IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルパイン株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-無人航空機制御システム 図1
  • 特許-無人航空機制御システム 図2
  • 特許-無人航空機制御システム 図3
  • 特許-無人航空機制御システム 図4
  • 特許-無人航空機制御システム 図5
  • 特許-無人航空機制御システム 図6
  • 特許-無人航空機制御システム 図7
  • 特許-無人航空機制御システム 図8
  • 特許-無人航空機制御システム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】無人航空機制御システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 5/02 20060101AFI20220620BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20220620BHJP
   B64C 13/20 20060101ALI20220620BHJP
   B64F 1/36 20170101ALI20220620BHJP
   B64D 45/04 20060101ALI20220620BHJP
   G05D 1/10 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
G08G5/02 A
B64C39/02
B64C13/20
B64F1/36
B64D45/04 B
G05D1/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018207187
(22)【出願日】2018-11-02
(65)【公開番号】P2020071802
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】金田 淳
(72)【発明者】
【氏名】藤田 謙一郎
【審査官】田中 将一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-207705(JP,A)
【文献】特開2017-071395(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0233071(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B64B 1/00 - 1/70
B64C 1/00 - 99/00
B64D 1/00 - 47/08
B64F 1/00 - 5/60
B64G 1/00 - 99/00
G05D 1/00 - 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直上方に向かって検出用信号を電波により送信し、応答信号を受信するポート側アンテナを有する着陸ポートに、前記検出用信号を受信し前記応答信号を電波により送信する航空機側アンテナを有する無人航空機を自動で着陸させる無人航空機制御システムであって、
前記応答信号に基づいて前記ポート側アンテナと前記航空機側アンテナとの離間距離であるアンテナ間距離を検出する距離検出部と、
前記ポート側アンテナによる前記応答信号の受信が正常に行われると共に前記距離検出部による測距が正常に行われる電波送信範囲に前記無人航空機が位置している状態から位置していない状態となる逸脱状態となったこと、および、位置していない状態から位置している状態となる進入状態となったことを検出する逸脱進入検出部と、
前記距離検出部の検出結果および前記逸脱進入検出部の検出結果に基づいて、鉛直下方に移動しながら前記着陸ポートに着陸するように前記無人航空機を移動させる自動着陸制御部とを備え、
前記自動着陸制御部は、
前記電波送信範囲内に位置する前記無人航空機を鉛直下方に移動させ、前記着陸ポートに着陸する前に前記逸脱状態となった場合は、前記進入状態となるまで前記無人航空機を鉛直上方に移動させ、水平方向における前記無人航空機の位置を調整した後、再び、前記無人航空機を鉛直下方に移動させる
ことを特徴とする無人航空機制御システム。
【請求項2】
前記自動着陸制御部は、
前記電波送信範囲内に位置する前記無人航空機を鉛直下方に移動させ、前記着陸ポートに着陸する前に前記逸脱状態となった場合は、前記進入状態となるまで前記無人航空機を鉛直上方に移動させる上下方向移動処理と、
前記上下方向移動処理により前記進入状態となった前記無人航空機が位置する水平面上で、前記ポート側アンテナの配置位置から鉛直上方に延びる仮想線と前記水平面との交点に向かって前記無人航空機を移動させる水平方向移動処理とを交互に繰り返し実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の無人航空機制御システム。
【請求項3】
前記自動着陸制御部は、
前記電波送信範囲内に位置する前記無人航空機を鉛直下方に移動させ、前記着陸ポートに着陸する前に前記逸脱状態となった場合は、前記進入状態となるまで前記無人航空機を鉛直上方に移動させる上下方向移動処理と、
記上下方向移動処理により前記進入状態となった前記無人航空機が位置する水平面上で、前記無人航空機について、前記逸脱状態とならず、かつ、同じ距離だけ水平方向に移動したときに移動後における前記アンテナ間距離が短くなる方向に向かって前記無人航空機を移動させる水平方向移動処理とを交互に繰り返し実行する
ことを特徴とする請求項に記載の無人航空機制御システム。
【請求項4】
前記自動着陸制御部は、
前記水平方向移動処理において、前記上下方向移動処理により前記進入状態となった前記無人航空機の位置を基点として、前記基点からの水平距離が同じ複数の位置に前記無人航空機を水平移動させると共に、複数の位置のそれぞれにおいて前記距離検出部により検出される前記アンテナ間距離を取得し、
前記基点から、複数の位置のうち最も短い前記アンテナ間距離が検出された位置に向かう方向を前記無人航空機の移動方向とする
ことを特徴とする請求項3に記載の無人航空機制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人航空機制御システムに関し、特に、無人航空機を自動で着陸ポートに着陸させる無人航空機制御システムに用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ドローンと呼ばれる小型の無人航空機が広く普及してきおり、ホビーとしてだけでなく、上空からの景色の撮影、被検査対象物の検査、農薬の散布、運搬物の運搬等、様々な用途で用いられてきている。この無人航空機に関し、特許文献1には、着陸ポート(着陸誘導ポート装置2)に無人航空機(小型飛行体1)を自動で着陸させる無人航空機制御システム(小型飛行システム)が記載されている。特許文献1の無人航空機制御システムでは、着陸ポートが電波(誘導電波)を送信し、無人航空機が電波に従って自動で着陸する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6203789号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された無人航空機制御システムのように、着陸ポートが送信する電波を利用して無人航空機の自動的な着陸を実現するシステムでは、無人航空機は、着陸ポートから送信される電波の特性を踏まえた適切な移動を行って、着陸ポートに着陸する必要がある。電波の特性を踏まえた適切な移動を行わなかった場合、着陸のための移動の途中で、無人航空機が電波を受信できなくなり、正常に着陸ができなくなってしまう事態が生じ得るからである。しかしながら、無人航空機の自動的な着陸に着陸ポートが送信する電波を利用するシステムにおいて、電波の特性を踏まえた処理を行って、無人航空機の正常な着陸を実現する技術は未だ提案されていない。例えば、特許文献1には、無人航空機が着陸ポートに着陸するときの動作に関して、「無人航空機(小型飛行体1)が電波(誘導電波)に従って着陸する」旨のみが記載され、無人航空機が着陸ポートに着陸するときの具体的な動作については記載されていない。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、着陸ポートが送信する電波を利用して無人航空機を着陸ポートに自動で着陸させるシステムについて、無人航空機が、電波の特性を利用した適切な移動を行って、正常に着陸ポートに着陸できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、本発明では、鉛直上方に向かって検出用信号を電波により送信し、応答信号を受信するポート側アンテナを有する着陸ポートに、検出用信号を受信し応答信号を電波により送信する航空機側アンテナを有する無人航空機を自動で着陸させる無人航空機制御システムにおいて、以下の処理を実行する。すなわち、ポート側アンテナによる応答信号の受信が正常に行われると共に、応答信号に基づく無人航空機の測距が正常に行われる電波送信範囲に無人航空機が位置している状態から位置していない状態となる逸脱状態となったこと、および、位置していない状態から位置している状態となる進入状態となったことを検出するようにしている。その上で、着陸ポートへの無人航空機の着陸に際し、電波送信範囲内に位置する無人航空機を鉛直下方に移動させ、着陸ポートに着陸する前に逸脱状態となった場合は、進入状態となるまで無人航空機を鉛直上方に移動させ、水平方向における無人航空機の位置を調整した後、再び、無人航空機を鉛直下方に移動させるようにしている。
【発明の効果】
【0007】
検出用信号(電波)は、ポート側アンテナから鉛直上方に向かって送信されるため、電波送信範囲は、鉛直上方に向かうに従って、電波を正常に受信できる水平方向の範囲が徐々に広がっていく一方、電波強度が徐々に弱くなるという特性がある。従って、着陸のために無人航空機を鉛直下方に移動させている場合において、ポート側アンテナが配置された着陸ポートに向かって真っ直ぐ移動していない場合には、いずれ無人航空機が電波送信範囲から外れてしまうことになり、正常に着陸を行うためには、このようなケースに対応する必要がある。
【0008】
このことを踏まえ、上記のように構成した本発明によれば、無人航空機の着陸に際し、ポート側アンテナが配置された着陸ポートに向かって真っ直ぐ移動しておらず、無人航空機が電波送信範囲から外れてしまった場合であっても、そのことが検出された上で、確実に電波送信範囲内に復帰可能な方向である鉛直上方に無人航空機が移動されることによって、電波送信範囲内に復帰され、再び、電波送信範囲内での着陸が試行される。このため、無人航空機が電波送信範囲から外れた場合に、無人航空機が電波送信範囲内に戻らず、正常に着陸できないという事態が発生することを防止できる。すなわち、本発明によれば、着陸ポートが送信する電波を利用して無人航空機を着陸ポートに自動で着陸させるシステムについて、無人航空機が、電波の特性を利用した適切な移動を行って、正常に着陸ポートに着陸できるようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る無人航空機制御システムの構成例を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係る無人航空機制御システムを構成する各装置のハードウェア構成例を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係る無人航空機および制御端末の機能的構成例を示すブロック図である。
図4】着陸ポートが検出用信号を送信する様子を模式的に示す図である。
図5】無人航空機と着陸ポートとの位置関係を模式的に示す図である。
図6】無人航空機と着陸ポートとの位置関係を模式的に示す図である。
図7】基点位置に位置する無人航空機を上から見た図である。
図8】基点位置に位置する無人航空機が移動する様子を示す図である。
図9】初期位置に位置する無人航空機が着陸ポートに着陸する際に、無人航空機が辿る軌跡の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る無人航空機制御システム1の構成例を示す図である。図1に示すように、無人航空機制御システム1は、無人航空機2と、着陸ポート3と、制御端末4とを含んで構成されている。
【0011】
無人航空機2は、ドローンと呼ばれる無人の航空機であり、本体5と本体5に実装された飛行機構6とを有する。飛行機構6は、4枚のプロペラ7を有しており、無人航空機2は、これらプロペラ7の回転数を調整することによって、上昇、下降、前進、後進、旋回等を行う。本実施形態に係る無人航空機2は、無線操縦機による遠隔操縦に従って飛行することができ、また、自立制御によって飛行することができる。
【0012】
着陸ポート3は、無人航空機制御システム1による自動着陸処理(後述)によって、無人航空機2が着陸する装置である。本実施形態では、着陸ポート3の筐体は、低い円柱状の台部材であり、その上面に無人航空機2が着陸するための着陸領域8が形成されている。なお、本実施形態で例示する着陸ポート3の形状は一例であり、着陸ポート3の筐体の形状は、無人航空機2が着陸するための水平な面が形成されていれば、どのような形状であってもよい。
【0013】
制御端末4は、無人航空機2の管理者が使用するコンピューターである。制御端末4は、後述する各種機能を有していればよく、例えば、ノート型コンピューターや、タブレット型端末等を制御端末4として使用することができる。
【0014】
図2は、本実施形態に係る無人航空機制御システム1を構成する各装置のハードウェア構成例を機能ブロックと共に示すブロック図である。図3は、無人航空機制御システム1の無人航空機2および制御端末4の機能的構成例を示すブロック図である。
【0015】
図2に示すように、無人航空機2は、航空機側制御ユニット10、飛行機構駆動ユニット11、GPSユニット12、飛行関連センサー13、航空機側RF信号処理ユニット14および航空機側無線通信ユニット15を備えている。
【0016】
航空機側制御ユニット10は、フライトコントローラーであり、CPUや、ROM、RAM、その他周辺回路等を備え、無人航空機2の各部を制御する。航空機側制御ユニット10は、機能構成として、応答部16および自動着陸制御部17を備えている(図3も併せて参照)。自動着陸制御部17は、CPUが、ROMに記憶された制御プログラムをRAMに読み出して実行する等、ハードウェアとソフトウェアとの協働により各種処理を実行する。自動着陸制御部17の機能および処理の詳細については後述する。
【0017】
飛行機構駆動ユニット11は、PMU(Power Management Unit)、ESC(Electric Speed Controller)およびブラシレスモーターを備えている。ブラシレスモーターは、プロペラ7を回転させるモーターであり、4つのプロペラ7ごとに存在する。PMUは、バッテリーからESCに供給される電力を制御する。ESCは、ブラシレスモーターの回転数を制御する。航空機側制御ユニット10は、飛行機構駆動ユニット11を制御して、各プロペラ7の回転数を調整することにより、無人航空機2の飛行を制御する。
【0018】
GPSユニット12は、GPS信号を受信し、GPS信号に基づいて、無人航空機2の現在位置(現在の無人航空機2の位置の経度、緯度および高度)を検出する。GPSユニット12は、航空機側制御ユニット10に検出値を随時出力する。
【0019】
飛行関連センサー13は、ジャイロセンサーや、加速度センサー、気圧センサー、磁気センサー、超音波センサー、ポジショニングカメラ等の各種センサーを備え、各種センサーの検出値を航空機側制御ユニット10に出力する。航空機側制御ユニット10は、各種センサーの検出値に基づいて、飛行中の無人航空機2の位置や姿勢を制御する。
【0020】
航空機側RF信号処理ユニット14は、航空機側アンテナ18およびRF送受信回路を備え、電波によりRF信号(高周波信号)を送受信する。特に、航空機側RF信号処理ユニット14は、後述する自動着陸処理が行われている間、ポート側アンテナ20から送信された検出用信号を受信して、航空機側制御ユニット10に出力し、また、検出用信号に応答するための応答信号を航空機側制御ユニット10から入力し、航空機側アンテナ18を介して電波により送信する。なお、無人航空機2が無線操縦機による遠隔操縦に従って飛行する場合、航空機側RF信号処理ユニット14は、無線操縦機が特定の周波数帯の電波に重畳して発信する制御信号を受信し、航空機側制御ユニット10に出力する。航空機側制御ユニット10は、制御信号を入力し、制御信号に基づいて、飛行機構駆動ユニット11を制御する。
【0021】
航空機側無線通信ユニット15は、所定の無線通信規格に従って、制御端末4の端末側無線通信ユニット21と無線通信する。無線通信に用いる無線通信規格は何でもよい。なお、本実施形態では、航空機側無線通信ユニット15と、端末側無線通信ユニット21とは、所定の無線通信規格に従って直接的に無線通信するが、この点について、これら装置が、移動体通信ネットワークを介して通信を行う構成でもよい。
【0022】
図2に示すように、着陸ポート3は、ポート側RF信号処理ユニット25およびポート側通信インターフェース26を備えている。
【0023】
ポート側RF信号処理ユニット25は、ポート側アンテナ20およびRF送受信回路を備え、電波によりRF信号(高周波信号)を送受信する。特に、ポート側RF信号処理ユニット25は、後述する自動着陸処理が行われている間、制御端末4の端末側制御ユニット27の制御に従って検出用信号をポート側アンテナ20を介して送信し、また、航空機側アンテナ18から送信された応答信号を受信して、制御端末4の端末側制御ユニット27に出力する。
【0024】
ポート側通信インターフェース26は、所定の有線通信規格に従って、制御端末4の端末側通信インターフェース28と有線通信する。通信に用いる有線通信規格は何でもよい。また、ポート側通信インターフェース26と端末側通信インターフェース28とが無線通信する構成でもよい。
【0025】
図2に示すように、制御端末4は、端末側制御ユニット27、端末側通信インターフェース28および端末側無線通信ユニット21を備えている。端末側制御ユニット27は、CPUや、ROM、RAM、その他周辺回路等を備え、制御端末4の各部を制御する。端末側制御ユニット27は、機能構成として、距離検出部30および逸脱進入検出部31を備えている(図3も併せて参照)。距離検出部30および逸脱進入検出部31は、CPUが、ROMに記憶された制御プログラムをRAMに読み出して実行する等、ハードウェアとソフトウェアとの協働により各種処理を実行する。距離検出部30および逸脱進入検出部31の機能および処理の詳細については後述する。
【0026】
端末側通信インターフェース28は、所定の有線通信規格に従って、ポート側通信インターフェース26と有線通信する。端末側無線通信ユニット21は、所定の無線通信規格に従って、航空機側無線通信ユニット15と無線通信する。
【0027】
以上の構成の下、本実施形態に係る無人航空機制御システム1は、自動着陸処理を実行して、着陸ポート3への無人航空機2の自動的な着陸(無線操縦機による遠隔操縦を伴わない着陸)を実現する。以下、自動着陸処理において、無人航空機制御システム1の各装置が実行する処理について詳述する。
【0028】
自動着陸処理に際し、制御端末4の距離検出部30は、着陸ポート3のポート側RF信号処理ユニット25を制御して、ポート側アンテナ20より検出用信号を送信させる。図4は、着陸ポート3のポート側アンテナ20が検出用信号(厳密には、検出用信号が重畳された所定周波数帯の電波)を送信する様子を模式的に示す図である。図4に示すように、ポート側アンテナ20は、着陸ポート3に形成された着陸領域8の中央部に配置されている。
【0029】
ポート側アンテナ20は、指向性アンテナによって構成されており、鉛直上方を送信方向として所定の放射角度で検出用信号を送信する。この結果、検出用信号に係る電波を正常に受信できる電波送信範囲HNは、ポート側アンテナ20を基点として、鉛直上方に向かうに従って水平方向の範囲が徐々に広がっていくような形状となる(ただし、電波強度は徐々に弱くなる)。図4では、電波送信範囲HNの形状のイメージを模式的に示している。電波送信範囲HNについては、後に詳述する。制御端末4の距離検出部30は、ポート側RF信号処理ユニット25を制御して、所定の周期で検出用信号を送信させる。
【0030】
更に、自動着陸処理に際し、ポート側アンテナ20から検出用信号が出力されている状態で、無人航空機2が、着陸ポート3の上方側であって、電波送信範囲HNから外れる程度に離間した位置(以下、初期位置という)に配置される。初期位置は、着陸ポート3の着陸領域8の鉛直上方に正確に位置している必要はなく、無人航空機2が鉛直下方に移動した場合に電波送信範囲HNにいずれ至るような位置であればよい。初期位置は、電波送信範囲HN内であってもよいが、本例では、初期位置は、電波送信範囲HNを上方側に外れた場所に位置しているものとする。図4の符号P1は、初期位置の一例を示している。
【0031】
初期位置への配置は、GPSユニット12の検出値を利用した自立制御、または、無線操縦機による遠隔操縦によって行われる。初期位置に無人航空機2が配置された後、無人航空機制御システム1の動作モードが自動着陸モードに移行される。例えば、ユーザーにより制御端末4に所定の入力が行われることによって動作モードの移行が行われる。自動着陸モードにおいて無人航空機制御システム1が実行する処理が自動着陸処理である。
【0032】
動作モードが自動着陸モードの間、無人航空機2の航空機側RF信号処理ユニット14は、航空機側アンテナ18を介して検出用信号を受信した場合には、受信した検出用信号を航空機側制御ユニット10に出力する。無人航空機2の応答部16は、検出用信号の入力に応じて応答信号を生成し、航空機側RF信号処理ユニット14を制御して、応答信号を送信させる。この応答信号は、ポート側アンテナ20を介して着陸ポート3のポート側RF信号処理ユニット25に受信され、制御端末4の端末側制御ユニット27に出力される。制御端末4の距離検出部30は、入力した応答信号に基づいて、ポート側アンテナ20と航空機側アンテナ18との離間距離(以下、「アンテナ間距離」という)を検出する。
【0033】
アンテナ間距離の検出は既存の技術により適切に実行される。なお、応答信号には、アンテナ間距離の検出に利用される情報が不足なく含まれている。応答信号には、検出用信号を受信したときの受信強度を示す情報が少なくとも含まれ、また、アンテナ間距離の検出に飛行関連センサー13の検出値を利用する場合には、当該センサーの検出値が含まれている。また、距離検出部30は、応答信号に含まれる情報のほか、検出用信号を送信してから応答信号を受信するまでのレスポンスタイムや、検出用信号と応答信号との位相差等を反映してアンテナ間距離を検出する。
【0034】
距離検出部30は、アンテナ間距離を検出した後、端末側無線通信ユニット21を制御して、検出したアンテナ間距離を示す情報(以下、「距離通知情報」という)を無線通信で送信させる。無人航空機2の自動着陸制御部17は、航空機側無線通信ユニット15を介して距離通知情報を入力し、入力した情報に基づいてアンテナ間距離を認識する。以上の処理が行われる結果、動作モードが自動着陸モードの間、無人航空機2が電波送信範囲HN内に位置している場合には、基本的には、無人航空機2の自動着陸制御部17は、制御端末4から所定の周期で受信する距離通知情報に基づいて継続的に、アンテナ間距離を認識する。
【0035】
また、動作モードが自動着陸モードの間、制御端末4の逸脱進入検出部31は、電波送信範囲HNに無人航空機2が位置している状態から位置していない状態となる逸脱状態となったこと、および、位置していない状態から位置している状態となる進入状態となったことを検出する。図5は、逸脱進入検出部31の処理を説明するため、無人航空機2と着陸ポート3との位置関係を模式的に示す図である。
【0036】
今、図5において、無人航空機2が電波送信範囲HN内の位置P2に位置しているとする。この場合、無人航空機2の航空機側RF信号処理ユニット14による検出用信号の受信および応答信号の送信は正常に行われる。制御端末4の逸脱進入検出部31は、応答信号を入力する。進入検出部31は、入力した応答信号に関する情報、および、応答信号に基づいて距離検出部30が検出するアンテナ間距離に関する情報を利用して、無人航空機2が電波送信範囲HN内に位置していることを検出する。逸脱進入検出部31は、航空機側RF信号処理ユニット14が検出用信号を受信したときの受信強度の大きさや、検出用信号を送信してから応答信号を受信するまでのレスポンスタイムの遅延の状況、距離検出部30が検出するアンテナ間距離の精度(信頼性)等を反映して、応答信号の受信および距離検出部30によるアンテナ間距離の検出が正常に行われるか否かという観点から適切な手段で、無人航空機2が電波送信範囲HN内に位置していることを検出する。なお、距離検出部30が検出するアンテナ間距離の精度(信頼性)について、逸脱進入検出部31は、アンテナ間距離の推移等に基づいて認識する。
【0037】
なお、電波送信範囲HNは、逸脱進入検出部31によって、無人航空機2が電波送信範囲HN内に位置していることが検出される立体的な領域のことである。従って、図5を含む各図では、電波送信範囲HNの形状を円錐によって表しているが、このような決まった形状となるわけではない。
【0038】
その後、無人航空機2が、図5の位置P2から鉛直下方に向かって移動したとする。逸脱進入検出部31は、無人航空機2の鉛直下方へ向かう移動中、継続して、無人航空機2が電波送信範囲HN内に位置しているか否かを判定する。無人航空機2の鉛直下方へ向かう移動が進むと、いずれ無人航空機2が電波送信範囲HNから外れた状態となる。図5の位置P3は、無人航空機2が電波送信範囲HNから外れた直後の状態を示している。
【0039】
この状態となったときに、逸脱進入検出部31は、無人航空機2が電波送信範囲HN内に位置していないことを検出し、逸脱状態となったこと(電波送信範囲HN内に無人航空機2が位置している状態から位置していない状態となったこと)を検出する。逸脱進入検出部31は、応答信号の受信および距離検出部30によるアンテナ間距離の検出が正常に行われるか否かという観点から適切な手段で無人航空機2が電波送信範囲HN内に位置していないことを検出する。
【0040】
一方、無人航空機2が、図5の位置P3から鉛直上方に向かって移動したとする。逸脱進入検出部31は、無人航空機2の鉛直上方へ向かう移動中、継続して、無人航空機2が電波送信範囲HN内に位置しているか否かを判定する。なお、位置P3から鉛直上方へ向かう移動の開始直後からしばらくの間は、逸脱進入検出部31により、無人航空機2が電波送信範囲HN内に位置していないことが検出されるものとする。無人航空機2の鉛直上方へ向かう移動が進むと、いずれ無人航空機2が電波送信範囲HN内に位置した状態となる。本例では、図5の位置P2において、無人航空機2が電波送信範囲HN内に位置した状態となったものとする。
【0041】
この状態となったときに、逸脱進入検出部31は、無人航空機2が電波送信範囲HN内に位置していることを検出し、進入状態となったこと(電波送信範囲HN内に無人航空機2が位置していない状態から位置している状態となったこと)を検出する。
【0042】
以上が逸脱進入検出部31の処理である。逸脱進入検出部31は、逸脱状態となったことを検出した場合には、端末側無線通信ユニット21を制御して、逸脱状態となったことを示す情報(以下、「逸脱通知情報」という)を無線通信で送信させる。一方、逸脱進入検出部31は、進入状態となったことを検出した場合には、端末側無線通信ユニット21を制御して、進入状態となったことを示す情報(以下、「進入通知情報」という)を無線通信で送信させる。
【0043】
ここで、自動着陸制御部17は、初期位置に位置する無人航空機2を移動させて、着陸ポート3に着陸させる機能ブロックである。自動着陸制御部17は、無人航空機2の自動的な着陸に際し、鉛直方向(鉛直上方または鉛直下方)への移動か、または、水平方向への移動のみを無人航空機2に行わせる。これは、無人航空機2の鉛直下方へ向かう成分を含んだ移動を鉛直下方への移動に限定し、無人航空機2が着陸ポート3に着陸する瞬間の無人航空機2の移動方向が必ず鉛直下方となるようにすることによって、無人航空機2の安定的な着陸を実現するためである。なお、自動着陸制御部17は、飛行関連センサー13の検出値に基づいて無人航空機2の位置や姿勢を制御しつつ、飛行機構駆動ユニット11を制御することによって適切に無人航空機2の移動を実行する。
【0044】
さて、動作モードが自動着陸モードに移行すると、自動着陸制御部17は、初期位置(図4の位置P1)に位置する無人航空機2を鉛直下方へ向かって移動させる。図6の各図は、自動着陸制御部17の処理を説明するため、無人航空機2と着陸ポート3との位置関係を模式的に示す図である。自動着陸制御部17によって無人航空機2が鉛直下方へ向かって移動すると、いずれ、無人航空機2は、電波送信範囲HN内に位置した状態となる。図6(A)の符号P4は、この状態となったときの無人航空機2の位置の一例を示している。上述の通り、逸脱進入検出部31は、無人航空機2が電波送信範囲HN内に位置した状態となったときに、端末側無線通信ユニット21に進入通知情報を送信させる。自動着陸制御部17は、航空機側無線通信ユニット15を介して進入通知情報を受信し、進入状態となったことを認識し、引き続き無人航空機2を鉛直下方へ向かって移動させる。
【0045】
本例では、初期位置が、着陸領域8の鉛直上方から外れた場所に位置しているため、無人航空機2の鉛直下方への移動が更に進むと、いずれ、無人航空機2は、電波送信範囲HNから外れた状態となる。図6(B)の符号P5は、この状態となったときの無人航空機2の位置の一例を示している。上述の通り、逸脱進入検出部31は、無人航空機2が電波送信範囲HNから外れたときに、端末側無線通信ユニット21に逸脱通知情報を送信させる。自動着陸制御部17は、航空機側無線通信ユニット15を介して逸脱通知情報を受信し、逸脱状態となったことを認識し、無人航空機2の鉛直下方へ向かう移動を停止する。つまり、自動着陸制御部17は、無人航空機2の鉛直下方へ向かう移動中に、逸脱状態となった場合には、移動を停止する。
【0046】
なお、本例では無人航空機2の鉛直下方へ向かう移動中に逸脱状態となる現象が発生するのは、電波送信範囲HNが、ポート側アンテナ20を基点として、鉛直上方に向かうに従って水平方向の範囲が徐々に広がっていくような形状をしているからである。
【0047】
自動着陸制御部17は、逸脱状態となったことに応じて無人航空機2の鉛直下方へ向かう移動を停止した後、すぐに無人航空機2を鉛直上方へ向かって移動させる。無人航空機2の鉛直上方への移動が進むと、いずれ、無人航空機2は、電波送信範囲HN内に位置した状態となる。図6(C)の符号P6は、この状態となったときの無人航空機2の位置の一例を示している。上述の通り、逸脱進入検出部31は、無人航空機2が電波送信範囲HNから外れた状態から電波送信範囲HN内に位置した状態となったときに、端末側無線通信ユニット21に進入通知情報を送信させる。自動着陸制御部17は、航空機側無線通信ユニット15を介して進入通知情報を受信し、進入状態となったことを認識し、無人航空機2の鉛直上方へ向かう移動を停止する。つまり、自動着陸制御部17は、無人航空機2の鉛直上方へ向かう移動中に、進入状態となった場合には、移動を停止する。
【0048】
なお、電波送信範囲HNが、ポート側アンテナ20を基点として、鉛直上方に向かうに従って水平方向の範囲が徐々に広がっていくような形状をしていることに起因して逸脱状態が発生するため、逸脱状態となった後に、鉛直上方へ向かって移動することによって、電波送信範囲HN内に確実に復帰することができる。なお、電波送信範囲HN内に位置している無人航空機2を鉛直下方に移動させ、着陸ポート3に着陸する前に逸脱状態となった場合に、進入状態となるまで無人航空機2を鉛直上方に移動させる処理は、特許請求の範囲の「上下方向移動処理」に相当する。
【0049】
自動着陸制御部17は、進入状態となったことに応じて無人航空機2の鉛直上方へ向かう移動を停止した後、移動方向決定処理を実行する。移動方向決定処理は、特許請求の範囲の「水平方向移動処理」に含まれる処理である。図7は、移動方向決定処理の説明に利用する図であり、図6(C)の位置P6に位置する無人航空機2を図6(C)の矢印Y1に向かって見たときの様子を示している。図7では、無人航空機2を非常に単純化して描画している。図7において、破線H1は、位置P6と同一水平面上の電波送信範囲HNの外縁を示している。以下の説明では、進入状態となったことに応じて移動が停止した直後の無人航空機2の位置を、「基点位置」と表現する。図6(C)、図7の位置P6は、基点位置である。
【0050】
図7を参照し、移動方向決定処理において、自動着陸制御部17は、基点位置と同一水平面上で、基点位置を中心とする所定長(例えば、30cm)の半径の円を描くように、無人航空機2を移動させた後、無人航空機2を基点位置に戻らせる。図7の符号Z1は、無人航空機2の軌跡の一例を示している。図7の例では、自動着陸制御部17は、位置P6(基点位置)に位置する無人航空機2を所定長だけ水平方向に離間した位置Q1に移動させる。その後、自動着陸制御部17は、位置P6(基点位置)からの離間距離が所定長である状態を維持しつつ、無人航空機2を位置Q1→位置Q2→位置Q3→位置Q4→位置Q5→位置Q6の順番で移動させ、その後、位置P6(基点位置)に移動させている。
【0051】
自動着陸制御部17は、基点位置と同一水平面上で、基点位置を中心として円を描くように無人航空機2を移動させている間、所定のサンプリング周期で、無人航空機2の位置(ただし、基点位置に対する相対的な位置)、アンテナ間距離(ただし、位置Q1、Q2、Q6に位置している場合)、および、電波送信範囲HN内に無人航空機2が位置しているか否かを示す情報を記録する。なお、自動着陸制御部17は、飛行関連センサー13の検出値に基づいて上述した態様で無人航空機2を移動させる機能、および、移動中に基点位置に対する相対的な位置を認識する機能を有している。また、自動着陸制御部17は、距離検出部30から受信する距離通知情報に基づいてアンテナ間距離を認識し、また、逸脱進入検出部31から受信する情報に基づいて電波送信範囲HN内に無人航空機2が位置しているか否かを認識する。
【0052】
そして、自動着陸制御部17は、所定のサンプリング周期の各タイミングで記録した情報に基づいて、情報の記録が行われた位置のうち、電波送信範囲HN内であって、最もアンテナ間距離が短くなる位置を特定する。例えば、図7の例において、位置Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6のそれぞれで情報の記録が行われたとする。そして、位置Q1、Q2、Q6が電波送信範囲HN内に位置しており、かつ、位置Q1が最もアンテナ距離が短くなる位置であるとする。この場合、自動着陸制御部17は、位置Q1を、電波送信範囲HN内であって、最もアンテナ間距離が短くなる位置として特定する。
【0053】
次いで、自動着陸制御部17は、基点位置から、特定した位置に向かう方向を無人航空機2の水平方向における移動方向として決定する。図7の例では、自動着陸制御部17は、位置P6(基点位置)から位置Q1に向かう方向(矢印Y2が示す方向)を無人航空機2の水平方向における移動方向として決定する。ここで、理論的には、基点位置が属する水平面では、この水平面と、ポート側アンテナ20から鉛直上方に延びる仮想線との交点に無人航空機2が位置したときに、アンテナ間距離が最も短くなる。従って、決定された移動方向は、基点位置から、当該交点へ向かう方向ということができる。
【0054】
以上が、自動着陸制御部17が実行する移動方向決定処理である。以上のように、自動着陸制御部17は、上下方向移動処理により進入状態となった無人航空機2の位置を基点として、基点位置からの水平距離が同じ複数の位置に無人航空機2を水平移動させると共に、複数の位置のそれぞれにおいて距離検出部30により検出されるアンテナ間距離を取得し、基点位置から、複数の位置のうち最も短いアンテナ間距離が検出された位置に向かう方向を無人航空機2の移動方向とする。このような構成のため、アンテナ間距離が取得可能であることを活用して、ポート側アンテナ20から鉛直上方に延びる仮想線に向かう方向を移動方向として的確に決定することができる。
【0055】
移動方向決定処理により移動方向を決定した後、自動着陸制御部17は、実移動処理を実行する。実移動処理は、特許請求の範囲の「水平方向移動処理」に含まれる処理である。図8は、実移動処理の説明に利用する図であり、図6(C)、図7の位置P6に位置する無人航空機2が移動する様子を示している。実移動処理において、自動着陸制御部17は、決定した移動方向に無人航空機2を水平移動させる。自動着陸制御部17は、無人航空機2を水平移動させている間、所定のサンプリング周期でアンテナ間距離を認識する。
【0056】
移動の開始直後からしばらくの間は、無人航空機2がポート側アンテナ20から鉛直上方に延びる仮想線に向かう方向に移動しているため、アンテナ間距離は、徐々に短くなっていく。一方で、移動が進むと、一のタイミングで認識したアンテナ間距離よりも、次のタイミングで認識したアンテナ間距離の方が長くなる状態となる。自動着陸制御部17は、この状態となった場合、当該一のタイミングのときの位置に向かって無人航空機2を水平移動させ、当該一のタイミングのときの位置に無人航空機2を戻し、その位置で無人航空機2の移動を停止する。ただし、当該一のタイミングと当該他のタイミングとが非常に短く設定されている場合は、無人航空機2を戻す処理は実行しなくてもよい。
【0057】
図8の例において、自動着陸制御部17が、位置P6(基点位置)から、位置R1→位置R2→位置R3→位置R4の順番で無人航空機2を移動させ、位置R1、R2、R3、R4のそれぞれでアンテナ間距離を認識したものとする。また、この場合において、位置R1から位置R3までは、徐々にアンテナ間距離が小さくなっていく一方、位置R4で認識したアンテナ間距離が、位置R3で認識したアンテナ間距離よりも大きかったとする。この場合、自動着陸制御部17は、無人航空機2が位置R4まで移動した段階で、無人航空機2を位置R3まで戻し、位置R3において無人航空機2の移動を停止する。
【0058】
以上が、自動着陸制御部17が実行する実移動処理である。上述したように、理論的には、基点位置が属する水平面では、この水平面と、ポート側アンテナ20から鉛直上方に延びる仮想線との交点に無人航空機2が位置したときに、アンテナ間距離が最も短くなる。従って、実移動処理の完了後の無人航空機2は、当該交点(または、当該交点に近い場所)に位置しているものと想定される。
【0059】
ただし、無人航空機2の移動中に自動着陸制御部17が認識するアンテナ間距離(=距離検出部30が検出するアンテナ間距離)は、常に正確な値というわけではなく、測位誤差によって正しい値から乖離した値となる場合がある。また、移動方向決定処理によって決定された移動方向は、常に正確というわけではなく、ポート側アンテナ20から鉛直上方に延びる仮想線に向かう方向からずれている場合もある。このため、実移動処理の完了後の無人航空機2の位置が、ポート側アンテナ20から鉛直上方に延びる仮想線からずれた位置である可能性も排除できない。
【0060】
その後、再び、自動着陸制御部17は、電波送信範囲HN内に位置している無人航空機2を鉛直下方に移動させ、着陸ポート3に着陸する前に逸脱状態となった場合には、進入状態となるまで無人航空機2を鉛直上方に移動させる処理(上下方向移動処理)を実行し、進入状態となるまで無人航空機2を鉛直上方に移動させた場合には、水平方向移動処理(移動方向決定処理および実移動処理)を実行する。すなわち、自動着陸制御部17は、着陸ポート3への着陸が完了するまで、上下方向移動処理と水平方向移動処理とを交互に繰り返し実行する。なお、詳細は省略するが、上下方向移動処理において、鉛直下方へ向かって無人航空機2が移動されているときに、無人航空機2が着陸ポート3に着陸した場合には、適切にそのことが検出された上で、必要な処理(プロペラ7の駆動を停止する処理等)が実行される。
【0061】
図9は、初期位置に位置する無人航空機2が着陸ポート3に着陸する際に、無人航空機2が辿る軌跡の一例を、その位置が変位する様子と共に示す図である。図9の例では、矢印C1から矢印C7の順番で無人航空機2が移動し、着陸ポート3に着陸している。
【0062】
以上のように、本実施形態に係る無人航空機制御システム1では、逸脱状態および進入状態となったことを検出するようにした上で、着陸ポート3への無人航空機2の着陸に際し、電波送信範囲HN内に位置する無人航空機2を鉛直下方に移動させ、着陸ポート3に着陸する前に逸脱状態となった場合は、進入状態となるまで無人航空機2を鉛直上方に移動させ、水平方向における無人航空機2の位置を調整した後、再び、無人航空機2を鉛直下方に移動させるようにしている。
【0063】
この構成によれば、無人航空機2の着陸に際し、ポート側アンテナ20が配置された着陸ポート3に向かって真っ直ぐ移動しておらず、無人航空機2が電波送信範囲HNから外れてしまった場合であっても、そのことが検出された上で、確実に電波送信範囲HN内に復帰可能な方向である鉛直上方に無人航空機2が移動されることによって、電波送信範囲HN内に復帰され、再び、電波送信範囲HN内での着陸が試行される。
【0064】
このため、無人航空機2が電波送信範囲HNから外れた場合に、無人航空機2が電波送信範囲HN内に戻らず、正常に着陸できないという事態が発生することを防止できる。すなわち、本実施形態の構成によれば、着陸ポート3が送信する電波を利用して無人航空機2を着陸ポート3に自動で着陸させるシステムについて、無人航空機2が、電波の特性を利用した適切な移動を行って、正常に着陸ポート3に着陸できるようにすることができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明しが、上記実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0066】
例えば、上記実施形態で一の装置が有していた一の機能ブロックを、他の装置が有する構成としてもよい(ただし、当該他の装置において、当該一の機能ブロックの機能を発揮できる場合に限る)。一例として、距離検出部30および逸脱進入検出部31を、無人航空機2が有する構成としてもよく、着陸ポート3が有する構成としてもよい。また、一例として、自動着陸制御部17を、制御端末4が有する構成としてもよい。
【0067】
また、上述した実施形態では、飛行機構6は、4枚のプロペラ7を有していた。しかしながら、飛行機構6が、実施形態で例示した構造に限定されないことは勿論である。例えば、プロペラの数は、4枚である必要は無く、例えば、3枚や、6枚、8枚等であってもよい。また例えば、飛行機構2は、通常のヘリコプターのように、メインローター(回転翼)を有し、無人航空機は、メインローターの揚力により浮上し、飛行する構成でもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 無人航空機制御システム
2 無人航空機
3 着陸ポート
17 自動着陸制御部
18 航空機側アンテナ
20 ポート側アンテナ
30 距離検出部
31 逸脱進入検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9