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特許7091410肺静脈の周囲のアブレーションのためのバルーン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】肺静脈の周囲のアブレーションのためのバルーン
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20220620BHJP
   A61B 18/14 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
A61B18/12
A61B18/14
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020157166
(22)【出願日】2020-09-18
(62)【分割の表示】P 2015248267の分割
【原出願日】2015-12-21
(65)【公開番号】P2021003571
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2020-09-18
(31)【優先権主張番号】14/578,807
(32)【優先日】2014-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・ゴバリ
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・トーマス・ビークラー
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・トーマス・キース
(72)【発明者】
【氏名】ローワン・オルンド・ヘテル
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-529109(JP,A)
【文献】国際公開第2014/168987(WO,A1)
【文献】特表2010-507404(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2875790(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/12
A61B 18/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アブレーション装置であって、
遠位部分、近位部分、及びルーメンを有するカテーテルと、
前記カテーテルの前記ルーメンを通って送達されるための折り畳んだ状態、及び拡張状態をとる輪縄式ガイドであって、前記輪縄式ガイドがその上に複数のマッピング電極を有し、前記複数のマッピング電極が心電計回路に接続可能である、輪縄式ガイドと、
シャフトに取り付けられ、前記ルーメンを通って前記輪縄式ガイドの上に展開可能である、膨張式のバルーンであって、前記膨張式のバルーンが長手方向中心軸及び外壁を有する、膨張式のバルーンと、
中央開口部、及び複数のストリップを備えるサブアセンブリであって、前記複数のストリップは、前記中央開口部に接続され、前記中央開口部から離れるように放射状に延在し、前記複数のストリップは、前記膨張式のバルーンの前記外壁上に配置されており、前記シャフトの遠位部分が、前記中央開口部を通って配置されており、前記複数のストリップはまた、前記シャフトの近位部分に向かって延在している、サブアセンブリと、
前記複数のストリップ上に配置された複数のアブレーション電極と、
前記アブレーション電極につながるワイヤと、を備え
前記複数のストリップが、前記膨張式のバルーンの表面上に延在し、それぞれ前記ワイヤを覆うピグテールを含み、
前記アブレーション電極は、前記中央開口部と前記ピグテールとの間の前記ストリップの幅広部分上に配置されており、前記複数のストリップはそれぞれ前記幅広部分から幅狭の前記ピグテールへとテーパーしており、前記ピグテールの近位端は前記膨張式のバルーンの近位端の遠位に配置されている、アブレーション装置。
【請求項2】
前記膨張式のバルーンは、複数の洗浄孔を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記サブアセンブリが、貫通孔を有し、前記貫通孔が前記膨張式のバルーンの前記複数の洗浄孔と流体連通する、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記シャフトは、少なくとも部分的に前記ルーメン内に配置されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記複数のストリップは、記ピグテールで終端している、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記シャフトの前記遠位部分が、前記中央開口部を通って前記膨張式のバルーンの遠位端を越えて延在している、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療機器に関する。より詳細には、本発明は、心臓カテーテル法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
心房細動などの心不整脈は、心臓組織の諸区域が、隣接組織に電気信号を異常に伝導することによって正常な心周期を阻害し、非同期的な律動を引き起こす場合に発生する。
【0003】
不整脈を治療するための手技には、不整脈を発生させている信号の発生源を外科的に破壊すること、及び、そのような信号の伝導路を破壊することが含まれる。カテーテルを介してエネルギーを印加して心臓組織を選択的にアブレーションすることによって、心臓の一部分から別の部分への望ましくない電気信号の伝播を停止する又は変更することが時に可能である。このアブレーション処理は、非伝導性の損傷を形成することによって望ましくない電気経路を破壊するものである。
【0004】
心房性不整脈を治療するために、肺静脈口又はその近傍で円周方向の損傷が形成されてきた。米国特許第6,012,457号及び同第6,024,740号(両方ともLeshに対する)は、高周波電極を備える、半径方向に拡張可能なアブレーション装置を開示する。円周状の伝導ブロックを確立することで肺静脈を左心房から電気的に絶縁するために、この装置を使用して、肺静脈に高周波エネルギーを供給することを提案する。
【0005】
本願と同一譲受人に譲渡され、参照により本明細書に援用されるSchwartzらに対する米国特許第6,814,733号は、高周波放出体として半径方向に拡張可能な螺旋状コイルを有するカテーテル導入装置を説明する。一適用例では、放出体は、経皮的に導入され、経中隔的に肺静脈口まで前進する。放出体は、放出体を肺静脈の内壁と円周状に接触させるために、半径方向に拡張されるが、これは放出体を包んでいる係留バルーンを膨張させることによって実現することができる。コイルは高周波発生器によって通電され、円周方向のアブレーション損傷が肺静脈の心筋スリーブ内に生じ、これは肺静脈と左心房との間の電気的伝播を効果的にブロックする。
【0006】
別の例がMaguireらに対する米国特許第7,340,307号で見出され、これは肺静脈が心房から延出している位置で組織の円周方向の部位をアブレーションすることによって心房性不整脈を治療する組織アブレーションのシステム及び方法を提案している。システムは、アブレーション要素を有する円周状のアブレーション部材を含み、アブレーション部材をその位置まで送達するための送達アセンブリを含む。円周状のアブレーション部材は、送達シースを介した心房への送達、及びアブレーション要素と組織の円周方向の部位との間のアブレーションカップリングの両方が可能になるように、異なる構成間で概ね調整可能である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態は、アブレーションバルーンの肺静脈口への送達を可能にするカテーテルを提供する。バルーン及び送達方法は、医師の処置を単純化する。
【0008】
本発明の実施形態により、アブレーションの方法が提供され、その方法は心臓の左心房の中にカテーテルを導入すること、カテーテルのルーメンを通して輪縄式ガイドを延長して肺静脈の内壁と係合させること、膨張したバルーンを輪縄式ガイドの一部の上に展開させること、によって実行され、そのバルーンはその外壁に配置された電極アセンブリを有する。電極アセンブリは、長手方向軸の周囲に円周方向に配置された複数のアブレーション電極を含む。方法は、アブレーション電極が肺静脈にガルバニック接触するように肺静脈口に接してバルーンを位置決めすること、及びアブレーション電極を介して電気エネルギーを伝達し肺静脈を取り囲む円周方向の損傷を生じること、によって更に実行される。
【0009】
方法の一態様は、バルーンの膨張及び位置決めの後に、カテーテルを通して肺静脈の中に造影剤を注入することを含む。
【0010】
方法の更なる態様は、バルーンの位置決めの後に、カテーテルを通してバルーンの中に造影剤を注入することを含む。
【0011】
方法の更に別の態様では、輪縄式ガイドは、その上に配置されたマッピング電極を有する。方法は、アブレーション電極を介して電気エネルギーの伝達を実行する前に、マッピング電極を用いてアブレーション前の電位図を得ることによって更に実行される。
【0012】
方法の別の態様では、輪縄式ガイドは、その上に配置されたマッピング電極を有する。方法は、アブレーション電極を介して電気エネルギーの伝達を実行した後に、マッピング電極を用いてアブレーション後の電位図を得ることによって更に実行される。
【0013】
本発明の実施形態により、プローブ、及びプローブのルーメンを通って送達されるための折り畳んだ状態をとり、プローブを通して送達された後に拡張状態をとる輪縄式ガイド、を含むアブレーション装置が更に提供される。輪縄式ガイドは、心電計回路に接続可能な複数のマッピング電極を有する。装置は、ルーメンを通って輪縄式ガイドの上に展開可能な膨張式のバルーンを更に含み、そのバルーンは、外壁上で長手方向軸の周りに円周方向に配置された複数のアブレーション電極を有する。バルーンは、複数の洗浄孔により有窓であり、孔を通過するための流体の供給源と接続される。
【0014】
装置の更なる態様では、サブアセンブリは、バルーンの長手方向軸から外向きに放射される複数のストリップを有し、アブレーション電極はストリップ上に配置される。
【0015】
装置の別の態様によると、サブアセンブリは、バルーンの孔と流体連通する貫通形成された開口部を有する。
【0016】
装置の別の態様では、プローブの遠位部分においてワイヤはアブレーション電極につながり、サブアセンブリのストリップは、バルーンの表面上に延在し、対応のワイヤを覆うピグテールを備える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明が更に理解されるように、-一例として、本発明の詳細な説明を参照するが、-その説明は以下の図面と共に読まれるべきであり、図面において同様の要素は同様の参照番号を与えられている。
図1】開示される本発明の実施形態に従って心臓へのカテーテル法を実施するためのシステムの図である。
図2】本発明の実施形態による、図1に示されるカテーテルの遠位部分の図である。
図3】本発明の実施形態による、図1に示されるカテーテルの遠位部分の別の図である。
図4】本発明の実施形態による、アブレーションの操作位置における図1に示されるカテーテルの遠位部分の図である。
図5】本発明の実施形態による、図4に示されるカテーテル電極アセンブリの底面図である。
図6】本発明の実施形態による、図4に示されるカテーテル電極アセンブリの頂面図である。
図7】本発明の実施形態による、図4に示されるカテーテルのバルーンの実施形態の側面図である。
図8】本発明の実施形態による、図7に示されるバルーンの線8--8を通る切欠断面図である。
図9】本発明の実施形態による肺静脈隔離の方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の説明では、本発明の様々な原理が完全に理解されるように、多くの具体的な詳細について記載する。しかしながら、これらのすべての詳細が本発明の実施に必ずしも必要ではないことが、当業者には理解されよう。この場合、一般的な概念を不要に曖昧にすることのないよう、周知の回路、制御論理、並びに従来のアルゴリズム及び処理に対するコンピュータプログラム命令の詳細については、詳しく示していない。
【0019】
ここで図面に目を向け、最初に図1を参照すると、この図は、本発明の開示される実施形態に従って構築され作動する、電気活性を評価し、生体被験者の心臓12に対してアブレーション手技を行うためのシステム10を描図したものである。このシステムは、患者の血管系を通して、心臓12の心房・心室又は血管構造内に操作者16によって経皮的に挿入されるカテーテル14を備えている。通常、医師である操作者16は、カテーテルの遠位先端部18を、心臓壁、例えばアブレーション標的部位と接触させる。その開示が本明細書に参照により組み込まれる、米国特許番号第6,226,542号及び同第6,301,496号、並びに同一出願人による米国特許第6,892,091号に開示されている方法に従って、電気的活性化マップが作成できる。システム10の要素を具現化する1つの市販の製品は、Biosense Webster,Inc.(3333 Diamond Canyon Road,Diamond Bar,CA 91765)より入手可能な、CARTO(登録商標)3システムとして入手可能である。このシステムは、本明細書に記載されている本発明の原理が具現化されるように、当業者が修正を施すことができる。
【0020】
例えば電気的活性化マップの評価によって異常と判定された領域は、例えば心筋に高周波エネルギーを加える遠位先端部18の1つ又は複数の電極に、カテーテル内のワイヤを通して高周波電流を流すことなどにより熱エネルギーを加えることによってアブレーションすることができる。エネルギーは組織に吸収され、組織を電気的興奮性が永久に失われる点(一般的には60℃超)まで加熱する。成功すると、この手技により、心組織内に非伝導性の損傷が形成され、この損傷が不整脈を発生させる異常な電気経路を遮断する。本発明の原理を異なる心房・心室に適用することによって、多数の様々な心不整脈を診断し、治療することができる。
【0021】
カテーテル14は、通常、ハンドル20を備え、ハンドル20は、その上に好適な制御部を有し、操作者16がカテーテルの遠位端部をアブレーションに望ましいように、操舵、位置決め、及び方向付けできる。操作者16を補助するため、カテーテル14の遠位部分には、コンソール24内に配置されたプロセッサ22に信号を供給する位置センサ(図示せず)が収容されている。プロセッサ22は、以下に記載するいくつかの処理機能を果たすことができる。
【0022】
ワイヤ接続部35はコンソール24を、身体表面の電極30と、カテーテル14の位置座標及び配向座標を測定するための位置決定サブシステムの他の構成要素と、に連結する。プロセッサ22又は他のプロセッサ(図示せず)は、位置決定サブシステムの要素であってよい。カテーテル電極(図示せず)及び体表面電極30は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,536,218号(Govariら)に教示されるように、アブレーション部位での組織のインピーダンスを測定するために使用することができる。温度センサ(図示せず)、典型的には、熱電対又はサーミスタは、後述のようにカテーテル14の遠位部分のアブレーション表面上に載置され得る。
【0023】
コンソール24には通常、1つ又は2つ以上のアブレーション電力発生装置25が収容されている。カテーテル14は、例えば、高周波エネルギー、超音波エネルギー、及びレーザー生成光エネルギーなどの任意の周知のアブレーション技術を使用して心臓にアブレーションエネルギーを伝えるように適合させることができる。このような方法は、参照によって本明細書に組み込まれる、本願と同一譲受人に譲渡された米国特許第6,814,733号、同第6,997,924号、及び同第7,156,816号に開示されている。
【0024】
1つの実施形態において、この位置決めサブシステムは、磁場生成コイル28を使用して、既定の作業体積内に磁場を生成し、カテーテルにおけるこれらの磁場を検知することによって、カテーテル14の位置及び向きを特定する、磁気位置追跡の仕組みを含む。位置決めサブシステムは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,756,576号、及び上記の米国特許第7,536,218号に記載されている。
【0025】
上述したように、カテーテル14は、コンソール24に連結され、これにより操作者16が、カテーテル14の機能を観察及び調節できるようになっている。コンソール24は、プロセッサ、好ましくは適切な信号処理回路を有するコンピュータを含む。プロセッサは、モニタ29を駆動するように結合されている。信号処理回路は通常、カテーテル14からの信号を、受信、増幅、フィルタリング、及びデジタル化するが、そのような信号には、カテーテル14の遠位側に設置された、電気、温度、及び接触力センサのようなセンサ、及び複数の位置検知電極(図示せず)により生成される信号が含まれる。デジタル化された信号はコンソール24及び位置決定システムによって受信され、カテーテル14の位置及び向きを計算し、電極からの電気信号を解析するために使用される。
【0026】
電気解剖学的マップを生成するために、プロセッサ22は通常、電気解剖学的マップ生成器、画像登録プログラム、及び画像又はデータ分析プログラムを備え、且つモニタ29上にグラフィカル情報を提示するグラフィカルユーザーインターフェイスをも備える。
【0027】
簡略化のため図には示されていないが、通常、システム10には、他の要素も含まれる。例えば、システム10は、心電図(ECG)モニタを含み得るが、このECGモニタは、ECG同期信号をコンソール24に供給するために、1つ又は2つ以上の体表面電極から信号を受信するように連結される。また、上に述べたように、システム10は通常、基準位置センサをも含むが、基準位置センサは、患者の身体の外側に取り付けられた、体位外貼付式基準パッチ上、又は心臓12に挿入され、心臓12に対して固定位置に維持された、体内配置式カテーテル上のいずれかに配置される。カテーテル14に液体を通して循環させるための、従来のポンプ及びラインが、アブレーション部位を冷却するために提供される。システム10は、画像データを外部MRIユニット等のような画像診断法から受信することもできるし、画像生成及び表示の目的で、プロセッサ22に統合され得る又はプロセッサ22により起動され得る画像プロセッサを具備することもできる。
【0028】
ここで図2を参照すると、図2は、本発明の実施形態による、カテーテル14(図1)の遠位部分の図である。カテーテルの遠位先端部18は、心臓12(図1)の左心房内にある。肺静脈口37、39は可視である。輪縄式ガイド41は、遠位先端部18を越えて半ば展開されている。輪縄式ガイド41は、形状記憶を有してよく、カテーテル14の遠位先端部18を通して延出したとき、輪縄式ガイド41の遠位部分は、それ自体を環又はらせんに構成する。複数のリング電極43は、輪縄式ガイド41上に配置されてもよい。電極43は、輪縄式ガイド41が肺静脈の壁部と結合されたまま、アブレーションの後で肺静脈の電気的絶縁を確認するために電位図を得るのに有用である。例えば、接触力センサ及び磁気式位置センサ等、他のタイプの電極及びセンサを、輪縄式ガイド41の上に載置してもよい。
【0029】
ここで図3を参照すると、図3は、本発明の実施形態による、カテーテル14(図1)の遠位部分の図である。輪縄式ガイド41は展開されて、肺静脈45の壁部に係合する。バルーン47は、膨張して、血管壁に係留された輪縄式ガイド41によってもたらされる安定性によって補助されている。バルーン47の正確な配置は、カテーテル14を通して造影剤を注入することによって確認することができる。追加的又は代替的に、造影剤をバルーン47の中に注入してもよい。
【0030】
ここで図4を参照すると、図4は、本発明の実施形態による、肺静脈45の口49での操作位置において示されるカテーテル14(図1)の遠位セグメントの側面図である。輪縄式ガイド41は、遠位先端部18を通って完全に伸長されている。ガイドが静脈内に位置付けられると、シャフト51上に載置されたバルーン47は、カテーテル14の遠位先端部18を越えて伸長する。バルーン47は、口49で静脈を塞ぐために、生理食塩水溶液の注入によって膨張する。バルーン47は、有窓である。開口部又は孔(図6で最も良く見られる)は、生理食塩水による口49の洗浄を可能にする。バルーン47は、その不変の表面に配置された電極アセンブリ53を有する。複数のアブレーション電極は、図5に最も良く見られるように電極アセンブリ53上に配置される。電極アセンブリ53の構成要素は、電極55(図5)と口49の壁部との間のガルバニック接触を最大にするためにシャフト51に垂直であるそれぞれの平面で細長く且つ縦向きである。ピグテール57は、バルーン47がカテーテル14のシャフトの中に格納されるときに電極アセンブリ53が層間剥離するのを防ぎ、電極アセンブリ53の電極につながるワイヤ(図示せず)を保護する。電極アセンブリ53のその他の幾何学的構成、例えば、らせん状配列、又は同心円状のリングが可能である。電極55(図5)を通る電気エネルギーの通過は、口49において電気的伝播をブロックし、肺静脈を心臓から隔離する円周方向の損傷59を生じる。アブレーション部位は、バルーン47及び電極アセンブリ53内に形成された孔を通る冷却流体61の流れによって冷却される。あるいは、電極55の一部は、電気的マッピング用に構成されてもよい。
【0031】
ここで図5を参照すると、図5は本発明の実施形態による、電極アセンブリ53の底面図である。電極アセンブリ53は、バルーン47から外して示されている。電極アセンブリ53の下面は、バルーン47の外側表面(図4)に接着されるように適合される。電極アセンブリ53は、シャフト51(図4)が延出する中央開口部63を含む。この構成によって、造影剤の注入又は医学的処置で要求されることがあるシャフト51を通る試料採取を可能にする。電極アセンブリ53は、バルーン47の周囲に延在し、バルーンが膨張し、肺静脈にナビゲートされるとき肺静脈口に接触する放射状ストリップ65の基材を含む。電極55は、それぞれのストリップ65上に配置され、アブレーション操作中に口とガルバニック接触になり、その間電流は電極55及び口を通って流れる。10個のストリップ65が図5の例に示され、中心軸である開口部63の周りに均一に分布している。その他の数のストリップが可能である。しかしながら、電極55がアブレーション用に活性化されるとき、少なくとも1つの連続する円周方向の損傷が肺静脈に生じるように十分に小さい角が隣接したストリップ65の間に存在するはずである。
【0032】
多数の孔67(典型的には直径25~100マイクロメートル)は、それぞれのストリップ65を通って形成され、下にあるバルーン47もまた貫通する。孔67は、バルーン47の内部からアブレーション部位の上及びその近傍に冷却洗浄流体の流れを導く。流速は、ポンプ制御装置(図示せず)によってアイドル速度の約4mL/分~アブレーション流速の60mL/分で変更してもよい。
【0033】
ここで図6を参照すると、図6は本発明の実施形態による、電極アセンブリ53の頂面図である。電極55が示されている。操作中、それらは肺静脈の壁部と接触するようになる。
【0034】
ここで図7を参照すると、図7は本発明の実施形態による近位端71及び遠位端73を有するバルーン69の実施形態の側面図である。電極アセンブリ75は、バルーン69の外側壁部77の外面に接着される。その近位端71において、バルーン69は狭まり、機械的支持及び流体の供給をもたらす連結チューブに適合するように構成される。遠位端73は、狭まって、バルーン69の内部と管のルーメンとの間の流体導通を可能にする。
【0035】
ここで図8を参照すると、図8は本発明の実施形態によるバルーン69(図7)の線8--8を通る切欠断面図である。周縁79は、バルーン69を支持体(図示せず)に封止して、バルーンの膨張に使用される流体及び洗浄流体が漏れるのを防ぐ。内側流路81は、血管と身体の外側の場所との間の流体連通を可能にする。例えば、造影剤を流路81を通して送ることができる。
【0036】
ここで図9を参照すると、図9は、本発明の実施形態による、肺静脈隔離の方法のフローチャートである。初期工程83において、心カテーテルは、心臓の左心房の中に従来の方式で導入される。
【0037】
次に、工程85において、輪縄式ガイド41は展開され、肺静脈の内壁と係合するように位置付けられる。輪縄式ガイド41が所定の位置に置かれるとアブレーション前の電位図を取得することができる。
【0038】
次に、工程87において、バルーン47は、輪縄式ガイド41の上に伸長されて膨張する。
【0039】
次に、工程89において、バルーン47は、口を閉塞するために肺静脈口と円周状に接触するようにナビゲートされる。
【0040】
次に、工程91において、放射線不透過性造影剤がカテーテルのルーメンを通して注入される。造影剤は、バルーン47が肺静脈口に接して正しい位置にあることを確認するために、輪縄式ガイド41とルーメンの壁部との間の間隙を通過する。造影剤は、バルーンに入らない。
【0041】
制御はここで決定工程93に進み、バルーン47が正しく位置付けられているかどうかを判定する。決定工程93での判定が否定である場合、次に制御は工程89に戻り、バルーンの位置付けが再度試みられる。
【0042】
決定工程93での判定が肯定である場合、次に制御は、電極アセンブリ53(図4)のアブレーション電極を用いてアブレーションが実行される工程95に進む。円周方向の損傷が、肺静脈を取り囲む組織の領域に形成される。損傷は、電気的伝播をブロックし、肺静脈を心臓から効果的に電気的に絶縁する。肺静脈の機能的隔離を確認するために、アブレーション後の電位図を輪縄式ガイド41(図2)の電極43から得ることができる。
【0043】
アブレーションの完了後、バルーン47及び輪縄式ガイド41の離脱によって別の肺静脈口を用いて手順を繰り返してもよい。制御は、次に工程85に戻ってもよい。あるいは、最終工程97においてカテーテル14の取り外しによって手順を終了してもよい。
【0044】
当業者には明らかとなることであるが、本発明は、本明細書で具体的に図示及び説明された内容に限定されるものではない。むしろ、本発明の範囲は、以上で述べた様々な特徴の組み合わせ及び一部の組み合わせ、並びに上記の説明を読むことで当業者が想到するであろう、従来技術にはない特徴の変形及び改変をも含むものである。
【0045】
〔実施の態様〕
(1) アブレーションの方法であって、
心臓の左心房の中にカテーテルを導入する工程であって、前記カテーテルがルーメン及び遠位端を有する、工程と、
前記カテーテルの前記ルーメンを通して輪縄式ガイド(lasso guide)を延長して肺静脈の内壁と係合させる工程と、
バルーンを前記輪縄式ガイドの一部の上に展開させる工程であって、前記バルーンが長手方向軸及びその外壁に配置された電極アセンブリを有し、前記電極アセンブリが前記長手方向軸の周囲に円周方向に配置された複数のアブレーション電極を含む、工程と、
前記バルーンを膨張させる工程と、
前記バルーンを前記肺静脈に接してその口のところに位置決めする工程であって、前記アブレーション電極が前記肺静脈にガルバニック接触する、工程と、
前記アブレーション電極を介して電気エネルギーを伝達して、前記肺静脈を取り囲む円周方向の損傷を生じる工程と、を含む、方法。
(2) 前記バルーンの位置決め後に、前記肺静脈の中に前記カテーテルを通して造影剤を注入する工程を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記バルーンの位置決め後に、前記バルーンの中に前記カテーテルを通して造影剤を注入する工程を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(4) 前記輪縄式ガイドが、その上に配置されたマッピング電極を有し、前記アブレーション電極を介して電気エネルギーを伝達する工程を実行する前に、前記マッピング電極を用いてアブレーション前の電位図を得る工程を更に含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記輪縄式ガイドが、その上に配置されたマッピング電極を有し、前記アブレーション電極を介して電気エネルギーを伝達する工程を実行した後に、前記マッピング電極を用いてアブレーション後の電位図を得る工程を更に含む、実施態様1に記載の方法。
【0046】
(6) 遠位部分及びルーメンを有するプローブと、
前記プローブの前記ルーメンを通って送達されるための折り畳んだ状態、及び拡張状態をとる輪縄式ガイドであって、前記輪縄式ガイドがその上に複数のマッピング電極を有し、前記マッピング電極が心電計回路に接続可能である、輪縄式ガイドと、
前記ルーメンを通って前記輪縄式ガイドの上に展開可能な膨張式のバルーンであって、前記バルーンが長手方向軸及び外壁を有する、バルーンと、
前記外壁上で前記長手方向軸の周りに円周方向に配置された複数のアブレーション電極であって、前記バルーンが複数の洗浄孔により有窓であり、前記孔を通過するための流体の供給源と接続されている、アブレーション電極と、を備える、アブレーション装置。
(7) 前記バルーンの前記長手方向軸から外向きに放射される複数のストリップを含むサブアセンブリを更に含み、前記アブレーション電極が前記ストリップ上に配置される、実施態様6に記載の装置。
(8) 前記サブアセンブリが、内部に貫通形成された開口部を有し、前記開口部が前記バルーンの前記孔と流体連通する、実施態様7に記載の装置。
(9) 前記遠位部分において前記アブレーション電極につながるワイヤを更に含み、前記サブアセンブリの前記ストリップが、前記バルーンの表面上に延在し、それぞれ前記ワイヤを覆うピグテールを含む、実施態様7に記載の装置。
図1
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図9