(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/78 20060101AFI20220620BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20220620BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
H01L29/78 654Z
H01L29/78 652B
H01L29/78 652F
H01L29/78 652J
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 655E
H01L29/78 655G
(21)【出願番号】P 2018175440
(22)【出願日】2018-09-19
【審査請求日】2020-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】岩鍜治 陽子
(72)【発明者】
【氏名】末代 知子
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 剛史
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-162855(JP,A)
【文献】特開2017-139328(JP,A)
【文献】国際公開第2005/109521(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336、27/04、
29/12、29/739、29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面を有する半導体層と、
前記半導体層の中に設けられた第1導電形の第1の半導体領域と、
前記半導体層の中に、前記第1の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第2導電形の第2の半導体領域と、
前記半導体層の中に、前記第2の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第1導電形の第3の半導体領域と、
前記第3の半導体領域を貫通し前記第2の半導体領域に達する第1のトレンチと、
前記第1のトレンチの中に設けられた第1のゲート電極と、
前記第1のゲート電極と前記半導体層との間に設けられた第1のゲート絶縁膜と、
前記第3の半導体領域を貫通し前記第2の半導体領域に達する第2のトレンチと、
前記第2のトレンチの中に設けられた第2のゲート電極と、
前記第2のゲート電極と前記半導体層との間に設けられた第2のゲート絶縁膜と、
前記半導体層の中に、前記第3の半導体領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第1のゲート絶縁膜に接し、前記第2のゲート絶縁膜と離間した第2導電形の第4の半導体領域と、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第4の半導体領域に電気的に接続された第1の電極と、
前記半導体層の前記第2の面の側に設けられ、前記第1の半導体領域に電気的に接続された第2の電極と、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第1のゲート電極と電気的に接続され、第1のゲート電圧が印加される第1のゲート電極パッドと、
前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第2のゲート電極と電気的に接続され、第2のゲート電圧が印加される第2のゲート電極パッドと、を備え、
前記第1のゲート電圧をターンオン電圧からターンオフ電圧に変化させる前に、前記第2のゲート電圧を第1の電圧から第2の電圧に変化させ、前記第2の電圧は、第1導電形がp形の場合には負電圧であり、第1導電形がn形の場合には正電圧である半導体装置。
【請求項2】
前記半導体層の中に、前記第2の半導体領域と前記第3の半導体領域との間に設けられ、前記第2の半導体領域よりも第2導電形不純物濃度の高い第2導電形の第5の半導体領域を、更に備える請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記半導体層の中に、前記第2の半導体領域と前記第5の半導体領域との間に設けられた第1導電形の第6の半導体領域を、更に備える請求項2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2のゲート電極パッドに前記第2の電圧が印加されることにより、前記第2のゲート絶縁膜に接する前記第2の半導体領域に反転層が形成される請求項1ないし請求項3いずれか一項記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2のゲート電極パッドに前記第2の電圧が印加されることにより、前記第2のゲート絶縁膜に接する前記第5の半導体領域に反転層が形成される請求項2記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1のゲート電圧に前記ターンオン電圧が印加されている際の前記第1の電圧の絶対値は、前記ターンオン電圧の絶対値よりも小さい請求項1ないし請求項5いずれか一項記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力用の半導体装置の一例として、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)がある。IGBTは、例えば、コレクタ電極上に、p形のコレクタ領域、n形のドリフト領域、p形のベース領域が設けられる。そして、p形のベース領域を貫通し、n形のドリフト領域に達するトレンチ内に、ゲート絶縁膜を間に挟んでゲート電極が設けられる。さらに、p形のベース領域表面のトレンチに隣接する領域に、エミッタ電極に接続されるn形のエミッタ領域が設けられる。
【0003】
IGBTでは、ゲート電極に閾値電圧以上の正電圧が印加されることにより、p形のベース領域にチャネルが形成される。そして、n形のエミッタ領域からn形のドリフト領域に電子が注入されると同時に、コレクタ領域からn形のドリフト領域にホールが注入される。これにより、コレクタ電極とエミッタ電極間に電子とホールをキャリアとする電流が流れる。
【0004】
IGBTのオン抵抗を低減するためには、オン状態のn形のドリフト領域のキャリア濃度を大きくすることが有効である。一方、IGBTのターンオフ時に、n形のドリフト領域のキャリアの排出が遅くなると、ターンオフ時間が長くなり、スイッチング損失が増大する。オン抵抗の低減と、スイッチング損失の低減の両立を図る方法として、ダブルゲート駆動が提案されている。ダブルゲート駆動は、ゲートの駆動系統を2系統にし、2つのゲートの駆動タイミングを変えることで、IGBTのスイッチング時間を短縮し、スイッチング損失を低減させる技術である。したがって、オン抵抗の低減と、スイッチング損失の低減の両立を図ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-251296号公報
【文献】特開2013-98415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、スイッチング損失の低減を可能とする半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の半導体装置は、第1の面と、前記第1の面と対向する第2の面を有する半導体層と、前記半導体層の中に設けられた第1導電形の第1の半導体領域と、前記半導体層の中に、前記第1の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第2導電形の第2の半導体領域と、前記半導体層の中に、前記第2の半導体領域と前記第1の面との間に設けられた第1導電形の第3の半導体領域と、前記第3の半導体領域を貫通し前記第2の半導体領域に達する第1のトレンチと、前記第1のトレンチの中に設けられた第1のゲート電極と、前記第1のゲート電極と前記半導体層との間に設けられた第1のゲート絶縁膜と、前記第3の半導体領域を貫通し前記第2の半導体領域に達する第2のトレンチと、前記第2のトレンチの中に設けられた第2のゲート電極と、前記第2のゲート電極と前記半導体層との間に設けられた第2のゲート絶縁膜と、前記半導体層の中に、前記第3の半導体領域と前記第1の面との間に設けられ、前記第1のゲート絶縁膜に接し、前記第2のゲート絶縁膜と離間した第2導電形の第4の半導体領域と、前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第4の半導体領域に電気的に接続された第1の電極と、前記半導体層の前記第2の面の側に設けられ、前記第1の半導体領域に電気的に接続された第2の電極と、前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第1のゲート電極と電気的に接続され、第1のゲート電圧が印加される第1のゲート電極パッドと、前記半導体層の前記第1の面の側に設けられ、前記第2のゲート電極と電気的に接続され、第2のゲート電圧が印加される第2のゲート電極パッドと、を備え、前記第1のゲート電圧をターンオン電圧からターンオフ電圧に変化させる前に、前記第2のゲート電圧を第1の電圧から第2の電圧に変化させ、前記第2の電圧は、前記第1導電形がp形の場合には負電圧であり、前記第1導電形がn形の場合には正電圧である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】第1の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図。
【
図3】第1の実施形態の半導体装置の一部の模式上面図。
【
図4】第1の実施形態の半導体装置の駆動方法の説明図。
【
図5】第2の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図。
【
図6】第2の実施形態の半導体装置の駆動方法の説明図。
【
図7】第2の実施形態の半導体装置のシミュレーション結果を示す図。
【
図8】第3の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図。
【
図9】第4の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図。
【
図10】第4の実施形態の半導体装置の一部の模式上面図。
【
図11】第5の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図。
【
図12】第5の実施形態の半導体装置の一部の模式上面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態を説明する。なお、以下の説明では、同一又は類似の部材などには同一の符号を付し、一度説明した部材などについては適宜その説明を省略する。
【0010】
本明細書中、n+形、n形、n-形との表記がある場合、n+形、n形、n-形の順でn形の不純物濃度が低くなっていることを意味する。また、p+形、p形、p-形の表記がある場合、p+形、p形、p-形の順で、p形の不純物濃度が低くなっていることを意味する。
【0011】
本明細書中、「深さ」とは第1の面P1から第2の面P2に向かう方向の深さと定義する。
【0012】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の半導体装置は、第1の面と、第1の面と対向する第2の面を有する半導体層と、半導体層の中に設けられた第1導電形の第1の半導体領域と、半導体層の中に、第1の半導体領域と第1の面との間に設けられた第2導電形の第2の半導体領域と、半導体層の中に、第2の半導体領域と第1の面との間に設けられた第1導電形の第3の半導体領域と、第3の半導体領域を貫通し第2の半導体領域に達する第1のトレンチと、第1のトレンチの中に設けられた第1のゲート電極と、第1のゲート電極と半導体層との間に設けられた第1のゲート絶縁膜と、第3の半導体領域を貫通し第2の半導体領域に達する第2のトレンチと、第2のトレンチの中に設けられた第2のゲート電極と、第2のゲート電極と半導体層との間に設けられた第2のゲート絶縁膜と、半導体層の中に、第3の半導体領域と第1の面との間に設けられ、第1のゲート絶縁膜に接し、第2のゲート絶縁膜と離間した第2導電形の第4の半導体領域と、半導体層の第1の面の側に設けられ、第4の半導体領域に電気的に接続された第1の電極と、半導体層の第2の面の側に設けられ第1の半導体領域に電気的に接続された第2の電極と、半導体層の第1の面の側に設けられ、第1のゲート電極と電気的に接続され、第1のゲート電圧が印加される第1のゲート電極パッドと、半導体層の第1の面の側に設けられ、第2のゲート電極と電気的に接続され、第2のゲート電圧が印加される第2のゲート電極パッドと、を備え、第1のゲート電圧をターンオン電圧からターンオフ電圧に変化させる前に、第2のゲート電圧を第1の電圧から第2の電圧に変化させ、第2の電圧は、第1導電形がp形の場合には負電圧であり、第1導電形がn形の場合には正電圧である。
【0013】
図1は、第1の実施形態の半導体装置の模式図である。
図1は、第1のトレンチ、第2のトレンチ、第1のゲート電極、第2のゲート電極、第1のゲート電極パッド、及び、第2のゲート電極パッドの配置と接続関係を示す。
図2は、第1の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図である。
図3は、第1の実施形態の半導体装置の一部の模式上面図である。
図3は、第1の面P1における上面図である。
図2は、
図3のAA’断面である。
【0014】
第1の実施形態の半導体装置は、半導体層に形成されたトレンチの中にゲート電極を備えるトレンチゲート形のIGBT100である。第1の実施形態の半導体装置は、ダブルゲート駆動が可能なIGBT100である。以下、第1導電形がp形、第2導電形がn形である場合を例に説明する。
【0015】
第1の実施形態のIGBT100は、半導体層10、エミッタ電極12(第1の電極)、コレクタ電極14(第2の電極)、絶縁層60、第1のゲート電極パッド101、第2のゲート電極パッド102を備える。
【0016】
半導体層10の中には、第1のゲートトレンチ21(第1のトレンチ)、第2のゲートトレンチ22(第2のトレンチ)、コレクタ領域28(第1の半導体領域)、バッファ領域30、ドリフト領域32(第2の半導体領域)、ベース領域34(第3の半導体領域)、エミッタ領域36(第4の半導体領域)、コンタクト領域38、第1のゲート絶縁膜41、第2のゲート絶縁膜42、第1のゲート電極51、第2のゲート電極52が設けられる。
【0017】
半導体層10は、第1の面P1と、第1の面P1に対向する第2の面P2とを有する。半導体層10は、例えば、単結晶シリコンである。半導体層10の膜厚は、例えば、40μm以上700μm以下である。
【0018】
エミッタ電極12は、半導体層10の第1の面P1の側に設けられる。エミッタ電極12の少なくとも一部は半導体層10の第1の面P1に接する。エミッタ電極12は、例えば、金属である。
【0019】
エミッタ電極12は、エミッタ領域36及びコンタクト領域38に電気的に接続される。エミッタ電極12には、エミッタ電圧が印加される。エミッタ電圧は、例えば、0Vである。
【0020】
コレクタ電極14は、半導体層10の第2の面P2の側に設けられる。コレクタ電極14の少なくとも一部は半導体層10の第2の面P2に接する。コレクタ電極14は、例えば、金属である。
【0021】
コレクタ電極14は、p形のコレクタ領域28に電気的に接続される。コレクタ電極14には、コレクタ電圧が印加される。コレクタ電圧は、例えば、200V以上6500V以下である。
【0022】
コレクタ領域28は、p形の半導体領域である。コレクタ領域28は、コレクタ電極14に電気的に接続される。コレクタ領域28は、コレクタ電極14に接する。
【0023】
コレクタ領域28は、IGBT100のオン状態の際にホールの供給源となる。
【0024】
バッファ領域30は、n形の半導体領域である。バッファ領域30は、コレクタ領域28と第1の面P1との間に設けられる。バッファ領域30は、IGBT100のオフ状態の際に、空乏層の伸びを抑制する機能を有する。バッファ領域30を設けない構成とすることも可能である。
【0025】
ドリフト領域32は、n-形の半導体領域である。ドリフト領域32は、コレクタ領域28と第1の面P1との間に設けられる。ドリフト領域32は、バッファ領域30と第1の面P1との間に設けられる。ドリフト領域32のn形不純物濃度は、バッファ領域30のn形不純物濃度より低い。
【0026】
ドリフト領域32は、IGBT100のオン状態の際にオン電流の経路となる。ドリフト領域32は、IGBT100のオフ状態の際に空乏化し、IGBT100の耐圧を維持する機能を有する。
【0027】
ベース領域34は、p形の半導体領域である。ベース領域34は、ドリフト領域32と第1の面P1との間に設けられる。ベース領域34の第1の面P1から第2の面P2に向かう方向の深さは、例えば、6μm以下である。ベース領域34は、IGBT100のオン状態の際に反転層が形成され、トランジスタのチャネル領域として機能する。
【0028】
エミッタ領域36は、n+形の半導体領域である。エミッタ領域36は、ベース領域34と第1の面P1との間に設けられる。エミッタ領域36は、第1の面P1において、第1の方向に延伸する。
【0029】
エミッタ領域36は、第1のゲート絶縁膜41に接する。エミッタ領域36は、第2のゲート絶縁膜42と離間する。エミッタ領域36は、第2のゲート絶縁膜42と接していない。エミッタ領域36のn形不純物濃度は、ドリフト領域32のn形不純物濃度より高い。
【0030】
エミッタ領域36は、エミッタ電極12に電気的に接続される。エミッタ領域36は、エミッタ電極12に接する。エミッタ領域36は、第1のゲート電極51を有するトランジスタのオン状態の際に電子の供給源となる。
【0031】
コンタクト領域38は、p+形の半導体領域である。コンタクト領域38は、ベース領域34と第1の面P1との間に設けられる。コンタクト領域38は、第1の面P1において、第1の方向に延伸する。コンタクト領域38は、エミッタ電極12に電気的に接続される。
【0032】
第1のゲートトレンチ21は、
図3に示すように、第1の面P1において、第1の面P1に平行な第1の方向に延伸する。第1のゲートトレンチ21は、ストライプ形状を有する。複数の第1のゲートトレンチ21は、第1の方向に直交する第2の方向に繰り返し配置される。
【0033】
第1のゲートトレンチ21は、ベース領域34を貫通し、ドリフト領域32に達する。第1のゲートトレンチ21の深さは、例えば、4μm以上6μm以下である。
【0034】
第1のゲート電極51は、第1のゲートトレンチ21の中に設けられる。第1のゲート電極51は、例えば、半導体又は金属である。第1のゲート電極51は、例えば、n形不純物又はp形不純物を含む、アモルファスシリコン又は多結晶シリコンである。第1のゲート電極51は、第1のゲート電極パッド101に電気的に接続される。
【0035】
第1のゲート絶縁膜41は、第1のゲート電極51と半導体層10との間に設けられる。第1のゲート絶縁膜41は、第1のゲート電極51とドリフト領域32との間、第1のゲート電極51とベース領域34との間、及び、第1のゲート電極51とエミッタ領域36との間に設けられる。第1のゲート絶縁膜41は、ドリフト領域32、ベース領域34、及び、エミッタ領域36に接する。第1のゲート絶縁膜41は、例えば、酸化シリコンである。
【0036】
第2のゲートトレンチ22は、
図3に示すように、第1の面P1において、第1の面P1に平行な第1の方向に延伸する。第2のゲートトレンチ22は、ストライプ形状を有する。第2のゲートトレンチ22は、第1の方向に直交する第2の方向に繰り返し配置される。
【0037】
第2のゲートトレンチ22は、ベース領域34を貫通し、ドリフト領域32に達する。第2のゲートトレンチ22の深さは、例えば、4μm以上6μm以下である。
【0038】
第2のゲートトレンチ22は、例えば、第1のゲートトレンチ21と同一の形状を有する。
【0039】
第2のゲート電極52は、第2のゲートトレンチ22の中に設けられる。第2のゲート電極52は、例えば、半導体又は金属である。第2のゲート電極52は、例えば、n形不純物又はp形不純物を含む、アモルファスシリコン、又は、多結晶シリコンである。第2のゲート電極52は、第2のゲート電極パッド102に電気的に接続される。
【0040】
第2のゲート絶縁膜42は、第2のゲート電極52と半導体層10との間に設けられる。第2のゲート絶縁膜42は、第2のゲート電極52とドリフト領域32との間、第2のゲート電極52とベース領域34との間、及び、第2のゲート電極52とコンタクト領域38との間に設けられる。第2のゲート絶縁膜42は、ドリフト領域32、及び、ベース領域34に接する。第2のゲート絶縁膜42は、エミッタ領域36に接しない。第2のゲート絶縁膜42は、例えば、酸化シリコンである。
【0041】
絶縁層60は、第1のゲート電極51とエミッタ電極12との間、及び、第2のゲート電極52とエミッタ電極12との間に設けられる。絶縁層60は、第1のゲート電極51とエミッタ電極12との間、及び、第2のゲート電極52とエミッタ電極12との間を電気的に分離する。絶縁層60は、例えば、酸化シリコンである。
【0042】
第1のゲート電極パッド101は、半導体層10の第1の面P1の側に設けられる。第1のゲート電極パッド101は、第1のゲート電極51に電気的に接続される。第1のゲート電極パッド101と第1のゲート電極51は、例えば、図示しない金属配線で接続される。第1のゲート電極パッド101には、第1のゲート電圧(Vg1)が印加される。
【0043】
第2のゲート電極パッド102は、第2のゲート電極52に電気的に接続される。第2のゲート電極パッド102と第2のゲート電極52は、例えば、図示しない金属配線で接続される。第2のゲート電極パッド102には、第2のゲート電圧(Vg2)が印加される。
【0044】
次に、IGBT100の駆動方法について説明する。
【0045】
図4は、第1の実施形態の半導体装置の駆動方法の説明図である。
図4は、第1のゲート電極パッド101に印加される第1のゲート電圧(Vg1)と、第2のゲート電極パッド102に印加される第2のゲート電圧(Vg2)のタイミングチャートである。
【0046】
以下、第1のゲート電極51を有するトランジスタと、第2のゲート電極52を有する構造は、明確に分離された構造ではないが、動作説明の便宜上、第1のゲート電極51を有するトランジスタという記載をするものとする。
【0047】
IGBT100のオフ状態では、例えば、エミッタ電極12には、エミッタ電圧が印加される。エミッタ電圧は、例えば、0Vである。コレクタ電極14には、コレクタ電圧が印加される。コレクタ電圧は、例えば、200V以上6500V以下である。
【0048】
IGBT100のオフ状態では、第1のゲート電極パッド101には、ターンオフ電圧(Voff)が印加されている。第1のゲート電圧(Vg1)がターンオフ電圧(Voff)となる。したがって、第1のゲート電極51にもターンオフ電圧(Voff)が印加されている。
【0049】
ターンオフ電圧(Voff)は、第1のゲート電極51を有するトランジスタがオン状態とならない閾値電圧未満の電圧であり、例えば、0V又は負電圧である。
【0050】
オフ状態では、第1のゲート電極51と対向し、第1のゲート絶縁膜41に接するベース領域34には、n形反転層は形成されない。
【0051】
IGBT100のオフ状態では、第2のゲート電極パッド102には、第1の電圧(V1)が印加されている。第1の電圧(V1)は、第2のゲート電極52と対向し、第2のゲート絶縁膜42に接するドリフト領域32にp形反転層が形成されない電圧である。第1の電圧(V1)は、例えば、0V又は正電圧である。
【0052】
IGBT100をオン状態にする際(
図4の時刻t1)に、第1のゲート電極パッド101にターンオン電圧(Von)を印加する。第1のゲート電圧(Vg1)がターンオン電圧となる。第1のゲート電極51にもターンオン電圧(Von)が印加される。
【0053】
ターンオン電圧(Von)とは、第1のゲート電極51を有するトランジスタの閾値電圧を超える正電圧である。ターンオン電圧(Von)は、例えば、15Vである。第1のゲート電極51へのターンオン電圧(Von)の印加により、第1のゲート電極51を有するトランジスタがオン状態になる。
【0054】
第2のゲート電極パッド102には、引き続き、第1の電圧(V1)が印加される。すなわち、第2のゲート電圧(Vg2)は、引き続き、第1の電圧(V1)となる。
【0055】
IGBT100をオフ状態にする際(
図4の時刻t3)に、第1のゲート電極パッド101にターンオフ電圧(Voff)を印加する。第1のゲート電圧(Vg1)がターンオフ電圧(Voff)となる。
【0056】
第1のゲート電圧(Vg1)をターンオン電圧(Von)からターンオフ電圧(Voff)に変化させる前、すなわち時刻t3の前に、第2のゲート電圧(Vg2)を第1の電圧(V1)から第2の電圧(V2)に変化させる。第2のゲート電極パッド102に印加する電圧を時刻t2に、第1の電圧(V1)から第2の電圧(V2)に変化させる。
【0057】
第2の電圧(V2)は負電圧である。第2の電圧(V2)は、例えば、-15V以上0V未満である。第2のゲート電極パッド102に第2の電圧(V2)が印加されることにより、第2のゲート絶縁膜42に接するドリフト領域32にp形反転層が形成される。
【0058】
時刻t2と時刻t3との間は、例えば、0.1マイクロ秒以上10マイクロ秒以下である。時刻t2と時刻t3との間は、例えば、1マイクロ秒である。
【0059】
次に、第1の実施形態の半導体装置の作用及び効果について説明する。
【0060】
IGBTのオン抵抗を低減するためには、オン状態のドリフト領域のキャリア濃度を大きくすることが有効である。一方、IGBTのターンオフ時に、ドリフト領域からのキャリアの排出が遅くなると、ターンオフ時間が長くなり、スイッチング損失が増大する。したがって、オン抵抗の低減と、スイッチング損失の低減の両立を図ることが望まれる。
【0061】
第1の実施形態のIGBT100は、第1のゲートトレンチ21内の第1のゲート電極51と、第2のゲートトレンチ22内の第2のゲート電極52とを備える。第1のゲート電極51に印加される第1のゲート電圧(Vg1)と、第2のゲート電極52に印加される第2のゲート電圧(Vg2)は独立に制御される。
【0062】
IGBT100は、第1のゲート電圧(Vg1)をターンオン電圧(Von)からターンオフ電圧(Voff)に変化させる前に、第2のゲート電圧(Vg2)を負電圧にする。第2のゲート電圧(Vg2)を負電圧にすることにより、第2のゲート電極52と対向し、第2のゲート絶縁膜42に接するドリフト領域32にp形反転層が形成される。
【0063】
ドリフト領域32のホールが、このp形反転層を通ってエミッタ電極12へ排出される。したがって、ドリフト領域32の第1の面P1側のキャリア蓄積量が少なくなる。
【0064】
第1のゲート電圧(Vg1)をターンオン電圧(Von)からターンオフ電圧(Voff)に変化させる際(
図4の時刻t3)には、既に、ドリフト領域32の第1の面P1側のキャリア蓄積量が少なくなっているため、ターンオフ時間が短くなる。よって、IGBT100のスイッチング損失を低減することが可能となる。
【0065】
以上、第1の実施形態のIGBTによれば、スイッチング損失の低減が可能となる。
【0066】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の半導体装置は、半導体層の中に、第2の半導体領域と第3の半導体領域との間に設けられ、第2の半導体領域よりも第2導電形不純物濃度の高い第2導電形の第5の半導体領域を、更に備える点で、第1の実施形態の半導体装置と異なっている。以下、第1の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0067】
図5は、第2の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図である。
【0068】
第2の実施形態の半導体装置は、半導体層に形成されたトレンチの中にゲート電極を備えるトレンチゲート形のIGBT200である。第2の実施形態の半導体装置は、ダブルゲート駆動が可能なIGBT200である。以下、第1導電形がp形、第2導電形がn形である場合を例に説明する。
【0069】
第2の実施形態のIGBT200は、半導体層10、エミッタ電極12(第1の電極)、コレクタ電極14(第2の電極)、絶縁層60、第1のゲート電極パッド101、第2のゲート電極パッド102を備える。
【0070】
半導体層10の中には、第1のゲートトレンチ21(第1のトレンチ)、第2のゲートトレンチ22(第2のトレンチ)、コレクタ領域28(第1の半導体領域)、バッファ領域30、ドリフト領域32(第2の半導体領域)、ベース領域34(第3の半導体領域)、エミッタ領域36(第4の半導体領域)、コンタクト領域38、第1のゲート絶縁膜41、第2のゲート絶縁膜42、第1のゲート電極51、第2のゲート電極52、バリア領域70(第5の半導体領域)が設けられる。
【0071】
バリア領域70は、n形の半導体領域である。バリア領域70は、ドリフト領域32とベース領域34との間に設けられる。バリア領域70のn形不純物濃度は、ドリフト領域32のn形不純物濃度より高い。バリア領域70のn形不純物の最大濃度は、ドリフト領域32のn形不純物濃度の100倍以上であることが好ましい。
【0072】
ドリフト領域32よりもn形不純物濃度の高いバリア領域70を、第1の面P1側に設けることにより、IGBT200がオン状態の際に、ドリフト領域32の中のホールがエミッタ電極12への排出が制限される。したがって、ドリフト領域の第1の面P1側のキャリア濃度が高くなる。よって、IGBT200のオン抵抗が低減する。
【0073】
次に、IGBT200の駆動方法について説明する。
【0074】
図6は、第2の実施形態の半導体装置の駆動方法の説明図である。
図6は、第1のゲート電極パッド101に印加される第1のゲート電圧(Vg1)と、第2のゲート電極パッド102に印加される第2のゲート電圧(Vg2)のタイミングチャートである。
【0075】
以下、第1のゲート電極51を有するトランジスタと、第2のゲート電極52を有する構造は、明確に分離された構造ではないが、動作説明の便宜上、第1のゲート電極51を有するトランジスタという記載をするものとする。
【0076】
IGBT200のオフ状態では、例えば、エミッタ電極12には、エミッタ電圧が印加される。エミッタ電圧は、例えば、0Vである。コレクタ電極14には、コレクタ電圧が印加される。コレクタ電圧は、例えば、200V以上6500V以下である。
【0077】
IGBT200のオフ状態では、第1のゲート電極パッド101には、ターンオフ電圧(Voff)が印加されている。第1のゲート電圧(Vg1)がターンオフ電圧(Voff)となる。したがって、第1のゲート電極51にもターンオフ電圧(Voff)が印加されている。
【0078】
ターンオフ電圧(Voff)は、第1のゲート電極51を有するトランジスタがオン状態とならない閾値電圧未満の電圧であり、例えば、0V又は負電圧である。
【0079】
オフ状態では、第1のゲート電極51と対向し、第1のゲート絶縁膜41に接するベース領域34には、n形反転層は形成されない。
【0080】
IGBT200のオフ状態では、第2のゲート電極パッド102には、初期電圧(V0)が印加されている。初期電圧(V0)は、例えば、第2のゲート電極52と対向し、第2のゲート絶縁膜42に接するドリフト領域32にp形反転層が形成されない電圧である。初期電圧(V0)は、例えば、0V又は正電圧である。
【0081】
IGBT200をオン状態にする際(
図6の時刻t1)に、第1のゲート電極パッド101にターンオン電圧(Von)を印加する。第1のゲート電圧(Vg1)がターンオン電圧(Von)となる。第1のゲート電極51にもターンオン電圧(Von)が印加される。
【0082】
ターンオン電圧(Von)とは、第1のゲート電極51を有するトランジスタの閾値電圧を超える正電圧である。ターンオン電圧(Von)は、例えば、15Vである。第1のゲート電極51へのターンオン電圧(Von)の印加により、第1のゲート電極51を有するトランジスタがオン状態になる。
【0083】
IGBT200をオン状態にする際(
図6の時刻t1)に、第2のゲート電極パッド102には、第1の電圧(V1)が印加される。第2のゲート電圧(Vg2)は、第1の電圧(V1)となる。
【0084】
第1の電圧(V1)は、例えば、初期電圧(V0)よりも高い正電圧である。第1の電圧(V1)は、例えば、ターンオン電圧(Von)に等しい。第2のゲート電極パッド102に第1の電圧(V1)が印加されることにより、第2のゲート絶縁膜42に接するバリア領域70にn形蓄積層が形成される。
【0085】
IGBT200をオフ状態にする際(
図6の時刻t3)に、第1のゲート電極パッド101にターンオフ電圧(Voff)を印加する。第1のゲート電圧(Vg1)がターンオフ電圧(Voff)となる。
【0086】
第1のゲート電圧(Vg1)をターンオン電圧(Von)からターンオフ電圧(Voff)に変化させる前、すなわち時刻t3の前に、第2のゲート電圧(Vg2)を第1の電圧(V1)から第2の電圧(V2)に変化させる。第2のゲート電極パッド102に印加する電圧を時刻t2に、第1の電圧(V1)から第2の電圧(V2)に変化させる。
【0087】
第2の電圧(V2)は負電圧である。第2の電圧(V2)は、例えば、-15V以上0V未満である。第2のゲート電極パッド102に第2の電圧(V2)が印加されることにより、第2のゲート絶縁膜42に接するドリフト領域32及び第2のゲート絶縁膜42に接するバリア領域70にp形反転層が形成される。
【0088】
時刻t2と時刻t3との間は、例えば、0.1マイクロ秒以上3マイクロ秒以下である。時刻t2と時刻t3との間は、例えば、1マイクロ秒である。
【0089】
次に、第2の実施形態の半導体装置の作用及び効果について説明する。
【0090】
第2の実施形態のIGBT200は、第1のゲートトレンチ21内の第1のゲート電極51と、第2のゲートトレンチ22内の第2のゲート電極52とを備える。第1のゲート電極51に印加される第1のゲート電圧(Vg1)と、第2のゲート電極52に印加される第2のゲート電圧(Vg2)は独立に制御される。
【0091】
IGBT200は、第1のゲート電圧(Vg1)をターンオン電圧(Von)からターンオフ電圧(Voff)に変化させる前に、第2のゲート電圧(Vg2)を負電圧にする。第2のゲート電圧(Vg2)を負電圧にすることにより、第2のゲート電極52と対向し、第2のゲート絶縁膜42に接するドリフト領域32及び第2のゲート絶縁膜42に接するバリア領域70にp形反転層が形成される。
【0092】
第2のゲート電圧(Vg2)を負電圧にすることで、ドリフト領域32よりもn形不純物濃度の高いバリア領域70にもp形反転層を形成することが可能となる。
【0093】
ドリフト領域32のホールが、このp形反転層を通ってエミッタ電極12へ排出される。したがって、ドリフト領域32の第1の面P1側のキャリア蓄積量が少なくなる。
【0094】
第1のゲート電圧(Vg1)をターンオン電圧(Von)からターンオフ電圧(Voff)に変化させる際(
図6の時刻t3)には、既に、ドリフト領域32の第1の面P1側のキャリア蓄積量が少なくなっているため、ターンオフ時間が短くなる。よって、IGBT200のスイッチング損失を低減することが可能となる。
【0095】
上述のように、バリア領域70を設けることで、オン状態の際に、ドリフト領域32の中のホールがエミッタ電極12への排出が制限され、オン抵抗が低減する。更に、IGBT200では、第2のゲート電極パッド102に第1の電圧(V1)が印加されることにより、オン状態の際に、第2のゲート絶縁膜42に接するバリア領域70にn形蓄積層が形成される。n形蓄積層が形成されることで、更に、バリア領域70を通ってエミッタ電極12へホールが排出されることが制限される。したがって、更にオン抵抗が低減する。
【0096】
一般に、バリア領域を設けることで、IGBTのオン抵抗が低減する。しかし、ドリフト領域のキャリア濃度が大きくなるため、ドリフト領域からのホールの排出が遅くなり、ターンオフ時間が長くなる。第2の実施形態のIGBT200では、ターンオフ時にバリア領域70にもp形反転層を形成することで、ドリフト領域32からのホールの排出が促進され、ターンオフ時間を短くすることが可能となる。
【0097】
なお、第2の実施形態のIGBT200においても、第1の電圧(V1)を、例えば、0Vとすることも可能である。
【0098】
図7は、第2の実施形態の半導体装置のシミュレーション結果を示す図である。
図7は、IGBT200のターンオフ時のスイッチング損失のシミュレーション結果を示す。
【0099】
図7の横軸は、第2のゲート電圧(Vg2)を第1の電圧(V1)から第2の電圧(V2)に変化させた時刻(
図6中の時刻t2)から、第1のゲート電圧(Vg1)をターンオン電圧(Von)からターンオフ電圧(Voff)に変化させる時刻(
図6中の時刻t3)までの時間(t3-t2)である。
図7の横軸は、ターンオフ時のスイッチング損失である。
【0100】
なお、点線がバリア領域70のn型不純物の最大濃度がドリフト領域32のn型不純物濃度の500倍の場合、実線が1500倍の場合である。
【0101】
t3-t2=0秒、つまり、第2のゲート電圧(Vg2)を第1の電圧(V1)から第2の電圧(V2)に変化させると同時に、第1のゲート電圧(Vg1)をターンオン電圧(Von)からターンオフ電圧(Voff)に変化させた場合のスイッチング損失に対し、t3-t2=4マイクロ秒以上のスイッチング損失は、約20%低減することが分かる。
【0102】
また、t3-t2=0秒の時には、バリア領域70のn型不純物濃度が濃い場合に、スイッチング損失が大きくなるが、t3-t2=4マイクロ秒以上では、n型不純物濃度によるスイッチング損失の差は見られない。
【0103】
以上より、第2の実施形態のIGBTによれば、バリア領域70を設けた場合でも、ターンオフ時のスイッチング損失が低減できることが分かる。
【0104】
一般に、バリア領域のn型不純物濃度が高くなると、ターンオフ時にIGBTの破壊が生ずるおそれがある。第2の実施形態のIGBT200によれば、ダブルゲート駆動を行うことによって、ドリフト領域32のキャリア濃度をあらかじめ低減させておくことで、ターンオフ時の破壊が抑制される。
【0105】
以上、第2の実施形態のIGBTによれば、第1の実施形態のIGBTと同様、スイッチング損失の低減が可能となる。更に、バリア領域70を設けることで、オン抵抗の低減が可能となる。
【0106】
(第3の実施形態)
第3の実施形態の半導体装置は、半導体層の中に、第2の半導体領域と第5の半導体領域との間に設けられた第1導電形の第6の半導体領域を、更に備える点で、第2の実施形態の半導体装置と異なっている。以下、第1の実施形態及び第2の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0107】
図8は、第3の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図である。
【0108】
第3の実施形態の半導体装置は、半導体層に形成されたトレンチの中にゲート電極を備えるトレンチゲート形のIGBT300である。第3の実施形態の半導体装置は、ダブルゲート駆動が可能なIGBT300である。以下、第1導電形がp形、第2導電形がn形である場合を例に説明する。
【0109】
第3の実施形態のIGBT300は、半導体層10、エミッタ電極12(第1の電極)、コレクタ電極14(第2の電極)、絶縁層60、第1のゲート電極パッド101、第2のゲート電極パッド102を備える。
【0110】
半導体層10の中には、第1のゲートトレンチ21(第1のトレンチ)、第2のゲートトレンチ22(第2のトレンチ)、コレクタ領域28(第1の半導体領域)、バッファ領域30、ドリフト領域32(第2の半導体領域)、ベース領域34(第3の半導体領域)、エミッタ領域36(第4の半導体領域)、コンタクト領域38、第1のゲート絶縁膜41、第2のゲート絶縁膜42、第1のゲート電極51、第2のゲート電極52、バリア領域70(第5の半導体領域)、p形領域80(第6の半導体領域)が設けられる。
【0111】
バリア領域70は、n形の半導体領域である。バリア領域70は、ドリフト領域32とベース領域34との間に設けられる。バリア領域70のn形不純物濃度は、ドリフト領域32のn形不純物濃度より高い。
【0112】
p形領域80は、p形の半導体領域である。p形領域80は、ドリフト領域32とバリア領域70との間に設けられる。p形領域80を設けることにより、IGBT300のターンオフ時の破壊が抑制され、信頼性が向上する。なお、IGBT300のターンオフ時の破壊は、ダブルゲート駆動を行うことによって、ドリフト領域32のキャリア濃度を低減させておくことによっても抑制されている。
【0113】
以上、第3の実施形態のIGBTによれば、第2の実施形態のIGBTと同様、スイッチング損失の低減及びオン抵抗の低減が可能となる。更に、ターンオフ時の破壊が抑制され、信頼性が向上する。
【0114】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の半導体装置は、第1の面と、第1の面と対向する第2の面を有する半導体層と、半導体層の中に設けられた第1導電形の第1の半導体領域と、半導体層の中に、第1の半導体領域と第1の面との間に設けられた第2導電形の第2の半導体領域と、半導体層の中に、第2の半導体領域と第1の面との間に設けられた第1導電形の第3の半導体領域と、第3の半導体領域を貫通し第2の半導体領域に達する第1のトレンチと、第1のトレンチの中に設けられた第1のゲート電極と、第1のゲート電極と半導体層との間に設けられた第1のゲート絶縁膜と、第3の半導体領域を貫通し第2の半導体領域に達する第2のトレンチと、第2のトレンチの中に設けられた第2のゲート電極と、第2のゲート電極と半導体層との間に設けられた第2のゲート絶縁膜と、半導体層の中に、第3の半導体領域と第1の面との間に設けられ、第1のゲート絶縁膜及び第2のゲート絶縁膜に接した第2導電形の第4の半導体領域と、半導体層の中に、第2の半導体領域と第3の半導体領域との間に設けられ、第2の半導体領域よりも第2導電形不純物濃度の高い第2導電形の第5の半導体領域と、半導体層の第1の面の側に設けられ、第4の半導体領域に電気的に接続された第1の電極と、半導体層の第2の面の側に設けられ第1の半導体領域に電気的に接続された第2の電極と、半導体層の第1の面の側に設けられ、第1のゲート電極と電気的に接続され、第1のゲート電圧が印加される第1のゲート電極パッドと、半導体層の第1の面の側に設けられ、第2のゲート電極と電気的に接続され、第2のゲート電圧が印加される第2のゲート電極パッドと、を備え、第1のゲート電圧をターンオン電圧からターンオフ電圧に変化させる前に、第2のゲート電圧を第1の電圧から第2の電圧に変化させ、第2の電圧は、第1導電形がp形の場合には負電圧であり、第1導電形がn形の場合には正電圧である。
【0115】
第4の実施形態の半導体装置は、第2導電形の第4の半導体領域が第2のゲート絶縁膜にも接する点で、第2の実施形態の半導体装置と異なっている。以下、第1の実施形態及び第2の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0116】
図9は、第4の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図である。
図10は、第4の実施形態の半導体装置の一部の模式上面図である。
図10は、第1の面P1における上面図である。
図9は、
図10のBB’断面である。
【0117】
第4の実施形態の半導体装置は、半導体層に形成されたトレンチの中にゲート電極を備えるトレンチゲート形のIGBT400である。第4の実施形態の半導体装置は、ダブルゲート駆動が可能なIGBT400である。以下、第1導電形がp形、第2導電形がn形である場合を例に説明する。
【0118】
第4の実施形態のIGBT400は、半導体層10、エミッタ電極12(第1の電極)、コレクタ電極14(第2の電極)、絶縁層60、第1のゲート電極パッド101、第2のゲート電極パッド102を備える。
【0119】
半導体層10の中には、第1のゲートトレンチ21(第1のトレンチ)、第2のゲートトレンチ22(第2のトレンチ)、コレクタ領域28(第1の半導体領域)、バッファ領域30、ドリフト領域32(第2の半導体領域)、ベース領域34(第3の半導体領域)、エミッタ領域36(第4の半導体領域)、コンタクト領域38、第1のゲート絶縁膜41、第2のゲート絶縁膜42、第1のゲート電極51、第2のゲート電極52、バリア領域70(第5の半導体領域)が設けられる。
【0120】
エミッタ領域36は、n+形の半導体領域である。エミッタ領域36は、ベース領域34と第1の面P1との間に設けられる。エミッタ領域36は、第1の面P1において、第1の方向に延伸する。エミッタ領域36は、第1のゲート絶縁膜41及び第2のゲート絶縁膜42に接する。エミッタ領域36のn形不純物濃度は、ドリフト領域32のn形不純物濃度より高い。
【0121】
第4の実施形態のIGBT400の駆動方法は、例えば、第1の実施形態のIGBT100の駆動方法と同様である。
【0122】
すなわち、第1のゲート電圧(Vg1)をターンオン電圧(Von)からターンオフ電圧(Voff)に変化させる前、すなわち時刻t3の前に、第2のゲート電圧(Vg2)を第1の電圧(V1)から第2の電圧(V2)に変化させる。第2のゲート電極パッド102に印加する電圧を時刻t2に、第1の電圧(V1)から第2の電圧(V2)に変化させる。
【0123】
第2の電圧(V2)は負電圧である。第2の電圧(V2)は、例えば、-15V以上0V未満である。
【0124】
第1の電圧(V1)は、例えば、ターンオン電圧(Von)未満の電圧である。第1の電圧(V1)は、例えば、第2のゲート電極52を有するトランジスタの閾値電圧未満の電圧である。
【0125】
なお、第1の電圧(V1)を、例えば、ターンオン電圧(Von)と等しくすることも可能である。この場合、エミッタ領域36が第2のゲート絶縁膜42に接するため、第1のゲート電極51を有するトランジスタに加え、第2のゲート電極52を有するトランジスタもオン状態となる。
【0126】
以上、第4の実施形態のIGBTによれば、第2の実施形態のIGBTと同様、スイッチング損失の低減及びオン抵抗の低減が可能となる。
【0127】
(第5の実施形態)
第5の実施形態の半導体装置は、第4の半導体領域のパターンが異なる点で、第4の実施形態の半導体装置と異なっている。以下、第4の実施形態と重複する内容については、一部記述を省略する。
【0128】
図11は、第5の実施形態の半導体装置の一部の模式断面図である。
図12は、第5の実施形態の半導体装置の一部の模式上面図である。
図12は、第1の面P1における上面図である。
図11は、
図12のCC’断面である。
【0129】
第5の実施形態の半導体装置は、半導体層に形成されたトレンチの中にゲート電極を備えるトレンチゲート形のIGBT500である。第5の実施形態の半導体装置は、ダブルゲート駆動が可能なIGBT500である。以下、第1導電形がp形、第2導電形がn形である場合を例に説明する。
【0130】
第5の実施形態のIGBT500は、半導体層10、エミッタ電極12(第1の電極)、コレクタ電極14(第2の電極)、絶縁層60、第1のゲート電極パッド101、第2のゲート電極パッド102を備える。
【0131】
半導体層10の中には、第1のゲートトレンチ21(第1のトレンチ)、第2のゲートトレンチ22(第2のトレンチ)、コレクタ領域28(第1の半導体領域)、バッファ領域30、ドリフト領域32(第2の半導体領域)、ベース領域34(第3の半導体領域)、エミッタ領域36(第4の半導体領域)、コンタクト領域38、第1のゲート絶縁膜41、第2のゲート絶縁膜42、第1のゲート電極51、第2のゲート電極52、バリア領域70(第5の半導体領域)が設けられる。
【0132】
エミッタ領域36は、n+形の半導体領域である。エミッタ領域36は、ベース領域34と第1の面P1との間に設けられる。エミッタ領域36は、第1の面P1において、第2の方向に延伸する。エミッタ領域36は、第1の面P1において、第1の方向にコンタクト領域38と交互に配置される。
【0133】
エミッタ領域36は、第1のゲート絶縁膜41及び第2のゲート絶縁膜42に接する。エミッタ領域36のn形不純物濃度は、ドリフト領域32のn形不純物濃度より高い。
【0134】
第5の実施形態のIGBT500の駆動方法は、例えば、第4の実施形態のIGBT400の駆動方法と同様である。
【0135】
以上、第5の実施形態のIGBTによれば、第4の実施形態のIGBTと同様、スイッチング損失の低減及びオン抵抗の低減が可能となる。
【0136】
第1ないし第5の実施形態においては、半導体層が単結晶シリコンである場合を例に説明したが、半導体層は単結晶シリコンに限られることはない。例えば、単結晶炭化珪素など、その他の単結晶半導体であっても構わない。
【0137】
第1ないし第5の実施形態においては、トレンチが平行に配置されているストライプ形状の場合を例に説明したが、トレンチが交差するメッシュ形状又はドット形状のトレンチにも本発明を適用することは可能である。
【0138】
第1ないし第5の実施形態においては、第1導電形がp形、第2導電形がn形である場合を例に説明したが、第1導電形をn形、第2導電形をp形とすることも可能である。第1導電形をn形、第2導電形をp形とする場合、例えば、第2の電圧(V2)は正電圧となる。
【0139】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。例えば、一実施形態の構成要素を他の実施形態の構成要素と置き換え又は変更してもよい。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0140】
10 半導体層
12 エミッタ電極(第1の電極)
14 コレクタ電極(第2の電極)
21 第1のゲートトレンチ(第1のトレンチ)
22 第2のゲートトレンチ(第2のトレンチ)
28 コレクタ領域(第1の半導体領域)
32 ドリフト領域(第2の半導体領域)
34 ベース領域(第3の半導体領域)
36 エミッタ領域(第4の半導体領域)
41 第1のゲート絶縁膜
42 第2のゲート絶縁膜
51 第1のゲート電極
52 第2のゲート電極
70 バリア領域(第5の半導体領域)
80 p形領域(第6の半導体領域)
100 IGBT(半導体装置)
101 第1のゲート電極パッド
102 第2のゲート電極パッド
200 IGBT(半導体装置)
300 IGBT(半導体装置)
400 IGBT(半導体装置)
500 IGBT(半導体装置)
P1 第1の面
P2 第2の面