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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】流水殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/32 20060101AFI20220620BHJP
【FI】
C02F1/32
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020177008
(22)【出願日】2020-10-21
(65)【公開番号】P2022068062
(43)【公開日】2022-05-09
【審査請求日】2020-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000195029
【氏名又は名称】星和電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104569
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正夫
(72)【発明者】
【氏名】黒川 篤
(72)【発明者】
【氏名】河合 隆
(72)【発明者】
【氏名】吉川 幸治
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-055126(JP,A)
【文献】特開2015-174026(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0158741(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/32
A61L 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌対象となる水が流通される流路と、この流路を流通する水に紫外線を照射する光源を含む光源モジュールと、この光源モジュールが組み込まれる底有の段付孔及び組み込まれた光源モジュールの周囲を取り囲むような複数個の孔が開設された孔開板とを具備しており、前記光源は波長200nm以上280nm以下の紫外線を発するUVC発光ダイオードであり、前記孔は前記流路の終端の流出孔と連通しており、かつ流路中の水の流れ方向に対してねじれており、前記流路から前記孔に導かれた水は前記孔を通過することで渦巻流となり、光源モジュールの裏面が接している段付孔の底面に接触して導出されることを特徴とする流水殺菌装置。
【請求項2】
殺菌対象となる水が流通される流路と、この流路を流通する水に紫外線を照射する光源を含む光源モジュールと、この光源モジュールが組み込まれる有底の段付孔及び組み込まれた光源モジュールの周囲を取り囲むような複数個の孔が開設された孔開板とを具備しており、前記光源は波長200nm以上280nm以下の紫外線を発するUVC発光ダイオードであり、前記光源モジュールの裏面が接している段付孔の底面の裏面側には放熱フィンが形成されており、前記孔は前記流路の終端の流出孔と連通しており、かつ流路中の水の流れ方向に対してねじれており、前記流路から前記孔に導かされた水は前記孔を通過することで渦巻流となり、光源モジュールの裏面が接している段付孔の底面及び放熱フィンに接触して導出されることを特徴とする流水殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線を照射して水を殺菌する流水殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線を照射して水を殺菌する流水殺菌装置が知られている。
紫外線のうち、波長が200nm以上280nm以下のUVCは特に殺菌力が強いため、流水殺菌装置には適したものとなっている。
流水殺菌装置としては、特開2019-034297号公報に記載されたように、紫外線を照射する光源に発光ダイオードを用いたものがある。この流水殺菌装置で使用される紫外線は、波長250nm以上350nm以下の紫外線が、かつ照射する光に波長200nm以下の光を含まないものである。
【0003】
【文献】特開2019-034297号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
UVCを発する発光ダイオードは発光効率が低く、投入電力の大部分が熱に変換され、その熱によって発光ダイオードの発光効率がさらに低下してしまうという問題があった。 特許文献1記載の流水殺菌装置は、発光効率を勘案して最も殺菌力が強いUVCを含むが、波長280nm以上350nm以下の紫外線(UVB、UVA)をも含む紫外線を使用しているものと思われる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて創案されたもので、殺菌力に優れた波長200nm以上280nm以下の紫外線(UVC)のみを発光しつつ、発光効率に優れた流水殺菌装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る流水殺菌装置は、殺菌対象となる水が流通される流路と、この流路を流通する水に紫外線を照射する光源を含む光源モジュールと、この光源モジュールが組み込まれる有底の段付孔及び組み込まれた光源モジュールの周囲を取り囲むような複数個の孔が開設された孔開板とを備えており、前記光源は波長200nm以上280nm以下の紫外線を発するUVC発光ダイオードであり、前記孔は前記流路の終端の流出孔と連通しており、かつ流路中の水の流れ方向に対してねじれており、前記流路から前記孔に導かれた水は前記孔を通過することで渦巻流となり、光源モジュールの裏面が接している段付孔の底面に接触して導出されるようになっている。
【0007】
本発明の他のの形態に係る流水殺菌装置は、殺菌対象となる水が流通される流路と、この流路を流通する水に紫外線を照射する光源を含む光源モジュールと、この光源モジュールが組み込まれる有底の段付孔及び組み込まれた光源モジュールの周囲を取り囲むような複数個の孔が開設された孔開板とを備えており、前記光源は波長200nm以上280nm以下の紫外線を発するUVC発光ダイオードであり、前記光源モジュールの裏面が接している段付孔の底面の裏面側には放熱フィンが形成されており、前記孔は前記流路の終端の流出孔と連通しており、かつ流路中の水の流れ方向に対してねじれており、前記流路から前記孔に導かされた水は前記孔を通過することで渦巻流となり、光源モジュールの裏面が接している段付孔の底面及び放熱フィンに接触して導出されるようになっている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る流水殺菌装置は、波長200nm以上280nm以下の紫外線(UVC)のみを発光する発光ダイオードを光源としているので、殺菌力に優れている。
また、この波長200nm以上280nm以下の紫外線(UVC)のみを発光する発光ダイオードは発光効率が低く、投入電流の大部分が熱に変換され、その熱によって光源である発光ダイオードの発光効率がさらに低下してしまうという問題を、殺菌された水を渦巻流として冷却に使用するため、発光効率を高めることができた。
また、渦巻流と放熱フィンとを併用する流水殺菌装置では、より高い冷却効率を得ることができ、発光効率も高めることができた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る水流殺菌装置の概略的断面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る流水殺菌装置を構成する孔開板の概略的正面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る流水殺菌装置を構成する孔開板の図面であって、同図(A)は正面からの概略的斜視図、同図(B)は裏面側からの概略的斜視図である。
図4】本発明の他の形態に係る水流殺菌装置の概略的断面図である。
図5】本発明の実施の形態に係る流水殺菌装置を構成する孔開板の放熱フィンの一例を示す概略的斜視図である。
図6】本発明の実施の形態に係る流水殺菌装置を構成する孔開板の放熱フィンの一例を示す概略的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係る流水殺菌装置1000は、殺菌対象となる水が流通される流路100と、この流路100を流通する水に紫外線を照射する光源210を含む光源モジュール200と、この光源モジュール200が組み込まれる有底の段付孔310及び組み込まれた光源モジュール200の周囲を取り囲むような複数個の孔320が開設された孔開板300とを備えており、前記光源210は波長200nm以上280nm以下の紫外線を発するUVC発光ダイオードであり、前記孔320は前記流路100の終端の流出孔130と連通しており、かつ流路100中の水の流れ方向に対してねじれており、前記流路100から前記孔320に導かれた水は前記孔320を通過することで渦巻流となり、光源モジュール200の裏面が接している段付孔310の底面330に接触して導出されるようになっている。
【0013】
この流水殺菌装置1000を構成する流路100は、始端と終端にフランジ110、120がそれぞれ設けられた直管型に形成されている。この流路100の終端は、フランジ120よりも後側に突出しており、この突出した部分の側面に複数個の流出孔130が等間隔で形成されている。
なお、流路100の終端の突出部分の突出量は、後述する孔開板300の最も大きな孔313の深さ寸法と同等に設定されている。
また、この流路100は、フッ素樹脂で成形されている。
【0014】
かかる流路100の始端には、殺菌対象となる水を流路100に導く導入管500が接続されている。この導入管500と流路100との間には、流路100内を流れる水を整流するための整流板700が介在されている。
この導入管500と整流板700とは、ステンレススチール(SUS304)製である。
【0015】
前記光源モジュール200は、前記流路100の終端側に位置するものであって、波長200nm以上280nm以下の紫外線を発するUVC発光ダイオードである光源210と、この光源210が実装される実装基板220とを有している。
【0016】
この光源モジュール200が取り付けられる孔開板300は、前記流路100の終端側のフランジ120とほぼ同じ径を有する円板型であり、中央部分に有底の3段の段付孔310が開設されている。この段付孔310の最も小さな孔311は取り付けられる流路100からみて最も遠い位置にあり、最も大きな孔313は流路100からみて最も近い位置にある。
この孔開板300は、ステンレススチール(SUS304)製である。
【0017】
最も小さな孔311は、前記光源モジュール200が組み込まれる部分である。この最も小さな孔311は、流路100に向かっては開放されているが、その反対側は閉塞されて底面330となっている(図3(A)参照)。従って、段付孔310は有底孔となっている。
また、最も大きな孔313は、前記流路100の終端が組み込まれる部分である。しかしながら、最も大きな孔313の内径は、流路100の終端の外径より大きく設定されている。従って、孔開板300の段付孔310に流路100の終端を組み込むと、孔開板300の最も大きな孔313と、流路100の終端との間には隙間340が形成されることになる。
【0018】
一方、前記孔開板300の最も大きな孔313と最も小さな孔311との間の中間の孔312は、ガラス窓400が嵌め込まれる部分である。このガラス窓400は、前記光源210の前面側(紫外線が発される側)に位置することになり、流路100を流通する水に対して光源モジュール200からの紫外線を透過させることになる。従って、このガラス窓は光源210から発せられる波長200nm以上280nm以下の紫外線を透過させることができるものとなっている。
また、このガラス窓400は、光源モジュール200に流路100を流通する水が浸入しないようにする役目をも有している。
このガラス窓400は石英ガラス製であり、その周縁にはフッ素ゴム製のパッキンが設けられている。
【0019】
さらに、この孔開板300の前記段付孔310の周囲には、複数個の孔320が円形に等間隔で開設されている。
この孔320は、図1図2図3に示すように、複数個の孔320が並ぶ円に沿って斜めに開設されている。すなわち、この孔320は、流路100中の水の流れ方向に対してねじれていることになる。このため、この複数個の孔320に導かれた水はこの孔320を通過することで全体として渦巻流となる。なお、特に図2においては、孔320が斜めに開設されていることを示すために、正面から裏面に向かう孔320を破線で示している。
さらに、この孔320は、孔開板300を流路100に取り付けると、前記隙間340に開口することになる。このため、この孔320は前記流路100の終端の流出孔130と連通することになる。
【0020】
前記孔開板300は、段付孔の最も小さな孔311に光源モジュール200が組み込まれる。さらに、光源モジュール200を覆うように中間の孔312にはガラス窓400が水密に組み込まれる。光源モジュール200の光源210は、図示しない電源ラインによって外部電源と接続されている。
なお、最も小さな孔311とガラス窓400とで囲まれた空間は、ガラス窓400によって密閉されていることになる。
さらに、ガラス窓400を押さえ込むようにして流路100が孔開板300に組み込まれる。流路100の終端の流出孔130は、流路100と孔開板300の段付孔310の最も大きな孔313との間の隙間340に開口することになる。
【0021】
孔開板300の下流側、すなわち裏面側には導出管600が接続される。この導出管600は、孔開板300の裏面側に接続されることで、孔開板300の裏面側との間に空間610を形成する。この空間610には、孔開板300の孔320の終端が開口している。従って、前記孔320から排出された水は空間610を通過して導出管600の導出口620から外部に導出されることになる。
この導出管600は、ステンレススチール(SUS304)製である。
【0022】
このように構成された水流殺菌装置1000においては、水が導入管500から流路100に導入された水は、流路100の終端側に位置する光源モジュール200の光源210から発せられる波長200nm以上280nm以下の紫外線によって効率的に殺菌される。
【0023】
殺菌された水は、流路100の流出孔130→隙間340→孔320の順に通過して、光源モジュール200の裏面側に位置する空間610まで導かれる。
前記孔320を通過して前記空間610に導かれた水は、孔320が流路100中の水の流れ方向に対してねじれているため、この孔320を通過することで全体として渦巻流となる。渦巻流となった水は、前記空間610内においてねじれた流れとなり、孔開板300の最も小さな孔311に組み込まれた光源モジュール200の裏面が接している段付孔310の底面330に接触して排出されることになる。
渦巻状となった水は、滞留時間は渦巻流でない水と同様であるが、排水までの流路が長くなるので流速が上がる。このため、渦巻状となった水による冷却効果が向上するのである。
【0024】
光源モジュール200の光源210から発せられた熱は、実装基板220を介して孔開板300の段付孔310の底面330に伝わる。段付孔310の底面330に接する渦巻流となった水はより流速が上がるので、熱が伝わった前記底面330はより効率的に冷却されることになり、光源210がより効率的に冷却されることになる。
【0025】
上述した実施の形態に係る水流殺菌装置1000は、光源モジュール200の光源210の冷却は、孔開板300に開設された複数個の孔320によって渦巻流となった水によって行われた。
他の実施の形態に係る水流殺菌装置2000は、渦巻流になった水ではなく、放熱フィン360に水を当てることで冷却を行うようになっている。
【0026】
この他の実施の形態に係る水流殺菌装置2000は、殺菌対象となる水が流通される流路100と、この流路100を流通する水に紫外線を照射する光源210を含む光源モジュール200と、この光源モジュール200が組み込まれる有底の段付孔310及び組み込まれた光源モジュール200の周囲を取り囲むような複数個の孔320が開設された孔開板300とを備えている点は、上述した流水殺菌装置1000と同一である。
【0027】
また、光源210が波長200nm以上280nm以下の紫外線を発するUVC発光ダイオードである点、前記孔320は前記流路100の終端の流出孔130と連通しており、前記流路100から前記流出孔130に導かれた水は前記孔320を通過して段付孔310の底面330の裏面側へと導かれる点も上述した流水殺菌装置1000と同一である。
【0028】
また、流路100の始端に殺菌対象となる水を流路100に導く導入管500が接続されている点、この導入管500と流路100との間に流路100内を流れる水を整流するための整流板700が介在される点も上述した流水殺菌装置1000と同一である。
【0029】
さらに、孔開板300の下流側に導出管600が接続される点、この導出管600は、孔開板300の裏面側に接続されることで、孔開板300の裏面側との間に空間610を形成する点、この空間610には孔開板300の孔320の終端が開口している点も上述した流水殺菌装置1000と同一である。
従って、前記孔320から排出された水は空間610を通過して導出管600の導出口620から外部に導出される点も上述した流水殺菌装置1000と同一である。
【0030】
この流水殺菌装置2000が、上述の流水殺菌装置1000と異なる点は、孔開板300に開設された複数個の孔320が渦巻流を形成するものでない点、段付孔310の底面330の裏面側に放熱フィン360が形成されている点である。
【0031】
この流水殺菌装置2000における複数個の孔320は、自身が並ぶ円に沿って真っ直ぐに開設されている。すなわち、この孔320は、流路100中の水の流れ方向に対してねじれておらず、真っ直ぐになっている。このため、流水殺菌装置1000のように孔320を通過した水は渦巻流を形成しない。
【0032】
しかしながら、渦巻流を形成せずとも、上述した放熱フィン360が段付孔310の底面330の裏面側に形成されているため、空間610に導かれた水に対する段付孔310の底面330の接触面積が増加していることになる。このため、放熱フィン360がないものと比較して、光源210のより効率的な冷却が可能になる。
【0033】
なお、放熱フィン360は、図5に示すように複数枚のリブを並列に並べたストレートフィン、図6に示すように複数本のピンを林立させたピンフィン等があるが、本発明はその形状を特定するものではなく、放熱に優れた放熱フィンであればいずれの形状であってもよいことはいうまでもない。
【0034】
上述した流水殺菌装置1000は渦巻流の水、流水殺菌装置200は放熱フィン360を使うことでそれぞれ光源210の冷却効率を向上させ、発光効率を向上させて殺菌能力を向上させていた。
よって、本発明のさらに他の実施の形態に係る流水殺菌装置のように、渦巻流の水と放熱フィンとを併用することで、より光源210の冷却効率の向上、発光効率の向上、それによるより高い殺菌能力の向上を図ることも可能である。
【0035】
また、渦巻流の水、放熱フィン360を使わずとも、孔開板300の複数個の孔320からの水を段付孔310の底面330に接触させるように流すことで、光源210の冷却効率を向上させて殺菌能力を向上させることも可能である。
【0036】
なお、上述した流水殺菌装置1000等では、光源モジュール200は、UVC発光ダイオードである光源210と、この光源210が実装される実装基板220とから構成され、光源10とガラス窓400との間は空間であると説明したが、この空間部分を放熱性に優れた樹脂モールドを充填することも可能である。
前記空間を樹脂モールドで充填することにより、光源210のより高い水密性を確保することができるので、ガラス窓400における水密性はそれほど高いものでなくてもよくなるというメリットもある。
【符号の説明】
【0037】
100 流路
130 流出孔
200 光源モジュール
210 光源
300 孔開板
310 段付孔
320 孔
330 底面
図1
図2
図3
図4
図5
図6