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  • 特許-高速での雑草防除 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】高速での雑草防除
(51)【国際特許分類】
   A01M 21/00 20060101AFI20220620BHJP
   A01M 21/04 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
A01M21/00 Z
A01M21/04 D
A01M21/04 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019563526
(86)(22)【出願日】2018-05-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-09
(86)【国際出願番号】 EP2018062271
(87)【国際公開番号】W WO2018210702
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】17171521.2
(32)【優先日】2017-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516245885
【氏名又は名称】バイエル、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BAYER AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】ヒンネルク、バスフェルト
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/005625(WO,A1)
【文献】特開平08-056546(JP,A)
【文献】特開平10-042773(JP,A)
【文献】特開平03-083534(JP,A)
【文献】特表2008-539459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 21/00-21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両向けの雑草防除装置であって、
一続きの軌道に沿って、雑草防除措置が実行されるべき1つまたは複数の場所を特定する手段と、
特定された前記1つまたは複数の場所での雑草防除のための防除手段と、
を含み、
前記特定手段および前記防除手段は、鉄道車両が走行中に、走行する前記鉄道車両の移動方向と反対向きに移動するよう構成されており
移動可能に設計された前記特定手段は、画像を分析するためのコンピュータシステムへ接続された1つまたは複数のカメラであり、
移動可能に設計された前記防除手段は、複数の電極であり、前記電極は、植物と接触すると前記電極に電流を流すことが可能であり、前記電流は、少なくとも部分的に前記植物の一部を流れる、
雑草防除装置において、
移動可能に設計された前記特定手段および/または前記移動手段が、レールに据え付けられ、前記鉄道車両の前記移動方向と反対の横方向の動きを行い、または、
移動可能に設計された前記特定手段および/または前記移動手段が、旋回可能に据え付けられ、前記鉄道車両の前記移動方向と反対へ旋回運動を行う、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
鉄道車両を一続きの軌道に沿って移動方向へ移動させ、
雑草防除措置が実行されるべき少なくとも一つの場所を特定し、
前記少なくとも一つの場所で前記雑草防除措置を実行する、
ステップを含み、
前記鉄道車両の前記移動中に、前記少なくとも一つの場所を特定する手段、および、前記少なくとも一つの場所で前記雑草防除措置を実行する防除手段が、前記鉄道車両の前記移動方向と反対へ移動
移動可能に設計された前記特定手段は、画像を分析するためのコンピュータシステムへ接続された1つまたは複数のカメラであり、
移動可能に設計された前記防除手段は、複数の電極であり、前記電極は、植物と接触すると前記電極に電流を流すことが可能であり、前記電流は、少なくとも部分的に前記植物の一部を流れる、
方法において、
移動可能に設計された前記特定手段および/または前記移動手段が、レールに据え付けられ、前記鉄道車両の前記移動方向と反対の横方向の動きを行い、または、
移動可能に設計された前記特定手段および/または前記移動手段が、旋回可能に据え付けられ、前記鉄道車両の前記移動方向と反対へ旋回運動を行う、
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中の鉄道車両を利用した雑草防除(weed control)の技術分野に関する。軌道システムの雑草の防除措置を実行しながら鉄道車両の走行速度を高めるための装置および方法が、本発明の主題である。対応する手段を備えた鉄道車両は、本発明の更なる主題である。
【背景技術】
【0002】
軌道システムの植物の防除は、安全上の理由で必要不可欠である。特に、バラスト道床はきれいにしておく、および/または草木がない状態に保つ必要がある。バラスト道床は通常は適応性があり、静的/動的荷重の両方を均一に土台へ伝えることを助ける。個々の石の間の無数の空間が走行する列車の大きな重量および衝撃を緩衝材のように和らげる。
【0003】
植物および植物により保持される腐植は、時間とともに隙間を塞いでしまうことがあり、このために列車の安全が相当な危険にさらされる。それゆえ、安全上の理由であらゆる種類の茂みを軌道システムへ近づけないようにする必要がある。
【0004】
軌道システムでの植物の成長は、通常は除草剤を塗布することで防がれる。いわゆる散布用列車は一続きの鉄道線路を処理するための特殊な列車である。この列車は、バラスト道床で雑草が成長しないように除草剤を塗布する役割を担う。
【0005】
塗布される除草剤の量は、環境的およびコスト的な理由の両方からできるだけ少量に保たれるべきである。画像解析システムに接続されているカメラシステムを、道床内の植物を特定し、それらの植物を狙って防除するために使用することができる。例えば、欧州特許第1521885B1号は鉄道車両向けの雑草防除装置を開示しており、この装置は雑草を特定するカメラを含み、雑草を特定するコンピュータへ接続される。記載されている装置は、カメラおよびコンピュータを使って雑草が成長している確証を得た軌道の部分のみを除草剤で処理するために使用することができる。軌道の雑草がない部分は処理する必要がない。
【0006】
散布用列車で雑草防除に使用される構成要素は、通常はある程度の慣性を有する。画像解析システムに接続されているカメラシステムは、走行中に記録された画像を分析するためにある程度の時間を要する。除草剤を塗布するためのポンプおよび弁を動作させるために更なる時間が必要となる。さらに、所望の効果を得るために、単位面積当たり最少の量の除草剤を塗布する必要がある。列車が速く走行するほど、この量ができるだけ正確に与えられて塗布される必要がある。列車が高速であると、塗布される除草剤の多くが飛び跳ねて、到達すべき場所へ到達しないことがありうる。
【0007】
これらのすべてにより、散布用列車は通常はおよそ時速20km/hの低速で運行することになる。散布用列車が軌道の一部分の上にある間は、他の列車は前記部分を高速で走行することができない。そのため、ゆっくりと走行する散布用列車によって軌道の一部分がある程度塞がれてしまう。
【発明の概要】
【0008】
前述の先行技術に由来する客観的な技術的問題は、軌道システムの雑草防除に必要な時間の削減であった。
【0009】
本発明によれば、この目的は独立請求項1、7および15の主題により達成される。好適な実施形態は、従属請求項内および本明細書内に見られる。
【0010】
本発明の第1主題は、鉄道車両向けの雑草防除装置であり、
- 一続きの軌道に沿って、雑草防除措置が実行されるべき1つまたは複数の場所を特定する手段と、
- 特定された1つまたは複数の場所での雑草防除のための防除手段と、
を含み、
特定手段および/または防除手段は、鉄道車両が走行中に、走行する鉄道車両の移動方向と反対向きに移動するよう構成されている、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の更なる主題は、
- 鉄道車両を一続きの軌道に沿って移動方向へ移動させ、
- 雑草防除措置が実行されるべき少なくとも一つの場所を特定し、
- 前記少なくとも一つの場所で雑草防除措置を実行する、
ステップを含み、
鉄道車両の移動中に、前記少なくとも一つの場所を特定する手段、および/または、前記少なくとも一つの場所で雑草防除措置を実行する防除手段が、前記特定手段および/または前記移動手段と前記少なくとも一つの場所の間の相対速度を減少させるために、鉄道車両の移動方向と反対へ移動する、ことを特徴とする方法である。
【0012】
本発明の更なる主題は、本発明の装置を1つまたは複数含む鉄道車両である。
【0013】
本発明は、以下で本発明の主題(装置、方法、および鉄道車両)を区別することなく、より詳細に説明される。代わりに、以下の説明は、説明が行われる文脈(装置、方法、および鉄道車両)とは無関係に、類似した方法で本発明の主題のすべてに適用されることが意図されている。
【0014】
本発明は走行中の鉄道車両を使って雑草を防除するのに役立つ。
【0015】
用語「雑草」は、例えば土壌の、または空中を浮遊する種子から生長する、軌道システム内の植物を意味すると理解されることを意図している。この用語は厳密な意味での枝葉に限定されず、草、シダ、蘚類または木本植物も含む。
【0016】
雑草は鉄道車両ならびに鉄道車両で移動する人々、動物、および/または商品へ安全上のリスクを与えるので、前記雑草は防除されるべきである。
【0017】
用語「防除」は、雑草の出現および/または繁殖を防ぐためのすべての措置および雑草を減らすための措置を意味すると理解されることを意図している。
【0018】
用語「鉄道車両」は、駆動手段を用いて一つの場所から別の場所へ一続きの軌道に沿ってレール上を動かされる任意の車両を意味すると理解されることを意図している。鉄道車両は好ましくは列車(例えば散布用列車)またはUnimog(多目的作業車)である。鉄道車両は、駆動手段を用いて好ましくは少なくとも時速30km/hで、好ましくは少なくとも時速40km/hで、さらに好ましくは少なくとも時速50km/hで動かされる。
【0019】
鉄道車両は、雑草防除を目的として特定手段および防除手段を有する。特定手段は雑草防除措置が実行されるべき少なくとも一つの場所を特定する役割を担うことができる。防除手段は雑草防除措置を実行する役割を担う。特定手段および/または防除手段は、鉄道車両の移動方向と反対の方向へ移動することができるように鉄道車両へ取り付けられる。この後の文章では、この種の防除手段および/または特定手段は移動防除手段および/または移動特定手段とも呼ばれる。
【0020】
一方向に走行する鉄道車両は、定置された軌道システムおよび軌道システム内の植物に対して相対運動を行う。移動可能に設計された防除手段および/または特定手段が反対の方向へ移動するため、定置された軌道システムおよび軌道システム内の植物に対する防除手段および/または特定手段の相対速度は、それぞれ減少する。防除手段および/または特定手段が鉄道車両と同じ速度で移動する場合、走行速度の100%が相殺される。走行速度の相殺は、好ましくは10%から90%の範囲、より一層好ましくは20%から80%の範囲である。
【0021】
一実施形態では、鉄道車両が一方向へ移動している間に防除手段が反対の方向へ移動し、その過程で防除手段は雑草防除措置を実行する。
【0022】
更なる実施形態では、鉄道車両が一方向へ走行している間に特定手段が反対の方向へ移動し、その過程で特定手段は雑草防除措置が実行されるべき場所を特定する。
【0023】
更なる実施形態では、鉄道車両が一方向へ走行している間に特定手段が反対の方向へ移動し、その過程で特定手段は雑草防除措置が実行されるべき場所を特定し、同様に防除手段が反対の方向へ移動して、その過程で防除手段は特定された場所で雑草防除措置を行う。
【0024】
本発明の一実施形態では、雑草防除は1つまたは複数の除草剤を塗布することで行われる。前記除草剤は特定の植物を狙って駆除する選択的除草剤とすることができて、または非常に多くの植物に対して作用する、いわゆる総合除草剤とすることもできる。また、選択的除草剤と総合除草剤の組み合わせも考えられる。好ましくは移動防除手段は、好ましくは少なくとも部分的に柔軟な線を用いて除草剤製剤を含む容器へ接続された噴射ノズルである。
【0025】
本発明の更なる実施形態では、雑草防除は燃やすことで行われる。好ましくは移動可能に設計された防除手段は、好ましくは可燃物が出てくることができる1つまたは複数のノズルであり、前記可燃物を点火装置を用いて燃やすことができる。
【0026】
本発明の更なる実施形態では、雑草防除は例えば液体窒素を塗布して、凍結させることで行われる。好ましくは移動可能に設計された防除手段は、好ましくは液体窒素をそこから投与することのできる1つまたは複数のノズルである。
【0027】
本発明の更なる実施形態では、雑草防除は電磁放射の作用により行われ、例えばx線放射、紫外線放射、赤外線放射、マイクロ波放射、または、例えばレーザー放射を用いて強く収束された可視光の放射で行われる。好ましくは移動可能に設計された防除手段は、好ましくは軌道システムに存在する植物の方向へ放射(radiation)するための手段である。この手段は電磁放射の放射線源であってもよい。しかし、前記手段は、例えば反射鏡、レンズ、プリズム、および/または同種のもののような、電磁放射を既定の方向へ誘導する手段であるとも考えられる。
【0028】
本発明の更なる実施形態では、雑草防除は電流の印加により行われる。好ましくは移動可能に設計された防除手段は、好ましくは植物と接触すると電流を流すことができる電極であり、前記電流は少なくとも部分的に植物の一部を流れる。
【0029】
また、前記雑草防除措置の2つ以上の組み合わせも実現可能である。
【0030】
雑草防除措置は、鉄道車両が一続きの軌道に沿って走行する際に行われる。
【0031】
雑草防除は好ましくは少なくとも時速30km/hで、好ましくは少なくとも時速40km/hで、より一層好ましくは少なくとも時速50km/hで行われる。
【0032】
雑草防除措置にある程度の時間がかかることが考えられる。例えば、前記植物を駆除するために、電気エネルギー、熱エネルギー、または電磁エネルギーの形態の最小のエネルギーを植物へ導入する必要があることが考えられる。例えば、この最小エネルギーを得るために、植物と電極の接触時間を最小に保つ必要があることが考えられる。また、最小エネルギーを得るために、植物は例えば最小時間にわたって放射される必要があることが考えられる。また、弁は開くのにある程度の時間を必要とし、除草剤はノズルから放出されるのにある程度の時間を必要とすると考えられる。
【0033】
さらに、走行する鉄道車両のために生じる、防除手段と雑草の間の高い相対速度は防除措置に対して負の影響を与えることが考えられる。例えば、鉄道車両の速度が上昇するにつれて上昇する気流速度が、散布される除草剤の望ましくない分散を引き起こすことが考えられる。
【0034】
それゆえ本発明によれば、防除手段と防除対象の雑草の間の相対速度が、鉄道車両の移動方向と反対への防除手段の移動により小さくなる。
【0035】
例えば、防除手段を鉄道車両上のレールに移動可能に据え付けることは実現可能である。鉄道車両が一方向へ(例えば「前方へ」)走行する場合、レールに据え付けられた防除手段はレール上を例えばモータにより駆動されて、反対方向へ(「後方へ」)動くことができて、この移動に伴って雑草防除措置を行うことができる。
【0036】
レールが本質的に閉じていて、防除措置が実行される距離の後にレールは開始位置へ再び戻ることが考えられる。レールは、例えば「引き延ばされたゼロ(0)」の形に設計することができる。「引き延ばされたゼロ」は、好ましくは半円の2つの屈曲部により互いに接続される2つの平行な直線部分を有する。直線部分のうちの一つで、防除手段は鉄道車両の移動方向と反対へ動き、その過程で防除措置を実行する。そして前記防除手段は第1屈曲部を通って第2直線部分へと誘導され、第2直線部分を鉄道車両と同じ方向へ動く。この進行方向への移動の間は、前記防除手段は好ましくは防除措置を実行しない。そして前記防除手段は第2屈曲部へ到達し、第2屈曲部により再び第1直線部分へと誘導される。
【0037】
複数の防除手段が本質的に閉じたレール上を誘導されて、常に少なくとも1つの防除手段が直線部分にいて、鉄道車両の進行方向と反対へ動く。このようにして、少なくとも1つの防除手段が常に使用される。
【0038】
知られているように、例えば軌道式の車両またはエスカレータの場合に、防除手段は周方向の支持部へ締結されることが考えられる。
【0039】
防除手段の横方向の動きに加え、旋回運動も考えられる。例えば、鉄道車両が走行している間に電磁放射源を進行方向に対して旋回させることで、例えば、鉄道車両の下の道床の領域が旋回期間中に照射されることが考えられる。並行して往復、旋回する複数の防除手段を使用することで、少なくとも1つの防除手段が常に鉄道車両の進行方向と反対へ旋回運動を行うことが考えられる。旋回運動の代わりに回転運動も実現可能である。
【0040】
雑草防除は、雑草防除が表示された1つまたは複数の場所で、一続きの軌道に沿って実行される。
【0041】
したがって、雑草防除が行われるべき場所がまず決定(特定)されて、その後に対応する雑草防除がその場所で行われる。一続きの軌道に沿って更なる場所を決定(特定)することができて、対応する雑草防除がこの更なる場所で行われる。場所は、通常は雑草が発見された軌道の一部、および/または雑草が発生するリスクがある軌道の一部である。
【0042】
本発明の一実施形態では、場所は画像解析のための手段を備えたカメラシステムにより特定される。カメラシステム(または、例えばカメラ光学系などの一部)は、鉄道車両へ(場合によっては移動可能に)締結されて、走行中に軌道システムの画像を記録する。記録された画像は、植物または植物の一部が存在するか分析される。画像内で植物が特定された場合、画像が記録された場所および植物が存在する場所が、雑草防除が行われるべき場所として決定(特定)される。
【0043】
カメラシステムによって植物はそのようなものとして特定されると考えられる。しかし、カメラシステムは個々の植物種を特定することができるように設計されているとも考えられる。
【0044】
物体の画像を記録するために、物体へ入射して返される(反射される/散乱される)光が画像センサ(例えばCCDセンサ、CMOSセンサ)により検出されて、電気信号へ変換される。この場合は、鉄道車両の周辺の地域の画像が鉄道車両が環境に対して相対速度を持って動くのに伴って生成される。被写体ブレを防ぐために、露光時間は速度と合っている(match)必要がある。相対速度が大きいほど、事前に指定された(許容される)被写体ブレへ適合するために、超えてはならない最大露光時間が短くなる。
【0045】
より短い露光時間は、例えばより多くの光で相殺することができる。本発明の一実施形態では、鉄道車両のより速い速度は、鉄道車両の移動方向と反対のカメラの相対運動により相殺される。この目的で、カメラを例えば鉄道車両上のレールに移動可能に据え付けることができる。鉄道車両が一方向へ移動する場合、カメラと鉄道車両の周辺の地域(例えば道床)の間の相対速度を小さくするため、カメラは例えばモータにより駆動されて、反対方向へ動かされる。
【0046】
移動中にカメラが鉄道車両の移動方向と反対の距離を対象として、移動中に周辺地域(例えば道床)の複数の画像記録を生成することが考えられる。その後カメラはまた元の場所へと戻る。この復帰運動の間、カメラと鉄道車両の周辺の地域の間の相対速度は鉄道車両と周辺地域の間の相対速度よりも当然大きい。そのため、この復帰運動の間に周辺地域の画像記録は好ましくは生成されない。しかし、鉄道車両がこの復帰運動の間に「目が見えない」ようにしないために、少なくともさらに1つのカメラを使用することができて、このカメラが画像記録を生成するために第1カメラと交代する。
【0047】
カメラの横方向の動きに加え、旋回運動も考えられる。例えば、雑草として特定、または指定することが意図されている物体の複数の画像が、存在する雑草または雑草種を特定する目的で異なる視野角から記録されることが考えられる。例えば、一つの視野角からカメラにより記録された第1画像で、例えば緑色を有する物体を特定することは実現可能である。知られているように、多くの植物は葉緑素の存在に起因する緑色を少なくとも部分的に有する。緑色の物体が植物であることを確実にする目的で、または存在する植物種を特定するために、異なる視野角から少なくともさらに1枚の物体の画像記録を生成するために鉄道車両の進行方向と反対へカメラが旋回することが考えられる。また、異なる視野角からの複数の画像記録から物体の3次元複製が生成されることが考えられる。異なる視野角から物体の画像記録がより多く生成されるほど、通常は物体の特定精度が高くなる。
【0048】
本発明の更なる実施形態では、雑草防除が行われるべき少なくとも1つの場所は鉄道車両の走行中には決定されず、むしろ事前に、以前規定された場所に到達したという事実が鉄道車両の走行中に(単に)表示される。例えば、雑草が成長している一続きの軌道に沿って場所を特定するために、遠隔検出データが利用されることが考えられる。
【0049】
遠隔検出データは離れた場所から取得したデジタル情報であり、例えば衛星による地球表面のデジタル情報である。(無人機(ドローン)または有人機の)航空機を遠隔検出データを記録するために使用することも考えられる。
【0050】
遠隔検出データは、鉄道事業者の線路網の領域内に雑草が存在するか分析されて、雑草が特定された場所の地理座標が検出されることが考えられる。鉄道車両が少なくとも1つのそのような場所がある一続きの軌道に沿って移動する際に鉄道車両のそれぞれの位置が(例えばGPS支援式の)位置決定システムを用いて監視される。鉄道車両がこの種の場所に近づくと、雑草防除に必要な準備が行われる。鉄道車両がこの種の場所にあると位置決定システムが特定した場合、雑草防除措置が行われる。
【0051】
しかし、雑草防除の特定の措置が実行されるべきではない場所が掲載されたデジタルマップがあることも考えられる。
【0052】
例えば、一続きの軌道に沿った一部の領域では、環境上の理由、または水の保全という理由のために除草剤が塗布されてはいけないことが考えられる。
【0053】
同様に、一部の場所では、例えば電気エネルギーを使用することで障害を起こしたり故障したりしうる繊細な電気設備または電子設備が近くにあるため、植物を駆除するために電気エネルギーを使用してはならないことが考えられる。
【0054】
そのため、雑草防除措置を中断すべきそうした場所がその結果表示(特定)されて、一方で他のすべての場所では雑草防除措置が行われる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
本発明は図を参照して以下でより詳細に説明されるが、図に示される特徴および特徴の組み合わせによって本発明を制限することは意図していない。
図1】本発明に係る装置を備えた鉄道車両(10)を模式的に示す。
図2】本発明に係る装置を備えた更なる鉄道車両(10)を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0056】
図1に示される鉄道車両(10)は(a)で一方の側面から示され、(b)で下方から示される。前記鉄道車両は車輪(30)を用いてレール(20)上を方向(50)へ移動する。道床に雑草が存在するか調査するのに用いられるカメラシステム(40)が与えられる。カメラシステムを用いて雑草または特定の雑草が特定された場合、防除手段が起動される。この場合は、雑草防除が除草剤を塗布することで行われる。除草剤は噴射ノズル(60、60’、61、61’)を用いて道床へ塗布される。図1は鉄道車両(10)の移動方向(50)とは反対の方向へレール(70、70’)上を移動する2本の噴射ノズル(60、60’)を示す。これらの噴射ノズル(60、60’)は、前記方向へ移動する際に道床へ除草剤を塗布する。この時間の間に噴射ノズル(61、61’)は同じレール(70、70’)上を鉄道車両の方向(50)へ移動するが、その過程で除草剤を塗布することはない。前記噴射ノズルは、レールの屈曲部の先の外側直線部分にそれぞれ到達して鉄道車両の方向(50)とは反対へ移動する場合にのみ除草剤を塗布する。そして噴射ノズル(60、60’)は内側直線部分まで鉄道車両の方向(50)へ移動して、この移動中には塗布を行わない。
【0057】
図2に示される鉄道車両(10)はレール(20)上を方向(50)へ移動する。鉄道車両はカメラの形態の特定手段(40)を備えている。上側の図(a1)ではカメラは進行方向(50)の軌道の一部分を見ている。下側の図(a2)ではより遅い瞬間の鉄道車両が示されており、図(a1)の位置に対してわずかに右側へ移動している。この移動の間にカメラ(40)は、鉄道車両の移動とは反対への(後方への)旋回運動を実施済みであり、図(a2)ではカメラは左側へ向けられている。旋回運動の間に、カメラは雑草を特定するために1つまたは複数の道床の画像記録を行う。雑草が特定された場合、雑草が噴射ノズルの塗布範囲内にある場合に除草剤が噴射ノズル(60)により塗布される。後方への旋回運動後に、その後に再び後方へ旋回するなど行うために、カメラは前方へ開始位置まで旋回運動を行う。前方へ旋回している間、前記カメラは画像の記録を行わない。好ましくは複数のカメラが与えられ、これらのカメラは交互に前方から後まで旋回して往復し、少なくとも1つのカメラが常に鉄道車両の移動方向に対して旋回運動を行って、そうしている間に、雑草を特定するために1つまたは複数の道床の画像記録を生成する。
図1
図2