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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】人工心臓弁
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/24 20060101AFI20220620BHJP
【FI】
A61F2/24
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019505255
(86)(22)【出願日】2017-08-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-22
(86)【国際出願番号】 US2017044983
(87)【国際公開番号】W WO2018026865
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-07-22
(31)【優先権主張番号】62/369,678
(32)【優先日】2016-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/664,430
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500218127
【氏名又は名称】エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ニコライ・グロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ブキン
(72)【発明者】
【氏名】エレナ・シャーマン
(72)【発明者】
【氏名】タミール・エス・リーヴァイ
(72)【発明者】
【氏名】ジフ・ヨハナン
(72)【発明者】
【氏名】ジル・セネシュ
(72)【発明者】
【氏名】ディクラ・カーシュ
(72)【発明者】
【氏名】アレクセイ・エム・ツィペンユク
(72)【発明者】
【氏名】ワイナ・ミシェル・チュウ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・バラシュ
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-528256(JP,A)
【文献】特表2013-543406(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0194981(US,A1)
【文献】特表2016-523149(JP,A)
【文献】特表2007-535342(JP,A)
【文献】特表2012-504031(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0096739(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0157175(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入端部および流出端部を備え、径方向潰れ構成と径方向拡張構成との間で径方向に潰れ可能および拡張可能である環状のフレームであって、開口を画定する複数のストラットを備える環状のフレームと、
前記フレーム内に取り付けられ、前記フレームを通過する血流を調整する複数の弁尖を備える弁構造体であって、各弁尖が、流入表面と、流出表面と、前記フレームに対して固定される弁尖エッジ部分とを備える、弁構造体と、
前記フレーム上に取り付けられ、内方層および外方層を備える封止部材であって、少なくとも前記外方層は、前記フレームの外部上に取り付けられ、前記内方層は、少なくとも、隣接し合う弁尖の隣接し合う弁尖部分間において前記フレームの前記開口を覆い、前記内方層は、前記弁尖の前記流出表面に対面する前記内方層の部分に沿って1つまたは複数の開口を有して形成され、逆行性血液が、前記弁尖の前記流出表面に沿って前記フレームを通り、前記内方層の前記開口を通り、前記内方層と前記外方層との間の空間内に流入する、封止部材と
を備える、人工心臓弁。
【請求項2】
前記弁尖の前記弁尖エッジ部分は、湾曲扇形状を有し、前記封止部材の前記内方層は、隣接し合う弁尖の隣接し合う弁尖エッジ部分間の位置に、前記フレーム上に取り付けられる複数の三角形状部分を備える、請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項3】
前記内方層は、3つの三角形状部分を備え、前記内方層が前記弁尖の前記流出表面に対面する前記フレームの部分を覆わない、請求項2に記載の人工心臓弁。
【請求項4】
前記内方層は、前記フレームの外方表面上に取り付けられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の人工心臓弁。
【請求項5】
前記内方層は、前記フレームの内方表面上に取り付けられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の人工心臓弁。
【請求項6】
前記外方層は、逆行性血液の流入によって前記内方層と前記外方層との間に前記空間が形成されると、前記フレームから径方向外方に延在するように形状設定または構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の人工心臓弁。
【請求項7】
前記外方層は、形状固定繊維を含む、請求項6に記載の人工心臓弁。
【請求項8】
前記外方層は、入口端部から出口端部への方向へと前記フレームから外方に延在する下方テーパ状壁部セクションと、前記出口端部から前記入口端部への方向へと前記フレームから外方に延在する上方テーパ状壁部セクションと、前記下方テーパ状壁部セクションと前記上方テーパ状壁部セクションとの間に延在する中央壁部セクションとを備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の人工心臓弁。
【請求項9】
各弁尖の前記弁尖エッジ部分は、前記フレームおよび前記弁尖の前記弁尖エッジ部分に連結され前記フレームと前記弁尖の前記弁尖エッジ部分との間に配設される連結スカートにより、前記フレームに対して固定され、各連結スカートが、前記フレームの入口端部から出口端部へと対角線方向に延在する前記フレームのストラットに対して縫合される、請求項1から8のいずれか一項に記載の人工心臓弁。
【請求項10】
各連結スカートが、弁尖の前記弁尖エッジ部分に対しておよび前記フレームのストラットに対して縫合された2つの材料層を備える、請求項9に記載の人工心臓弁。
【請求項11】
各弁尖が、前記弁尖の両側に位置する対向し合う上方タブを、および前記上方タブの下方の前記弁尖の両側部に位置する対向し合う下方タブを備え、各上方タブが、隣接する弁尖の隣接する上方タブと対をなして複数の交連部を形成し、各下方タブが、前記各弁尖の前記弁尖エッジ部分に沿って少なくとも1つの折畳み層を形成するように折りたたまれる、請求項1から10のいずれか一項に記載の人工心臓弁。
【請求項12】
各弁尖が、前記上方タブと前記下方タブとの間の位置にて前記フレームに対して装着されない、請求項11に記載の人工心臓弁。
【請求項13】
各弁尖が、前記弁尖の各側部上に前記上方タブと前記下方タブとの間の間隙を有して形成される、請求項12に記載の人工心臓弁。
【請求項14】
各弁尖の前記弁尖エッジ部分に沿っておよび各交連部の下方に延在する少なくとも1つの補強コードをさらに備える、請求項11から13のいずれか一項に記載の人工心臓弁。
【請求項15】
流入端部および流出端部を備え、径方向潰れ構成と径方向拡張構成との間で径方向に潰れ可能および拡張可能である環状のフレームであって、開口を画定する複数のストラットを備える環状のフレームと、
前記フレーム内に取り付けられ、前記フレームを通過する血流を調整する複数の弁尖を備える弁構造体であって、各弁尖が、流入表面と、流出表面と、前記弁尖の両側に位置する対向し合う上方タブと、前記上方タブの下方の前記弁尖の両側に位置する対向し合う下方タブと、前記下方タブ同士の間に延在する弁尖エッジ部分とを備え、各上方タブが、隣接する弁尖の隣接する上方タブと対をなして、前記フレームに対して固定された複数の交連部を形成し、各下方タブが、前記各弁尖の前記弁尖エッジ部分に沿って少なくとも1つの折り目層を形成するように折りたたまれる、弁構造体と
を備える人工心臓弁であって、
各弁尖の前記弁尖エッジ部分は、前記フレームおよび前記弁尖の前記弁尖エッジ部分に連結され前記フレームと前記弁尖の前記弁尖エッジ部分との間に配設される連結スカートによって、前記フレームに連結され、各連結スカートが、前記フレームの入口端部から出口端部まで対角線方向に延在する前記フレームのストラットに対して縫合され、
各弁尖が、前記上方タブと前記下方タブとの間に前記フレームに対して装着されない対向し合うエッジを有し、前記非装着エッジは、前記フレームの内方へと径方向に離間されて、前記フレームと前記非装着エッジとの間に血液を流すことを可能にし、さらに前記人工心臓弁は、
前記フレーム上に取り付けられ、内方層および外方層を備える封止部材であって、少なくとも前記外方層は、前記フレームの外部上に取り付けられ、前記内方層は、少なくとも、隣接し合う弁尖の隣接し合う弁尖部分間において前記フレーム中の前記開口を覆い、前記内方層は、前記弁尖の前記流出表面に対面する前記内方層の部分に沿って1つまたは複数の開口を有して形成され、逆行性血液が、前記弁尖の前記流出表面に沿って前記フレームを通り、前記内方層の前記開口を通り、前記内方層と前記外方層との間の空間内に流入する、封止部材
を備える、人工心臓弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人工心臓弁の実施形態に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの心臓は様々な弁膜症を罹患し得る。これらの弁膜症は、心臓の重大な機能不全を結果としてもたらし、最終的には天然弁を人工弁に置換することが必要となり得る。多数の既知の人工弁と、ヒトにこれらの人工弁を植え込む多数の既知の方法とが存在する。
【0003】
弁膜症のまたは損傷を被った弁を置換または修復するために様々な外科技術を利用することができる。狭窄症および他の心臓弁膜症を理由とする多数の患者が毎年外科手術を受けており、欠陥を有する天然の心臓弁が人工弁によって置換される。欠陥を有する弁を治療するための大掛り度のやや低い別の方法は、修復または再建によるものであり、これは、典型的には石灰化が最小限に進行した弁に対して利用される。外科療法の問題は、外科修復に関連する高い罹患率および死亡率を伴う大きなリスクがこれらの慢性疾患患者に対して課せられる点である。
【0004】
天然弁が置換される場合には、人工弁の外科植込みは、典型的には開胸手術を必要とし、その最中に心臓は止められ、患者は心臓バイパス下に置かれる(いわゆる「人工心肺」)。一般的な一外科手技では、弁膜症を有する天然弁尖が切除され、人工弁が弁輪にて周辺組織に対して縫合される。手技に伴う外傷および付随的な体外血液循環継続期間により、一部の患者は、外科手技を乗り越えられずに死亡する、または術後まもなく死亡する。周知のように、患者に対するリスクは、体外循環下に置かれる所要時間量と共に上昇する。これらのリスクにより、弁膜症を患う天然弁を有するかなりの数に上る患者が、手技に耐えるにはあまりに虚弱な状態にあることによって手術不能と見なされる。一部の推定によれば、80歳超の弁狭窄症罹患者の50%超が、弁置換を目的とする手術を受けることができない。
【0005】
従来の開胸手術に伴う欠点により、経皮外科的アプローチおよび低侵襲外科的アプローチは、高い注目を集めている。一技術では、人工弁が、カテーテル法によりはるかにより低侵襲性の手技において植え込まれるように構成される。例えば、米国特許第5,411,522号および米国特許第6,730,118号は、圧縮状態でカテーテルに経皮導入され、バルーン膨張によりまたは自己拡張型フレームもしくはステントの使用により所望の位置において拡張されることが可能である、圧縮性経カテーテル心臓弁について記載している。
【0006】
経カテーテル心臓弁の重要な設計パラメータが、折畳みプロファイルまたはクリンプ状プロファイルの直径である。クリンプ状プロファイルの直径は、医師が大腿動脈または大腿静脈に経カテーテル心臓弁を通してどれだけ前進させられるかに直接的に影響を及ぼすため、重要である。さらに具体的には、プロファイルがより小さいことにより、安全が強化された状態におけるより広い患者人口の治療が可能となる。別の重要な設計パラメータは、弁周囲における弁周囲逆流の制御であり、この弁周囲逆流は、最初の植込み後の一定期間にわたり生じ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第5,411,522号
【文献】米国特許第6,730,118号
【文献】米国特許出願公開第2012/0239142号
【文献】米国特許出願第62/513,348号
【文献】米国特許出願公開第2017/0065415号
【文献】米国特許出願公開第2014/0343670号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
代表的な一実施形態では、人工心臓弁が、流入端部および流出端部を備え、径方向潰れ構成と径方向拡張構成との間で径方向に潰れ可能および拡張可能である環状のフレームであって、開口を画定する複数のストラットを備える環状のフレームを備える。さらに、人工心臓弁は、フレーム内に取り付けられ、フレームを通過する血流を調整する複数の弁尖を備える弁構造体であって、各弁尖が、流入表面と、流出表面と、フレームに対して固定される弁尖エッジ部分とを備える、弁構造体を備え得る。また、人工心臓弁は、フレーム上に取り付けられ、内方層および外方層を備える封止部材を備え得る。少なくとも外方層が、フレームの外部上に取り付けられ、内方層は、少なくとも、隣接し合う弁尖の隣接し合う弁尖部分間においてフレーム中の開口を覆い、内方層は、弁尖の流出表面に対面する位置にてフレーム中の1つまたは複数の開口を覆わないことにより、フレーム中の1つまたは複数の覆われない開口を通り外方層とフレームとの間の空間内に逆行性血液が流入することを許容する。
【0009】
いくつかの実施形態では、弁尖の弁尖エッジ部分は、湾曲扇形状を有し、封止部材の内方層は、隣接し合う弁尖の隣接し合う弁尖エッジ部分間の位置に、フレーム上に取り付けられる複数の三角形状部分を備える。
【0010】
いくつかの実施形態では、内方層は、弁尖の流出表面に対面する位置にてフレーム中のいかなる開口も覆わない。
【0011】
いくつかの実施形態では、内方層は、フレームの外方表面上に取り付けられる。
【0012】
いくつかの実施形態では、内方層は、フレームの内方表面上に取り付けられる。
【0013】
いくつかの実施形態では、外方層は、フレームが径方向拡張構成にある場合に、フレームから離れるように径方向に延在するように形状固定される。
【0014】
いくつかの実施形態では、外方層は、形状固定繊維を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、外方層は、入口端部から出口端部への方向へとフレームから外方に延在する下方テーパ状壁部セクションと、出口端部から入口端部への方向へとフレームから外方に延在する上方テーパ状壁部セクションと、下方テーパ状壁部セクションと上方テーパ状壁部セクションとの間に延在する中央壁部セクションとを備える。
【0016】
いくつかの実施形態では、各弁尖の弁尖エッジ部分は、フレームおよび弁尖の弁尖エッジ部分に連結されフレームと弁尖の弁尖エッジ部分との間に配設される連結スカートにより、フレームに対して固定され、各連結スカートが、フレームの入口端部から出口端部へと対角線方向に延在するフレームのストラットに対して縫合される。
【0017】
いくつかの実施形態では、各連結スカートが、弁尖の弁尖エッジ部分に対しておよびフレームのストラットに対して縫合された2つの材料層を備える。
【0018】
いくつかの実施形態では、各弁尖が、弁尖の両側に位置する対向し合う上方タブを、および上方タブの下方の弁尖の両側部に位置する対向し合う下方タブを備え、各上方タブが、隣接する弁尖の隣接する上方タブと対をなして複数の交連部を形成し、各下方タブが、各弁尖の弁尖エッジ部分に沿って少なくとも1つの折畳み層を形成するように折りたたまれる。
【0019】
いくつかの実施形態では、各弁尖が、上方タブと下方タブとの間の位置にてフレームに対して装着されない。
【0020】
いくつかの実施形態では、各弁尖が、弁尖の各側部上に上方タブと下方タブとの間の間隙を有して形成される。
【0021】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの補強コードが、各弁尖の弁尖エッジ部分に沿っておよび各交連部の下方に延在する。
【0022】
別の代表的な実施形態では、人工心臓弁が、流入端部および流出端部を備え、径方向潰れ構成と径方向拡張構成との間で径方向に潰れ可能および拡張可能である環状のフレームを備える。また、人工心臓弁は、フレーム内に取り付けられ、フレームを通過する血流を調整する複数の弁尖を備える弁構造体を備え得る。各弁尖が、弁尖の両側に位置する対向し合う上方タブと、上方タブの下方の弁尖の両側に位置する対向し合う下方タブと、下方タブ同士の間に延在する弁尖エッジ部分とを備え、弁尖エッジ部分は、フレームに対して固定され、各上方タブが、隣接する弁尖の隣接する上方タブと対をなして、フレームに対して固定された複数の交連部を形成し、各下方タブが、各弁尖の弁尖エッジ部分に沿って少なくとも1つの折畳み層を形成するように折りたたまれる。
【0023】
いくつかの実施形態では、上方タブと下方タブとの間の弁尖の対向し合う側部エッジが、フレームに対して装着されない。
【0024】
いくつかの実施形態では、弁尖の対向し合う側部エッジは、側部エッジがフレームに対して装着されない場合に、上方タブと下方タブとの間に間隙を有して形成される。
【0025】
いくつかの実施形態では、人工心臓弁は、フレーム上に取り付けられ、内方層および外方層を備える封止部材を備えることが可能であり、少なくとも外方層は、フレームの外部上に取り付けられ、内方層は、少なくとも、隣接し合う弁尖の隣接し合う弁尖エッジ部分間においてフレーム中の開口を覆い、内方層は、フレーム中の開口を通り外方層とフレームとの間の空間内に逆行性血液が流入することを許容するように、弁尖の流出表面に対面する位置にて覆われない領域を有する。
【0026】
いくつかの実施形態では、補強コードが、各弁尖の弁尖エッジ部分および各下方タブの少なくとも1つの折畳み層に沿って延在しそれらに対して固定される。
【0027】
別の代表的な実施形態では、人工心臓弁が、流入端部および流出端部を備え、径方向潰れ構成と径方向拡張構成との間で径方向に潰れ可能および拡張可能である環状のフレームを備える。さらに、人工心臓弁は、フレーム内に取り付けられ、フレームを通過する血流を調整する複数の弁尖を備える弁構造体を備え得る。各弁尖が、弁尖の両側に位置する対向し合うタブと、タブ同士の間の弁尖エッジ部分とを備え得、弁尖エッジ部分は、フレームに対して固定され、各タブが、隣接する弁尖の隣接するタブと対をなして、フレームに対して固定された複数の交連部を形成し、各弁尖が、タブと弁尖エッジ部分との間に、フレームに対して装着されない対向し合うエッジを有し、それによりフレームと非装着エッジとの間に血液を流すことを可能にする。
【0028】
いくつかの実施形態では、非装着エッジは、フレームの内方へと径方向に離間される。
【0029】
いくつかの実施形態では、各弁尖のタブは、上方タブを備え、上方タブは、隣接し合う弁尖の隣接し合う上方タブと対をなして交連部を形成し、各弁尖は、上方タブの下方に弁尖の両側に対向し合う下方タブをさらに備え、下方タブは、非装着エッジにより上方タブから離間され、下方タブは、弁尖の弁尖エッジ部分に対接して折りたたまれる。
【0030】
いくつかの実施形態では、補強コードが、各弁尖の弁尖エッジ部分に沿って延在し各弁尖の弁尖エッジ部分に固定され、各交連部の下方の空間を横断する。
【0031】
いくつかの実施形態では、弁尖の各非装着エッジが、逆行性血流下で隣接する弁尖の隣接する非装着エッジと接合し得、順行性血流下で隣接する非装着エッジから分離し得る。
【0032】
別の代表的な実施形態では、人工心臓弁が、流入端部および流出端部を備え、径方向潰れ構成と径方向拡張構成との間で径方向に潰れ可能および拡張可能である環状のフレームを備える。さらに、人工心臓弁は、フレーム内に取り付けられ、フレームを通過する血流を調整する複数の弁尖を備える弁構造体であって、各弁尖が、弁尖の両側に位置する対向し合うタブと、タブ同士の間の弁尖エッジ部分とを備え、各タブが、隣接する弁尖の隣接するタブと対をなして、フレームに対して連結された複数の交連部を形成する、弁構造体を備え得る。各弁尖の弁尖エッジ部分は、フレームおよび弁尖の弁尖エッジ部分に連結されフレームと弁尖の弁尖エッジ部分との間に配設される連結スカートによって、フレームに連結され得、各連結スカートが、フレームの入口端部から出口端部まで対角線方向に延在するフレームのストラットに対して縫合される。
【0033】
いくつかの実施形態では、各弁尖の弁尖エッジ部分は、フレームの出口端部に向かって折りたたまれる。
【0034】
いくつかの実施形態では、各連結スカートが、弁尖の弁尖エッジ部分に対しておよびフレームに対して縫合される。
【0035】
いくつかの実施形態では、補強コードが、各連結スカートの対向側にて各弁尖エッジ部分に対して固定され、各弁尖用の曲げ軸を画定する。
【0036】
いくつかの実施形態では、各連結スカートが、各弁尖の弁尖エッジ部分がフレームの内方表面に接触するのを防止する。
【0037】
いくつかの実施形態では、弁尖エッジ部分は、フレームの内部でいかなる金属構成要素によっても支持されない。
【0038】
いくつかの実施形態では、各連結スカートが、弁尖の弁尖エッジ部分に対しておよびフレームに対して縫合された2つの材料層を備える。
【0039】
いくつかの実施形態では、各連結スカートが、フレームの内方表面から径方向内方に離間された位置にて弁尖の弁尖エッジ部分を支持する。
【0040】
別の代表的な実施形態では、人工心臓弁が、流入端部および流出端部を備え、径方向潰れ構成と径方向拡張構成との間で径方向に潰れ可能および拡張可能である環状のフレームであって、開口を画定する複数のストラットを備える環状のフレームを備える。人工心臓弁は、フレーム内に取り付けられ、フレームを通過する血流を調整する複数の弁尖を備える弁構造体であって、各弁尖が、流入表面と、流出表面と、弁尖の両側に位置する対向し合う上方タブと、上方タブの下方の弁尖の両側に位置する対向し合う下方タブと、下方タブ同士の間に延在する弁尖エッジ部分とを備える、弁構造体を備える。各上方タブが、隣接する弁尖の隣接する上方タブと対をなして、フレームに対して固定された複数の交連部を形成し、各下方タブが、各弁尖の弁尖エッジ部分に沿って少なくとも1つの折り目層を形成するように折りたたまれ得る。各弁尖の弁尖エッジ部分は、フレームおよび弁尖の弁尖エッジ部分に連結されフレームと弁尖の弁尖エッジ部分との間に配設される連結スカートによって、フレームに連結されることが可能であり、各連結スカートが、フレームの入口端部から出口端部まで対角線方向に延在するフレームのストラットに対して縫合される。各弁尖が、上方タブと下方タブとの間にフレームに対して装着されない対向し合うエッジを有し得、非装着エッジは、フレームの内方へと径方向に離間されて、フレームと非装着エッジとの間に血液を流すことを可能にする。また、人工心臓弁は、フレーム上に取り付けられ、内方層および外方層を備える封止部材を備え得る。少なくとも外方層は、フレームの外部上に取り付けられ、内方層は、少なくとも、隣接し合う弁尖の隣接し合う弁尖部分間においてフレーム中の開口を覆い、内方層は、弁尖の流出表面に対面する位置にてフレーム中の1つまたは複数の開口を覆わず、それによりフレーム中の1つまたは複数の覆われない開口を通り外方層とフレームとの間の空間内に逆行性血液が流入することを許容する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1A】一実施形態による人工心臓弁の斜視図である。
図1B】一実施形態による人工心臓弁の斜視図である。
図1C図1Aおよび図1Bの人工心臓弁の交連部の中の1つの下方の領域の拡大斜視図である。
図2図1の人工心臓弁の封止部材の側方立面図である。
図3図1の封止部材の斜視断面図である。
図4】弁を通る逆行性血流を示す、図1の人工心臓弁の断面図である。
図5図1の人工心臓弁の内部の一部分を示す拡大斜視図である。
図6図3の封止部材などの封止部材を形成するために使用され得る繊維ストリップを示す図である。
図7A】人工心臓弁用の封止部材を形成するために使用され得る例示のチューブ状本体の斜視図である。
図7B】人工心臓弁用の封止部材を形成するために使用され得る例示のチューブ状本体の斜視図である。
図8】一実施形態による連結スカートを使用した弁尖装着を示す、部分的に組み立てられた人工心臓弁の斜視図である。
図9図8の人工心臓弁において使用される弁尖および連結スカートの平面図である。
図10図9の連結スカートおよび弁尖の装着を示す1つの図である。
図10A図9の連結スカートおよび弁尖の装着を示す1つの図である。
図11A図9の連結スカートおよび弁尖の装着を示す1つの図である。
図11B図9の連結スカートおよび弁尖の装着を示す1つの図である。
図12図8の人工弁のフレームに対する図9の連結スカートの連結を示す1つの図である。
図12A図8の人工弁のフレームに対する図9の連結スカートの連結を示す1つの図である。
図12B図8の人工弁のフレームに対する図9の連結スカートの連結を示す1つの図である。
図13A】一実施形態による人工心臓弁のフレームとフレーム内部に取り付けられた弁尖との斜視図である。
図13B図13Aのフレームの一部分および弁尖の中の1つの拡大図である。
図14】一実施形態による人工心臓弁内において使用可能である弁尖の平面図である。
図15A】連結スカートを使用して人工心臓弁のフレームに対して弁尖の弁尖エッジ部分を連結する方法の1つを示す図である。
図15B】連結スカートを使用して人工心臓弁のフレームに対して弁尖の弁尖エッジ部分を連結する方法の1つを示す図である。
図15C】連結スカートを使用して人工心臓弁のフレームに対して弁尖の弁尖エッジ部分を連結する方法の1つを示す図である。
図15D】連結スカートを使用して人工心臓弁のフレームに対して弁尖の弁尖エッジ部分を連結する方法の1つを示す図である。
図16】連結スカートを使用して人工心臓弁のフレームに対して弁尖の弁尖エッジ部分を連結する方法の1つを示す図である。
図17】連結スカートを使用して人工心臓弁のフレームに対して弁尖の弁尖エッジ部分を連結する方法の1つを示す図である。
図18】連結スカートを使用して人工心臓弁のフレームに対して弁尖の弁尖エッジ部分を連結する方法の1つを示す図である。
図19】連結スカートを使用して人工心臓弁のフレームに対して弁尖の弁尖エッジ部分を連結する方法の1つを示す図である。
図20】連結スカートを使用して人工心臓弁のフレームに対して弁尖の弁尖エッジ部分を連結する方法の1つを示す図である。
図21】連結スカートを使用して人工心臓弁のフレームに対して弁尖の弁尖エッジ部分を連結する方法の1つを示す図である。
図22】連結スカートを使用して人工心臓弁のフレームに対して弁尖の弁尖エッジ部分を連結する方法の1つを示す図である。
図23】連結スカートを使用して人工心臓弁のフレームに対して弁尖の弁尖エッジ部分を連結する方法の1つを示す図である。
図24】弁のフレームに対して弁尖の弁尖エッジ部分を連結する別の方法を示す、人工心臓弁の内部の拡大斜視図である。
図25A】連結スカートを用いた、人工心臓弁のフレームに対して弁尖の弁尖エッジ部分を連結する代替的な方法を示す図である。
図25B】連結スカートを用いた、人工心臓弁のフレームに対して弁尖の弁尖エッジ部分を連結する代替的な方法を示す図である。
図26】連結スカートを用いた、人工心臓弁のフレームに対して弁尖の弁尖エッジ部分を連結する代替的な方法を示す図である。
図27】連結スカートを用いた、人工心臓弁のフレームに対して弁尖の弁尖エッジ部分を連結する代替的な方法を示す図である。
図28】連結スカートを用いた、人工心臓弁のフレームに対して弁尖の弁尖エッジ部分を連結する代替的な方法を示す図である。
図29】連結スカートを用いた、人工心臓弁のフレームに対して弁尖の弁尖エッジ部分を連結する代替的な方法を示す図である。
図30】連結スカートを用いた、人工心臓弁のフレームに対して弁尖の弁尖エッジ部分を連結する代替的な方法を示す図である。
図31】連結スカートを用いた、人工心臓弁のフレームに対して弁尖の弁尖エッジ部分を連結する代替的な方法を示す図である。
図32】連結スカートを用いない、人工心臓弁のフレームに対して弁尖の弁尖エッジ部分を連結する代替的な方法を示す図である。
図33】一実施形態による人工心臓弁内において使用され得る弁尖の平面図である。
図34】一実施形態による図33の弁尖を使用した交連部の一方の半部の形成を示す図である。
図35】一実施形態による図33の弁尖を使用した交連部の一方の半部の形成を示す図である。
図36】一実施形態による図33の弁尖を使用した交連部の一方の半部の形成を示す図である。
図37】一実施形態による図33に示すタイプの2つの弁尖から形成された交連部の断面図である。
図38】別の実施形態による図33に示すタイプの2つの弁尖から形成された交連部の断面図である。
図39】別の実施形態による人工心臓弁内において使用され得る弁尖の平面図である。
図40】別の実施形態による人工心臓弁内において使用され得る弁尖の平面図である。
図41】一実施形態による図40に示すタイプの2つの弁尖からの交連部の形成を示す図である。
図42】一実施形態による図40に示すタイプの2つの弁尖からの交連部の形成を示す図である。
図43】一実施形態による図40に示すタイプの2つの弁尖からの交連部の形成を示す図である。
図44】一実施形態による図40に示すタイプの2つの弁尖からの交連部の形成を示す図である。
図45】一実施形態による図40に示すタイプの2つの弁尖からの交連部の形成を示す図である。
図46】一実施形態による図40に示すタイプの2つの弁尖から形成された交連部の断面図である。
図47】別の実施形態による図33に示すタイプの2つの弁尖から形成された交連部の断面図である。
図48】別の実施形態による図40に示すタイプの2つの弁尖から形成された交連部の断面図である。
図49】別の実施形態による人工心臓弁内において使用され得る弁尖の平面図である。
図50図49に示すタイプの2つの弁尖から形成された交連部の一実施形態の断面図である。
図51図49に示すタイプの2つの弁尖から形成された交連部の一実施形態の断面図である。
図52】交連部装着部材を使用した人工心臓弁のフレームに対する図50または図51の交連部の装着を示す図である。
図53】交連部装着部材を使用した人工心臓弁のフレームに対する図50または図51の交連部の装着を示す図である。
図54】交連部装着部材を使用した人工心臓弁のフレームに対する図50または図51の交連部の装着を示す図である。
図55】交連部装着部材を使用した人工心臓弁のフレームに対する図50または図51の交連部の装着を示す図である。
図56図33に示すタイプの2つの弁尖から形成された交連部の別の実施形態の断面図である。
図57】別の実施形態による人工心臓弁の側方立面図である。
図58】別の実施形態による人工心臓弁の斜視図である。
図59】平坦構成において示される、図57図58の人工心臓弁の封止部材の平面図である。
図60】別の実施形態による人工心臓弁の斜視図である。
図61】別の実施形態による人工心臓弁の断面図である。
図62】弁のフレーム上に取り付けられる図60図61の人工心臓弁の封止部材を示す図である。
図63】弁のフレーム上に取り付けられる図60図61の人工心臓弁の封止部材を示す図である。
図64】弁のフレーム上に取り付けられる図60図61の人工心臓弁の封止部材を示す図である。
図65】別の実施形態による人工心臓弁の斜視図である。
図66】別の実施形態による人工心臓弁の斜視図である。
図67図65図66の人工心臓弁の一部分の斜視図である。
図68図65図66の人工心臓弁の封止部材の斜視図である。
図69】別の実施形態による連結スカートに対する弁尖の弁尖エッジ部分の装着を示す断面図である。
図70】平坦構成において示される、フレームに対して弁尖の弁尖エッジ部分を連結するための連結スカートの一実施形態の平面図である。
図71図65図66の人工心臓弁のフレームの側方立面図である。
図72】一実施形態による図71のフレームの内部への弁アセンブリの取付けを示す図である。
図73図72のフレームおよび弁アセンブリの一部分の拡大図である。
図74図65図66の人工心臓弁の弁尖の斜視図である。
図75A】平坦構成において示される図74の弁尖の平面図である。
図75B図74の弁尖および弁尖の弁尖エッジ部分に沿って位置決めされた図70の連結スカートの平面図である。
図76】平坦構成において示された交連部装着部材の一実施形態の平面図である。
図77図65図66の人工心臓弁の交連部の1つの斜視図である。
図78図65図66の人工心臓弁の交連部の1つの断面図である。
図79】別の実施形態による人工心臓弁の斜視図である。
図80】別の実施形態による人工心臓弁の平面図である。
図81】別の実施形態による人工心臓弁の斜視図である。
図82】別の実施形態による人工心臓弁の平面図である。
図83】別の実施形態による人工心臓弁の斜視図である。
図84】別の実施形態による人工心臓弁の斜視図である。
図85図83図84の人工弁の交連部の中の1つの側面図である。
図86図83図84の人工弁の交連部の中の1つの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本開示は、植込み可能なプロテーゼデバイス、特に植込み可能な人工弁と、かかるデバイスを作製するための方法との実施形態に関する。特定の実施形態では、プロテーゼデバイスは、人工心臓弁を備え、天然心臓弁のいずれか(大動脈弁、僧房弁、肺動脈弁、および三尖弁)に植え込まれるように構成され得る。さらに、人工心臓弁は、例えば経カテーテル心臓弁、外科心臓弁、または低侵襲心臓弁などであることが可能である。また、人工弁は、心臓の外部の他の体腔内に植込み可能な他のタイプの弁、または経心房隔壁弁もしくは経心室隔壁弁などの天然弁以外の位置において心臓内に植込み可能である心臓弁を備えることが可能である。
【0043】
開示される人工心臓弁は、天然大動脈弁内への植込みに特に適する。人工大動脈弁のコンテクストにおいて、「下方の」および「上方の」という用語は、便宜上においてそれぞれ「流入」および「流出」という用語と互換的に使用される。したがって、例えば図面内に示す配向においては、人工弁の下方端部は人工弁の流入端部であり、人工弁の上方端部は人工弁の流出端部となる。しかし、人工弁は逆配向で植え込むことが可能である点を理解されたい。例えば、僧房弁位置での植込みの場合には、人工弁の上方端部は流入端部となり、弁の下方端部は流出端部となる。
【0044】
図1Aは、一実施形態による人工心臓弁10の斜視図である。図示する弁は、天然大動脈弁輪内に植え込まれるように構成されるが、他の実施形態では、心臓の他の天然弁輪内に植え込まれるように構成され得る。弁10は、3つの主要な構成要素を、すなわちステントまたはフレーム12、弁構造体14、および封止部材16を有し得る。図1Bは、図示を目的として透視ラインで示される構成要素(封止部材16を備える)をフレーム12の外部上に有する人工弁10の斜視図である。
【0045】
弁構造体14は、三尖弁構造で潰れるように構成され得る、弁尖構造体を集合的に形成する3つの弁尖20を備えることが可能であるが、他の実施形態では、より多数またはより少数の弁尖が存在することが可能である(例えば1つまたは複数の弁尖20)。望ましくは、弁尖構造体14の下方縁部は、波形の湾曲扇形状部を有する。弁尖をこの扇形状で形成することにより、弁尖に対する応力が軽減され、これによりさらに弁の耐久性が改善される。さらに、扇形状部により、これらの領域に早期石灰化を引き起こし得る各弁尖の腹部(各弁尖の中央領域)のひだおよび波状部を、解消することが可能となるかまたは少なくとも最小限に抑えることが可能となる。また、扇形状部は、弁尖構造体を形成するために使用される組織材料の量を削減し、それにより弁の流入端部においてより小さくより均一なクリンプ状プロファイルを与える。弁尖20は、心膜組織(例えばウシ心膜組織もしくはブタ心膜組織)、生体適合性合成材料、または当技術で既知であるようなおよび米国特許第6,730,118号に記載される様々な他の適切な天然材料もしくは合成材料から形成され得る。
【0046】
以下でさらに説明されるように、各弁尖20は、フレーム12に対してその流入エッジ30に沿って(図面の下方エッジ、「弁尖エッジ」とも呼ぶ)、および2つの弁尖の隣接し合う部分が相互に連結される弁構造体14の交連部32にて結合され得る。
【0047】
フレーム12は、当技術において知られているように、様々な適切な塑性拡張可能材料(例えばステンレス鋼等)または自己拡張性材料(例えばニチノール)の任意のものから作製され得る。塑性拡張可能材料から構成される場合には、フレーム12(およびしたがって人工弁10)は、送達カテーテル上で径方向圧縮状態へとクリンプ状になされ、次いで膨張性バルーンまたは任意の適切な拡張機構により患者内部において拡張され得る。自己拡張性材料から構成される場合には、フレーム12(およびしたがって人工弁10)は、径方向圧縮状態へとクリンプ状になされ、送達カテーテルのシースまたは同等の機構内への挿入により圧縮状態に保持され得る。体内に置かれると、人工弁は、送達シースから前進されることが可能となり、これにより弁は、機能サイズへと拡張され得る。
【0048】
フレーム12を形成するために使用され得る適切な塑性拡張可能材料としては、ステンレス鋼、ニッケルベース合金(例えばコバルト-クロム合金もしくはニッケル-コバルト-クロム合金)、ポリマー、またはそれらの組合せが含まれるが、それらに限定されない。特定の実施形態では、フレーム12は、UNS R30035(ASTM F562-02により覆われた)と同等である、MP35N(商標)(SPS Technologiesの商標)などのニッケル-コバルト-クロム-モリブデン合金から作製される。MP35N(商標)/UNS R30035は、35重量%ニッケル、35重量%コバルト、20重量%クロム、および10重量%モリブデンを含む。フレーム12を形成するためにMP35Nを使用することは、ステンレス鋼を上回る優れた構造的結果をもたらすことが判明している。特に、MP35Nがフレーム材料として使用される場合には、径方向破砕力耐性、疲労抵抗、および耐腐食性における同一のまたはより良好な性能を実現するためにより少ない材料が必要となる。さらに、より少ない材料が必要とされるため、フレームのクリンプ状プロファイルを縮小することが可能となり、それにより体内の治療位置への経皮送達のためにより低プロファイルの弁アセンブリが提供される。
【0049】
図示する実施形態におけるフレーム12は、フレームのセルまたは開口24の列を画定する、複数の周方向延在列の有角ストラット22を備える。フレーム12は、図示するようにフレームの流入端部26から流出端部28にかけて一定の直径を有する円筒形状部もしくは実質的に円筒形状部を有し得るか、またはフレームは、米国特許出願公開第2012/0239142号に開示されるように、フレームの高さに沿って直径が変化し得る。
【0050】
図示する実施形態における封止部材16は、フレーム12の外部上に取り付けられ、弁周囲逆流を防止するまたは少なくとも最小限に抑えるために周辺組織(例えば天然弁尖および/または天然弁輪)に対接してシールを形成するように機能する。封止部材16は、内方層34(フレーム12の外方表面と接触状態になり得る)および外方層36を備え得る。封止部材16は、適切な技術または機構を利用してフレーム12に対して連結され得る。例えば、封止部材16は、ストラット22の周囲におよび内方層34を通り延在し得る縫合糸38によりフレーム12に対して縫合され得る。代替的な実施形態では、内方層34は、フレーム12の内方表面上に取り付けられ得るが、外方層36は、フレームの外部上に位置する。
【0051】
外方層36は、人工弁10が展開されると、内方層34およびフレーム12から径方向外方に延在するように構成または形状設定され得る。図3において最もよく示されるように、人工弁が、患者の体外で完全に拡張されると、外方層36は、内方層34から離れるように拡張してこれらの2つの層の間に空間40を形成し得る。したがって、体内に植え込まれた場合には、これにより、外方層36は、周辺組織と接触状態になるように拡張され得る。
【0052】
図示する実施形態では、外方層36は、入口端部から出口端部への方向にフレームから外方に延在する下方テーパ状壁部セクション36aと、出口端部から入口端部への方向にフレームから外方に延在する上方テーパ状壁部セクション36bと、下方テーパ状壁部セクションと上方テーパ状壁部セクションとの間に延在する中央壁部セクション36cとを備える。中央壁部セクション36cは、図示するように人工弁の長手方向軸に対して平行に延在し得る。代替的な実施形態では、上方壁部セクションおよび下方壁部セクションは、人工弁の長手方向軸に対して垂直に延在し得る。代替的な実施形態では、外方層36は、別個の繊維構成要素(例えば各壁部セクション36a、36b、36cのための別個の材料ピース)同士を共に連結して(縫合などにより)形状固定を伴わずに三次元構造体を形成することによって形成され得る。
【0053】
内方層34は、望ましくは少なくとも1つの穴または開口を有して形成され、さらに望ましくは複数の穴または開口42(図5)を有して形成される。図4において最もよく示されるように、逆行性血液(矢印44により示される)は、弁尖20の外部に沿い、フレームのセル24を通り、内方層34の開口42を通り、内方層34と外方層36との間の空間40内へと流れて、封止部材16の拡張と周辺組織に対接するシールの形成とを助長し得る。いくつかの実施形態では、外方層36は、複数の穴または開口を有して形成されることが可能であり、これらの複数の穴または開口は、少なくとも弁の展開中に封止部材中に血液を流入させ得る。
【0054】
図示する実施形態では、内方層34は、弁尖の流出表面70に対面する内方層の部分(交連部同士の間のフレームの領域)に沿って1つまたは複数の開口42を有して形成されることにより、逆行性血液がそれらの位置にてフレームを通り流れることを可能にする。弁尖の弁尖エッジ部分同士の間の領域でフレームを覆う内方層34の部分が、それらの位置にてフレーム中の開口を完全に覆うことにより、順行性血液がそれらの位置にてフレームを通り流れることが防止される。代替的な実施形態では、内方層は、フレームの弁尖エッジ部分と弁尖の流出表面に対面するフレームの部分に沿った切欠セクションとの間のフレームの領域を覆う部分を有し得る(以下で説明される封止部材702、802を参照)。
【0055】
図5に示すように、開口42は、フレームストラット22同士が交差する交差部50に中心をおくことが可能であり、それにより、これらの開口を囲む内方層34の材料がフレームを通過して内方に突出し弁尖に接触することが防止される。
【0056】
封止部材16は、PET、PTFE、ePTFE、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、ワイヤメッシュ、天然組織(例えば心膜)ならびに/または血流の通過を制限および/もしくは防止するように構成された他の適切な材料などの、繊維材料または非繊維材料から形成され得る。いくつかの実施形態では、封止部材は、ほぼ平坦状のストリップから形成することが可能であり、このストリップは、内方層および外方層を形成するように長さ方向に折りたたまれ、次いで端部同士を共に溶接またはステッチングすることなどによりチューブへと形成される。他の実施形態では、封止部材16は、封止部材をチューブ形状体へと織成、編成、または編組することにより形成され得る。外方層36中のバルジは、例えば所望の構成へと材料を形状固定することなどにより形成され得る(例えば図1および図2に示すように)。外方層の形状固定により、外方層は、自己拡張性のものになることが、または外方層の径方向拡張を誘起するものになることが可能となる。追加的にはまたは代替的には、外方層36は、外方層中にニチノールスレッドを含むことにより自己拡張性のものになり得る。
【0057】
代替的な実施形態では、内方層34は、開口42を有さず、内方層に血液を流通させ得る多孔性材料から形成され得る。例えば、いくつかの実施形態では、内方層34は、外方層36よりも比較的より高い多孔性の材料から形成され得る。さらに代替的な実施形態では、外方層36は、フレームの外方表面から離れるように延在するように構成される必要はなく、代わりにフレームの外方表面と形状合致する形状を有することが可能である。例えば、外方層36は、フレーム12の形状に対応するようにほぼチューブ状であることが可能である。いくつかの実施形態では、外方層は、周辺組織に対接した封止を助けるループパイルまたはカットパイルを形成する繊維または糸を有するパイル層を有する繊維(例えばベロア繊維)から形成され得る。かかる繊維から形成された封止部材は、2017年5月31日に出願された米国特許出願第62/513,348号においてさらに説明されている。
【0058】
図6は、一実施形態による封止部材16を形成するために使用され得る繊維ストリップを示す。図示するように、繊維ストリップが、中央セクション52と、中央セクション52の両側に沿って延在する第1の長手方向エッジ部分54および第2の長手方向エッジ部分56とを備え得る。中央セクション52は、3つのセットの1つまたは複数の開口42を備えることが可能である(例えば図示する実施形態では各セット中に3つの開口)。開口42は、人工弁の交連部の下方の交差部50の位置と合致するように位置決めされる。第1の長手方向エッジ部分54および第2の長手方向エッジ部分56は、中央部分52の上に折りたたまれ、ステッチングなどで相互に対して固定されることにより、封止部材を形成することが可能である。長手方向エッジ部分54、56は、集合的に外方層36を形成し、中央部分52は、内方層34を形成する。
【0059】
図7Aおよび図7Bは、封止部材16を形成するために使用され得る例示のチューブ状本体の斜視図である。図7Aを参照すると、チューブ状本体80が、上方部分82および下方部分84を備え得る。上方部分82は、径方向バルジ86を備え得る。チューブ状本体80は、例えば三次元織成、編成、または編組などにより形成され得る。下方部分84は、上方部分82内に折りたたまれるかまたは折り曲げられて、上方部分82により形成された外方層と下方部分84により形成された内方層とを有する封止部材を形成することが可能である。
【0060】
図7Bを参照すると、チューブ状本体90が、円筒状中央部分92、平坦状上方部分94、および平坦状下方部分96を備え得る。チューブ状本体90は、例えば三次元織成、編成、または編組などにより形成され得る。上方部分94は、下方部分96の上に折りたたまれるかまたは折り曲げられて、封止部材の2つの層を形成することが可能である。
【0061】
図8図13は、一実施形態による、フレーム12に対して弁尖20の流入エッジ30を取り付けるための技術を示す。図示する実施形態では、連結スカート100が、各弁尖の下方エッジ部分102(弁尖エッジ部分とも呼ぶ)に対して固定される。図9に最もよく示されるように、各連結スカート100は、本体104の両長手方向エッジに沿って形成された複数のフラップ106a、106bを有して形成された細長いほぼ矩形の本体104を備え得る。スカート100は、任意の適切な合成材料(例えばPET)または天然組織を含むことが可能である。
【0062】
図10および図10Aを参照すると、弁尖20に対して連結スカート100を固定するために、本体104は、本体を2等分する中心長手方向折り目に沿って折りたたまれて折畳み部分110a、110bを形成し、次いでこれらの折畳み部分110a、110bは、フラップ106aが弁尖の外方表面に隣接して位置し、フラップ106bが弁尖の内方表面に隣接して位置するように、弁尖20の下方エッジ部分102の両側に配置される。次いで、縫合糸が使用されて、本体104の両部分110a、110bおよび弁尖の下方エッジ部分102を貫通して、ならびに下方エッジ部分102の長さに沿って長手方向に延在するステッチ108を形成し得る。図11Aは、スカート100が弁尖の下方エッジ部分102の周囲に折りたたまれた状態において、弁尖20の平坦状図を示す。図11Bは、ステッチ108を用いて弁尖に対して固定された後の弁尖20およびスカート100の平坦状図を示す。
【0063】
図12図12A、および図12Bを参照すると、各対のフラップ106a、106bが、フレームの各ストラット22を覆い弁尖20から離れるように折りたたまれ、フレーム12の外部のステッチングラインに沿ってフラップ106a、106bを貫通して延在するステッチ112で定位置に固定される。図12Bに最もよく示されるように、連結スカート100は、下方エッジ部分102がフレーム12に対して約90度の角度で径方向内方へと延在するように、フレーム12に対して弁尖を取り付ける。これは、下方エッジ部分102の曲げ軸をフレームの内方表面から離れるように内方へとおよびフレームの中心に向かって効果的に移動させる。
【0064】
図8に最もよく示されるように、各スカート100は、フレームの流入端部から流出端部に向かって延在する対角線方向に延在するストラット22の列により画定されたフレームの湾曲表面に沿って延在する対角線方向ライン116に沿ってフレームに対して固定される。そのため、各弁尖の下方エッジ部分102もまた、それぞれ対角線方向に延在するストラット22の列により画定された各対角線方向ライン116に沿って位置決めされる。有利には、これは、弁尖20中の張力およびしわの形成を軽減させる。
【0065】
また、対角線方向ライン116に沿った装着は、人工弁が送達構成へと径方向に圧縮される場合に人工弁のクリンププロファイルを縮小するのを助ける。特に、フレームの周方向に延在するストラットの列中のストラットが、クリンピングプロセス中に相互に向かって移動されるまたは曲げられる一方で、対角線方向に延在するライン116に沿って位置するストラット同士は、クリンピングプロセス中にライン116に沿って相互に対する整列状態を実質的に維持する。そのため、連結スカート100(非伸縮性材料から典型的に形成される)は、相互に対するストラット同士の移動または変形を阻止しない。また、弁尖の弁尖エッジ部分が、クリンピング中に連結スカートと共に移動するため、弁尖エッジ部分に沿った弁尖の伸縮が、防止されるかまたは少なくとも最小限に抑えられる。
【0066】
図13Aは、図示を目的として連結スカート100が除去された状態の、フレーム12と取付け構成で示されるフレーム内に支持された弁尖20との斜視図である。図13Bは、フレームおよび弁尖の拡大部分断面図である。示されるように、弁尖の下方エッジ部分102は、フレームに対して垂直にまたは逆に平行に延在して、フレームの内方表面と弁尖20の曲げ軸114との間に間隙Gを形成する。有利には、これが、弁尖が弁動作中に開くときに、フレームおよび縫合糸などの他の比較的研磨性のある構成要素との弁尖の外方表面の接触を防止または少なくとも最小限に抑えるのを助け、それによりフレームとの接触によって発生する弁尖の望ましくない摩耗を阻止する。また、弁尖とフレームとの間の空間が拡大することにより、弁尖の曲げ軸における弁尖上での血液洗滌が助長され得る。
【0067】
さらに、既知の人工弁では、クリンピング中に弁尖がフレームの開口セルを通り延在するのを防止することにより弁尖に対する損傷を防ぐように、注意が払われなければならない。例えば、人工弁用の既知のクリンピングデバイスは、クリンピング中にフレームから離れるように弁尖を押圧するかまたは弁尖がフレームセルを通り延在するのを保護する特徴部または付属品を備えることが可能である。対照的に、スカート100は、人工弁のクリンピング中に少なくとも弁尖の流入部分をフレームの内方表面から離間された状態に維持して、かように空間設計されたクリンピング付属品の必要性を軽減するのを支援する。
【0068】
さらに、連結スカート100(および本明細書において説明される他の連結スカート)は、既知の組立て技術に比べて人工弁の組立てを容易化し得る。例えば、弁尖およびスカートは、チューブ状(環状)構成を形成する前に、弁構造体14、弁尖が平坦構成にある間に組み立てることが可能である。自動技術または半自動技術が、弁尖に対してスカートを縫合するために利用され得る。また、弁構造体がフレームの内部に配置されると、弁尖の下方エッジ部分102は、フレーム12の外部に完全に位置するステッチングでフレームに対して固定され得る。これにより、組立工はフレームのセル24の内外にステッチ112を形成するために針を通す必要がなくなるため、組立時間が大幅に削減され得る。
【0069】
図13A図13Bにおいてさらに示すように、各弁尖20は両タブ60を備える。各タブ60は、隣接する弁尖20の隣接するタブ60に固定されて、フレーム12に対して固定される交連部を形成することが可能である。各タブ60は、折りたたまれることにより、径方向延在層60aおよびフレームに対面する周方向延在層60bを形成し得る。フレームに対して交連部を取り付けるための方法は、以下で詳細に説明され、図13A図13Bに示す人工弁に組み込まれ得る。
【0070】
タブ層60aは、フレーム上のある位置から弁尖の接合エッジ64まで径方向内方に延在する傾斜エッジ62を有し得る。また、傾斜エッジ62は、フレームのその位置から接合エッジ64まで軸方向へも延在する。これにより、接合エッジ64の中心(隣接し合う交連部同士の間の中間部)は、交連部およびフレームに対するタブ60の装着領域よりも低い位置に置かれる。換言すれば、交連部は、フレームの高さ方向に沿って接合エッジ64の中心とは異なる位置にて配置される。この構成は、弁サイクル中にタブ60に沿って応力をより均一に分布させる点において有利である。いくつかの実施形態では、少なくとも弁尖が閉位置にある場合に、弁尖の接合エッジ64全体が、交連部がフレームに対して装着される位置よりも下方に位置する。
【0071】
弁サイクル中に、弁尖同士は、タブ層60aの最内エッジ66にて関節連結することが可能であり、これは、人工弁の正常な動作中にフレームから弁尖を離間させるのを助ける。これは、人工弁が患者内に植え込まれる場合に公称サイズまで完全には拡張されない場合に、特に有利である。そのため、人工弁は、多様な患者の弁輪サイズ内に植え込むことが可能となる。人工弁が送達のために径方向に圧縮される時など、比較的高い力の下にあるときに、弁尖は、弁尖に対する応力を解放するようにフレームにて相互から離れるように開き得る。
【0072】
典型的には、弁尖の交連部および接合エッジは、弁尖の比較的大きな部分であり、それらがフレームに沿って同一高さに位置する場合には人工弁の完全な径方向圧縮を妨げ得る。図13Aおよび図13Bに示す交連部タブ60の別の利点は、人工弁が患者の身体内への送達のために径方向に圧縮される場合に、交連部および接合エッジが軸方向において相互から離間される点である。弁尖のこれらの部分同士を離間させることにより、人工弁のクリンププロファイル全体が縮小する。
【0073】
図14および図15A図15Dは、連結スカート100を使用してフレーム12に対して弁尖の下方エッジ部分102を取り付けるための代替的な技術を示す。図14に示すように、スリット120が、組立プロセス中のエッジ部分の折畳みを助長するために、エッジ部分102の最下セクションに沿って形成され得る。図15A図15Dは、弁尖20に対してスカート100を装着し次いでフレームに対してスカートを取り付けるための段階的プロセスを示す。
【0074】
初めに図15Aを参照すると、スカート100は、第1の層124および第2の層126を形成するように折りたたまれ、折りたたまれたスカートは、弁尖20の上方表面に沿って配置される。次いで、弁尖のエッジ部分102が、スカート100の折りたたまれたエッジの周囲に巻かれて、スカートの層124、126を挟む第1の弁尖層128および第2の弁尖層130を形成する。次いで、層124、126、128、130は、4つの全ての層を貫通しておよび弁尖のエッジ部分102の長さに沿って長手方向に延在するステッチ132により相互に対して固定され得る。弁尖のエッジ部分102を折りたたむ利点は、弁尖がステッチ132の引き通しに対してより良好に抵抗し得る点である。
【0075】
図15Bを参照すると、次いで、スカートの第2の層126が、2つの弁尖層128、130の周囲において折りたたまれて、第2の弁尖層130に隣接する第3のスカート層134および第1の弁尖層128に隣接する第4のスカート層136を形成し得る。図15Cを参照すると、次いで、第1のスカート層124は、第3のスカート層134の上に折り返されて第5のスカート層138を形成し得る。第4のスカート層136は、それ自体に対して折りたたまれて第6のスカート層140を形成し得る。6つのスカート層および2つの弁尖層の全てが、8つの全ての層を貫通しておよび弁尖のエッジ部分102の長さに沿って長手方向に延在するステッチ142を用いて共に固定され得る。さらに、第5の層138および第6の層140はそれぞれ、これらの両層を貫通しておよびスカート100の長さに沿って長手方向に延在するステッチ144を用いて、弁尖20から径方向外方に離間された位置にて共に固定され得る。
【0076】
次いで、弁尖およびスカートアセンブリは、フレーム12に対して固定され得る。図15Dに示されるように、例えば、スカートの層138、140は、フレームのストラット22の下方に配置され、例えばストラットの周囲におよび層138、140を貫通して延在するステッチ146などを使用してフレームに対して固定され得る。また、代替的には、ステッチ144が、ステッチ146の代わりにまたはそれに加えて、フレームのストラットの周囲に巻かれて弁尖およびスカートアセンブリを取り付け得る。したがって、各弁尖の下方エッジ部分は、ストラットの対角線方向列により画定されるライン116(図8)の直下の対角線に沿って延在する。対角線方向列のストラット22の下方にスカートを取り付けることにより、フレームに対するスカートの移動およびその結果として生ずるスカートの摩耗が軽減されて、人工弁の動作中におけるスカートの引裂きが保護される。
【0077】
代替的な実施形態では、スカートは、ストラットを覆って第5の層138をおよびストラットの下方に第6の層140を配置し、図12においてフレームに対してスカートが固定されるのと同様の方法においてそれらの層をフレームの外部で相互に対して直接的に(例えば縫合糸を用いて)固定することによって、フレームに対して固定され得る。
【0078】
図16図18は、折りたたまれた弁尖エッジ部分を使用してスカート100および弁尖20を組み立てるための代替的な構成を示す。図16では、スカート100は、弁尖層128、130の周囲において折りたたまれて、弁尖層130の下方に第1のスカート層150を、弁尖層128、130間に第2のスカート層152を、および弁尖層128の上方に第3のスカート層154を形成する。弁尖およびスカートは、スカート層150、152、154および弁尖層128、130を貫通してならびに弁尖エッジ部分102の長さに沿って長手方向に延在するステッチ156を使用して、相互に対して固定され得る。図16の構成は、図15A図15Dよりも少数のスカート層を使用し、人工弁10用により低背位の全体的なクリンププロファイルを可能にし得る。図17は、第1のスカート層150が内方に折りたたまれて第1のスカート層150と弁尖20の下方表面との間に追加の第4のスカート層158を形成する点を除いては、図16と同様である。この第4のスカート層158は、弁尖の関節連結部分から離れるようにスカートのエッジを位置決めすることにより、弁尖の摩耗を阻止するのを助け得る。図18は、図18の実施形態においてはステッチ160がスカート層124、126、134、136および弁尖層128、130を貫通して延在するが、スカート層138、140は貫通しない点を除いて、図15A図15Dの実施形態と同一の構成を使用する。図16図18に示す弁尖およびスカートアセンブリは、先述のようにフレーム12に対して固定され得る。
【0079】
図19図21は、弁尖20およびスカート100を組み立てるための別の構成を示す。図19に示されるように、スカート100は、弁尖20の下方エッジ部分102の周囲において折りたたまれて、弁尖の下方表面上に第1のスカート層170および第2のスカート層172を、ならびに弁尖の上方表面上に第3のスカート層174および第4のスカート層176を形成する。折りたたまれた層の内方エッジは、4つの全ての層170、172、174、176を貫通してならびにスカートおよび弁尖の長さに沿って長手方向に延在するステッチ178で固定され得る。図20および図21に示すように、次いで、スカート100は、対角線方向列のストラット22の下方にスカート層170、176の外方エッジを位置決めし、ステッチ180を用いてそれらの層を相互に対しておよびストラット同士を固定することによって、フレーム12に対して取り付けられ得る。ステッチ180は、層170、176を貫通して、およびストラット22の対角線方向列116を形成するストラット22と交差するストラット22'の周囲に前述の列の上方において延在する。
【0080】
図22は、弁尖の下方エッジ部分102のセクションがフレームのセルを貫通して延在する点を除いては図19図21に示すものと同様である構成を示す。第1の列のステッチ182が、弁尖の下方エッジ部分102と、折りたたまれた層170、172、174、176の内方エッジとを固定するために使用され得る。第2の列のステッチ184は、フレームの外部位置にて弁尖の下方エッジ部分102と、折りたたまれた層170、172、174、176の外方エッジとを固定するために使用され得る。弁尖の下方エッジ部分102は、下方エッジ部分102のセクションがフレームのセルを通り延在し得るように、ストラット22の位置に対応して弁尖の長さに沿って離間した一連のスリット186を有して形成され得る。
【0081】
図23は、連結スカート100を使用したフレームに対する弁尖20の取付けの概略図である。図示する実施形態では、連結スカート100の外方エッジは、環状内方スカート190に固定されることが可能であり(例えば縫合糸、接着剤、または溶接により)、さらにこの環状内方スカート109は、フレームのストラットに固定され得る(例えば縫合糸、接着剤、または溶接により)。代替的には、連結スカート100の外方エッジは、図8図22の実施形態に関連して先述したように、内方スカート190を用いずにフレームのストラットに対して直接的に取り付けられ得る。連結スカート100の内方エッジは、弁尖の各下方エッジ部分102に対して連結することが可能であり(例えば縫合糸により)、この各下方エッジ部分102は、連結スカートにより内方スカート190および/またはフレーム12の内方表面から離間され得る。特定の実施形態では、例えば、各弁尖20の下方エッジと内方スカート190および/またはフレーム12の内方表面との間のスカート100の幅は、約1mm~約5mmであることが可能である。
【0082】
繊維(例えばPET)から連結スカート100を形成することにより、組織内部成長と、弁動作中の連結スカートの上方表面に沿ったフィブリンおよび他の血液成分などの生体成分の形成または付着とを促進することが可能となる。スカート100の材料付着により、スカート100は、実質上より厚くおよびより剛直になり、それにより弁サイクル中におけるスカートの撓曲に耐えることになる。結果として、弁尖の正常な閉位置が、弁尖に対する拡張期血圧により指定される。収縮期の間には、スカート100は、実質的に静止状態に留まり、弁尖と内方スカート190および/またはフレーム12の内方表面との間に間隙を形成して、人工弁のそれらの構成要素との接触による弁尖の摩耗を保護し得る。
【0083】
図24図25は、フレーム12に対して弁尖の下方扇形状エッジ部分102を取り付けるための別の構成を示す。図24に示すように、弁尖20の下方エッジ部分102は、フレームの流出端部に向かって上方におよびフレームの内方表面に対して折りたたまれて、弁尖の下方エッジ部分と残りの部分との間に、弁サイクル中にフレームに向かっておよびフレームから離れるように関節動作し得る曲げ軸を形成し得る。したがって、弁尖の曲げ軸は、フレームから内方へと離間され、これにより、弁サイクル中の弁尖摩耗に対する保護、弁閉鎖中の弁尖の下方エッジに沿った応力の軽減、弁尖の血液洗滌の改善(したがってそれらの領域における早期石灰化の解消または少なくとも最小限化)、および弁尖の閉鎖動作の改善を含む、複数の利点が実現され得る。ワイヤ、コード、スリーブ、繊維、または縫合糸などの補強部材200が、下方エッジ部分102が弁尖の関節連結部分と交差する位置である曲げ軸にて弁尖の上方表面に沿って配置され得る。他の実施形態では、補強部材200は、弁尖の下方表面に沿って配置され得る。補強縫合糸200は、例えば多繊維縫合糸(例えばEthibond縫合糸)を備えることが可能である。
【0084】
弁尖20は、様々な技術または機構を利用してフレーム12に対して結合され得る。図25A図25Bに示すように、例えば、弁尖20は、内方長手方向エッジ部分204および外方長手方向エッジ部分206を有する連結スカート202を用いてフレーム12に対して結合され得る。内方エッジ部分204は、弁尖の下方エッジ部分102に対して上方に折りたたまれ得る。外方エッジ部分206は、フレームの外部に取り付けられた外方スカート210(例えば封止部材16を備え得る)に対して下方に折りたたまれ得る。外方エッジ部分206は、対角線方向列のストラット22の下方の位置にてフレームのセルを通して外方スカート210に接触し得る。連結スカート202は、例えば弁尖に対してスカートを組みつける前にスカートを長さ方向に折りたたむことなどにより形成された2つの材料層202a、202bを備え得る。代替的には、連結スカート202は、単一の材料層を備えることが可能である。
【0085】
内方エッジ部分204は、スカート202、弁尖20、および補強縫合糸200を貫通しならびに弁尖およびスカートに沿って長手方向に延在するステッチ208により、弁尖20に対して固定され得る。外方エッジ部分206は、連結スカート202および外方スカート210を貫通し連結スカートに沿って長手方向に延在するステッチ212により、外方スカート210に対して固定され得る。図25Bに示すように、連結スカート202は、ステッチ212、またはスカート202の外方エッジ部分206を貫通して延在し2つのストラットが交差するフレームの交差部50の周囲に延在する別個のステッチにより、フレームに対して直接的に固定することも可能である。連結スカートは、フレームの流入端部におけるストラット22の各対の交差により形成された頂点部216に装着されないままに留めることが可能である。
【0086】
望ましくは、ステッチ212の列は、図示するように頂点部216の上方に延在して、フレームの流入端部の下方に弁尖が突出するのを防止することによって、弁尖が、人工弁10の展開前または展開中にカルシウム結節などの隣接する天然組織に接触するのを保護する。弁尖の下方エッジ部分102を連結スカート202から離れるように上方におよびフレームの流出端部に向かって折りたたむことにより、スカート202、弁尖20、およびフレーム12の重畳し合う材料層の量を最小限に抑え、それにより人工弁のクリンププロファイル全体を縮小することが可能となる。
【0087】
図26は、連結スカート202を使用してフレームに対して弁尖20を取り付けるための代替的な構成を示す。図26の実施形態は、連結スカート202の外方エッジ部分206が上方外方スカート218の下方エッジ部分と下方外方スカート220の上方エッジ部分との間に延在する点を除いては、図24および図25の実施形態と同一であることが可能である。連結スカート202、上方外方スカート218、および下方外方スカート220は、3つの全ての材料層を貫通して延在するステッチ222で相互に対して固定され得る。
【0088】
図27は、連結スカート202を使用してフレームに対して弁尖20を取り付けるための別の代替的な構成を示す。図27の実施形態は、連結スカート202の外方エッジ部分206がフレームの流出端部に向かって上方に折りたたまれ得る点を除いては、図24および図25の実施形態と同一であることが可能である。外方エッジ部分206は、ステッチ212を用いて外方スカート210に対して固定され得る。
【0089】
図28および図29は、弁尖20の下方エッジ部分102に対して連結スカート202の内方エッジ部分204を縫合する種々の方法をさらに詳細に示す。図28では、ステッチ208は、内方スカート層202bを貫通するが外方スカート層202aは貫通せずに延在する。図29では、ステッチ208は、両スカート層202a、202bを貫通して延在する。
【0090】
図30は、フレーム12に対して弁尖の下方エッジ部分102を取り付けるための別の構成を示す。図30に示すように、弁尖の下方エッジ部分102は、上方エッジ部分232および下方エッジ部分234を有する連結スカート230でフレーム12に対して結合され得る。上方エッジ部分232は、外方スカートおよび連結スカートを貫通して延在するステッチ236により対角線方向列のストラット22の上方の位置にて外方スカート210に対して固定され得る。連結スカートの下方エッジ部分234は、外方スカートおよび連結スカートを貫通して延在するステッチ238により対角線方向列のストラット22の下方の位置にて外方スカートに対して固定され得る。連結スカートの中間部分(上方エッジ部分232と下方エッジ部分234との間の)が、対角線方向列のストラットを覆って延在し得る。
【0091】
図30に示すように、ストラットの列とステッチ236との間の間隔は、望ましくはストラットの列とステッチ238との間の間隔よりも大きく、これにより、スカートとストラット22との接触角を増大させることが可能となる。図30の円で囲んだ領域240は、接触領域を表し、ここでは、連結スカート230とフレーム12との間の接触が生じるか、または連結スカートとフレームとの間の接触の大半が生じる。収縮期の下においては、接触領域240におけるフレームの横軸に対するスカート230の角度は(横軸がフレームの長手方向軸に対して垂直である)、約60~90度であり、またはより好ましくは約70~90度であり、またはさらにより好ましくは約80~90度である。スカートの接触角を増大させることにより、弁サイクル中のスカートにおける曲げ応力が低下して、スカートの耐久性を改善することが可能となる。さらに、連結スカート230は、拡張期の間に、連結スカートが血圧下において径方向内方に若干移動し、ストラット22のスカート230から離れることによりスカートとストラットとの間の接触を解消または最小限に抑え得るように、サイズ設定または構成され得る。
【0092】
図31は、連結スカートの上方エッジ部分232が上方の対角線方向に延在する列のストラット22aに対して固定され、連結スカートの下方エッジ部分234が下方の対角線方向に延在する列のストラット22bに対して固定される点を除いては図30の実施形態と同様である、連結スカート230を用いてフレーム12に対して弁尖の下方エッジ部分102を取り付けるための別の構成を示す。このようにすることで、弁尖の下方エッジ部分102は、ストラットの上方列と下方列との間で連結スカート230に対して固定され得る。連結スカートの上方エッジ部分232は、上方列のストラット22aの周囲に少なくとも部分的に巻かれ得るが、スカートを貫通しておよびストラット22aの周囲に延在するループステッチ250により定位置に固定され得る。連結スカートの下方エッジ部分234は、下方列のストラット22bの周囲に少なくとも部分的に巻かれ得るが、スカートを貫通しておよびストラット22bの周囲に延在するループステッチ252により定位置に固定され得る。図31に示す様式で2つの隣接し合う対角線方向に延在する列のストラットに対して連結スカート230を装着することにより、連結スカートとフレームとの間の相対移動が防止または少なくとも最小限に抑えられ、それによりスカートの耐久性が改善され得る。
【0093】
図32は、連結スカートを用いずにフレーム12に対して弁尖の下方エッジ部分102を取り付けるための別の構成を示す。図32の実施形態では、弁尖20の下方エッジ部分102は、対角線方向列のストラット22に対して上方に折りたたまれ、ストラット22の周囲に、および第1の位置にて弁尖エッジ部分102を貫通し補強縫合糸200を貫通し第2の位置にて弁尖エッジ部分102を貫通して延在するループステッチ254を用いて定位置に固定され得る。ストラットの内方表面に対して平行に弁尖の折りたたまれたエッジ部分102を配置することにより、フレームに対する弁尖の移動による弁尖の摩損が最小限に抑えられ得る。この実施形態におけるスカートの排除により、人工弁のクリンププロファイル全体が縮小可能となり、弁尖とフレームとの間のより緊密な連結が実現されることによってこれらの2つの構成要素間の相対移動を低減させ得る。
【0094】
図33図37は、一実施形態による、フレーム12に対して交連部32をなど、フレームに対して弁構造体の交連部を取り付けるための技術を示す。図33は、先述の実施形態のいずれかを利用してフレーム12に対して取り付けられ得る下方エッジ部分302を有する弁尖300を示す。下方エッジ部分302は、その上方端部において、2つの側方に突出する一体下方タブ304にて終端する。一体上方タブ306(交連部タブとも呼ぶ)が、弁尖300の上方隅部から突出する。上方タブ306は、側部エッジ338により下方タブ304から離間されて、側方延在間隙または凹部を弁尖中に画定し得る。
【0095】
交連部を組み立てるためには、各上方タブ306が、図33に示すように(図37も参照)第1のタブ層306aおよび第2のタブ層306bを形成するように水平方向折畳みライン308に沿って折りたたまれる。第1の垂直方向延在補強部材310が、その内方エッジに隣接する第1のタブ層306aに対接して配置され得る。第2の垂直方向延在補強部材312は、第1の補強部材310の対向側において第2のタブ層306bに対接して配置され得る。第1のタブ層306aおよび第2のタブ層306bは、第1のタブ層306aおよび第2のタブ層306bならびに第1の補強部材310および第2の補強部材312を貫通して延在するステッチ314により相互に対して固定され得る。
【0096】
次いで、第1のタブ層306aおよび第2のタブ層306bは、図35に示すように垂直方向折畳みラインに沿って長さ方向に折りたたまれることにより、外方折畳み部分316および外方折畳み部分316から径方向内方に延在する内方折畳み部分318を形成する。第3の垂直方向に延在する補強部材320が、外方折畳み部分316の第1の折畳み層306aに対接して配置され、交連部装着部材322が、外方折畳み部分316の第2の折畳み層306bに対接して配置され得る。外方折畳み部分316は、第3の補強部材320、第1のタブ層306aおよび第2のタブ層306b、ならびに交連部装着部材322を貫通して延在するステッチ324によって、交連部装着部材322に対して固定され得る。第1のタブ層306aおよび第2のタブ層306bの外方エッジは、ステッチ326により交連部装着部材322に対してさらに固定され得る。第2の弁尖300の上方タブ306は、各補強部材と同一の様式で組み立てられ、第1の弁尖に隣接する交連部装着部材322に対して装着されて、図37に示すように交連部328を形成し得る。次いで、交連部装着部材322は、以下でさらに説明されるように、フレームのストラットに対して固定され得る(例えば図65を参照)。
【0097】
第1の補強部材310および第2の補強部材312により補強された折畳みタブ層306a、306bは、タブ層の径方向内方に位置する弁尖の部分330よりも高い抵抗を曲げまたは関節動作に対して有し得る。これにより、弁尖300は、フレームの金属ストラットの上またはそれに隣接した各軸を中心とした関節動作とは対照的に、体内での人工弁の動作中に人工弁を通り流れる血液に応答して折畳み層306aの内方エッジ332にて主として関節動作させられる。弁尖は、フレーム12から径方向内方に離間された位置にて関節連結されるため、弁尖は、フレームとの接触およびフレームによる損傷を回避させることが可能となる。これは、人工弁が患者の体内に植え込まれた場合に公称サイズまで完全には拡張されない場合に、特に有利である。そのため、人工弁は、多様な患者の弁輪サイズ内に植え込むことが可能となる。
【0098】
大きな力の下では、隣接し合う弁尖の折畳みタブ層306a、306bは、各内方折畳み部分318が各外方折畳み部分316に対して折りたたまれた状態で、フレーム12に隣接する各軸334(図37)を中心として相互から離れるように広がることが可能である。例えば、これは、人工弁10が送達装置のシャフト上に押し付けられ取り付けられる場合に生じて、より小さなクリンプ直径を可能にし得る。また、折畳みタブ層は、バルーンカテーテルのバルーンが人工弁の拡張中に膨張されると、それらの軸334を中心として離れるように広がり得ることにより、バルーンにより引き起こされる交連部に対する圧力の一部を解放することが可能となり、それにより交連部は拡張中に損傷を被らない。
【0099】
弁尖300がフレームに対して取り付けられると、各弁尖の下方タブ304は、弁尖エッジ部分302に対して下方に折りたたまれ縫合糸などを用いて定位置に保持され得る。折りたたまれた下方タブ304は、弁尖の弁尖エッジ部分302と交連部に隣接する弁尖エッジ部分の上方セクションに沿ったフレームとの間の連結部を補強するのを助ける。また、折りたたまれた下方タブ304は、内方におよびフレームの内方表面から離れるように弁尖エッジ部分の上方セクションの曲げ軸を移動させることにより、交連部の下方の領域で弁尖とフレームとの間の接触を防止または最低限に抑制する。
【0100】
下方タブ304と上方タブ306との間の側部エッジ338は、人工弁のフレームに対して装着されずに留められ得る(図1Cを参照)。非装着側部エッジ338は、人工弁がクリンピングプロセス中に径方向拡張状態から径方向圧縮状態へと圧縮されると軸方向における弁尖のより大きな伸びまたは伸長を可能にすることにより、および人工弁が径方向拡張状態へと拡張されると径方向におけるより大きな弁尖の伸びまたは伸長を可能にすることにより、弁尖における応力の軽減を含む、複数の利点を提供する。また、非装着側部エッジ338により、血液が、隣接し合う弁尖の一対の側部エッジ338とフレームの内方表面との間の空間内に流入することが可能となり、それにより血流停滞および血栓形成が軽減される。拡張期の最中に、隣接し合う側部エッジ338同士は、相互に接合し、逆行性血液が側部エッジ338同士の間を流れるのを防止し得る。収縮期の最中には、隣接し合う側部エッジ338は、相互から分離し、順行性血液が側部エッジ338間を流れるのを可能にし、交連部下方の領域から血液を洗滌し去るのを助け得る。
【0101】
補強部材310、312、320は、望ましくは比較的軟質および可撓性の非金属材料を含む。例えば、補強部材は、多繊維縫合糸(例えばEthibond縫合糸)、または繊維材料(例えばPET)もしくは非繊維材料(例えばシリコーンもしくはポリウレタン)などの合成材料ストリップ、または天然組織(例えば心膜)を含むことが可能である。交連部装着部材322は、同様に、繊維材料(例えばPET)もしくは非繊維材料(例えばシリコーンもしくはポリウレタン)などの合成材料ストリップ、または天然組織(例えば心膜)などの、軟性および可撓性の非金属材料を含むことが可能である。したがって、図示する実施形態では、交連部328は、金属成分または同様の剛性を有する他の材料を含まない。かかる材料が存在しないことにより、弁尖材料の摩耗および摩損が軽減され、人工弁のクリンププロファイル全体を縮小することが可能となる。
【0102】
図38は、図37に示す実施形態の修正形態を示す。図38の実施形態は、隣接し合う弁尖300の一対の折畳み層306a、306bが、各弁尖300の補強部材310、312およびタブ層306a、306bを貫通して延在する縫合糸336により相互に固定され得る点を除いては、図37の実施形態と同一であり得る。弁尖同士を共に固定することにより、正常な弁動作中に弁尖の関節部分330の曲げ軸が補強され得る。
【0103】
図39は、弁尖340の代替的な実施形態を示し、この弁尖340は、上方タブ306よりも大きな距離にわたり側方に突出する上方タブ340を備える点を除いては弁尖300と同様である。各上方タブ340は、各垂直方向折畳みライン342に沿って幅方向に折りたたまれて、隣接する弁尖の折畳みタブ層と対をなす2つの折畳みタブ層を形成することにより先述のような交連部を形成し得る。
【0104】
図40図46は、弁尖の別の実施形態と、2つの弁尖から交連部を形成するための方法とを示す。図40に示すように、弁尖400が、下方タブ404にて終端する下方エッジ部分402を備え、上方タブ406(交連部タブとも呼ばれる)が、間隙408により下方タブ404から離間される。下方タブ404は、下方エッジ部分402に対して下方に折りたたまれて、弁尖のそれらの領域を補強し、先述のようにフレームの内方表面から内方に離れるようにエッジ部分402の上方セクション(交連部の直下の部分)の曲げ軸を移動させ得る。
【0105】
各上方タブ406は、下方タブ部分410と、下方タブ部分から延在する上方タブ部分412と、上方タブ部分から側方に内方に延在する側部タブ部分414とを備える。交連部を形成するために、補強部材418(例えば多繊維縫合糸または繊維ストリップ)が、図41に示す様式で上方タブ部分412に沿って垂直方向に配置され得る。次いで、側部タブ部分414が、図41図42に示されるように上方タブ部分412に対して折畳みライン416に沿って折りたたまれ得る。次いで、側部タブ部分414および上方タブ部分412の二重層が、図42図43に示すように下方タブ部分410に対して水平方向折畳みライン420に沿って折りたたまれ得る。
【0106】
図44に示すように、交連部装着部材422が、次いで下方タブ部分410の後方(外方)表面に対接して配置され、上方タブ部分412、補強部材418、側部タブ部分414、下方タブ部分410、および交連部装着部材422を貫通して延在するステッチ424を用いて上方タブ406に対して固定され得る。次いで、下方タブ部分410、上方タブ部分412、および側部タブ部分414により形成される3つの層が、L字形状へと折りたたまれて、図46に示すように交連部装着部材422に隣接する外方折畳み部分426と、外方折畳み部分から径方向内方に延在する内方折畳み部分428とを形成し得る。図46に示すように、外方折畳み部分426のタブ層は、ステッチ432を用いて交連部装着部材422に対してさらに固定され得る。別の弁尖の上方タブ406は、同一の様式で組み立てられ、同一の交連部装着部材422に対して固定されて、図45図46に示すように交連部430を形成し得る。
【0107】
上述のように、ステッチ424は、下方タブ部分410、上方タブ部分412、および側部タブ部分414により形成された各層を貫通して延在し得る。図46に示すように、各交連部タブ406からのステッチ424同士は、相互に対角線方向に延在して、折畳み交連部タブ406同士を相互におよび交連部装着部材422に対して圧迫し得る。代替的な実施形態では、ステッチ424は、折畳みライン420に沿って上方タブ部分および側部タブ部分を折りたたむ前に、補強部材418、側部タブ部分414、および下方タブ部分410を貫通して配置され得る。このように、ステッチ424は、図46に示すように上方タブ部分412を貫通して延在する必要はない。いくつかの実施形態では、別の補強部材438が、交連部装着部材422の外方表面に対接して配置され得る(図46)。各交連部タブ406からのステッチ424は、図示するように同一位置にてまたは離間位置にて補強部材438を貫通して延在し得る。
【0108】
交連部430は、上述の交連部328と同様に機能し得る。したがって、正常な弁サイクル中には、弁尖400は、タブ層412の内方端部434にて各軸を中心として関節動作し得る。ステッチ424による折りたたまれた交連部タブ406の圧迫は、フレームから離れた状態に弁尖400の正常な曲げ軸を維持するのを助ける。弁展開中に、弁尖は、交連部装着部材422に隣接する軸436にて相互から離れるように広がり得る。
【0109】
図47は、交連部を形成するための代替的な構成を示す。図47の実施形態は、垂直方向補強部材344が弁尖の交連部タブの2つの層間に配置され得る点を除いては、図33図37の実施形態と同様である。交連部は、折畳みライン308に沿ってタブ部分306aを折りたたむ前にタブ部分306a上に補強部材344を配置することによって形成され得る。交連部タブ306を折りたたんだ後に、折畳み層306a、306bは、補強部材344、両タブ層306a、306b、および交連部装着部材322を貫通して延在するステッチ346により交連部装着部材322に対して固定され得る。
【0110】
図48は、各折りたたまれた交連部タブ406が別個の補強部材438(それらの中の1つが図48では示される)に固定される点を除いては図46と同様である、交連部を形成するための代替的な構成を示す。また、ステッチ440が、補強部材418に対して側部タブ部分414を固定し得る。
【0111】
図49図54は、弁尖の別の実施形態と、2つの弁尖から交連部32を形成するための方法とを示す。図49に示すように、弁尖500が、下方タブ504にて終端する下方エッジ部分502を備え、上方タブ506(交連部タブとも呼ばれる)が、間隙508により下方タブ504から離間される。下方タブ504は、下方エッジ部分502に対して下方に折りたたまれることにより、前述のように弁尖のそれらの領域を補強し、フレームの内方表面から離れるように内方へとエッジ部分502の上方セクション(交連部の直下の部分)の曲げ軸を移動させ得る。
【0112】
各交連部タブ506が、下方タブ部分510および上方タブ部分512を備える。交連部を形成するために、上方タブ部分512は、下方タブ部分510に対して折畳みライン514に沿って折りたたまれる。次いで、タブ部分510、512を備える二重層は、垂直方向折畳みライン516に沿って折りたたまれて、図50図52に示すように各交連部タブ506から第1の層518、第2の層520、第3の層522、および第4の層524を形成し得る。繊維(例えばPET)ストリップなどの補強部材526が、第2の層520と第3の層522との間に位置決めされ得る。
【0113】
別の弁尖500の交連部タブ506は、同一の様式で折りたたまれ、交連部装着部材528内で第1の弁尖の折りたたまれた交連部タブに対接して配置され得る。交連部装着部材528は、図50に示すように折りたたまれて、中央外方部分530、外方端部部分532、および側部部分534を形成することが可能であり、これらの中央外方部分530、外方端部部分532、および側部部分534はそれぞれ、端部部分532および中央外方部分530の各端部から延在する第1の材料層534aおよび第2の材料層534bを備える。側部部分534は、交連部タブの各第4の層524に対接して配置され得る。
【0114】
図50に示すように、各側部部分534の層534a、534bは、ステッチ536により相互に固定され得る。各側部部分534は、各補強部材526、各第3の層522および第4の層524、ならびに各側部部分534の両層を貫通して延在するステッチ538により、交連部タブ506に対して固定され得る。交連部装着部材528は、縫合糸または他の技術もしくは機構によりフレーム12のストラット22に対して固定され得る。
【0115】
図51は、交連部装着部材528に対して折りたたまれた交連部タブ506を固定する別の方法を示す。図51に示すように、各交連部タブごとに、一列の側方延在ステッチ540が、側部部分の層534a、534bの内方端部部分、第3の層522および第4の層524、ならびに補強部材526を固定するために使用され得る。対角線方向に延在する列のステッチ542が、補強部材526、第3の層522および第4の層524、ならびに側部部分の層534a、534bの後方端部部分を固定するために使用され得る。
【0116】
図52図53に示すように、各交連部32は、内方スリーブ544および外方支持部材546を備え得る。内方スリーブ544は、第1の部分544aおよび第2の部分544bを備えることが可能であり、第1の部分544aおよび第2の部分544bはそれぞれ、各折りたたまれた交連部タブ506の外方側部ならびに上方部分および下方部分の周囲に延在する。第1の部分544aおよび第2の部分544bの隣接し合う上方端部548は、交連部32の中心にて相互に対して固定され得る(例えば縫合糸により)。第1の部分544aおよび第2の部分544bの隣接し合う下方端部は、交連部32の中心にて同様に相互に対して固定され得る(例えば縫合糸により)。交連部装着部材528の各側部部分534は、内方スリーブの第1の部分544aおよび第2の部分544bの一方に対して固定され得る(例えば縫合糸により)。外方支持部材546は、交連部装着部材528の中央外方部分530および/または端部部分532に対して固定され得る(例えば縫合糸により)。
【0117】
図54に示すように、外方支持部材546の少なくとも一部分がフレーム12の外部に位置決めされ得る。外方支持部材546は、フレームのセルを形成するストラットのセットの中の各ストラット22に対して固定され得る(例えば縫合糸により)。図示する実施形態では、例えば、外方支持部材546は、4つのストラット22から構成されるダイヤモンド形状セルの各ストラットに対して縫合され得る。内方スリーブ544および外方支持部材546は、上述の実施形態の補強部材および交連部装着部材について前述したような任意の適切な比較的可撓性かつ軟性の材料を含み得る。特定の実施形態では、内方スリーブ544および外方支持部材546は、PET繊維を含む。
【0118】
図55は、図52図54に示す交連部32の修正形態を示す。図55の実施形態は、各交連部タブ506の第2の層520と第3の層522との間に位置決めされた多繊維縫合糸の形態の補強部材554を備える点を除いては、図52図54の実施形態と同一であることが可能である。
【0119】
図56は、2つの弁尖300から交連部を形成するための代替的な実施形態を示す。交連部タブ306は、図33図37の実施形態に関して上述したものと同様の様式で折りたたまれ得る。図示するように、補強部材350(例えばPETまたは他の材料のストリップ)は、各層306aの折畳み部に配置され得る。交連部装着部材352は、各層306bの外方折畳み部分316に対接して配置され、図56に示す様式で折りたたまれて、各層306bにて3つの材料層352a、352b、352cを形成し得る。各交連部タブ306ごとに、ステッチ354が、補強部材350、層306a、306b、および交連部装着部材352の3つの折畳み層を固定するために使用され得る。
【0120】
図57図58は、別の実施形態による人工弁600を示す。人工弁600は、封止部材の構成を除いては上述の人工弁10と同様であり得る。図示する実施形態における人工弁600は、内方部分または内方層604および外方部分または外方層606を備える封止部材602を備える。内方層604は、フレーム12の内部に取り付けられ、3つの三角形状部分608を備える。図59は、フレームへの装着前の平坦構成において封止部材602を示す。封止部材の各端部の半三角形部分は、封止部材がその端部同士が相互に連結された状態でチューブ形状または環状形状へと形成されると、三角形部分608を形成する。
【0121】
内方層の上方エッジ部分610は、弁尖20の下方エッジ部分102の形状に対応するように形状設定される。弁尖20の下方エッジ部分102は、連結スカート(例えばスカート100などの本明細書において説明される任意の連結スカート)または本明細書において説明される他の取付け技術を使用して、内方層604の上方エッジ部分610に対して直接的に連結され得る(例えば縫合糸により)。内方層604の上方エッジ部分610は、弁尖に対して内方層を連結するために使用される縫合糸を用いて、またはストラット22および内方層を貫通して延在する別個の縫合糸を用いてなど、フレーム12のストラット22に対して固定され得る。内方層604は、順行性血液が弁尖の流入エッジの下方のフレームのセルを通り外方へと流れるのを防止するように機能する。
【0122】
外方層606は、フレームの流入端部26の周囲に巻かれ、フレーム12の外部上のストラット22に対して上方エッジ部分612に沿って固定され得る(例えば縫合糸により)。個々の縫合糸は、フレームの流入端部26の頂点部に対して外方層606を周方向に離間された位置にて固定するために使用され得る。
【0123】
外方層606は、人工弁が機能サイズへと径方向に拡張されてフレームと外方層606との間に空間614が形成されると、フレームから径方向外方に延在するように形状設定または構成され得る。患者の体内で展開すると、逆行性血液が、弁尖20の外方表面上を越えてフレームのセルを通り外方層606の内部の空間614内へと流れて、周辺組織に対接するシールの形成を助長し得る。弁尖20の可動部分に対面するフレームの内部に材料が存在しないことにより、人工弁のクリンププロファイル全体が縮小され、特に人工弁が公称サイズまで完全には拡張されない場合に弁尖20の摩耗が阻止され得る。結果として、これにより、人工弁を多様な患者の弁輪サイズ内に植え込むことが可能となる。
【0124】
封止部材602は、封止部材16に関して上述したものと同一の材料からおよび同一の技術を利用して形成することが可能である。
【0125】
図60図61は、別の実施形態による人工弁700を示す。この人工弁700は、封止部材の構成を除いては上述の人工弁10と同様であり得る。図示する実施形態における人工弁700は、内方部分または内方層704および外方部分または外方層706を備える封止部材702を備える。内方層704は、フレーム12の外部に取り付けられ、3つの三角形状部分708を備える。特定の実施形態では、三角形状部分708は、薄ストリップ705のみにより連結される。
【0126】
図62は、フレーム12上に封止部材702を組み付け最終形状へと折り曲げられる前の封止部材702を示す。フレーム12上に封止部材702を取り付ける場合に、最初に、封止部材は、内方層704の流入端部部分がフレームの流入端部26に隣接するように、図63に示すようにフレーム上に配置され得る。三角形部分708は、弁尖20の下方エッジ部分102の形状に対応し、各交連部の下方の隣接し合うエッジ部分102間でフレーム中の開口を覆うように形状設定される。三角形部分708の形状により、内方層704は、弁尖の流出表面に対面するフレームの部分を覆わない。
【0127】
弁尖20の下方エッジ部分102は、連結スカート(例えばスカート100などの本明細書において説明される任意の連結スカート)または本明細書において説明される他の取付け技術を使用して、内方層704の上方エッジ部分710に対して直接的に連結され得る(例えば縫合糸により)。内方層704は、順行性血液が、弁尖の流入エッジの下方のフレームのセルを通り外方に流れるのを防止するように機能する。
【0128】
次いで、外方層706は、図60に示すように、事前に折りたたまれた外方層の上方端部が外方層の下方(流入)端部になり、フレームの流入端部26に隣接して位置するように、フレームの流入端部26に向かって内方層704上に折りたたまれ得る。内方層上に外方層を折りたたむことにより、折りたたまれた組立状態において、事前に折りたたまれた外方層の内方表面が外方層の外方表面になり、事前に折りたたまれた外方層の外方表面が外方層の内方表面になるように、外方層が反転される。図64は、例示を目的として人工弁の残りの部分から分離された、最終折畳み状態にある封止部材702を示す。外方層706を折りたたんだ後に、外方層の流入端部および/または流出端部は、フレームのストラット22に対して固定され得る(例えば縫合糸により)。
【0129】
封止部材702は、封止部材16に関して上述したものと同一の材料からおよび同一の技術を利用して形成され得る。代替的な実施形態では、内方層704および外方層706は、別個の材料ピースであることが可能であり、これらの材料ピースは、それらの流入端部および/または流出端部にて相互に固定され得る(例えば縫合糸により)。
【0130】
図57図59の実施形態と同様に、外方層706は、人工弁が機能サイズへと径方向に拡張されてフレームと外方層706との間に空間714が形成されると、フレームから径方向外方に延在するように形状設定または構成され得る。患者の体内で展開すると、逆行性血液が、弁尖20の流出表面70上を越えてフレームのセルを通り外方層706の内部の空間714内へと矢印716の方向に流れて、周辺組織に対接するシールの形成を助長し得る。三角形状部分708は、順行性血液が、弁尖の弁尖エッジ部分102同士の間の位置にてフレームを通り流れるのを防止する。フレームの内部に材料が存在しないことにより、人工弁のクリンププロファイル全体が縮小され、特に人工弁が公称サイズまで完全には拡張されない場合に弁尖20の摩耗が阻止され得る。結果として、これにより、人工弁を多様な患者の弁輪サイズ内に植え込むことが可能となる。
【0131】
図65は、別の実施形態による人工弁800を示す。人工弁800は、図60図63の実施形態に関連して上述したようにフレーム12に対して取り付けられた封止部材802を備え得る。人工弁800は、フレームの流出端部にてセルに対して取り付けられる交連部810を形成するように流出端部にて相互に連結された弁尖814を備え得る。交連部810は、弁尖の交連部タブを折りたたみそれらの交連部タブを交連部装着部材812に対して固定することにより形成され得る。各交連部装着部材812は、フレームの閉鎖セル24を画定する4つのストラット22に対して縫合され得る。以下、交連部810を形成し、交連部装着部材812によりセル24に対してこれらの交連部810を取り付けるための方法を詳細に説明する。
【0132】
図68は、人工弁の他の構成要素とは別個に封止部材802を示す。封止部材802は、内方層804および外方層806を備える。内方層804は、複数の三角形状部分808を備え得る。封止部材802は、三角形状部分808がそれらの下方(流入)端部にて相互に連結されない点を除いては、封止部材702と同一または同様の構成を有し得る。封止部材802は、封止部材702に関連して上述したようにフレーム12に対して取り付けられ得る。
【0133】
図74図78を参照すると、交連部810を形成しフレーム12に対して交連部810を取り付けるための方法が説明される。図75において最もよく示されるように、各弁尖814が、先述の実施形態の任意のものを利用してフレーム12に対して取り付けられ得る下方エッジ部分または弁尖エッジ部分816を有する。下方エッジ部分816は、上方端部が2つの側方突出一体下方タブ818に終端する。一体上方タブ820(交連部タブとも呼ばれる)が、弁尖814の上方隅部から突出する。上方タブ820は、側部エッジ819により下方タブ818から離間されて、弁尖内に側方延在間隙または凹部820を形成し得る。
【0134】
図75Bに示すように、各上方タブ820は、図33図37に示す弁尖300に関して上述した技術と同様に、折畳みライン824に沿って折りたたまれて第1のタブ層820aおよび第2のタブ層820bを形成する。以下でさらに説明するように、上方タブ820は、隣接する弁尖の上方タブ820と共に交連部装着部材812に対して固定されて、交連部810を形成する。図76は、折畳みおよび弁尖に対する装着前の、平坦構成にある交連部装着部材812を示す。図示する構成における各交連部装着部材812は、中央部分830から側方に突出する第1の側部部分828aおよび第2の側方部分828bを備える。図示するように、側部部分828a、828bの外方周縁エッジ832は、以下でさらに説明するように、フレーム12のストラット22に対する交連部装着部材812の取付けを助長するように、フレーム12のダイヤモンド形状セル24の一方の半部に対応するように形状設定され得る。
【0135】
図77図78を参照すると、弁尖814の上方タブ820が折りたたまれた後に、垂直方向補強部826が、ステッチなどによりタブ層820aの内方表面に対して固定され得る。折りたたまれたタブ層820a、820bは、交連部装着部材812の側部部分828aまたは828bに対して固定され得る。また、これらの折畳みタブ層は、タブ層820bが第1の周方向延在層834aと層834aに対してほぼ垂直である第1の径方向延在層834bとを形成し、タブ層820aが第2の内方周方向延在層836aと層836aに対してほぼ垂直である径方向延在層836bとを形成するように、補強部826にて垂直方向折畳みラインに沿ってL字形状に折り曲げられ得る。隣接する弁尖814の別の上方タブ820が、交連部装着部材812の他の側部部分828aまたは828bに対して同様に折りたたまれ固定され得る。
【0136】
交連部装着部材812は、図78に示すように、内方層838、2つの中間層840、および2つの外方層842を形成するように折りたたまれ得る。各折りたたまれた上方タブ820が、ステッチ844により内方層838および中間層840に対して固定され得る。図示する実施形態では、ステッチ844は、補強部材826、層836a、層834a、層838、および層840を貫通して延在するのが図示される。しかし、組立プロセス中に、複数のステッチが、各折畳みがなされた場合に隣接する層に各層を固定するために使用されることが可能である。例えば、層834a、836aは、別個のステッチにより相互におよび補強部材826に対して固定されることが可能であり、次いで追加のステッチが、交連部装着部材812の内方層838に対して弁尖層を固定するために使用され、さらなるステッチが、内方層838に対して中間層840を固定するために使用され得る。図78において最もよく示されるように、交連部装着部材812は、外方層842同士の間に小間隙846を残すように折りたたまれ得る。
【0137】
外方層842は、ステッチ848でストラット22に対して外方周縁エッジ832を縫合することなどにより、フレーム12に対して固定され得る。上述のように、交連部装着部材812の外方周縁エッジ832は、フレーム12の閉鎖セルの形状にほぼ対応し得る。例えば、図71に示すように、図示する実施形態におけるフレーム12は、複数のほぼダイヤモンド形状のセル24を備え、各ほぼダイヤモンド形状のセル24は、ストラット22a、22b、22c、および22dにより形成される。ステッチ848は、ストラット22a、22b、22c、22dに対して交連部装着部材812の外方周縁エッジ832を縫合して閉鎖セル24を形成するために使用され得る。交連部装着部材812は、中央部分の上方エッジおよび下方エッジから突出する上方タブ850および下方タブ852をさらに備えることが可能である(図76)。また、ステッチ848は、ストラット22a、22cの交差により形成された頂点部854に対して上方タブ850を縫合し、ストラット22b、22dの交差により形成された交差部856に対して下方タブ852を縫合するために使用され得る。
【0138】
弁尖814の流入部分または弁尖エッジ部分816は、複数の連結スカート860を使用してフレーム12に対して固定することが可能であり(図70)、これらの複数の連結スカート860は、連結スカート100に関して上述したものと同一の材料から形成され得る(例えばPET繊維)。図示する実施形態では、単一の連結スカート860が、各弁尖814の弁尖エッジ部分816のために設けられ、弁尖814の下方タブ818の直下の位置まで弁尖エッジ部分816の全長に沿って延在するようにサイズ設定される。図75Bは、縫合糸により弁尖に装着される前に、弁尖814の弁尖エッジ部分816に沿って配置された連結スカート860を示す。連結スカート860は、中央下方エッジ部分にわたり延在するようにサイズ設定された中央部分860aと、下方中央部分から下方タブ818まで延在する有角側部エッジ部分にわたり延在するようにサイズ設定された2つの側部部分860bとを備え得る。連結スカート860は、図75Bに示すように、弁尖エッジ部分に沿ったスカートの整列を容易化するために中央部分860aから側部部分860bを部分的に分離させるスリット862を有して形成され得る。
【0139】
代替的な実施形態では、複数の連結スカートが、各弁尖の弁尖エッジ部分に対して設けられ得る(例えば中央部分860aおよび側部部分860bが別個の繊維ピースであることが可能である)。別の実施形態では、単一の連結スカートが、フレームに対してすべての弁尖を固定するために使用されることが可能であり、すなわち単一の連結スカートが、すべての弁尖の弁尖エッジ部分に沿って延在するようにサイズ設定され得る。
【0140】
フレームに対して弁尖を取り付ける前に、連結スカート860が、各弁尖の弁尖エッジ部分に対して装着され得る。図69に示すように、連結スカート860は、長さ方向に折りたたまれて2つの折畳み層864a、864bを形成し、弁尖エッジ部分816の流入表面に対接して配置され得る。補強部材または補強コード866(例えばEthibond縫合糸)が、連結スカート860の対向側の弁尖エッジ部分の流出表面に対接して配置され得る。補強部材866および折畳み層864a、864bは、ステッチ868により相互に対しておよび弁尖エッジ部分816に対して縫合されることが可能であり、このステッチ868は、1つまたは複数の材料層を貫通して延在する単一の縫合糸または複数の縫合糸であることが可能である。
【0141】
弁尖814に対して補強コード866を縫合する場合に、下方タブ818は、弁尖エッジ部分816に対して下方に折りたたまれ(図75Bを参照)、補強コード866は、折りたたまれた下方タブ818上に配置され得る。連結スカート860の上方端部は、折りたたまれた下方タブ818にわたり延在するようにサイズ設定され得る。ステッチ868は、折りたたまれた下方タブ818に対接して定位置に補強コード866を固定するために使用され得る。特定の実施形態では、図67において最もよく示されるように、補強コード866は、1つの弁尖814の折りたたまれた下方タブ818に沿って、交連部810の下方の一対の隣接し合う下方タブ818と一対の上方タブ820との間の空間を通り、さらに下方タブ818と隣接する弁尖814の弁尖エッジ部分とに沿って延在し得る。いくつかの実施形態では、単一の補強コード866が、すべての弁尖の弁尖エッジ部分816に沿って連続的におよび各交連部810の下方の空間を通り延在する。他の実施形態では、複数の補強コード866が、1つの補強コードが各弁尖の弁尖エッジ部分に対して固定された状態で使用され得る。複数の補強コード866が使用される場合には、各コードの端部は、他のコードの隣接する端部に対して連結され得る(例えば縛りまたは結びなどにより)。例えば、2つのコードの隣接し合う端部が、交連部の下方の空間内で相互に連結され得る。
【0142】
図69図72、および図73は、一実施形態によるフレーム12に対する連結スカート860の連結を示す。図示するように、連結スカートは、フレームのストラット22に対して縫合されて、交連部810からフレームの流入端部まで延在する対角線方向ラインを形成し得る。特定の実施形態では、連結スカートの一方または両方の層864a、864bが、個別のステッチ872により、およびさらに2つの交差部856間のストラット22の長さに沿って形成されるかがり縫いステッチ874で、交差部856(図71)に対して固定され得る。各かがり縫いステッチ874は、エッジ部分816を貫通しておよびストラットの長さに沿って複数回にわたりストラット22の周囲に延在し得る。かがり縫いステッチ874は、図69に示すように、任意には弁尖エッジ部分816を貫通して延在し得る。
【0143】
代替的な実施形態では、弁尖814の弁尖エッジ部分816は、本明細書において説明される任意の技術を利用してフレームおよび/または封止部材の内方層804に対して取り付けられ得る。例えば、図10図12Bまたは図14図32に関して上述した任意の技術または構成が、補強コード866を用いてまたは用いずにフレーム12に対して弁尖814を取り付けるために使用され得る。
【0144】
図33図37に示す実施形態に関連して上記で論じたように、折りたたまれた下方タブ818は、交連部810に隣接する弁尖エッジ部分の上方セクションに沿った弁尖の弁尖エッジ部分816とフレームとの間の連結の補強を助ける。また、折りたたまれた下方タブ304は、内方へとおよびフレームの内方表面から離れるように弁尖エッジ部分の上方セクションの曲げ軸を移動させて、交連部の下方の領域における弁尖とフレームとの間の接触を防止または最小限に抑える。図示する実施形態では、各下方タブ818が、弁尖の上方(流出)表面上に弁尖材料の1つの追加層を形成する。代替的な実施形態では、各下方タブ818が、弁尖の上方表面上に2つ、3つ、または4つの層などの複数の追加の弁尖材料層を形成することにより、フレームの内方表面からさらに離れるように交連部の下方の弁尖の曲げ軸を移動させるように構成され得る。
【0145】
下方タブ818と上方タブ820との間の側部エッジ819は、図67に最もよく示されるように、および図1Cに示す構成に関連して先述したように、人工弁のフレームに対して装着されずに留められ得る。先述のように、非装着側部エッジ819は、人工弁が圧縮されると軸方向における弁尖のより大きな伸びまたは伸長を可能にし、人工弁が拡張されると径方向における弁尖のより大きな伸びまたは伸長を可能にする。拡張期の最中に、隣接し合う側部エッジ819同士は、相互に接合し、逆行性血液が側部エッジ819同士の間を流れるのを防止し得る。収縮期の最中には、隣接し合う側部エッジ819は、相互から分離し、順行性血液が側部エッジ819間を流れるのを可能にし、交連部810の下方の領域から血液を洗滌し去るのを助け得る。
【0146】
弁尖アセンブリ(弁尖814および連結スカート860)が、フレームに対して取り付けられた後に、封止部材802は、図60図64に関連して上述したようにフレームの上に配置され取り付けられ得る。封止部材の内方層804の三角形状部分808は、縫合糸870によりフレームのストラット22に対しておよび/または連結スカート860の一方もしくは両方の層864a、864bに対して縫合され得る(図69を参照)。
【0147】
図79図80は、別の実施形態による人工弁900を示す。人工弁900は、封止部材の構成を除いては上述の人工弁10と同様であり得る。図示する実施形態における人工弁900は、第1の層902および第2の層904を備える封止部材を備え、第1の層902および第2の層904は共に、フレーム12の外部上に取り付けられる。第1の層902は、上方(流出)端部にて相互に連結された複数のダイヤモンド形状の第1の部分908を備える。第2の層904は、下方(流入)端部にて相互に連結された複数の三角形状部分910を備える。人工弁の交連部906と周方向に整列される三角形状部分910は、ダイヤモンド形状部分908同士の間に点在し、これらのダイヤモンド形状部分908は、弁尖20と周方向に整列される。図示するように、ダイヤモンド形状部分908および三角形状部分910は、交連部906の近傍にてある程度において相互に重畳し得る。
【0148】
三角形状部分910は、隣接し合う弁尖20間の空間の形状にほぼ対応する。第2の層904の下方(流入)端部は、フレームの流入端部に固定され得る(例えば縫合糸により)。弁尖20の下方エッジ部分102は、先述のように連結スカート100などによりフレーム12に対して結合され得、連結スカート100は、フレームのセルを貫通して三角形状部分910の側部に対して固定され得る(例えば縫合糸により)。このようにすることで、三角形状部分910は、順行性血液がフレームのセルを通り外方に流れるのを阻止する。また、三角形状部分910は、ダイヤモンド形状部分908との組合せにおいて人工弁を封止し弁周囲逆流を阻止するのを助けるように周囲組織に係合し得る。
【0149】
第1の層902は、各ダイヤモンド形状部分908の流入端部にて、およびダイヤモンド形状部分908同士が第1の層の流出エッジに沿って相互に連結される交差部912にて、フレーム12に対して固定され得る(例えば縫合糸により)。ダイヤモンド形状部分908は、人工弁が展開される場合に周囲組織に係合および封着するように、フレームから径方向に離れるように延在するように構成される。交差部912同士の間の第1の層902の流出エッジは、第1の層902とフレームとの間に逆行性血液を受けるように、フレームに対して装着されずに留まり得る。いくつかの実施形態では、ダイヤモンド形状部分908は、図67に示すようにフレームの外部の周囲に環状波形状を形成するように構成される。また、いくつかの実施形態では、第1の層902の流出エッジは、人工弁が拡張された場合に第1の層902を誘起して波形状をとらせるように、交差部912同士の間の位置914にてフレームに対して固定され得る(例えば縫合糸により)。
【0150】
図示する実施形態では、第1の層はダイヤモンド形状部分を有し、第2の層は三角形状部分を有するが、他の形状も可能である。例えば、第1の層および第2の層のセクション908、910は、正方形、楕円形、矩形、円形、あるいはそれらの形状の1つまたは複数の組合せであることが可能である。
【0151】
代替的な実施形態では、第1の層902のセクション908は、相互に連結されない別個の材料ピースであることが可能である。同様に、第2の層904のセクション910は、相互に連結されない別個の材料ピースであることが可能である。例えば、図81図82は、フレームの外部の周囲に位置決めされた交互に位置するダイヤモンド形状部分1002および三角形状部分1004の形態である封止部材を備える人工弁1000を示す。ダイヤモンド形状部分1002は、弁尖20と周方向に整列され得、三角形状部分1004は、弁尖の交連部1006と周方向に整列され得る。各部分1002、1004は、流入端部および流出端部にてフレーム12に対して縫合または他の方法で固定される別個の材料ピースであることが可能である。ダイヤモンド形状部分1002および三角形状部分1004は、人工弁が拡張されると、フレーム12から離れるように延在し、周辺組織に係合し得る。
【0152】
図83図84は、別の実施形態による人工弁1100を示す。人工弁1100は、図60図63の実施形態に関連して上述したようにフレーム12に取り付けられた封止部材1102を備え得る。人工弁1100は、フレームの流出端部にてセルに対して取り付けられる交連部1110を形成するように流出端部にて相互に連結された弁尖1114を備え得る。交連部1110は、弁尖の交連部タブを折畳み、交連部装着部材1112に対してそれらの交連部タブを固定することにより形成され得るものであり、この交連部装着部材1112は次いでフレームに対して取り付けられる。各弁尖1114は、前述のようにフレーム12の流出端部に向かって上方に折りたたまれ、図69図73に関連して上述するような各連結スカート1118を用いてフレームに対して固定される、下方部分または弁尖エッジ部分1116を有し得る。また、本明細書において開示されるフレームに対して弁尖の弁尖エッジ部分を取り付けるための任意の他の技術を利用することが可能である。
【0153】
図85図86は、2つの弁尖1114から形成された交連部1110を示す。図示するように、各弁尖が、第1の層1120、第2の層1122、および第3の層1124を形成するように折りたたまれた交連部タブを有し得る。補強部材1126が、第2の層1122と第3の層1124との間に位置決めされ得る。交連部装着部材1112は、折りたたまれて、中央部分1128と、2つの側部フラップ1130と、弁尖の第3の層1124に並行して径方向に延在する2つの対の折畳み層1132、1134とを形成し得る。弁尖層1120、1122、1124および交連部装着部材1112の層1132、1134は、1つまたは複数の縫合糸1136および1138により相互に固定され得る。各縫合糸1136、1138が、これらの層の全てを貫通して延在する複数の並縫いステッチを形成し得る。図86に示すように、縫合糸1136が、弁尖層1120、1122、1124の上方エッジにわたり延在するステッチを形成し得る。側部フラップ1130は、図72および図77に示すようにフレームのストラット22に対して縫合され得る。
【0154】
図85に示すように、各弁尖が、先述のように、交連部の下方の領域での血流を促進するためにフレームに対して装着されずに留まり得る、各交連部の下方にあってそれぞれ対向側に位置する凹状側部エッジ1140を各交連部の下方に有し得る。各弁尖が、人工弁800の下方タブ818と同様のそれぞれ対向側に位置する下方タブ1142(図84)をさらに有する。補強コード866などの補強コードが、人工弁800に関連して上述するように弁尖の弁尖エッジ部分1116に対して固定され得る。
【0155】
様々な送達技術の中の任意のものが、本明細書において開示される人工心臓弁のいずれかを送達するために利用され得る。逆行性アプローチでは、人工弁が、送達カテーテルの遠位端部部分に沿って径方向圧縮状態で取り付けられ得、送達カテーテルおよび人工弁は、天然大動脈弁まで大動脈を通して前進され得る。人工弁は、天然大動脈弁内に位置決めされると、バルーンの膨張または別の拡張デバイスなどにより拡張され得る。
【0156】
上記のように、本明細書において開示される人工弁はいずれも、自己拡張型に構成され得るか、またはバルーンもしくは任意のタイプの拡張機構で拡張力を印加することにより拡張可能であることが可能である。塑性拡張型人工心臓弁を植え込むための膨張性バルーンを有する送達カテーテルの一例(本明細書において開示される任意の人工弁を植え込むために使用し得る)が、米国特許出願公開第2017/0065415号に開示されている。自己拡張型人工心臓弁を送達するために使用され得る送達カテーテルの一例(本明細書において開示される任意の人工弁を植え込むために使用し得る)が、米国特許出願公開第2014/0343670号に開示されている。
【0157】
一般的考察
【0158】
本説明を目的として、本開示の実施形態の特定の態様、利点、および新規特徴を本明細書において説明した。本開示の方法、装置、およびシステムは、いかなる限定的なものとしても解釈されるべきではない。むしろ、本開示は、単独におけるならびに様々な相互組み合わせおよび下位組合せにおける、様々な本開示の実施形態のすべての新規かつ非自明な特徴および態様を対象とする。方法、装置、およびシステムは、そのいかなる特定の態様、特徴、または組合せに限定されることもなく、また本開示の実施形態は、任意の1つまたは複数の特定の利点が存在することあるいは任意の1つまたは複数の特定の問題が解決されることを必須としない。
【0159】
本開示による人工心臓弁は、径方向に潰れおよび拡張可能な環状のフレームと、フレーム内に取り付けられた弁構造体(例えば1つまたは複数の弁尖)と、上述の任意の封止部材、上述の任意の特定の弁尖構成、上述の交連部に関する任意の構成、フレームに対して弁尖の弁尖エッジ部分を連結するための任意の構成、および/またはそれらの組合せを含むがそれらに限定されない、上述の1つまたは複数の新規の特徴とを備え得る。
【0160】
本開示の実施形態のいくつかの動作が、提示上の便宜を理由に特定の連続順序で説明されたが、この説明様式は、特定の順序が以下に示す特定の表現によって必要とされることがない限り、その並べ替えを包含する点を理解されたい。例えば、いくつかの例では、連続的に説明された動作が、並べ替えられてもまたは同時に実施されてもよい。さらに、簡略化を目的として、添付の図面は、本開示の方法が他の方法との組合せにおいて利用され得る様々な様式を示さない場合がある。さらに、本説明は、本開示の方法を説明するために「実現する」または「達成する」等の用語を時として使用する。これらの用語は、実施される実際の動作を高度抽象化したものである。これらの用語に対応する実際の動作は、特定の実装形態に応じて多様となり得るものであり、当業者によって容易に認識され得るものである。
【0161】
本願および特許請求の範囲において、単数形「1つの(a、an)」および「その(the)」は、文脈によって別様のことが明示されない限りは複数形を含む。さらに、用語「含む」は、「備える」を意味する。さらに、用語「結合された」および「関連付けられた」は、電気的に、電磁的に、および/または物理的に(例えば機械的にもしくは化学的に)結合またはリンクされたことを一般的に意味し、具体的な逆の表現が存在しない限りは結合または関連付けられたアイテム間における中間要素の存在を排除しない。
【0162】
本明細書において、用語「近位の」は、ユーザに対してより近くにおよび植込み部位からさらに離れて位置するデバイスの位置、方向、または部分を指す。本明細書において、用語「遠位の」は、ユーザからさらに離れておよび植込み部位に対してより近くに位置するデバイスの位置、方向、または部分を指す。したがって、例えば、デバイスの近位方向動作は、ユーザに向かうデバイスの動作であり、デバイスの遠位方向動作は、ユーザから離れるデバイスの動作である。用語「長手方向の」および「軸方向の」は、別様のことが明示されない限りは、通常は近位方向および遠位方向である構成要素の長さ方向へと延在する軸を指す。
【0163】
本開示の発明の原理を適用し得る多数の可能な実施形態を鑑みて、図示する実施形態は、本発明の好ましい例にすぎず、本発明の範囲を限定するものとして見なされるべきではない点を理解されたい。さらに、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲により定義される。したがって、これらの特許請求の範囲および趣旨に含まれるあらゆるものを本発明として請求する。
【符号の説明】
【0164】
10 人工心臓弁、人工弁、弁
12 フレーム
14 弁構造体、弁尖構造体
16 構成要素封止部材、封止部材
20 弁尖
22 ストラット、フレームストラット
22a ストラット
22b ストラット
24 セル
26 流入端部
28 流出端部
30 流入エッジ
32 交連部
34 内方層
36 外方層
36a 下方テーパ状壁部セクション
36b 上方テーパ状壁部セクション
36c 中央壁部セクション
38 縫合糸
40 空間
42 開口
44 逆行性血液
50 交差部
52 中央セクション、中央部分
54 第1の長手方向エッジ部分
56 第2の長手方向エッジ部分
60 交連部タブ、タブ
60a 径方向延在層、タブ層
60b 周方向延在層
62 傾斜エッジ
64 接合エッジ
66 最内エッジ
70 流出表面
80 チューブ状本体
82 上方部分
84 下方部分
86 径方向バルジ
92 円筒状中央部分
94 平坦状上方部分、上方部分
96 平坦状下方部分
100 連結スカート
102 下方エッジ部分、弁尖エッジ部分、下方扇形状エッジ部分
104 本体
106a フラップ
106b フラップ
108 ステッチ
109 環状内方スカート
110a 折畳み部分
110b 折畳み部分
112 ステッチ
114 曲げ軸
116 対角線方向ライン、対角線方向列
120 スリット
124 第1の層、第1のスカート層
126 第2の層
128 第1の弁尖層
130 第2の弁尖層
132 ステッチ
134 第3のスカート層
136 第4のスカート層
138 第5のスカート層
140 第6のスカート層
142 ステッチ
144 ステッチ
146 ステッチ
150 第1のスカート層
152 第2のスカート層
154 第3のスカート層
156 ステッチ
158 第4のスカート層
160 ステッチ
170 第1のスカート層
172 第2のスカート層
174 第3のスカート層
176 第4のスカート層
178 ステッチ
180 ステッチ
182 ステッチ
184 ステッチ
186 スリット
190 環状内方スカート
200 補強部材、補強縫合糸
202 連結スカート
202a 外方スカート層
202b 内方スカート層
204 内方長手方向エッジ部分、内方エッジ部分
206 外方長手方向エッジ部分、外方エッジ部分
208 ステッチ
210 外方スカート
212 ステッチ
216 頂点部
218 上方外方スカート
220 下方外方スカート
222 ステッチ
230 連結スカート
232 上方エッジ部分、中間部分上方エッジ部分
234 下方エッジ部分
236 ステッチ
238 ステッチ
240 接触領域
250 ループステッチ
252 ループステッチ
254 ループステッチ
300 弁尖、第2の弁尖
302 下方エッジ部分、弁尖エッジ部分
304 一体下方タブ、下方タブ
306 一体上方タブ、上方タブ、交連部タブ
306a 第1のタブ層、タブ部分、タブ層、第1の折畳み層、折畳みタブ層、折畳み層、タブ部分、層
306b 第2のタブ層、第2の折畳み層
308 水平方向折畳みライン、折畳みライン
310 第1の垂直方向延在補強部材、第1の補強部材
312 第2の垂直方向延在補強部材、第2の補強部材
314 ステッチ
316 外方折畳み部分
318 内方折畳み部分
320 補強部材、第3の補強部材
322 交連部装着部材
324 ステッチ
326 ステッチ
328 交連部
330 関節部分
332 内方エッジ
334 軸
338 側部エッジ、非装着側部エッジ
340 弁尖、上方タブ
342 垂直方向折畳みライン
344 垂直方向補強部材、補強部材
346 ステッチ
350 補強部材
352 交連部装着部材
354 ステッチ
400 弁尖
402 下方エッジ部分、エッジ部分
404 下方タブ
406 上方タブ、交連部タブ
408 間隙
410 下方タブ部分
412 上方タブ部分、タブ層
414 側部タブ部分
416 折畳みライン
418 補強部材
420 水平方向折畳みライン
422 交連部装着部材
424 ステッチ
426 外方折畳み部分
428 内方折畳み部分
430 交連部
432 ステッチ
434 内方端部
436 軸
438 補強部材
440 ステッチ
500 弁尖
502 下方エッジ部分
504 下方タブ
506 上方タブ、交連部タブ
508 間隙
510 下方タブ部分
512 上方タブ部分
514 折畳みライン
516 垂直方向折畳みライン
518 第1の層
520 第2の層
522 第3の層
524 第4の層
526 補強部材
528 交連部装着部材
530 中央外方部分
532 外方端部部分、端部部分
534 側部部分
534a 第1の材料層
534b 第2の材料層
536 ステッチ
538 ステッチ
540 側方延在ステッチ
542 対角線方向に延在する列のステッチ
544 内方スリーブ
544a 第1の部分
544b 第2の部分
546 外方支持部材
548 上方端部
554 補強部材
600 人工弁
602 封止部材
604 内方層
606 外方層
608 三角形部分
610 上方エッジ部分
612 上方エッジ部分
614 空間
700 人工弁
702 封止部材
704 内方層
705 薄ストリップ
706 外方層
708 三角形状部分、三角形部分
710 上方エッジ部分
714 空間
800 人工弁
802 封止部材
804 内方層
806 外方層
808 三角形状部分
810 交連部
812 交連部装着部材
814 弁尖
816 下方エッジ部分、弁尖エッジ部分
818 下方タブ
819 側部エッジ
820 一体上方タブ、上方タブ、交連部タブ、側方延在間隙、凹部
820a 第1のタブ層
820b 第2のタブ層
824 折畳みライン
826 垂直方向補強部、補強部、補強部材
828a 第1の側部部分
828b 第2の側方部分
830 中央部分
832 外方周縁エッジ
834a 第1の周方向延在層
834b 第1の径方向延在層
836a 第2の内方周方向延在層
836b 径方向延在層
838 内方層
840 中間層
842 外方層
844 ステッチ
846 小間隙
848 ステッチ
850 上方タブ
852 下方タブ
854 頂点部
856 交差部
860 連結スカート
860a 中央部分
860b 側部部分
862 スリット
864a 折畳み層
864b 折畳み層
866 補強コード、補強部材
868 ステッチ
870 縫合糸
872 ステッチ
874 縫いステッチ
900 人工弁
902 第1の層
904 第2の層
906 交連部
908 第1の部分、ダイヤモンド形状部分、セクション
910 三角形状部分、セクション
912 交差部
914 位置
1000 人工弁
1002 ダイヤモンド形状部分
1004 三角形状部分
1006 交連部
1100 人工弁
1102 封止部材
1110 交連部
1112 交連部装着部材
1114 弁尖
1116 弁尖エッジ部分
1118 各連結スカート
1120 第1の層、弁尖層
1122 第2の層
1124 第3の層
1126 補強部材
1128 中央部分
1130 側部フラップ
1132 折畳み層
1134 折畳み層
1136 縫合糸
1140 凹状側部エッジ
1142 下方タブ
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図10A
図11A
図11B
図12
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25A
図25B
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
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図40
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図49
図50
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図52
図53
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図58
図59
図60
図61
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図63
図64
図65
図66
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図68
図69
図70
図71
図72
図73
図74
図75A
図75B
図76
図77
図78
図79
図80
図81
図82
図83
図84
図85
図86