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特許7091254ランタン入りタングステンイオン源およびビームラインコンポーネント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】ランタン入りタングステンイオン源およびビームラインコンポーネント
(51)【国際特許分類】
   H01J 27/02 20060101AFI20220620BHJP
   H01J 37/317 20060101ALI20220620BHJP
   H01J 37/08 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
H01J27/02
H01J37/317 Z
H01J37/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018557048
(86)(22)【出願日】2017-05-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 US2017032603
(87)【国際公開番号】W WO2017197378
(87)【国際公開日】2017-11-16
【審査請求日】2020-03-25
(31)【優先権主張番号】62/336,246
(32)【優先日】2016-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505413587
【氏名又は名称】アクセリス テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】コルヴィン,ニール
(72)【発明者】
【氏名】シェ,ツェ-ジェン
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァスタイン,ポール
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-093431(JP,A)
【文献】特表2007-531214(JP,A)
【文献】特開2015-225720(JP,A)
【文献】国際公開第2015/023903(WO,A1)
【文献】特開2010-080446(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106498360(CN,A)
【文献】特開昭57-138744(JP,A)
【文献】特開昭54-51461(JP,A)
【文献】HAUBLEIN,V. et al.,Investigation of lanthanum contamination from a lanthanated tungsten ion source,ION IMPLANTATION TECHNOLOGY,IEEE,2003年,p.346-349
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 27/02
H01J 37/317
H01J 37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン注入システムにおけるイオン源のための導電性コンポーネントであって、
前記導電性コンポーネントは、耐熱金属と混合されたランタン入りタングステンを含むランタン入り合金の、堆積されたコーティングを含んでおり、
前記ランタン入り合金は、1%から3%までのランタン粉末を含んでおり、
前記耐熱金属は、モリブデンおよびタンタルのうちの1つ以上を含んでおり、
前記導電性コンポーネントは、前記イオン注入システムの動作時に、パッシベーションされている、導電性コンポーネント。
【請求項2】
前記導電性コンポーネントは、開口プレートを含んでいる、請求項1に記載の導電性コンポーネント。
【請求項3】
前記導電性コンポーネントは、カソードを含んでいる、請求項1に記載の導電性コンポーネント。
【請求項4】
前記導電性コンポーネントは、カソードシールドを含んでいる、請求項1に記載の導電性コンポーネント。
【請求項5】
前記導電性コンポーネントは、リペラを含んでいる、請求項1に記載の導電性コンポーネント。
【請求項6】
前記導電性コンポーネントは、ストライクプレートを含んでいる、請求項1に記載の導電性コンポーネント。
【請求項7】
請求項1からのいずれか1項に記載の導電性コンポーネントを備えている、イオン注入システム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の参照〕
本願は、「ランタン入りタングステンイオン源およびビームラインコンポーネント」(LANTHANATED TUNGSTEN ION SOURCE AND BEAMLINE COMPONENTS)というタイトルが付された米国仮出願第62/336,246号(2016年5月13日出願)による利益を主張する。当該仮出願の全体の内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、全般的には、イオン注入システムに関する。より具体的には、本発明は、改善されたイオン源およびビームラインコンポーネントに関する。当該改善されたイオン源およびビームラインコンポーネントは、イオン注入システムの様々な態様の寿命、安定性、および動作を改善する。
【0003】
〔背景〕
半導体デバイスの製造において、イオン注入は、半導体に不純物をドープ(ドーピング)するために用いられている。多くの場合、イオン注入システムは、集積回路の製造時に、(i)n型材料またはp型材料のドーピングを生じさせるために、または、(ii)パッシベーション層を形成するために、イオンビームに由来するイオンによってワークピース(例:半導体ウェハ)をドープすることを目的として使用される。多くの場合、集積回路の製造時に、半導体材料を生成するために、所定のエネルギーレベルで、かつ、制御された濃度によって、ウェハに特定のドーパント材料の不純物を選択に注入するために、このようなビーム処理が利用される。イオン注入システムが半導体ウェハをドーピングするために使用される場合、イオン注入システムは、所望の外因性材料(extrinsic material)を生成するために、ワークピースの内部に選択されたイオン種を注入する。アンチモン、砒素、またはリン等のソース材料に由来して生成されたイオンを注入することにより、例えば「n型」の外因性材料のウェハが得られる。一方、多くの場合、「p型」の外因性材料のウェハは、ボロン(ホウ素)、ガリウム、またはインジウム等のソース材料を用いて生成されたイオンから得られる。
【0004】
一般的なイオン注入器は、イオン源(イオンソース)、イオン引出(抽出)(extraction)装置、質量分析装置、ビーム輸送装置、およびウェハ処理装置を含む。イオン源は、所望の原子または分子のドーパント種のイオンを生成する。これらのイオンは、引出システムによって前記ソースから引き出される。当該引出システムは、一般的には電極のセットである。当該引出システムは、ソースから来たイオン流(flow of ions)にエネルギーを与え、かつ、当該イオン流を方向付けることにより、イオンビームを形成する。質量分析装置において、イオンビームから所望のイオンが分離される。当該質量分析装置は、一般的には、引き出されたイオンビームに対して質量分散または質量分離を行う磁気ダイポール(双極子)である。イオン輸送装置は、一般的には、一連の焦点調整(合焦)(focusing)装置を含む真空システムである。当該イオン輸送装置は、イオンビームの所望の特性を維持しつつ、ウェハ処理装置に向けてイオンビームを輸送する。最終的には、半導体ウェハは、ウェハハンドリングシステムを用いて、ウェハ処理装置の内外へと輸送される。当該ウェハハンドリングシステムは、処理予定のウェハをイオンビームの前面に配置し、かつ、処理後のウェハをイオン注入器から取り出すために、1つ以上のロボットアームを含んでいてもよい。
【0005】
イオン源(一般的には、アークイオン源とも称される)は、イオン注入器において使用されるイオンビームを生成する。そして、イオン源は、イオンを生成するための加熱フィラメントカソードを含んでいてもよい。当該イオンは、ウェハ処理のために適切なイオンビームへと成形される。例えば、Sferlazzo et al.のUS特許5,497,006は、カソードを有するイオン源を開示している。当該カソードは、ベースによって支持されており、かつ、イオン化電子(ionizing electrons)をガス閉じ込めチャンバの内部へと排出するために、当該ガス閉じ込めチャンバに対して配置されている。Sferlazzoらのカソードは、ガス閉じ込めチャンバの内部へと部分的に延びるエンドキャップを有する、導電性を有する管状のボディ(tubular conductive body)である。フィラメントは、管状のボディの内部において支持されており、かつ、電子を放出する。当該電子は、電子衝撃(electron bombardment)によってエンドキャップを加熱する。これにより、イオン化電子をガス閉じ込めチャンバの内部へと熱電子的に(thermionically)放出できる。
【0006】
従来のイオン源ガス、例えばフッ素または他の揮発性腐食性種(volatile corrosive species)は、時間の経過と共にカソードの内径部およびリペラのシールを腐食させる(エッチングする)ことがある。このため、揮発性ガスが漏出し、付近の絶縁体(例えば、リペラアセンブリ絶縁体)にダメージを与えるおそれがある。このような漏出により、イオン源の耐用寿命が短くなる。その結果、イオン注入器をシャットダウン(停止)させて、当該イオン注入器内の各部品を交換することに至る。
【0007】
〔概要〕
そこで、本開示は、イオン源の寿命を向上させるシステムおよび機構を提供する。なお、下記の内容は、本発明の一部の態様に対する基本的な理解を提供することを目的として、本開示の簡略化された概要を示すものである。本概要は、本発明の概略を広範に述べるものではない。また、本概要は、本発明の基幹要素もしくは重要な要素を特定するものでもなければ、本発明の範囲を規定するものでもない。本概要の目的は、後述するより詳細な説明の前置きとして、本発明の一部の概念を簡潔に示すことである。
【0008】
本開示の一態様では、1つ以上の導電性コンポーネントを有するイオン注入システムが提供される。当該導電性コンポーネントは、(i)ランタン入りタングステン(lanthanated tungsten)と、(ii)所定のパーセンテージ(割合)の希土類金属と混合されて合金化された耐熱金属のうちの1つ以上と、によって構成されている。一例として、イオン源が提供される。当該イオン源は、アークチャンバを備えている。前記アークチャンバは、当該アークチャンバの内部領域を画定するボディ(本体)を有している。ライナは、前記アークチャンバの前記ボディと操作可能に接続(連結)されている。別の例示的な態様において、シャフトおよびヘッドを有する電極がさらに提供される。前記シャフトは、前記ボディと前記ライナの孔とを貫通する。さらに、前記シャフトは、前記ライナから電気的に絶縁されている。前記電極は、例えば、カソード、リペラ、アンチカソード、およびカソードシールドのうちの1つ以上を含んでいる。
【0009】
(i)ランタン入りタングステン、および、(ii)前記所定のパーセンテージの希土類金属と混合されて合金化された前記耐熱金属のうちの1つ以上と、によって構成されている前記導電性コンポーネントは、前記イオン源のコンポーネントであってよい。当該イオン源のコンポーネントは、例えば、前記カソード、前記カソードシールド、前記リペラ、前記ライナ、開口プレート、アークチャンバボディ、およびストライクプレート(受板)のうちの1つ以上である。前記開口プレートは、引出開口、抑制開口、および接地開口のうちの1つ以上と関連付けられていてもよい。
【0010】
本開示の別の例示的な態様において、イオン源(例:イオン注入システムのためのイオン源)が提供される。前記イオン源は、例えば、前記アークチャンバとガス源(ガスソース)とを備える。前記ガス源は、前記アークチャンバボディの前記内部領域へとガスを導入するように、さらに構成されている。
【0011】
別の例として、前記イオン源は、前記カソードとは反対側に(対向するように)(opposite)配置されたリペラを備えている。前記アークチャンバからイオンを引き出すために、当該アークチャンバ内に、アークスリットがさらに設けられてもよい。
【0012】
上述の目的および関連する目的を達成するために、本開示は、以下に十分に説明され、かつ、特許請求の範囲において具体的に示された構成を備えている。以下の説明および添付の図面は、本発明の所定の例示的な実施形態を詳細に開示する。しかしながら、これらの実施形態は、本発明の原則が採用されうる様々な手法の一部を例示している。本発明の他の目的、利点、および新たな構成は、図面とともに考慮されることにより、以下の本発明の詳細な説明から、明確になるであろう。
【0013】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、本開示の複数の態様に係るイオン源カソードシールドを利用した例示的な真空システムのブロック図である。
【0014】
図2は、本開示の複数の態様に係る例示的なイオン源の斜視図である。
【0015】
図3は、本開示の複数の態様に係る例示的なアークチャンバを示す。
【0016】
図4は、20時間の動作後における、従来のタングステンカソードおよびシールドを示す。
【0017】
図5は、20時間の動作後における、本開示の複数の態様に係るランタン入りタングステンカソードおよびシールドを示す。
【0018】
図6は、coガスを用いずに30時間運転させた後の、従来のアークチャンバを示す。
【0019】
図7は、coガスを用いずに様々なソース材料を用いて30時間運転させた後の、本開示の複数の態様に係るランタン入りタングステンアークチャンバを示す。
【0020】
図8は、純タングステンおよび本開示の複数の態様に係るランタン入りタングステンについての放出特性のグラフを示す。
【0021】
図9は、本開示の複数の態様に係る、様々な化合物の諸特性を示すチャートである。
【0022】
〔詳細な説明〕
本開示は、概して、イオン注入システムおよび当該イオン注入システムに関連するイオン源を対象としている。特に、本開示は、イオン注入システムの寿命、安定性、および動作を改善するために、ランタン入りタングステンによって構成されたイオン注入システムのためのコンポーネントを対象としている。
【0023】
そこで、図面を参照して本発明を説明する。同様の参照番号は、同様の部材を一貫して参照するために用いられてよい。様々な態様についての説明は単なる例示であると理解されるべきであり、限定的な意味合いで解釈されるべきではない。以下の記載では、説明のために、様々な具体的な細部が、本発明に対する十分な理解を与えるために開示されている。但し、本発明はこれらの具体的な細部がなくとも実施されてよいことは、当業者にとって明白であろう。さらに、本発明の範囲は、添付の図面を参照して以下に説明される実施形態または実施例に限定されることは意図されていない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその実質的な均等物によってのみ限定されることが意図されている。
【0024】
また、図面は、本開示の実施形態の様々な態様を例示するために提供されていることに留意されたい。このため、図面は、単に概略的なものとみなされるべきである。特に、図面に示された各部材は、必ずしも互いにスケール通りに描かれているわけではない。また、図面における様々な部材の位置は、各実施形態に対する明確な理解をもたらすために選択されたものである。このため、当該位置は、本発明の実施形態に係る実装における、様々な部材の実際の相対的な位置関係を必ずしも示しているわけではないと解釈されるべきである。さらに、本明細書において説明される様々な実施形態および実施例の構成は、特に明記されない限り、互いに組み合わせられてもよい。
【0025】
また、以降の説明において、図面に示されたまたは本明細書において説明された機能ブロック、デバイス、コンポーネント、回路素子、またはその他の物理的または機能的なユニット間における直接的な接続または連結は、いずれも、間接的な接続または連結によって実現されてもよいと理解されるべきである。さらに、図面に示された機能ブロックまたはユニットは、ある実施形態では、個別の構成または回路として実装されてよい。あるいは、当該機能ブロックまたはユニットは、別の実施形態では、全体的または部分的に、共通の構成または回路として実現されてもよい。例えば、いくつかの機能ブロックは、共通のプロセッサ、例えば、シグナルプロセッサ上で動作するソフトウエアとして実現されてもよい。さらに、特に明記されない限り、以下の明細書において有線によるものであると説明されたいずれの接続も無線通信として実現されてもよいと理解されるべきである。
【0026】
本開示の一態様に係る図面を参照する。図1は、例示的な真空システム100を示す。本例の真空システム100は、イオン注入システム101を備える。但し、様々な他のタイプの真空システム(例:プラズマ処理システムまたは他の半導体処理システム)も、考慮されてよい。イオン注入システム101は、例えば、ターミナル102、ビームラインアセンブリ104、およびエンドステーション106を備える。
【0027】
一般的には、ターミナル102内のイオン源(イオンソース)108は、電源110に接続されている。これにより、イオン源108に供給されるソースガス112(ドーパントガスとも称される)は、引出電極115を介して引き出されるイオンビーム114を形成するために、複数のイオンへとイオン化させられる。本例のイオンビーム114は、質量分析器117(例:ビームステアリング装置)の入口(エントランス)116を通過して、開口118を出て、エンドステーション106に向かうように方向付けられている。エンドステーション106において、イオンビーム114は、ワークピース120(例:シリコンウェハ等の半導体、ディスプレイパネル等)に衝突する。当該ワークピースは、チャック122(例:静電チャックまたはESC)に選択的にクランプまたは取付けされる。ワークピース120の格子の内部に埋め込まれると、注入されたイオンは、ワークピースの物理的および/または化学的な特性を変化させる。このため、イオン注入は、半導体デバイスの製造および金属の仕上げ加工、ならびに、材料科学の研究における様々な用途に用いられている。
【0028】
本開示のイオンビーム114は、任意の形状(例:ペンシルビーム、スポットビーム、リボンビーム、スキャンビーム、または他の形状)を取りうる。これらの形状のイオンビーム内のイオンは、エンドステーション106に向けられる。これらの形状は全て、本開示の範囲に含まれると考慮される。
【0029】
1つの例示的な態様によれば、エンドステーション106は、プロセス環境128と関連付けられたプロセスチャンバ124(例:真空チャンバ126)を備える。プロセス環境128は、概して、プロセスチャンバ124の内部に存在する。一例として、プロセス環境128は、真空源(真空ソース)130(例:真空ポンプ)によって生成された真空を含む。真空源130は、プロセスチャンバと連結されており、当該プロセスチャンバを十分に減圧排気(evacuate)するように構成されている。さらに、真空システム100を全体的に制御するために、コントローラ132が設けられている。
【0030】
本開示は、上述のイオン注入システム101におけるイオン源108の稼働時間(utilization)を増加させ、かつ、当該イオン源108の不稼働時間(downtime)を低減させるように構成されたシステムおよび装置を提供する。但し、本開示の装置は、他の半導体処理装置(例:CVD、PVD、MOCVD、エッチング装置、および様々なその他の半導体処理装置)において実施されてもよいことが理解されるであろう。これらの実施は全て、本開示の範囲内に含まれると考慮される。有利なことに、本開示の装置は、予防保全(preventive maintenance)サイクル間のイオン源108の使用期間(length of usage)を増加させる。その結果、真空システム100の全体的な生産性および寿命を向上させることができる。
【0031】
イオン源108(イオン源チャンバとも称される)は、例えば、好適な高い温度性能(temperature performance)を提供するために、耐熱金属(refractory metal)(W、Mo、Ta、等)およびグラファイト(黒鉛)を用いて製作されてよい。この場合、これらの材料は、半導体チップの製造者によって一般的に容認されている。ソースガス112は、イオン源108の内部において使用される。ソースガスは、自然状態では、導電性を有していてもよく、導電性を有していなくともよい。但し、ひとたびソースガス112が分解またはフラグメント化される(cracked or fragmented)と、イオン化ガスの副生成物(ionized gas by-product)は、非常に高い腐食性を有しうる。
【0032】
ソースガス112の一例として、三フッ化ホウ素(ボロントリフルオリド)(BF)がある。三フッ化ホウ素は、イオン注入システム101において、ホウ素-11またはBFのイオンビームを生成するためのソースガスとして使用されうる。BF分子のイオン化時には、3つのフッ素のフリーラジカルが生成される。耐熱金属(例:モリブデンまたはタングステン)は、約700℃付近の動作温度下でイオン源チャンバ108の構造上の健全性(structural integrity)を維持するために、当該イオン源チャンバ108を構成または補強(line)するために使用されうる。但し、耐熱性を備えたフッ素化合物は、揮発性を有しており、室温においてさえも、非常に高い蒸気圧を有する。イオン源チャンバ108内において生成されたフッ素ラジカルは、タングステン金属(モリブデンまたはグラファイト)をアタック(侵食)し、六フッ化タングステン(タングステン(VI)ヘキサフルオリド)(WF)(フッ化モリブデンまたはフッ化炭素)を形成する。すなわち、
【0033】
【化1】
【0034】
または、
【0035】
【化2】
【0036】
の通りである。
【0037】
一般的に、六フッ化タングステンは、高温の表面上で分解する。例えば、図2に示すイオン源200内において、六フッ化タングステンまたはその他の生成物(resultant material)は、イオン源の様々な内部コンポーネント203の表面202(例えば、イオン源のアークチャンバ208に関連付けられた、カソード204の表面、リペラ206の表面、および、アークスリット光学部材(不図示)の表面)上において分解しうる。このことは、前記式(1)に示すように、ハロゲンサイクルと称される。しかし、前記生成物は、汚染物質214(例えば、固体状態の微粒子状汚染物)の形態として、アークチャンバ208の壁210、ライナ212、または他のコンポーネント、ならびにアークスリット上に戻って沈着および/または凝結しうる。ライナ212は、例えば、アークチャンバ208のボディ(本体)216と操作可能に連結される交換可能な部材215を含む。当該ライナは、グラファイトまたは他の様々な材料によって構成されている。交換可能な部材215は、例えば、アークチャンバ208が一定時間稼働した後、簡単に交換可能な装着面(wear surface)を提供する。
【0038】
カソードが間接的に加熱される場合、内部コンポーネント203上に堆積される汚染物質214の別の発生源は、カソード204(例:タングステンまたはタンタルによって構成されたカソード)である。この場合、当該間接的に加熱されたカソードは、イオン源プラズマの発生および維持(例:熱電子放出)のために使用される。間接的に加熱されたカソード204およびリペラ206(例:アンチカソード)は、例えば、アークチャンバ208のボディ216に対して負電位にある。そして、カソードおよびリペラの両方は、イオン化ガスによってスパッタリングされうる。リペラ206は、例えば、タングステン、モリブデン、またはグラファイトによって構成されてよい。アークチャンバ208の内部コンポーネント203上に堆積される汚染物質214のさらに別の発生源は、ドーパント材料(ドーパント物質)(不図示)それ自体である。時間の経過に伴い、これらの汚染物質214の堆積膜には、応力の発生による剥離が起こりうる。このため、イオン源200の寿命が短くなる。
【0039】
表面状態は、基板と当該基板上に堆積した膜との間において重要な役割を果たす。ロンドン分散力(London dispersion force)は、例えば、物質中の異なる部分における過渡的な双極子間もしくは多極子間の弱い相互作用を表し、ファンデルワールス引力(attractive van der Waals force)の大部分を占める。これらの成果は、異なる金属基板上での原子吸着および分子吸着についてより良く理解する上で、重大な意味合いを有する。第1原理計算と運動速度方程式解析とを統合したマルチスケールモデリングは、1,000℃から250~300℃への成長温度の大幅な降下を示している。
【0040】
界面領域内では強い原子結合が形成される可能性は低いため、(i)基板(例えば、カソード204、ライナ212、および/またはリペラ206)と堆積した汚染物質214との間の熱膨張係数差、(ii)高出力イオンビームと低出力イオンビームとが切り替わった場合の熱サイクル、および、(iii)不均一なプラズマ境界内に留まる注入物質の解離によって、早期の故障が引き起こされうる。このような堆積物中の残留応力には、2種類ある。一方(1つ目)は、成膜時の欠陥に起因して発生する残留応力である。他方(2つ目)は、基板と堆積膜との間の熱膨張係数の不一致に起因する残留応力である。
【0041】
装置の製造者による、ソース寿命の長大、イオンビーム電流の増大、イオンビームの安定性、および非専用種を用いた動作(non-dedicated species operation)の要求によって、従来のイオン源の設計は限界に達した。これらの要求のそれぞれは、相互に両立できないわけではない。しかしながら、早期に故障しないイオン源を提供するために、一般的に、1つ以上の性能特性が犠牲にされる。
【0042】
分解作用をもたらす(cracking)GeF、BF、SiF、CO、およびCOに由来して生成されるフッ化物および酸化物の強い腐食性は、従来の耐熱金属に対して、問題を引き起こす(challenge)。当該従来の耐熱金属は、イオン源200、および、当該イオン源に関連するコンポーネントを構成するために使用される。タングステンフッ化物(例:WF)が形成されることにより、一般的に、イオン源200の性能が劣化する。当該タングステンフッ化物は、(例えば、ハロゲンサイクルによって)後続的に分解し、カソード、リペラ(例えば、アノード)、およびアークスリット光学部材(不図示)等の加熱面上にタングステンを堆積させる。また、タングステンフッ化物(WF)は、例えば、イオン源200内の絶縁体と反応しうる。これにより、導電性のコーティング(被膜)が形成される。当該導電性のコーティングは、イオンビームを不安定にさせ、イオン源および関連コンポーネントの寿命を短縮しうる。内部ソースコンポーネント上にWOおよびWOが形成されることは、例えば、タングステン酸化物から放出された残留酸素がある閾値レベルを下回るまで、他の種(例えば、11Bおよび49BF)への遷移に悪影響を及ぼしうる。
【0043】
本開示は、イオン源200に関連するコンポーネント(例えば、内部アークチャンバコンポーネント)に対し、(i)ランタン入りタングステン(WL)、または、(ii)所定のパーセンテージ(割合)の希土類金属と混合されて合金化された他の耐熱金属、を利用する。例えば、このようなランタン入りタングステンコンポーネントを提供することにより、有利なことに、イオン源への上述のダメージを防ぐために、残留フッ素および/または残留酸素の作用を妨げる(tie-up)coガス(co-gas)(例えば、水素)の必要性および/または使用が排除される。FおよびOとランタンとの反応は、例えば、保護表面層をもたらす。当該保護表面層は、2000℃を超える温度において非常に安定性が高い。一方、タングステンフッ化物およびタングステン酸化物は、揮発性が非常に高い(例:ハロゲンサイクル)。このため、イオンビームの不安定性を増大させるとともに、イオン源の寿命を短縮させる。さらに、本開示のイオン源200は、当該イオン源の(its)仕事関数が小さく、かつ、カソード先端における炭化タングステンまたはタングステン酸化物の形成量が少ないため、改善されたカソード電子放出を提供する。これにより、炭素注入のためのカソード電子放出を減少できる。
【0044】
(i)ランタン入りタングステン、または、(ii)所定のパーセンテージの希土類金属と混合されて合金化された他の耐熱金属を使用して、アーク内部コンポーネントを構成することに加えて、イオン注入システムのアークチャンバボディ、および、アークチャンバの下流に位置する他のコンポーネントも、このような材料を利用して構成されてよい。例えば、引出電極光学部材(例えば、抑制開口および接地開口)、および、その他の下流に位置するイオンビーム画定開口、ライナ、およびイオンビームストライクプレート(イオンビーム受板)も、このようなランタン入りタングステン材料によって形成されてよい。引き出されたフッ素イオンまたは酸素イオンによるエッチング(腐食)またはスパッタリングの影響を受けやすいコンポーネントはいずれも、このような材料によって形成される対象物の候補として考慮される。ここで、従来のシステムにおいて形成される揮発性腐食性導電性ガスは、一般的に、重要な(critical)絶縁体を覆う。
【0045】
有利なことに、本開示は、イオン注入システムにおけるランタン入りタングステンの使用を提供する。ランタン入りタングステン材料は、フッ素に対して耐性があり、そのため、エッチングの問題および汚染の問題を軽減する。さらに、ランタン入りタングステン材料は、特定のcoガスの使用を不要にする。
【0046】
本開示の別の例示的な態様において、図3は別の例示的な、本開示が利用されうるアークチャンバ300を示す。図3のアークチャンバ300は、図2のアークチャンバ208と類似点が多い。図3に示すように、アークチャンバ300は、当該アークチャンバの内部領域304を画定するボディ302を有する。アークチャンバ300は、例えば、1つ以上の電極304を備える。当該1つ以上の電極305は、例えば、カソード306とリペラ308とを含む。アークチャンバ300は、例えば、アークチャンバからイオンを引き出すためのアークスリット310をさらに備える。1つ以上のライナ312が、アークチャンバ300のボディ302に操作可能に接続されている。ボディ302は、例えば、1つ以上の壁314をさらに備えていてもよい。当該壁は、(i)当該ボディに操作可能に接続されている、または、(ii)当該ボディと一体化されている。一例として、カソードシールド316は、カソード306の周囲を概ね取り囲んでいる。
【0047】
本開示において、電極305(例えば、カソード306およびリペラ308のうちの1つ以上)およびカソードシールド316のうちの1つ以上は、(i)ランタン入りタングステンを含むか、または、(ii)ランタン入りタングステンにより構成されている。さらに、アークチャンバ300のライナ312、壁314、および/または引出開口310のうちの1つ以上は、(i)ランタン入りタングステンを含んでいてもよいし、または、(ii)ランタン入りタングステンにより構成されていてもよい。現時点において、本開示は、ランタン入りタングステンは、従来のイオン源において使用される純タングステン(pure tungsten)と比べて、化学的侵食(chemical attack)に対してより高い耐性を有していると評価している。現時点において考察されている理論は、アークチャンバ300において生じるイオン化プロセス時に、ランタン入りタングステンが、露出面上に酸化ランタン層を形成するということである。この酸化ランタン層は、従来の化学的成分(chemistry)よりも化学的な安定性が高い。このため、当該酸化ランタン層は、さらなる侵食(corrosion)を概ね抑制する。
【0048】
図4は、二酸化炭素(CO)をアークチャンバに20時間流し込んだ後の、従来のカソード400とそれに対応するカソードシールド402(例えば、カソードを覆う管状部材)を示す。図4における当該カソードおよび当該カソードシールドは、従来のタングステンによって構成されている。図4に示すように、(i)カソードシールド402の著しい酸化404と、(ii)その後の熱分解によるカソード400の側壁406への堆積と、が見られる。図示するように、カソードシールド402は酸化され、当該カソードシールドは、有害なことに、2つのピース408A、408Bへと分離された。
【0049】
図5は、上記と同様に二酸化炭素(CO)をアークチャンバに20時間流し込んだ後の、本開示のカソード500とそれに対応するカソードシールド502を示す。図5における当該カソードおよび当該カソードシールドは、ランタンタングステン(lanthanum tungsten)によって構成されている。図5に示すように、図4の従来のカソード400およびカソードシールド402と比べると、(i)カソードシールド502の酸化504が減少しており、かつ、(ii)カソードの側壁506へのタングステンの堆積が減少していることが、容易かつ明確に理解できる。
【0050】
図6は、coガスを用いずにGeFを30時間流し込んだ後の、従来のアークチャンバ410における、図4の従来のカソード400を示す。カソード400およびリペラ414へのタングステンの過度の堆積412、および、アークチャンバライナ418のエッチング416が、明確に示されている。
【0051】
図7は、coガスを用いずにGeF、SiF、およびBFをそれぞれ10時間流し込んだ後の、本開示のアークチャンバ508を示す。アークチャンバ508は、ランタンタングステンによって構成された1つ以上のコンポーネントを有する。当該コンポーネントは、例えば、カソード500、カソードシールド502、リペラ510、チャンバ壁512、ライナ514、および引出開口(不図示)のうちの1つ以上である。図7に示したアークチャンバ508内の全ての露出面516が、ランタン入りタングステンによって構成されている。但し、このような例は限定的に考慮されるべきではない。一部のコンポーネントは、(i)ランタン入りタングステンによって構成されていなくてもよいし、あるいは、(ii)ランタン入りタングステンのコーティングを含んでいてもよい。図7に示すように、カソード500およびリペラ510へのタングステンの著しい堆積はなく(例えば、ハロゲンサイクルが存在しない)。また、アークチャンバライナ514のエッチングの兆候(sign)はわずかである。さらに留意すべきは、本開示は、有利なことに、COおよびCOを流す時に、coガスを流すことを排除しうるということである。
【0052】
図8は、純タングステンおよびランタン入りタングステンの電子放出特性(emission characteristics)を示すグラフ600である。当該グラフにおいて、4A/cmの最大安定放出は、1900Kにおいて生じている(参照:例えば、トリウム入りタングステンでは、2100Kにおいて3A/cmである)。純タングステンに関する熱電子放出は、例えば、約2300K(~2300K)において、100分の1未満である。
【0053】
図9は、フッ素および酸素と反応した後の様々な材料に関する諸特性を示す表700である。酸化ランタンは、例えば、標準的な二酸化タングステンよりも約1,000℃高い融点を有する。このことは、酸化ランタンは、はるかに高い安定性を有していることを示す。上述のアークチャンバライナは、一般的に、約700~800℃において動作する。この場合、カソードは約2500℃で動作し、カソードシールドは約2,000℃で動作する。従って、ランタン入りタングステンによって構成されるアークチャンバのコンポーネントは、フッ素と反応した後に、高温において簡単には分解(break down)しない、安定した化合物を提供する。
【0054】
このように、本開示は、アークチャンバ(例えば、イオン源チャンバ)および/または他の電極コンポーネントを構成するために、(i)合金としてのランタン入りタングステン、または、他の耐熱金属(例えば、モリブデン、タンタル等)と混合されたランタン入りタングステンを提供する。本開示は、所定の量のランタン(例えば、1~3%のランタン粉末)を含むランタン入り合金を提供する。例えば、所定の量のランタンは、(i)所望の金属(例えば、タングステン)と混合され、かつ、(ii)コンポーネントを形成するために静水圧プレス成形(isostatically pressed)される。ランタン入りタングステンは、例えば、コンポーネント全体を画定してもよい。または、ランタン入りタングステンによってコンポーネントが覆われてもよい。あるいは、コンポーネント上にランタン入りタングステンが堆積されてもよい。
【0055】
本開示のランタン入りタングステンコンポーネントがプロセスガスに曝される場合、例えば、生成される化合物(resultant compounds)は、イオン源の動作温度において、概ね安定している。例えば、Laはフッ素の存在下で形成され、2,000℃を超える温度に至るまで安定している。よって、イオン源に関連する表面はパッシベーション(保護,不動態化,表面安定化)(passivated)されていると考察されうる。同様に、ランタン入りタングステンがプロセス条件下で酸素に曝されると、酸化化合物が形成される。この酸化化合物も、かなり安定性が高い。よって、ランタン入りタングステンは、フッ素または酸素の「作用を妨げ(ties up)」、そして、当該フッ素または酸素がコンポーネントのタングステンをエッチングする(腐食させる)ことを概ね防止する。一例として、アークチャンバにおいてプラズマに曝される任意のコンポーネントは、(i)ランタン入りタングステンを含んでいる、または、(ii)ランタン入りタングステンによって構成されている。
【0056】
フッ素と関連するハロゲンサイクル(例えば、WF)は、例えば、高温面に曝された場合、揮発性を有し、かつ、後続して分解するガスをもたらす。そして、残留タングステンが残される。それにより、フッ素はプラズマへと戻り、より多くのタングステンを捕捉(scavenge)する。プラズマに曝されるコンポーネントをランタン入りタングステンによって構成することにより、ハロゲンサイクルは、基本的には排除または遮断される。よって、形成されるWFが少なくなるほど、高温面において分解する材料が少なくなり、当該高温面(them)の質量等を増加させる。
【0057】
従来、フッ素系ドーパントガスを利用する場合、ハロゲンサイクルが問題になっていた。例えば、ゲルマニウムが最も悪いケースであり、BFおよびSiFがその次に悪い(followed)。これにより、従来、イオン源のライナおよび他のコンポーネントに、エッチングが生じたり、穴が開いたりなどしていた。酸素とともに使用された場合、カソードが酸化されうる。タングステンとともに使用された場合、WOが形成される。カソード上への炭素の堆積は、炭化タングステンをさらに生成させうる。カソードは間接的に加熱されるため、当該カソードは約2,500℃で電子を放出する。このことが生じると、ソースは電子を放出しない。これにより、プラズマアーク電流が低下し、プラズマ密度が低下し、そして、イオンビーム電流が低下する。ランタン入りタングステンによって構成されたカソードを提供することにより、例えば、炭素とともにcoガスを流す必要もなくなる。ランタンによってカソードの放射率(emissivity)が低下するため(例えば、標準的なタングステンに比べて100倍良好である)、coガスを用いずにイオン源を動作させてもよい。このように、イオン源は当該イオン源自体を全般的に保護し、当該イオン源の(its)仕事関数が低く、そして、当該イオン源は低電力でより容易に電子を放出できる。
【0058】
酸素とともに炭素(または、酸素とともに任意のガス)を流すと、かなりの量の二酸化タングステンおよび三酸化タングステンが、アークチャンバ内に形成されうる。後続するボロン(BO)への遷移が望ましい場合、イオン源の内部に存在する酸素が除去されるまで、当該イオン源は不安定である。よって、酸素が除去されるまで、イオン源に関連する、従来のチューニング溶液(previous tuning solution)が有効に作用しない。本開示においては、二酸化タングステンが形成されないため、ランタン入りタングステンは、チャンバに対するパッシベーションをもたらす。これにより、あまり多くの量のWOまたはWOを形成することなく、当該チャンバを保護できる。
【0059】
一例として、イオン源からイオンを引き出す場合に利用される引出電極(例:光学部材プレート)は、(i)ランタン入りタングステンを含んでいてもよいし、または、(ii)ランタン入りタングステンによって構成されてもよい。従来のタングステン引出電極にフッ素が利用された場合、例えば、当該フッ素は、開口をスパッタリングし、かつ、結合して腐食性のタングステンフッ化物(WF)ガスを形成するであろう。さらに、多くの場合、絶縁体は複数の引出プレート間に設けられている。この場合、フッ素化タングステンは、絶縁体(Al)を侵食し、当該絶縁体上に有害な導電性コーティングをさらに形成するであろう。そこで、本開示においては、開口プレートは、ランタン入りタングステンによって構成されている。これにより、そのような有害な導電性を軽減できる。
【0060】
本開示は、さらに、図1の質量分析器116(例えば、AMUマグネット)の上流に位置するコンポーネントを、ランタン入りタングステンによって構成することを意図している。当該コンポーネントは、例えば、イオン源108、引出電極115、およびイオン源チャンバのコンポーネントである。上述したように、アークチャンバ内部コンポーネントは、ランタン入りタングステンによって構成されていてもよい。当該アークチャンバ内部コンポーネントは、例えば、イオン源チャンバに関連する任意のライナ、アークスリット、カソード、リペラ、およびカソードシールドである。さらに、質量分析器117に対する入口116も、ランタン入りタングステンによって構成されてもよい。加えて、質量分析器117のさらに下流(例えば、ビームラインに沿った任意の箇所)に位置するコンポーネントも、同様に、ランタン入りタングステンによって構成されてもよい。
【0061】
本発明は特定の好適な1つ以上の実施形態に関して図示および説明されているが、上述の実施形態は本発明の一部の実施形態の実施に関する例としてのみの役割を果たしており、本発明の適用例はこれらの実施形態に限定されないことに留意されたい。特に、上述の部材(アセンブリ、デバイス、および回路等)によって実現される様々な機能に関して、これらの部材を説明するために使用される用語(「手段」(means)への言及を含む)は、特に明示されない限り、説明された部材の特定の機能を実現する任意の部材(つまり、機能的に等価である部材)に対応するものであると意図されている。このことは、例え当該任意の部材が、本明細書において、本発明の例示的な実施形態にて説明された機能を実現する開示された構造と、構造的に等価でない場合にも当てはまる。さらに、本発明の特定の構成は、複数の実施形態のうちの1つの実施形態のみに関して開示されている場合がある。但し、任意または特定の応用例について、望ましくかつ有益である場合には、このような構成は、他の実施形態の1つ以上の構成と組み合わせられてもよい。従って、本発明は、上述の実施形態に限定されるべきではない。本発明は、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0062】
図1】本開示の複数の態様に係るイオン源カソードシールドを利用した例示的な真空システムのブロック図である。
図2】本開示の複数の態様に係る例示的なイオン源の斜視図である。
図3】本開示の複数の態様に係る例示的なアークチャンバを示す。
図4】20時間の動作後における、従来のタングステンカソードおよびシールドを示す。
図5】20時間の動作後における、本開示の複数の態様に係るランタン入りタングステンカソードおよびシールドを示す。
図6】coガスを用いずに30時間運転させた後の、従来のアークチャンバを示す。
図7】coガスを用いずに様々なソース材料を用いて30時間運転させた後の、本開示の複数の態様に係るランタン入りタングステンアークチャンバを示す。
図8】純タングステンおよび本開示の複数の態様に係るランタン入りタングステンについての放出特性のグラフを示す。
図9】本開示の複数の態様に係る、様々な化合物の諸特性を示すチャートである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9