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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】自転車用クリートおよび自転車用ペダル
(51)【国際特許分類】
   A43B 5/14 20060101AFI20220620BHJP
   A43B 13/26 20060101ALI20220620BHJP
   A43C 13/04 20060101ALI20220620BHJP
   B62M 3/08 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
A43B5/14
A43B13/26 A
A43C13/04
B62M3/08 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019554520
(86)(22)【出願日】2018-04-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 AU2018050307
(87)【国際公開番号】W WO2018184065
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-03-31
(31)【優先権主張番号】2017901217
(32)【優先日】2017-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】519350580
【氏名又は名称】フシエ, マイケル クレイグ
【氏名又は名称原語表記】FOUCHE, Michael Craig
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】フシエ, マイケル クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】カワレフスキー, アントニー リスザード
【審査官】田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-503602(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0312569(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0094898(US,A1)
【文献】特開平05-111402(JP,A)
【文献】実開平05-076303(JP,U)
【文献】特開2013-233928(JP,A)
【文献】特開2000-355294(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/286904(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 5/14,13/26
B62M 3/08
A43C 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペダルの受け部に接続するための自転車用靴クリートであって、前記ペダルが、前記ペダルの前記受け部が回転可能に取り付けられる取付シャフトを有し、前記クリートが、
自転車用靴の底面に前記クリートを取り付けるためのマウントと、
前記ペダルの前記受け部が受けるための取付部であって、前記取付シャフトを中心とした前記受け部の回転軸線と略平行な方向に延びる運動平面内で前記ペダルの前記受け部に対して移動可能である、前記クリートの取付部と、
前記クリートに取り外し可能に取付け可能な弾性部材であって、前記ペダルが前記クリートに取り付けられた場合に前記取付部と前記受け部との間に設けられ、前記クリートの一部の周囲で受けられる閉じたループ、閉じたバンドまたは閉じたストラップの構成を有する弾性部材
を含み、
前記弾性部材は、前記運動平面内での前記受け部に対する前記クリートの所望の動き量を弾性によってもたらすことにより、前記運動平面内での前記受け部に対する前記取付部の動きを調整し、サイクリストが前記クリートに比較的小さな負荷を加えた場合には前記弾性によって前記ペダルに対する前記クリートの動きの自由が少なくなり、前記サイクリストが前記クリートに比較的大きな負荷を加えた場合には相対運動が可能となる、自転車用靴クリート。
【請求項2】
前記弾性部材が、前記取付シャフトを中心とした前記受け部の回転軸線と略平行な方向に延びる運動平面内での前記受け部に対する前記取付部の動きに抵抗する、請求項1に記載の自転車用靴クリート。
【請求項3】
前記弾性部材が、前記クリートに取付け可能である、請求項1または2に記載の自転車用靴クリート。
【請求項4】
前記弾性部材が概ね、断面の大きさおよび/または形状が略一定もしくは可変のOリングの形態である、請求項1~3のいずれか一項に記載の自転車用靴クリート。
【請求項5】
前記クリートが、前記弾性部材を受けるための座部を含む、請求項3または4に記載の自転車用靴クリート。
【請求項6】
前記座部が、張力がかけられた状態の前記弾性部材を受けるように構成されている、請求項に記載の自転車用靴クリート。
【請求項7】
前記座部が、前記弾性部材の少なくとも一部を受け入れる、スロット部分または溝部分を含む、請求項またはに記載の自転車用靴クリート。
【請求項8】
前記弾性部材が、単一ループもしくは二重ループ構成で前記クリートに取付け可能であるように構成されている、請求項1~のいずれか一項に記載の自転車用靴クリート。
【請求項9】
請求項1~のいずれか一項に記載のクリートの前記弾性部材を交換するための、交換用弾性部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサイクリングに関する。より具体的には、本発明は、自転車用靴に取り付けるための改良された自転車用クリートに関し、この関連において以下に一般的に説明する。本発明は、ロードバイク用に設計されたクリートの文脈において特定の用途を有し、この関連において以下に一般的に説明する。しかし、本発明はまた、通勤用自転車、タイムトライアル用自転車、トライアスロン用自転車およびトラック競技用自転車を含む(ただしこれらに限定されない)他の自転車分野に適用してもよいことを理解されたい。
【0002】
本発明はまた、自転車用ペダルに関する。
【背景技術】
【0003】
従来の自転車用のペダルおよびクリートは多種多様な特別設計で提供されており、製造業者は通常、市場において視覚的に区別するようにペダルおよびクリートに独自の外観を採用している。
【0004】
サイクリストが使用するペダル/クリートの組合せに関係なく、ペダル/クリートの主な機能は、危険なだけでなく、結果としてペダリング動作が低下しかねない、サイクリストの靴がペダルから誤って外れることを防止することである。
【0005】
通常、ペダル設計は特定のクリート設計とともに使用するように構成される。しかし、場合によっては、特定のペダルを小範囲のクリート設計のうちいずれか1つと組み合わせて使用してもよい。その範囲内の各クリートは、購入者に独自の性能特性をもたらす可能性があり、それによって購入者はニーズに最も適したクリートを選択することができる。
【0006】
クリート設計は、ペダルとクリートとの間の相対運動を様々な量で提供する。サイクリングによって生じる膝の怪我の可能性を低減するために、いくらかの動きがある程度望まれる場合が多く、この種類のクリートは多くのサイクリストに好まれている。しかし、一部の一流サイクリストおよびプロのサイクリストを含む他のサイクリストは、ペダルとクリートとの間の相対運動がほとんどあるいはまったくないことを好むので、彼らの要求を満たすクリート設計を選択する。
【0007】
既存のペダルおよびクリートの設計は、一般的にサイクリストが求めるような期待される性能特性を提供する一方で、既存のクリート/ペダルの設計と比較して改善された性能特性および特徴を提供するような新規の潜在的に改善されたクリートおよび/またはペダルを提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0008】
本発明の広範な態様によれば、ペダルの受け部に接続するための自転車用靴クリートが提供され、ペダルは、ペダルの受け部が回転可能に取り付けられる取付シャフトを有する。クリートは、自転車用靴の底面にクリートを取り付けるためのマウントと、ペダルの受け部が受けるための取付部とを含む。クリートはまた、ペダルがクリートに取り付けられる場合に取付部と受け部との間に設けられる弾性部材を含む。弾性部材は、受け部に対する取付部の動きに抵抗する。
【0009】
好ましくは、クリートはペダルに取り外し可能に接続することができるが、そうである必要はない。
【0010】
上記では「サイクリング」について述べている。クリートは、自転車、三輪車、タンデム自転車、リカンベント自転車、電動自転車、一輪車、運動用自転車、スピニングバイクもしくはその他の型の固定式自転車など、様々な型の自転車と組み合わせて使用されてもよい。とはいえ、本発明は、自転車での使用、具体的にはロードバイク、トラック競技用自転車、タイムトライアル用自転車、トライアスロン用自転車もしくは通勤用自転車での使用に適した靴に関連して特定の用途があると考えられる。
【0011】
「靴」への言及は、自転車用靴、自転車用ブーツ(例えば寒い気候条件で着用されるもの)、および自転車用サンダルを含むがこれらに限定されない自転車用クリートと組み合わせて現在使用されている任意の適切な種類の靴を含むものであると理解されるべきである。とはいえ、本発明は、ロードバイク、トラック競技用自転車、トライアスロン用自転車、タイムトライアル用自転車もしくは通勤用自転車用に設計された靴に関連して特定の用途があると考えられる。
【0012】
弾性部材は、好ましくは運動平面内での受け部に対する取付部の動きに抵抗し、運動平面は、取付シャフトを中心とした受け部の回転軸線に対して略平行な方向に延びる。弾性的であるため、サイクリストがクリートに加えた負荷が比較的低い場合、部材は、ペダルに対するクリートの動きの自由度が低いことが望ましい。しかし、部材の弾性とは、サイクリストがクリートに比較的高い負荷を加えた場合に、クリートとペダルとの間の相対運動が可能であることが望ましいということである。部材の自然な弾性はまた、クリートに加えられた荷重が取り除かれた場合にクリートを中立の(もしくは無負荷の)位置に戻すことが望ましい。弾性部材を提供することは、一般的にペダルのクリートに対するクリートのフロート/動きを防止することを意図していない。むしろ、フロート/動きを調整して、幅広い可能な利点を潜在的に提供することを意図しており、その利点には、
-サイクリストのペダリング技術を改善すること
ペダリング効率を改善すること
-膝およびその他の怪我の可能性を低減すること
-サイクリング時に放出されるエネルギーを潜在的に低減すること
-必要に応じて、クリートとペダルとの間に所望の量のフロート/動きを提供すること
-クリート摩耗率を低減すること
-クリートのペダルとの改善された接触面を提供すること
-より自然なペダリング感覚
-ペダル/クリートの異なるRPMおよび負荷でクリートの動態を変更/改善すること
-さらに、サイクリストがクリートに加えた任意の負荷が取り除かれた場合に、弾性部材の弾力によってクリートをペダルに対して静止位置に動的に戻すこと
が含まれる。
【0013】
上記では、「1つの」運動平面を参照している。回転軸線に対する運動平面の向きは、所与のサイクリストの自然なペダリング動作の結果として、ペダルストローク中に変化する可能性が高いことを理解されたい。しかし、いかなるときも、ロードサイクリング用のペダルおよびクリートは通常、この種の相対運動もしくは「フロート(浮動)」を提供してサイクリストとその様々なサイクリング方法との間の解剖学的な差異を説明するように特別に設計されているので、運動平面は常に回転軸線と略平行である。また、クリートとペダルとの間にフロートが提供されて、クリートとペダルとの間に相対的なフロートが提供されないペダル/クリートの組合せを有することによって生じる可能性が高い膝の怪我(およびその他の潜在的な怪我)を制限する。したがって、本明細書の文脈における運動平面は、固定の運動平面であると見なされるべきではなく、所与のサイクリストのペダリング動作中の任意の瞬間の観点で考慮されるべきである。
【0014】
弾性部材がクリートとペダルとの間のフロートに抵抗する程度は、必要に応じて選択してもよい。いくつかの実施形態では、ペダルに対するクリートのフロート中立位置の付近に抵抗が提供されない場合があり、有効なフロートの外側限界において、もしくは外側限界に向かって抵抗が提供される。他の実施形態では、おそらく中立位置を除いて、ペダルに対するクリートの任意のフロート相対位置において抵抗が提供されてもよい。弾性部材によって提供される抵抗は、弾性部材が受ける変形量に応じて(線形または非線形のいずれかで)増加する場合がある。したがって、抵抗量は、有効なフロートの外側限界において、もしくは外側限界に向かって最も高くなる場合がある。
【0015】
弾性部材は、回転軸線に対して略垂直な方向のペダルの受け部に対するクリートの取付部の動きに抵抗するように特別に設計されていない。クリートおよび/またはペダルの接触面が、ペダルとクリートとの間に回転軸線に垂直な動きの自由度が存在する程度まで摩耗すると、このような動きが見られる場合がある。このような動きが存在する場合、サイクリストがクリートを交換するのに最適な時期であると一般的に見なされ、十分に摩耗している場合は、ペダルを交換することも考慮される可能性がある。しかし必要に応じて、弾性部材は、回転軸線に対して略垂直な方向のペダルとクリートとの間の少なくとも少量の相対運動に抵抗するように設計されてもよい。
【0016】
前述したように、出願人は、弾性部材を提供することにより、必要に応じてペダル内のクリートの可変フロートを可能にするだけでなく、サイクリストのペダリング効率を潜在的に改善することを見いだした。また、クリートはペダルに対して無制御の動きで移動する可能性が低いため、ペダルのフロートの制御を潜在的に改善する。
【0017】
好ましくは、弾性部材はクリートに取り外し可能に取り付けられ、これにより、必要に応じて交換するかまたは取り外すことができる。他の例では、弾性部材が恒久的な一体型配置としてクリートに恒久的に取り付けられる(そうでなければクリートと一体化される)ことが望ましい場合がある。
【0018】
また、本発明のいくつかの実施形態では、弾性部材はクリートではなくペダルに取り付けられてもよく、恒久的に取り付けられるか、または取り外し可能に取り付けられてもよいことが想定される。したがって、本発明は独自のペダル設計にも拡張することができる。
【0019】
弾性部材がクリート(もしくはペダル)に取り付けられる正確な配置は、運動平面内でのペダルの受け部に対するクリートの取付部の動きに抵抗するように機能する限り、必要に応じて選択してもよい。
【0020】
好ましい一形態では、弾性部材は、クリートの一部の周囲で受けられる閉じたループ、バンドもしくはストラップの形態である。一例として、弾性部材は、一般的にポリマーもしくは他の適切な弾性材料から製造されたOリングの形態であってもよい。弾性部材の特定の大きさおよび形状は必要に応じて選択してもよく、使用するクリートの特定の形態によって少なくとも部分的に決定してもよい。Oリングは、少なくとも略一定の断面形状のものであってもよいが、少なくとも一実施形態は、Oリングの残りの部分とは異なる断面形状の一部を有する弾性部材を含む。したがって、本明細書の文脈における「Oリング」という用語は、一定の断面形状および/または大きさのOリングに限定されないものであると理解される。
【0021】
クリートは、好ましくは弾性部材を受けるための座部を含むことが想定される。張力は弾性部材をその着座位置に保持するように作用することがあるので、座部は、わずかに張力がかけられた状態であっても、弾性部材を張力がかけられた状態で受けるように構成されてもよい。
【0022】
一形態では、座部は、クリートに設けられたスロット部分もしくは溝部分を含み、その中に弾性部材の少なくとも一部を受け入れる。
【0023】
弾性部材は、クリートの少なくとも一部の上もしくは周囲に二重ループ構成でクリートに取付け可能であるように構成されてもよい。しかし、出願人の現在の選択は、弾性部材を単一のループ構成でクリートに取り付けることである。
【0024】
これまで、弾性部材を含むクリートに関連して本発明を説明してきた。しかし、本発明はまた、上記で一般的に説明した種類のクリートとともに使用するための交換用弾性部材も考えられることを理解されたい。交換用弾性部材は、損傷するかもしくは摩耗する可能性のあるクリートに取り付けられた既存の弾性部材を交換する場合、または既存の弾性部材を異なる物理的特性のものと交換する場合に役立つ場合がある。交換用弾性部材はまた、クリートが弾性部材なしで最初に提供されるが、弾性部材が任意で取り付けられる場合に役立つ場合がある。
【0025】
本発明によるクリートは、弾性部材を所定の場所に取り付けて使用されるか、または単純に弾性部材を取り外すことによって、さらに従来方式で設計されたクリートのように使用されてもよいだろう。
【0026】
本発明の別の態様によれば、自転車用ペダルの受け部に接続するための自転車用靴クリートが提供され、自転車用ペダルは、ペダルの受け部が回転可能に取り付けられる取付シャフトを有する。クリートは、自転車用靴の底面にクリートを取り付けるためのマウントと、ペダルの受け部が受けるための取付部とを含む。クリートはまた、弾性部材が受け部に対する取付部の動きに抵抗するように弾性部材を受け入れるために、(ペダルがクリートに取り付けられる場合に)取付部と受け部との間に設けられる弾性部材受入空間を含む。このような配置では、弾性部材を取り付けることなくクリートを最初に提供し、弾性部材の利点を利用することが望まれる場合に弾性部材を取り付けてもよい。
【0027】
本発明はまた、前段落で広く言及された形態の自転車用靴クリートとともに使用するための弾性部材に関する。好ましくは、弾性部材はクリートに取り外し可能に取り付けられる。弾性部材は、クリートの一部の周囲で受けられる閉じたループ、バンドもしくはストラップを含んでもよく、一般的にOリングの形態であってもよい。
【0028】
弾性部材は、クリート上に設けられた座部の形態で、弾性部材受入空間の上、内部もしくは周囲に受入可能であってもよい。本発明のいくつかの形態では、わずかに張力がかけられた状態であっても、張力が作用して弾性部材をその着座位置に保持するように、弾性部材は、張力がかけられた状態で座部の上、内部もしくは周囲に受入可能であることが望ましい場合がある。弾性部材は、座部のスロット部分もしくは溝部分に受入可能であってもよい。さらに、弾性部材は、少なくとも1つの単一ループ構成も考えられるが、二重ループ構成でクリートに取付け可能であるように構成されてもよい。
【0029】
本発明の別の実施形態では、クリートの取付部を受けるための受け部と、ペダルの受け部が回転可能に取り付けられる取付シャフトとを含む自転車用ペダルが提供される。ペダルはまた、ペダルがクリートに取り付けられる場合に取付部と受け部との間に設けられる弾性部材を含む。弾性部材は、受け部に対する取付部の動きに抵抗する。
【0030】
前段落を参照すると、弾性部材は、好ましくは運動平面内での受け部に対する取付部の動きに抵抗し、運動平面は、取付シャフトを中心とした受け部の回転軸線に対して略平行な方向に延びる。弾性部材は、ペダルに取り付けられるかまたは取付け可能であってもよい。一形態では、弾性部材はペダルに取り外し可能に取り付けられるか、または取り外し可能に取付け可能である。
【0031】
本発明のさらに別の実施形態によれば、クリートの取付部を受けるための受け部と、ペダルの受け部が回転可能に取り付けられる取付シャフトとを含む自転車用ペダルが提供される。ペダルはまた、ペダルがクリートに取り付けられる場合に取付部と受け部との間に設けられる弾性部材受入空間を含む。受入空間は、弾性部材が受け部に対する取付部の動きに抵抗するように弾性部材を受け入れるために設けられている。
【0032】
前段落を参照して、ペダルとともに使用するための弾性部材が提供され、弾性部材はペダルに取り外し可能に取り付けられるか、または取り外し可能に取付け可能である。
【0033】
便宜上、添付の図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を以下に説明する。図の特殊性は、本発明の前述の広範な説明を限定するものではないと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の一実施形態による自転車用靴クリートの側面斜視図である。
図2図1に示すクリートの平面図である。
図3図1に示すクリートの別の側面斜視図である。
図4図1に示すクリートの端面斜視図である。
図5】本発明の第2の実施形態による、ロードバイク用靴の底面に取り付けられた場合の自転車用靴クリートの平面図である。
図6a】クリートとペダルとの間の有効なフロート(浮動)の度合いの一例を示す、クリートおよび関連するペダルの平面図である。
図6b】クリートとペダルとの間の有効なフロートの度合いの別の例を示す、クリートおよび関連するペダルの平面図である。
図6c】クリートとペダルとの間の有効なフロートの度合いのさらに別の例を示す、クリートおよび関連するペダルの平面図である。
図7】本発明の第3の実施形態による自転車用靴クリートの平面図である。
図8図7に示すクリートの側面図である。
図9図7に示すクリートの側断面図である。
図10図7に示すクリートの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1から図4を参照して、本発明の一実施形態による自転車用靴クリート20が示されている。クリート20は、ロードバイク用靴(図示せず)とともに使用するために特別に設計されている。しかし、クリート20はまた、自転車トラック競技、トライアスロン、タイムトライアルおよび通勤を含むがこれらに限定されない他の自転車分野に使用されてもよい。
【0036】
本明細書(および請求項)全体にわたるロードバイクの使用に関連したクリート20への言及を提供して、本発明を説明する。本明細書におけるロードバイクの使用への言及は、クリート20をロードバイクの使用のみに限定することを意図するものではなく、クリート20は、前段落で言及したものを含む他の様々なサイクリング分野においても使用してもよいことを理解されたい。
【0037】
クリート20は、クリートを靴の底面に取り付けるためのマウントを含む。マウントは、既存のロードバイク用クリート設計に共通した方法で、ねじファスナ28および関連する長方形ワッシャ30(3つのねじファスナ/ワッシャの組合せのうち1つのみが示されている)を受け入れるために、クリート20を通って延びる3つの取付開口部22、24および26の形態をしている。
【0038】
各ファスナ28は、関連する靴の底面から内向きに延びるねじ穴で受けることができる。したがって、ファスナ28のヘッド部の設計に応じて、3つのねじファスナ28をアレンキー、マイナスドライバもしくはプラスドライバで締め付けることによって、クリート20はバイク用靴の底面への取付位置に保持されることが理解され得る。
【0039】
クリート20は、ペダルの受け部が受けるための取付部32を含む。取付部は、前端部34と後端部36とを含む。取付部32は、一般的に既存のクリート設計のものと同様の形態である。
【0040】
クリート20の利点の1つは、既存のペダルとともに使用するために構成されていることである。サイクリストは、切替えコストを大幅に増加させるようなペダル交換の必要はなく、既存のクリートを一対のクリート20と交換するだけで独自の設計を活用することができるので、これは重要であると考えられる。
【0041】
クリート20が靴の底面の所定の位置に取り付けられた状態で、サイクリストは、関連する自転車に乗って、前端部34が前方に移動されてペダルの受け部内に位置し、続いて後端部36が略下方に押圧され、それによってペダルの受け部内の所定の位置にスナップ嵌めするように、自身の足を置くことができる。これが完了すると、クリート20は(したがって関連する靴も)ペダルに取り外し可能に接続される。
【0042】
このようにして、サイクリストがクリート20をペダルから取り外したいと望む時機まで、クリート20はペダルに接続されたままである。サイクリストは、自身の踵を自転車から横方向外向きに移動させ、それによってクリート20をペダルから外すことでこれを達成する。
【0043】
クリート20はまた、Oリングの形態で示される弾性部材38を含む。出願人は、弾性部材38を提供することはクリート20に特有であると考えている。
【0044】
Oリングは、適切なポリマー材料(または他の適切な弾性材料)から製造される。
【0045】
弾性部材38は、取付部32の前端部34の周囲に二重ループ構成で延びる。弾性部材38が前端部34の前方部分40の周囲に延びるという事実は、クリート20がペダルに接続された場合に弾性部材38のこの部分がペダルに接触する結果となることに留意されたい。そうすることで、弾性部材38は、ペダルの受け部に対する取付部32の動きに抵抗する。弾性部材38が存在しなければ、このような抵抗は存在しないであろう。
【0046】
より具体的には、弾性部材38はフロートに抵抗するように設計されている。すなわち、弾性部材38は、ペダルの取付シャフトを中心とした受け部の回転軸線に対して略平行な方向に延びる運動平面X-Y(図2参照)内での受け部に対する取付部32の動きに抵抗する。この運動平面は通常、後端部36の略円弧状の運動Aの形態でサイクリストに最も顕著に見られ、これは現在入手可能なほとんどのロード自転車(および他の)ペダル/クリートの組合せに固有である。この円弧状の運動A(図2参照)は、ペダリング動作中のサイクリストの膝の自然な解剖学的運動に対応する。ペダルとクリートとの間のこの固有の動き(もしくはフロート)の自由度がなければ、ペダリング動作中に任意の横方向の動きの自由度が足に与えられないため、サイクリストは膝の怪我(もしくはその他の怪我)を起こしやすくなる。
【0047】
有効なフロートの度合いは、従来のクリート/ペダルの配置を示す図6aから図6cに示されている通りであってもよい。図6aでは、クリートCは関連するペダルPに対して中立位置で示されている。図6bでは、ペダルは、ペダルPに対して反時計回り方向のクリートCのフロート(浮動)の(破線CCWで示す)最大有効量を示している。クリートCはまた、破線CWで示すように、(有効な固有のフロートにより)図6bに示す程度と同じ度合いで時計回りに回転してもよいことを理解されたい。
【0048】
ペダルは図1から図4には示されていないが、回転軸線X-X(ペダルを自転車のクランクに取り付けるペダル取付シャフトと同軸)-図2参照-は、クリート20がペダルに接続されている場合のおよその位置に示されている。
【0049】
弾性部材38は、クリート20に取り外し可能に取り付けられていることを理解されたい。これは、損傷もしくは摩耗が生じた場合に弾性部材38の交換を可能にするので望ましい。クリート20は、いくつかの交換用弾性部材とともに販売されてもよい。弾性部材はまた、交換部品として個別に販売されてもよい。弾性部材38はまた、クリートの修正を必要とせずに(もしくは少なくとも最小限の修正)、少なくともいくつかの既存のクリート設計に潜在的に後付け可能な場合がある。
【0050】
クリート20は、弾性部材38を受けるための座部42を含むことが分かる。前述したように、張力は弾性部材38をその着座位置に保持するように作用することがあるので、座部42は、わずかに張力がかけられた状態であっても、弾性部材38を張力がかけられた状態で受けるように構成されてもよい。
【0051】
前述したように、図1から図4に示す実施形態は二重ループ構成で弾性部材38を受ける座部42を示している。第1のループ44は全体が視認できる一方で、第2のループ46は部分的にしか視認できない。第2のループ46の視認できない部分は、クリート20と靴の底面との間に延びている。第1のループ44および第2のループ46は一体的に形成されている。本質的に、弾性部材38は単純に二重に重ねられて2つのループ44および46を形成する。開口部48はクリート20を通って延び、弾性部材38は、所定の位置に取り付けられる場合に開口部48を介してクリート20に供給される。弾性部材38が開口部48を介して供給されるという事実が、使用中に弾性部材38が誤ってクリート20から外れるのを防止することが望ましい。
【0052】
図1から図4に示した弾性部材38は、二重に重ねられた構成で示されていることを理解されたい。しかし、弾性部材38および/またはクリート20は、弾性部材38がクリート20に取り付けられた場合に二重にされる必要がないように設計変更されてもよい。さらなる実施形態では、図示の二重に重ねられた弾性部材38の代わりに、2つ(またはそれ以上)のより小さい弾性部材をクリート20に取り付けてもよい。
【0053】
交換用弾性部材を、所望のクリート性能を提供するための幅広い可能な弾性特性のうちいずれか1つにおいて提供してもよいことが考えられる。これは、乗り手の能力、乗車方法、生理機能、ペダル/クリートの組合せの望ましい性能特性、および/または特定のクリートおよびペダルの設計に適合するように部分的に行うことができる。
【0054】
必要に応じて、クリート20は、弾性部材38を所定の場所に取り付けて使用されるか、または単純に弾性部材38を取り外すことによって、さらに従来方式で設計されたクリートのように使用されてもよい。
【0055】
図5を参照して、本発明の第2の実施形態によるクリート120が示されている。図1から図4に示すクリート20と同様に、図5に示すクリート120は、ロードバイク/トラック競技用自転車/タイムトライアル用自転車/トライアスロン用自転車用の靴121とともに使用するために特に設計されている。
【0056】
クリート120は、靴121の底面123に取り付けられた状態で示されている。クリート120は、クリート120を通って延びるそれぞれの取付開口部122、124および126に受け入れられたねじファスナ128によって、靴121に取り付けられる。ファスナ128は、既存のロードバイク用クリート取付け配置に共通した方法で、靴121の底面123に設けられたねじ穴に受け入れられる。
【0057】
クリート120は、ペダルの受け部が受けるための取付部132を含む。取付部132は、一般的に既存のクリート設計の形態の前端部134および後端部136を含む。
【0058】
クリート20と同様に、クリート120は既存のペダルとともに使用するように構成されており、サイクリストは、切替えコストを大幅に増加させるようなペダル交換の必要はなく、既存のクリートを一対のクリート120と交換するだけで本発明を活用することができるので、これは重要であると考えられる。
【0059】
クリート120が靴121の底面の所定の位置に取り付けられた状態で、前端部134が前方に移動してペダルの受け部内に位置し、続いて後端部136が略下方に押圧され、それによってペダルの受け部内の所定の位置にスナップ嵌めされるように、サイクリストは関連する自転車に乗って自身の足を置くことができる。これが完了すると、クリート120は(したがって靴121も)ペダルに取り外し可能に接続される。
【0060】
このようにして、サイクリストがクリート120をペダルから取り外したいと望む時機まで、クリート120はペダルに接続されたままである。サイクリストは、靴の踵を自転車から横方向外向きに移動させ、それによってクリート120をペダルから外すことでこれを達成する。
【0061】
クリート120はまた、適切なポリマー材料(または他の適切な材料)から製造されたOリングの形態で示される弾性部材138を含む。
【0062】
弾性部材138は、図1から図4に示す弾性部材38と実質的に同様に機能する。弾性部材138は、クリート120に取り外し可能に取り付けられて、損傷もしくは摩耗が生じた場合に弾性部材138を交換することが可能である。
【0063】
弾性部材38および138の1つの違いは、それぞれのクリート20/120に対する着座位置にある。
【0064】
弾性部材138は、取付部132の前端部134の周囲に二重ループ構成で延び、それによってクリート120がペダルに取り外し可能に接続された場合にペダルに接触する。そうすることで、弾性部材138は、ペダルの回転軸線X1-X1に対して略平行な方向X1-Y1の動きに抵抗する。
【0065】
第1のループ144は、クリート120の前端部134の周囲に巻き付き、第2のループ146は、前端部134の前方部分140の周囲に部分的に巻き付く。第2のループ146の残りの部分は、クリート120に設けられたスロット147内およびワッシャ149内に位置しており、弾性部材138のこの部分をクリート120に対して所定の位置に固定するために固定装置(図示せず)を使用して、必要に応じて、使用中に弾性部材138が誤ってクリート120から外れるのを防止するのに役立つ。
【0066】
クリート120は、弾性部材138を受けるための座部142を含むことが分かる。張力は弾性部材138をその着座位置に保持するように作用することがあるので、座部142は、(わずかに張力がかけられた状態であっても、)弾性部材138を張力がかけられた状態で受けるように構成されてもよい。
【0067】
必要に応じて、クリート120は、弾性部材138を所定の位置に取り付けて使用されるか、または単純に弾性部材138を取り外すことによって、さらに従来方式で設計されたクリートのように使用されてもよい。
【0068】
図7から図10を参照して、本発明の第3の実施形態によるクリート220が示されている。図1から図4に示すクリート20と同様に、図7から図10に示すクリート220は、ロードバイク/トラック競技用自転車/タイムトライアル用自転車/トライアスロン用自転車用の靴(図示せず)とともに使用するために特に設計されている。
【0069】
クリート220は、クリート220を通って延びるそれぞれの取付開口部222、224および226に受け入れられたねじファスナによって、靴に取り付けられる。ファスナは、既存のロードバイク用クリート取付け配置に共通した方法で、靴の底面に設けられたねじ穴に受け入れられる。
【0070】
クリート220は、ペダルの受け部が受けるための取付部232を含む。取付部232は、一般的に既存のクリート設計の形態の前端部234および後端部236を含む。
【0071】
クリート20および120と同様に、クリート220は既存のペダルとともに使用するように構成されており、サイクリストは、切替えコストを大幅に増加させるようなペダル交換の必要はなく、既存のクリートを一対のクリート220と交換するだけで本発明を活用することができるので、これは重要であると考えられる。
【0072】
クリート220が靴の底面の所定の位置に取り付けられた状態で、前端部234が前方に移動してペダルの受け部内に位置し、続いて後端部236が略下方に押圧され、それによってペダルの受け部内の所定の位置にスナップ嵌めされるように、サイクリストは関連する自転車に乗って自身の足を置くことができる。これが完了すると、クリート220は(したがって靴も)ペダルに取り外し可能に接続される。
【0073】
このようにして、サイクリストがクリート220をペダルから取り外したいと望む時機まで、クリート220はペダルに接続されたままである。サイクリストは、靴の踵を自転車から横方向外向きに移動させ、それによってクリート220をペダルから外すことでこれを達成する。
【0074】
クリート220はまた、適切なポリマー材料(または他の適切な材料)から製造されたOリングの形態で示される弾性部材238を含む。Oリングは断面が不均一であり、前方部分238aが後方部分238bよりも厚いことを理解されたい。
【0075】
弾性部材238は、図1から図4に示す弾性部材38と実質的に同様に機能する。弾性部材238は、クリート220に取り外し可能に取り付けられて、損傷もしくは摩耗が生じた場合に弾性部材238を交換することが可能である。
【0076】
弾性部材38と弾性部材238との1つの違いは、それぞれのクリート20/220に対する着座位置にある。
【0077】
弾性部材238は、取付部232の前端部234の周囲に単一ループ構成で延び、それによってクリート220がペダルに取り外し可能に接続された場合にペダルに接触する。そうすることで、弾性部材238は、ペダルの回転軸線X1-X1に対して略平行な方向X1-Y1の動きに抵抗する。
【0078】
(特に図9において)クリート220は、(二重ループ構成ではなく)単一ループ構成で弾性部材238を受けるための座部242を含むことが分かる。張力は弾性部材238をその着座位置に保持するように作用することがあるので、座部242は、(わずかに張力がかけられた状態であっても、)弾性部材238を張力がかけられた状態で受けるように構成されてもよい。
【0079】
必要に応じて、クリート220は、弾性部材238を所定の位置に取り付けて使用されるか、または単純に弾性部材238を取り外すことによって、さらに従来方式で設計されたクリートのように使用されてもよい。
【0080】
クリート20/120/220には、独特の色/色の組合せまたは他の独特の仕上げを施して、市場において、および使用中に容易に識別可能な製品を提供することができる。出願人は現在、クリート20/120/220を緑色で製造することを検討している。
【0081】
既存のクリート/ペダル設計と比較した場合、本出願の主題のクリート20、120および220および/またはペダルによって様々な潜在的な利点が提供されることが望ましい。前述したように、これらの可能性のある利点には、
-サイクリストのペダリング技術を改善すること
-ペダリング効率を改善すること
-膝およびその他の怪我の可能性を低減すること
-サイクリング時に放出されるエネルギーを低減すること
-必要に応じて、クリートとペダルとの間に所望の量のフロート/動きを提供すること
-クリート摩耗率を低減し、場合によってはペダル摩耗率も低減すること
-クリートのペダルとの改善された接触面を提供すること
-より自然なペダリング感覚
-ペダル/クリートの異なるRPMおよび負荷でクリートの動態を変更/改善すること
-さらに、弾性部材の弾力によってクリートをペダルに対して静止位置に動的に戻すこと
が含まれる。
【0082】
本発明の趣旨もしくは範囲から逸脱することなく、前述の部品の構造および配置に様々な変更、修正および/または追加を導入してもよいことを理解されたい。
【0083】
本出願に基づいて、または本出願の優先権を主張して、将来的に特許出願がオーストラリアまたは海外で提出される可能性がある。以下の特許請求の範囲は、このような将来の出願で請求される可能性のある範囲を限定するものではないことを理解されたい。後日、特徴を請求項に追加するかまたは請求項から削除して、本発明をさらに定義するかまたは再定義してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10