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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】予備サーベイを用いる改善された分析
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/2252 20180101AFI20220620BHJP
   G01N 23/2257 20180101ALI20220620BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20220620BHJP
   H01J 37/244 20060101ALI20220620BHJP
   H01J 37/252 20060101ALI20220620BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
G01N23/2252
G01N23/2257
H01J37/22 502H
H01J37/22 502L
H01J37/244
H01J37/252 A
H01J37/28 B
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018559379
(86)(22)【出願日】2017-05-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-08
(86)【国際出願番号】 GB2017051283
(87)【国際公開番号】W WO2017194925
(87)【国際公開日】2017-11-16
【審査請求日】2020-04-14
(31)【優先権主張番号】1608056.6
(32)【優先日】2016-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】507329985
【氏名又は名称】オックスフォード インストルメンツ ナノテクノロジー ツールス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】ラング クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】コリン ジェイムズ
【審査官】今浦 陽恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-123709(JP,A)
【文献】特開平10-038815(JP,A)
【文献】特開2000-260376(JP,A)
【文献】特開2012-122773(JP,A)
【文献】特開2004-191297(JP,A)
【文献】特開2005-283535(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0052963(US,A1)
【文献】特開2001-156132(JP,A)
【文献】特開2000-123771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00-23/2276
21/87-21/958
H01J 37/00-37/36
H01L 21/64-21/66
G03F 1/00-1/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡における試料の分析のための方法であって、
第1の条件の組を用いて、前記試料の表面上の関心領域から分析データを収集する第1のサーベイを実施することと、
前記第1の条件の組とは異なる第2の条件の組を用いて、前記試料の表面上の前記関心領域の選択された部分から付加的な分析データを収集する第2のサーベイを実施することと、を含み、
前記第1のサーベイからの前記分析データを用いて、前記第2のサーベイにおけるデータ収集に用いられる前記部分を選択し、それら部分が用いられる順序を決定し、
前記第1のサーベイからの前記分析データを用いることは、
前記分析データから前記試料上の関心特徴を同定することと、
前記関心特徴のより小さい割合を含む部分から前記付加的な分析データを収集する前に、前記関心特徴のより大きい割合を含む部分から前記付加的な分析データを収集するように、前記選択された部分の各々から前記付加的な分析データを収集する最適な順序を生成すること、を含み、
前記第1のサーベイ及び前記第2のサーベイの各々は、粒子ビームを前記試料に指向させ、その結果、前記データを収集するために前記試料から放出されるX線又は電子を検出することを含み、
前記第1の条件の組及び前記第2の条件の組の各々は、各々のサーベイが終了する終了条件を含み、前記第2の条件の組の終了条件は、付加的な分析データが前記関心特徴の所定の画分から収集されたときに、前記第2のサーベイを終了するように決定される、方法。
【請求項2】
前記第1のサーベイからの前記分析データを用いて、前記第2のサーベイにおけるデータ収集に用いられる前記関心領域内の位置、及び前記選択された部分についての順序を決定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の条件の組及び前記第1のサーベイ中に収集されるデータは、前記試料上のエリアを前記第2の条件の組の場合よりも迅速にカバーするように選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の条件の組及び前記第2の条件の組の条件は、倍率、画像分解能、画像滞留時間、グレー・レベル閾値、エネルギー分散型X線分光設定、及びサーベイ終了条件のいずれかを含む、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第1のサーベイは、前記分析データを収集するための前記顕微鏡の第1の検出器に対して前記試料を移動させて、複数のサブ領域の各々が、所定の滞留時間、前記第1の検出器の視野内に連続的に入るようにすることにより、前記関心領域から前記分析データを収集することを含む、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第2のサーベイは、前記付加的な分析データを収集するための前記顕微鏡の第2の検出器に対して前記試料を移動させて、前記選択された部分の各々が、所定の滞留時間、前記第2の検出器の視野内に連続的に入るようにすることにより、前記選択された部分の各々から前記付加的なデータを収集することを含む、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第2のサーベイにおける前記付加的な分析データの収集は、エネルギー分散型X線分光データを収集することを含む、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記第1のサーベイからの前記分析データを用いることは、前記選択された部分が前記関心特徴の所定の画分を含むように、前記第2のサーベイにおけるデータ収集に用いられる前記部分を選択することをさらに含み、前記関心特徴は、前記試料の表面上に存在する粒子又は他の分離領域である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の条件の組の終了条件は、全関心領域から分析データが収集された後に、前記第1のサーベイが終了するというものであり、前記第1の条件の組における滞留時間、倍率及び分解能は、前記第2の条件の組と同じである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記分析データは、粒子形態のデータを含み、前記最適な順序は、前記粒子形態のデータに従って生成される、請求項1~9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
顕微鏡における試料の分析のための装置であって、前記装置は、
ステージ位置決めのためのプログラム可能な制御装置を含み、
前記装置は、前記試料の表面上の関心領域から収集されたデータを記録及び処理するように構成されており、
前記装置は、
第1の条件の組を用いて前記試料の表面上の関心領域から分析データを収集する第1のサーベイと、
前記第1の条件の組とは異なる第2の条件の組を用いて、前記試料の表面上の関心領域の選択された部分から付加的な分析データを収集する第2のサーベイと、
を含む分析を実施するように構成され、
前記第1のサーベイからの前記分析データを用いて、前記第2のサーベイにおけるデータ収集に用いられる前記部分が選択され、それら部分が用いられる順序が決定され、
前記第1のサーベイからの前記分析データを用いることは、
前記分析データから前記試料上の関心特徴を同定することと、
前記関心特徴のより小さい割合を含む部分から前記付加的な分析データを収集する前に、前記関心特徴のより大きい割合を含む部分から前記付加的な分析データを収集するように、前記選択された部分の各々から前記付加的な分析データを収集する最適な順序を生成すること、を含み、
前記第1のサーベイ及び前記第2のサーベイの各々は、粒子ビームを前記試料に指向させ、その結果、前記データを収集するために前記試料から放出されるX線又は電子を検出することを含み、
前記第1の条件の組及び前記第2の条件の組の各々は、各々のサーベイが終了する終了条件を含み、前記第2の条件の組の終了条件は、付加的な分析データが前記関心特徴の所定の画分から収集されたときに、前記第2のサーベイを終了するように決定される、装置。
【請求項12】
前記装置は、前記分析データを収集するための第1の検出器を含む顕微鏡及び前記付加的な分析データを収集するための第2の検出器を含む顕微鏡を含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記装置は、前記試料上に粒子ビームを指向させるためのデバイスと、粒子ビームの位置決めのためのプログラム可能な制御装置とを含む、請求項11又は12に記載の装置。
【請求項14】
前記第1及び第2の検出器の一方又は両方は、前記データを収集するために、前記粒子ビームを前記試料に指向させた結果として生じる、前記試料から放出されるX線又は電子を検出するように構成され、前記第1及び第2の検出器の一方又は両方は、前記試料を表す光学画像データを収集するように構成された光学イメージセンサを含む、請求項12に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡における試料の分析のための、特に、試料上の広いエリアをカバーするために、高速の像形成及び低速のステージ移動の組み合わせを含む試料上の粒子分析のための速度及びサンプル処理能力を改善する、方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
合焦電子ビームが試料に衝突するとき、入射した電子で励起された材料を表す信号が生成される。走査型電子顕微鏡では、静電的又は電磁的方法を用いてビームを偏向させることによって、こうした試料表面上の合焦電子ビームの位置を制御することができる。分析制御システムは、一般的には、ビームをグリッド(grid)上の一連の点に位置決めする。各点において、1又はそれ以上の信号を測定し、その点に対応する各タイプの信号について得られた値を記録する。規則的な矩形グリッド上で得られる信号の値は、視野からのデジタル画像を形成する。電子ビームは、極めて高速に偏向され得るが、大きな偏向角では歪みが増大するので、電子光学系により、偏向の大きさが制限される。従って、視野が、試料表面上の狭いエリアしかカバーできないことがある。試料表面の広いエリアをカバーしなければならない場合には、試料を支持する試料ステージを移動させることによって、新しい視野をビームの下方に持ってくることができる。従って、ステージ移動とビーム偏向を組み合わせることによって、一連の視野で試料の表面全体をサーベイすることができる。自動粒子分析のための例示的な装置の構成要素を図1に示す。
【0003】
試料の表面にわたり点のグリッド(grid of points)を走査する時間は、グリッド内の点の数及び各点における滞留時間(dwell time)によって決まる。走査型電子顕微鏡において、電子信号は、通常、X線スペクトル放射のような他の分析信号よりもずっと良好な信号対ノイズ比を有する。このことは、有用な電子信号情報を、X線又は他の分析データの場合と比べて、点ごとの滞留がずっと短い状態で得ることができることを意味する。試料にわたる高速電子信号走査を用いて、X線分析のために付加的な時間を費やすだけの価値がある何らかの特徴(例えば、粒子、デブリ、欠陥等)があるかどうかを見つけことができることが周知である(例えば、非特許文献1)。この原理は、「技術的清浄度分析」とも呼ばれ、精密製造において汚染物質粒子を見つけるために用いられる。粒子は、製造部品から脱離して、炭素のような軽元素で作られた基板上に付着する。後方散乱電子検出器(backscattered electron detector、BSED)からの信号は、材料の平均原子番号に対する感度が高く、電子ビームが重元素を含む汚染物質粒子に衝突した場合、信号は強くなる。しかしながら、どの元素が粒子内に存在するかを判定し、汚染物質源を同定するために、X線分析が依然として必要とされる。点のグリッドにわたり電子ビームを走査し、BSED信号を観測することにより、全ての点に対して低速のX線分析を行って時間を無駄にすることなく、潜在的に関心粒子(particle of interest)の位置を迅速に見つけることができる。従って、最も可能性が高い粒子に集中することにより、X線分析時間を最小限にすることができ、検索プロセス全体が効率的になる。
【0004】
規則的な点のグリッドにわたりマッピングされた電子信号の強度により、各画素位置における電子信号に対応する値をとる画素の2次元デジタル画像が形成される。画像を数学的に処理し、粒子のような特徴を同定し、個々の粒子の形態(morphology)を測定し、粒子の数をカウントすることができる。点のグリッドが十分に微細である場合、粒子の形態の測定は、いずれの付加的な分析信号も用いることなく粒子を特徴付けるのに十分に正確なものであり得る。しかしながら、微細なグリッドは、良好な電子信号を得るためにビームが滞留しなければならない多くの点が存在すること、従って、電子ビームの偏向により単一の走査を終えるのにより長い時間がかかることを意味する。
【0005】
従来の自動粒子分析の方法が、図2により例示される。図2(a)は、表面上に多数の粒子が存在する試料を示す。ステージが静止している間、電子ビームは、一般的にラスター走査順で、点のグリッドにわたり連続的に偏向され、小さい視野にわたり電子信号(例えば、後方散乱電子信号、BSE)のデジタル画像を収集する。これは、図2(b)に概略的に示される。試料を支持するステージを移動させることにより、試料をX及びY方向に移動させることができる。従って、電子ビーム・ラスターの位置は、試料表面上の広いエリアをカバーする連続的な視野に当たるように配置することができる。図2(c)において、9つの連続的フィールドが、これらを走査する順序を表記した状態で示される。図2(d)は、各フィールドにおけるラスター走査によりカバーされる粒子を示す。フィールド1が走査されるとき、電子信号を用いて形成されたデジタル画像(図2(e))を処理して個々の粒子の輪郭を見出し、各粒子が関心あるサイズ及び形状のものであるかどうかを判断する。関心粒子の各々について、電子ビームは、粒子上の点上に位置決めされるか、又は、X線データを取得する間、粒子上の点のグリッドにわたりラスタリングされる(図2(f))。これは、フィールド1で分析される全ての粒子について繰り返される。全ての関心粒子が分析されると、試料ステージが移動され、電子ビーム走査により次の視野に達することができる。プロセスは、9つのフィールド全てをカバーするまで繰り返される。
【0006】
電子ビームの偏向により走査できる領域は限られており、試料全体を走査するには、粗いグリッドにわたる試料のステージ移動、及びステージ・グリッドの点の間のより微細なグリッド上の電子ビーム偏向の組み合わせが、通常、必要とされる。電子ビーム・グリッドにおける点の数及びステージ・グリッドにおける点の数を最適化して歪みを最小限にし、可能な限り最速の時間で必要とされる確度の「ターゲット」データを提供することができる。それにもかかわらず、付加的な分析測定を行わないとしても、試料の領域全体をカバーするためには、多くのステージ移動、及び電子信号データの多くの点のグリッドの分析を行う場合がある。電子信号の走査後に潜在的に関心粒子が見つからなかった場合には、ステージ移動のための時間及びその点のグリッドにわたり電子ビームを走査する時間が、事実上無駄になる。最悪の場合、試料全体をサーベイする時間が無駄になることもあり、これは、走査すべき多くの試料がある場合には、重要であり得る。本発明の目的は、サンプルのサーベイのための生産性を改善することである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Laskin及びCowin、Anal.Chem、2001年、73、1023~1029頁
【発明の概要】
【0008】
本発明によると、顕微鏡における試料の分析のための方法が提供され、この方法は、
第1の条件の組を用いて、試料表面上の関心領域(region of interest)から分析データを収集する第1のサーベイを実施することと、
第1の条件の組とは異なる第2の条件の組を用いて、試料表面上の関心領域の選択された部分から付加的な分析データを収集する第2のサーベイを実施することと、を含み、
第1のサーベイからの分析情報データを用いて、第2のサーベイにおけるデータ収集に用いられる部分を選択し、それらが用いられる順序を決定する。
【0009】
本発明者らは、自動粒子分析の多くの用途において、その後の意思決定に必要とされるよりも多くのデータが収集されることを認識している。付加的な時間がかかる、第1の即ち予備のサーベイから始めることにより、「第2の」サーベイにおいて十分なターゲット・データを得るためのより最適な戦略を決定することができるので、予備サーベイ及びターゲット・データ取得のための合計時間は、通常のターゲット・データ取得シーケンスでかかる時間よりもずっと少なくなり得る。付加的な分析データの収集、即ち「ターゲット・データの取得」は、電子ビーム・グリッド、並びに粒子の位置及び形態を測定するために必要とされる確度レベルを与えるステージ位置決めを用いることができ、電子信号及びX線信号の取得のための十分な滞留時間を用いて、必要とされる分析の確度レベルを与えることができる。一般的に、試料の全エリアをカバーする第1のサーベイ、即ち「予備サーベイ」は、試料上の粒子についての予備統計データを得るための速度を上げるために、確度については妥協を伴うことも、伴わないこともある。
【0010】
従来の手法は、試料上の全てのフィールド内の粒子に対するX線分析の実行に時間を費やす。電子信号のみを用いる予備サーベイを用いることにより、例えば、サンプルの全体にわたる全フィールドに対して、粒子カウント及び粒子密度が、極めて迅速に求められる。次に、予備サーベイの走査から得られる統計データを用いて、X線データの収集を最適化し、最短時間で要件を満たすことができる。
【0011】
幾つかの実施形態において、第1のサーベイからの分析情報データを用いて、第2のサーベイにおけるデータ収集に用いられる関心領域内の位置、及び選択された部分についての順序を決定する。従って、関心領域を表すことができ、且つ第1のサーベイにおいて監視された又は像形成されたような、そこでの関心特徴(feature of interest)の分布の指標を含み得る分析データを用いて、第2のサーベイの戦略を最適化することができる。この分布に基づいて、第2のサーベイにおいて用いられる領域の部分を選択することができる。さらに、一般的に、第1の即ち予備サーベイにおいて収集された監視された特徴の分布を含む分析データに従って、領域の部分への分割、又は第2のサーベイにおいて走査されるこれらの部分のサイズ、位置、若しくは形状に関する決定を行うことができる。
【0012】
一般的な実施において、第2のサーベイで用いられる領域の部分の位置を記録することが必要である場合があり、なぜならこれらの「実行フィールド(run field)」は、必ずしも、第1のサーベイでサーベイされた関心領域のサブ領域であるサーベイフィールドと位置合わせされず、同じサイズでなく、又は隣接していないことがあるからである。第2のサーベイで用いられる部分の選択は、必ずしも、これらの部分の位置を取得することを要せず、それはむしろ、その位置が既に決定されている若しくはこの段階でその位置が必ずしも選択されていない部分の選択及び順序に対する決定とすることができる。
【0013】
サーベイ・エリアに関して、関心領域の画像を記録し、それにより第1のサーベイの実施を構成することもでき、次に、この画像を、それに対して将来の実行又は第2のサーベイを実施できるようにサーベイ走査アルゴリズムで処理することも想定される。
【0014】
幾つかの実施形態において、第1の条件の組及び第1のサーベイ中に収集されるデータは、試料上のエリアを第2の条件の組の場合よりも迅速にカバーするように選択される。言い換えれば、こうした実施形態において、第1のサーベイの条件は、関心領域のエリアをカバーする速度が、第1のサーベイにおいて第2のサーベイよりも高くなるように構成することができる。こうした手法の利点は、方法全体の時間効率をさらに改善する一方で、第2のサーベイに適用される戦略を、第2のサーベイにより優先すべき又は優先的にカバーすべき特徴又はその特徴を含むサーベイフィールドに従って最適化することを可能にする有用な情報を依然として第1のサーベイから提供する。第1のサーベイにおける付加的な速度は、第2のサーベイに対して、第1のサーベイの精度、確度、又は分解能を妥協する又は低下させることにより、達成することができる。例えば、第1のサーベイは、各サブ領域に滞留する時間をより短くして、より低い品質の画像を生成することを伴うことがあり、又は第1のサーベイで用いられるサブ領域を、第2のサーベイのために領域が細分される部分よりも大きく、従ってより少なくすることを伴うことがある。
【0015】
第1の条件の組及び第2の条件の組の条件は、倍率、画像分解能、画像滞留時間、グレー・レベル閾値、エネルギー分散型X線分光設定、及びサーベイ終了条件のいずれかを含むことができる。第1のサーベイ及び第2のサーベイにおいてこれらの条件をそれぞれ調整して、第1の条件の組は、第2のサーベイで用いられる分析データの提供を容易にし、第2の条件の組は、関心特徴上の付加的な、より精密な、又はより詳細なデータを収集するための最適化された戦略をもたらすようにすることは、こうした実施形態により与えられる利点である。
【0016】
例えば、第1の条件の組の倍率は、第2の条件の組の倍率より低くすることができる。第1の条件の組の画像分解能は、第2の条件の組の画像分解能より低くすることができる。
【0017】
一般的に、第1のサーベイは、試料を、分析データを収集するための顕微鏡の第1の検出器に対して移動させて、複数のサブ領域の各々が、所定の滞留時間、第1の検出器の視野内に連続的に入るようにすることにより、関心領域から分析データを収集することを含む。第2のサーベイは、試料を、付加的な分析データを収集するための顕微鏡の第2の検出器に対して移動させて、選択される部分の各々が、所定の滞留時間、第2の検出器の視野内に連続的に入るようにすることにより、選択される部分の各々から付加的なデータを収集することを含むことができる。従って、この方法のサーベイの各々は、各サーベイにおいて、検出器を用いて領域を部分ごとに順に観測する信号収集により領域が像形成又は監視されるように、検出器を試料に対して移動させること、又はその逆を含むことができる。第1のサーベイのサブ領域は、一般に合計すると関心領域全体となる場合もあり、又はサブ領域間の重なりのために合計するとより大きくなる場合もあるが、第2のサーベイに用いられる部分は、第1のサーベイで用いられたサブ領域のサブセットを含むこと、又は異なる条件を用いて測定されたサブ領域の全てを含むこと、又は第1のサーベイのサブ領域とはサイズ、位置、形状及び走査順序が異なる部分を含むことができる。
【0018】
幾つかの実施形態において、第1の条件の組及び第2の条件の組は、第1のサーベイにおけるサブ領域の数が、第2のサーベイにおける選択される部分の数より大きくなるように選択される。
【0019】
このように、第2のサーベイは、第1のサーベイによりカバーされる選択される部分の幾つかにわたり実施することができる。フィールドの重なりが用いられず、第2のサーベイが、関心領域全体をカバーする前に終了するのではなく、完了まで進行することが供される実施形態においては、第2のサーベイは、第1の走査と同じフィールド数を含むことができる。
【0020】
第1の条件の組及び第2の条件の組は、第2のサーベイ中に収集される付加的な分析データの確度が、第1のサーベイ中に収集される分析データの確度を上回るように選択することができる。第1のサーベイ及び第2のサーベイに適用される第1の条件の組及び第2の条件の組は、第2のサーベイにおけるエネルギー分散型X線分光(EDS)データの付加的な収集を除いて、同じとすることができる。従って、この情報の付加は、第2のサーベイで収集されるデータの確度を向上させ得る。
【0021】
上述のように、第1の条件の組及び第2の条件の組は、第2のサーベイにおける画像滞留時間が、第1のサーベイにおける滞留時間より長くなるように選択することができる。滞留時間は、所定の分解能又は信号対ノイズ比で付加的な分析データを収集するのに、十分に長くなるように構成することができる。一般的に、この方法で用いるために、特定の信号対ノイズ比を設定しなくても又は予め定めなくてもよい。しかしながら、画像分解能及び滞留時間を予め定めることもできる。幾つかの実施形態においては、信号対ノイズ比の決定は、ユーザ又はオペレータによる定性的判断として行うことができる。
【0022】
幾つかの実施形態において、第1の検出器は、第2の検出器と同じ1つのものとすることができる。従って、第1のサーベイは、第2のサーベイと同じタイプのデータを収集すること、又は同じタイプの信号を監視することができる。代替的に、第1の検出器は、第2の検出器とは別個のものにすること、及び異なるタイプのものにすることができる。例えば、第2の検出器は、付加的なEDS信号収集能力を有することができ、上述のように、第2のサーベイにおける付加的な分析データの収集は、エネルギー分散型X線分光データを収集することを含むことができる。
【0023】
一般的に、第1のサーベイからの分析データを用いることは、分析データから試料上の関心特徴を同定することを含む。第1のサーベイからの分析データを用いることは、選択される部分が関心特徴の所定の画分(fraction)の部分を含むように、第2のサーベイにおけるデータ収集に用いられる部分を選択することをさらに含むことができる。このように、所定の閾値又は割合の関心特徴から付加的な分析データを収集するために第2のサーベイによりカバーされる必要のある領域がより小さい部分になるように、第2のサーベイを実施するための戦略を最適化することができる。一般的に、これらの関心特徴は、試料の表面上に存在する粒子又は他の分離又は不連続領域である。
【0024】
幾つかの実施形態において、第1のサーベイからの分析データを用いることは、選択される部分の各々から付加的な分析データを収集する最適な順序を生成することを含む。例えば、より多くの数の又はより高い密度の関心特徴を含む領域の部分が最初にカバーされるように、第2のサーベイにおける順序、又は第2の検出器が領域に対して移動される経路若しくはルートを選択又は生成することができる。例えば、検出器は、順序を前倒しすることができ、第2のサーベイのための選択される部分は、それぞれの部分内に含まれる関心特徴の降順で走査される。
【0025】
従って、関心特徴のより小さい割合を含む部分から付加的な分析データを収集する前に、関心特徴のより大きい割合を含む部分から付加的なデータを収集するように、最適な順序を生成することができる。幾つかの実施形態において、選択される部分の合計面積は、関心領域の面積を下回ってもよく、第2のサーベイは、選択される部分のみから付加的な分析データを収集することを含むことができる。こうした限定された選択を選んで第2のサーベイでカバーすることは、第2のサーベイで収集される関心特徴に関連したデータの量又は品質に対する影響を最小にする一方で、方法の時間効率をさらに改善することに役立ち得る。
【0026】
第2の走査つまり第2のサーベイが、第1の走査つまり第1のサーベイと同じエリアをカバーするように完了まで進行することが許容される実施形態が存在し得ることが想定される。これは、ある程度、予備の即ち第1のサーベイを実施する趣旨を否定し得るものであるが、こうした実施形態において、ユーザ又はオペレータは、実行即ち第2のサーベイを注視し又は監視し、そこで関心領域又は特徴のいずれかの十分な部分又はエリアが分析された又はそこから代表データが収集されたと判断したとき、第2のサーベイを手動で終了することができる。
【0027】
一般的に、第1及び第2のサーベイの各々は、データを収集するために、粒子ビームを試料に指向させ、結果として生じる試料から放出されたX線又は電子を検出することを含む。粒子ビームは一般的に、電子ビーム又はイオンビームとすることができる。
【0028】
幾つかの実施形態において、第1及び第2のサーベイの各々においてデータを収集することは、試料を表す光学画像データを収集することを含む。例えば、画像内で関心特徴を同定する又は見つけることができるように、光学画像を取得することができ、例えば、第2のサーベイは、それらの特徴を含む領域の部分をターゲットにすることができる。効率をさらに向上させるために、第1のサーベイが、第2のサーベイで取得される光学画像よりも、低い倍率及び小さい視野を有する光学画像を取得することを含むように、第1の条件の組及び第2の条件の組を選択することができる。第1及び第2のサーベイにおいて光学画像データを収集することを含む実施形態において、第1のサーベイが、第2のサーベイで取得される光学画像よりも迅速に光学画像を取得することを含むように、第1の条件の組及び第2の条件の組を選択することができる。
【0029】
上述のように、第1のサーベイからの分析データを用いることは、分析データからの試料上の関心特徴を同定することを含むことができる。こうした実施形態において、第1の条件の組及び第2の条件の組の各々は、これに従って各々のサーベイが終了する終了条件を含むことができ、第2の条件の組の終了条件は、付加的な分析データが関心特徴の所定の画分から収集されたときに、第2のサーベイを終了するように決定することができる。第2のサーベイのみにおけるこうした終了条件の存在、又はサーベイの各々についての異なる終了条件の選択は、第1及び第2のサーベイの条件における唯一の差を構成することができる、又は複数の異なる条件のものとすることができる。一般的に、関心領域のエリアのカバーに関して、終了条件は、第2の条件の組におけるよりも、第1の条件の組おいて遅く設定される。
【0030】
上述のように、選択される条件によっては、第1のサーベイは、第2のサーベイよりも時間がかからないこともあり得る。幾つかの実施形態において、第1の条件の組及び第2の条件の組は、終了条件の差以外は、同様であり得る。場合によっては、ユーザは、画像滞留時間、倍率、及び分解能のような同じ条件を用いるように選択することができるので、第1のサーベイにおいて第2のサーベイにおけるのと同じ数の特徴が測定されることが合理的に期待され得る。これは、関心特徴の総数の指定された又は所定の部分が分析されたときに第2の走査を停止するための終了条件を使用することを意図する場合である。しかしながら、例えば、サーベイフィールドの縁部の近くに位置する粒子を処理するために、フィールド重複が第2の走査に適用される場合、第1の走査において画像の重複は用いられないはずであり、従って、他の点では同一の第1の条件の組と第2の条件の組との間のさらなる差を構成する。
【0031】
幾つかの実施形態において、第1の条件の組の終了条件は、全関心領域から分析データが収集された後に、第1のサーベイが終了するというものであり、滞留時間、倍率及び分解能は、第1の条件の組において、第2の条件の組におけるものと同じである。
【0032】
一般的に、方法全体が自動化される。つまり、サーベイ・アルゴリズムを用いて、適用される第1の条件の組及び第2の条件の組で第1及び第2のサーベイを実施することができ、ユーザの介入は必要としない。第1及び第2のサーベイの各々が自動化されるように、方法を実施することもでき、方法は、第1のサーベイの後及び第2のサーベイの前に実施される決定ステップをさらに含み、決定ステップの結果は、第2のサーベイにおけるデータ収集に用いられる部分の選択、及び、それらが用いられる順序の決定に用いられる。こうした実施形態において、決定ステップは、この場合も、この段階におけるユーザ介入の必要性を減らす又は除去するように、随意的に自動化することができる。代替的に、決定ステップは、ユーザにより実行される動作を含むことができる。例えば、幾つかの実施形態において、ユーザが、第2のサーベイが実施される前に、第1のサーベイにおいて収集された分析データを検討することを可能にするように、又はユーザの要求に基づいて、完全な第2のサーベイを実施するかどうか及び最適化された順序を適用するかどうかに関する決定を行う、潜在的にそれぞれの設定を有するように予め構成し、自動化することができる決定プロセスを含ませるように、方法を第1のサーベイと第2のサーベイとの間で一時停止することが望ましい。
【0033】
幾つかの実施形態において、決定ステップは自動化され、幾つかの実施形態において、決定ステップは、ユーザにより実行される動作を含むことができる。この動作は、第2のサーベイが、第1のサーベイから収集されたデータの検査に基づいて実施されるとの確認、又は第2のサーベイに適用されるパラメータ又は条件の入力を含むことができる。
【0034】
一般的に、方法は、顕微鏡における自動化された試料の分析のためのものである。言い換えれば、サーベイの走査は、一般的に、完全に自動化された方法で実施され、そこで第2のサーベイの全実行は、第1のサーベイの完了時に開始される。
【0035】
本発明によると、顕微鏡における試料の分析のための装置も提供され、この装置は、ステージ位置決めのためのプログラム可能な制御装置を含み、
この装置は、試料表面上の関心領域から収集されたデータを記録及び処理するように構成され、
この装置は、
第1の条件の組を用いて試料表面上の関心領域から分析データを収集する第1のサーベイと、
第1の条件の組とは異なる第2の条件の組を用いて、試料表面上の関心領域の選択される部分から付加的な分析データを収集する第2のサーベイと、
を含む分析を実施するように構成され、
第1のサーベイからの分析情報データを用いて、第2のサーベイにおけるデータ収集に用いられる部分を選択し、それらが用いられる順序を決定する。
【0036】
第1の条件の組及び第1のサーベイ中に収集されたデータは、第2の条件の組におけるよりも試料上のエリアを迅速にカバーするように選択することができる。装置は、一般的に、分析データを収集するための第1の検出器を備える顕微鏡を含む。装置は、一般的に、付加的な分析データを収集するための第2の検出器を備える顕微鏡を含む。
【0037】
装置は、試料上に粒子ビームを指向させるためのデバイスと、粒子ビームの位置決めのためのプログラム可能な制御装置とを含むことができる。
【0038】
第1及び第2の検出器の一方又は両方は、データを収集するために、粒子ビームを試料に指向させた結果として生じる、試料から放出されるX線又は電子を検出するように構成することができる。代替的に又はこれに加えて、第1及び第2の検出器の一方又は両方は、試料を表す光学画像データを収集するように構成された光学イメージセンサを含む。
【0039】
第1及び第2の検出器の一方又は両方は、電子検出器又はX線検出器を含むことができ、試料表面上の関心領域を表すデータは、電子信号データ及び/又はX線信号データを含む。
【0040】
述のように、分析は、一般的に、試料のサブ領域又は部分を検出器の視野に連続的に持ってくるように試料を検出器に対して移動させて、分析データ又は付加的な分析データを収集することを含む。従って、装置は、第2のサーベイの間、決定された順序で付加的な分析データを収集するために検出器の視野内に試料表面上の関心領域の選択された部分を位置決めするように構成された、試料を支持するための可動ステージを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】自動粒子分析のために必要とされる構成要素を概略的に示す。
図2】電子顕微鏡を走査する際の粒子分析のための従来の手法を概略的に示す。
図3】本発明によるより大きい連続的視野でカバーされた試料エリアを示す。
図4】ステージ上に搭載する前に回転された図2の試料を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
一実施形態において、最初に全フィールドをターゲット分解能で走査し、電子信号データのみを得る(「予備サーベイ(preliminary survey)」)。各フィールドについての粒子の形状及び数を判定して、関心粒子の総数を見出す。X線データは、通常は、あらゆる関心粒子から収集される。しかしながら、要件が、表面上に存在する全ての関心粒子の特定の割合のみについてのX線データを取得することである場合、存在する粒子の総数の知見があれば、特定の割合が分析されたときにX線データの収集を停止することができ、従って、不要なX線データを収集する時間を節約することが可能である。好ましくは、より多くの数の粒子を含むフィールドを最初に巡視すれば、ステージ移動の数を最小限にすることができる。例えば、図2(d)において、フィールド9及び1内の粒子についてのX線データを取得するように、ステージを位置決めすることで、ステージを何れかの他の位置に戻すことなく、試料上に存在する全粒子の高い割合をカバーするのに十分なデータが与えられる。
【0043】
第2の実施形態において、予備サーベイ条件は、通常、ターゲット・データを収集するのに必要とされるよりもずっと迅速に試料エリアをカバーするように選択され、これは、必然的に確度のある程度の損失を伴う。例えば、電子ビーム・グリッドが試料上のより広いエリアをカバーする場合、より幾何学的歪みはより大きくなり、グリッドの分解能が粗くなり得るが、試料の全てにわたる点をカバーするのに必要なステージ移動はより少なくなる。図3は、図2の場合と同じ試料を示すが、より大きい電子ビーム偏向を用いてより広いフィールドが走査されるので、連続的なフィールドで全エリアをカバーするのに、4回のステージ移動しか必要としない。電子偏向は、機械的なステージ移動よりもずっと迅速であるため、図2(d)のように9回のステージ移動を必要とするときよりもずっと迅速に、試料の全エリアをカバーする電子画像を取得することができる。
【0044】
予備サーベイにおいて電子ビーム・グリッドがより粗い場合、特徴寸法の確度は低下し、幾つかの非常に小さい特徴が完全に見逃されることがある。さらに、点ごとの電子ビームの滞留が短くなり、信号に対するノイズが増大し、走査位置決めの確度が低下することもある。しかしながら、予備走査のための時間を短くするためのこれらの技術は、ターゲット・データに対して必要とされるよりも確度を低下させるものの、依然として、ターゲット・データ収集のための戦略を最適化するのに適切な粒子の数及び形態の統計的概要を収集することが可能である。従って、条件を変えることにより、必要とされる確度のターゲット・データを収集するのに必要な条件下で電子信号データを記録するのにかかる時間のごく一部で試料全体にわたる何らかのデータを収集することが可能である。試料の予備サーベイから得られるデータをここで用いて、ターゲット・データ収集の戦略を最適化する。関心粒子が特定のエリア内にない場合、このエリア内いずれの視野についても必要な確度のターゲット・データを収集しないことにより、時間を節約することができる(例えば、図2のフィールド3)。試料上のどこにも関心粒子がない場合、この試料において必要な確度のターゲット・データを収集するいかなる時間も費やす必要がない。目的が、特定のサイズ又は形状の多くの粒子から代表的なデータを収集することである場合、予備サーベイは、適切な粒子の数が非常に少ない領域を走査する時間を無駄にすることなく、最も多くの数の適切な粒子を与える、ターゲット・データを収集すべき場所を示すことができる。X線データが収集されない場合でも、試料全体にわたる迅速な予備走査は、粒子の形態の測定の確度については妥協している可能性があるが、依然として有利である。予備走査からの統計的データにより、ターゲット分解能でデータを収集するためのフィールドの最良の順序付けを決定し、十分に高い割合の粒子が正確に測定されるや否や、ターゲット・データの取得を停止することができる。
【0045】
清浄度用途においては、第1の電子ビーム機器上のサンプルを試験した後、異なる位置において第2の機器を用いて同じサンプルからの結果を確認することが必要な場合がある。サンプルが第2の機器に移送されるとき、サンプルの配向及び相対位置決めを再現することは不可能である。図4は、図2のサンプルが、ステージ上に搭載される前に予期しない回転を受けた例を示す。定型的なターゲット・データ取得シーケンスが用いられた場合、フィールド1及び2は、いかなる関心粒子も含まないことになる。しかしながら、予備サーベイを用いて、関心粒子の空間密度を求めて、粒子密度の逆順でステージをフィールドに移動させるようにターゲット・データ取得を編成した場合(例えば、図2のフィールド9、1及び図4のフィールド6、4)、サンプルの配向及び位置決めが不確かであっても、要求されるサーベイがより迅速に完了されるだけでなく、両方の機器上で、粒子密度により順序付けられる同様の領域が検査される。従って、清浄度評価の効率及び一貫性の両方が改善される。
【0046】
従って、走査型電子顕微鏡における試料のサーベイを最適化して、形態データ及び必要とされる確度の分析データの収集に必要な時間を最小限にできることが知られているが、本発明は、付加的な予備サーベイの結果を用いて、必要とされる確度のターゲット・データを得るための戦略を変更することによって、生産性を改善することができる。
【0047】
本発明を、入射電子ビーム、電子信号及びX線分析によるイメージングを参照して説明してきたが、同じ原理が、同じく電子信号を生成する合焦入射イオンビーム、及びX線の代わりに陰極ルミネセンス、オージェ又は低損失後方散乱電子などに由来する入射ビームによって誘導される任意の分析信号にも適用される。以下の特許請求の範囲は、これらの代案も特許請求するように意図される。本発明は、制限された視野にわたって画像データを迅速に取得することができ、広いエリアを調査できるように試料を移動させるために試料のステージ移動を必要とする、あらゆる機器に適用することができる。制限された視野を有し、試料表面の新しい部分を視野内に持ってくるためにステージの移動を必要とする顕微鏡により光学画像を取得するシステムにおいて、各光学画像に対して、低倍率、広い視野を用いる迅速な予備走査を用いて、粒子を検出及び測定し、その結果を用いて、異なるステージ位置において大きい倍率でデータを収集するように戦略を最適化することができる。制限された視野を有する迅速な像形成方法で粒子を検出することができるが、同じ視野を収集するのにより長い取得時間を必要とする分析データが必要である場合、予備走査を用いて、各視野においてより低速の分析データを収集するための戦略を最適化することができる。全ての波長を用いる光学画像を迅速に得ることができる一方で、同じ視野からの付加的な分析情報を与えるフィルタリングされた光学画像がずっと低速である場合、予備走査を用いて、粒子に関する分析情報のデータ収集を最適化することができる。
以下に本発明の実施態様を記載する。
(実施態様1)顕微鏡における試料の分析のための方法であって、
第1の条件の組を用いて、前記試料の表面上の関心領域から分析データを収集する第1のサーベイを実施することと、
前記第1の条件の組とは異なる第2の条件の組を用いて、前記試料の表面上の前記関心領域の選択された部分から付加的な分析データを収集する第2のサーベイを実施することと、を含み、
前記第1のサーベイからの前記分析データを用いて、前記第2のサーベイにおけるデータ収集に用いられる前記部分を選択し、それら部分が用いられる順序を決定する、方法。
(実施態様2)前記第1のサーベイからの前記分析情報データを用いて、前記第2のサーベイにおけるデータ収集に用いられる前記関心領域内の位置、及び前記選択された部分についての順序を決定する、実施態様1に記載の方法。
(実施態様3)前記第1の条件の組及び前記第1のサーベイ中に収集されるデータは、前記試料上のエリアを前記第2の条件の組の場合よりも迅速にカバーするように選択される、実施態様1又は2に記載の方法。
(実施態様4)前記第1の条件の組及び前記第2の条件の組の条件は、倍率、画像分解能、画像滞留時間、グレー・レベル閾値、エネルギー分散型X線分光設定、及びサーベイ終了条件のいずれかを含む、実施態様1~3のいずれかに記載の方法。
(実施態様5)前記第1の条件の組の倍率は、前記第2の条件の組の倍率より低い、実施態様4に記載の方法。
(実施態様6)前記第1の条件の組の画像分解能は、前記第2の条件の組の画像分解能より低い、実施態様4又は5に記載の方法。
(実施態様7)前記第1のサーベイは、前記分析データを収集するための前記顕微鏡の第1の検出器に対して前記試料を移動させて、複数のサブ領域の各々が、所定の滞留時間、前記第1の検出器の視野内に連続的に入るようにすることにより、前記関心領域から前記分析データを収集することを含む、実施態様1~6のいずれかに記載の方法。
(実施態様8)前記第2のサーベイは、前記付加的な分析データを収集するための前記顕微鏡の第2の検出器に対して前記試料を移動させて、前記選択された部分の各々が、所定の滞留時間、前記第2の検出器の視野内に連続的に入るようにすることにより、前記選択された部分の各々から前記付加的なデータを収集することを含む、実施態様1~7のいずれかに記載の方法。
(実施態様9)前記第1の条件の組及び前記第2の条件の組は、前記第1のサーベイにおけるサブ領域の数が、前記第2のサーベイにおける前記選択された部分の数より大きくなるように選択される、実施態様7及び8に記載の方法。
(実施態様10)前記第1の条件の組及び前記第2の条件の組は、前記第2のサーベイ中に収集される前記付加的な分析データの確度が、前記第1のサーベイ中に収集される前記分析データの確度を上回るように選択される、実施態様7及び8、又は実施態様9に記載の方法。
(実施態様11)前記第1の条件の組及び前記第2の条件の組は、前記第2のサーベイにおける所定の滞留時間が、前記第1のサーベイにおける滞留時間より長くなるように選択される、実施態様7及び8、又は実施態様9、又は実施態様10に記載の方法。
(実施態様12)前記滞留時間は、所定の分解能又は信号対ノイズ比で前記付加的な分析データを収集するのに十分に長いものである、実施態様8~11のいずれかに記載の方法。
(実施態様13)前記第1の検出器は前記第2の検出器である、実施態様8~12のいずれかに記載の方法。
(実施態様14)前記第2のサーベイにおける前記付加的な分析データの収集は、エネルギー分散型X線分光データを収集することを含む、実施態様1~13のいずれかに記載の方法。
(実施態様15)前記第1のサーベイからの前記分析データを用いることは、前記分析データから前記試料上の関心特徴を同定することを含む、実施態様1~14のいずれかに記載の方法。
(実施態様16)前記第1のサーベイからの前記分析データを用いることは、前記選択された部分が前記関心特徴の所定の画分を含むように、前記第2のサーベイにおけるデータ収集に用いられる前記部分を選択することをさらに含む、実施態様15に記載の方法。
(実施態様17)前記関心特徴は、前記試料の表面上に存在する粒子又は他の分離領域である、実施態様15又は16に記載の方法。
(実施態様18)前記第1のサーベイからの前記分析データを用いることは、前記選択された部分の各々から前記付加的な分析データを収集する最適な順序を生成することを含む、実施態様1~17に記載の方法。
(実施態様19)前記最適な順序は、前記関心特徴のより小さい割合を含む部分から前記付加的な分析データを収集する前に、前記関心特徴のより大きい割合を含む部分から前記付加的な分析データを収集するように生成される、実施態様15に従属するときの実施態様18に記載の方法。
(実施態様20)前記選択された部分の合計面積は、前記関心領域の面積を下回り、
前記第2のサーベイは、前記選択された部分のみから前記付加的な分析データを収集することを含む、実施態様1~19に記載の方法。
(実施態様21)前記第1のサーベイ及び前記第2のサーベイの各々は、粒子ビームを前記試料に指向させ、その結果、前記データを収集するために前記試料から放出されるX線又は電子を検出することを含む、実施態様1~20のいずれかに記載の方法。
(実施態様22)前記粒子ビームは、電子ビーム又はイオンビームである、実施態様21に記載の方法。
(実施態様23)前記第1のサーベイ及び前記第2のサーベイの各々においてデータを収集することは、前記試料を表す光学的画像データを収集することを含む、実施態様1~22のいずれかに記載の方法。
(実施態様24)前記第1の条件の組及び前記第2の条件の組は、前記第1のサーベイが、前記第2のサーベイで取得される光学画像よりも、低い倍率及び小さい視野を有する光学画像を取得することを含むように選択される、実施態様23に記載の方法。
(実施態様25)前記第1の条件の組及び前記第2の条件の組は、前記第1のサーベイが、前記第2のサーベイで取得される光学画像よりも迅速に光学画像を取得することを含むように選択される、実施態様23又は24に記載の方法。
(実施態様26)前記第1のサーベイからの前記分析データを用いることは、前記分析データから前記試料上の関心特徴を同定することを含み、
前記第1の条件の組及び前記第2の条件の組の各々は、各々のサーベイが終了する終了条件を含み、前記第2の条件の組の終了条件は、付加的な分析データが前記関心特徴の所定の画分から収集されたときに、前記第2のサーベイを終了するように決定される、実施態様1~25のいずれかに記載の方法。
(実施態様27)前記第1の条件の組の終了条件は、全関心領域から分析データが収集された後に、前記第1のサーベイが終了するというものであり、前記第1の条件の組における滞留時間、倍率及び分解能は、前記第2の条件の組と同じである、実施態様26に記載の方法。
(実施態様28)前記第1のサーベイ及び前記第2のサーベイの各々が自動化されており、前記方法は、前記第1のサーベイの後及び前記第2のサーベイの前に実施される決定ステップをさらに含み、前記決定ステップの結果が、前記第2のサーベイにおけるデータ収集に用いられる前記部分の選択、及び、それら部分が用いられる順序の決定に用いられる、実施態様1~27のいずれかに記載の方法。
(実施態様29)前記決定ステップは自動化されている、実施態様28に記載の方法。
(実施態様30)前記決定ステップは、ユーザにより行われる動作を含む、実施態様28に記載の方法。
(実施態様31)前記方法は、顕微鏡における試料の自動分析のためのものである、実施態様1~29のいずれかに記載の方法。
(実施態様32)顕微鏡における試料の分析のための装置であって、前記装置は、
ステージ位置決めのためのプログラム可能な制御装置を含み、
前記装置は、前記試料の表面上の関心領域から収集されたデータを記録及び処理するように構成されており、
前記装置は、
第1の条件の組を用いて前記試料の表面上の関心領域から分析データを収集する第1のサーベイと、
前記第1の条件の組とは異なる第2の条件の組を用いて、前記試料の表面上の関心領域の選択された部分から付加的な分析データを収集する第2のサーベイと、
を含む分析を実施するように構成され、
前記第1のサーベイからの前記分析データを用いて、前記第2のサーベイにおけるデータ収集に用いられる前記部分が選択され、それら部分が用いられる順序が決定される、装置。
(実施態様33)前記第1の条件の組及び前記第1のサーベイ中に収集されるデータは、前記試料上のエリアを前記第2の条件の組の場合よりも迅速にカバーするように選択される、実施態様32に記載の装置。
(実施態様34)前記装置は、前記分析データを収集するための第1の検出器を含む顕微鏡を含む、実施態様32又は33に記載の装置。
(実施態様35)前記装置は、前記付加的な分析データを収集するための第2の検出器を含む顕微鏡を含む、実施態様32~34のいずれかに記載の装置。
(実施態様36)前記装置は、前記試料上に粒子ビームを指向させるためのデバイスと、粒子ビームの位置決めのためのプログラム可能な制御装置とを含む、実施態様32~35のいずれかに記載の装置。
(実施態様37)前記第1及び第2の検出器の一方又は両方は、前記データを収集するために、前記粒子ビームを前記試料に指向させた結果として生じる、前記試料から放出されるX線又は電子を検出するように構成される、実施態様34~36に記載の装置。
(実施態様38)前記第1及び第2の検出器の一方又は両方は、前記試料を表す光学画像データを収集するように構成された光学イメージセンサを含む、実施態様34~36、又は実施態様37に記載の装置。
(実施態様39)前記試料の表面上の関心領域を表すデータは、電子信号データ及び/又はX線信号データを含む、実施態様32~38のいずれかに記載の装置。
(実施態様40)前記第2のサーベイの間、決定された前記順序で付加的な分析データを収集するために検出器の視野内に前記試料の表面上の関心領域の前記選択された部分を位置決めするように構成された、前記試料を支持するための移動可能なステージを含む、実施態様32~39のいずれかに記載の装置。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図2(c)】
図2(d)】
図2(e)】
図2(f)】
図3
図4(a)】
図4(b)】