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特許7091330キサンテン系染料を含有する着色組成物、カラーフィルター用着色剤およびカラーフィルター
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  • 特許-キサンテン系染料を含有する着色組成物、カラーフィルター用着色剤およびカラーフィルター 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】キサンテン系染料を含有する着色組成物、カラーフィルター用着色剤およびカラーフィルター
(51)【国際特許分類】
   C09B 11/28 20060101AFI20220620BHJP
   C09B 63/00 20060101ALI20220620BHJP
   C09B 67/48 20060101ALI20220620BHJP
   C09B 67/10 20060101ALI20220620BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
C09B11/28 C
C09B63/00
C09B67/48 Z
C09B67/10
G02B5/20 101
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019526785
(86)(22)【出願日】2018-06-13
(86)【国際出願番号】 JP2018022545
(87)【国際公開番号】W WO2019003915
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2021-03-26
(31)【優先権主張番号】P 2017127626
(32)【優先日】2017-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】青木 良和
(72)【発明者】
【氏名】神田 大三
(72)【発明者】
【氏名】山縣 直哉
【審査官】岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/042171(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B11
C09B63
C09B67
G02B5
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるキサンテン系染料を含有する着色組成物であって、
CuKα線の粉末X線回折における回折角(2θ)3°~7°の範囲の回折ピークの数が0個である、キサンテン系染料を少なくとも1種含有する着色組成物。
【化1】

[式中、R~Rは、それぞれ独立に、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
または置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルキル基を表し、
~R で表される、「置換基を有する炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」において「置換基」が存在する場合、当該置換基は、
ハロゲン原子;―SO
炭素原子数3~19のシクロアルキル基;
炭素原子数1~19の直鎖状のアルコキシ基;
炭素原子数3~19の分岐状のアルコキシ基;
炭素原子数3~19のシクロアルコキシ基;
炭素原子数6~19の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;
炭素原子数2~19の複素環基から選択される1つもしくは複数であり、複数存在する場合は互いに同一でも異なっていてもよい。
~R で表される、「置換基を有する炭素原子数3~20のシクロアルキル基」において「置換基」が存在する場合、当該置換基は、
ハロゲン原子;―SO
炭素原子数1~14の直鎖状のアルキル基;
炭素原子数3~14の分岐状のアルキル基;
炭素原子数3~14のシクロアルキル基;
炭素原子数1~14の直鎖状のアルコキシ基;
炭素原子数3~14の分岐状のアルコキシ基;
炭素原子数3~14のシクロアルコキシ基;
炭素原子数6~14の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;
炭素原子数2~14の複素環基から選択される1つもしくは複数であり、複数存在する場合は互いに同一でも異なっていてもよい。
~Rは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基、
または置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基を表し、
~R で表される、「置換基を有する炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数3~20のシクロアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」、「置換基を有する炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基」または「置換基を有する炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」において「置換基」が存在する場合、当該置換基は、
ハロゲン原子;―SO
炭素原子数3~17のシクロアルキル基;
炭素原子数1~17の直鎖状のアルコキシ基;
炭素原子数1~17の分岐状のアルコキシ基;
炭素原子数3~17のシクロアルコキシ基;
炭素原子数6~18の芳香族炭化水素基もしくは炭素原子数6~17の縮合多環芳香族基から選択される1つもしくは複数であり、複数存在する場合は互いに同一でも異なっていてもよい。
とRは互いに結合して環を形成していてもよい。
Mはアルカリ金属原子を表す。]
【請求項2】
前記一般式(1)において、R~Rが、前記置換基を有していてもよい炭素原子数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である、請求項1に記載の着色組成物。
【請求項3】
前記一般式(1)で表されるキサンテン系染料を2種以上含有し、キサンテン系染料全体に占める重量濃度比において、最も小さい方の1種のキサンテン系染料の重量濃度比が0.1~50重量%である、請求項1または請求項2に記載の着色組成物。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の着色組成物を含有するカラーフィルター用着色剤。
【請求項5】
請求項4に記載のカラーフィルター用着色剤を用いたカラーフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キサンテン系染料を含有する着色組成物、該組成物を用いたカラーフィルター用着色剤および該着色剤を用いたカラーフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶や電界発光(EL)表示装置に、カラーフィルターが用いられることがある。カラーフィルターは、ガラスなどの透光性基板上に、染色法、顔料分散法、印刷法、電着法などにより着色層を積層することによって製造される。着色層に用いる着色剤は、顔料と染料とに大きく分けられるが、一般的に耐熱性および耐光性に優れるとされる顔料が広く用いられている(例えば、特許文献1~3参照)。しかし、顔料は一般的に溶剤に不溶なため、樹脂などを含むカラーフィルター中では微粒子状で存在している。そのため、顔料を用いたカラーフィルターは、フィルター中の顔料粒子表面で透過光が反射・散乱することにより、透明性や色純度に影響し、また、反射による消偏作用があるためにカラー液晶表示装置のコントラスト比が低下することが知られている。
【0003】
このようなコントラスト比の低下の問題を改善するため、着色剤として染料のみを用いる方法または染料と顔料を併用する方法などが提案されている。染料は溶剤に可溶であるため、染料を使用したカラーフィルターは、顔料のみを着色剤として使用した場合に比べ消偏作用が抑えられ、分光特性に優れている。カラーフィルターに用いる染料としては、優れた発色性、耐熱性および耐光性を有する点から、キサンテン系染料などが知られている(例えば、特許文献4~7参照)。下記式(I)で表されるC.I.アシッドレッド289や下記式(II)で表されるC.I.アシッドレッド52などのキサンテン系染料をアゾピリドン系染料と併用することにより、優れた赤色色調が得られることが記載されている(例えば、特許文献4参照)。ここで、C.I.とはカラーインデックスを意味する。
【0004】
【化1】
【0005】
【化2】
【0006】
また、これらのキサンテン系染料またはその誘導体をフタロシアニン系色素と併用することにより、コントラスト比および色純度の高い青色のカラーフィルターを作製できることが知られている(例えば、特許文献6、7参照)。このような染料と顔料を併用したカラーフィルターは、色の異なる両者が混在して凝集体を形成することにより、光励起された染料分子と近傍の顔料分子の間で直ちに電荷移動が起こるため、酸化分解を互いに抑制する効果もあると考えられ、染料を単独使用で作製したカラーフィルターに比べて、発色性の維持および耐光性の向上が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2001-220520号公報
【文献】特公表2007-533802号公報
【文献】特開2012-12498号公報
【文献】特開2002-265834号公報
【文献】特開2012-207224号公報
【文献】特開2010-254964号公報
【文献】特開2014-12814号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】社団法人有機合成化学協会編、「新版 染料便覧」、丸善株式会社、1970年、p.426
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来のキサンテン系染料は、それ自身の発色性や耐熱性は十分であっても、カラーフィルター製造用の有機溶剤への溶解性や分散性が不十分であるものが多い。一般にキサンテン系染料などの染料は、水溶性であり、式(I)に示すように、分子内に正に帯電する窒素原子(=N<)や負に帯電する基(―SO など)を有しているため、極性分子である水分子(HO)などと水素結合しやすい。しかしながら、キサンテン系染料のように複数の極性基を有する分子は、分子同士が、同一または異なる各置換基間に働く分子間力(ファンデルワールス力、水素結合、イオン結合など)によって、比較的強固な結合を形成して、数個~数十個単位で凝集体を形成する。この染料分子の凝集体が、ある程度の大きさのまま残存すると、製膜時に塗工ムラを生じ、耐光性や耐熱性が低下し、また、顔料のような透過光の消偏作用も複雑化し、カラーフィルターとしての発色性がさらに低下することになる。
【0010】
有機顔料や有機染料が溶媒に難溶な場合、ビーズミルなどの機器で物理的に粉砕し、顔料や染料の凝集体の粒径を数十nm程度まで微粒子化した分散液を調製する方法が一般的に用いられるが、しかしながら、溶媒中での微粒子の分散状態を安定に保つために、界面活性剤などの添加剤を必要とし、また、分散が不安定な場合、粒子間で再凝集し、分散液がゲル化する可能性がある。したがって、カラーフィルター製造用のキサンテン系染料に求められる性質としては、余分な添加剤を必要とせずに溶媒に容易に溶解または均一分散するような、調製方法の開発が必要である。
【0011】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、カラーフィルター用着色剤として、色相の調整に優れたキサンテン系染料を含有する着色組成物であって、カラーフィルターの製造工程において、良好な溶解性または分散性を示すために必要な固体(粉末など)の状態を有するキサンテン系染料を含有する着色組成物、該着色組成物を含有するカラーフィルター用着色剤、および該カラーフィルター用着色剤を用いた、発色性(輝度、コントラスト比など)に優れたカラーフィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、カラーフィルター製造用としてのキサンテン系染料の粉末の最適な調製方法を見出し、さらに、その固体粉末の特性を粉末X線回折により分析可能であることを見出し、このようなキサンテン系染料を含有する着色組成物を用いることにより、発色性(コントラスト比)に優れたカラーフィルターが得られることを見出し、本発明に至った。
【0013】
すなわち、本発明は、前記目的を達成するために鋭意研究した結果得られたものであり、以下を要旨とするものである。
【0014】
1.下記一般式(1)で表されるキサンテン系染料を含有する着色組成物であって、
CuKα線の粉末X線回折における回折角(2θ)3°~7°の範囲の回折ピークの数が0個である、キサンテン系染料を少なくとも1種含有する着色組成物。
【0015】
【化3】
【0016】
[式中、R~Rは、それぞれ独立に、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
または置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルキル基を表し、
~Rは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルキル基、
置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基、
置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基、
または置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基を表し、
とRは互いに結合して環を形成していてもよい。
Mはアルカリ金属原子を表す。]
【0017】
2.前記一般式(1)において、R~Rが、置換基を有していてもよい炭素原子数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基である着色組成物。
【0018】
3.前記一般式(1)で表されるキサンテン系染料を2種以上含有し、キサンテン系染料全体に占める重量濃度比において、最も小さい方の1種のキサンテン系染料全体の重量濃度比が0.1~50重量%である着色組成物。
【0019】
4.前記着色組成物を含有するカラーフィルター用着色剤。
【0020】
5.前記カラーフィルター用着色剤を用いたカラーフィルター。
【発明の効果】
【0021】
本発明のキサンテン系染料を含有する着色組成物を含有するカラーフィルター用着色剤を用いて作製したカラーフィルターは、コントラスト比などの発色性が優れており、本発明のキサンテン系染料は、カラーフィルター用着色剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施例および比較例の着色組成物の粉末X線回折(XRD)の図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。まず、前記一般式(1)で表されるキサンテン系染料について説明する。
【0024】
一般式(1)において、R~Rで表される、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」としては、具体的に、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などの直鎖状のアルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソオクチル基などの分岐状のアルキル基をあげることができる。
【0025】
一般式(1)において、R~Rで表される、「置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルキル基」としては、具体的に、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基などのシクロアルキル基をあげることができる。
【0026】
一般式(1)において、R~Rで表される、「置換基を有する炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」における「置換基」としては、具体的に、
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;―SO
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの炭素原子数3~19のシクロアルキル基;
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基などの炭素原子数1~19の直鎖状のアルコキシ基;
イソプロポキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、イソオクチルオキシ基などの炭素原子数3~19の分岐状のアルコキシ基;
シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などの炭素原子数3~19のシクロアルコキシ基;
フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、トリフェニレニル基、インデニル基、フルオレニル基などの炭素原子数6~19の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;
ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチリジニル基、インドリル基、ベンゾイミダゾリル基、カルバゾニル基、カルボリニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フラニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基などの炭素原子数2~19の複素環基、などをあげることができる。これらの「置換基」は、1つのみ含まれてもよく、複数含まれてもよく、複数含まれる場合は互いに同一でも異なっていてもよい。また、これら「置換基」はさらに、前記例示した置換基を有していてもよい。
【0027】
一般式(1)において、R~Rで表される、「置換基を有する炭素原子数3~20のシクロアルキル基」における「置換基」としては、具体的に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;―SO
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などの炭素原子数1~14の直鎖状のアルキル基;
イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソオクチル基などの炭素原子数3~14の分岐状のアルキル基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの炭素原子数3~14のシクロアルキル基;
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基などの炭素原子数1~14の直鎖状のアルコキシ基;
イソプロポキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、イソオクチルオキシ基などの炭素原子数3~14の分岐状のアルコキシ基;
シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などの炭素原子数3~14のシクロアルコキシ基;
フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントリル基、フェナントリル基、インデニル基、フルオレニル基などの炭素原子数6~14の芳香族炭化水素基もしくは縮合多環芳香族基;
ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、トリアゾリル基、キノリル基、イソキノリル基、ナフチリジニル基、インドリル基、ベンゾイミダゾリル基、カルバゾニル基、カルボリニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フラニル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、オキサゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基などの炭素原子数2~14の複素環基、などをあげることができる。これらの「置換基」は、1つのみ含まれてもよく、複数含まれてもよく、複数含まれる場合は互いに同一でも異なっていてもよい。また、これら「置換基」はさらに、前記例示した置換基を有していてもよい。
【0028】
一般式(1)において、R~Rで表される「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などをあげることができる。「ハロゲン原子」としては、フッ素原子または塩素原子が好ましい。
【0029】
一般式(1)において、R~Rで表される、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルキル基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」、「置換基を有していてもよい炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基」または「置換基を有していてもよい炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「炭素原子数3~20のシクロアルキル基」、「炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」、「炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基」または「炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」としては、具体的に、
メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などの直鎖状のアルキル基;
イソプロピル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、イソオクチル基などの分岐状のアルキル基;
シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基などのシクロアルキル基;
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基などの直鎖状のアルコキシ基;
イソプロポキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、イソオクチルオキシ基などの分岐状のアルコキシ基;
シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などのシクロアルコキシ基;
ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、1-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、またはこれらのアルケニル基が複数結合した直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基、などをあげることができる。
【0030】
一般式(1)において、R~Rで表される、「置換基を有する炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数3~20のシクロアルキル基」、「置換基を有する炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基」、「置換基を有する炭素原子数3~20のシクロアルコキシ基」または「置換基を有する炭素原子数2~20の直鎖状もしくは分岐状のアルケニル基」における「置換基」としては、具体的に、
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;―SO
シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などの炭素原子数3~17のシクロアルキル基;
メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基などの炭素原子数1~17の直鎖状のアルコキシ基;
イソプロポキシ基、イソブトキシ基、s-ブトキシ基、t-ブトキシ基、イソオクチルオキシ基などの炭素原子数1~17の分岐状のアルコキシ基;
シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基などの炭素原子数3~17のシクロアルコキシ基;
フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、アントラセニル基などの炭素原子数6~18の芳香族炭化水素基もしくは炭素原子数6~17の縮合多環芳香族基などをあげることができる。これらの「置換基」は1つのみ含まれてもよく、複数含まれてもよく、複数含まれる場合は互いに同一でも異なっていてもよい。また、これら「置換基」はさらに、前記例示した置換基を有していてもよい。
【0031】
一般式(1)において、R~Rとしては、置換基を有していてもよい炭素原子数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数5~12のシクロアルキル基が好ましく、置換基を有していてもよい炭素原子数1~10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基がより好ましい。
【0032】
一般式(1)において、RとRの組み合わせとRとRの組み合わせは、同一でも異なっていてもよい。
【0033】
一般式(1)において、R~Rとしては、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、または置換基を有していてもよい炭素原子数1~20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0034】
一般式(1)において、RおよびRは、互いに結合し、環を形成していてもよく、その場合に形成される環としては、5員環または6員環が好ましく、6員環がより好ましい。
【0035】
一般式(1)において、「M」は、アルカリ金属原子を表し、リチウム原子、ナトリウム原子またはカリウム原子が好ましく、リチウム原子またはナトリウム原子がより好ましく、ナトリウム原子が特に好ましい。
【0036】
一般式(1)で表されるキサンテン系染料は、公知の方法(非特許文献1など参照)によって、例えば以下のように合成することができる。ベンズアルデヒド-2,6-ジスルホン酸ナトリウムなどの、相当する置換基を有するスルホニルアルデヒド誘導体と、ジエチルアミノフェノールなどの、相当する置換基を有するヒドロキシフェニルアミン誘導体とを、硫酸などの酸水溶液中、適切な加熱条件で、縮合反応させて、下記一般式(2)で表される中間体が得られる。次に、下記一般式(2)を脱水することにより、下記一般式(3)で表される中間体が得られる。さらに下記一般式(3)を、酸水溶液中、適切な加熱条件下で、塩化鉄(III)(FeCl)と反応させ酸化し、水酸化ナトリウム(NaOH)などの塩基性水溶液で中和した後、塩化ナトリウム(NaCl)などの塩化合物を用いて塩析することにより、一般式(1)で表される化合物を含有する生成物が得られる。
【0037】
【化4】
【0038】
【化5】
【0039】
【化6】
【0040】
上記一般式(2)および(3)において、R~Rは、一般式(1)における定義と同じ定義を意味する。
【0041】
一般式(1)で表されるキサンテン系染料の合成法において、析出するキサンテン系染料が強固に付着し撹拌の妨げとなる場合、それを解消あるいは緩和するために、有機溶媒を混合してもよい。混合する有機溶媒としては、対応するキサンテン系染料の十分な溶解性があれば特に制限されず、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;アセトン、2-ブタノン、2-ペンタノン、3-ペンタノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールなどのアルコール類などを、単独で、または混合して用いることができる。
【0042】
一般式(1)で表されるキサンテン系染料は、上記の合成方法で得られた生成物を必要に応じて、カラムクロマトグラフィーによる精製;シリカゲル、活性炭、活性白土などによる吸着精製;溶媒による分散洗浄や再結晶、晶析、塩析などの公知の精製を行うことにより、得ることが出来る。これらの精製方法に用いる溶媒は特に限定されず、水、メタノール、エタノールなどのアルコール類;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロメタン類;トルエンなどを単独で、または混合して用いることができる。
【0043】
一般式(1)で表される本発明のキサンテン系染料としては、市販品を用いることができる。具体的には、C.I.アシッドレッド52などのキサンテン系染料、またはこれらの染料を主成分として含有する組成物が市販されている。これらはそのまま用いて本発明の着色組成物を調製してもよく、また、前記のキサンテン系染料の精製方法と同様の方法で精製したものを用いて本発明の着色組成物を調製することができる。
【0044】
一般式(1)で表される本発明のキサンテン系染料として好ましい化合物の具体例を以下の式(A-1)~(A-10)に示すが、本発明は、これらの化合物に限定されるものではない。なお、下記構造式では、水素原子を一部省略して記載している。また、立体異性体が存在する場合であっても、その平面構造式を記載している。
【0045】
【化7】
【0046】
【化8】
【0047】
【化9】
【0048】
【化10】
【0049】
【化11】
【0050】
【化12】
【0051】
【化13】
【0052】
【化14】
【0053】
【化15】
【0054】
【化16】
【0055】
本発明の一般式(1)で表されるキサンテン系染料は、1種または分子構造の異なる2種以上を組み合わせて使用(例えば混合)してもよく、キサンテン系染料全体に占める重量濃度比において、最も小さい方の1種のキサンテン系染料の重量濃度比は0.1~50重量%である。すなわち、当該2種以上のキサンテン系染料のうち、最少量の1種のキサンテン系染料が、当該2種以上のキサンテン染料全体の0.1~50重量%を占める。キサンテン系染料の種類は1種または2種であるのが好ましい。
【0056】
以下、本発明の一般式(1)で表されるキサンテン系染料を少なくとも1種含有する着色組成物について詳細に説明する。
【0057】
本発明に係るキサンテン系染料を含有する着色組成物は、合成した染料でも市販の染料でもよく、カラーフィルター用として適した粉末の状態を有している。本発明のキサンテン系染料を含有する着色組成物の粉末の調製方法の具体例を以下に示す。粉末の状態を変化させて適した着色組成物粉末を得る方法としては、
(a)染料溶液の乾燥条件(速度、温度、気圧)を変化させて、粉末を得る方法、
(b)染料溶液の状態(溶媒の種類、混合溶媒、pH、その他)を変化させて結晶や凝集体を得る方法、
(c)粉末中に、溶媒分子、水分、またはその他の本発明のキサンテン系染料以外の成分を混在させて乾燥する方法、
(d)(a)~(c)の乾燥方法を適宜選択し、または、繰り返し、精製する方法、
(e)乾燥した粉末に外部から加熱処理して粉末状態を変化させる方法、
(f)粉末を真空中で加熱し昇華させ、再結晶する方法(昇華精製)、
(g)物理的に粉末に力を加えて(加圧して)粉末状態を変化させる方法、
(h)複数の粉末状態が混合している状態から、分離(分級)する方法、
などがあげられるが、いずれの方法でもよく、上記の方法をいくつか選択して粉末を得るのが好ましい。
【0058】
合成して得られたキサンテン系染料を含有する粉末、または、市販品のキサンテン染料は、溶媒分子、水分、本発明のキサンテン系染料以外の分子構造の成分、その他の成分が含まれている。これらの粉末は、いずれもそのまま用いても良いが、精製処理を施したものが好ましい。しかしながら、どのような精製方法によっても、一定の割合の不純物は存在してしまう場合があるが、現在の技術水準において製造もしくは入手可能な染料であれば使用可能である。
【0059】
ただし、本発明の着色組成物は、その固形分中における成分において、一般式(1)で表されるキサンテン系染料を主成分として少なくとも1種含有し、一定濃度範囲の水分やその他の溶媒分子を含有していてもよいものとする。着色組成物中に水分などが存在することは、キサンテン系染料の粉末の結晶構造が変化する要因の一つと考えられており、その結果、キサンテン系染料のPGMEなどの有機溶媒への溶解性が変化すると考えられている。例えば、キサンテン系染料を含有する着色組成物全体の重量における水分の重量の割合(含水率(重量%))を調整することによって、耐熱性を維持しつつ、PGMEなどの有機溶媒に対する溶解性が高い着色組成物を得ることができる。着色組成物中の含水率は、0.1~20重量%の範囲で任意に調整することができる。
【0060】
本発明のキサンテン系染料を含有する着色組成物の調製方法として、上記の(a)~(d)に関連する方法には、例えば以下のような方法がある。適当な大きさの容器に、キサンテン系染料を主成分として含有する粉末と、活性炭と、溶媒を入れ混合し、加熱し、一定時間撹拌する。撹拌後、熱ろ過し、ろ液を得る。このろ液を大気圧下もしくは減圧しながら、適当な溶媒蒸発速度で濃縮し、濃縮物を得る。容器から、濃縮物として、溶媒などを含んだ着色組成物を取り出し、別の容器で乾燥する。さらに、一定温度で、減圧乾燥し溶媒を除去する。このようにして、一般式(1)で表されるキサンテン系染料を少なくとも1種含有する着色組成物が得られる。
【0061】
または、固体(粉末)を得るためであれば、どのような方法でもよく、例えば、上記のような溶媒中でのキサンテン染料を混合後、適当な酸または塩基を加え、pHを変化させ、結晶を析出させた後、この析出物を上記の方法で乾燥してもよい。さらに、酸や塩基の代わりに、他の溶媒や固体を溶液中に混合し、析出させた結晶を乾燥してもよい。
【0062】
上記のように、液体中に溶解または分散したキサンテン系染料を、溶媒を蒸発させて乾燥すること、その速度を適宜変化させること、溶媒中で析出させること、などの様々な方法で、本発明のキサンテン系染料を含有する着色組成物を得ることが出来る。
【0063】
ここで、撹拌用の容器の材質としては、適当なものを選択して使用することができ、例えば、コルベンなどのガラス製容器、金属製容器、樹脂製容器、グラスライニングされた容器などを使用することができる。
【0064】
撹拌用の容器の大きさは、様々な大きさでよく、粉末100gに対して、1~5Lの大きさであるのが好ましい。ただし、この範囲に限定されることはなく、用いたキサンテン系染料を溶解するのに必要な溶媒量により任意で決めることができる。
【0065】
溶媒中での混合時活性炭を用いる場合は、活性炭の吸着能力を高めるため、粉状または微粉状の活性炭が好ましい。
【0066】
溶媒は、一種類であっても複数の種類を混合したものでもよいが、アルコールが好ましく、アルコールの場合、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールが好ましく、メタノールがより好ましい。溶媒は、脱水処理をしていても、していなくてもよい。
【0067】
溶媒中での混合時におけるキサンテン系染料(2種以上の場合にはそれらの合計)と溶媒の重量比は、キサンテン系染料の重量に対し、溶媒が3~10倍の重量比が好ましい。ただし、この範囲に限定されることはなく、用いたキサンテン系染料を溶解するのに必要な量を任意で決めることができる。
【0068】
その他の成分として、本発明の着色組成物のカラーフィルター用着色剤としての性能を高めるために、界面活性剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、その他のカラーフィルター用着色剤の製造時に混合する添加剤、などの有機化合物などを添加することができる。ただし、着色組成物におけるこれらの添加剤の含有率は適量であることが好ましく、本発明の着色組成物の溶媒中の溶解性を低下させたり、もしくは必要以上に向上させたり、また、カラーフィルター製造時に用いる他の同種の添加剤の効果に影響しない範囲の含有率であることが好ましい。これらの添加物は、着色組成物の調製の任意のタイミングで投入することができる。
【0069】
混合または撹拌中の容器中の雰囲気は、空気、窒素、その他の不活性ガスなどがあげられ、特に限定されない。製造時の静電気による引火に対する安全性を考え、容器中を窒素などの不活性ガスで置換するのが好ましい。
【0070】
濃縮物の乾燥は、皿やバットのような容器に移し乾燥して行う。含水率が平衡状態となるように、大気圧下で1~96時間静置して乾燥(一次乾燥)する。乾燥時の温度は、20℃~100℃の範囲であることが好ましい。ここで、一時乾燥においては、完全に乾燥させず、水分をある程度残しておくことが好ましい。
【0071】
一次乾燥したキサンテン系染料を含有する着色組成物は、真空乾燥機などの排気装置を有する乾燥機などを用いてさらに乾燥(二次乾燥)される。真空乾燥機の代わりに、底面積の広いバット状容器の上で風乾してもよい。乾燥時の温度や時間は、目的とする粉末状態の着色組成物を得るために、任意に設定することができ、特に限定されない。溶媒としてアルコールを使用する場合、アルコールを可能な限り除去した時点を乾燥終点とすることができる。乾燥終点の測定方法としては、粉末状態観察、重量測定、核磁気共鳴分析(NMR)、ガスクロマトグラフィー分析(GC)などによる溶媒成分の分析・定量の方法があげられる。
【0072】
以上のように調製した着色組成物の含水率の測定方法としては、電量滴定法や容量滴定法を用いたカールフィッシャー(KF)法;熱重量測定-示差熱分析(TG-DTA)装置を用いた熱分析法;加熱乾燥式水分計などを用いた加熱乾燥法;ガスクロマトグラフィー(GC)法、赤外線または近赤外線吸収法;核磁気共鳴吸収法;電気抵抗法;誘電率法;蒸留法;などの方法があげられる。また、水分以外の不純物の種類や量の分析についても、粉末状態観察、重量測定、NMR分析、GC分析などにより同様に推定することができる。
【0073】
本発明のキサンテン系染料を含有する着色組成物の調製方法として、上記の(e)~(h)に対応する方法には、例えば以下のような方法がある。
【0074】
上記の(a)~(d)の着色組成物の調製方法は、湿式であるのに対し、下記の(e)~(h)の方法は、一般には、さらに染料の純度を上げる場合や、その結果得られた粉末の純度の状態を保ったまま結晶構造の変化させる、乾式の方法である。
【0075】
(e)の加熱処理は、具体的には、通常室温(25℃付近)から、固体の融点(またはガラス転移温度)前後まで加熱し、結晶構造を変化させる場合に用いられる。加熱装置は、どのような材質や形態でもよく、市販のホットプレート上にて加熱してもよく、また市販のオーブンを使用しても、石英製の反応炉などを用いてもよい。雰囲気は、空気中でもよいが、通常、試料の分解や変質を防ぐために窒素や不活性ガスまたは減圧下が好ましい。加熱時間は適宜でよい。
【0076】
(f)の昇華精製は、粉末を真空中で加熱し昇華させるため、固体粉末中の水分や溶媒分子、他の不純物を可能な限り、除去することでき、再結晶時に、昇華前との結晶構造が変化している場合が多い。装置は、高真空~超高真空まで減圧できる装置であれば限定されない。試料を入れる加熱用容器の材質は、金属でもガラスでもよい。
【0077】
(g)の加圧の方法のように、粉末に高圧をかけると、固体の結晶系が不可逆的に変化する場合がある。圧力のかけ方は、気圧によってもよいし、硬度の大きい金属鋼などのプレス機などで圧縮してもよい。
【0078】
(h)の分級は、上記のいずれの固体の粉末を得る方法で得られた粉末について、大きさ、密度、結晶構造が単一でないものから、特定の状態の成分を分離する方法である。分離前の粉末は、最初に粉砕処理をしてもしなくてもよい。異なる成分の結晶が結着している場合、粉砕処理によって、成分が分離しやすくなる場合がある。大きさで分級する場合は、篩などの器具が使用される。密度や重量が異なるものには、粉末を気流で飛ばし飛行距離の差で分離したり、遠心分離する装置が使用できる。
【0079】
以上説明した方法によって、一般式(1)で表されるキサンテン系染料を少なくとも1種含有する本発明の着色組成物であって、粉末の状態の着色組成物が得られる。以下、この粉末について、本発明が解決しようとする課題である、カラーフィルター用に適した状態を有する粉末を得る方法について説明する。
【0080】
本発明の着色組成物の粉末の状態は、その形状は、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)などを用いて観察することができる。本発明の着色組成物の形状は、通常、結晶状、微結晶状、微粉末状、フレーク状、針結晶状、顆粒状などの形状を有する固体の粉末の状態で用いられるが、特に限定されない。
【0081】
本発明の着色組成物の粉末の粒度分布、表面積、細孔径分布、粉体密度などを測定することによって、粉末の形状の全体的・平均的な情報がより詳細に得られる。例えば、粉末を分散した電解液の電気抵抗測定によるコールター法、粉末の分散液の吸光度測定によりストークス有効径を求める遠心沈降法、粉末の分散液の回折散乱パターン解析によるレーザ回折・散乱法、などを用いて測定することができる。本発明の着色組成物は、0.1μm~数mmの粒径の範囲にあるものが好ましいが、製造条件や乾燥後の粉末の回収方法により粒子の形状が変化するため、特定の粒径に限定されないが、高い溶解性のためには粒径がより小さいものが好ましく、粒径分布の中央値が、0.1~100μmの範囲にあるものが好ましい。
【0082】
本発明の着色組成物の粉末の表面の元素組成、構造解析を行うことにより、分子レベルや原子レベルの微細構造に関する情報を推定することができる。具体的には、紫外光、X線や電子線が用いられ、試料の表面や粒子内部の原子の組成の分析や原子間の結合に関する情報が得られる。特に、X線を用いた粉末X線回折(XRD)は、原子や分子の配置(結晶構造)の格子定数、周期性などに関する情報が得られる。
【0083】
本発明の着色組成物の熱重量測定-示差熱分析(TG-DTA)を行うことによって、粉末の分解開始温度を分析することができる。分解開始温度は、250℃以上であることが好ましく、300℃以上であることがより好ましく、360℃以上であることが特に好ましい。カラーフィルターに応用する場合、分解開始温度は高いほど好ましい。
【0084】
本発明における着色組成物の粉末の溶解性は溶解度で表され、溶解度は、粉末状の着色組成物が特定の溶媒中に溶解することのできる最大量の着色組成物中の割合を表すものであり、例えば「重量%(溶媒名,温度)」などの単位で表される。溶解度は、例えば、試料を特定の溶媒に混合し、一定温度で一定時間、溶媒を撹拌し、調製した飽和溶液の濃度を測定することによって得られ、溶解部の液体クロマトグラフィー(LC)や吸光度測定などによる濃度測定によっても得られる。
【0085】
カラーフィルター用着色剤に含有される着色組成物は、カラーフィルター用着色剤およびカラーフィルターの製造工程において、樹脂などを含有する有機溶媒に良好に溶解または分散させる必要があるため、有機溶媒に対する溶解度が高いことが好ましい。有機溶媒としては、特に限定されないが、具体的には、酢酸エチル、酢酸-n-ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)などのエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などのエーテルエステル類;アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;メタノール、エタノールなどのアルコール類;ジアセトンアルコール(DAA)など;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)などのアミド類;ジメチルスルホキシド(DMSO)などがあげられる。これらの溶剤は、単独で用いても、2種類以上混合して用いてもよい。これらの中でも、本発明に係るキサンテン系染料を含有する着色組成物は、特にPGMEへの溶解性に優れることが好ましい。
【0086】
本発明の着色組成物の粉末の分光特性(透過率、反射率)は、カラーフィルター用着色剤として色素を単独で使用する場合、または、他の色素と混合して使用する場合のどちらでも重要であり、カラーフィルターの色特性に直接影響する。測定方法は、溶液や分散液状態の吸収(または透過)スペクトルや、ガラスや透明樹脂基板に塗布した薄膜の吸収(または透過)スペクトルを測定する方法がある。また、粉末に直接に光照射し、粒子表面や粒子表面付近で反射・散乱した光を計測する方法がある。
【0087】
以上のような分析方法のうち、粉末X線回折、熱分析または溶解度分析が、本発明のキサンテン系染料を含有する着色組成物の分析方法として適しており、特に、粉末X線回折は、その粉末が、他の材料と混合・溶解して均一に分散するか、耐熱性や耐光性が得られる製膜が得られるか、また、カラーフィルター用の色素として適した色特性を示すか、などについて、適した結晶構造(粉末特性)を有しているかどうかを判断・推測するための方法として適している。粉末X線回折では、通常、X線源としてCuKα線(hν=8.048keV、波長λ=0.15418nm)やMoKα線(hν=17.5keV、波長λ=0.071073nm)が用いられるが、CuKα線を用いた粉末X線回折が好ましい。
【0088】
本発明において、一般式(1)で表されるキサンテン系染料を少なくとも1種含有する着色組成物は、その粉末X線回折の測定において、回折角(ブラッグ角)2θ=2°~35°の範囲に、試料ごとに特徴のある回折ピークが最大30個観測される。粉末X線回折において、2θ=2°~35°の範囲にピークが現れる場合、約0.2nm~約4.0nmの原子の周期性がその固体粉末試料中に存在していることを示している。例えば、代表的なキサンテン系染料であるアシッドレッド52のようなキサンテン分子内において、最短の原子間結合距離は約0.13±0.02nmであり、2個の窒素間原子の距離は約1nmである。また、一般式(1)で表されるキサンテン系染料の分子の最大幅は、1~2nmであり、一般的な分子結晶の結晶格子はこの分子の最大幅と同程度である。つまり、上記の回折角の範囲に観測される回折パターンは、そのキサンテン分子内の各原子間の配置に関する情報や、粉末内のキサンテン分子間の配置に関する情報を示している。このような理由により、キサンテン系染料を含有する粉末の内部における状態を分析する方法として、粉末X線回折が優れている。
【0089】
したがって、本発明において、一般式(1)で表されるキサンテン系染料を少なくとも1種含有する着色組成物は、CuKα線の粉末X線回折の測定において、回折角2θ=2°~35°の範囲に最大30個の回折ピークが観測されることが好ましい。この回折角の範囲のうち、2θ=18°~35°の範囲には、キサンテン分子内の各原子間距離、例えば、炭素-炭素、炭素-窒素、炭素-酸素(互いに直接結合していてもよく、間に他の原子を介してもよく、間に空間があってもよい)などの周期性を表すピークが観測され、具体的には、2θ=2°~25°に顕著なピークが5個以上最大20個観測されるのが好ましい。
【0090】
本発明において、一般式(1)で表されるキサンテン系染料を少なくとも1種含有する着色組成物は、CuKα線の粉末X線回折の測定において、回折角2θ=2°~10°の範囲には、例えばキサンテン分子の2個の窒素原子間距離と同程度かそれ以上の距離に関する回折ピークが観測されることから、キサンテン分子内の原子間に関する情報だけでなく2個の隣接するキサンテン分子間の周期性に関する情報をも含んでいると見なすことができる。本発明において、発明者らは、キサンテン系染料の粉末の調製方法と、その結果得られる粉末X線回折パターンと、さらにその染料を用いて評価したカラーフィルター特性、特に、発色性(コントラスト比)に相関性があることを見出した。具体的には、一般式(1)で表されるキサンテン系染料を少なくとも1種含有する着色組成物は、CuKα線の粉末X線回折における回折角(2θ)が=3°~7°のピークが顕著であるものとそうでないものがある。例えば、2θ=5°に顕著なピークの有無は、着色組成物内における1.7~1.8nmの周期性の有無を示している。この1.7~1.8nmの周期性は、キサンテン分子間の距離に相当するものと推察され、試料の調製法の違いによっては、この規則的なキサンテン分子の配置があるものと無いものが得られ、キサンテン分子結晶の構造がそれぞれ異なるものが得られることを示唆している。結晶構造が違うということは、キサンテン分子間の分子間力の大きさや相互作用にも影響するため、結果として溶媒中の溶解性、分散性、カラーフィルター用の他の顔料や樹脂材料などとの相互作用にも大きく影響し、カラーフィルターの諸物性に直接作用する。カラーフィルター用着色剤としては、CuKα線の粉末X線回折における回折角(2θ)=3°~7°のピークの数が0個であること(顕著なピークが観測されないこと)が好ましい。
【0091】
本発明のカラーフィルター用着色剤は、一般式(1)で表されるキサンテン系染料を少なくとも1種含有する着色組成物と、カラーフィルターの製造に一般的に使用される成分とを含む。一般的なカラーフィルターは、例えば、フォトリソグラフィー工程を利用した方法の場合、染料や顔料などの色素を樹脂成分(モノマー、オリゴマーを含む)や溶媒と混合して調製した液体を、ガラスや樹脂などの基板の上に塗布し、フォトマスクを用いて光重合させ、溶媒に可溶/不溶な色素-樹脂複合膜の着色パターンを作製し、洗浄後、加熱することにより得られる。また電着法や印刷法においても、色素を樹脂やその他の成分と混合したものを用いて着色パターンを作製する。よって、本発明のカラーフィルター用着色剤における具体的な成分としては、少なくとも1種の一般式(1)で表されるキサンテン系染料、その他の染料や顔料などの色素、樹脂成分、有機溶媒、および光重合開始剤などその他の添加剤があげられる。また、これらの成分から取捨選択してもよく、必要に応じて他の成分を追加してもよい。
【0092】
本発明のキサンテン系染料を含有する着色組成物をカラーフィルター用着色剤として用いる場合、各色用カラーフィルターに用いてもよいが、青色または赤色カラーフィルター用着色剤として用いるのが好ましい。
【0093】
本発明のキサンテン系染料を含有するカラーフィルター用着色剤は、1種または2種以上のキサンテン系染料を単独で使用してもよく、色調の調整のために、他の染料または顔料などの公知の色素を混合してもよい。赤色カラーフィルター用着色剤に用いる場合、特に限定されないが、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254などの赤色顔料;その他の赤色系レーキ顔料;C.I.アシッドレッド88、C.I.ベーシックバイオレット10などの赤色染料、などがあげられる。青色カラーフィルター用着色剤に用いる場合、特に限定されないが、C.I.ベーシックブルー3、7、9、54、65、75、77、99、129などの塩基性染料;C.I.アシッドブルー9、74などの酸性染料;ディスパースブルー3、7、377などの分散染料;スピロン染料;シアニン系、インディゴ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、メチン系、トリアリールメタン系、インダンスレン系、オキサジン系、ジオキサジン系、アゾ系、本発明に属さないキサンテン系;その他の青色系レーキ顔料、などの青色系の染料または顔料があげられる。
【0094】
本発明のキサンテン系染料を含有するカラーフィルター用着色剤における他の色素の混合比は、キサンテン系染料(2種以上の場合にはそれらの合計)に対して5~2000重量%であるのが好ましく、10~1000重量%とするのがより好ましい。液状のカラーフィルター用着色剤中における染料などの色素成分の混合比は、着色剤全体に対して0.5~70重量%であるのが好ましく、1~50重量%であるのがより好ましい。
【0095】
本発明のカラーフィルター用着色剤における樹脂成分としては、これらを使用して形成されるカラーフィルター樹脂膜の製造方式や使用時に必要な性質を有するものであれば、公知のものを使用することができる。例えば、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエーテル樹脂、フェノール(ノボラック)樹脂、その他の透明樹脂、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂があげられ、これらのモノマーまたはオリゴマー成分とを適宜組み合わせて使用することができる。また、これらの樹脂の共重合体を組み合わせて使用することもできる。これらのカラーフィルター用着色剤における樹脂の含有量は、液状の着色剤の場合、5~95重量%であるのが好ましく、10~50重量%であるのがより好ましい。
【0096】
本発明のカラーフィルター用着色剤におけるその他の添加剤としては、光重合開始剤や架橋剤などの樹脂の重合や硬化に必要な成分があげられ、また、液状のカラーフィルター用着色剤中の成分の性質を安定させるために必要な界面活性剤や分散剤などがあげられる。これらはいずれも、カラーフィルター製造用の公知のものを使用することができ、特に限定されない。カラーフィルター用着色剤の固形分全体におけるこれらの添加剤の総量の混合比は、5~60重量%であるのが好ましく、10~40重量%であるのがより好ましい。
【実施例
【0097】
以下、本発明の実施の形態について、実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されない。なお、実施例で得られた化合物の同定は、H-NMR分析(日本電子株式会社製核磁気共鳴装置、JNM-ECA-600)により行った。
【0098】
[実施例1]
[着色組成物の粉末の調製]
3Lの反応容器に、下記式(A-3)で表されるアシッドレッド52(150g)、メタノール1.2Lを入れ、50℃で溶解し、活性炭(型番:白鷺A-2、以下「白鷺」)7.5gを加え、1時間撹拌した。反応液をろ紙(型番:ADVANTEC製GF-75)で2回ろ過した。ろ液を濃縮し、メタノール1.12L中で50℃で溶解した後、酢酸エチル1.12Lを加え、3時間撹拌後、ろ過した。ろ液を60℃で24時間減圧乾燥し、を緑色結晶状の着色組成物(104.4g)を得た。この着色組成物のNMR分析を行い、メタノールなどの有機溶媒の成分が観測されないことを確認した。
【0099】
【化17】
【0100】
[粉末X線回折測定]
上記のように得られた着色組成物の粉末について、粉末X線回折(XRD)測定(株式会社リガク製 試料水平型X線回折装置 RINT-2200 Ultima型、X線源:CuKα線(hν=0.15418nm、30kV、30mA)、発散スリット:1/2°、散乱スリット:1/2°、受光スリット:0.15mm、走査ステップ:0.02°、走査速度:2°/分、走査回折角範囲:2θ=2°~35°)を行った。結果を図1に示す。また、2θ=2°~7°、7°~15°、15°~25°、および25°~35°の範囲に観測された顕著な回折ピークの数を表1に示す。ただし、最大ピーク強度の約5%以下のピーク、およびピーク肩の不明瞭なものについては計数していない。
【0101】
【表1】
【0102】
[カラーフィルター特性]
上記の着色組成物を用いて、以下の方法で製膜してカラーフィルターを作製し、コントラスト比を測定した。ベンジルメタクリレートとメタクリル酸から調製した評価用樹脂30部、PGME70部、染料2部を混合し着色組成物を得た。この着色組成物を、ガラス基板(50×50×0.7mm)上に、スピンコーター(ミカサ株式会社製、型式:MS-B100)を用いて塗布した。このガラス基板を90℃で10分間乾燥した。得られた塗布基板を2枚の偏光板で挟み、バックライトを点灯し、偏光板の直行時と平行時の輝度を測定した。測定した輝度の比よりコントラスト比を算出した。結果を表1に示す。
【0103】
[実施例2]
1Lの反応容器に上記式(A-3)で表されるアシッドレッド52(40g)、メタノール0.32Lを入れ、60℃で溶解し、活性炭(型番:白鷺)2gを加え、1時間撹拌した。反応液を50℃でろ紙(型番:ADVANTEC製GF-75)で2回ろ過した。このろ液をバット(30cm×40cm)に移し、減圧乾燥器に入れ、50℃-2時間、65℃-2時間、80℃-20時間の温度-加熱時間の条件で減圧乾燥し、紫色結晶状の着色組成物(40.3g)を得た。この着色組成物のNMR分析を行い、メタノールなどの有機溶媒の成分が観測されないことを確認した。この着色組成物について、実施例1と同様に粉末X線回折およびコントラスト比を測定した結果を、図1および表1に示す。
【0104】
[比較例1]
10Lの反応容器に上記式(A-3)で表されるアシッドレッド52(700g)、活性炭(型番:白鷺)40g、メタノール6Lを入れ、55℃で1時間撹拌した後、50℃でろ過した。ろ液を1/3の重量まで減圧下で濃縮し、バットにあけて、25±2℃で4日間風乾し、80℃で5日間減圧乾燥した。重量減少が1日あたり0.4重量%となった時点で乾燥終了とし、赤紫色紛末のキサンテン系染料(A-20)を含有する着色組成物として得た(715g)。この着色組成物のNMR分析を行い、メタノールなどの有機溶媒の成分が観測されないことを確認した。この着色組成物について、粉末X線回折およびコントラスト比を測定した結果を、図1および表1に示す。
【0105】
[比較例2]
比較例1で得られた着色組成物を乳鉢で粉砕した。この着色組成物について、粉末X線回折およびコントラスト比を測定した結果を、図1および表1に示す。
【0106】
図1および表1に示すように、実施例1および実施例2の着色組成物は、CuKα線の粉末X線回折における回折角2θ=3°~7°の範囲の回折ピーク数の数が0個であり、かつ、これを用いて作製したカラーフィルターのコントラスト比が、カラーフィルター用として実用上問題ない。
【0107】
一方、比較例1および比較例2の着色組成物は、CuKα線の粉末X線回折における回折角2θ=3°~7°の範囲の回折ピーク数の数が1個であり、コントラスト比が実施例よりも低い。
【0108】
以上のように、本発明のキサンテン系染料を含有する着色組成物を用いて作製したカラーフィルターは、高いコントラスト比を有するため、カラーフィルター用着色剤として有用である。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明に係るキサンテン系染料を含有する着色組成物は、カラーフィルター用着色剤として有用であり、コントラスト比に優れたカラーフィルターを作製することが可能である。
図1