(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】ジェル状化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/81 20060101AFI20220620BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20220620BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20220620BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20220620BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20220620BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220620BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20220620BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20220620BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/02
A61K8/73
A61K8/34
A61K8/37
A61Q19/00
A61Q1/00
A61K8/9789
(21)【出願番号】P 2019088433
(22)【出願日】2019-05-08
【審査請求日】2020-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】595048544
【氏名又は名称】ちふれホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】千葉 祐毅
(72)【発明者】
【氏名】上西 久美子
(72)【発明者】
【氏名】階堂 睦子
(72)【発明者】
【氏名】木藤 はるみ
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-020326(JP,A)
【文献】特開2012-206957(JP,A)
【文献】特開2007-314442(JP,A)
【文献】Astamoisture-Gel,ID 1332915,Mintel GNPD[online],2010年4月,[検索日2022.01.05],URL,https://www.portal.mintel.com
【文献】Aqua Gel,ID 4171133,Mintel GNPD[online],2016年4月,[検索日2021.05.27],https://www.portal.mintel.com
【文献】Multi Moisture Gel,ID 7540199,Mintel GNPD[online],2020年4月,[検索日2022.01.05],URL,https://www.portal.mintel.com
【文献】Lotion,ID 2983707,Mintel GNPD[online],2015年2月,[検索日2022.01.05],URL,https://www.portal.mintel.com
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)
カルボキシビニルポリマー、又はアルキル変性カルボキシビニルポリマーより選ばれるアクリル酸系増粘剤
と、
(b)
クインスシードエキスである水溶性多糖類
と、
(c)(
c1)ジグリセリン、(c2)ジプロピレングリコール、メチルグルセス-10、及びPEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリンからなる群から選ばれる1種又は2種以上、並びに(c3)グリセリン、からなる多価アルコールと、
(d)
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、及びラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)からなる群より選ばれる1種又は2種である25℃で液状のエステル油と、
を含有し、かつ、
(e)25℃で固形状のエステル油、
を含有しない、ジェル状化粧料であって、
前記成分(a)~(d)の化粧料に対する配合量が、成分(a)を0.4質量%~1.0質量%、成分(b)を0.05質量%~0.5質量%、成分(c)を12質量%~18質量%、成分(d)を0.1質量%~1質量%であり、
さらに、精製水及びポリクオタニウム-51を含有し、前記ジェル状化粧料の粘度が15000mPa・s~40000mPa・sである、ジェル状化粧料。
【請求項2】
前記成分(c2)に対する前記成分(c1)の配合比(c1)/(c2)が0.375~1.5である、請求項1に記載のジェル状化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油分を含有する水性ジェル状化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、塗布時にコクとみずみずしい使用感を併せ持つ化粧料が好まれており、また継続してうるおいを感じることができる化粧料が望まれている。
【0003】
化粧料においては、水分と油分を乳化や可溶化などの技術を利用し併用することが従来より行われている。油分には水分保持などの効果があり、塗布後にうるおい感を得ることが可能であるが、その一方でクリームのように多量の油分を含有すると油分によるベタつきや安定性の悪化が問題となる。また、油分を多量に含有したクリームは、界面活性剤を多量に使用することになり刺激を感じる原因となる。ローション剤形では、含有可能な油分の量は少量であり、塗布後に継続したうるおい感を得ることは難しい。
【0004】
ジェル状化粧料はみずみずしく、清涼感があり、さっぱりした使用感が特徴的な化粧料である。また、使用する増粘剤の特性により、伸び広がりの滑らかさなどを付与することが可能である。しかし、含有可能な油分の量が少ないため、塗布中のコクがなく、塗布後に継続してうるおいを感じることは難しい。
【0005】
使用感が良好であり、水分保持能力に優れたジェル状化粧料としては、例えば、ペクチンの水溶液に多価陽イオンを反応させて形成したゲルとローカストビーンガム及びキサンタンガムから選ばれる1種又は2種のガム質を組み合わせたジェル状化粧料が知られている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された技術はペクチン及び多価陽イオンを同時に含有することが必要であるため、使用する成分に制限があり、また、油分の含有量はクリームほど多くないため、塗布中にコクを感じにくいという問題がある。
【0008】
このように、既存の技術では、特殊な成分を含有すること無く、塗布時のコクとみずみずしい使用感を併せ持ち、なおかつ、塗布後にうるおいを継続して感じることができるジェル状化粧料はほとんど知られていない。
【0009】
そこで本発明は、水性ジェル状化粧料であって、油分の含有量を抑えながらも、塗布時のコクとみずみずしい使用感を併せ持ち、なおかつ、塗布後にうるおいを継続して感じることができるジェル状化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決しようとして、数多くの化粧料用原料を取り上げて検討し、試行錯誤を繰り返して鋭意研究開発に励んだところ、驚くべきことに、カルボキシビニルポリマーなどのアクリル酸系増粘剤と、クインスシードエキスなどの水溶性多糖類と、ジグリセリンなどの多価アルコールと、ラウロイルグルタミン酸エステルなどの25℃で液状のエステル油を同時に含有し、さらに25℃で固形状のエステル油を含まないことで、塗布中にコクがあり、みずみずしい使用感を得ることができ、水分保持力に優れたジェル状化粧料が得られることを見出した。
【0011】
本発明者らは、このような知見を基に、本発明の課題を解決するものとして、アクリル酸系増粘剤と水溶性多糖類と多価アルコールと25℃で液状のエステル油を含有し、かつ、25℃で固形状のエステル油を含有しないジェル状化粧料を創作することに成功した。本発明は、これらの知見及び成功例に基づき完成された発明である。
【0012】
したがって、本発明の一態様によれば、以下のジェル状化粧料が提供される。
[1](a)アクリル酸系増粘剤と、
(b)水溶性多糖類と、
(c)多価アルコールと、
(d)25℃で液状のエステル油と、
を含有し、かつ、
(e)25℃で固形状のエステル油、
を含有しないジェル状化粧料。
[2]前記成分(a)が、カルボキシビニルポリマー、又はアルキル変性カルボキシビニルポリマーである[1]に記載のジェル状化粧料。
[3]前記成分(b)が、クインスシードエキスである[1]~[2]のいずれか1項に記載のジェル状化粧料。
[4]前記成分(c)が、分子量130以上の多価アルコールである[1]~[3]のいずれか1項に記載のジェル状化粧料。
[5]前記成分(c)が、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、メチルグルセス-10、及びPEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリンからなる群から選ばれる1種又は2種以上である[1]~[4]のいずれか1項に記載のジェル状化粧料。
[6]前記成分(d)が、ラウロイルグルタミン酸エステルである[1]~[5]のいずれか1項に記載のジェル状化粧料。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様のジェル状化粧料は、多量の油分を必要とせず、塗布中のベタつき感がなく、コクの有る使用感でありながらも、高い水分保持力を有することから、日常的に利用されることが期待できる。
【0014】
本発明の一態様のジェル状化粧料によれば、化粧水、乳液、美容液、パック、マッサージジェルなどのスキンケア化粧品、ファンデーション、化粧下地などのメーキャップ化粧品といった、種々の化粧品形態をとることにより、使用時にうるおいを感じることができるため、多幸感を得ることが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は実施例に記載されたとおりの、塗布前及び塗布から7時間後における水分量の変化を示した図であり、縦軸は測定結果より得られた変化量を表している。図中の「■」は実施例5のジェル状化粧料の結果を示しており、「□」は対照とした従来から市場に存在するジェル状化粧料の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一態様であるジェル状化粧料の詳細について説明するが、本発明の技術的範囲は本項目の事項によってのみに限定されるものではなく、本発明はその目的を達成する限りにおいて種々の態様をとり得る。
【0017】
本明細書における各用語は、別段の定めがない限り、化粧品分野における当業者により通常用いられている意味で使用され、不当に限定的な意味を有するものとして解釈されるべきではない。また、本明細書においてなされている憶測や推論は、本発明者らのこれまでの知見や経験によってなされたものであることから、本発明の技術的範囲はこのような憶測や推論のみによって拘泥されるものではない。
【0018】
例えば、「及び/又は」は、列記した複数の関連項目のいずれか1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせ若しくは全ての組み合わせを意味する。
【0019】
「含有量」は、濃度と同義であり、ジェル状化粧料の全体量に対する成分の量の割合を意味する。本明細書では、別段の定めがない限り、含有量の単位は「質量%(wt%)」を意味する。
【0020】
数値範囲の「~」は、その前後の数値を含む範囲であり、例えば、「0質量%~100質量%」は、0質量%以上であり、かつ、100質量%以下である範囲を意味する。なお、整数値の桁数と有効数字の桁数は一致する。例えば、1の有効数字は1桁であり、10の有効数字は2桁である。また、小数値は小数点以降の桁数と有効数字の桁数は一致する。例えば、0.1の有効数字は1桁であり、0.10の有効数字は2桁である。
【0021】
「使用感」は、ジェル状化粧料を塗布中及び/又は塗布後の皮膚に触れた際の感触を意味する。また、「コク」は、ジェル状化粧料を皮膚に塗布した際に厚みがあり濃密さを感じる感触を意味しており、「みずみずしさ」はジェル状化粧料を塗布した後に感じるうるおいがあり、ベタつきがなく、さっぱりとした状態を意味する。「コク」及び「みずみずしさ」は、後述する実施例に記載の使用感評価により評価及び確認できる。
【0022】
「固形状」は、ペースト及び固体であり、自重により流動しないことを意味する。
【0023】
「ジェル状化粧料」は、ゲルを利用し、粘度が15000mPa・s~40000mPa・sである化粧料を意味する。ジェル状化粧料は、その目的に応じて、着色されていてもよく、不透明であっても良い。「ゲル」は増粘作用のある原料を溶媒に溶解させることで得られる、粘稠性があり、その外観が透明又は半透明の組成物を意味し、「水性ゲル」は溶媒が精製水であることを意味する。
【0024】
本発明の一態様のジェル状化粧料は、アクリル酸系増粘剤(成分(a))と、水溶性多糖類(成分(b))と、多価アルコール(成分(c))と、25℃で液状のエステル油(成分(d))を少なくとも含有し、かつ、25℃で固形状のエステル油(成分(e))を含有しない。
【0025】
成分(a)のアクリル酸系増粘剤は、通常知られているとおりのアクリル酸系高分子であり、水に溶解し水性ゲルが得られるものであれば特に限定されない。成分(a)は、成分(b)とともに水性ゲルを形成し、みずみずしい使用感をジェル状化粧料に付与するように機能する。
【0026】
アクリル酸系増粘剤の非限定的な例としては、例えば、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリアクリルアミドなどが挙げられるが、ジェル状化粧料にみずみずしい使用感を付与するという観点から、カルボキシビニルポリマー、及びアルキル変性カルボキシビニルポリマーが好ましく、カルボキシビニルポリマーがより好ましい。
【0027】
成分(a)のアクリル酸系増粘剤は、常法に従って製造されたものであっても、市販されているものであっても、どちらでもよい。市販されているアクリル酸系増粘剤としては、例えば、「カーボポール940」(ルーブリゾール社製)、「カーボポール941」(ルーブリゾール社製)、「カーボポール980」(ルーブリゾール社製)、「カーボポール981」(ルーブリゾール社製)、「ペムレンTR-1」(ルーブリゾール社製)、「ペムレンTR-2」(ルーブリゾール社製)、「ハイビスワコー103」(富士フィルム和光純薬株式会社製)、「ハイビスワコー104」(富士フィルム和光純薬株式会社製)、「ハイビスワコー105」(富士フィルム和光純薬株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
成分(a)の含有量は、水性ゲルを形成し、みずみずしい使用感を付与し得る量であれば良く、例えば、0.1質量%以上であるが、これに限定されるものではない。ジェル状化粧料を適正な粘度に保ち、良好な使用感を得るためには、0.1質量%~5質量%であることが好ましく、0.2質量%~2.0質量%であることがより好ましく、0.4質量%~1.0質量%であることがさらに好ましい。なお、成分(a)の含有量が、0.1%未満であると十分な増粘効果が発揮されず、ジェル状化粧料の粘度を保つことが困難になり、5質量%以上であるとジェル状化粧料の粘度が高くなり、みずみずしい使用感を得ることが難しくなる。
【0029】
成分(b)の水溶性多糖類は、水に溶解する多糖類であれば特に限定されず、天然由来のものでも、合成して得られるものでも、これらの混合物でも、いずれのものでも良い。成分(b)は、成分(a)とともに水性ゲルを形成し、みずみずしい使用感をジェル状化粧料に付与するように機能する。また、成分(c)及び成分(d)とともに塗布時にコクが得られるように作用し、塗布後に水分保持機能を発揮するように作用する。
【0030】
水溶性多糖類としての非限定的な例としては、例えば、ヒアルロン酸ナトリウム、加水分解ヒアルロン酸、クインスシードエキス、チューべロース多糖体、キサンタンガム、グルコマンナン、などが挙げられるが、塗布時のコクとみずみずしい使用感を付与するという観点からヒアルロン酸ナトリウム、クインスシードエキスが好ましく、クインスシードエキスがより好ましい。
【0031】
成分(b)の水溶性多糖類は、常法に従って製造されたものであっても、市販されているものであってもどちらでもよい。市販されている水溶性多糖類の例としては、例えば、
「ヒアルロンサンHA-LQ」(キユーピー株式会社製)、「ヒアロオリゴ(登録商標)」(キユーピー株式会社製)、「ヒアルロン酸FCH-200」(キッコーマンバイオケミファ株式会社製)、「ヒアルロン酸FCH-SU」(キッコーマンバイオケミファ株式会社製)、「クインスシード2S」(大日本化成株式会社製)、「マルメロ BG」(香栄興業株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
成分(b)の含有量は、水性ゲルを形成しみずみずしい使用感、並びに塗布時のコクを付与し得る量であれば特に限定されず、例えば、0.01質量%以上であるが、みずみずしい使用感と塗布時のコクを良好にするためには、0.01質量%~1質量%であることが好ましく、0.05質量%~0.5質量%であることがより好ましい。
【0033】
成分(c)の多価アルコールは、通常化粧品分野で用いられる多価アルコールであり、成分(b)として記載された水溶性多糖類でなければ、特に限定されない。成分(c)は、成分(b)及び成分(d)とともに、塗布時のコクを得られるように作用し、塗布後に水分保持力を付与するように機能する。
【0034】
成分(c)としては、例えば、分子量90以上の多価アルコールが挙げられるが、上記機能を発揮するという観点から、分子量130以上の多価アルコールが好ましく、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、メチルグルセス-10、及びPEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリンがより好ましく、ジプロピレングリコール、及びジグリセリンがさらに好ましい。成分(c)は上記したもののうち1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用し得る。
【0035】
成分(c)の多価アルコールは、常法に従って製造されたものであっても、市販されているものであってもどちらでもよい。市販されている多価アルコールとしては、例えば、
「ユニセーフ(登録商標) DPG-R」(日油株式会社製)、「DPG-RF」(株式会社ADEKA製)、「ジグリセリン801」(阪本薬品工業株式会社製)、「マクビオブライドMG-10E」(日油株式会社製)、「NIKKOL BMG-10」(日本サーファクタント工業株式会社製)、「Glucam E-10J Humectant」(日本ルーブリゾール社製)、「WILBRIDE(登録商標)S-753」(日油株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
成分(c)の含有量は、塗布時のコクと塗布後の水分保持機能を付与し得る量であれば特に限定されず、例えば、2質量%以上であるが、塗布時にベタつかずにコクを感じ得るという観点から、2質量%以上22質量%未満であることが好ましく、2質量%~20質量%であることがより好ましい。分子量が90以上の多価アルコールを22質量%以上含む場合には、みずみずしい使用感を得ることが困難になる。
【0037】
成分(d)の25℃で液状のエステル油は、成分(b)及び成分(c)とともに、塗布時のコクを得られるように作用し、塗布後に水分保持機能を付与するように作用する成分であり、通常化粧品分野で用いられるものであれば特に限定されない。
【0038】
25℃で液状のエステル油の非限定的な具体例としては、例えば、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ビス(ヘキシルデシル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジイソステアリル、ラウロイルサルコシンイソプロピル、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイル、トリエチルヘキサノイン、パルミチン酸エチルヘキシル、エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、セバシン酸ジエチルヘキシル、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2などが挙げられ、塗布時のコク、及び塗布後の水分保持機能の観点から、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ビス(ヘキシルデシル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジイソステアリル、ラウロイルサルコシンイソプロピルが好ましく、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)がより好ましい。成分(d)は上記したもののうち1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用し得る。
【0039】
成分(d)の25℃で液状のエステル油は、常法に従って製造されたものであっても、市販されているものであってもどちらでもよい。市販されている25℃で液状のエステル油としては、例えば、「エルデュウ PS-203」(味の素株式会社製)、「エルデュウ CL-202」(味の素株式会社製)、「Plandool-LG2」(日本精化株式会社製)、「AMITER LG-2016」(日本エマルジョン株式会社製)、「AMITER LG-1800」(日本エマルジョン株式会社製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
成分(d)の含有量は、塗布時のコク、及び塗布後の水分保持機能を発揮し得る量であれば、特に限定されず、例えば、0.05質量%以上であるが、多量のエステル油を含有させることで塗布中のベタつきやぬるつきなどを感じやすくなるために、みずみずしい使用感が損なわれるという観点から、0.05質量%~2質量%が好ましく、0.1質量%~1質量%がより好ましい。
【0041】
成分(e)の25℃で固形状のエステル油は、塗布時にベタつきを感じ、本発明の一態様のジェル状化粧料の使用感を損ねる要因となるものであり、含有するべきではない。
【0042】
25℃で固形状のエステル油の非限定的な具体例としては、例えば、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル、ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/べヘニル)、ダイマージリノール酸ダイマージリノレイルビス(べヘニル/イソステアリル/フィトステアリル)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
本発明の一態様のジェル状化粧料は、本発明の課題を解決し得る限り、成分(a)~成分(d)に加えて、成分(e)を除くその他の成分を含有しても良い。
【0044】
その他の成分は特に限定されず、例えば、通常のジェル状化粧料に用いられる成分などが挙げられ、より具体的には成分(d)及び成分(e)以外のその他油性成分、清涼剤、防腐剤、キレート剤、界面活性剤、pH調整剤、酸化防止剤、感触改良剤、紫外線吸収剤、皮膜形成剤、美白剤、ビタミン類、その他各種薬効成分、粉体、香料、色材などが挙げられる。その他の成分の含有量は、本発明の課題解決を妨げない限り、当業者により適宜設定することができる。その他の成分のいくつかについて以下に列挙するが、これらはあくまでも例示であり、限定されるものではない。
【0045】
その他油性成分は、例えば、一般に油性エモリエント成分と言われるものなどが挙げられ、好ましくはジェル状化粧料に通常用いられる室温(25℃)で液状である油性エモリエント成分である。その他油性成分としての油性エモリエント成分の具体例としては、シクロペンタシロキサン、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなどのシリコーン油;スクワラン、ミネラルオイル、水添ポリイソブテンなどの炭化水素油;フルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルエーテルシリコーンなどのフッ素油;オリーブ油、ホホバ油、ラベンダー油、月見草油、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアンナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、胚芽油などの天然油性成分などが挙げられるが、これらに限定されない。成分(d)及び成分(e)以外の油性エモリエント成分は、上記したもののうち1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。その他油性成分としての油性エモリエント成分の含有量は、成分(d)と合計して10質量%未満であることが好ましい。
【0046】
防腐剤としては、例えば、プロピルパラベン、メチルパラベンなどのパラオキシ安息香酸エステル、安息香酸、サリチル酸、石炭酸、ソルビン酸、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、感光素、フェノキシエタノールなどが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。防腐剤の含有量は、0質量%~1質量%であることが好ましい。
【0047】
酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、トコフェロールなどのビタミンE及びその誘導体、チオタウリン、メマツヨイグサ抽出液、βカロチン、カテキン化合物、フラボノイド化合物、ポリフェノール化合物などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。酸化防止剤の含有量は、0質量%~1質量%であることが好ましい。
【0048】
感触改良剤としては、例えば、窒化ホウ素、ポリメチルシルセスキオキサン、(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマー、ナイロン-6、ナイロン-11、ナイロン-12、ナイロン-6,6などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。感触改良剤の含有量は、0質量%~5質量%であることが好ましい。
【0049】
色材としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄などの無機顔料;染料、有機顔料などの有機合成色素;天然色素などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。色材の含有量は、0質量%~5質量%であることが好ましい。
【0050】
本発明の一態様のジェル状化粧料は、化粧料として用いられる限りにおいて、その機能や効果については特に限定されない。
【0051】
本発明の一態様のジェル状化粧料は、その使用感について、例えば後述する実施例に記載の「コク」及び「みずみずしさ」に関する使用感評価により、「○」又は「△」として評価され、優れた使用感を有するという観点では、両方の評価が「○」として評価されることが好ましい。本発明の一態様のジェル状化粧料は、皮膚へ塗布した際に、コクがありみずみずしい使用感を有するという特徴がある。
【0052】
本発明の一態様のジェル状化粧料は、その水分保持機能について、例えば、後述する実施例に記載の保湿力試験により、従来より市場に存在しているジェル状化粧料(従来品)と同等の水分保持力を有することが望まれており、優れた水分保持力を有するという観点では、従来品と比較して高い値を示すことが好ましい。
【0053】
本発明のジェル状化粧料のより具体的な一態様は、成分(a)を0.2質量%~1.0質量%、成分(b)を0.05質量%~0.5質量%、成分(c)を2質量%~20質量%、成分(d)を0.1質量%~2質量%で含有し、かつ成分(e)を含有しない事により、皮膚へ塗布した際にコクとみずみずしさを感じられるという良好な使用感と、水分保持機能を併せ持つジェル状化粧料であるが、これに限定されない。
【0054】
本発明の一態様のジェル状化粧料の製造方法は特に限定されず、例えば、後述する実施例に記載の方法などが挙げられる。すなわち、成分(a)~成分(c)及びその他の水性成分を含むA相、並びに成分(d)及びその他の油性成分を含むB相をそれぞれ均一に調整した後、加温したA相にB相を投入し緩やかに撹拌しながら徐冷し、次いで、適温にてpH調整剤などを含むC相を投入してさらに緩やかに撹拌しながら室温程度まで冷却することにより、本発明の一態様であるジェル状化粧料が得られる。
【0055】
本発明の一態様のジェル状化粧料は、その使用態様や剤形については特に限定されず、例えば、スキンケア化粧品、メーキャップ化粧品、フレグランス化粧品、ボディケア化粧品などが挙げられ、より具体的には美容液、化粧下地、サンスクリーンジェル、ファンデーション、ハンドクリーム、コンシーラー、ほほ紅、アイシャドウ、口紅などが挙げられる。本発明の一態様のジェル状化粧料は、皮膚へ塗布した際にコクがありみずみずしさを感じることができるため、美容液やサンスクリーンジェルなどのスキンケア化粧品とすることが好ましい。
【0056】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
【実施例】
【0057】
[1.被験試料の調整]
表1に示した処方に従い、以下の手順により、実施例1~実施例9及び比較例1~比較例4のジェル状化粧料を調整した。なお、表中の数値は質量%(wt%)を表わす。
【0058】
表中のA相及びB相を加温して均一に混合した後、80℃まで加温したA相にB相を投入し徐冷しながら緩やかに撹拌し混合液を得た。次いで、50℃まで冷却した混合液にC相を投入して、30℃になるまで緩やかに撹拌することにより、ジェル状化粧料を得た。
【0059】
【0060】
※1 表中の「カルボキシビニルポリマー」としては、「カーボポール980」(ルーブリゾール社製)を用いた。
※2 表中の「アルキル変性カルボキシビニルポリマー」としては、「カーボポールUltrez20」(ルーブリゾール社製)を用いた。
※3 表中の「クインスシードBG抽出液」としては、クインスシードエキスを2%含有する「クインスシード2S」(大日本化成株式会社製)を用いた。
【0061】
[2.評価方法]
(2-1)粘度測定
粘度測定には、BH型粘度計(「VISCOMETER BH-II」;東機産業株式会社製)を使用した。計測条件は、7号ローター、20rpm、2分とした。調製直後の被験試料について、計測開始から2分後の粘度値を読み取った。
【0062】
(2-2)pH測定
常法に従ってpHメーター(「pH METER F-22」;株式会社堀場製作所製)を使用して測定した。
【0063】
(2-3)使用感評価
化粧品の官能評価に関する専門のパネラー5名を対象として、被験試料を直接的に皮膚へ塗布することにより、塗布した際の「コク」及び「みずみずしさ」について、下記の基準により点数をつけた。比較対照として、従来より市場に存在する「ちふれ うるおい ジェル」(株式会社ちふれ化粧品製)を使用し、評価した。
「コク」
3:比較対照に比べてコクがある
2:比較対照と同等
1:比較対照に比べてコクがない
「みずみずしさ」
3:比較対照に比べてみずみずしさを感じる
2:比較対照と同等
1:比較対照に比べてみずみずしさを感じない
【0064】
「コク」と「みずみずしさ」の2項目に関するパネラー間の平均点が、2.4以上を「○」、1.6以上2.4未満を「△」、1.6未満を「×」として評価した。
【0065】
(2-3)保湿力試験
被験試料の塗布前後における角層水分量を、コルネオメーター(「Corneometer CM825」;Courage+Khazaka社製)を用いて測定した。被験試料の塗布条件は、被験者の前腕内側に1mg/cm2となるように塗布することとした。水分変化量を、塗布前の水分量に対する塗布から7時間後の水分量として算出し、保湿力を評価した。
【0066】
(2-4)総合評価
粘度測定の結果が基準内(15000mPa・s~40000mPA・s)である各被験試料について、使用感の評価結果より、以下の基準により総合的な評価をした。
○:「コク」と「みずみずしさ」の評価がどちらも「○」であったもの
△:「コク」及び/又は「みずみずしさ」の評価が「△」であり、かつ、いずれの評価においても「×」ではなかったもの
×:「コク」及び/又は「みずみずしさ」の評価が「×」であったもの
-:粘度が基準範囲外であったもの
【0067】
[3.評価結果]
(3-1)粘度、pH及び使用感
実施例1~実施例9のジェル状化粧料及び比較例1~比較例4のジェル状化粧料について、粘度、pH及び使用感を測定した結果を表1に示す。
【0068】
実施例1~実施例9のジェル状化粧料及び比較例1、比較例2、及び比較例4のジェル状化粧料は、いずれにおいても粘度値が15000mPa・s~40000mPa・sにあり、ジェル状化粧料の基準を満たすものであった。なお、成分(a)の増粘作用はpHの値が影響することが知られているが、実施例1~実施例9及び比較例1~比較例4におけるpHの値のバラツキは化粧品分野における常識の範囲内であり、増粘作用への影響は少ないことが確認された。
【0069】
表1に示すとおり、実施例1~実施例9のジェル状化粧料はいずれも使用感が良好であったが、比較例1~比較例4のジェル状化粧料はいずれも使用感が悪いものであった。
【0070】
(3-2)保湿力試験
実施例5のジェル状化粧料、及び従来から市場に存在するジェル状化粧料である「ちふれ うるおい ジェル」(株式会社ちふれ化粧品製)について保湿力試験を実施したところ、
図1が示すとおり、対照品に比べて実施例5の水分変化量は同等以上であることが確認された。この結果より、得られたジェル状化粧料は、従来から市場に存在していたジェル状化粧料に比べて、良好な保湿力を有することがわかった。
【0071】
(3-3)まとめ
実施例1~実施例9のジェル状化粧料は、従来から市場に存在するジェル状化粧料と比較して同等以上の保湿力を有している蓋然性があり、皮膚に塗布した際に良好な「コク」と「みずみずしさ」が得られることがわかった。
【0072】
以下に本発明の一態様として、総合評価が「○」又は「△」であるジェル状化粧料の処方例を挙げるが、本発明の技術的範囲はこれらの処方例に限定されない。なお、各表中の数値は質量%(wt%)を表わす。
【0073】
(処方例1)ジェル状美容液
表2に記載されている成分について、A相及びB相をそれぞれ必要に応じて加温しながら均一に調整した。次いで、80℃に加温したA相にB相を投入し、緩やかに撹拌しながら50℃まで徐冷することで混合液を得た。混合液にC相を投入して得られた組成物を30℃になるまで緩やかに撹拌することにより、ジェル状美容液を得た。
【0074】
得られたジェル状美容液は、「コク」と「みずみずしさ」を併せ持ち、かつ、塗布後も継続してうるおいを感じるものであった。
【0075】
【0076】
(処方例2)ジェル状美白美容液
表3に記載されている成分について、A相及びB相をそれぞれ必要に応じて加温しながら均一に調整した。次いで、80℃に加温したA相にB相を投入し、緩やかに撹拌しながら50℃まで徐冷することで混合液を得た。混合液にC相を投入して得られた組成物を30℃になるまで緩やかに撹拌することにより、ジェル状美白美容液を得た。
【0077】
得られたジェル状美白美容液は、「コク」と「みずみずしさ」を併せ持ち、かつ、塗布後も継続してうるおいを感じるものであった。
【0078】
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のジェル状化粧料は、塗布時にベタつき感が無く、コクを感じられるという使用感に優れており、良好な水分保持力を示すものであることから、美容液などのスキンケア化粧品、ファンデーション、化粧下地などのメイクアップ化粧品、サンスクリーンジェルなどの日やけ止め化粧品といった種々の化粧品形態をとることができるものである。使用者は、本発明の一態様のジェル状化粧料を使用することにより、うるおいを感じることができるため、多幸感を得ることができる。