバ、12…シャワーヘッド、13…ヒータペデスタル、13s,13sa,13sb,13sc,15s,15sa,15sb,15sc…側面電極、13w…下部電極、16g…高周波電源、16ms,16mu…制御回路、17…制御装置、Dc…フッ化物、Dp…堆積膜、Ds…シーズニング膜、W…ウェハ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7