(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】作業用車両
(51)【国際特許分類】
E02F 9/16 20060101AFI20220620BHJP
【FI】
E02F9/16 A
(21)【出願番号】P 2018177098
(22)【出願日】2018-09-21
【審査請求日】2021-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000150154
【氏名又は名称】株式会社竹内製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【氏名又は名称】並木 敏章
(72)【発明者】
【氏名】塩入 裕一
(72)【発明者】
【氏名】石合 昭宏
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-072048(JP,A)
【文献】特開平03-292908(JP,A)
【文献】特開2000-193009(JP,A)
【文献】特表2018-503782(JP,A)
【文献】特開2004-262303(JP,A)
【文献】特開平06-001269(JP,A)
【文献】実開昭58-058983(JP,U)
【文献】実開平03-121242(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2004/0040762(US,A1)
【文献】特開2011-112216(JP,A)
【文献】特開2005-172232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレーム上に設けられ、操作室を形成するオペレータキャビンを備える作業用車両において、
前記オペレータキャビンは、前記車体フレームに対して一端側が枢結され、他端側が上下動するように前記一端側の枢結部を中心として揺動可能であり、
前記オペレータキャビンの他端側を上動させるように前記オペレータキャビンを揺動させるための補助力を付与するアクチュエータを備え、
前記アクチュエータは、複数のアクチュエータを直列に連結して構成さ
れ、
前記複数のアクチュエータは、並列に配設された2個のアクチュエータと、前記2個のアクチュエータに対して直列に連結された1個のアクチュエータとを有して構成されることを特徴とする作業用車両。
【請求項2】
前記複数のアクチュエータを配設する連結プレートを備え、
前記複数のアクチュエータが、前記連結プレートに並列に配設された2本の第1および第2アクチュエータと、前記第1および第2アクチュエータに対して直列に連結されるように前記連結プレートに配設された第3アクチュエータとから構成されることを特徴とする請求項1に記載の作業用車両。
【請求項3】
前記複数のアクチュエータは
それぞれ両端部にボールジョイントを
有し、一端部の前記ボールジョイントを介して前記車体フレームおよび前記オペレータキャビンに接続さ
れ、他端部の前記ボールジョイントを介して前記連結プレートに接続されることを特徴とする
請求項2に記載の作業用車両。
【請求項4】
前記第1および第2アクチュエータの前記補助力が、前記第3アクチュエータの前記補助力より大きく、
前記オペレータキャビンの他端側を上動させるときに、まず前記第1および第2アクチュエータが伸長作動し、次に前記第3アクチュエータが伸長作動するように構成されていることを特徴とする請求項2もしくは3に記載の作業用車両。
【請求項5】
前記アクチュエータは、ガススプリングによって構成されることを特徴とする
請求項1~4のいずれかに記載の作業用車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作室を形成するオペレータキャビンを備える作業用車両に関する。
【背景技術】
【0002】
このような作業用車両の一例として、油圧ショベル(エクスカベータ)やスキッドステアローダがある。これらの作業用車両は、エンジンと、エンジンにより駆動される油圧ポンプと、油圧ポンプから吐出される作動油を受けて作動する複数の油圧アクチュエータ(油圧モータや油圧シリンダ)とを備え、これらの油圧アクチュエータによってクローラ機構(走行装置)やショベル装置等を作動させ、走行や掘削作業等を行うように構成されている。これらの走行操作や掘削操作は、車体フレーム上に設けられたオペレータキャビン内で行われる。このような作業用車両では、オペレータキャビンの下方に配設された油圧制御バルブ等の機器のメンテナンス作業を行うため、オペレータキャビンが車体フレームに対して上下方向に傾動可能(チルトアップ可能)に設けられた車両が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の作業用車両では、オペレータキャビンをチルトアップさせるための機構がメンテナンス作業の邪魔になる位置に配設されていたり、オペレータキャビンのチルトアップ角度が小さかったりしたため、メンテナンス作業の効率が悪いという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、オペレータキャビンの下方に配設された機器のメンテナンス作業の効率を向上させることができる作業用車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、車体フレーム上に設けられ、操作室を形成するオペレータキャビンを備える作業用車両において、前記オペレータキャビンは、前記車体フレームに対して一端側が枢結され、他端側が上下動するように前記一端側の枢結部を中心として揺動可能であり、前記オペレータキャビンの他端側を上動させるように前記オペレータキャビンを揺動させるための補助力を付与するアクチュエータを備え、前記アクチュエータは、複数のアクチュエータを直列に連結して構成される。
【0007】
さらに、上記構成の作業用車両において、前記複数のアクチュエータは、並列に配設された2個のアクチュエータと、前記2個のアクチュエータに対して直列に連結された1個のアクチュエータとを有して構成される。
【0008】
上記構成の作業用車両において、前記複数のアクチュエータは、前記アクチュエータの両端部にボールジョイントを設け、前記ボールジョイントを介して前記車体フレームおよび前記オペレータキャビンに接続されることが好ましい。
【0009】
上記構成の作業用車両において、前記アクチュエータは、ガススプリングによって構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る作業用車両によれば、オペレータキャビンを揺動させるための補助力を付与するアクチュエータが、複数のアクチュエータを直列に連結して構成される。そのため、1個のアクチュエータよりも伸長時のストロークを長くすることができ、オペレータキャビンのチルトアップ角度を大きくすることができる。従って、オペレータキャビンの下方に配設された機器のメンテナンス作業を行う際に、作業スペースを大きく取ることができ、メンテナンス作業の効率を向上させることができる。
【0011】
本発明に係る作業用車両において、好ましくは、複数のアクチュエータが、並列に配設された2個のアクチュエータと、2個のアクチュエータに対して直列に連結された1個のアクチュエータとを有して構成される。このような構成とすれば、オペレータキャビンを揺動させ始めるときに最も大きな力が必要となるため、その力を並列2個のアクチュエータにより補助してオペレータキャビンをスムーズに揺動させることができる。
【0012】
本発明に係る作業用車両において、好ましくは、複数のアクチュエータの両端部にボールジョイントを設け、そのボールジョイントを介して車体フレームおよびオペレータキャビンに接続される。このような構成とすれば、アクチュエータが伸長した状態で偏荷重がかかった場合でも、その偏荷重をボールジョイントにより逃がすことができ、車体フレームおよびオペレータキャビンとの接続部の破損を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る作業用車両の一例である油圧ショベルの左方から見た斜視図である。
【
図3】上記油圧ショベルの右方から見た斜視図である。
【
図6】上記油圧ショベルの油圧駆動装置の構成を示すブロック図である。
【
図7】上記油圧ショベルに設けられたオペレータキャビンの左側面図である。
【
図8】上記オペレータキャビンの右方から見た斜視図である。
【
図10】
図7における矢印A‐Aで示す部分の断面図である。
【
図12】
図7における矢印B‐Bで示す部分の断面図である。
【
図13】上記オペレータキャビンに設けられたガススプリングユニットを示すオペレータキャビンおよび旋回体フレームの左後方から見た斜視図である。
【
図14】上記ガススプリングユニットの前方から見た斜視図である。
【
図15】上記ガススプリングユニットの後方から見た斜視図である。
【
図16】上記ガススプリングユニットを示すオペレータキャビンおよび旋回体フレームの略真後ろから見た斜視図である。
【
図17】上記オペレータキャビンを略最大限までチルトアップさせた状態を示すオペレータキャビンおよび旋回体フレームの左後方から見た斜視図である。
【
図18】上記オペレータキャビンを略最大限までチルトアップさせた状態を示すオペレータキャビンおよび旋回体フレームの略真後ろから見た斜視図である。
【
図19】上記オペレータキャビンをチルトダウンさせた状態を示すオペレータキャビンおよび旋回体フレームの後下方から見た斜視図である。
【
図20】上記オペレータキャビンに設けられたロック機構を示すオペレータキャビンおよび旋回体フレームの左後方から見た斜視図である。
【
図22】上記ロック機構によるロックを解除する状態を示すオペレータキャビンおよび旋回体フレームの左後方から見た斜視図である。
【
図23】上記ロック機構によるロックを解除してオペレータキャビンをチルトアップさせ始めた状態を示すオペレータキャビンおよび旋回体フレームの左後方から見た斜視図である。
【
図24】上記ロック機構によるロックを解除してオペレータキャビンをチルトアップさせていく状態を示すオペレータキャビンおよび旋回体フレームの左後方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、本発明に係る作業用車両の一例として、クローラ式の油圧ショベル(エクスカベータ)について説明する。まず、油圧ショベル1の全体構成について
図1~
図6を参照して説明する。
【0015】
油圧ショベル1は、
図1~
図5に示すように、走行可能に構成された走行体10と、走行体10の上部に水平旋回可能に設けられた旋回体20と、旋回体20の前部に設けられたショベル装置30とを有して構成される。
【0016】
走行体10は、駆動輪、複数の従動輪、およびこれらの車輪に掛け回された履帯14を有する左右一対のクローラ機構15を、走行体フレーム11の左右両側にそれぞれ備えて構成される。左右のクローラ機構15は、駆動輪を回転駆動する左右の走行モータ16を有している。走行体10は、左右の走行モータ16の回転方向および回転速度をそれぞれ制御することにより任意の方向および速度で走行可能に構成されている。走行体フレーム11の前部には、ブレード18が上下揺動自在に設けられている。ブレード18は、走行体フレーム11との間に跨設されたブレードシリンダ19を伸縮作動させることにより上下揺動可能に構成されている。
【0017】
走行体フレーム11の上部中央には旋回機構5が設けられている。旋回機構5は、走行体フレーム11に固定された内輪と、旋回体20に固定された外輪と、旋回体20に設けられた旋回モータ8(
図6を参照)と、旋回体20に設けられた油圧ポンプ64(
図6を参照)から走行体10に設けられた左右の走行モータ16およびブレードシリンダ19等に作動油を供給するためのロータリーセンタージョイントとを有している。旋回体20は、旋回機構5を介して走行体フレーム11に水平旋回自在に設けられ、旋回モータ8を正転または逆転作動させることにより、走行体10に対して左右方向に水平旋回可能に構成されている。
【0018】
旋回体20は、走行体フレーム11に旋回機構5を介して水平旋回自在に設けられる旋回体フレーム21と、旋回体フレーム21上に設けられるオペレータキャビン25とを有している。旋回体フレーム21の前部には、前方に突出する旋回体側ブラケット22が設けられている。
【0019】
ショベル装置30は、旋回体側ブラケット22に上下軸を中心に左右方向に揺動自在に設けられたショベル側ブラケット31と、ショベル側ブラケット31の上端部に第1枢結ピンP1により上下揺動自在(起伏動自在)に設けられたブーム32と、ブーム32の先端部に第2枢結ピンP2により上下揺動自在(屈伸動自在)に設けられたアーム33と、アーム33の先端部に第3枢結ピンP3により上下揺自在に設けられたバケット34とを有している。さらに、ショベル装置30は、旋回体フレーム21とショベル側ブラケット31の間に跨設されたスイングシリンダ35と、ショベル側ブラケット31とブーム32の間に跨設されたブームシリンダ36と、ブーム32とアーム33の間に跨設されたアームシリンダ37と、アーム33とバケット34の間に跨設されたバケットシリンダ38と
、バケットシリンダ38のロッド先端部とバケット34の間に設けられたリンク機構39とを有している。
【0020】
ショベル側ブラケット31は、スイングシリンダ35を伸縮作動させることにより旋回体側ブラケット22(旋回体フレーム21)に対して左右方向に揺動可能に構成されている。ブーム32は、ブームシリンダ36を伸縮作動させることによりショベル側ブラケット31に対して上下方向に揺動可能(起伏動可能)に構成されている。アーム33は、アームシリンダ37を伸縮作動させることによりブーム32に対して上下方向に揺動可能(屈伸動可能)に構成されている。バケット34は、バケットシリンダ38を伸縮作動させることによりリンク機構39を介してアーム33に対して上下方向に揺動可能に構成されている。
【0021】
アーム33およびリンク機構39の先端部には、バケット34に替えて、ブレーカ、圧砕機、カッター、オーガ装置等の各種アタッチメントを上下方向に揺動自在に取り付けることが可能になっている。これらのアタッチメントを装着した場合に、当該アタッチメントの油圧アクチュエータに作動油を供給するための油圧ホースを接続可能な複数の接続ポートPTが、アーム33の左右両側面に配設されている。
【0022】
オペレータキャビン25は、略矩形箱状に形成されて内部に作業者が搭乗可能な操作室を形成し、左側部に横開き開閉可能なキャビンドア26が設けられている。オペレータキャビン25の内部には、作業者が前方側を向いて着座可能なオペレータシートと、走行体10の走行操作を行う左右の走行操作レバー41,42(
図6を参照)と、旋回体20の旋回操作およびショベル装置30の作動操作を行う左右の作業操作レバー43,44(
図6を参照)と、ショベル装置30のスイング操作(左右への揺動操作)を行うスイング操作ペダル45(
図6を参照)と、ブレード18の作動操作を行うブレード操作レバー46(
図6を参照)と、油圧ショベル1における各種の車両情報を表示するディスプレイ装置と、作業者によって操作される各種の操作スイッチとが設けられている。走行操作レバー41,42の下端部にはペダル部が設けられており、このペダル部を用いて作業者は足で走行体10の走行操作を行うことも可能になっている。
【0023】
旋回体20には、オペレータキャビン25の後側および右側の位置に、油圧駆動装置60を搭載するための搭載室が設けられている。この搭載室を形成する後側壁部には、曲面形状のカウンターウエイト27と、縦開き開閉可能なエンジンカバー28とが設けられている。搭載室を形成する右側壁部には、縦開き開閉可能なサイドカバー29および給油ホースカバー105が設けられている。油圧駆動装置60は、
図6に示すように、エンジン61と、エンジン61を駆動するための燃料を貯留する燃料タンク(図示略)と、作動油を貯留する作動油タンク63と、エンジン61により駆動される油圧ポンプ64およびパイロットポンプ65と、油圧ポンプ64から吐出されて各油圧アクチュエータに供給する作動油の供給方向および供給量を制御する制御バルブユニット66と、制御バルブユニット66を駆動するためのパイロット圧を生成するパイロットバルブユニット67とを有している。給油ホースカバー105の内部には、上記燃料タンクに燃料を補給するための給油装置(給油ホース等)が配設されている。
【0024】
制御バルブユニット66は、左右の走行モータ16、ブレードシリンダ19、旋回モータ8、スイングシリンダ35、ブームシリンダ36、アームシリンダ37、バケットシリンダ38および接続ポートPTのそれぞれに対応した制御バルブCV1~CV9を有している。これらの制御バルブCV1~CV9はそれぞれ、パイロットバルブユニット67から供給されるパイロット圧により内蔵されたスプールが移動され、そのスプールの移動により各油圧アクチュエータに供給する作動油の供給方向および供給量を制御するようになっている。
【0025】
パイロットバルブユニット67は、左走行操作レバー41の根本部分に配設された左走行パイロットバルブユニットPV1と、右走行操作レバー42の根本部分に配設された右走行パイロットバルブユニットPV2と、左作業操作レバー43の根本部分に配設された左作業パイロットバルブユニットPV3と、右作業操作レバー44の根本部分に配設された右作業パイロットバルブユニットPV4と、スイング操作ペダル45の根本部分に配設されたスイングパイロットバルブユニットPV5と、ブレード操作レバー46の根本部分に配設されたブレードパイロットバルブユニットPV6とを有している。これらのパイロットバルブユニットPV1~PV6はそれぞれ、複数のパイロットバルブを備えて構成され、パイロットポンプ65から供給される圧油を基にして、各操作レバー等の傾動操作方向および操作量に応じたパイロット圧を生成し、対応する制御バルブに供給するようになっている。
【0026】
このように構成された油圧ショベル1では、オペレータキャビン25内のオペレータシートの前方に配設された左右の走行操作レバー41,42を前後に傾動操作すると、その操作方向および操作量に応じて、左右の走行パイロットバルブユニットPV1,PV2によりパイロット圧が生成される。そして、そのパイロット圧により左右の走行モータ16に対応した制御バルブCV1,CV2が駆動され、左右の走行モータ16に作動油が供給される。このようにして、左右の走行操作レバー41,42の操作方向および操作量に応じた走行方向および走行速度で左右のクローラ機構15を作動させて油圧ショベル1を走行させることができるように構成されている。
【0027】
オペレータシートの左右に配設された左右の作業操作レバー43,44を前後左右に傾動操作すると、その操作方向および操作量に応じて、左右の作業パイロットバルブユニットPV3,PV4によりパイロット圧が生成される。そして、そのパイロット圧により旋回モータ8、ブームシリンダ36、アームシリンダ37、バケットシリンダ38および接続ポートPTに対応した制御バルブCV4,CV6~CV9が駆動され、左右の作業操作レバー43,44の操作方向に対応した油圧アクチュエータに作動油が供給される。スイング操作ペダル45を左右に踏込操作すると、その操作方向および操作量に応じて、スイングパイロットバルブユニットPV5によりパイロット圧が生成され、そのパイロット圧により制御バルブCV5が駆動されてスイングシリンダ35に作動油が供給される。
【0028】
ブレード操作レバー46を前後に傾動操作すると、その操作方向および操作量に応じて、ブレードパイロットバルブユニットPV6によりパイロット圧が生成され、そのパイロット圧により制御バルブCV3が駆動されてブレードシリンダ19に作動油が供給される。このようにして、左右の作業操作レバー43,44、スイング操作ペダル45およびブレード操作レバー46の操作方向および操作量に応じた作動方向および作動速度で旋回体20、ショベル装置30およびブレード18を作動させて掘削作業等を行うことができるように構成されている。
【0029】
次に、オペレータキャビン25のチルトアップ構造について、
図7~
図24を参照して説明する。旋回体フレーム21におけるオペレータキャビン25の下方位置には、旋回モータ8および制御バルブユニット66等が配設されており、それらのメンテナンス作業等を行うため、オペレータキャビン25は、オペレータキャビン25の前端側の枢結部を中心として後端側が上動するように揺動可能(チルトアップ可能)に構成されている(
図13を参照)。
【0030】
この枢結構造300は、
図7~
図9に示すように、旋回体フレーム21に設けられた左右一対のフレーム側支持部材310,310と、オペレータキャビン25の底部前端側に設けられた左右一対のキャビン側支持部材320,320とを有している。左右のフレー
ム側支持部材310,310はそれぞれ、旋回体フレーム21にボルトにより固定される板状のベース部311と、ベース部311上に上方に延びる板状のフレーム側支持部312とを有している。左右のキャビン側支持部材320,320はそれぞれ、オペレータキャビン25の底部前端側から前方に延びる左右一対の板状のキャビン側支持部321,321を有している。左右のキャビン側支持部321,321の間にフレーム側支持部312が配置される。
【0031】
枢結構造300は、さらに、
図10~
図12に示すように、フレーム側支持部312内に設けられる円筒形状の防振ゴム330と、防振ゴム330内に挿入された状態で設けられる円筒形状の軸受部材340と、キャビン側支持部321に設けられ、軸受部材340に挿通されて軸受部材340に対して相対回転可能な枢結軸350とを有している。フレーム側支持部312には、左右方向に貫通したゴム取付穴が形成され、そのゴム取付穴に防振ゴム330が挿入されて設けられる。防振ゴム330の左右側面にはそれぞれ円環状の凹部が形成されている。防振ゴム330は、エンジン61から旋回体フレーム21を介してオペレータキャビン25に伝わる振動に対応して、当該振動を伝達させないようなばね定数となるように形状や材質(硬さ)等が設定されている。防振ゴム330には、左右方向に貫通した軸受取付穴が形成され、その軸受取付穴に軸受部材340が挿入された状態で設けられる。
【0032】
左右のキャビン側支持部321,321にはそれぞれ、左右方向に貫通した軸挿通穴が形成され、それらの軸挿通穴および軸受部材340に枢結軸350が挿通されて設けられる。枢結軸350は、軸受部材340に対して相対回転可能になっている。枢結軸350は、左端側に設けられた固定プレート351を介してボルトにより左側のキャビン側支持部321に固定される。
【0033】
フレーム側支持部材310のベース部311上には、上方に延びる板状のストッパ部材360がボルトにより固定される。ストッパ部材360には、左右方向に貫通したストッパ穴361が形成されている。ストッパ穴361は、枢結軸350の直径よりも大きく、且つ防振ゴム330の外径よりも小さい寸法の穴になっている。ストッパ部材360は、ストッパ穴361内に枢結軸350の右端部側が挿入された状態となるように配設される。ストッパ部材360は、オペレータキャビン25が揺動して防振ゴム330が許容量を超えて変形したときに枢結軸350の右端部側がストッパ穴361の内面に当接するようになっている。このような枢結構造300では、防振ゴム330内に挿入状態で設けられた軸受部材340に対して枢結軸350が相対回転することにより、当該枢結軸350を中心としてオペレータキャビン25の後部側が上動するようにオペレータキャビン25がチルトアップ可能になっている。
【0034】
以上説明したように、枢結構造300では、円筒形状の防振ゴム330内に挿入された状態で軸受部材340が設けられ、その軸受部材340に挿通された状態で枢結軸350が設けられた構成になっている。そのため、エンジン61等により旋回体フレーム21からオペレータキャビン25に伝わる振動を防振ゴム330により確実に遮断させることができる。また、枢結軸350、軸受部材340および防振ゴム330を一体の部品として取り扱うことができるため、部品点数の削減や、組み付け作業の効率化にもつながる。さらに、枢結構造300では、ストッパ穴361内に枢結軸350の右端部が挿入された状態となるように配設されるストッパ部材360を備えている。そのため、オペレータキャビン25が揺動して防振ゴム330が変形した場合に、枢結軸350がストッパ穴361の内面に当接することにより、防振ゴム330が許容量を超えて変形することを防ぐことができる。
【0035】
オペレータキャビン25の後部側には、
図13に示すように、オペレータキャビン25
をチルトアップさせるための補助力を付与するガススプリングユニット400が配設されている。ガススプリングユニット400は、
図14および
図15に示すように、連結プレート405と、連結プレート405に並列に配設された2本の第1および第2ガススプリング410,420と、第1および第2ガススプリング410,420に対して直列に連結されるように連結プレート405に配設された第3ガススプリング430とを有している。
【0036】
第1~第3ガススプリング410~430はそれぞれ、密閉構造のチューブと、そのチューブ内を摺動するピストンおよびロッドと、チューブ内に封入される圧縮ガスおよびオイルとを有し、圧縮ガスの反力をばね力として得られるように構成されている。第1~第3ガススプリング410~430はそれぞれ、チューブ側端部およびロッド側端部にボールジョイント450が設けられている。ボールジョイント450は、ボールスタッドと、それに球面接触するソケットとを有し、任意の方向に回転可能に構成されている。
【0037】
第1および第2ガススプリング410,420はそれぞれ、チューブ側端部がボールジョイント450を介して連結プレート405の前面上部に取り付けられ、当該チューブに対してロッドが下方に摺動可能であり、ロッド側端部がボールジョイント450を介して旋回体フレーム21に取り付けられる。第3ガススプリング430は、ロッド側端部がボールジョイント450を介して連結プレート405の前面下部に取り付けられ、当該ロッドに対してチューブが上方に摺動可能であり、チューブ側端部がボールジョイント450を介してオペレータキャビン25に取り付けられる。
【0038】
このようなガススプリングユニット400では、上記枢結構造300(枢結軸350)を中心として旋回体フレーム21に対してオペレータキャビン25をチルトアップさせるときには、
図13および
図16に示すように、始めに第1および第2ガススプリング410,420が伸長作動するように構成されている。オペレータキャビン25をチルトアップさせるときには、上げ始めに大きな力が必要となるため、その力を補助する大きな補助力を付与できるように2本の第1および第2ガススプリング410,420が並列に配設されている。そして、第1および第2ガススプリング410,420が最大限まで伸長すると、
図17および
図18に示すように、次に第3ガススプリング430が伸長作動するように構成されている。
【0039】
オペレータキャビン25が
図17に示す所定の位置(例えば、チルトアップ角度が35度の位置)までチルトアップされると、オペレータキャビン25の底部前側(左側のキャビン側支持部材320の近傍)に枢結されたチルトロック部材380のロック溝に、旋回体フレーム21に設けられたチルトロックピン385が挿入され、これによりオペレータキャビン25がチルトアップされた状態でロックされるようになっている。
【0040】
チルトロック部材380を揺動させてロック溝とチルトロックピン385とによるロック状態を解除すると、オペレータキャビン25はチルトダウン可能な状態となる。オペレータキャビン25をチルトダウンさせるときには、
図19に示すように、始めに第3ガススプリング430が縮小作動する。第3ガススプリング430が縮小していくと、連結プレート405の上端部がオペレータキャビン25の後部に設けられたスプリングストッパ部材460に当接し、次に第1および第2ガススプリング410,420が縮小作動する。スプリングストッパ部材460の下面側には後方下がりの傾斜部が設けられている。この傾斜部に連結プレート405の上端部が当接することにより、ガススプリングユニット400の回転方向の姿勢が正常な状態に調整されるようになっている。オペレータキャビン25は、チルトダウンされた状態において、旋回体フレーム21に対してキャビン固定ボルトを用いて固定される。このキャビン固定ボルトは、ガススプリングストッパ部材460の左右両側の2箇所に配設されている。
【0041】
以上説明したように、ガススプリングユニット400では、3本の第1~第3ガススプリング410~430を直列に連結して構成されている。そのため、1本のガススプリングよりも伸長時のストロークを長くすることができ、オペレータキャビン25のチルトアップ角度を従来よりも大きくすることができる。従って、オペレータキャビン25の下方に配設された旋回モータ8および制御バルブユニット66等の機器のメンテナンス作業を行う際に、作業スペースを大きく取ることができ、メンテナンス作業の効率を向上させることができる。
【0042】
ガススプリングユニット400では、並列に配設された2本の第1および第2ガススプリング410,420と、それら2本のガススプリング410,420に対して直列に連結された1本の第3ガススプリング430とを有して構成されている。そのため、オペレータキャビン25をチルトアップさせ始めるときに最も大きな力が必要となるが、その力を並列2本の第1および第2ガススプリング410,420により補助してオペレータキャビン25をスムーズにチルトアップさせることができる。また、第1~第3ガススプリング410~430はそれぞれボールジョイント450を介して旋回体フレーム21およびオペレータキャビン25に接続されている。そのため、第1~第3ガススプリング410~430が伸長した状態で偏荷重がかかった場合でも、その偏荷重をボールジョイント450により逃がすことができ、旋回体フレーム21およびオペレータキャビン25との接続部の破損を防ぐことができる。
【0043】
さらに、ガススプリングユニット400はオペレータキャビン25の後部側に配設されている。そのため、旋回体フレーム21の側方からメンテナンス作業を行う際に、ガススプリングユニット400がメンテナンス作業の邪魔になることなく、作業を行うことができる。また、ガススプリングユニット400がオペレータキャビン25の後部側に配設されるため、ガススプリングユニット400がオペレータキャビン25内に入り込んで居住スペースを狭くすることなく、オペレータキャビン25内の居住スペースを広く保つことができる。さらに、ガススプリングユニット400が旋回体フレーム21内の他の機器と干渉することなく、ガススプリングユニット400や他の機器を配設することができる。
【0044】
オペレータキャビン25の後部左側には、
図20に示すように、オペレータキャビン25のチルトアップを規制するロック機構500が配設されている。ロック機構500は、
図20および
図21に示すように、オペレータキャビン25に設けられた前後方向に延びるロックピン510と、旋回体フレーム21に枢結され、ロックピン510に係合可能なロックプレート520と、ロックプレート520をロックピン510との係合方向に付勢するばね部材530とを有している。
【0045】
ロックプレート520は、下部に設けられた回転軸521を中心に左右方向に揺動自在に旋回体フレーム21に設けられ、回転軸521の近傍に設けられるばね部材530により左方に揺動する方向の力が付与される。ロックプレート520の上下略中央には、左方に開口した略円形状のロック凹部525が形成されている。ロックプレート520の上端部側には、左下がりの傾斜面526が形成されている。
【0046】
オペレータキャビン25の後部側には、ロックピン510の下方位置に、左右方向に延びる円筒形状の棒挿通部材540が設けられ、その棒挿通部材540にロック解除棒550が左方から挿入可能になっている。ロック解除棒550にはフランジ部551が形成され、フランジ部551が棒挿通部材540に当接することによりそれ以上にロック解除棒550を挿入することができないようになっている。
【0047】
このようなロック機構500では、オペレータキャビン25が旋回体フレーム21に対
してキャビン固定ボルトを用いて固定されているときには、ロックピン510がロックプレート520のロック凹部525内に挿入された状態となる。ただし、このときロックピン510とロック凹部525の内面との間には所定の隙間を有してロックピン510とロック凹部525の内面とが非接触状態となる。そのため、オペレータキャビン25がキャビン固定ボルトにより旋回体フレーム21に固定されているときには、ロック機構500(ロックピン510およびロックプレート520)によるオペレータキャビン25のチルトアップ規制は行われないように構成されている。
【0048】
一方、キャビン固定ボルトによるオペレータキャビン25の固定が外れたときには、オペレータキャビン25の後部側が上動すると、オペレータキャビン25に設けられたロックピン510がロックプレート520のロック凹部525の内面上部に接触してロックピン510の上動が規制され、これによりオペレータキャビン25のチルトアップが規制されるように構成されている。
【0049】
このようなロック機構500によるチルトアップ規制を解除してオペレータキャビン25をチルトアップさせるには、始めにオペレータキャビン25を旋回体フレーム21に固定しているキャビン固定ボルトを取り外す。そして、
図22に示すように、オペレータキャビン25に設けられた棒挿通部材540に左方からロック解除棒550を挿し込む。棒挿通部材540に差し込まれたロック解除棒550は、先端部がロックプレート520に当接して、回転軸521を中心にロックプレート520を右方に揺動させるようになっている。このようにしてロックプレート520が右方に揺動されると、ロックプレート520のロック凹部525内に配置されていたロックピン510がロック凹部525の外方に位置する配置関係に変化する。
【0050】
そして、棒挿通部材540に差し込んだ状態のロック解除棒550を持ち上げることにより、
図23および
図24に示すように、オペレータキャビン25をチルトアップさせる力を作用させることができるようになっている。ロック解除棒550を持ち上げていくと、ロックピン510およびロック解除棒550の先端部がロックプレート520の左側面および傾斜面526を摺動しながらオペレータキャビン25とともに上動し、オペレータキャビン25をチルトアップさせることができる。このとき、上記ガススプリングユニット400によりチルトアップさせるための補助力が付与される。
【0051】
オペレータキャビン25をチルトダウンさせるときには、ロック解除棒550を棒挿通部材540に差し込み、当該ロック解除棒550を押し下げてオペレータキャビン25をチルトダウンさせる力を作用させる。ロック解除棒550を押し下げていくと、
図24に示すように、始めにロック解除棒550の先端部がロックプレート520の傾斜面526に当接して傾斜面526を下方に摺動する。この摺動によりロックプレート520が回転軸521を中心に右方に揺動される。さらにロック解除棒550を押し下げていくと、
図23に示すように、ロック解除棒550の先端部およびロックピン510が傾斜面526およびロックプレート520の左側面を摺動しながらオペレータキャビン25とともに下動する。そして、
図22に示すように、ロックピン510がロックプレート520のロック凹部525内に挿入される位置まで、オペレータキャビン25をチルトダウンさせることができる。このようにチルトダウンされたオペレータキャビン25は、上記のようにキャビン固定ボルトを用いて旋回体フレーム21に固定される。
【0052】
以上説明したように、オペレータキャビン25のチルトアップを規制するロック機構500が、オペレータキャビン25を旋回体フレーム21に固定するキャビン固定ボルトと並列に設けられている。そして、オペレータキャビン25がキャビン固定ボルトにより固定されているときにロック機構500よる規制は行われず、キャビン固定ボルトによる固定が外れたときにロック機構500よる規制が行われるように構成されている。そのため
、キャビン固定ボルトの締め付けが弱かったり、破損したりした場合であっても、ロック機構500によりオペレータキャビン25が揺動して浮き上がることを防ぐことができ、これによりオペレータキャビン25内の安全を確保することができる。また、ロック機構500を備えることにより、キャビン固定ボルトのサイズを小さくしたり、数を減らしたりすることができ、ボルトの脱着作業を効率化することができる。
【0053】
ロック機構500では、オペレータキャビン25に設けられた棒挿通部材540にロック解除棒550を差し込んでロックプレート520を揺動させてロックピン510との係合状態を解除し、その差し込んだ状態のロック解除棒550を持ち上げることにより、オペレータキャビン25をチルトアップさせる力を作用させることができるように構成されている。そのため、ロック機構500による規制解除とオペレータキャビン25のチルトアップとを容易に行うことができる。さらに、ロック機構500では、オペレータキャビン25がキャビン固定ボルトにより旋回体フレーム21に固定されているときに、ロックピン510とロックプレート520とが非接触状態となるように構成されている。そのため、旋回体フレーム21の振動がロックプレート520およびロックピン510を介してオペレータキャビン25に伝わることを防ぐことができる。
【0054】
これまで本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態では、オペレータキャビン25をチルトアップさせるための補助力を付与するアクチュエータの一例としてガススプリングユニット400について説明した。しかしながら、当該アクチュエータは、ガススプリング以外に、例えば、コイルばねシリンダ、油圧シリンダ等のアクチュエータによって構成されてもよい。また、上述の実施形態では、ガススプリングユニット400が、下側2本のガススプリング410,420と上側1本のガススプリング430を直列に連結して構成されている。しなしながら、ガススプリングユニット400は、例えば、下側1本と上側2本、下側2本と真ん中2本と上側1本等、ガススプリングの本数や配置(組み合わせ)などは適宜変更してもよい。さらに、上述の実施形態では、本発明を油圧ショベル1に適用した場合について説明したが、本発明は、油圧ショベル以外の作業用車両、例えばクローラローダ等の他の作業用車両にも適用することもできる。
【符号の説明】
【0055】
1 油圧ショベル
20 旋回体
21 旋回体フレーム(車体フレーム)
25 オペレータキャビン
400 ガススプリングユニット
405 連結プレート
410 第1ガススプリング
420 第2ガススプリング
430 第3ガススプリング
450 ボールジョイント