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7091318リポ酸コリンエステル組成物及び医薬的に適切な製剤中で安定化させる方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】リポ酸コリンエステル組成物及び医薬的に適切な製剤中で安定化させる方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/385 20060101AFI20220620BHJP
   A61K 47/69 20170101ALI20220620BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20220620BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
A61K31/385
A61K47/69
A61K9/08
A61K47/10
A61K47/02
A61K47/18
A61K47/38
A61P27/02
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019515804
(86)(22)【出願日】2017-09-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-12-05
(86)【国際出願番号】 IB2017055775
(87)【国際公開番号】W WO2018055572
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】62/398,748
(32)【優先日】2016-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100194423
【弁理士】
【氏名又は名称】植竹 友紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】バルマン,シクハ ピー.
(72)【発明者】
【氏名】バルマン,コーシック
(72)【発明者】
【氏名】バーンズ,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】クロウフォード,キャスリン
(72)【発明者】
【氏名】クロムウィック,アン-マリア
(72)【発明者】
【氏名】ウォード,ケビン
【審査官】今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/134510(WO,A1)
【文献】特表2008-524124(JP,A)
【文献】特表2005-530866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポ酸コリンエステルの医薬塩を0.1~10重量%と、ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリンを1~重量%と、張度調整剤を0.1~2重量%と、増粘剤を0.1~0.5重量%と、アミノ酸又はその誘導体、糖又はその代謝物、および脂質から選択される生化学的エネルギー源を0.05~約1.0重量%と、と、を含む、眼科用組成物。
【請求項2】
張度調整剤は、グリセロールを含む、請求項に記載の組成物。
【請求項3】
張度調整剤は、塩化ナトリウムを含む、請求項に記載の組成物。
【請求項4】
メチオニン、システイン、及びヒスチジンからなる群から選択される安定剤を更に含む、請求項1~のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
生化学的エネルギー源は、アラニンを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
ポ酸コリンエステルの医薬塩は、塩化物又はヨウ化物である、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
0.003~0.010重量%の防腐剤をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
防腐剤は、塩化ベンザルコニウムを含む、請求項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物は、防腐剤を含まない、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
増粘剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリンの、リポ酸コリンエステルの医薬塩に対するモル比率(ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリン/リポ酸コリンエステルの医薬塩)が、1または1.5である、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の眼科用組成物の製造方法であって:
A.ポ酸コリンエステルの医薬塩を微粉砕することと、
B.不活性ガスで5ppm未満まで脱酸素化した水に粉砕されたリポ酸コリンエステルの医薬塩および前記組成物の他の成分を加えて成分の混合物を形成することと、
C.室温下に前記成分の混合物を激しく混合することと、
D.混合した前記成分を眼科用ボトルに充填して前記ボトルをキャップすることと、
E.前記充填を行いキャップをした眼科用ボトルを脱酸素剤及び不活性ガスを含むガス不透過性金属箔小袋に包装することと、
F.された金属箔小袋を2~8℃で保管することと、
を含む方法。
【請求項13】
前記成分の混合物のpHを4~5のpH範囲に調整する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記混合は、窒素雰囲気下または周囲空気下で行われる、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
包装された金属箔小袋は、窒素置換もされている、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記リポ酸コリンエステルの医薬塩を、平均サイズが5mm以下の微粉末に粉砕する、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
水の脱酸素化の水準が、2ppmである、請求項12~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
混合温度は20~25℃である、請求項12~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記成分を8時間混合する、請求項12~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記不活性ガスは窒素である、請求項12~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記眼科用ボトルは、成形同時充填された器具である、請求項12~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記金属箔小袋はマイラー金属箔小袋である、請求項12~21のいずれか一項に記載に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、リポ酸コリンエステルを含む医薬品適合性を有する組成物、及び特定の組成物、並びにこの組成物を安定化させ、点眼薬として適用した場合の眼組織への刺激を最小限に抑えるための方法に関する。本明細書における組成物は(これらに限定されるものではないが)、老視、ドライアイ、白内障、及び加齢性黄斑変性症等の眼疾患の療法として意図されたものである。
【背景技術】
【0002】
リポ酸コリンエステル(LACE)は、化学的に合成されたR-α-リポ酸の誘導体である。
【0003】
チオクト酸としても知られるリポ酸は、6位及び8位の炭素を結合して1,2-ジチオラン環を形成するジスルフィド結合を有する炭素数8個の脂肪酸である。この酸は、R-α-リポ酸の異性体のうち最も生物学的活性の高い光学異性体を形成する。
【0004】
リポ酸コリンエステル(LACE、化学構造は図1参照)は、カチオン性のコリン頭部を組み込むことによって生体膜を透過するように設計されている。リポ酸は角膜を透過しないが、リポ酸のコリンエステル誘導体は角膜を透過し、角膜のエステラーゼにより加水分解され、生物学的に活性なリポ酸に変換される。LACEは老視治療用の点眼薬として、1日2回適用される点眼液に配合されている。
【0005】
リポ酸及びコリンからなるプロドラッグであるLACEは、老視を治療する独特な分子である。リポ酸(LA)は有効成分であり、コリン頭部は眼内への透過を助ける役割を果たす。点眼薬を投与した後、LAとコリンとの間の結合は涙膜及び角膜内のエステラーゼにより加水分解される。遊離リポ酸は眼内に侵入し、最終的に水晶体に到達する。ここで内在の酸化還元酵素がこれをジヒドロリポ酸に還元し、次いでジヒドロリポ酸が表層の細長い水晶体細胞内の細胞質タンパク質を加水分解する。こうしてタンパク質が切断されることにより、細胞質ゾルが自由に流動し、加齢による水晶体の硬化に関与する酸化過程が逆戻りする。LACEから調製された点眼液が遠近調節を可能にし、老視、即ち、加齢に伴い遠近調節力が減退した人の近見に焦点を合わせる力を改善することが期待されている。
【0006】
老視は、加齢に伴い近方の物体に焦点を合わせる力が喪失することである。この状態は、水晶体の微細構造が生理学的に変化することによって起こり、その結果として、視対象に焦点を合わせるように焦点距離及び水晶体の曲率を自動的に調節する柔軟性が失われる。この状態は矯正レンズによって矯正される。リポ酸コリンエステル(「LACE」)(例えば、米国特許第8,410,462号明細書参照)が近見視力を回復させることができると報告されている。
【0007】
この主張は、ヒトのドナーから提供された水晶体においては、タンパク質ジスルフィドの還元剤であるジチオトレイトール(DTT)を用いることによって、及びマウスの水晶体においては、リポ酸を用いることによって、水晶体の軟化を薬理学的に誘導できることを実証したex-vivo研究によって支持されている。
【0008】
この作用機序によれば、多くの眼の疾患及び障害の治療を考えることができる。このような障害として、これらに限定されるものではないが、老視、加齢性黄斑変性症、白内障、及びドライアイが挙げられる。
【0009】
LACEの配合を難しくさせる問題点は、ジチオラン結合が開環することによって分子の活性を損なう酸化化学種が生成し、不安定化する傾向にあった。LACEは室温で速やかに分解して酸化化学種になる(「HPLC Chromatogram of LACE Ophthalmic Solution with Degradation Products」参照、図2参照)。冷蔵温度で保管してさえも、製剤としての分子の有用性を含め、1週間という短期間の保管で急速に酸化が起こる。LACE点眼液(EV06点眼液とも称される)を、製剤としての最大限の能力を発揮させて利用するには、水性配合物を保管及び使用中に安定化させることが不可欠であった。
【0010】
LACE点眼液の医薬品としての開発を複雑化させる他の問題点は、ウサギ刺激モデルにおいて眼表面への刺激がin-vivoで観測されたことにあった。本発明は、眼刺激の一因又は原因となる予期しなかったパラメータと、これらのパラメータを排除又は最小限に抑えるプロセスとについて詳説する。これらのパラメータは、配合物の組成又は原薬の性質、通常は眼刺激と相関関係にあるか又はその原因となる因子とは関係がないものであった。
【0011】
ここに記載する組成物及び方法は、眼科用LACE配合物を長期間安定化させるための配合及び方法を説明するものである。
【0012】
特定のプロセス条件下に配合したLACE配合物の刺激性の原因に関する予期せぬ発見についても記載する。刺激性の原因は、水中でLACE塩分子が、疎水性相互作用の一部として周囲の水分子と相互作用すると共に、対イオンである陰イオン(塩化物イオン又はヨウ化物イオン)とイオン性相互作用することによって凝集することが関係していた。最終的に使用感のよい(comfortable)LACE塩化物の点眼液(EV06点眼液)を生成させる決定的なプロセスパラメータを重要な因子として特定した。塩化物塩の場合、最終プロセス条件によって、分解化学種の生成が最小限に抑えられると共に、眼刺激の原因となる化学種の生成が最小限に抑えられた。
【0013】
LACEヨウ化物の場合、単純なプロセスの最適化では使用感のよい溶液は得られなかった。塩形態がヨウ化物であった場合、LACEが凝集した化学種は、ヨウ化物イオンがより大きいことから凝集した化学種が安定化してしまったため、分散させることができなかった。
【0014】
ヨウ化物塩の場合は、一旦水溶液に溶解すると、一度形成された凝集体を分散させることができず、LACEヨウ化物塩のピークの約39~41%が熱力学的に安定な凝集化学種として沈降した。会合性化学種と眼刺激との間に相関関係が認められた。本発明の第2の態様は、シクロデキストリン中に包接複合体を生成することによるLACEヨウ化物製剤の安定化である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ここに提案する発明により、2つの主目的:(a)2~5℃の冷蔵保管温度で少なくとも1年間安定なLACEの点眼液を生成すること、及び(b)眼刺激のない配合物(LACE塩化物及びLACEヨウ化物の両方)を生成すること、が達成される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
LACEの化学構造には決まった2つの分解点がある。1つはジオチオラン環の開環であり、他は酸化的及び加水分解的な分解である。上に述べたように、LACEは酸素と相互作用して速やかに酸化化学種を生成する。水中では、LACEのエステル結合も加水分解を受けやすく、リポ酸とコリンを生成する。加水分解が起こる速度と温度には相関関係がある。加水分解は、温度とpHがより低い方が起こりにくい。
【0017】
EV06点眼液とも称されるLACE誘導体の点眼液を、ガス透過性を有する透過性LDPE点眼ボトル内に保管して試験を実施した。本明細書においては、本発明者らが開発した、配合後のLACE溶液の保管中における酸化を最小限に抑える方法を記載する。
【0018】
加えて、LACEに製剤添加物(excipient)を混合した混合物について広範な配合変化試験を行うことにより、安定化因子となる特定の製剤添加物の重要性、水中でLACEを加水分解に対し安定化させるためのpHの役割に加え、塩化ナトリウムやグリセロール等の重量モル浸透圧濃度調整剤の効果を確認した。最も重要なことであるが、クエン酸塩、リン酸塩、及びホウ酸塩とは異なる、アラニンのLACEに対する安定化効果を、ここに提案する発明において記載する。
【0019】
刺激の原因を模索する際に、LACEを水に溶解すると、両親媒性の性質を持つ化合物に一般的な、ミセル及びミセル状凝集体を形成することを見出した。定義として、ミセル形成性化合物の例としては、ホスファチジルコリン、PEG修飾ホスファチジルコリン、PEG-ステアリン酸エステル、ソルビトール等が挙げられる。LACEがミセルを形成する現象は、この分子が両親媒性の性質を有するため予想外なことではなかったが、より低い温度でこれらが凝集体を形成することは驚くべきことであった。凝集体の存在は、自社開発のRP-HPLC法によって測定した。測定はHPLC-UV及びHPLC-ELSDの両方で実施することができた。LACEの塩化物塩及びヨウ化物塩は両方共水溶液中でミセル状凝集体を形成するが、LACEヨウ化物の方が、対イオンであるヨウ化物イオンとカチオン性のLACE分子との相互作用がより強力であるため、水中でより安定性の高い凝集体を形成する。LACEヨウ化物凝集体の平衡濃度はAPIピークの39~41%である。これと比較すると、攪拌しながら分散させた後のLACE塩化物の平衡濃度は<1%である。
【0020】
A.水溶液中のLACE塩化物
LACE塩化物水溶液は冷蔵温度(2~5℃)でゲル様構造を形成した。これらのミセル状集合体の数及び凝集は、ミセル形成性薬物濃度の増加と共に増加することも予想される。本発明者らは、LACEのミセル状凝集の程度と眼表面刺激とが相関関係にあることを見出したが、不溶性化合物の薬物送達系にミセル状の媒体を使用することが考えられることが多いため、これは予期せぬ驚くべき結果であった。つまり、これは刺激とミセル状凝集体との間に相関関係があることを説明する最初の報告である。このことを見出した後は、使用感と相関させるために、この現象を配合方法を介して最小限に抑えることが必要となった。
【0021】
ミセル状凝集体の形成は、配合温度と相関関係にあるようであった(図4)。自己集合体の形成は熱力学的現象であり、最小のエネルギー状態に到達するために表面自由エネルギーを効率的に低下させることが関係している。LACEをより低い温度(5℃)で水中で配合すると、ゲル様の粘稠性を有する凝集体を形成した。冷蔵温度で配合した組成物は眼刺激性が極端に高かった。凝集状態はRP-HPLC法(図12A~12Bのクロマトグラム参照)により定量化することが可能であった。一連の調査目的の実験において、広範なサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)にて測定したところ、重合体も低重合体も存在しないことが示された。他の調査においては、周囲空気の存在下又は窒素の存在下にプロセスを実施して眼刺激に関する試験を行った。空気又は窒素と刺激性との間に相関関係は見られなかった。室温で配合した場合はどちらも同程度に使用感がよかったが、空気が存在した方が分解物は多かった。HPLC法で定量化したところ、LACEを室温で配合した方がミセルの凝集は少なかった。室温で配合したLACEは使用感がよく刺激性のない溶液を生成した。
【0022】
同じく予期しなかったのは、ミセル凝集体の「もつれが解ける(disentangling)」ことであった。HPLCで測定したところ、LACEの水性組成物中で生成した凝集体は、溶液が平衡化するように室温で卓上に放置することにより、「もつれを解く」ことができた。更なる実験を行うことにより、激しくかき混ぜることによって脱凝集することが示された。したがって、これらの化学種は共有結合している永続的な化学種ではなく、LACEが自己集合した凝集体であり、5℃よりも室温下の方が濃度が低いようであることが判明した。LACE水溶液を凍結させると、糸を引く粘稠性が生じた。この溶液を室温に戻して同温度で保管すると、再び均質な溶液になったように見え、したがって、自己集合が温度依存性を示すという概念の信用性が更に高まった。
【0023】
更に、配合後は、LACEの凝集体を含まない溶液を、酸化的及び加水分解的な分解を最小限に抑えるために冷蔵条件下に保管することができる。安定性試験を通して、LACEの分解現象を最小限に抑えるために理想的な保管温度は2~5℃であることが確認された。
【0024】
最も刺激の少ない溶液が得られる理想的な配合条件は、室温(22~25℃)下であると確認され、安定且つ使用感のよいLACEの老視用点眼液が得られる理想的な保管条件は2~5℃と確認された。
【0025】
LACEから調製された点眼液の安定化を更に支援するために、酸化により誘導される分解を防止するためのLDPE製眼科用ボトルと一緒に脱酸素剤の小包を、マイラー(mylar)製の不透過性小袋(impermeable pouch)に装入した。広範な安定性試験を行うことにより、EV06点眼液で1年間の安定性が達成されることが実証された。
【0026】
ここに提案する発明には、リポソームの水性製剤、薬物の安定化を主目的として配合したエマルション等の他の形態を含む、LACEを安定化させる様々な組成物の実施形態も記載する。
【0027】
B.水溶液中のLACEヨウ化物
水溶液中のLACEヨウ化物はミセル状凝集体を形成(LACE塩化物と同様に)し、これが眼組織を刺激する原因となる。次に示す実験にミセル化を阻害する幾つかの配合方法を記載する。
【0028】
塩化ナトリウムを既存のLACEヨウ化物配合物に添加するか、又は塩化ナトリウムを含有する溶液を使用してAPIであるLACEヨウ化物を溶解した実験において、「会合性化学種」のピークは大きく低下しなかった。
【0029】
APIを懸濁させるために水性媒体に添加する前に、エタノール又はプロピレングリコール等の共溶媒を使用する実験においては、会合性化学種の比率が著しく低下した。既存の配合物に有機溶媒を添加することも、程度は小さいが、会合性化学種のピークを低下させた。
【0030】
これらの結果は、LACE分子間の疎水性相互作用を妨げることができる、会合性化学種を制御する手段としての配合戦略を示唆するものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、リポ酸コリンエステル(LACE)の化学構造を示すものである。
図2図2は、1、3、及び4時間かき混ぜた配合物KW-LACE-01-86-2の、8.1分に現れるLACEのミセル状化学種のチャートを示すものである。
図3図3は、6、8、及び24時間かき混ぜた配合物KW-LACE-01-86-2の、8.1分に現れるLACEのミセル化学種のチャートを示すものである。
図4図4は、冷蔵温度で混合するとLACEのミセル状化学種が最大となることを例示するチャートである。
図5-1】図5図5Aは、ミセル状LACE濃度(HPLC反応追跡における7.9分及び8.5分の間の大きなピークで示される)の高さと、LACE塩化物の凝集塊との間に相関関係があることを例示するチャートであり、図5Bは、ミセル状LACE濃度がより低いことと、凝集塊化していないLACE塩化物との間に相関関係があることを例示するチャートである。
図5-2】(上記の通り。)
図6図6は、アラニンの効果をpH毎に例示するグラフである。
図7図7は、BACを含まない配合物及びグリセロールを含まない配合物の安定性を示すグラフである。
図8図8は、亜硫酸塩を含む配合物の安定性を示すグラフである。
図9図9は、BACを含まないLACE組成物の安定性を示すグラフである。
図10図10は、グリセリンを含まないLACE組成物の安定性を示すグラフである。
図11図11は、緩衝化された組成物がLACEの安定性に与える効果を示すグラフである。
図12-1】図12図12Aは、刺激スコア(ウサギ刺激モデルにおける)とHPLC-UVにより測定されたLACEミセル状化学種(%)との間の相関関係を示すグラフであり、図12Bは、刺激スコア(ウサギ刺激モデルにおける)とHPLC-ELSDにより測定されたLACEミセル状化学種(%)との間の相関関係を示すグラフであり、図12Cはグリセロールの標準曲線を示すものである。
図12-2】(上記の通り。)
図12-3】(上記の通り。)
図13-1】図13図13Aは、NaCl 1.8%を添加した、LACEヨウ化物1.92%を含むFK-LACE-02-15(ロット092309)のHPLCチャートであり(T=0時間)、図13Bは、NaCl 1.8%を添加した、LACEヨウ化物1.92%を含むFK-LACE-02-15(ロット092309)のHPLCチャートであり(T=4時間)、図13Cは、NaCl 1.8%を含む、pH4.5の緩衝液に溶解したLACEヨウ化物(ロット011510)のHPLCチャートである。
図13-2】(上記の通り。)
図13-3】(上記の通り。)
図14図14は、78%エタノールに溶解したLACEヨウ化物(ロット011510)のHPLCチャートである。
図15図15は、10%プロピレングリコールに溶解したLACEヨウ化物(ロット011510)のHPLCチャートである。
図16図16は、スルホブチルエーテルシクロデキストリン中で配合したLACEヨウ化物のHPLCチャートである。
図17図17は、ミセル化を阻害するためにポリプロピレングリコールと一緒に配合したLACEヨウ化物のHPLCチャートである。
図18図18は、LACEヨウ化物の酸化に対するHP-β-CDの効果を示すグラフである。
図19図19は、LACEヨウ化物の不純物全体に対するHP-β-CDの効果を示すグラフである。
図20図20は、LACE塩化物の基本配合物とHP-β-CDを含むLACEヨウ化物とを比較したグラフである。
図21図21は、酸化化学種を生成する活性化エネルギーの計算(LACEヨウ化物/HP-β-CD含有配合物対LACE塩化物含有、HP-β-CD非含有配合物)を示すものである。
図22図22は、リポ酸生成の活性化エネルギーの計算(LACEヨウ化物/HP-β-CD含有配合物対LACE塩化物含有、HP-β-CD非含有配合物)を示すものである。
図23図23は、角膜透過性試験に用いたフランツセルを示すものである。
図24図24は、試験1におけるリポ酸の透過量(角膜1~3:HP-β-CD7.4%を含む、1.92%LACE-I、角膜4~6:HP-β-CDを含まない、1.5%LACE-Cl)である。
図25図25は、試験1におけるLACEの透過量を示すグラフである。
図26図26は、試験2におけるLACEの透過量を示すグラフである。
図27図27は、試験2において角膜から抽出されたリポ酸を示すグラフである(角膜1~3:LACEヨウ化物3.0%配合物;角膜4~6:LACEヨウ化物4.5%配合物)。
図28図28は、試験3におけるLACEの透過量を示すグラフである。
図29図29は、試験3において角膜から抽出されたリポ酸を示すグラフである(角膜1~3:LACEヨウ化物3.0%/HP-β-CD配合物;角膜4~6:LACEヨウ化物4.5%/HP-β-CD非含有配合物)。
図30図30は、試験4におけるLACEの透過量を示すグラフである。
図31図31は、試験4において角膜から抽出されたリポ酸を示すグラフである(角膜1~3:LACEヨウ化物1.92%/HP-β-CD配合物;角膜4~6:LACEヨウ化物1.92%/HP-β-CD非含有配合物)。
図32図32は、配合物中のHP-β-CDの量に応じた会合性化学種の面積百分率の経時変化を示すグラフである[LACE 1モルに対するモル当量(M.E)で表す]。
【発明を実施するための形態】
【0032】
A.用語の定義
「EV06」、「LACE」、又は「リポ酸コリンエステル」という語は、後に図1に示す化学構造を有するものと理解される。
【0033】
本明細書において用いられるLACE配合物とは、リポ酸コリンエステル配合物を指す。例えば、LACE塩化物1.5%配合物は、配合物の1.5重量%のリポ酸コリンエステル塩化物を有する配合物を指す。あるいは、EV06点眼液、1.5%は、1.5%のリポ酸コリンエステル塩化物塩を含む配合物を指す。LACEヨウ化物3%は、配合物の3重量%のLACEヨウ化物を含む溶液を指す。
【0034】
本明細書において用いられる、リポ酸コリンエステルの「誘導体」は、リポ酸コリンエステルを非水性の医薬製剤添加物(pharmaceutical excipient)と反応させることにより生成する、リポ酸及びコリン以外の任意の化合物又は化合物の混合物として理解される。
【0035】
本明細書において用いられる「自己集合」という語は、熱力学的に最も安定なエネルギー状態を達成するために分子が集合することを意味する。自己集合の一例が、水中で、通常、疎水性部分及び親水性部分を有する分子によって形成される、ミセルである。分子の親水性部分はミセルの表面にあり、内部は疎水性部分を含む。LACEの場合、コリン頭部がミセル表面にある。
【0036】
特に記載がないか又は文脈から明らかでない限り、本明細書において用いられる「製剤添加物」という語は医薬的に許容される製剤添加物を指す。
【0037】
「治療(treating)」という語は、疾患又は障害に関連する状態、症状、又はパラメータを改善するのに有効な量、方法(manner)、又は様式(mode)で療法を施すことを指す。
【0038】
「予防」という語は、統計的に有意な程度まで、又は当業者が検出可能な程度まで、患者が障害を負うことを妨げること、患者をより長い期間障害のない状態のままにすること、又は障害の進行を止めることを指す。
【0039】
「治療有効量」という語は、対象の眼疾患又は障害(例えば、老視)の症状を予防若しくは発症を遅延若しくは回復させるか、又は所望の生物学的結果、例えば、遠近調節力若しくは疾患の状態を示唆する他の適切なパラメータの改善を達成する、有効成分(例えば、LACE又はその誘導体)の量を指す。
【0040】
本明細書において用いられる「保存安定性(shelf-stability)」又は「保存安定性を有する」という語は、保管中に組成物又は有効成分(例えば、LACE又はその誘導体)が実質的に変化しないという特徴を有すること、又はそれを特徴付けることと理解される。このような保存安定性を決定するための方法は公知であり、例えば、保存安定性は、配合物を一定期間保管した後に配合物中に残存しているか又は分解した組成物又は有効成分(例えば、リポ酸コリンエステル)の比率をHPLCで決定することにより測定することができる。例えば、保存安定性を有する医薬組成物は、医薬品規格(ICH)に従い保管した後、HPLC測定により、組成物中に有効成分(例えば、リポ酸コリンエステル)が少なくとも90%(例えば、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99%超)存在することを指す。
【0041】
本明細書において用いられる、化合物の「相対保持時間」又は「RRT」という語は、式「RRT=(t-t)/(t-t)」を用いて求めることができ、それぞれ、HPLCにより測定された、t=ボイド時間、t=リポ酸コリンエステルの保持時間、t=化合物の保持時間である。
【0042】
本明細書において用いられる「対象」という語は、一般に、健康なヒト又は特定の疾患若しくは障害(例えば老視)を有する患者等の動物(例えばペット)又はヒトを指す。
【0043】
LACE組成物及び実施形態
本明細書に記載するように、ここに提案する発明は、治療有効量のリポ酸コリンエステル、製剤添加物、緩衝剤を含む医薬組成物の実施形態と、適合性のある条件と、眼科用点眼薬として適した生体適合性(非刺激性)を有する安定な溶液を生成する方法及びプロセスと、を提供する。
【0044】
医薬組成物中のリポ酸コリンエステル又はその誘導体の濃度は、組成物の重量を基準として、0.01~0.1%、0.1%~10%(例えば、0.1%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、又はこれらの特定した数値に基づく任意の範囲)の任意の濃度とすることができる。幾つかの実施形態において、医薬組成物中のリポ酸コリンエステルの濃度は1%である。幾つかの実施形態において、医薬組成物中のリポ酸コリンエステルの濃度は3%である。幾つかの実施形態において、医薬組成物中のリポ酸コリンエステルの濃度は4%である。組成物中のLACEの好ましい範囲は1~3%である。この範囲内で好ましい組成物の範囲は1.5~5%である。LACEの塩形態は、ヨウ化物又は塩化物のいずれかとすることができる。
【0045】
他の実施形態において、提案する発明における有効な組成物は、LACE(塩化物又はヨウ化物)及びアラニンを含有する水性配合物であり、アラニンの濃度は、0.1~0.5%、0.5%~1%、1%~1.5%、1.5%~3%、1.5~5%の間にある。この範囲内で好ましい組成は、アラニン0.5%及びLACE1.5%である。他の好ましい実施形態は、アラニン0.5%及びLACEヨウ化物又はLACE塩化物1.5~4%である。
【0046】
好ましい実施形態において、有効なLACE塩形態及びアラニンを含有する組成物は、防腐剤として、30~150ppmの濃度の塩化ベンザルコニウムを含有する。
【0047】
他の実施形態において、有効なLACE塩形態及びアラニンを含有する製剤組成物は防腐剤を含まない。
【0048】
他の実施形態においては、ポリクオタニウム、ポリヘキサメチレンビグアナイド(PHMB)、sofZia等の他の防腐剤が、FDAによりヒトでの使用が承認されている濃度でLACE水性配合物に防腐剤として含まれる。他の防腐剤として、2-フェニルエタノール、ホウ酸、エデト酸二ナトリウムを用いることができる。
【0049】
水中に高濃度で溶解したLACE塩の自己集合ミセルの溶液はある程度の刺激作用を示す可能性があるので、生体適合性溶液を得るための方法として、リポソームへの内包を行うことができる。この場合、LACEはリポソームの内部に含有されることになる。リポソームは一般に眼表面と生体適合性を有する。他の例において、LACE塩は、スルホブチルエーテルシクロデキストリン又はヒドロキシプロピルベータシクロデキストリン等のシクロデキストリンと複合体を形成することにより内包されている。
【0050】
他の実施形態においては、医薬組成物は、グリセロールを0.1%~10%の濃度で含む。好ましい実施形態において、組成物は、グリセロールを0.1~5%の濃度で含む。
【0051】
幾つかの実施形態において、防腐剤は塩化ベンザルコニウムであり、生化学的エネルギー源はアラニンである。幾つかの実施形態において、リポ酸コリンエステルは、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物、硫酸イオン、メタンスルホン酸イオン、硝酸イオン、マレイン酸イオン、酢酸イオン、クエン酸イオン、フマル酸イオン、フマル酸水素イオン、酒石酸イオン(例えば、(+)酒石酸イオン、(-)酒石酸イオン、又はこれらの混合物)、酒石酸水素イオン、コハク酸イオン、安息香酸イオン、及びグルタミン酸等のアミノ酸の陰イオンからなる群から選択される対イオンを有する。
【0052】
適切な緩衝剤は、その医薬組成物に所望されるpH(例えば、本明細書に記載するもの)を達成することができる、当該技術分野において知られているもののいずれかとすることができる。非限定的な例としては、リン酸緩衝剤(例えば、一塩基性リン酸ナトリウム一水和物、無水二塩基性リン酸ナトリウム)、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、及びHBSS(ハンクス液)が挙げられる。緩衝剤の適切な量は、所望のpHに基づき容易に算出することができる。本明細書に記載する実施形態のいずれにおいても、緩衝剤の量は眼科用製品として許容される量である。しかしながら、幾つかの実施形態において、医薬組成物は緩衝剤を含まない。幾つかの実施形態において、水溶液又は最終医薬組成物のpHは、酸(例えば、塩酸)又は塩基(例えば、水酸化ナトリウム)を用いて所望のpH範囲(例えば、本明細書に記載するもの)に調整される。
【0053】
他の実施形態において、緩衝系は、ホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液、カルシウム緩衝液、並びにそれらの組合せ及び混合物から選択することができる。好ましい実施形態において、緩衝剤はアミノ酸緩衝液である。他の好ましい実施形態において、アミノ酸緩衝液はアラニンを含む。
【0054】
幾つかの実施形態において、リポ酸コリンエステルは、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、メタンスルホン酸イオン、硝酸イオン、マレイン酸イオン、酢酸イオン、クエン酸イオン、フマル酸イオン、フマル酸水素イオン、酒石酸イオン(例えば、(+)酒石酸イオン、(-)酒石酸イオン、又はそれらの混合物)、コハク酸イオン、安息香酸イオン、及びグルタミン酸等のアミノ酸の陰イオンからなる群から選択される対イオンを有する。他の対イオンは、ステアリン酸イオン、プロピオン酸イオン、及びフロ酸イオンである。
【0055】
幾つかの実施形態において、眼科用配合物のpHは4~8である。幾つかの実施形態において、眼科用配合物のpHは4.5である。幾つかの実施形態において、眼科用配合物は、生化学的に許容されるエネルギー源、防腐剤、緩衝剤、等張化剤、界面活性剤、粘度調整剤、及び酸化防止剤からなる群から選択される少なくとも1種の成分を含む。
【0056】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は酸化防止剤を含む。幾つかの好ましい実施形態において、酸化防止剤はアスコルビン酸塩を含む。他の好ましい実施形態において、酸化防止剤はグルタチオンを含む。好適な酸化防止剤は、当該技術分野において公知のもののいずれかとすることができる。非限定的な例としては、アスコルビン酸、L-アスコルビン酸ステアリン酸エステル、アルファチオグリセリン、エチレンジアミン四酢酸、エリソルビン酸、システイン塩酸塩、N-アセチルシステイン、L-カルニチン、クエン酸、酢酸トコフェロール、ジクロロイソシアヌル酸カリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、大豆レシチン、チオグリコール酸ナトリウム、チオリンゴ酸ナトリウム、天然ビタミンE、トコフェロール、アスコルビルパスチミネート(ascorbyl pasthyminate)、ピロ亜硫酸ナトリウム、ブチルヒドロキシアニソール、1,3-ブチレングリコール、テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)]プロピオン酸ペンタエリスリチル、没食子酸プロピル、2-メルカプトベンズイミダゾール、及び硫酸オキシキノリンが挙げられる。酸化防止剤の適切な量は、組成物の重量の0.1%~5%の範囲(例えば、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、又はこれらの特定した数値に基づく任意の範囲)とすることができる。本明細書に記載する任意の実施形態において、酸化防止剤の量は眼科的に許容される量である。
【0057】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、高純度窒素又はアルゴン等の不活性環境下で配合することにより調製される。好ましい実施形態において、医薬組成物は、2ppm未満の酸素を含む窒素環境下で配合される。
【0058】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、20~25℃の温度で配合することにより調製される。
【0059】
好ましい実施形態において、固体LACE分子は微粉末に粉砕される。好ましくは、固体LACE分子は、凝集塊のない粉末に粉砕される。一実施形態において、粒度は500ミクロン未満となるであろう。他の好ましい実施形態において、粒度は100ミクロン未満となるであろう。
【0060】
好ましい実施形態において、医薬組成物は、最初に水溶液を室温(20~25℃)に維持して脱気し、次いで溶液中に製剤添加物を溶解し、続いて穏やかに窒素散気しながら固体LACEを激しく溶解させながらゆっくりと少量ずつ加えることにより調製される。
【0061】
一実施形態において、医薬組成物は、4時間~24時間激しく攪拌される。好ましい実施形態において、医薬組成物は、4~8時間激しく攪拌される。他の好ましい実施形態において、医薬組成物は、8時間激しく攪拌される。
【0062】
いずれかの方法により調製された医薬組成物は、少なくとも3ヶ月間の(例えば、3ヶ月間、6ヶ月間、9ヶ月間、1年間、又は1年を超える)保存安定性を有することができる。
【0063】
医薬組成物はまた、5℃で一定期間保管した後の薬物関連分解物が、好ましいプロファイル(例えば、薬物関連不純物の総量、又は特定の薬物関連不純物の量)を示すことができる。配合物中の薬物関連分解物の量を測定するための分析ツール(例えば、HPLC)は公知である。
【0064】
好適な生化学的に許容されるエネルギー源は、当該技術分野において知られているもののいずれかとすることができる。例えば、生化学的に許容されるエネルギー源は、エネルギー代謝経路、特にグルコース代謝経路の中間体として参加することにより還元を促進できる任意のものとすることができる。好適な生化学的に許容されるエネルギー源の非限定的な例として、アミノ酸又はその誘導体(例えば、アラニン、グリシン、バリン、ロイシン、イソロイシン、2-オキソグルタル酸エステル、グルタミン酸エステル、及びグルタミン等)、糖又はその代謝物(例えば、グルコース、グルコース-6-リン酸(G6P))、ピルビン酸エステル(例えば、ピルビン酸エチル)、ラクトース、乳酸エステル、又はその誘導体)、脂質(例えば、脂肪酸又はモノ-、ジ-、及びトリグリセリド等のその誘導体並びにリン脂質)、及びそれ以外のもの(例えば、NADH)が挙げられる。生化学的に許容されるエネルギー源の適切な量は、組成物の重量の0.01%~5%の範囲(例えば、0.05%、0.1%、0.2%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、又はこれらの特定した数値に基づく任意の範囲)とすることができる。幾つかの実施形態において、生化学的エネルギー源はピルビン酸エチルである。幾つかの実施形態において、生化学エネルギー源はアラニンである。幾つかの実施形態において、ピルビン酸エチル又はアラニンの量は、組成物の重量の0.05%~5%の範囲(例えば、0.05%、0.1%、0.2%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、又はこれらの特定した数値に基づく任意の範囲)にある。幾つかの実施形態において、アラニンの量は、組成物の0.5重量%である。本明細書に記載する実施形態のいずれにおいても、生化学的に許容されるエネルギー源の量は、眼科的に許容される量である。
【0065】
適切な防腐剤は、当該技術分野において公知のもののいずれかとすることができる。非限定的な例としては、塩化ベンザルコニウム(BAC)、セトリモニウム、クロロブタノール、エデト酸二ナトリウム(EDTA)、ポリクオタニウム-1(Polyquad(登録商標))、ポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)、安定化されたオキシクロロ錯体(PURITE(登録商標))、過ホウ酸ナトリウム、及びSofZia(登録商標)が挙げられる。医薬組成物中の防腐剤の適切な量は、組成物の重量の0.005%~0.1%の範囲(例えば、0.005、0.01、0.02%、0.05%、0.1%、又はこれらの特定した数値に基づく任意の範囲)とすることができる。幾つかの実施形態において、防腐剤は塩化ベンザルコニウムである。幾つかの実施形態において、塩化ベンザルコニウムの量は、組成物の重量の0.003%~0.1%(例えば、0.003、0.01、0.02%、0.05%、0.1%、又はこれらの特定した数値に基づく任意の範囲)である。幾つかの実施形態において、塩化ベンザルコニウムの量は、組成物の0.01重量%である。本明細書に記載する実施形態のいずれにおいても、防腐剤の量は、眼科的に許容される量である。幾つかの実施形態において、医薬組成物は防腐剤を含まない。
【0066】
好適な等張化剤は、当該技術分野において公知のもののいずれかとすることができる。非限定的な例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、デキストロース、グリセリン、ポリプロピレングリコール、及びそれらの混合物が挙げられる。医薬組成物中の等張化剤の適切な量は、200~460mOsm(例えば、260~360mOsm、又は260~320mOsm)の重量モル浸透圧濃度を達成することができる任意の量である。幾つかの実施形態において、医薬組成物は等張化組成物である。幾つかの実施形態において、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム)の量は、組成物の重量の0.1%~5%(例えば、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、又はこれらの特定した数値に基づく任意の範囲)である。本明細書に記載する実施形態のいずれかにおいて、等張化剤の量は、眼科的に許容される量である。
【0067】
好適な界面活性剤は、イオン性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤を含む、当該技術分野において公知のもののいずれかとすることができる。有用な非イオン性界面活性剤の非限定的な例としては、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル(例えば、ポリソルベート80[ポリ(オキシエチレン)ソルビタンモノオレエート]、ポリソルベート60[ポリ(オキシエチレン)ソルビタンモノステアレート]、ポリソルベート40[ポリ(オキシエチレン)ソルビタンモノパルミテート]、ポリ(オキシエチレン)ソルビタンモノラウレート、ポリ(オキシエチレン)ソルビタントリオレエート、又はポリソルベート65[ポリ(オキシエチレン)ソルビタントリステアレート])、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、又はポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(例えば、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール[Pluronic F681]、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール[Pluronic P123]、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール[Pluronic P85]、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール[Pluronic F1271]、又はポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコール[Pluronic L-441])、ステアリン酸ポリオキシル40、ショ糖脂肪酸エステル、及びそれらの組合せが挙げられる。幾つかの実施形態において、界面活性剤はポリソルベート80である。医薬組成物中の界面活性剤の適切な量は、組成物の重量の0.01%~5%の範囲(例えば、0.05、0.1、0.2%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、又はこれらの特定した数値に基づく範囲)とすることができる。幾つかの実施形態において、界面活性剤はポリソルベート80であり、ポリソルベート80の量は、組成物の重量の0.05%~5%の範囲(例えば、0.05、0.1、0.2%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、又はこれらの特定した数値に基づく任意の範囲)にある。幾つかの実施形態において、ポリソルベート80の量は組成物の0.5重量%である。本明細書に記載する実施形態のいずれにおいても、界面活性剤の量は眼科的に許容される量である。しかしながら、幾つかの実施形態において、医薬組成物は界面活性剤を含まない。
【0068】
好適な粘度調整剤は、当該技術分野において公知のもののいずれかとすることができる。非限定的な例として、カーボポールゲル、セルロース系の試剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、ポリカルボフィル、ポリビニルアルコール、デキストラン、ゼラチングリセリン、ポリエチレングリコール、ポロキサマー407、ポリビニルアルコール、及びポリビニルピロリドン、並びにそれらの混合物が挙げられる。粘度調整剤の適切な量は、組成物の重量の0.1%~5%の範囲(例えば、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、又はこれらの特定した数値に基づく任意の範囲)とすることができる。本明細書に記載する実施形態のいずれにおいても、粘度調整剤の量は眼科的に許容される量である。幾つかの実施形態において、医薬組成物は粘度調整剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の高分子粘度調整剤)を含まない。
【0069】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、次に示す特徴の1又は2以上を有する:
(a)リポ酸コリンエステル塩を、組成物の重量の0.1%~10%(例えば、0.1%、1.0%、1.5%、3%、4%、5%、又は特定した数値の間の任意の範囲)の濃度で含む;
(b)防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム)を、組成物の重量の0.003%~0.1%(例えば、0.01%)の濃度で含む;
(c)生化学的エネルギー源(例えばアラニン)を、組成物の重量の0.1%~5%(例えば、0.5%)含む;
(d)グリセロールを、組成物の重量の0.5%~5%(例えば、2.7%)の濃度で含む;
(e)ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリンを、組成物の重量の1~20%の濃度で含む;
(f)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を、組成物の重量の0.1~0.5%の濃度で含む。
【0070】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、グリセリンを1~3重量%と、アラニンを0.5重量%と、塩化ベンザルコニウムを0.005~0.01重量%と、リポ酸コリンエステルを1~3重量%と、水と、から本質的になり、医薬組成物のpHは4.3~4.7である。
【0071】
幾つかの実施形態において、医薬組成物は、グリセリンを1~3重量%と、アラニンを0.5重量%と、ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリンを1~30%と、塩化ベンザルコニウムを0.005~0.01重量%と、リポ酸コリンエステルの医薬塩を1~3重量%と、水と、から本質的になり、医薬組成物のpHは4.3~4.7である。
【0072】
他の実施形態において、リポ酸コリンエステルの医薬塩形態は塩化物である。
【0073】
他の実施形態において、リポ酸コリンエステルの医薬塩形態はヨウ化物である。
【0074】
他の実施形態において、リポ酸コリンエステルの医薬塩形態は、これらに限定されるものではないが、塩化物、臭化物、ヨウ化物、メシラート、リン酸塩、トシラート、ステアリン酸塩、メタンスルホン酸塩の群に含まれる。
【0075】
他の実施形態において、増粘剤は、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンである。
【0076】
好ましい実施形態において、好ましい増粘剤は、濃度が0.1~0.5%のヒドロキシプロピルメチルセルロースである。
【0077】
他の実施形態においては、LACEを安定化させるために酸化防止剤が添加される。
【0078】
適切な酸化防止剤は、アスコルビン酸塩、グルタチオン、ヒスチジン、メチオニン、システインとすることができる。
【0079】
他の実施形態において、組成物のpHは4~5の間にある。
【0080】
一実施形態において、眼科用組成物は、対象の各眼に1日1回、1日2回、1日3回、及び1日4回投与される。
【0081】
幾つかの実施形態において、本発明は、水溶液中で水の影響を受けて加水分解しやすい有効成分(例えば、リポ酸コリンエステル又はその誘導体)を水溶液中に含む医薬組成物を保存するための系も提供する。好ましい実施形態において、医薬組成物はLDPE眼科用点眼ボトル内に保存され、充填プロセス中に窒素置換(overlaid)を行い、キャップをした後、脱酸素剤を含むマイラー製ガス不透過性小袋で二次包装する。
【0082】
他の実施形態において、点眼ボトル又は点眼器具は、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。他の実施形態において、点眼ボトルは、ガス透過性の低い材料から構成される。
【0083】
他の実施形態において、点眼ボトル又は点眼器具は、眼内に吐出するためのポリプロピレン製滴下チップを有するガラス製眼科用ボトル(ophthalmic bottle)である。
【0084】
他の実施形態において、点眼ボトルは、ガス透過性の低い任意の材料から構成することができる。他の実施形態において、点眼ボトルは、成形同時充填法によって充填された単位用量とすることができる。
【0085】
一実施形態において、医薬組成物は、2~5℃で3ヶ月間~2年間保存される。
【0086】
治療方法
リポ酸コリンエステル又はその誘導体を含む医薬組成物(例えば本明細書に記載するもの)は、酸化的損傷に関連する疾患又は障害を治療又は予防するための方法に使用することができる。酸化的損傷に関連する疾患又は障害は知られている。
【0087】
幾つかの実施形態において、本発明は、それを必要とする対象における眼疾患の治療方法であって、治療有効量の本明細書に記載する医薬組成物のいずれかを対象の眼に投与することを含む、方法を提供する。
【0088】
幾つかの実施形態において、眼疾患は、老視、ドライアイ、白内障、黄斑変性症(加齢性黄斑変性症等)、網膜症(糖尿病網膜症等)、緑内障、又は眼炎症である。幾つかの実施形態において、眼疾患は老視である。
【0089】
本明細書における眼疾患を治療又は予防する方法に用いるための医薬組成物の適切な量は、任意の治療有効量とすることができる。幾つかの実施形態において、この方法は、水晶体の遠近調節力を少なくとも0.1ジオプター(D)(例えば、0.1、0.2、0.5、1、1.2、1.5、1.8、2、2.5、3、又は5ジオプター)向上させるのに有効な量の医薬組成物を対象の眼に投与することを含む。幾つかの実施形態において、方法は、1~5滴(1滴当たり約40μL)の医薬組成物を対象の眼に投与することを含む。幾つかの実施形態において、対象の眼は、1、2、3、4、5回、又は5回を超えて、1回当たり1~5滴(1滴当たり約40μL)の医薬組成物で治療される。幾つかの実施形態において、対象の水晶体又は眼は、毎回1、2、3、4、5滴、又は5滴を超える医薬組成物で治療される。幾つかの実施形態において、対象の眼は、本明細書の医薬組成物を1日2回又は3回、各回1滴又は2滴(1滴当たり約40μL)で治療される。
【0090】
本方法は、あらゆる年齢の患者に実施することができる予防方法を含む。本方法は、あらゆる年齢の患者、特に20~75歳の患者に実施することができる治療方法も含む。
【0091】
以下の実施例は例示的なものであり、主張する実施形態の範囲を限定するものではない。
【実施例
【0092】
実施例1
リポ酸コリンエステル塩化物(LACE)の化学構造及び一般的性状
【化1】
【0093】
【表1】
【0094】
実施例2
LACE塩化物処理溶液の混合時間と相関させたミセル状化学種の動力学
本項に記載する実験は、LACE塩化物のミセル状化学種が25℃で長時間混合することにより安定化及び消滅することを示すものである。その結果から、これらの化学種が、ミセルやミセル状凝集体等の自己集合系に特徴的な可逆的性質を有することが示された。
【0095】
分子の自発的な自己集合によるミセル状化学種の形成は、平衡状態にある系の全自由エネルギーにより駆動される。この実験から、混合時間が長くなると平衡状態に到達するという動力学が示された。
【0096】
目的:
〇成長するミセル状化学種が安定化するか否かを確認することにより、処理時間の階層(process-time bracket)を確認する。
〇「保持時間(holding time)」を確認する。
【0097】
手順:
〇媒体に窒素をバブリングして脱酸素化した後、25℃でLACE塩化物1.5%を含む200gのバッチを2つ調製した。LACEを溶解する間は窒素のバブリングを継続した。
〇一方のバッチは、多量の凝集塊を有するGMP Batch #2(G2-14LAC)をそのまま使用して調製し、もう一方のバッチは、G2-14LACを乳鉢及び乳棒を用いて微粉末に粉砕した試料を使用して調製した。
〇LACEを溶解してpHを調整した後、継続的に窒素置換しながらバッチを24時間攪拌し、溶存酸素を約1.6ppm(vs.飽和溶解度8.2ppm)に維持した。1時間、3時間、4時間、6時間、8時間、9時間、及び24時間の時間点で約5~15mLをシリンジで抜き取り、濾過滅菌して点眼ボトル(5mL/ボトル)に装入した。ボトルは窒素置換しなかった(装置がバルクのバッチに使用中であったため)。
〇全ての時間点の試料を10mg/gに希釈し、バルク溶液から抜き取ってから30分以内に、ELSD検出を用いてRP-HPLC分析を行うために注入した。
〇24時間の時間点が経過した後、バルク溶液を濾過滅菌し、それぞれ約50mLの2つの部分に分割し、一方の分割分は5℃で保持し、もう一方の50mLの分割分は25℃に保持した。分割分は全て、容器内に窒素を吹き込んで窒素置換した。
〇更に24時間保持した後、各分割分を点眼ボトルに充填し、ボトルを窒素置換した。
【0098】
溶解の観察
〇G2-14LACの凝集塊化した部分を配合物KW-LACE-01-86-1に約5分間かけて加えた。凝集塊の一部は溶解させるのに更に20分間を要した。
〇粉末化したG2-14LACを配合物KW-LACE-01-86-2に約15分間かけて加えた。その理由は、スパチュラ一杯を加える毎に材料が凝集して表面に浮遊し、薄い浮遊物の塊となり、即座に分散しなかったためである。したがって、先に加えた分が渦流に吸い込まれるまで次の添加分を追加しなかった。各添加分が溶解するまでの時間は約10分間と推定され、全過程で約25分間を要した。
【0099】
結果
〇最初の採取時点から、両方の配合物においてRT=8分に明確なピーク(ミセル状化学種と相関)が認められた。
〇8分のピーク(ミセル状化学種)の面積%に関しては、2つのバッチ間に一貫した差は見られなかったが、幾つかの時間点においては、粉末化したLACE塩化物から製造した2番目のバッチの方がミセル状化学種の量が多かった。
〇8分のピークの面積%は、次表に示すように24時間後に大幅に低下した。
〇どちらのバッチも最終pHは4.54であった。
【0100】
【表2】
【0101】
この結果は、8.1分のLACE塩化物ミセル状化学種が長時間の混合により最小限に抑えられたことを示している。8.1分のピークは長時間混合することにより劇的に小さくなった。
【0102】
それぞれの溶液のリポ酸コリンエステルの分解物についても測定した。先に述べたように、LACEの分解機構は酸化的及び加水分解的なものであり、その結果として酸化及び加水分解された化学種が生成する。
【0103】
【表3】
【0104】
このデータは、混合時間が長くなるとLACEの分解物が増加することを示している。したがって、EV06点眼液を配合するための最終的なプロセス条件は、分解物を最小限に抑えながら非刺激性溶液を得るように、最大8時間という条件を含むものとした。
【0105】
LACEヨウ化物を用いて同様の混合実験を行ったところ、溶液の凝集を最小限に抑えることはできなかった。実際、LACEヨウ化物の場合、凝集した化学種は、8時間の混合を終えた後でもAPIの39%と高かった。
【0106】
実施例3
混合温度とLACE塩化物のミセル状化学種の存在との相関関係
図4に示すデータは、アルゴン中及び冷蔵条件下に配合したLACE塩化物の溶液のものである。溶液は眼表面に対する刺激が極めて強かった。ミセル状化学種の比率は、APIであるLACEの主ピークの8~10%(矢印で示した保持時間7.9~8.1分のミセル状化学種)であり、この濃度は室温で混合した溶液では普通は観測されないものである。
【0107】
実施例4
凝集塊とLACEミセル状化学種の形成との相関関係
図5Aは、固体の「凝集塊」を含んでいたLACE塩化物のバッチから調製したEV06点眼液のRP-HPLCクロマトグラムである。このロットのAPI(医薬品有効成分、固体LACE原薬)から調製した溶液は、LACEミセル状化学種(矢印で示す)の比率が、粉末状APIのロットから調製した溶液(図5B)よりも高かった(10~15%)。
【0108】
したがって、溶液は両方共完全に溶解しているように見えたが、凝集塊のないAPIから配合した溶液の方が、LACEミセル状化学種の濃度が低かった(図5B参照)。これを眼刺激と相関させると、図5Aに示す溶液の方がウサギモデルにおける刺激スコアが高かった。これに従い、配合前に、粉末状材料にするための凝集塊破砕(de-clumping)手順を組み込むことにした。
【0109】
実施例5
製剤添加物及びLACEの配合変化試験
概要
これらの実験の目的は、配合物組成及び微小環境(pH等)を体系的に変化させることにより、配合物を不安定化させる可能性のある変数を引き出すことにあった。リポ酸及びリポ酸の任意の誘導体は、熱、光、及び酸素中で分解及び重合しやすく、その結果としてジチオラン環が開環することになる。したがって、酸化に起因する切断によるフリーラジカルの生成(oxidative free radical scission)を誘導する可能性がある製剤添加物の存在は不安定化因子となる可能性がある。配合設計表(formulation grid)1及び2により、配合物に既に存在する製剤添加物に関し、不安定化の可能性がある因子としての作用を体系的に調査した。
【0110】
これらの実験におけるLACE配合物の組成は、原薬、アラニン、グリセリン、塩化ベンザルコニウムを精製水中に含み、pHを4.4~4.6に到達させるために1Nの水酸化ナトリウム又は1Nの塩酸を添加したものであり、重量モル浸透圧濃度は290~300mOsm/kgである。本文書に記載する実験は、LACE点眼液を安定化させることができる製剤添加物を見極めるための配合変化試験である。
【0111】
配合設計表1において、次に示す(a)~(e)で与える変数について試験を行った。窒素をフラッシュしたグローブボックス内で配合物を調製し、濾過滅菌した。全ての配合物は57℃の加速条件下に試験を行い、T=0、3.5日後、及び7日後に、分析及び不純物調査のためにHPLCを行った。設計表1では全部で19種の配合物を試験した。
(a)pHの効果:pH3.5、4、及び5の配合物を調製し、pH4.5の対照配合物と比較した。図6に示すように、LACEの分解速度は3.5~5の全てのpH範囲で同程度であった。
(b)アラニンの効果:配合物中におけるアラニンの役割を基本(original)配合物(対照)の分解速度と比較することにより推測した。図6に示すように、アラニンの非存在下ではLACEの分解速度が速くなるようであった。したがってアラニンは、EV06眼科用配合物に必要な製剤添加物である。
(c)塩化ベンザルコニウム及びグリセリンの効果:グリセリンに含有される過酸化物が酸化を触媒する可能性があるという仮説を立てた。同様に、BAKはフリーラジカルによる開裂に続いて酸化を起こさせるため、原薬を不安定化させる可能性があるという仮説を立てた。図7から分かるように、塩化ベンザルコニウムを含まない配合物は実質的に対照よりも安定であった。グリセリンを含まない試作配合物(prototype)も同様に、対照よりも安定であった。更に、配合物に加えた塩化ナトリウム(グリセロールの替わりに、重量モル浸透圧濃度調整用として)は、不安定化効果を有するようであった(同じく図7に示す)。グリセリン、塩化ナトリウム、亜硫酸塩、及びpHを様々に組み合わせた他の実験において(全ての変形形態は塩化ベンザルコニウムを含まない)、注目すべきは、塩化ベンザルコニウムを含まない配合物が全て対照よりも安定であったことである(図5)。図7及び図9に示す実験から、LACE中の塩化ベンザルコニウムを除去することが配合物を安定化させるための一つの方法となり得ることが示された。EV06眼科用組成物の場合、塩化ベンザルコニウムの含有量を最小限の50ppmにすることが主要な安定化因子となる可能性がある。塩化ナトリウムは不安定化作用を有することが示され、したがって、最終EV06組成物の等張化剤としては、グリセロールがより適していると考えられた。
(d)亜硫酸塩の効果:亜硫酸塩を使用し、様々な量の亜硫酸塩を組み合わせて様々な実験を行った(図8)。酸化防止剤としての亜硫酸塩を、様々なpH値(4、4.5)及び濃度で配合物に添加した(図8)。亜硫酸塩が存在してもLACEの安定性は実質的に向上しないようであった。配合物中の0.1%の亜硫酸塩は対照と同程度であるため、有害な影響があるか否かは不明であった。
(e)グリセリンの効果:グリセリンの効果を、グリセリンを体系的に除去することにより様々な配合の組合せで調査した。図7及び図10に示すように、グリセリンを含まない組合せは対照よりも安定しているようだった。しかしながら、塩化ナトリウムの不安定化効果が高いので、グリセリンを張度調整のために必要な製剤添加物として選択した。
(f)緩衝剤の効果:様々な緩衝化された組成物について試験を行った。酢酸緩衝液及び酢酸塩+ホウ酸が配合物を安定化させるようであった。
【0112】
実験
a)HPLC法の設定:HPLC分析は、(A)0.05Mの一塩基性リン酸ナトリウム、0.005Mの1-ヘプタンスルホン酸ナトリウム塩、0.2%v/vのトリエチルアミン(リン酸でpH4.5に調整);及び(B)アセトニトリルから構成される移動相による50分間のグラジエント溶出から構成されるものとした。分析カラムとしてYMC Pack ODS AQ(4.6×250mm、5μm、120Å)、P/N AQ125052546WTを使用し、分析用検出波長は225nmとする。
【0113】
b)配合
APIであるLACEが確実に酸素や熱に曝されないように注意を払いながら配合物を調製した。不活性N雰囲気のグローブバッグ内でAPIを清浄なガラスバイアルに分取し、アルミ箔(tinfoil)に包んで使用時まで-20℃の冷凍庫で保管した。配合物は高純度の製剤添加物及び滅菌されたガラス器具を用いて調製した。製剤添加物は全て原液を調製し、APIの添加及び最終pH調整を行う前に混合した。配合物を附録Aの表に示す。
【0114】
II.結果及び考察
図6は、57℃における%APIを時間(T=0から、3.5日後、及び7日後まで)に対しプロットしたものであり、pH3.5、4、4.5(基本配合物)、5で調製した配合物及び対照からアラニンを抜いた配合物を体系的に比較したものである。アラニンを含まない配合物は、T=0においてさえ、API含有量がかなり低下していた。図6から分かるように、配合物はこれらのpH3.5~5の条件下においては同等である。
【0115】
図7は、次に示す変形形態を比較する配合物のプロットである:(a)対照(基本配合) 対 対照に0.25%塩化ナトリウムを加えたもの、対照に0.25%塩化ナトリウムを加え、グリセリンを抜いたもの、(b)対照(基本配合) 対 対照から塩化ベンザルコニウムを抜いたもの、(c)対照(基本配合) 対 基本配合からグリセリンを抜いたもの。
【0116】
図7から分かるように、基本配合に塩化ナトリウムを添加すると配合物が安定化しなくなった。
【0117】
図8は、57℃におけるLACEの安定性に対する亜硫酸塩の効果を示すものである。亜硫酸塩含有配合物を、亜硫酸塩0.05%及び亜硫酸塩0.1%の濃度で、pH4及び4.5で調製した。亜硫酸塩を添加しても基本配合物は安定化しなかった。
【0118】
図9は、塩化ベンザルコニウムを抜くことによる安定化効果の可能性を更に模索したものである。塩化ベンザルコニウムを含まない変形配合物は、対照である基本配合物(pH4.5)よりも優れていた。変形配合物は、BAC非含有組成物(pH4、4.5)、グリセリン非含有/BAC非含有+0.9%塩化ナトリウム、BAC非含有+0.05%亜硫酸塩(pH4及び4.5)とした。
【0119】
図7及び図10は、pH、亜硫酸塩、及び塩化ナトリウムを変化させた様々な組成物におけるグリセリンの効果を比較するものである。塩化ナトリウム及び亜硫酸塩が存在する、グリセリン非含有、BAC非含有配合物、並びにグリセリン非含有、BAC含有配合物は基本配合物よりも優れていた。
【0120】
図11は、緩衝化した様々な組成物の使用をLACEの安定性に関し調査したものである。基本配合物(pH4.5)を、酢酸緩衝組成物及びホウ酸塩(pH7.5)と比較した。酸化防止剤として添加したエデト酸ナトリウムは配合物を安定化させなかった。酢酸緩衝液及び酢酸緩衝液+ホウ酸は対照配合物よりも優れているようであった。
【0121】
総括すると、塩化ベンザルコニウムを除くことにより一貫して安定性が向上するようであった。グリセロールを除くことも同様に好ましい手続きとなる可能性がある。グリセロールにはAPIを分解することもあるホルムアルデヒドが残存していることが知られている。興味深いことに、エデト酸塩又は亜硫酸塩を添加しても好ましい効果は見られなかった。アスコルビン酸ナトリウム等の他の酸化防止剤が好ましい効果を示す可能性がある。
【0122】
【表4】
【0123】
【表5】
【0124】
【表6】
【0125】
【表7】
【0126】
【表8】
【0127】
実施例6:
眼刺激とLACEミセル状化学種の比率との相関関係
図12A及び図12Bは、全体として、配合した複数種のバッチにおける刺激とLACEミセル状化学種との相関関係の全体像を示すものである。
【0128】
実施例7
グリセロールによる重量モル浸透圧濃度の調整方法
○薬物含有配合物及び偽薬に要求される重量モル浸透圧濃度範囲は280~320mOsm/kgである。好ましくは、全てのLACE配合物を290~310mOsm/Kgとすることが必要である。
○LACEは重量モル浸透圧濃度に寄与するので、各配合物毎に要求される重量モル浸透圧濃度を達成するためにグリセロール濃度を変化させることになる。
【0129】
I.総括:最終調整した組成物
【0130】
【表9】
【0131】
II.実験の詳細:
A.グリセロール含有偽薬
一連の偽薬を調製した。偽薬及び続いて調製したLACE含有溶液は全て、様々な量のグリセロールと一緒に、次に示すものを含む:
・アラニン0.5%(5mg/g)
・塩化ベンザルコニウム0.005%(0.05mg/g)
・pHを4.5に調整するための少量の1N 水酸化ナトリウム、1N 塩酸
・吸入用水(Water for Inhalation)(最終重量にするために添加)
【0132】
【表10】
【0133】
B.LACE含有配合物
図12Cに示す標準曲線と、LACE1%当たり44~55mOsm/kg(平均48mOsm/kg)の増加を示した配合データとに基づき、LACEの実際の浸透圧への寄与を確認するために一連の溶液を調製した。標的の全体の重量モル浸透圧濃度を300mOsm/kgとした。
【0134】
【表11】
【0135】
これらのデータは、重量モル浸透圧濃度に対するLACEの効果が予想よりも幾分高く、1%当たり57~60mOsm/kg程度であったことを示している。これに従い、LACEを含まない溶液の標的重量モル浸透圧濃度を僅かに変化させ、つまり標的グリセロール含有量を変化させることにより網羅的な(full)一連の溶液を調製した。全ての溶液は、偽薬に使用したものと同一のアラニン/塩化ベンザルコニウム(pH4.5)の原液を使用して調製し、したがって、最終組成物は全て次に示すものを含んでいた:
○アラニン0.5%(5mg/g)
○塩化ベンザルコニウム0.005%(0.05mg/g)
○pHを4.5に調整するための少量の1N水酸化ナトリウム、1N塩酸
○吸入用水(各配合物の最終重量が5.0gになるように添加)
【0136】
【表12】
【0137】
C.滅菌調製物
これらの実験結果に基づき、次に示す標的組成を有する配合物の濾過滅菌した10.0gのバッチをそれぞれ調製し、滅菌済の点眼ボトルに包装した(ボトル当たり2mL):
【0138】
【表13】
【0139】
実施例8
LACE塩化物の医薬組成物の調製方法
LACE医薬組成物の調製方法を次に示す:
○室温でバッチの重量の80%の注射用水(Water for Injection)(WFI)をガラス製配合容器に加える。酸素が≦10ppm(:S10ppm)になるように水中に窒素を通気する。
○アラニン、グリセリン、及びBAKを段階的に加え、溶解するまで混合する。
○HCl又はNaOHでpHを4.4~4.6に調整する。
○窒素中、LACEを乳鉢及び乳棒で粉砕することにより凝集塊をなくし、かき混ぜながらゆっくりと加える。
〇脱酸素処理した注射用水をバッチの最終標的重量に到達するまで加える。
〇確実に完全に分散及び溶解させるためにバッチを合計8時間かき混ぜる。
〇必要であれば、NaOH又はHClでpHを4.4~4.6に調整することができる。
〇必要であれば、グリセロールで重量モル浸透圧濃度を290~310に調整することができる。
〇8時間混合した後、EV06のバルク製剤の溶液を、capsule SHC 0.5/0.2μm滅菌用フィルタで濾過滅菌し、保存バッグに移す。
〇保存バッグ内のバルク製剤溶液を冷蔵又は氷浴内で5℃に維持する。
〇フィルタの完全性を確認するために濾過膜バブルポイント試験を行う。
〇濾過滅菌したバルク溶液をクラス100のルームに無菌的に移送し、滅菌済ボトルに充填する。
〇窒素置換して滅菌済チップ及びキャップをボトルに取り付ける。
〇密閉したボトルをトレイに移し、窒素通気したバッグに収容し、5℃の保管場所に速やかに移送する。
【0140】
実施例9
LACE塩化物配合物の安定性試験
先の試作配合物はエデト酸ナトリウム及び塩化ベンザルコニウムを0.01%含むものであった。これらの製剤添加物を含む及び含まない場合の安定性試験を実施したところ、エデト酸ナトリウムはLACEを安定化させないことが示された。過剰の塩化ベンザルコニウムが存在することにより薬物が僅かに不安定化した。したがって、最終配合物はエデト酸ナトリウムを含まず、塩化ベンザルコニウム0.005%を含むものとした。微生物試験を行ったところ、現行の配合物組成における0.004%塩化ベンザルコニウムは製剤の防腐剤として有効であることが示された。
【0141】
薬物配合物を更に安定化させるための試みにおいて、ボトルに詰めたEV06点眼液を、ジップロック式の水蒸気不透過性金属箔製小袋(foil pouch)に入れた脱酸素剤小包の存在下及び非存在下に、中規模のR&Dバッチにて体系的な安定性試験(5℃、25℃、及び40℃)を実施した。製品のボトルを、繰り返し開閉可能な金属箔製小袋内に脱酸素剤小包と一緒に入れて密閉し、5℃で保管したところ、12ヵ月間安定であることが示された。
【0142】
環境中酸素への曝露及び非冷蔵条件に起因する劣化に対し最終配合物を安定化させるための開発プロセスを通して更なる対策を実施した。原薬の取扱いは窒素下(酸素を排除し、水分を最小限に抑える)に行い、酸素への曝露を最小限に抑えるために窒素雰囲気下(nitrogen blanket)で配合を実施した。配合後、製品を水蒸気不透過性の保存バッグに充填し、その後、ボトル詰めが行われるまで冷蔵条件下に保管した。バルク溶液を含む保存バッグは充填時は低温に維持する。酸素曝露を最小限に抑えるため、各ボトルの薬物溶液上に窒素雰囲気を導入する。
【0143】
【表14】
【0144】
実施例10
LACEヨウ化物のミセル化を阻害するための配合試験
実験概要:
塩化ナトリウムを既存のLACEヨウ化物配合物に添加するか又は塩化ナトリウムを含む溶液を用いてAPIであるLACEヨウ化物を溶解するかのどちらの実験においても、「会合性化学種」のピークは大きく低下しなかった。
【0145】
水性媒体を添加する前にAPIを懸濁させるためにエタノール又はプロピレングリコール等の共溶媒を使用する実験において、会合性化学種の比率がかなり低下した。有機溶媒を既存の配合物に添加した場合も、程度は小さいが、会合性化学種のピークが低下した。
【0146】
この結果は、会合性化学種を制御する手段として、LACE分子間の疎水性相互作用を邪魔することができる配合戦略を示すものである。
【0147】
背景
LACEヨウ化物を用いて調製した様々な配合のバッチにおいて本発明者らがRP-HPLCによって観測した、APIのうち高比率を占める「会合性化学種」は、ミセル状凝集体であると考えられている。その根拠の一部は、LACE分子が界面活性剤様構造を有することと、LACE塩化物の場合は、この化学種が希釈又は更なる攪拌によって消散させることが可能であることとにある。
【0148】
塩化ナトリウムはミセルを崩壊させることが文献から知られている。したがって、塩化ナトリウムを添加するか、又は他の機構(例えば、疎水性相互作用)によって会合性化学種を崩壊させることが期待される他の成分を添加することにより、この「会合性化学種」を消散させることができるか否かについて一連の実験を行った。
【0149】
結果
この仮説に関する最初の試験として、大きな「会合性化学種」のピークを示すことが知られている既存の配合物(バッチFK-LACE-02-15)を、様々な量の塩化ナトリウム(NaCl)を含む溶液と混合した。最終的な希釈されたLACE濃度は、RP-HPLC分析に適した水準になるようにした(LACEヨウ化物12.8mg/mL)。
【0150】
表10に、この一連の実験の重要な結果を示すが、塩(NaCl)の量が、眼内で許容でき得る量をはるかに超えてさえも(重量モル浸透圧濃度が非常に高いことによる)、会合性化学種の量は時間が経過しても大きく変化しなかった。
【0151】
配合物をアセトニトリルで同じ最終LACEヨウ化物濃度まで希釈し、アセトニトリルを全体の約33%にすると、会合性化学種の量がある程度低下し、36~40%の範囲から4時間で26%になった。
【0152】
【表15】
【0153】
次の一連の実験において、APIであるLACEヨウ化物を様々な方法で溶解し、これらの条件が初期の会合性化学種の生成を阻止することができ、したがって、化学種を時間と共に更に成長させる種を消滅させることができるか否かを確認した。試験を行った条件を次に示す。
【0154】
NaCl 1.8%を含むpH4.5の緩衝液(アラニン0.5%、BAK 0.005%)中に溶解。
【0155】
エタノールに溶解。APIは未希釈のエタノールには溶解せず、懸濁液が生成した。約22体積%の水性緩衝液(pH4.5)を加えると、若干加熱して37℃にすることによりAPIがほぼ完全に溶解した。
【0156】
プロピレングリコールに溶解/懸濁させた後、水性緩衝液(pH4.5)に溶解。最初にプロピレングリコールを加え、最終溶液の10重量%を占めるようにした。
【0157】
NaCl 0.6%及びプロピレングリコール(PG)1.5%を含むpH4.5の緩衝液に溶解。この目的は、電荷-電荷相互作用の崩壊(NaClによる)及び疎水性相互作用の崩壊(PGによる)が相乗効果を示すか否かを、それぞれの濃度を重量モル浸透圧濃度という観点で妥当であろう濃度として試験することにあった。
【0158】
表10に示すように、他の溶解実験と比較して、エタノール及びプロピレングリコールを用いた実験では、T=0において存在する会合性化学種を消滅させるか又は大幅に低下させることに成功した。APIを溶液に添加する配合操作ではなく、溶液をAPI粉末に添加したことが、これらの幾つかの場合においてT=0が高かったことの説明となり得るが、配合したバッチを調製した当日ではなかったことに留意されたい。
【0159】
【表16】
【0160】
実施例11
LACEヨウ化物のミセル化を崩壊させるためのシクロデキストリンを用いた配合試験
仮説
LACE分子間の疎水性相互作用を邪魔する製剤添加物を含有させることにより会合性化学種を軽減することができる。
【0161】
ポリプロピレングリコール、Dexolve-7(スルホブチルエーテル-ベータ-シクロデキストリン)、又はヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリンを含む配合物を調製し、会合性化学種及び関連物質を分析した。
【0162】
【表17】
【0163】
実施例12
HP-β-CD/Laceヨウ化物配合物中における安定性の向上
これらの実験は、HP-β-CD/Laceヨウ化物配合物により達成される安定性の向上をHP-β-CD非含有/Laceヨウ化物配合物と比較して示すものである。
【0164】
実験番号1
LACEヨウ化物を3%含み、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)を含む(HPβCD16.1%)か又は含まないいずれかの配合物を10g程度調製した。両方の配合物はアラニン0.5%、pH4.5、塩化ベンザルコニウム50ppm、及び重量モル浸透圧濃度調整用のグリセロールを含むものとし、全ての溶液をpH4.2~4.5とした。HP-β-CDを含む配合物においては、シクロデキストリンをLACE濃度に対し1.5:1のモル比で存在させた。配合物を0.2μmのPVDF膜で濾過し、各配合物5mLを10mL容のLDPE製点眼ボトルに充填した後、窒素雰囲気下に滴下ノズルを挿入し、ボトルをキャップで閉じた。充填時に点眼ボトルを不透過性小袋に装入しなかった。
【0165】
2種類の配合物を含む点眼ボトルを25℃の恒温インキュベーター内で保管し、各時間点で関連物質分析(HPLCによる)用に0.5mL(約10滴)を採取した。窒素雰囲気の補充は行わなかったので、採取を行う度にある程度の空気がボトルに流入した。この実験は、酸素から保護せずに連続的に試料採取を行った場合の室温(25±0.1℃)下における安定性に関する初期調査であった。
【0166】
図18は、25℃で20日間試料採取を繰り返す間に酸化されたLACE化学種が増加する時間経過を示すものである(正方形:LACE-I 3%配合物、HP-β-CD 16.1%;菱形:LACE-I 3%配合物、HP-β-CD非含有)。試料を採取する時間点はT=0、1日後、2日後、8日後、12日後、及び17日後とした。)
【0167】
これらのデータ(図18及び図19)は、シクロデキストリンが、LACEを酸化に対し、初期(その結果として、調製時点で酸化されたAPIの量がより少なくなる)及び加速的ストレス条件下(存在する酸素の量が増加する)の両方において保護したことを示している。HP-β-CDを含む配合物は、これらの条件下で17日間を通して不純物の合計量(リポ酸を含まない)が規格である≦2.0%を維持していた。20日後のリポ酸の濃度は約0.20%であった。
【0168】
実施例13
LACE塩化物の臨床用配合物及びLACEヨウ化物HP-β-CDの比較試験
臨床用LACE塩化物及び試作品であるLACEヨウ化物配合物(HP-β-CD対LACEのモル比1:1)の両方の安定性試験を行うために、配合物を濾過し、LDPE点眼ボトルに充填し、窒素雰囲気にした後、脱酸素剤を含む不透過性金属箔製小袋に装入した。開始時点ではある程度の酸素が依然として小袋内に存在していると思われる。しかしながら、T=0の後の最初の時間点以降は、酸化されたLACE化学種の増加は高温下でさえも停止した。これは残存酸素が枯渇したためと考えられる(図20)。酸化したLACE塩化物の化学種の増加速度は25℃の方が5℃よりも僅かに高かったが、大きな差ではない。
【0169】
HP-β-CDを含む試作品であるLACEヨウ化物配合物は、API溶解時に窒素雰囲気にしなかったにも拘わらず、開始時点における酸化LACEの量がより少なかった(LACEヨウ化物では約0.11%、これに対しLACE塩化物では0.3%)。臨床用LACE塩化物配合物の場合は、溶液を脱酸素処理し、溶解時も窒素雰囲気を維持した。
【0170】
更に、試作品であるLACEヨウ化物配合物を窒素雰囲気下に小袋に装入すると、酸化LACE全体の比率の上昇が非常に小さくなり、横這いになった。どちらの配合物も初期の上昇の度合いは温度に依存していた。したがって、各配合物の活性化エネルギーを、アレニウスモデルを用いて概算することができる。HP-β-CDを含む試作品LACEヨウ化物配合物の活性化エネルギーは、基本となるLACE-Cl配合物の3倍を超え(図21)、HP-β-CDがLACEを酸化に対し安定化させていることを更に示唆している。
【0171】
【表18】
【0172】
LACEを分解させる加水分解機構(その結果としてリポ酸が成長する)の活性化エネルギーも、安定性のデータから算出することができた(図22)。酸化機構とは異なり、LACE-Cl配合物及びLACE-I配合物の加水分解の活性化エネルギーは同程度であり(それぞれ65.6kJ/mol及び69.4kJ/mol)(図21)、シクロデキストリンが加水分解に大きな影響を与えないことを示唆している。
【0173】
実施例14
LACE塩化物及びLACEヨウ化物の角膜透過性試験
重大な疑問は、ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリン(HP-β-CD)と一緒に配合した薬物が、角膜組織を十分に透過し、角膜エステラーゼに到達して有効薬物であるリポ酸を放出することができるかどうかであった。先に述べたように、リポ酸はこの適応症:即ち老視に有効な薬物である。
【0174】
次に示す実験により:(a)異なる濃度のヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)を含むLACEヨウ化物配合物を用いた、仔ウシ角膜に対するリポ酸コリンエステル(LACE)の透過性、及び(b)LACE塩化物対LACEヨウ化物の相対的な透過性、を試験した。実験は図23に示すフランツ拡散セル装置を用いて実施した。
【0175】
これらの配合物からLACEを2種類の塩:LACE塩化物及びLACEヨウ化物の一方として送達する。LACEはプロドラッグであり、角膜バリアを通過して輸送された後、眼内エステラーゼの作用及び生理学的条件下における薬物化合物の受動的(passive)加水分解によって有効薬物であるリポ酸に加水分解される。したがって、透過性を評価するために、LACE及びリポ酸の両方の濃度を各時間点で分析した。
【0176】
【表19】
【0177】
手順:
a.無菌のクリーンベンチ内で仔ウシの眼球6個を切開する。
b.眼球から角膜を摘出し、無菌2回蒸留水で手短に濯ぎ、無菌培養皿内で、グルタチオン緩衝液(0.1%グルタチオン、酸化型、6mMリン酸ナトリウム、pH7、濾過滅菌済)3mLに浸す。
c.角膜を5℃に維持し、切除後24時間以内に使用する。
d.6個の5mL容の垂直型フランツ拡散セルを蒸留水及びイソプロパノールで洗浄し、組み立てる前にクリーンベンチ内で風乾させる。
e.小型のスターラーバーをレセプター液チャンバ内に装入する。レセプター液(0.1%Tween 20を含む5mMリン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)、濾過滅菌済)用のボトルを化学天秤で風袋を秤量し、4.5mLを各フランツセルに加える。開始時のレセプター液の正確な重量を記録する。
f.角膜からグルタチオン緩衝液をレセプター液で丁寧に洗い流し、ドナー側の台座(pedestal)に載せる。ドナー側チャンバを角膜に載せ、組立体全体を金属クリップで台座に固定する。この時点で試料採取用アームからレセプター液0.5mLを、流体の高さがアームの黒い目印の線に到達するまで追加する。この追加分の重量も記録する。
g.フランツ拡散装置を加熱装置に接続し、温度を37℃に昇温する。この温度に到達したら、配合物(「ドナー液」)をドナー側チャンバに加える。
h.ドナー液0.2mLを加える。ドナー側チャンバ及び試料採取用アームは、使用しないときは蒸発を防ぐために両方共パラフィルムで覆っておく。
i.試料採取はDrummondピペットを介して試料採取アームのみから行う。各時間点において各セルからレセプター液を200~300μL採取する。
j.試料を0.3mLのガラス製インサートを有する褐色ガラス製HPLCバイアル瓶に加えて秤量する。試料採取アームから抜き取った分を新たなレセプター液で補充する。
k.試料を採取する際は、レセプター側チャンバに気泡が混入しないよう、液面の高さが試料採取アームの付け根よりも低くならないようにした。2回の時間点の間に液が大量に蒸発したら、試料採取前に継ぎ足してそれを記録し、試料採取は通常通り行った。
l.試料はHPLC分析を行うまで5℃で保管した。
m.角膜をビーズミルでホモジナイズすることにより抽出した。
【0178】
試験1:この試験の目的は、LACEの角膜通過に対するHP-β-CDの効果を評価するために、LACEヨウ化物1.92%を含むAC-LACE-03-33の透過性を、ECV-23April15-112-08,Demo #6(Frontage、LACE塩化物1.5%)と比較することにある。LACE-I及びLACE-Clの分子量の差を考慮し、LACE濃度を等しくした。したがって、LACE塩化物1.5%配合物はLACEヨウ化物1.92%配合物に相当する。この実験にエステラーゼ阻害剤は使用しなかった。
【0179】
試験1の結果(図24及び図25)は、透過した製剤の大部分は、回収時点よりも前に、角膜通過中又はレセプター液中でLACEが加水分解されて生成したリポ酸であったことを示している。LACEヨウ化物配合物の場合、透過した化学種はほとんど全てがリポ酸であり、LACE塩化物配合物の場合は若干多めの分解していないLACEが透過した。これはある程度予測されていたことであり、その理由は、LACEヨウ化物分子のイオンサイズ及び分子量がLACE塩化物分子よりも大きいため、角膜中の滞留時間がより長くなる可能性があり、リポ酸に加水分解される程度がより高くなることにある。透過液はそれぞれ試料採取時に回収した直後に分析した。透過した薬物全体の比率はLACE-I含有配合物及びLACE-Cl含有配合物間で同程度であり、5~7%(LACE-Iの場合の極端に透過性が高かったものを除く)であった。
【0180】
試験2:この試験の目的は、LACE-I濃度の異なる2種類のLACE-I配合物の透過性を評価することにあった:AC-LACE-03-36(LACEヨウ化物3%/HP-β-CD 10.7%)及びAC-LACE-03-39(Laceヨウ化物4.5%/HP-β-CD16.1%)(図26及び図27)。
【0181】
試験2の結果は、レセプター液中に存在していた透過した薬物のほとんどはそのリポ酸形態であったが、先の試験よりも薬物濃度が高かったにも拘わらず、リポ酸濃度が低かったことを示している。薬物のかなりの部分が角膜組織内に含まれており、これは、この試験に利用したウシ角膜切片の厚みがより厚かった(試験2は約1.5~1.8mm、試験1は約0.6~0.8mm)ことに起因する。リポ酸の総量の1~5%の範囲が角膜組織から抽出され、AC-LACE-03-36(LACE-I 3.0%/HP-β-CD 10.7%)に曝された角膜から平均3.4%、AC-LACE-03-39(LACE-I 4.5%/HP-β-CD 16.1%)に曝された角膜から平均2.5%が抽出された。
【0182】
試験3:この試験では、HP-β-CDを含むLACEヨウ化物配合物及びHP-β-CDを含まないLACE塩化物配合物の透過性を調査した。この試験の目的は、先の試験2で得られたデータをベースとし、角膜層の透過にLACE濃度が支障を来すか否かを更に見極めるために、AC-LACE-03-39(LACE-I 4.5%/HP-β-CD 16.1%)及びECV-23April15-112-08(LACE-Cl 1.5%、HP-β-CDなし)のLACE角膜透過性の差を検証することにあった。
【0183】
接触していた角膜切片からのLACE/LAの抽出はビーズミルによるホモジナイゼーションにより行った。試験の結論としては、AC-LACE-03-39(LACE-I 4.5%/HP-β-CD 16.1%)に曝された角膜組織中に認められたリポ酸の質量の方が多いことが分かったが、送達されたAPI濃度の増加と比較して、角膜内の濃度の増加ははるかに小さかった(図28及び図29)。したがって、最も高い投与量である4.5%のLACE-Iは薬物の透過という観点では大きな利点をもたらさない可能性がある。
【0184】
試験4:この試験は、LACE塩を一定に維持したまま、ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリンが透過性に与える影響を比較するものである。この試験においては、試験対象(cohort)を両方共LACEヨウ化物とした。
【0185】
配合物はFK-LACE-02-32(LACE-I 1.92%、HP-β-CDなし)及びAC-LACE-05-21B(LACE-I 1.92%、1モル当量のHP-β-CD(7.4%))とした。この試験の目的は2通りあった。第1の目的は濃度の等しい2種類のLACE-I溶液を直接比較し、HP-β-CDの透過性への影響を直接検証することにあった。第2の目的は、角膜組織内における製剤の保持にHP-β-CDが与える影響を検証することにあった。
【0186】
この試験のデータは、HP-β-CDが薬物の角膜内保持に影響を与えないことを示唆しており、両方の配合物で、合計して平均7%のLA(リポ酸)が角膜切片から抽出された(図30及び図31)。
【0187】
角膜層を超えて透過するという観点では、FK-LACE-02-32に使用した3種の角膜全てにおいて、4~6時間で透過が進行したが、一方、AC-LACE-05-21Bに使用した角膜は1種のみが4時間の時点で透過を開始した。しかしながら、28時間後の製剤の平均透過量は同程度であり、FK-LACE-02-32ではLAの合計量が12.67±5.62%であり、AC-LACE-5-21BではLAの合計量が11.27±9.78%であった。角膜から抽出された濃度が同程度であったのみならず、28時間後の平均透過量が同程度であったことは、角膜組織へのLACE-Iの侵入にHP-β-CDが支障を来さないことを示している。
【0188】
全てのデータを総合して分析すると、LACEヨウ化物を、分子サイズがより大きいことや送達系(HP-β-CD)に起因して輸送が妨げられることなく、眼表面に投与することが可能であることを示している。更に、試験結果は、調査を行った全ての濃度において角膜を通じてLACEの輸送が効率的に行われることを示している。更に、LACEヨウ化物/HP-β-CD濃度の割にレセプター液中のリポ酸濃度が高いことは、角膜エステラーゼによりLACEがリポ酸に変換されたことを示している。これとは対照的に、LACE塩化物は、リポ酸及びLACEの混合物がより多く、これは分子量がより低いことに起因する可能性がある。
【0189】
実施例15
LACE-I:HP-β-CDのモル比に応じた会合性化学種
先の実験は、ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリン(HP-β-CD)が、水溶液中におけるLACE-Iのミセル化を阻害することができることを示していた。これらの実験から、LACEヨウ化物対ヒドロキシプロピルベータシクロデキストリンのモル比(熱力学的に安定な包接複合体を生成するのに必要なHP-β-CDを決定する。
【化2】
【0190】
この手法は、HP-β-CD内にLACEヨウ化物の完全な包接複合体を生成し、それによってLACE分子が凝集する機会を阻止するものである。LACEヨウ化物対HP-β-CDのモル比を変化させて数種の配合物のバッチを調製し、凝集性化学種の経時的な成長を分析した。配合物は5℃で保管した。逆相HPLCにより会合性化学種の生成を測定し、次いで主LACEピーク面積に対する面積百分率を記録した。
【0191】
LACE-I及びHP-β-CDの濃度が少なくとも1対1モル当量であった場合(図32に示すように)、会合性化学種の生成を阻止することができたという結果が確認された。
【0192】
実施例16
凝集性化学種及びIn-Vivo眼刺激の相関関係
実施例16ではin-vivoモデル(ウサギDraizeモデル)において会合性化学種の濃度と眼刺激との相関関係を確認した。データはLACEヨウ化物:HP-β-CDのモル当量の比が1:1又は1:1.5であった場合に、刺激スコアの平均が0~0.5を達成することができたことを示している。
【0193】
【表20】
【0194】
【表21】
【0195】
【表22】
【0196】
・試料採取を繰り返したため、及び/又は保管条件(脱酸素剤を含む金属箔製小袋不使用)のため、この配合物はある程度の酸化的分解が起こった。
・会合性化学種が増加したため(5℃で1ヵ月間)、重量モル浸透圧濃度は低下した。
【0197】
【表23】
【0198】
補足
・繰り返しの操作にも拘わらず、このロットでは関連物質は増加しなかった。
・これは、同時に同一保管条件下で安定性試験にも付したFK-LACE-02-32バッチ(シクロデキストリンなし)と好都合に比較され、酸化したLACE不純物は5℃及び25℃の両方でより多く増加したことを示している。
・この比較はシクロデキストリンがLACE分子を酸化からある程度保護する可能性を示唆している。
【0199】
【表24】
【0200】
【表25】
【0201】
【表26】
【0202】
【表27】
【0203】
【表28】
【0204】
【表29】
【0205】
【表30】
【0206】
【表31】
【0207】
【表32】
【0208】
【表33】
【0209】
【表34】
【0210】
【表35】
【0211】
【表36】
【0212】
【表37】
【0213】
【表38】
【0214】
【表39】
【0215】
【表40】
【0216】
【表41】
【0217】
実施例19
LACEヨウ化物製剤溶液を配合する方法
一般的なプロセス手順
LACE-I/HPbCD(HPMCなし)
1.ビーカーに、順に:WFI、アラニン、グリセロール、HP-β-CD、及び塩化ベンザルコニウム溶液(WFI中BAK0.005g/mL)を加える。
2.ビーカーにマグネチックスターラーを装入し、製剤添加物を合一する。
3.1NのHClを用いてpHをpH4.5に調整する。
4.ビーカーを、25℃に設定された加熱/冷却水循環装置に接続されたジャケット付き槽内に装入する(熱を伝導するために蒸留水をジャケット付き槽に加える)。Scilogix攪拌翼を沈めて約500RPMで攪拌する。
5.攪拌しながらAPIを少量ずつ加える。APIの添加が終了したら、配合物を45~60分間攪拌して確実に完全に溶解させる。
6.ビーカーを混合装置から取り出して秤量する。蒸発分を補うためにWFIを加える。
7.配合物を濾過する(0.2μM PVDF)。
【0218】
LACE-I及び0.23% HPMC(2種類の溶解プロセス)
A.溶液1:ヒプロメロース2910 1.16%(w/w)のWFI溶液
1.ビーカーにWFIを加える。
2.ビーカーを90℃に設定された加熱/冷却水循環装置に接続されたジャケット付き槽内に装入する(熱を伝導するために蒸留水をジャケット付き槽に加える)。Scilogix攪拌翼を沈めて約400RPMで攪拌する。
3.WFIが≧(2:)70℃に到達したら、ヒプロメロース2910の添加を開始して分散させる。攪拌速度を650RPMに上昇する。
4.HPMCを全て添加したら、加熱/冷却水循環装置の温度を10℃に低下し、攪拌を継続する。
5.溶液が冷却され、透明かつ粘性を示すようになったら、ビーカーを攪拌装置から取り出して秤量する。蒸発分を補うためにWFIを加える。
【0219】
B.溶液2:LACE配合物(HPMCなし)
1.ビーカーに、順に:WFI、アラニン、グリセロール、HP-β-CDを加える。
2.ビーカーを、25℃に設定された加熱/冷却水循環装置に接続されたジャケット付き槽内に装入する(熱を伝導するために蒸留水をジャケット付き槽に加える)。Scilogix攪拌翼を沈めて約500RPMで攪拌する。
3.pHを1N HClで4.18に調整する。
4.攪拌しながらAPIを少量ずつ加える。APIの添加が終了したら、配合物を45~60分間攪拌して確実に完全に溶解させる。
5.BAK溶液(WFI中BAK0.005g/mL)を加える。
6.ビーカーを攪拌装置から取り出して秤量する。蒸発分を補うためにWFIを加える。
7.必要であればpHを調整する。
【0220】
C.溶液1及び2の合一
1.指定量の溶液1をビーカーに秤り取る。
2.ビーカーを、25℃に設定された加熱/冷却水循環装置に接続されたジャケット付き槽内に装入する(熱を伝導するために蒸留水をジャケット付き槽に加える)。Scilogix攪拌翼を沈めて約130RPMで攪拌する。
3.攪拌しながら溶液2を溶液1に加える。
4.ビーカーを攪拌装置から取り出す。
5.0.2μM PVDFフィルタを使用して濾過滅菌する。

本発明は次の実施態様を含む。
[請求項1]
老視を治療するための物質の、安定性及び生体適合性を有する組成物であって、リポ酸コリンエステルの医薬塩を0.1~10%と、シクロデキストリンを1~30%と、張度調整剤を0.1~2%と、増粘剤を0.1~0.5%と、防腐剤を0.003~0.010%と、生化学的エネルギー源を0.05%~約1.0%と、注射用水と、を含む、組成物。
[請求項2]
0.1~0.5%の範囲の濃度のヒドロキシプロピルベータシクロデキストリンを更に含む、請求項1に記載の組成物。
[請求項3]
張度調整剤としてのグリセロールを更に含む、請求項2に記載の組成物。
[請求項4]
張度調整剤としての塩化ナトリウムを更に含む、請求項3に記載の組成物。
[請求項5]
メチオニン、システイン、及びヒスチジンからなる群から選択される安定剤を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
[請求項6]
防腐剤としての塩化ベンザルコニウムを更に含む、請求項5に記載の組成物。
[請求項7]
生化学的エネルギー源としてのアラニンを更に含む、請求項6に記載の組成物。
[請求項8]
前記リポ酸コリンエステルの前記医薬塩は、塩化物又はヨウ化物である、請求項1に記載の組成物。
[請求項9]
前記組成物は防腐剤を含まない、請求項1のいずれか一項に記載の組成物。
[請求項10]
請求項1に記載の安定性及び生体適合性を有する医薬組成物の製造方法であって:
A.前記リポ酸コリンエステルを微粉砕することと、
B.不活性ガスで5ppm未満まで脱酸素化した水に成分を加えることと、
C.室温下に前記成分の混合物を激しく混合することと、
D.混合した前記成分を眼科用ボトルに充填することと、
E.前記充填を行いキャップをした眼科用ボトルを脱酸素剤及び不活性ガスを含むガス不透過性金属箔マイラー小袋に包装することと、
F.前記包装を2~8℃で保管することと、
を含む方法。
[請求項11]
前記成分の混合物のpHを4~5のpH範囲に調整する、請求項10に記載の方法。
[請求項12]
前記混合は、窒素雰囲気下に行われる、請求項10に記載の方法。
[請求項13]
前記混合は、周囲空気下に行われる、請求項10に記載の方法。
[請求項14]
前記最終包装は、窒素置換もされている、請求項10に記載の方法。
[請求項15]
前記リポ酸コリンエステルを、平均サイズが5mm以下の微粉末に粉砕する、請求項10に記載の方法。
[請求項16]
前記脱酸素化の水準が、好ましくは2ppmである、請求項10に記載の方法。
[請求項17]
混合温度は20~25℃である、請求項10に記載の方法。
[請求項18]
前記成分を8時間混合する、請求項10に記載の方法。
[請求項19]
前記不活性ガスは窒素である、請求項10に記載の方法。
[請求項20]
前記眼科用ボトルは、これらに限定されるものではないが、Type 1医薬品用ガラス、HDPE、PP、LDPE、PET、及びPTFEの群から選択される、請求項10に記載の方法。
[請求項21]
前記眼科用ボトルは、成形同時充填された器具である、請求項10に記載の方法。
[請求項22]
前記眼科用ボトルは、複数回投与用器具である、請求項10に記載の方法。
[請求項23]
前記金属箔小袋は他のガス不透過性材料製である、請求項10に記載の方法。
[請求項24]
前記脱酸素剤は、Oxy-Guard(商標)又はStabilOx(商標)である、請求項10に記載の方法。s
図1
図2
図3
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図5-1】
図5-2】
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図12-2】
図12-3】
図13-1】
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図13-3】
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