(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】血栓凝血塊の液圧変位および除去、ならびに液圧変位を実施するためのカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/14 20060101AFI20220620BHJP
【FI】
A61M25/14 518
(21)【出願番号】P 2019517974
(86)(22)【出願日】2017-10-05
(86)【国際出願番号】 US2017055382
(87)【国際公開番号】W WO2018067844
(87)【国際公開日】2018-04-12
【審査請求日】2020-10-02
(32)【優先日】2016-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515075382
【氏名又は名称】ミビ・ニューロサイエンス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Mivi Neuroscience,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・エフ・オーグル
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-521462(JP,A)
【文献】米国特許第05423745(US,A)
【文献】国際公開第2002/055146(WO,A1)
【文献】米国特許第06562020(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0002680(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血管から凝血塊を除去する治療システムであって、
バルーン/注入カテーテルと、吸引カテーテルとを備え、
前記バルーン/注入カテーテルは、
単一の内腔および遠位端を備える管状シャフトと、
近位取付具と、
前記凝血塊の遠位側にある閉鎖要素で前記血管を閉鎖するために配置されたバルーンと、
前記凝血塊と前記閉鎖要素との間に液体を注入するために構成された1つまたは複数の注入ポートと、
を含み、
前記閉鎖要素はバルーンを含み、
前記バルーン/注入カテーテルは、液体を注入する前に、前記バルーンを前記凝血塊の遠位側において展開させて前記血管を閉鎖することができるように構成され、
前記内腔は、前記バルーン及び前記注入ポートに対し液体を供給し、
前記1つまたは複数の注入ポート
は弾性カバーに覆われ、前記弾性カバーが膨張して液体の注入を提供し、
前記吸引カテーテルは、
前記バルーン/注入カテーテルからの液体を、前記凝血塊の遠位側にのみ配置された注入ポートから、前記凝血塊と前記閉鎖要素との間に注入することによって、前記凝血塊の遠位側に第1の高圧力を提供することで前記凝血塊の遠位側において液圧力を発生させると同時に、前記凝血塊の近位側の前記吸引カテーテルで液体を吸引することによって、前記凝血塊の近位側に第2の低圧力を提供することで、液圧力により前記凝血塊を遠位から近位への方向に押すように構成され、
前記液圧力は、事前に前記凝血塊を機械的に破砕することなく、前記凝血塊に加えられる、
治療システム。
【請求項2】
前記吸引カテーテルは、前記バルーン/注入カテーテルを介して送達されるように構成されている、請求項1に記載の治療システム。
【請求項3】
前記血管が大脳動脈である、請求項1または2に記載の治療システム。
【請求項4】
前記吸引カテーテルの遠位端が前記大脳動脈内に配置可能である、請求項3に記載の治療システム。
【請求項5】
前記バルーン/注入カテーテルが、注入リザーバに接続され、前記バルーン/注入カテーテルが、前記注入リザーバから、前記注入ポートを介して0.25cc~25ccの液体を送達するように構成されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載の治療システム。
【請求項6】
前記バルーン/注入カテーテルは、前記バルーンおよび前記注入ポートに別々に液体を供給するための2つの内腔を有する、請求項5に記載の治療システム。
【請求項7】
バルーン/注入カテーテルであって、
単一の内腔および遠位端を備える管状シャフトと、
近位取付具と、
近位端および内部を有するバルーンであって、前記管状シャフトの前記遠位端にまたはその近くに取り付けられ、前記バルーンの前記内部が前記内腔と流体連通している、バルーンと、
を備え、
前記管状シャフトが、前記バルーンの前記近位端から約5センチメートル以内で前記バルーンに対して近位側に1つまたは複数の注入ポートを備え、
前記1つまたは複数の注入ポート
は弾性カバーに覆われ、前記弾性カバーが膨張して液体の注入を提供する、
バルーン/注入カテーテル。
【請求項8】
前記バルーン/注入カテーテルの前記管状シャフトの長さの大部分にわたって延在し、前記バルーン/注入カテーテルの前記管状シャフトの前記遠位端にまたはその近くに固定された遠位端を有する、一体化した固定ワイヤをさらに備える、請求項7に記載のバルーン/注入カテーテル。
【請求項9】
前記固定ワイヤが、接着剤/ポリマープラグを用いてその遠位端に固定され、コイルが、前記管状シャフトから遠位側に延在している、請求項8に記載のバルーン/注入カテーテル。
【請求項10】
前記固定ワイヤが、前記固定ワイヤの前記近位端を制約する近位取付具に連結された管状要素内で浮き上がる近位端を有する、請求項8または9に記載のバルーン/注入カテーテル。
【請求項11】
前記1つまたは複数の注入ポートにおける前記固定ワイヤと前記管状シャフトとの間の間隔が、約0.005インチ~約0.0089インチである、請求項8~10のいずれか一項に記載のバルーン/注入カテーテル。
【請求項12】
前記バルーン/注入カテーテルの前記管状シャフトの前記遠位端が、前記バルーン/注入カテーテルの前記管状シャフトから延在する遠位ワイヤを備え、または、前記バルーン/注入カテーテルの前記管状シャフトの前記遠位端が、ガイドワイヤポートを備え、弁/シールが、前記ガイドワイヤポートへのまたは前記ガイドワイヤポートからの液体流を低減させるかまたはなくすようにガイドワイヤと係合する構成を備えて、前記ガイドワイヤポートに対して近位側に位置している、請求項7に記載のバルーン/注入カテーテル。
【請求項13】
前記吸引カテーテルには、脳動脈内に位置決められる遠位吸引開口部を有する、
請求項1に記載の治療システム。
【請求項14】
単一の内腔のマイクロカテーテルを更に備え、
前記マイクロカテーテルは、遠位端が血管内で前記凝血塊に対して遠位側の位置に配置されるように、前記凝血塊を通して配置されたガイドワイヤを介して送達されるように構成されている、
請求項1に記載の治療システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に援用される、「Hydraulic Displacement and Removal of Thrombus Clot」と題する、2016年10月6日に出願された、Ogleによる同時係属米国仮特許出願第62/404,918号明細書に対する優先権を主張する。
【0002】
本出願は、流体力を使用することによる血管からの凝血塊(clot)の吸込み(suction)を容易にする処置に関する。本出願は、さらに、細い血管に送達されるように設計されるとともに、凝血塊除去を容易にするように流体力を生成するために近位側からの流体注入により血管の閉鎖を可能にする、カテーテルに関する。
【背景技術】
【0003】
大脳動脈内の凝血塊によって虚血発作が引き起こされる可能性がある。凝血塊は、血流を阻止し、血流の阻止により、脳組織のその血液供給が阻まれる可能性がある。凝血塊は、局所的に生じる血栓、または、別の場所から血管閉塞の場所まで移動した塞栓である可能性があり、いずれの場合も、血管を閉塞させる間に血栓凝血塊と呼ばれる場合がある。組織への血液供給の遮断の影響を低減させるために、時間は重大な要素であり、短時間で血流を回復させることが望ましい可能性がある。大脳動脈系は、脳に血液を提供し下流で内頸動脈に接続されている、高度に分岐した血管系である。大脳動脈は、非常に迂遠である。治療デバイスは、大脳動脈内に配置されるために大脳動脈によってもたらされる迂遠経路に沿って進むことができなければならない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1態様では、本発明は、患者の血管から凝血塊を除去する方法に関し、本方法は、
凝血塊に対して遠位側で閉鎖要素により血管を閉鎖するステップと、
凝血塊と閉鎖要素との間に液体を注入するステップと、
凝血塊に対して液圧力を引き起こすために注入および吸引を少なくとも幾分か一時的にオーバーラップさせて、凝血塊に対して近位側で血管から液体を吸引するステップと、
を含む。
【0005】
さらなる態様では、本発明は、中心内腔および遠位端を備える管状シャフトと、近位取付具と、近位端および内部を有するバルーンとを備えるカテーテルに関する。概して、バルーンは、管状シャフトの遠位端にまたはその近くに取り付けられ、バルーンの内部は、中心内腔と流体連通している。いくつかの実施形態では、管状シャフトは、バルーンの近位端から約5センチメートル以内でバルーンに対して近位側に1つまたは複数の注入ポートを備える。
【0006】
別の態様では、本発明は、管状要素と近位取付具とを備えるシャフトであって、管状要素が、遠位端、第1内腔および第2内腔を有し、別個のガイドワイヤ内腔は有していない、シャフトと、近位端と、シャフトの遠位端においてまたはその近くにおいてシャフトの外面に固定された内部とを有するバルーンであって、バルーンの内部が第1内腔と流体連通している、バルーンとを備えるカテーテルに関する。いくつかの実施形態では、シャフトは、バルーンの遠位端に対して近位側に、かつバルーンの近位端の約5センチメートル以内に注入ポートを備える。注入ポートは、第2内腔と流体連通することができ、シャフトには、バルーンに対して遠位側の注入ポートおよび追加のバルーンがない場合がある。さらに、近位取付具は、注入ポートを通して送達されるために注入流体源を連結するための第1コネクタと、バルーン膨張流体の送達および/または除去のために構成されたデバイスを連結するための第2コネクタとを提供する、Y分岐取付具を含むことができる。
【0007】
さらなる態様では、本発明は、バルーンと、カテーテルシャフトと、膨張流体源および注入液源への接続部を有する近位取付具とを備えるカテーテルに関する。いくつかの実施形態では、カテーテルシャフトは、注入ポートと、ガイドワイヤ内腔および補助内腔を有する二腔構造と、ガイドワイヤがない場合にガイドワイヤ内腔の前記遠位端を閉鎖するように構成された弁とを備える。補助内腔は、バルーンの内部および膨張流体源への接続部と、または、注入ポートおよび注入液源とのいずれかと流体連通することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】注入に対して適合されたマイクロカテーテルが固定ワイヤ単腔バルーンカテーテルの上を進む、処置システムの側面図である。
【
図2】
図1の線2-2に沿った
図1のシステムの断面図である。
【
図3】一体化遠位コイルを備えた単腔(シングルルーメン)バルーン/注入カテーテルの側面図である。
【
図4】
図3の線4-4に沿った
図3の単腔バルーン/注入カテーテルの断面図である。
【
図5】エラストマー弁で覆われた
図3のバルーン/注入カテーテル用の注入ポートの部分図である。
【
図6】固定内部ワイヤおよび一体型遠位コイルを備えた単腔バルーン/注入カテーテルの側面図である。
【
図7】固定ワイヤ用の近位固定構造を示す、線7-7に沿った
図6の単腔バルーン/注入カテーテルの断面図である。
【
図8】ガイド構造の上を進む単腔バルーン/注入カテーテルの側面図であって、カテーテルの遠位端の近くの弁/シールがガイド構造のワイヤと係合しており、バルーン/挿入図が、カテーテルの近位取付具に連結されるために好適な近位マニホールド取付具を示す。
【
図9】固定ワイヤと注入ポートの上の弁とを備えた単腔バルーン/注入カテーテルの代替実施形態の部分側面図である。
【
図10】カテーテルから分離されて示されている
図9の単腔バルーン/注入カテーテルのワイヤの側面図であり、バルーン/挿入図は、平坦化形状を有するワイヤの近位端の回転した図を示す。
【
図11】固定ワイヤから分離された
図9の単腔バルーン/注入カテーテルのカテーテルの側面図である。
【
図12】
図9の単腔バルーン/注入カテーテルの近位端の部分図であり、取付具が、
図10の平坦化ワイヤの浮遊端部を支持する管状受入要素を備える。
【
図13】
図9の単腔バルーン/注入カテーテルの代替チップの部分側面図であり、任意選択的なコイルがワイヤ遠位端のキャノン(canon)に置き換えられている。
【
図14】2つの内腔、環状注入ポート、および内部管状要素の内腔内の固定ワイヤを備えた、バルーン/注入カテーテルの側面図である。
【
図15】外側管状要素を内側管状要素に固定するための外側管状要素の圧着部分を示す、
図14の線15-15に沿った
図14のバルーン/注入カテーテルの断面図である。
【
図16】2つの内腔を備えた同時押出成形された単体要素を有するバルーン/注入カテーテルの側面図であり、近位端および遠位端が、構造をより詳細に示すことができるようにずらされており、一方で、シャフトの長い変化しない構造は図から除外している。
【
図17】2つの内腔および固定ワイヤを示す、線17-17に沿った
図16のバルーン/注入カテーテルの断面図である。
【
図18】カテーテルがガイド構造の上を移動するのを可能にするために2つの内腔および遠位弁/シールを備えたバルーン/注入カテーテルの側面図であり、ガイド内腔はバルーン内腔と結合されている。
【
図19】カテーテルがガイド構造の上を移動するのを可能にするために2つの内腔および遠位弁/シールを備えたバルーン/注入カテーテルの側面図であり、ガイド内腔は注入内腔と結合されている。
【
図20】ガイド構造と係合する弁/シールの実施形態の正面図であり、弁/シールは3つの弁尖を備える。
【
図21】ガイド構造が存在しない場合に閉鎖するガイド構造を封止する中心孔を備えたガイド構造と係合する弁/シールの代替実施形態の部分側面図である。
【
図22】
図21の弁/シールの部分側面図であり、ガイド構造が弁/シールを通過している。
【
図23】ポリマー壁内に埋め込まれた金属補強ワイヤを有するカテーテル壁の一区画の部分斜視図である。
【
図24】ポリマー管状要素内に埋め込まれた金属編組および/または金属コイルを備えるカテーテルの実施形態を形成する処理ステップを示す概略図である。
【
図25】急性虚血性脳卒中の治療のために有用な吸引カテーテルを備えたバルーン/注入カテーテルの使用に基づく治療システムの構成要素を示す概略図である。
【
図27】細い遠位チップを備えた吸引カテーテルの側面図である。
【
図28】ガイドカテーテル内の吸込みノズルと流れマニホールドを備えた対応する近位取付具とを備えた吸引システムの側面図である。
【
図29】経皮的に大腿動脈内に進入することによる脳卒中治療システムの送達を示す患者の概略図である。
【
図30】患者の血管内で展開されたバルーン/注入カテーテルと、吸引カテーテルに向かう遠位から近位の方向に凝血塊を押すように液圧力を確立するように位置決めされた吸引カテーテルとの部分図である。
【
図31】ガイドカテーテルの遠位端が頸動脈内に位置決めされ、ガイドワイヤが、ガイドワイヤの遠位端が凝血塊を越えて延在して、ガイドカテーテルから大脳動脈内に延出している、頸動脈の一部の部分図である。
【
図32】マイクロカテーテルが、マイクロカテーテルの遠位端が凝血塊を越えて延在するようにガイドワイヤにわたって送達されている、
図31の大脳動脈の部分図である。
【
図33】吸引カテーテルが適所に置かれ、ガイドワイヤが除去されてバルーン/注入カテーテルに置き換えられ、バルーンが膨張していない、
図32の大脳動脈を示す部分図である。
【
図34】バルーン/注入カテーテルのバルーンが膨張している、
図33の頸動脈を示す部分図である。
【
図35】吸引および注入により液圧力が確立され、近位方向における凝血塊からの血栓の移動をもたらす、
図34の大脳動脈を示す部分図である。
【
図36】凝血塊からの血栓が吸引カテーテルの吸引開口部に達した、
図35の大脳動脈を示す部分図である。
【
図37】バルーンが少なくとも部分的に収縮し、マイクロカテーテルおよびバルーン/注入カテーテルが血管から除去されている、
図36の大脳動脈を示す部分図である。
【
図38】バルーン/注入カテーテルが、
図34に示す構成に至るステップの代わりとして、ガイドワイヤにわたって送達される、処置の代替部分を示す部分図である。
【
図39】代替処置が、ガイドワイヤの除去と繊維系フィルタを支持するガイド構造との置き換えとを含む、
図32に示す大脳動脈の部分図である。
【
図40】繊維系フィルタが展開され、バルーン/注入カテーテルが、ガイド構造の上を移動して適所に置かれている、
図39の大脳動脈の部分図である。
【
図41】バルーンが膨張し、フィルタが展開され、吸引および注入により液圧力が確立されて、凝血塊からの血栓の近位側移動がもたらされる、
図40の大脳動脈を示す部分図である。
【
図42】血栓が遠位開口部に到達して吸引カテーテルに入り、デバイスを血管から除去するように準備してバルーンが少なくとも部分的に収縮している、
図41の大脳動脈を示す部分図である。
【
図43】マイクロカテーテル、バルーン/注入カテーテルおよび展開されたフィルタが、患者の体内から除去されるために吸引カテーテルに向かって移動し、展開されたフィルタが除去される途中に血管を掃引するために使用される、
図42の大脳動脈を示す部分図である。
【
図44】ガイドカテーテルが、展開されたバルーンがガイドカテーテルの遠位端の近くにあるように頸動脈内に配置され、バルーン/注入カテーテルが、展開されたバルーンが凝血塊の遠位側に配置されるようにガイドカテーテルから延在している、大脳動脈の部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
吸込みおよび液体注入の組合せを用いて、血管壁に対する適度な力で凝血塊を緩める、動脈内の凝血塊除去を実施する、デバイスおよび対応する方法が記載される。凝血塊位置に対する遠位注入から吸引カテーテルまでの流れによって生成される流体力が、凝血塊を、除去するために遠位から近位の方向に押すことができる。概して、遠位バルーンまたは他の閉鎖デバイスは、凝血塊を越えた位置で血管を閉鎖するように拡張させて、注入液を近位方向において吸引カテーテルに向かって戻るように向けることができる。注入液の使用により、血管からの吸引によって生成する血管に対する力を低減させることができる。そして、治療システムは、遠位閉鎖バルーン、注入デバイスおよび吸引カテーテルとともに、ガイドワイヤ、ガイドカテーテルおよび/または他のデバイス等、処置を容易にする補助デバイスを備えることができる。本明細書では、流体補助処置に必要とされる注入を実施するように設計された単腔および二腔(ダブルルーメン)バルーンカテーテルについて記載する。流体ベースの凝血塊除去システムは、他の医療凝血塊除去システムに対する望ましい代替物を提供することができる。流体力、液圧力および/または流体力学力は、血管を拡張させて凝血塊を緩め、血管壁を著しく摩耗させることなく凝血塊を除去するように、吸込みによって引き起こされる著しい血管虚脱を防止する傾向があり得る。これらの処置および対応するデバイスは、曲がりくねった大脳動脈内での急性虚血性脳卒中に対処するために使用されるように設計することができる。
【0010】
特に急性脳卒中の状況において、動脈内の凝血塊を除去するために、さまざまな方法が開発されてきた。さまざまな凝血塊係合器具が市販されており、凝血塊除去を容易にするために、吸引カテーテルもまた入手可能である。本明細書に記載する処置は、凝血塊の破砕および/または血管壁の摩耗をもたらす可能性がある凝血塊の機械的係合に対する代替案を提供する。本処置はまた、同様に血管壁または血管に隣接する他の壁を損傷する可能性がある、血管内の大きい圧力変動をもたらす可能性がある吸引のみの導入に対して、代替案を提供する。また、注入なしの吸引の使用は、血管径を低減させる傾向があり得る、局所血管圧力を低下させる傾向があり、それにより、凝血塊の周囲の血管を虚脱させることによって凝血塊の除去が妨げられる可能性がある。近年、大きい圧力降下の発生を低減させるように、吸引とともに流体豊富(profusion, perfusion:灌流)を使用することが、参照により本明細書に援用される、「Thrombectomy Devices and Treatment of Acute Ischemic Stroke With Thrombus Engagement」と題する、Ogleらによる米国特許出願公開第2017/0056061A1号明細書(以降、‘061出願)に記載されていた。
【0011】
本技術分野において一般に低侵襲処置と呼ばれるより侵襲性の低い処置は、医療状況において、患者の回復時間を短縮し、うまくいけば適切な場合に転帰を改善するために望ましい。特に、低侵襲処置は、一般に、血管系において、さまざまな治療プロセスの実施のために、選択された血管内の遠い場所に到達するように、カテーテルベースのシステムを使用して実施される。これらの処置はまた、血管腔を通る送達を強調するために、観血的処置とは対照的に、経皮的処置または経血管的処置とも呼ぶことができる。本明細書における考察は、虚血的脳卒中の治療に焦点を当て、それは、デバイスが、これらの臨床的に重要な状態を治療するために有効であり得るためである。しかしながら、血管系および他の体内脈管の両方における他の処置に本デバイスを使用することができる。患者は、ヒトを含み、ペットおよび家畜を含む他の動物を含むことができる。近位および遠位という用語は、本技術分野におけるそれらの慣習的な意味で使用され、すなわち、近位は、血管系または他の脈管内の経路に沿った患者の体内への進入点に近い方を指し、遠位は、血管系内の経路に沿った進入点から遠い方を指す。
【0012】
脳卒中の治療のために、治療デバイスは、動脈を通して脳の血管まで前進する。一般に急性脳卒中の治療に関連する血管は、血流において内頸動脈から下流であり、動脈は、一般に、血管が動脈血管系を下流方向に進みに従い、分岐し、平均径が低減する。身体は、右内頸動脈および左内頸動脈を有する。便宜上、内頸動脈から下流の血管は、本明細書では大脳動脈と呼ぶ。大脳動脈は、カテーテルベースのシステムにより、たとえば、鼠径の大腿動脈、腕の動脈、または頸部の頸動脈から、本技術分野において既知であるもの等、止血処置および適切な取付具を用いてアクセスすることができる。大脳動脈は、迂遠経路をたどることが知られており、頸動脈からの遠位方向における血管の直径の縮小および分岐とともに、可能性として血管への損傷からの危険な状態に起因して、血管に沿ってデバイスを追跡する複雑化もまた結果として起こる。脳卒中治療では、曲がりくねった細い動脈にアクセスすることが望ましい可能性がある。本明細書に記載するデバイスは、これらの曲がりくねった細い大脳動脈における有利な使用に対して設計されるが、当業者であれば、他の医療処置におけるこれらのデバイスの有用性を理解するであろう。
【0013】
本明細書に記載するように、プロセスの流体的態様は、液圧力を使用して凝血塊の押しのけおよび除去を容易にするように、凝血塊に対して遠位側の位置から吸引カテーテル内への近位側に位置決めされた開口部までの流れの確立を提供するように、血管の遠位豊富(profusion, perfusion:灌流)と組み合わされた血管の遠位閉鎖を通して、さらに強調される。いくつかの実施形態では、適切に小型のバルーンカテーテルと組み合わせてマイクロカテーテルを使用することにより、流体がマイクロカテーテルとバルーンカテーテル本体との間に注入される処置を実施することができる。特別に設計されたデバイスは、処置を実施するために有利に使用することができ、単腔または二腔に基づくことができる。単腔カテーテル実施形態では、カテーテルは、関連するワイヤはなく、所望の機械的性能を提供するために一体化ワイヤを有することができ、または、カテーテルは、バルーンに対して遠位側の内腔からの流れを阻止するように構造(シールおよび/または弁)を備えた別個のガイドワイヤの上を進むことができる。単腔は、注入およびバルーン膨張の両方に対して機能する。二腔デバイスでは、この場合もまた、ワイヤは、一体型であるか、または、適切な流量制限構造を備えて別個であり得る。別個の内腔は、バルーン膨張および液体の注入に使用することができ、適切な実施形態に対して、ガイドワイヤ内腔を、バルーン内腔または注入内腔のいずれかと組み合わせることができる。本明細書に記載する液圧補助処置を実施するために非バルーン閉鎖デバイスを使用することができるが、本明細書の考察は、本明細書に記載する処置における所望の性能と除去のための単純な係合解除とを提供することができる、バルーン構造に焦点を当てる。
【0014】
本明細書に記載する処置の基本態様は、凝血塊に対して遠位側の閉鎖バルーン、閉鎖バルーンと凝血塊との間の注入ポート、および凝血塊に対して近位側の吸込み開口部を備えた吸引カテーテルの配置を含む。閉鎖バルーンは、高コンプライアンスであり、すなわち、弾性材料から形成され、血管の壁に対して適度な力で血管を閉鎖することができる。神経血管系に使用される好適なガイドワイヤ、マイクロカテーテルおよび吸引カテーテルについて後述し、それらはまた、参照により本明細書に援用される「Medical Guidewires for Tortuous Vessels」と題する、Pokorneyらに対する米国特許出願公開第2016/0199620号明細書と‘202出願とに詳細に記載されている。神経血管系に対して承認された市販の高コンプライアンスバルーンとしては、たとえば、TransForm(登録商標)(Stryker Neurovacular)、Specter CまたはXC(登録商標)(Microvention/Terumo)、Hyperform(商標)(Covidien)またはAscent(登録商標)(DePuy Synthes/Codman Neurovascular)が挙げられる。しかしながら、これらのバルーンは、多くの血管に対して本明細書に記載する処置に対して望ましい直径より大きい直径を有する。より小さい外形のバルーンに対して、対応してより小さい構成要素を備えた同様の設計を用いて所望の機能を提供することができる。ガイドワイヤおよびいくつかの実施形態ではマイクロカテーテルは、凝血塊に対して遠位側の血管へのアクセスと、凝血塊に対して遠位側の位置に適切にバルーン/注入カテーテルを配置するための凝血塊に対して遠位側の領域へのアクセスの維持とを提供することができる。
【0015】
液体の注入は吸引とともに、液圧力および/または流体力学力の対応する生成により凝血塊の遠位から近位への液体の流れを発生させることができる。便宜上、本明細書では、処置で生成される力は液圧力と呼び、それは、ある意味、液圧力、流体力学力またはそれらの組合せを含むことができる。吸引の前に注入を開始することによりかつ/またはさまざまな流量を制御することにより、血管内の局所圧力は幾分か上昇する可能性があり、こうした圧力の適度な上昇は、凝血塊に対する血管壁の掴みを緩める可能性があるように血管を曲げることができる。したがって、バルーン拡張および圧力の制御の両方が、凝血塊の除去を容易にするために凝血塊を緩めるように作用することができる。血管壁に対する力は、血管壁に対する損傷を回避するように制御するべきである。遠位から近位への液体の流れは、対応して、吸引カテーテルに向かって凝血塊を移動させる傾向があるように凝血塊に対して遠位から近位への力を加える。目的は、吸引カテーテルにより吸い上げることができるように凝血塊を押しのけるか、または、カテーテルにより患者の体内から除去するために凝血塊を吸引開口部まで運ぶことである。
【0016】
処置は、バルーンカテーテル、(バルーンカテーテルと単一デバイスに結合することができる)注入カテーテル、吸引カテーテル、および任意選択的に神経血管系または他の対応する血管に対して好適な他のデバイスから組み立てられた治療システムによって実施することができる。神経血管系で使用するために、血管内のより多くの遠隔部位に達するのを容易にするために独立したガイドワイヤを使用することが概して望ましいが、追加の構成要素が治療部位の近くに送達されると、ガイドワイヤが移動する可能性がある。処置を誘導するために、概して、ガイドカテーテルが、頸動脈、たとえば、内頸動脈または総頚動脈内に配置され、そこを通して、追加のデバイスを下流のより小さい血管まで誘導することができる。ガイドカテーテルは、追加のデバイスを導入するための止血弁を備えることができる。いくつかの実施形態では、ガイドカテーテルはまた、バルーンを通過する流れを遮断するように作動させることができる閉鎖バルーンも有することができる。処置の少なくとも一部に対して流れを停止させることが望ましい場合がある。また、別個の吸引カテーテルの使用の代わりとしてまたはそれに加えてまたはさらに、任意選択的に、ガイドカテーテルを通して吸引を加えることができる。
【0017】
少なくともいくつかの血管において本明細書に記載する処置のうちのいくつかを実施するために既存のデバイスを使用することができるが、実施の簡略化とともに所望の流体力学流を提供するためのデバイスの設計に関する利点を提供する、望ましいデバイス設計について記載する。本明細書に記載する新たなデバイスは、シャフトに沿ってバルーンに対して近位側に位置決めされた注入ポートという共通の特徴を有する。カテーテルのいくつかの実施形態は、注入液およびバルーン拡張の両方に対して単一の内腔を有する。カテーテルの他の実施形態は、バルーン膨張および収縮ならびに注入に対して別個の内腔である2つの内腔を有する。単腔を有するカテーテル設計は、概して、類似の構築材料でより小さい直径の可能性があるより単純な構造を含む。二腔を有するカテーテル設計は、バルーン膨張圧力に関して注入に対し、また注入する送達流体の容量を調整するために、異なる流体圧力を使用するという追加の能力を提供する。カテーテル設計は、関連するワイヤ構造がない場合があり、または、カテーテルの可撓性および操縦性を制御するために一体型ワイヤを有することができ、または、ガイドワイヤ内腔が二重の役割を果たすことができるように、カテーテル内に液体を維持する流量制御構造を使用して、別個のガイド構造、たとえばガイドワイヤの上を進むことができる。ガイドワイヤ内腔を別の機能的内腔と共有するカテーテル実施形態は、所望のデバイスサイズを達成するのを容易にするために、内腔容積をより効率的に利用することができる。
【0018】
神経血管系において使用するために、血管の小さい直径は、一般に、デバイスの著しい制約を与える。複数の同軸を送達する場合、外側デバイスの利用可能な内腔寸法は、内部デバイスによって占有されるふさがれた空間によって事実上制約される。したがって、限られた内腔容積をより有効に使用することができるように、本明細書に記載する改善された処置を実施するように専用デバイスを設計することが望ましい場合がある。注入機能を備えた閉鎖バルーンカテーテルは、参照により本明細書に援用される、「Vascular Medical Devices with Sealing Elements and Procedures for the Treatment of Isolated Vessel Sections」と題する、Ogleらによる米国特許出願公開第2013/0245552号明細書に記載されている。しかしながら、‘552出願におけるデバイスは、大きい血管で使用されるように意図されており、神経血管系の一部等、細い血管内に嵌まるようには設計されていない。別個のガイドワイヤ内腔の導入は、壁が別個の内腔を形成するように著しい量のデバイスの内部空間を消費し、対応して、内部容積の損失は、別個の豊富(profusion, perfusion:灌流)または注入内腔の利用可能なサイズを制限する。
【0019】
本明細書における具体的なカテーテル実施形態では、バルーン内腔をガイドワイヤ内腔と結合することができる。ガイド構造が適所に残される場合、ガイドワイヤ自体は、適度に小さい値まで縮小するか、または、カテーテルの送達中のバルーン内への血流と、バルーンが膨張したときの内腔からの液体との交換をなくす、閉鎖具として機能することができる。ガイドワイヤ内腔を閉鎖するための弁を備えた、バルーン内腔と共有されるガイドワイヤ内腔を備えるカテーテルについては、参照により本明細書に援用される「Microcatheter」と題する、Jonesらによる米国特許第6,306,124号明細書に記載されている。‘124特許は、ミリメートル未満まで非常に小さい直径を有するバルーンカテーテルについて記載した。弁またはダイヤフラム等、流量制御構造の存在により、対応する内腔内への流れを遮断しながらガイドワイヤの除去を可能にすることができる。
【0020】
吸込みのみの使用は、急性虚血性脳卒中の治療に対して有望な結果を提供した。脳卒中をもたらす凝血塊を機械的に押しのける代替的なデバイスが利用可能であり、これらのデバイスは、ステントリトリーバー(ステント型血栓回収デバイス)と呼ぶことができるが、これらのデバイスのうちのいくつかは、完全にはステントの派生物ではない。ステントリトリーバー等とともに吸込みを使用して、手法の組み合わされた効果を提供することも可能である。さらに、吸込みは非常に有効である可能性があるが、有効な凝血塊除去のために提供される吸込みの程度は、血管の一部から血液を減少させ、その結果、血管に対する著しい虚脱力と隣接する組織に対する対応する力とがもたらされる可能性があり、それは、場合により望ましくない可能性がある。吸込みは、凝血塊を押しのけ除去するために有効である可能性があるが、液体除去に起因する凝血塊の周囲の血管の虚脱は、プロセスを容易にしない可能性があり、対応する力を増大させる可能性がある。本明細書に記載する液圧/流体力学力は、凝血塊を除去する傾向がある一方で、凝血塊を緩めるためにも血管を膨張させる傾向がある可能性がある力を、凝血塊の両側に生成する。したがって、処置は、血管内のかつ周囲組織に対する極端な力を低減させる一方で、凝血塊を除去するためにさらにより有効である可能性があるように設計することができる。
【0021】
吸引カテーテルまたは吸込みカテーテルは、本明細書に記載する液圧補助処置に対して吸込みを提供するために利用可能であり、これらのカテーテルについて詳細に後述する。吸引カテーテルは、閉鎖および注入を提供するカテーテルとともに、任意選択的に、緩んだ塞栓を捕捉するとともに、任意選択的に、血管壁に対する力を制限するためによりクッション性のある要素に凝血塊を係合させることができる、凝血塊と係合する機械的デバイスおよび/またはフィルタ型デバイス等、追加の治療デバイスとともに有効に使用することができる。凝血塊治療用のさまざまなシステムについて後述する。単独で液圧治療を提供するように使用されるか、追加の治療または保護デバイスと組み合わせて使用されるかに関わらず、本明細書に記載する液圧治療処置は、特に、急性虚血性脳卒中の緩和に有効であり得る、血管からの凝血塊のより異教徒(gentile, gentle:穏やかな)の除去を提供する可能性を有する重要な器具を提供する。
【0022】
閉鎖および注入を提供するカテーテル
血管内で遠位から近位の方向における凝血塊に対する所望の液圧力を生成するために、たとえば、バルーンによる遠位側の流れの閉鎖および近位側の液体送達を提供する、具体的なカテーテル構造について説明する。デバイスの共通の特徴は、さまざまな構成で構成することができる閉鎖要素および注入ポートである。カテーテルは、吸引カテーテル、および、任意選択的に、カテーテルの使用を容易にしかつ/または血管の治療を補完する他のデバイスと使用するように意図され、デバイスのシステムおよび処置については、続くセクションで考察する。閉鎖および注入機能を実施するために、カテーテルは、1つまたは2つの内腔を備えることができ、概して、カテーテルの遠位端の近くからカテーテルの近位端まで延在する追加の内腔は有していない。カテーテルに所望の機械的特性を与えるために、カテーテルは、一体型ワイヤを備えることができ、または、カテーテルは、血管液からガイドワイヤ内腔を隔離するために流量制御構造を備えたガイドワイヤの上を進むように設計することができる。注入も提供することができるバルーンカテーテルは、便宜上、バルーン/注入カテーテルと呼ぶことができる。
【0023】
図1を参照すると、カテーテルシステム100は、固定ワイヤ単腔閉鎖バルーンカテーテル102(以降、バルーンカテーテル102)とマイクロカテーテル104とを備える。
図1に示すように、バルーンカテーテル102は、マイクロカテーテル104を通して送達されるように構成されている。バルーンカテーテル102は、ばねチップ110と、遠位端からばねチップ110が延在している、内腔114を形成する管状シャフト112と、バルーン116と、内腔114内に固定された固定ワイヤ118と、近位取付具120とを備える。バルーン116は、高コンプライアンスバルーンとすることができ、内腔114内の流体圧力の調整によりバルーン116を膨張させるかまたは収縮させることができるように、内腔114と流体連通する内部を有する。カテーテルの内部の固定ワイヤ118は、カテーテル用のガイドワイヤと同様の特徴を提供することができ、カテーテルチップが血管壁に対する損傷を回避するように構成される限り、ばねチップ110は任意選択的であり得る。
図2は、構成要素のさまざまな位置を含む断面図を示す。マイクロカテーテル104を通してバルーンカテーテル102を送達することにより、バルーンカテーテルの遠位チップを細い曲がりくねった血管内に入るように操縦するのを容易にすることができる。
【0024】
マイクロカテーテル104は、管状シャフト130および近位取付具132を備える。管状シャフト130は、概して、バルーンカテーテル102がマイクロカテーテル104内で移動することができ、注入液を管状シャフト130と管状シャフト112との間の空間134を通して送達することができる、バルーンカテーテル102の管状シャフト112の外径より十分に大きい内径を有するように設計することができる。カテーテルの寸法の好適な範囲については後述する。
図1において、注入流体136の送達は概略的に示す。概して、取付具120、132に対して、本技術分野では好適な取付具は既知である。特に、取付具120、132は、メスルアーフィッティング等のルアーフィッティング、Tuohy-Borstコネクタ等であり得る。ルアーコネクタまたはTuohy-Borstコネクタは、内腔への所望のアクセスを提供するように、Y分岐フィッティング等、標準的なまたは独自の取付具またはマニホールドを連結するために有用であり得る。
【0025】
図1の結合されたデバイスは2つの別個の構成要素を含むが、ある意味、結合されたデバイスは、2つの別個の内腔を提供し、1つの内腔は注入用であり第2内腔はバルーン内腔として機能する。単腔カテーテル実施形態は、共通の内腔を使用して関連する注入とともにバルーン膨張/収縮を提供することができる。
図3~
図8に、単腔バルーン/注入カテーテルの3つの実施形態を示し、それぞれ、ワイヤなし、固定ワイヤあり、または独立したガイドワイヤありである。
【0026】
図3を参照すると、バルーン/注入カテーテル150の実施形態がワイヤなしで示されており、カテーテル本体がカテーテルの機械的特性を与える。バルーン/注入カテーテル150は、管状シャフト152と、管状シャフト152から遠位側に延在する任意選択的なコイルチップ154と、バルーン156と、管状シャフト152の近位端における近位取付具158とを備える。材料の全体的な詳細と構成要素の寸法とについては後述する。管状シャフト152は、近位取付具158からバルーン156まで延在する内腔160を備える。内腔160は、概して、その遠位端においてコイルチップ154でまたはその近くで閉鎖される。コイルチップ154が存在しない場合、カテーテルの遠位端は、血管壁に対する損傷を回避するような形状とすることができる。適切な開口部162が、内腔160とバルーン156の内部との間に流体連通を提供する。
図4に断面で示す一実施形態を参照すると、管状シャフト152の周囲に分散された4つの開口部164が、内腔160とバルーン156の内部との間の流体連通を提供する。バルーンの内部166および外部168を画定するために、シャフトの2つの区画(1つの区画は近位であり1つの区画は遠位である)の周囲で、バルーン156を封止することができ、そこで、バルーン内部は外部流体環境から隔離される。
【0027】
1つまたは複数の注入ポート170が、近位取付具158に連結された液体源から送達される、内腔160からの液体の、患者の血管内への注入を可能にする。内腔160から出る液体の流れは、内腔内の圧力を低下させる傾向がある。内腔160内の液圧は、バルーン156の膨張も可能にする。適切な圧力が膨張したバルーンを維持すると同時に、対応して所望の注入流量を提供するように、流体力学を平衡させるべきである。注入ポート170は、それに従って設計することができ、曲がりくねった血管内で凝血塊に対して遠位側の配置を容易にするために、バルーン156に対して適切に近位側にある。特に、注入ポート170のサイズおよび数は、バルーン156を膨張させる圧力で適切な注入を提供するように選択することができる。いくつかの実施形態では、注入ポートの最も遠い縁部は、バルーンの最も近い縁部から5センチメートル以下であり、さらなる実施形態では、2.5センチメートル以下であり、この間隔は、このセクションにおけるカテーテル実施形態のすべてに対して包括的である。当業者であれば、上記明示的な範囲内の注入ポート間隔のさらなる値が企図され、本開示の範囲内にあることを理解するであろう。
【0028】
また、
図5に、弾性カバー172が注入ポート170を覆っている、注入構造の実施形態を示す。弾性カバー172は、注入プロセスにわたって追加の制御手段を提供することができ、そこでは、注入を提供するように弾性カバー172を膨張させるために所定量の圧力を印加することができる。弾性カバー172は、一方の縁部に沿って管状シャフト152に封止され、反対側の縁部で開放して注入を可能にすることができる。
図5における矢印は、非封止縁部を通る注入を概略的に例示するように示されている。弾性カバー172は、バルーン156と同じかまたは同様の材料から作製することができるが、所望の弾性特性を提供する限り、別個の材料から作製することができる。
【0029】
図6に、単腔を有するバルーン/注入カテーテル180の代替実施形態を示す。バルーン/注入カテーテル180は、管状シャフト182と、管状シャフト182から遠位側に延在する任意選択的なコイルチップ184と、バルーン186と、固定ワイヤ188と、管状シャフト182の近位端における近位取付具190とを備える。構成要素の材料および寸法の全体的な詳細については後述する。バルーン/注入カテーテル180は、固定ワイヤ188を含むことを除き、バルーン/注入カテーテル150と構造が類似している。管状シャフト182は、内腔192と、内腔192とバルーン186の内部との間の流体接続を提供する開口部194と、内腔192から出る液体流を提供する注入ポート196とを備える。開口部194および注入ポート196の特徴は、限定されないが
図4および
図5の代替実施形態を含む、対応する開口部162および注入ポート170に対して
図3に関連して上述した特徴と一致することができる。固定ワイヤ188は、内腔192内でそのそれぞれの端部においてまたはその近くで固定することができる。
図6を参照すると、固定ワイヤ188の遠位端198は、構造終端内腔192と締結コイルチップ184または代替的なチップとにおいて固定することができ、こうした構造は、たとえば、接着剤プラグ等を備えることができ、それはさらに、放射線不透過性バンド200等で固定されている可能性がある。クリップまたは足場202が内腔192内で固定されて固定ワイヤ188を支持することができる。浮遊ワイヤ近位端を有する代替実施形態について後述する。足場202は、内腔192内で足場を越えて液体流を提供する任意の適度な構造を有することができる。
図7を参照すると、固定ワイヤ188を適所に保持するアーム204とともに足場が示されている。
【0030】
図8に、ガイドワイヤ等のガイド構造212の上を進む、単腔を有するバルーン/注入カテーテル210の実施形態を示す。バルーン/注入カテーテル210は、管状シャフト214と、管状シャフト214から遠位側に延在する任意選択的なコイルチップ216と、バルーン218と、管状シャフト214の近位端における近位取付具220とを備える。構成要素の材料および寸法の全体的な詳細については後述する。バルーン/注入カテーテル210は、ガイド構造212とのインタフェースに適応するための構造を除き、バルーン/注入カテーテル150と構造が類似している。管状シャフト214は、内腔222と、内腔222とバルーン218の内部との間に流体接続を提供する開口部224と、内腔222から出る液体流を提供する注入ポート226とを備える。開口部224および注入ポート226の特徴は、限定されないが
図4および
図5の代替実施形態を含む、対応する開口部162および注入ポート170に対して
図3に関連して上述した特徴と一致することができる。ガイド構造212は、ガイドワイヤ、またはワイヤベースフィルタ構造等の他の構造とすることができ、好適なガイド構造についてはさらに後述する。管状シャフト214は、管状シャフト214の遠位端内に入るかまたは遠位端から出る内腔222からの液体交換がほとんどまたはまったくなく、ガイド構造212に対する管状シャフト214の移動を提供する、流量制御構造228を備えることができる。流量制御構造228に対する好適な構造についてはさらに後述する。近位取付具220は、
図8のバルーンに示すY分岐マニホールド230等、さらなる取付構成要素に連結するためのメスルアーコネクタまたはTuohy-Borstコネクタ等を有することができる。Y分岐マニホールド230は、デバイスの遠位部分が患者の血管内にあるときに出血がほとんどまたはまったくないように、バルーン/注入カテーテル210およびガイド構造212の相対移動を提供する、液体源および止血弁238に連結するための、メスルアーコネクタ232、ルアーコネクタ等のコネクタ236を備えるサイドアーム234を備えるが、当業者により理解されるように他の取付具構成を使用することができる。
【0031】
図9~
図11に、単腔および固定ワイヤを有するバルーン/注入カテーテル250の具体的な実施形態を示す。特に、
図9は組み立てられた構造を示し、
図10は別個のワイヤを示し、
図11は別個のカテーテルを示す。
図9を参照すると、バルーン/注入カテーテル250は、カテーテル本体252および固定ワイヤ254を備える。
図9および
図11に示すように、カテーテル本体252は、遠位セグメント256、テーパセグメント258および近位セグメント260を備える。遠位セグメント256および近位セグメント260は、およそ一定の直径を有するが、テーパセグメント258は、遠位セグメント256の直径と近位セグメント260の直径との間で遷移する。テーパセグメント258は、概ね直線状テーパまたは他の適度な湾曲テーパを有することができる。遠位セグメント256は、バルーン266に入りかつバルーン266から出る液体流を提供する、注入ポート262および2つの開口部264を備える。バルーン266は、バルーン266の内部を隔離するように、2つの縁部に沿って遠位セグメント256に封止される。弾性カバー268が、カテーテル本体252の内部で内腔270において十分な圧力での注入を可能にするように開放する弁として機能するように、注入ポート262を覆う。
【0032】
図9および
図10を参照すると、固定ワイヤ254は、近位区画280と、7つの逐次的テーパ状区画282、283、284、285、286、287、288と、遠位コイル290とを備える。
図9および
図10は、多くの逐次テーパ状区画を備えた固定ワイヤを示すが、1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つ等、より少ない数のテーパ状区画を使用することができ、望ましい場合は、より多くのテーパ状区画を使用することができる。固定ワイヤ254の区画は、およそ不連続な直径の変化、またはテーパ状区画282~288の隣接する区画を接続する所望のワイヤテーパを有することができる。カテーテル本体252内の内腔を隔離するようにカテーテル本体252に固定ワイヤ254を固定するのに役立つように、遠位コイル290の近位端に、接着剤プラグまたはポリマープラグ等のプラグ292を配置することができる。
図9を参照すると、遠位コイル290は、キャップ付きチップ294を有することができる。
図13に、代替実施形態を示し、そこでは、固定ワイヤ320は、プラグ292によって固定され、固定ワイヤ320は、コイルなしの鈍いチップ322で終端する一方で、血管壁への損傷を回避する。
【0033】
図10の実施形態では、固定ワイヤ254の遠位端300は、連続した図に対して垂直な挿入図に示すように、平坦化している。
図12に示すように、カテーテル本体252の近位端は、本体部分306内に長円形受入チューブ304と、Tuohy-Borstコネクタまたは他の好適なコネクタ308を備える、近位取付具302を備えることができる。長円形受入チューブ304は、平坦化した遠位端300を受け入れるような形状であり、平坦化した遠位端300は、その長さに沿った方向において堅く固定されていないという意味で浮き上がっている。本体部分306は、使用者が適切にバルーン/注入カテーテル250を回転させるかまたは摺動させるようにデバイスを把持し操作するために使用することができる。たとえば、熱接着、接着接合、成形、それらの組合せ等、好適な手法を用いて、カテーテル本体252に近位取付具302を固定することができる。
【0034】
神経血管系で使用する場合、バルーン/注入カテーテルの構成要素の寸法の適切な範囲を指定することができる。以下の寸法は、特に、
図9~
図12のバルーン/注入カテーテルの実施形態を参照するが、それらの値は、
図1~
図8の実施形態にも適用可能であり得る。カテーテル本体252の長さは、150cm~250cmとすることができ、特定の実施形態は、185cm±1cmの長さを有することができる。遠位セグメント256は、約15cm~約50cmの長さを有することができ、特定の値は23cmであり、テーパセグメントは、約15cm~約3cmの長さを有することができ、特定の値は約7cmである。カテーテル本体252は、約0.0015インチ~約0.0035インチの壁厚さを有することができ(材料および処理についてはさらに後述する)、特定の実施形態は0.0025インチであり、それにより、内径は外径より約0.005インチ小さい(壁厚さの2倍)。近位外径は、約0.025インチ~約0.015インチとすることができ、特定の実施形態は0.019インチの値を有し、遠位外径は、約0.020インチ~約0.012インチとすることができ、特定の値は0.015インチである。内径は、外径および壁厚さから決まる。当業者であれば、上記明示的な範囲内のさらなる範囲が企図され、本開示の範囲内にあることが理解されよう。
【0035】
固定ワイヤ254は、遠位コイル290の少なくとも一部またはすべてが、プラグ292を越えて突出する固定ワイヤ254の一部の上に延在する等、カテーテル本体252の遠位端を越えて延在することができる。固定ワイヤ254のその部分がカテーテル本体252の端部を越えて延在することは、カテーテル本体252に対して固定ワイヤの方が長いことを示唆する。近位側では、固定ワイヤ254は、
図6の実施形態に示すように、カテーテル本体252の近位端より前で終端することができるが、
図12に示す実施形態では、固定ワイヤ254は、カテーテル本体252の近位端を越えて延在する。したがって、
図8~
図12に示すように、固定ワイヤ254は、概して、カテーテル本体252より幾分か大きい長さを有する。固定ワイヤ254の近位端は、約0.007インチ~約0.012インチ、いくつかの実施形態では約0.009インチの直径を有することができる。最遠位テーパ状区画は、約0.0025インチ~約0.06インチ、いくつかの実施形態では約0.004インチの直径を有することができる。固定ワイヤ254のテーパ状部分、すなわち、近位区画280から遠位方向に延在する部分は、遠位コイル290の下に延在するいかなる部分も含まずに、約25cm~約70cmの全長を有することができ、それは、異なる直径の複数のセグメントを含むことができる。バルーン/注入カテーテル250の長さに沿って、固定ワイヤ径とカテーテル内径との差は、バルーン膨張および注入の両制御を提供する液体流のための間隙を提供する。間隙は、その長さにわたって一定でない可能性がある。固定ワイヤ254の近位区画に沿った間隙は、約0.003インチ~約0.007インチとすることができ、いくつかの実施形態では、近位間隙は約0.005インチであり得る。固定ワイヤ254の最遠位区画における間隙は、約0.005インチ~約0.0089インチ、いくつかの実施形態では約0.007インチとすることができる。バルーン266および注入ポート262は、遠位固定ワイヤの区画に沿って配置することができ、この領域における流れを考慮するとより大きい間隙が望ましい可能性がある。カテーテルの長さに沿った中間領域が、狭くなった間隙を有することができる。当業者であれば、上記明示的な範囲内の長さ、直径および間隙のさらなる範囲が企図され、本開示の範囲内にあることが理解されよう。
【0036】
図14~
図22に、二腔バルーン/注入カテーテルのいくつかの実施形態を示す。これらのカテーテルは、3つの内腔ではなく2つの内腔のみを有するという共通する特徴を有し、設計は、バルーンの遠位側の注入ではなくバルーンの近位側の注入を提供する。したがって、設計は、本明細書に記載する処置に対して特に適した小径デバイスを提供することができる。
【0037】
第1二腔設計は、
図1のシステムにおいて別個の構成要素によって形成された注入ポートに類似する軸方向環状注入ポートを備えた単体構造を提供する。
図14を参照すると、バルーン/注入カテーテル350は、内側管状要素352、外側管状要素354、任意選択的な固定ワイヤ356、任意選択的な遠位コイル358および近位取付具360を備える。使用時、注入流体は、外側管状要素354の内径と内側管状要素352の外径との間の間隙を通って流れる。
図14に示すように、近位取付具360は、終端コネクタ364を備えたY分岐マニホールド362と、近位コネクタ366とを備える。近位取付具360は、特定の実施形態として、外側管状要素354を内側管状要素352と接続する一体化部品として示されているが、近位取付具360が適切なマニホールド構造および対応するコネクタを有する限り、さまざまな代替構造を使用することができる。固定ワイヤ356は、接着剤プラグ、ポリマープラグ等により、その遠位端に固定することができ、
図12に示すような構造を用いてその近位端において浮き上がることができ、または、固定ワイヤを固定しながら流れの維持を提供するクリップ等を用いて、その近位端において固定することができる。
【0038】
内側管状要素352および外側管状要素354は、外側管状要素354がそれらの長さの大部分にわたり内側管状要素352から浮き上がるように、近位取付具360においてのみ固定することができる。他の実施形態では、内側管状要素352は、シャフトの長さに沿った1つまたは複数の位置で外側管状要素354に固定することができる。内側管状要素352および外側管状要素354を固定する連結具は、チューブの間の流れを著しく阻止するべきではない。
図15を参照すると、バルーン/注入カテーテル350の断面図が、内側管状要素352を固定する外側管状要素354の4つの圧着部370を示す。圧着を提供するために外側管状要素354のポリマーを軟化させるために熱を使用することができる。さらにまたは別法として、リベット372または他の好適な締結具を使用して、
図14に示すように、内側管状要素352に外側管状要素354を固定することができる。同様に、外側管状要素354の遠位端にクリップ374等を配置して、注入開口部においてシャフトを固定することができる。外側管状要素354と内側管状要素352との間の接続部は、長さに沿って、1つ、2つ、3つまたはそれより多くの位置に配置することができる。
【0039】
図16および
図17に、同時押出成形された二腔を有するバルーン/注入カテーテル400の実施形態を示す。バルーン/注入カテーテル400は、二腔シャフト402、任意選択的なワイヤ404、近位取付具406およびバルーン408を備える。
図17の断面図を参照すると、二腔シャフト402は、ワイヤ内腔としての役割も果たすバルーン内腔410と、注入内腔412とを有する。バルーン内腔410は、図示するように、円形または楕円形であり得る。注入内腔412は、アーチ形状を有するように示されるが、押出成形された注入内腔の形状は、妥当な選択肢から選択することができる。ポリマーを同時に押出成形して二腔シャフト402を形成することができ、後に、それに近位取付具が連結される。ワイヤ404は、固定ワイヤまたは摺動ワイヤとすることができ、固定要素414は、ワイヤ、または、可動ワイヤの周囲で流れを制限する弁、シールもしくは代替構造を固定する、ポリマーもしくは接着プラグまたは他の構造であり得る。接着剤またはポリマープラグについては、
図1、
図3および
図6に関連して上述しており、弁、シールまたは他の流量制御構造については、以下のように
図18~
図22に関連してさらに説明し、これらの考察は、対応して
図16および
図17のデバイスに関連することができる。ワイヤ404は、その遠位端に任意選択的なコイル416を有することができる。遠位二腔シャフト402の近位端に、近位取付具406を固定することができる。バルーン408の内部は、
図16に示すように、開口部418等を通して、バルーン内腔410と流体連通している。近位取付具406は、注入内腔412と流体連通するY分岐マニホールド420を備えることができ、Y分岐マニホールド420の端部に、コネクタ422を配置することができる。近位取付具406の近位端は、別のコネクタ424を備えることができる。近位取付具406は、浮遊固定ワイヤを支持するように、
図12に示すような受入チューブを備えることができ、または、近位取付具406もしくは遠位二腔シャフト402内のクリップもしくは他の締結具が、固定ワイヤを固定することができ、または、摺動可能なワイヤがコネクタ424から近位側に延在することができる。
【0040】
図18~
図22に関連して、マイクロカテーテルから送達することなくガイドワイヤにわたって送達する二腔カテーテルの代替実施形態について説明する。
図18を参照すると、二腔カテーテル450は、内側シャフト452、外側シャフト454、バルーン456および近位取付具458を備える。内側シャフト452の外側の周囲の外側シャフト454内に、注入内腔460が形成されている。内側シャフト452は、バルーン内腔およびガイド内腔として機能する内腔470を有する。内側シャフト452は、弁472を越える液体流を制限するために、内側シャフト452の遠位端の近くにおいて、内腔470内に弁472をさらに備える。概して、ガイド構造が、二腔カテーテル450の長さにわたって延在し、カテーテルの端部から弁472を通って遠位方向に延在し、弁は、この場合もまた、弁を通るいずれの方向における液体の通過も制限する。バルーンの膨張または注入の前に、ガイド構造を除去する場合もあれば除去しない場合もある。好適な開口部474が、内腔470およびバルーン456の内部へのかつそこからの流体流を提供する。注入内腔460は、1つまたは複数の注入ポート476においてカテーテルから流体流を提供し、それにより、近位リザーバからバルーン456のすぐ近位側のカテーテルの遠位端の近くの注入ポート476まで液体を向けることができる。弁/シールの実施形態について、
図19の考察の後にさらに考察する。
【0041】
図18に関して、近位取付具458は、2つの分岐導管480、482および近位コネクタ484を備える。近位取付具458の特定の構成は、記載した機能を提供するように使用することができるさまざまなオプションに基づいて適切に選択することができる。
図18に示す特定の実施形態では、注入液リザーバ486が、コネクタ488において分岐導管480に接続され、バルーン膨張リザーバ490が、コネクタ492において分岐導管482に接続され、それにより、ガイド構造が、近位コネクタ484において二腔カテーテル450から出ることができる。代替実施形態では、ガイド構造は、バルーン注入リザーバが近位コネクタ484に接続された状態で、分岐導管480を通りかつコネクタ492を通って二腔内腔カテーテル450から出ることができる。
【0042】
図19を参照すると、二腔カテーテル500が、注入内腔およびバルーン内腔の全体的な配置を反転させた、
図18の二腔カテーテル450を有する同様の構造を有する。
図19を参照すると、二腔カテーテル500は、内側シャフト502、外側シャフト504と、バルーン506および近位取付具508を備える。内側シャフト502の外側の周囲の外側シャフト504内に、バルーン内腔510が形成されている。内側シャフト502は、注入内腔およびガイド内腔として機能する内腔520を有する。内側シャフト502は、内側シャフト502の遠位端の近くにおいて内腔520内に弁/シール522をさらに備え、弁/シール522を越える液体流を制限する。概して、ガイド構造は、概して、二腔カテーテル500の長さにわたって延在し、カテーテルの端部から弁522を通って遠位方向に延在し、弁/シールは、この場合もまた、弁を通るいずれの方向における液体の通過も制限する。ガイド構造は、バルーンの膨張の前または注入の前に除去される場合もあれば除去されない場合もある。好適な開口部524が、バルーン内腔510およびバルーン506の内部へのかつそこからの流体流を提供し、内側シャフト502の外側、外側シャフト504の外側またはそれらの組合せの周囲に、バルーン506を固定することができる。内腔520は、1つまたは複数のポート526においてカテーテルから流体流を提供し、それにより、近位リザーバからバルーン506のすぐ近位側のカテーテルの遠位端の近くの注入ポート526まで液体を向けることができる。1つまたは複数の導管528が、1つまたは複数の注入ポート526に内腔520を接続する。導管は、たとえば、所望の導管構造を形成するように壁を貫通する、金属チューブ等の小さいチューブにより形成することができる。
【0043】
近位取付具508は、2つの分岐導管530、532と近位コネクタ534とを備える。近位取付具508の特定の構成は、記載した機能を提供するように使用することができるさまざまなオプションに基づいて適切に選択することができる。
図19に示す特定の実施形態では、コネクタ538において分岐導管530にバルーン膨張リザーバ536が接続され、コネクタ542において分岐導管532に注入液リザーバ540が接続され、それにより、ガイド構造が、近位コネクタ534において二腔カテーテル500から出ることができる。代替実施形態では、ガイド構造が、近位コネクタ534において注入リザーバが接続された状態で、分岐導管532を通りコネクタ542を通って二腔カテーテル500から出ることができる。
【0044】
弁/シール構造の設計は、デバイスの意図された使用によって決めることができる。たとえば、デバイスが、単に、ガイド構造の上を進むように意図されている場合、可動ワイヤの周囲にシールを提供する弁構造が、望ましい機能を提供することができる。カテーテルが、ガイド構造の上を進み、その後除去することができることが意図されている場合、ワイヤの除去に続いて封止するとともに、適所に置かれたガイドの周囲にシールを提供する、弁構造を使用することができる。ガイドワイヤにわたってカテーテルを送達する間、弁は開放しており、それにより、バルーン内に血液が漏れる可能性がある。バルーン内への血液の漏れとバルーンの撮像に関連する対応する複雑化については、共通のガイドワイヤ内腔およびバルーン内腔を有する弁なしデバイスに対して記載されており、参照により本明細書に援用される、「Reinforced Balloon Catheter」と題する、Gulachenskiらによる米国特許出願公開第2016/0144157号明細書を参照されたい。したがって、本明細書に記載するような弁を使用して、こうした漏れを低減させるかまたはなくすことができる。
【0045】
ガイドワイヤ内腔を閉鎖するこれらのカテーテルにおける弁が、ワイヤと係合して、弁において内腔を封止することができる。したがって、弁にガイドワイヤを押し通すことができ、存在する場合は、ガイドワイヤは弁を開放して保持する。ガイド構造が除去される場合、弁は、内腔を封止するように閉鎖することができる。弁は、比較的低コストかつ好適な性能で、これらの応用に対して、ポリマー(エラストマー等)、セラミック、金属またはそれらの組合せ等、さまざまな材料から作製することができるが、ポリウレタンまたはポリシロキサン等のエラストマーから形成することができる。いくつかの実施形態では、弁は2つまたは3つの接合弁尖を備えることができ、弁尖552を有する3弁尖弁550を
図20に示す。2つまたは3つの弁尖を有するガイドワイヤ用の弁については、参照により本明細書に援用される、「Microcatheter」と題するJonesらによる米国特許第6,306,124号明細書にも記載されている。
【0046】
他の弁/シール設計を使用することができる。
図21および
図22の弁/シールの実施形態を参照すると、カテーテル560は、
図21に示すように、ガイド構造が喪失しているときに閉鎖する中心孔564を備えた可撓性エラストマーで形成されたシール562を有する。
図22に示すように、ガイド構造566が、中心孔564を通って延在するようにシール562を通って押し進むことができる。この種の弁/シールは、参照により本明細書に援用される、「Valved Over-The-Wire Catheter」と題する、Daveyによる米国特許第6,432,091号明細書においても考察されている。ガイド構造が除去されるように意図されていない、摺動ガイド構造の周囲の流れを遮断する弁設計は、
図20~
図22の構造と同様とすることができるが、ガイド構造が除去された状態では弁は完全に封止することができないという点を除く。こうした構造については、ともに参照により本明細書に援用される、「Balloon Catheter With Guidewire Valve」と題する、Burnsによる米国特許第5,259,839号明細書と、「Rapid Exchange Catheters Having a Sealed Guidewire Lumen and Methods of Making the Same」と題する、Mallabyによる米国特許第9,174,025号明細書にも記載されている。ガイドワイヤの上に豊富(profusion, perfusion:灌流)カテーテルを取り付ける前に患者の体内にガイドワイヤを送達することが望ましい場合、ガイドワイヤが遠位端から内腔内に挿入されている間に、弁を開放した状態で保持するために、装填器具を使用することができる。好適な装填器具は、弁を越えて挿入し、その後、ガイドワイヤを装填した後に剥離することができる、スリットポリマー管状部であり得る。
【0047】
概して、
図1~
図22に示すカテーテルは、1つまたは複数のマーカバンドを備え、かつ/または他の撮像可能構成要素を使用して、凝血塊の遠位側のバルーンおよび豊富(profusion, perfusion:灌流)ポートを位置決めすることができる。構造は、所望の機械的性能を達成することに基づいて撮像可能要素の配置に対して適切な制約を与えるが、概して、こうした放射線不透過性要素の配置に対して著しい設計の融通性があり、当業者であれば、対応する処置に対して利便性を達成するように、こうした配置を管理することができる。
【0048】
本明細書で用いるガイドワイヤまたはガイド構造は、ワイヤ、コイル、またはコイル要素およびオーバーチューブを備えた一体化ガイド構造等、治療カテーテルの送達を誘導するのに好適な任意の適切な細長い要素を指すことができる。ガイド構造の具体的な例については後述する。
【0049】
カテーテル構成要素は、たとえば、ステンレス鋼もしくは合金、たとえばNitinol(登録商標)等の金属、または、ポリエーテルアミドブロックコポリマー(PEBAX(登録商標))、ナイロン(ポリアミド)、ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリシロキサン(シリコーン)、ポリカーボネートウレタン(たとえば、ChronoFlex AR(登録商標))、それらの混合物、または他の好適な生体適合性ポリマー等のポリマーを含む、1種または複数種の生体適合性材料から形成することができる。放射線不透過性は、ワイヤまたはバンドの形態等、白金-イリジウム合金、タンタル、タングステン、金、プラチナ-タングステン合金またはそれらの混合物等、金属マーカを添加することにより、または、ポリマー樹脂に添加された、硫酸バリウム、三酸化ビスマス、次炭酸ビスマス、粉末タングステン、粉末タンタル等またはそれらの組合せ等、放射線不透過剤(radio-pacifier)を通して、達成することができる。概して、吸引カテーテルの異なる区画を、他の区画とは異なる材料から形成することができ、吸引カテーテルの区画は、異なる位置にかつ/または特定の位置に複数の材料を含むことができる。特に、好適なポリウレタン、ゴム、合成ゴム、ポリジメチルシロキサン、ポリテトラフルオロエチレン、他のエラストマーまたはそれらの組合せ等、エラストマーポリマーからシール構成要素を形成することが望ましい場合がある。さらに、カテーテルの特定の区画に対して所望の剛性/可撓性を導入する材料により、カテーテルの選択された区画を形成することができる。同様に、1種もしくは複数種の金属および/または1種もしくは複数種のポリマー等、好適な材料から、取付具を形成することができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、バルーン/注入カテーテル、マイクロカテーテル、ガイドカテーテル、それらの吸込み延長部分または適切な部分が、ポリマーを補強する金属要素が埋め込まれた熱可塑性ポリマーを含む。好適なポリマーとしては、たとえば、ポリアミド、すなわち、ナイロン、ポリエーテルアミドブロックコポリマー、ポリオレフィン、それらの組合せ等が挙げられる。ワイヤは、ポリマー管ライナの上に、管ライナの上の適所でワイヤを維持するために幾分かの張力で編み組まれ、コイル状に巻かれ、または他の方法で配置することができる。
図23に、代表的な補強カテーテル区画の切取部分を示し、そこでは、カテーテル区画580は、ポリマー壁584に埋め込まれた金属補強材582を有する。いくつかの実施形態では、吸込みチップが、編組ワイヤおよび金属コイルを備えることができ、それにより、薄壁による機械的強度とともに、要素に対する望ましい可撓性および弾性が提供される。そして、最上部の上に熱収縮ポリマー等のポリマージャケットを配置し、またはポリマーを軟化させて、金属補強材の組込みを可能にすることができる。ポリマーの軟化温度または熱収縮温度を超える温度まで加熱し、その後冷却すると、ワイヤは、ポリマー内に埋め込まれる。適切な実施形態では、ライナおよびジャケットは、同じ材料でも異なる材料でもあり得る。好適なワイヤとしては、たとえば、平坦なステンレス鋼ワイヤ等が挙げられる。ワイヤ径は、約0.00025インチ(0.00635mm)~約0.004インチ(0.1mm)、さらなる実施形態では、約0.0005インチ(0.013mm)~約0.003インチ(0.075mm)の範囲であり得る。1インチあたりの編組ピックは、約20~約250ピック/インチ、さらなる実施形態では、約50~約150ピック/インチであり得る。コイルは、たとえば、約0.005インチ(0.13mm)~約0.1インチ(2.54mm)、さらなる実施形態では、約0.01インチ(0.26mm)~約0.050インチ(1.27mm)のピッチを有する、シングルフィラメントまたはマルチフィラメントコイルであり得る。当業者であれば、明示的な後述する範囲内のさらなる範囲が考えられ、本開示の範囲内にあることが理解されよう。ワイヤは、適切な量の可撓性を維持しながら、さらなる機械的強度を追加する。ワイヤは、幾分かの放射線不透過性を提供することができるが、放射線不透過性バンドが、概して、ワイヤに対してより暗く識別可能な画像を提供する。しかしながら、ワイヤの画像は、処置中にカテーテルのさらなる視覚化を提供することができる。
【0051】
カテーテルから放射線不透過性バンドが偶発的に除去される可能性を低減させ、放射線不透過性バンドが血管内で他の物体に引っ掛かる可能性を低減させるために、金属補強ワイヤを使用して、放射線不透過性バンドを覆うかまたは封入することができ、金属ワイヤは後に、ポリマー内に埋め込まれる。先行する段落において記載したように、金属ワイヤは、織り合わされたワイヤ、コイル、それらの組合せ等を含むことができる。金属ワイヤの上にポリマージャケットを配置することができ、それは、対応して放射線不透過性バンドを覆っており、熱接着もまた、放射線不透過性マークバンドを埋め込む。金属ワイヤの下にマーカバンドを配置することにより、壁がキンクするかまたはつぶれた場合に、カテーテルからバンドが分離するのを防止することができる。カテーテル壁のつぶれまたはキンクが発生する場合、バンドの表面にわたる編組ワイヤは、マーカバンドの上に折り畳まれて、マーカバンドが構造から分離するのを防止する。
【0052】
図24を参照すると、カテーテルに対して補強管状構造の区画を形成する手順の例を概略的に示す。ポリマーライナ600が、マンドレル602の上に配置される。続く2番目の図では、ポリマーライナの上に金属編組604が配置されており、このステップに対して、市販の編組機器を使用することができる。続きの3番目の図に示すように、編組ワイヤ604の上に金属コイル606が配置され、コイル606の上にポリマーカバー608が配置される。
図24での続く4番目の図に示すように、熱源610を使用して、熱収縮ポリマーカバー608を加熱して、補強カテーテル区画612を完成することができる。
【0053】
治療システム
先行するセクションに記載したバルーン/注入カテーテルの使用は、吸引カテーテルの使用も含む。概して、ガイドカテーテルも使用され、それは、吸引カテーテルシステムの構成要素である場合もあれば構成要素でない場合もある。いくつかの処置に対して、バルーン/注入カテーテルと同時に、または逐次、追加の構成要素もまた使用することができる。
図25は、本明細書に記載する処置の実施のためのシステムとして適切な組合せで使用することができる代表的な一組のデバイスを概略的に示す。システムの構成要素は、合わせて包装される場合もあればされない場合もある。
図25を参照すると、治療システム650は、バルーン/注入カテーテル652、ガイドカテーテル654、吸引カテーテルまたはノズル656、ガイド構造658、追加の治療構造660、後部取付具662、注入流体源664、バルーン膨張流体源666および吸引源668を備える。所定の治療システムは、特定の治療目的を満足させるために、これらの構成要素の一部、同じタイプもしくは異なるタイプの追加の構成要素、またはそれらの組合せを備えることができる。特に重要な実施形態に対して、概して、治療システム650は、少なくともバルーン/注入カテーテル652および吸引カテーテルまたはノズル656を備え、そこでは、吸引ノズルは、吸引システムとしてガイドカテーテルと機能する。バルーン/注入カテーテル652の実施形態については、詳細に上述している。概して、
図1~
図22におけるバルーン/注入カテーテルの実施形態のうちの任意のものを使用することができるが、いくつかの実施形態は、概して別個のガイド構造と使用されない固定ワイヤバルーン/注入カテーテル等、すべての補助的治療デバイスと適合性がある場合もあればない場合もある。
【0054】
ガイドカテーテル654が、単に、患者の血管系内への残りの構造の送達を容易にする構造であり得るか、または、吸引システムを形成するように吸引ノズルとともに機能することができる。
図26に、ガイドカテーテル670の実施形態を示し、吸込みノズルとともに使用されるガイドカテーテルアダプタの実施形態についてさらに後述する。
図26を参照すると、管状シャフト672が、その長さに沿っておよそ一定の直径を有することができ、または、ガイドカテーテルは、異なる直径を有する区画を有することができ、概して、相対的に大きい直径の区画に対して遠位側に相対的に小さい直径の区画がある。管状シャフト672は、患者の体内における管状シャフトの位置決めを容易にするために1つまたは複数の放射線不透過性マーカバンドを有することができ、
図26は、管状シャフト672の遠位端の近くのマーカバンド674を示すが、要求に応じて、代替位置を使用することができる。管状シャフト672は、その内面および/または外面または一部にコーティングを有することができる。また、ガイドカテーテルは、その遠位端にまたは遠位端の近くにバルーンと、対応するバルーン内腔とを有することができる。ガイドカテーテル670は、シャフト672の近位端に止血弁676を備えることができ、他の取付具は、止血弁676に加えてまたはその代わりとして使用されるように適合させることができ、それらは、単体構造として接続されるか、または好適なコネクタを用いて接続される。上述したカテーテルの材料、寸法および構造の説明は、ガイドカテーテルに等しく適用することができる。
【0055】
吸引カテーテルは、単独で使用される場合であっても、大脳凝血塊の除去のための有効な構成要素であり得る。吸引カテーテルは、単独で使用される場合に有効であり得るが、吸引カテーテルが、本明細書に記載する他の要素と組み合わされるとき、組み合わされた治療システムは、協働して凝血塊を除去しようとして、いくつかの要素を提供することができる。吸引カテーテルは、凝血塊の近位側から除去力を提供する。
【0056】
大脳血管系の細い曲がりくねった血管内での改善された吸込みを提供するために、さまざまな吸引カテーテルが開発された。いくつかの実施形態では、これらの吸引カテーテルは、細い血管内に達することができる細くなった先端チップを有するが、近位内腔の方が大きいために、血管から出る大流量を提供することができる。これらの改善された設計については、参照により本明細書に援用される、「Aspiration Catheters for Thrombus Removal」と題する、Galdonikらによる米国特許第9,662,129号明細書に記載されている。
図27を参照すると、より小さい血管にアクセスする吸引カテーテル680は、チューブ682と、チューブの平均径に対してより小さい平均径を有する縮径遠位セグメント684と、任意選択的な湾曲遠位チップ686と、湾曲していてもしていなくても遠位チップにまたはその近くにあり得る放射線不透過性マーカバンド688と、近位端690と、吸引接続部692と、吸込みデバイス694と、ガイド構造または他のデバイスをカテーテル内腔に挿入するための近位ポート696とを備える。吸引カテーテル680は、任意選択的に、ラピッドエクスチェンジポートを備えたラピッドエクスチェンジ構成を有することができる。吸引接続部692は、吸込みデバイス694との封止接続を提供する取付具等を備えることができ、または、吸込みデバイス694は、近位端690の一体部品として形成することができ、それにより、吸引接続部692は一体接続部である。好適な吸込みデバイスとしては、シリンジ等、選択された量の吸込みを送達することができる吸込みデバイス、圧縮ブラダ、蠕動ポンプ等またはピストンポンプ等のポンプ等が挙げられる。
【0057】
遠位セグメント684は、カテーテルのチューブ682の平均外径の約25パーセント~約95パーセント、さらなる実施形態では、約45~約90パーセント、さらなる実施形態では、チューブの平均径の約60~約85パーセントの外径を有することができる。たとえば、遠位セグメント684は、約0.015~約0.120インチの外径範囲を有することができ、チューブ682は、約0.030~約0.150インチ、他の実施形態では、約0.040~約0.125インチ、さらなる実施形態では、約0.045~約0.120インチの外径範囲を有することができる。当業者であれば、上記明示的な範囲内の寸法のさらなる範囲が企図され、本開示の範囲内にあることが理解されよう。任意選択的な実施形態では、曲がったまたは湾曲したチップが、チップから延在するガイド構造に沿った追跡を制御することにより、患者の血管内への送達中に改善された追跡を提供することができる。
【0058】
神経血管径系処置に対して承認されかつ市販されている細くなった遠位セグメントを備える吸引カテーテルとしては、MI-AXIS(商標)(MIVI Neuroscience,Inc.)およびMAX(商標)カテーテル(Penumbra)が挙げられる。新しい設計は、ガイドカテーテルから延在する吸引カテーテルの細くなった拡張部を備える吸引内腔の一部として機能するガイドカテーテルの使用に基づく。参照により本明細書に組み込まれる、「Catheter Systems for Applying Effective Suction in Remote Vessels and Thrombectomy Procedures Facilitated by Catheter Systems」と題する、Ogleらによる米国特許出願公開第2017/0143938号明細書を参照されたい。
図28に、これらのノズル型吸引カテーテルの実施形態を示す。
【0059】
図28を参照すると、吸込みシステム700は、吸込み適合ガイドカテーテル702および吸込み延長部704を備える。吸込み適合ガイドカテーテル702は、近位区画706および管状シャフト708を備える。近位区画706は、概して、ハンドルとしても使用されるために好適であり、概して、近位取付具720、吸込みポート722および任意選択的な制御ワイヤポート724とともに、所望の機能およびアクセスを提供するために場合により他の追加のポートおよび/または取付具を備えることができ、そこでは、すべてのこうしたポートおよび取付具は、分岐構成または他の好適な構成で配置することができる。近位取付具720は、代替的な治療構造および/または塞栓保護デバイス等、ガイドワイヤにわたってガイドカテーテル内腔内に送達されるガイドワイヤおよび/または構造の進入を提供するために、好適な止血弁、ルアーフィッティング、Tuohy-Borstコネクタ等を備えることができる。
図28に示すように、吸込みポート722に負圧装置726が接続されるように示されており、好適な負圧装置としては、たとえば、シリンジ、蠕動ポンプ、ピストンポンプまたは他の好適なポンプ等のポンプ、アスピレータ/ベンチュリ等が挙げられる。
【0060】
管状シャフト708は、その長さに沿っておよそ一定の直径を有することができ、または、ガイドカテーテルは、異なる直径の区画を有することができ、概して、相対的に大きい直径の区画に対して遠位側に相対的に小さい直径の区画がある。管状シャフト708は、患者の体内における管状シャフトの位置決めを容易にするために1つまたは複数の放射線不透過性マーカバンドを有することができ、
図28は、管状シャフト708の遠位端の近くにマーカバンド728を示すが、要求に応じて、さらなる位置および/または代替的な位置を使用することができる。シャフトの遠位端にまたはその近くに、管状シャフト708の内腔内に吸込み延長部704の一部を保持するために、止め具730が位置決めされている。管状シャフト708は、吸込み延長部704を回避する管状シャフト708内のいかなる流れも低減させるかまたはなくすことを可能にするシール532をさらに備えることができる。いくつかの実施形態では、シール732は止め具730と結合することができ、または、設計を通して、吸込み延長部704と管状シャフト708の内腔壁との間に十分密な嵌合があることにより、別個の要素としてのシール732を回避することができる。
【0061】
吸込み延長部704は、近位部分740と、吸込みチップ742と、接続部分744と、任意選択的な係合要素746と、制御ワイヤ等の制御構造748とを備えることができる。近位部分740のすべてまたは一部は、ガイドカテーテル702の内腔内に残るように構成することができる。
図28に示すように、近位部分740は、放射線不透過性マーカバンド752を備えるが、いくつかの実施形態では、マーカバンドを有していない場合もあり、他の実施形態では、複数のマーカバンドを備えることができる。吸込みチップ742は、吸込みチップ742の遠位チップの近くに放射線不透過性マーカバンド754があるように示されているが、望ましい場合は、この場合もまた、吸込みチップ742は、複数の放射線不透過性マーカバンドを備えることができる。接続部分744は、近位部分740および吸込みチップ742を接続し、それは、直径が徐々に変化する遷移部分、または、近位部分と吸込みチップとの間にシールを形成するコネクタであり得る。任意選択的な係合要素746は、止め具730と係合して、ガイドカテーテル702に対する吸込み延長部704の遠位配置制限を確立することができる。いくつかの実施形態では、止め具730は、係合要素746が近位部分740または接続部分742と有効に一体化するように、近位部分740の縁部または他の制限構造と係合するように構成される。制御構造748は、近位部分740と接続し、制御ワイヤポート724を通って出る等、カテーテルの外側に延在する、制御ワイヤ等であり得る。制御構造748を使用して、管状シャフト708の内腔内の近位部分740の位置決めを制御することができる。制御構造748は、制御ワイヤの移動を容易にするために制御ワイヤまたは他の接続要素を固定することができる、ハンドル、スライド等、制御器具756を備えることができる。いくつかの実施形態では、近位部分740の外面と管状シャフト708の内面との間に、別個のシールが不要であるように十分小さい隙間を作成することができる。
【0062】
ガイドカテーテルは、約5.5フレンチ(1.667mm径)~約10フレンチ(3.333mm径)、さらなる実施形態では、約6フレンチ(1.833mm径)~約9フレンチ(3mm径)、いくつかの実施形態では、約6.25フレンチ(2mm径)~約8.5フレンチ(2.833mm径)の外径を有することができる。ガイドカテーテル測定値は、概して外径を参照し、内径は、壁厚さの2倍、外径より小さい。ガイドカテーテルの長さは、約30cm~約150cm、さらなる実施形態では、約35cm~約130cm、さらなる実施形態では、約40cm~約120cmであり得る。吸込み延長部704の長さは、約30cm~約150cm、さらなる実施形態では、約35cm~約130cm、さらなる実施形態では、約40cm~約120cmであり得る。当業者であれば、上記明示的な範囲内の寸法のさらなる範囲が企図され、本開示の範囲内にあることが理解されよう。
【0063】
ガイドワイヤは、別段の指示がない限り、本明細書では、従来のガイドワイヤ、または従来のガイドワイヤに対してより多くの構造的特徴を有することができるガイド構造を指すことができる。神経血管系用途のためのガイドワイヤは市販されている。これらには、0.014インチ(0.36mm)の遠位外径(OD)および0.0155インチ(0.40mm)の近位外径を有するTRANSEND(登録商標)(Stryker)、さまざまな直径を有するSYNCHRO(登録商標)(Stryker)、0.36mm径を有するCHIKAI(商標)(Asahi Intecc)、および、さまざまな直径が入手可能であるHEADLINER(登録商標)(MicroVention/Turumo)が挙げられる。双曲線コアワイヤグラインドを備える大脳血管用のガイドワイヤは、参照により本明細書に援用される、「Medical Guidewires for Tortuous Vessels」と題する、Pokorneyらによる米国特許出願公開第2016/0199620号明細書(以降、‘620出願)に記載されている。これらのガイドワイヤは、本明細書に記載する適切な処置に好適である。
【0064】
ガイド構造658は、任意の遠位構造とは別にその長さの大部分にわたり、約0.005インチ~約0.04インチ、さらなる実施形態では、約0.007インチ~約0.030インチ、さらなる実施形態では、約0.0075インチ~約0.020インチ、他の実施形態では、約0.008インチ~約0.017インチの直径を有することができ、標準的なガイドワイヤ外径は、約0.014インチである。ガイド構造658の長さは、概して、特定の処置設計に対して選択することができる。たとえば、大脳動脈に誘導するために大腿動脈の血管系に進入するために、ガイド構造658は、概して、約190cm(63インチ)~約300cm(106インチ)の長さを有するが、他の進入血管に対しては、30cm~190cm等、より短い長さが好適である可能性がある。当業者であれば、直径に対する明示的な範囲内のさらなる範囲が企図され、本開示の範囲内にあることが理解されよう。
【0065】
概して、ガイド構造658は、ポリマー、金属およびそれらの組合せ等、さまざまな材料のうちの1種または複数種から形成することができるが、金属が、強度、可撓性、および大脳血管内の標的位置への送達可能性の好都合なバランスを提供することができる。好適な材料は、は、非毒性であり、非発がん性であり、血液適合性があり、溶血または著しい免疫学的反応を引き起こさないという点で、概して生体適合性がある。好適な生体適合性材料としては、たとえば、チタン、コバルト、ステンレス鋼、ニッケル、鉄合金、Elgiloy(登録商標)、コバルト-クロム-ニッケル合金、MP35N、ニッケル-コバルト-クロム-モリブデン合金等のコバルト合金、およびNitinol(登録商標)、すなわちニッケル-チタン合金が挙げられる。これらの金属のうちのいくつかは、形状記憶金属として使用されるのに好適であり、そこでは、特定の形状が形成時に金属要素に設計され、要素は、配送のための別の形状にゆがめて、後に、その事前設計された形状を回復することができる。形状記憶金属は、たとえば、後に参照する繊維系フィルタに関して自己作動のために使用することができる。ガイド構造またはその一部に対する好適なポリマーとしては、たとえば、ポリエーテルアミドブロックコポリマー(PEBAX(登録商標))、ナイロン(ポリアミド)、ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリシロキサン(シリコーン)、ポリカーボネートウレタン(たとえば、ChronoFlex AR(登録商標))、それらの混合物、または他の好適な生体適合性ポリマーが挙げられる。
【0066】
ガイド構造は、概して、その長さの大部分にわたりガイドワイヤ構造を有することができるが、任意選択的に、ガイドワイヤ機械的性能に直接関連しない他の特徴をさらに含むことができる。たとえば、‘620出願は、デバイス送達に利用可能なワイヤ長を有効に増大させるように血管内で伸長させることができるコアワイヤを備えるガイド構造について記載している。いくつかの実施形態では、ガイド構造は、概してその遠位端の近くにフィルタまたは塞栓保護デバイスを備えることができる。繊維系フィルタデバイスは、ガイド構造とともに送達されるのに有効であることが分かった。繊維系フィルタデバイスは、生体適合性金属の繊維と混合することができるポリマー繊維を含むことができる。ポリマー繊維として好適なポリマーとしては、たとえば、ポリアミド(たとえば、ナイロン)、ポリエステル(たとえば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリアセタール/ポリケタル、ポリイミド、ポリスチレン、ポリアクリレート、ビニルポリマー(たとえば、ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンおよびポリ塩化ビニル)、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリジメチルシロキサン、セルロールアセテート、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、エチレンビニルアセテート、ポリスルホン、ニトロセルロース、同様のコポリマーおよびそれらの混合物が挙げられる。
【0067】
本明細書に記載する医療システムでの使用に好適である、小さいフィルタの横方向の広がりを有し、血管内の送達を容易にするように好適な操作に対して設計された塞栓保護デバイスが開発された。たとえば、ともに参照により本明細書に援用される、「Fiber Based Embolic Protection Device」と題する、Galdonikらによる米国特許第7,879,062B2号明細書、および「Steerable Device Having a Corewire Within a Tube and Combination with a Medical Device」と題する、Galdonikらによる米国特許第8,092,483B2号明細書を参照されたい。これらの特許の技術に基づくFiberNet(登録商標)塞栓保護デバイスが、Medtronic Inc.から販売されている。これらの繊維系塞栓保護デバイスは、患者の体外の近位端にあるアクチュエータを使用して塞栓保護デバイスの展開を可能にするコアワイヤを備えたガイド構造を備える。
【0068】
大脳動脈等、曲がりくねった血管内に送達するように特に設計されたさらなる繊維系フィルタデバイスは、参照により本明細書に援用される、「Embolectomy Devices and Method of Treatment of Acute Ischemic Stroke Condition」と題する、Galdonikらによる米国特許第8,814,892B2号明細書(以降、‘892特許)に記載されている。繊維系フィルタは、概して、血管壁に対して低摩耗面を提供するポリマー繊維を含むが、血管壁への摩耗を回避するように構造内に組み込むことができる、フィルタに機械的強度を追加するいくつかの金属繊維/ワイヤも含むことができる。‘892特許は、吸引カテーテルと使用される凝血塊係合器具としてのフィルタデバイスの使用について記載する。‘892特許はまた、凝血塊との係合を容易にする補完構造の使用も想定している。繊維系フィルタデバイスのさらなる実施形態については、‘061出願に記載されている。これらのフィルタは、マイクロカテーテルまたは他の構造を使用して展開することができる。
【0069】
さらに後述するように、処置は、血管内の所望の位置へのアクセスを容易にするためにガイドワイヤを使用することができ、プロセス中のいずれかの時点で除去することができる。上述したように、バルーン/膨張カテーテルは、ワイヤが関係しない場合があり、一体型固定ワイヤを有する場合があり、または、ガイドワイヤの上を進むことができる設計を有する場合がある。ガイドワイヤの上を進むことができるカテーテル設計(
図8、
図16(いくつかの実施形態)、
図18および
図22を参照されたい)は、それらの遠位端に塞栓保護構造を有するガイド構造とともに使用することができる。
【0070】
追加の治療構造660または複数の治療構造660の使用もまた、本明細書に記載する処置におけるオプションとして企図される。追加の治療構造660としての好適なデバイスは、たとえば、凝血塊の除去を容易にするように凝血塊に機械的力を加えることができる。追加の治療構造660に関して、好適なデバイスとしては、たとえば、血管形成バルーン、ステント送達デバイス、ステントリトリーバー等のアテレクトミーデバイス等が挙げられる。ステントは、たとえば、バルーン拡張式、自己拡張式、または他の任意の適度な機構を用いて拡張可能であり得る。バルーン拡張式ステントは、送達のためにバルーンに圧着することができる。いくつかのバルーン-ステント構造は、各々が参照により本明細書に援用される、「Stent Delivery Device」と題する米国特許第6,106,530号明細書、「Method of Making an Angioplasty Balloon Catheter」と題する同第6,364,894号明細書、および「Ballon[sic(原文のまま)] Catheter For Stent Implantation」と題する同第6,156,005号明細書にさらに記載されている。自己拡張式ステントは、ともに参照により本明細書に援用される、「Gradually Self-Expanding Stem」と題する、Jantzenらによる米国特許第8,764,813号明細書、「Self-Expanding Stent」と題する、Cottone,Jr.らによる同第8,419,786号明細書にさらに記載されている。ステントリトリーバーは、たとえば、参照により本明細書に援用される、「Retrieval systems and methods of use thereof」と題する、Martinらによる米国特許第8,795,305号明細書に記載されている。血管壁とのより緩やかな接触面を提供するために可撓性フレームおよびポリマーカバーを有するステントリトリーバーについて、‘061出願に詳細に記載されている。‘061出願に記載されているようなステントリトリーバーは、バルーン/注入カテーテルの送達の前に使用して除去することができる。
【0071】
上述したように、マイクロカテーテルは、バルーン/注入システム(
図1を参照)の構成要素として使用することができ、マイクロカテーテルは、処置中に他の目的で使用することができる。マイクロカテーテルは、大脳血管等、小さい血管へのアクセスを可能にするように設計されており、大脳マイクロカテーテルは、市販されており、たとえば、Prowler Select(商標)(Cordis Neurovascular Inc.)およびSpinnaker Elite(商標)(Boston Scientific Co.)である。当然ながら、マイクロカテーテルという要素は、広範囲のデバイスを包含することができ、本考察は、本明細書に記載する処置に対して有用なカテーテルに焦点を当てることができる。いくつかの実施形態では、マイクロカテーテルは、近位区画より細い遠位区画を含むことができる。しかしながら、さらなる実施形態では、マイクロカテーテルは、マイクロカテーテルにわたる他のデバイスの送達を容易にするために、その長さに沿っておよそ一定の直径を有することができる。遠位径が細いことにより、カテーテルが、脳の曲がりくねった血管を進むことができる。遠位区画は、血管を進むのに十分に高い可撓性があるが、キンクに抵抗するのに十分な弾性があり得る。マイクロカテーテルは、少なくとも1つの内腔を備える。そして、マイクロカテーテルは、他の治療デバイス、吸引流、治療薬等またはそれらの組合せを送達する(または提供する)ために使用することができる。マイクロカテーテルは選択されたサイズを有することができるが、いくつかの実施形態では、約1.0フレンチ~約3.5フレンチ、さらなる実施形態では、約1.5フレンチ~約3フレンチの遠位外径と、約30cm~約200cm、さらなる実施形態では、約45cm~約150cmの長さとを有することができる。当業者であれば、上記明示的な範囲内のさらなるサイズ範囲が企図され、本開示の範囲内にあることが理解されよう。
【0072】
後部取付具662は、治療システム650の組立および操作に対して、カテーテルと一体であるか、または適切なコネクタを備えた別個の構成要素であり得る、好適な構造を有することができる。たとえば、さまざまな従来のコネクタを取付具と関連付けて、デバイスの接続を容易にすることができ、好適なコネクタとしては、たとえば、tuohy-borstコネクタ、ルアーコネクタ等が挙げられる。上述したように、ガイドカテーテルは、概して1つの止血弁を備えるが、後部取付具662は、システムとしてさまざまな構成要素の使用に好適である場合、1つまたは複数のさらなる止血弁を備えることができる。止血弁は、出血がほとんどまたはまったくなしで、デバイスをカテーテル内に通すことを可能にするものであり、市販されている。後部取付具662は、追加の取付具の所望のコネクタまたは連結具を提供するように、任意選択的な分岐を有するマニホールド構造を備えることができる。たとえば、後部取付具662は、1つまたは複数のY分岐または代替的な分岐構造を備えることができ、それは、たとえば、注入流体源664、バルーン膨張流体源666、吸引源668またはそれらの組合せのためのコネクタを提供することができる。
【0073】
注入流体源664およびバルーン膨張流体源666は、別個の構造であり得るか、または、内腔バルーン/膨張カテーテルがバルーン膨張および注入の両方に対して共通の内腔を使用する場合、単一構造として結合することができる。注入流体源664およびバルーン膨張流体源666に対する好適な構造は、流体のリザーバおよび流体送達構造を含むことができる。流体送達構造は、シリンジ、圧縮ブラダ、蠕動ポンプまたはピストンポンプ等のポンプ等、手動または機械式であり得る。バルーン膨張流体源666(または結合された流体源)は、概して、バルーンを収縮させることが望まれる場合、流体を除去するために可逆的でもある。
【0074】
注入流体のリザーバは、概して、処置のために選択された容量で、滅菌緩衝生理食塩水、患者自身の血液または適切な型の血液等、適合血液等の生体適合性液体を含むが、バルーン膨張流体源は、原則的には、注入に使用されず患者の体内に入らないように維持される場合、より広範囲の流体を含むことができる。注入液は、血栓溶解薬、鎮けい剤またはそれらの組合せ等の薬物をさらに含むことができる。血管から液体が吸引されるため、概して比較的大量の薬物を治療領域において短期間利用可能であるように送達することができる。好適な血栓溶解薬としては、たとえば、tPA(組織プラスミノーゲン活性化因子)が挙げられる。注入リザーバは、約0.1cc(立方センチメートル)~約50cc、さらなる実施形態では、約0.2cc~約35cc、さらなる実施形態では、約0.25cc~約25ccの容積を有することができる。当業者であれば、上記明示的な範囲内の容積のさらなる範囲が企図され、本開示の範囲内にあることが理解されよう。吸引源668は、任意の好適な負圧装置であり得る。好適な負圧装置としては、たとえば、シリンジ、蠕動ポンプ、ピストンポンプまたは他の好適なポンプ等のポンプ、アスピレータ/ベンチュリ等が挙げられる。好適なポンプは、Allied Healthcare Products,Inc.から入手可能であり、Mivi Neuroscience,Inc.により販売されている。
【0075】
処置
本明細書に記載する処置は、概して、吸引および注入に基づく凝血塊除去を提供するように設計されている。結果として得られる流れからの結果として得られる液圧および流体力学力は、血管壁および周囲組織に対するより少ない外傷を目的として凝血塊除去に対する有効なプロセスを提供することができる。処置全体は、凝血塊を越えて血管、たとえば、大脳血管にアクセスすることを可能にする。バルーン/注入カテーテルが、バルーンおよび注入ポートが凝血塊の遠位側に位置するように配置され、吸引カテーテルが、吸引ポートが凝血塊に対して近位側にあるように配置される。そして、注入および吸引が同時に適用されて流れが確立されるが、必ずしも、各流れを適用する時間全体を通してではない。結果として得られる流体流により、凝血塊またはその一部が吸引カテーテルにかつ/または吸引カテーテル内に移動するのが促進される。以下の考察は、急性虚血性脳卒中事象を引き起こす大脳動脈内の凝血塊を除去する処置に焦点を当て、当業者であれば、本明細書の考察に基づいて患者の体内の他の動脈または他の血管に対してこの考察を適合させることができる。
【0076】
図29を参照すると、ヒト患者780が、治療システム782の適切な部分が患者の大腿動脈784内に挿入された状態で示されており、そこでは、構成要素は、下行大動脈786を上って大動脈弓をまわって上行大動脈788まで誘導され、そこで、構成要素は、心臓に達する前に頸動脈790(左または右)内に誘導される。そして、構成要素の遠位端は、患者の頸部を通って内頸動脈に、次いで神経血管系を形成する大脳動脈内に誘導される。これは、大脳動脈への望ましいアプローチであり得るが、代替的なアクセス位置には、腕792または頸部794が挙げられる。リアルタイム撮像を用いて凝血塊の遠位側のバルーンおよび注入ポートの配置を含むさまざまなデバイスの配置に役立つように、概して放射線不透過性マーカが使用される。
【0077】
図30に、処置の実施に対する基本的な配置を概略的に示す。上述したように、基本的な概念は、凝血塊を押しのけるために拡張した閉鎖バルーンと吸引カテーテルとの間に液圧力を生成することである。
図8に示すように、治療システムは、患者の血管800、たとえば動脈内に位置決めされる。凝血塊802は、血管800内に留まっている。バルーン/注入カテーテル804は、バルーン806が凝血塊802に対して遠位側で膨張し、注入ポート808が凝血塊802とバルーン806との間に位置決めされるように、血管800内に位置決めされる。吸引カテーテル810は、吸引開口部812が血管800内の凝血塊802に対して近位側にあるように、バルーン/注入カテーテル804の上に位置決めされる。流れ矢印814は、吸引からもたらされる流れを示し、バルーン806と凝血塊802との間で血管800内に注入される注入流体816は、陰影付けして示されている。遠位から近位の方向における凝血塊802に対する液圧力は、凝血塊に対して遠位側の注入流体816によって生成され、吸込みは、凝血塊802に対して近位側の吸引カテーテルによって適用される。
【0078】
経皮処置に対する予備的準備は、止血取付具、および患者の体内へのアクセスを提供する他の適切な構成要素の配置とともに、動脈系内へのアクセスを含むことができる。いくつかの実施形態では、大腿動脈内へのアクセスが得られるが、他のアクセス位置を使用することができる。大腿動脈を通るアクセスの場合、デバイスは、動脈の上流に進み総頚動脈への入口まで誘導するガイドを含むことができ、総頚動脈から、大脳血管系内へのアクセスを得ることができる。いくつかの実施形態では、処置の後続するステップを容易にするために、ガイドカテーテルが、その遠位端が内頸動脈等の頸動脈内にあるように配置される。ガイドカテーテルはバルーンを有することができ、ガイドカテーテルが閉鎖バルーンを有するか否かに関わらず、ガイドカテーテルは吸込みに使用される場合もあればされない場合もある。
【0079】
本明細書に記載する処置の共通の特徴は、概して、ガイド構造、たとえばガイドワイヤを用いて実施される、凝血塊に対して遠位側の大脳動脈へのアクセスを得ることを含む。凝血塊に対して遠位側の位置は、概して、凝血塊が少なくとも部分的に除去されるまで維持される。ガイド構造が位置を確立すると、ガイド構造をわたって構成要素を送達することができる。いずれかの時点で、バルーン/注入カテーテルが、バルーンを凝血塊に対して遠位側に、注入ポートをバルーンと凝血塊との間に位置決めするように、送達される。送達プロセスにマイクロカテーテルが関与する場合もあれば関与しない場合もあり、ガイドワイヤは、バルーン/注入カテーテルの配置の前に除去される場合もあれば除去されない場合もある。ガイドワイヤがバルーン/注入カテーテルの配置の前に除去される場合、凝血塊に対して遠位側の位置を維持するために、マイクロカテーテルが概して使用される。また、ガイドカテーテルは吸引に使用することができるが、液圧力の始動の前に吸引カテーテルが配置される。バルーン/注入カテーテルがガイド構造の上を進むことができる場合、バルーン/注入カテーテルの送達の前に、マイクロカテーテルを通して、ワイヤベースの治療デバイスを送達することができる。流体流を使用して、血管から凝血塊またはその一部が除去される。塞栓の解放を回避するように設計された妥当な処置を使用して、治療システムの構成要素を除去することができる。ステップのこの順序は、実際的な実施態様を考慮し、処置に概要を提供するが、全体的な処置と一貫する場合、ステップの順序における妥当な変形を使用することができる。したがって、適切なステップを異なる順序で実施することができ、いくつかのステップは、他のステップの一部の間に散在させることができるサブステップにおいて実施することができる。また、必要に応じてかつ使用者の要求に応じて、処置を通してさまざまな構成要素の再配置を行うことができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、処置を行うために、概して、ガイドワイヤが、その遠位端が凝血塊を通るまたは凝血塊を越える挿入に続き、凝血塊をさらに越えて延在するように位置決めされる。
図31は、凝血塊を含む神経血管動脈と、動脈内に位置決めされたガイドワイヤとを示す。そして、ガイドワイヤを用いて、処置のために追加の構成要素の送達を誘導することができる。
図31を参照すると、頸動脈832内にガイドカテーテル830を配置することができる。ガイドワイヤ834が、その遠位チップ838が凝血塊840を越えて位置決めされて、頸動脈832を越えて大脳動脈836内に誘導される。図において頸動脈832から大脳動脈836内に分岐する上流大脳動脈842までの簡略化した血管経路を、図面を簡略化するために図示しない経路の一部に留意するために、破線によって示す。このステップは、概して、凝血塊に対して遠位側の所望の位置にアクセスすることに関して重要であり、凝血塊からの血栓がより近位側の位置まで移動するかまたは患者の体内から除去されるまで、凝血塊に対して遠位側のこの位置は概して維持される。
【0081】
次のステップは、バルーン/注入カテーテルがガイド構造の上を進むことができるか否かによって決まる可能性がある。この次の図は、固定ワイヤを有するか否かに関わらず、ガイド構造の上を進むように設計されていない(1つまたは複数の内腔を有する)バルーン/注入カテーテルの実施形態に焦点が当てられるが、ガイド構造が存在しない場合に、適切なシールがカテーテル内腔内への流れを遮断することができると想定して、ガイド構造の上を進むことなく、ガイド構造にわたって送達することができるバルーン/注入カテーテルを使用することができる。この考察に続き、バルーン/注入カテーテルが処置中にガイド構造の上を進む場合の処置のあり得る改変について考察する。
図32を参照すると、マイクロカテーテル848が、その遠位チップが凝血塊840を越えるようにガイドワイヤ834の上に位置決めされる。マイクロカテーテル848が適所に置かれると、マイクロカテーテルを用いて凝血塊に対して遠位側へのアクセスを維持しながら、ガイドワイヤ834を除去することができる。
【0082】
ガイドワイヤ834が除去される前または除去された後のいずれかにおいて、
図33に示すように、吸引カテーテル860を、その遠位チップ862が大脳血管836に入るように位置決めすることができる。血管系および吸引カテーテル設計の詳細に応じて、吸引カテーテル遠位チップを凝血塊840に近づけるかまたは遠ざけることができ、吸引カテーテルは、上流大脳動脈842内の適切な位置にあり得る。上記考察から、処置に関連して、吸引カテーテルに対する参照は、吸引システムの一部である吸引ノズルを同様に含むことができ、吸引構成要素のこうした代替使用は、処置に関するこのセクションにおける実施形態のすべてに対し意図されていることを理解することができる。処置を実施する医療専門家は、吸引カテーテルの位置に基づき、それに応じて処置を調整することができる。
【0083】
図33を参照すると、ガイドワイヤ834の除去に続き、凝血塊840を越えてバルーン866および注入ポート868を配置するように、マイクロカテーテル848を通してバルーン/注入カテーテル864が送達される。吸引カテーテル860およびバルーン/注入カテーテル864の送達の順序は、概して、要求に応じて選択することができる。
図34を参照すると、バルーンを越えるいずれの方向においても流れを阻止するために、バルーン866が膨張する。
【0084】
吸引および注入は、概して、バルーン866の膨張に続いて始動される。また、吸引および注入は、およそ同時に、または計画された時間間隔で逐次、始動することができ、適切に同時であるように計画される場合であっても、概してプロセスを開始する時間からわずかな遅延がもたらされるように、プロセスは、概して、別個に始動される。実際には、医療専門家は、バルーンの膨張、吸引の開始および注入の開始の順序に関する個人的な選好に従って、技法を展開させることができる。たとえば、専門家は、吸引を開始し、その後、バルーンを膨張させて、次いで、液体を注入するように望む場合がある。概して、凝血塊からの血栓の解放に基づき、血管内の下流の塞栓の流れを回避することに適切な注意を払って、任意の妥当なプロセス順序を使用することができる。
【0085】
図35を参照すると、吸引開口部の近くの吸引カテーテル860内への流れ矢印により、吸引が示されており、注入ポート868の近くの流れ矢印は、注入液の血管内への注入を示す。凝血塊の閉鎖効果により、液体の注入は、最初は、凝血塊とバルーンとの間の圧力を上昇させる傾向がある。圧力上昇は、血管壁が幾分かの弾性を有する場合、それに応じて血管径を増大させる傾向がある。注入圧力および液体容量は、結果に対する損傷を回避するように制御することができる。注入による液体送達の量は、凝血塊が押しのけられる際に任意選択的に変更することができ、液体は、吸引カテーテルに、より迅速に流れることができる。それにも関わらず、近位位置からの吸引と遠位位置からの注入によって確立された液圧は、遠位から近位の方向において移動する液圧力を確立した。
【0086】
図35を参照すると、大脳血管836における液圧力により、凝血塊840からの血栓870は近位方向に移動する。血栓が移動し続けることにより、
図36に示すように、捕捉された血栓は吸引カテーテル860によって除去され、かつ/または、捕捉された血栓872は、吸引カテーテル860内への開口部にあることになる。凝血塊のサイズおよび凝血塊物質の剛性に応じて、凝血塊は、吸引カテーテルの内腔内に完全に入る場合もあれば入らない場合もある。血栓は、除去プロセス中に分断する可能性があり、凝血塊840からの血栓の一部は吸引カテーテル860を通して除去され、血栓の一部は吸引カテーテル860の開口部において捕捉され、または概して、血栓のすべての連続体に対する任意の量が吸引により除去され、または、血栓のすべてが、吸引カテーテル860の最上部に収集される。凝血塊による吸引カテーテルの閉鎖または部分的閉鎖により吸引流が減少する場合、注入流を低減させるかまたはオフにすることができる。
【0087】
血栓の適切な捕捉に続き、バルーン866を部分的に収縮させ、またはおよそ完全に収縮させ、その後、血管から除去することができる。
図37を参照すると、バルーン866は、部分的に収縮しており、大脳動脈836からの除去が開始している。マイクロカテーテル848は、バルーン/注入カテーテル864と同時に、またはバルーンが本質的に完全に収縮する前にまたはその後に、別個に除去することができる。いくつかの実施形態では、吸引カテーテル860の内壁と吸引カテーテル860内を通過するデバイスとの間の吸引内腔の容積をわずかに増大させるように、凝血塊840を除去する前に、バルーン/注入カテーテル864の送達に続き、マイクロカテーテル848を少なくとも部分的により近位側の位置に移動させることができる。
図37に示すように、マイクロカテーテル848は、バルーン/注入カテーテル864と同時に除去される。
【0088】
吸引は、デバイス除去プロセスまたはその別個の部分の間に、異なる時点で同じ圧力または低下した圧力またはそれらの組合せで維持する場合もあれば維持しない場合もある。注入は、概して、バルーン866を収縮させる前に停止する。吸引カテーテル860は、バルーン/注入カテーテル864と同時に、または、バルーン/注入カテーテル864の除去に続き、除去することができる。いくつかの実施形態では、バルーン866が吸引カテーテル860内への開口部の近くに引き抜かれるまで、吸引カテーテル860は適所に維持され、その後、カテーテル860、864は合わせて除去される。概して、吸引カテーテル860およびバルーン/注入カテーテル864を除去する選択された順序は、医療専門家が、自身の経験に基づき選好を展開することができ、さらなる臨床的研究が処置の所定のニュアンスを提案することができるということを幾分か考慮して、さまざまな妥当な順序およびその変形において選択することができる。構成要素の除去の順序は、血栓からの塞栓のリスクが低く、血栓の除去を促進するように、選択することができる。最終的に、システムのデバイスのすべてが患者の体内から除去され、患者の進入点は閉鎖される。
【0089】
バルーン/注入カテーテルがガイドワイヤの上を進むことができるため、処置に対するさまざまな追加のオプションが利用可能である。こうした実施形態では、マイクロカテーテルは、凝血塊に対して遠位側の位置へのアクセスを維持する必要がないため、マイクロカテーテルは使用しない可能性がある。それにも関わらず、オプションは、バルーン/注入カテーテルの送達を容易にするためにマイクロカテーテルをさらに使用することである。こうした実施形態を
図38に示すが、マイクロカテーテルを使用しない実施形態は、マイクロカテーテル848のみが存在せずに、同様に見える。
図38を参照すると、血管、凝血塊および補助デバイスは、
図32~
図37と同じであるように示されているが、バルーン/注入カテーテル880はガイド構造882の上を進む。
図38および挿入拡大図を参照すると、バルーン/注入カテーテル880は、バルーン884、注入ポート886および弁/シール888を備える。弁/シール888が適切な閉鎖を提供することができると想定すると、いくつかの実施形態では、バルーン/注入カテーテル880の配置に続き、ガイド構造882を除去することができる。バルーン/膨張カテーテル880が適所に置かれると、
図34~
図37に関連して記載したように処置は継続することができるが、マイクロカテーテルが使用されない場合、ガイド構造882の除去および好適な調整が適切に考慮されることを除く。ガイド構造882は、バルーン/注入カテーテル880と同時に、または、バルーン/注入カテーテル880内への血液の漏れが著しく発生しないか、または、バルーン884を収縮させた後等、処置の特定の段階で問題ではない場合、処置の早期に、除去することができる。
【0090】
バルーン/膨張カテーテルが別個のガイド構造の上を進むことができる場合、処置のさらなる実施形態を考慮することができる。具体的には、当初のガイドワイヤを、ガイド構造に取り付けられたフィルタ等、代替的な処置構造に置き換えることができる。これらの実施形態では、少なくとも治療デバイスの配置まで凝血塊に対して遠位側の位置へのアクセスを維持するために、マイクロカテーテルが使用され、凝血塊に対して遠位側の位置が維持される。
図31および
図32の処置におけるステップは同じであり得る。
図32に示すようにマイクロカテーテル848が適所に配置されると、ガイドワイヤ834は、除去して、フィルタまたは代替的な処置構造を備えたガイド構造であり得るデバイス900と置き換えることができる。例示の目的で、
図39に関連して、遠位端の近くにフィルタ902があるガイド構造として、構造900について記載し示す。上述したように、コアワイヤ、マイクロカテーテルからの解放時の自己作動、マイクロカテーテルもしくは作動器具としての代替構造を用いる展開、またはそれらの組合せを使用する近位アクチュエータにより、フィルタ902を展開することができる。いくつかの実施形態では、フィルタ902は、バルーン/注入カテーテルの送達の前に展開されるが、作動機構に応じて、バルーン/注入カテーテルの送達に続き、またはフィルタのための作動器具としてバルーン/注入カテーテル自体を使用して、フィルタ902を展開することができる。
【0091】
図40を参照すると、フィルタ902が展開され、バルーン/注入カテーテル904が適所にある、大脳動脈836が示されている。バルーン/注入カテーテル904は、バルーン906と、注入ポート908と、バルーン/注入カテーテル904の内腔内へのまたは内腔からの流れを阻止する弁/シール910とを備える。
図40の挿入図の拡大図を参照されたい。吸引カテーテル860の送達については
図33に関連して上述しており、これらの解説は、概して、
図39~42にも関連して適用される。
図39において、吸引カテーテル860は、
図33に関してプロセスの早期に送達され、それは、処置において利用可能な選択を反映する。
【0092】
図41を参照すると、バルーン906が膨張し、吸引カテーテル860内への開口部の近くの流れ矢印によって示すように、吸引は進行中であり、注入ポート908の近くの流れ矢印によって示すように、注入が発生している。結果として得られる液圧力は、凝血塊840からの血栓912の近位側の移動を引き起こす。少なくとも、血栓が吸引カテーテル860を通して除去され、または、
図42に示すように、血栓が、吸引カテーテル860の開口部において捕捉血栓914として固定され、またはこれらの効果の組合せがもたらされるまで、流体力は概して加えることができる。
図42に示すように、その後、バルーンは、患者の体内から除去されるために部分的にまたはおよそ完全に収縮する。ポリマー繊維系フィルタ902の場合、形成され得るリスクがある塞栓を遠位流に捕捉するために、除去中に、フィルタ902を展開したままにすることができる。
図43に示すように、大脳動脈836内のフィルタ902の掃引によってもまた、流れによって運ばれなかった緩められた血栓を収集することができる。
図43に示すように、マイクロカテーテル848およびバルーン/注入カテーテル904は、治療デバイス900およびフィルタ902と同時に除去される。上述したように、デバイスの除去の順序は、概して、常識の範囲内で重要ではなく、これらの実施形態では、フィルタ902を捕捉血栓914に隣接させ、その後、吸引カテーテル860によりフィルタ902を除去することが有利である可能性がある。最終的に、患者の体内からデバイスのすべてが除去され、アクセス場所が封止される。液体の注入なしに吸引および繊維系フィルタを使用する処置は、‘061出願にも記載されている。
【0093】
図44に、閉鎖バルーン932を備えるガイドカテーテル930を有する治療システムの実施形態を示す。ガイドカテーテル930の遠位端は、内頸動脈934内に位置しているが、遠位端は、総頸動脈内に配置することができる。
図44に示すように、バルーン/注入カテーテル940は、膨張したバルーン942および注入ポート944が大脳動脈948内の凝血塊946に対して遠位側に位置決めされるように位置決めされている。バルーン932が、頸動脈934を閉鎖するように膨張すると、流れがバルーンを越えて遮断され、それにより、凝血塊946の付近における吸引とは反対の流れとともに、凝血塊に対する圧力を低下させることができる。
図31~
図43に示すように、別個の吸引カテーテルにより吸引を適用することに加えて、またはその代わりに、ガイドカテーテルを通して吸引を適用することができる。
【0094】
上記実施形態は、限定ではなく例示するように意図されている。さらなる実施形態は特許請求の範囲内にある。さらに、本発明は、特定の実施形態に関して説明したが、当業者であれば、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態および細部を変更することができることが理解されよう。上述した文献の参照によるいかなる援用も、本明細書における明示的な開示に対して反対のいかなる主題も援用されないように限定される。本明細書において、別段明確に指示がない限り、考察において示唆されるように、所定の構造、構成および/またはプロセスが、構成要素、要素、成分または他の部分とともに記載される程度まで、本明細書の開示は、所定の実施形態、所定の構成要素、要素、成分、他の部分またはそれらの組合せを備える実施形態とともに、主題の基本的な性質を変更しない追加の特徴を含むことができる、こうした所定の構成要素、成分もしくは他の部分またはそれらの組合せから本質的に構成される実施形態を包含することが理解されるべきである。