(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】利雪精米方法及びその精米設備
(51)【国際特許分類】
B02B 7/00 20060101AFI20220620BHJP
A01F 25/00 20060101ALI20220620BHJP
F25D 3/00 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
B02B7/00 Z
A01F25/00 E
F25D3/00 Z
(21)【出願番号】P 2020183817
(22)【出願日】2020-11-02
【審査請求日】2021-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】505329244
【氏名又は名称】株式会社吉兆楽
(74)【代理人】
【識別番号】100092691
【氏名又は名称】黒田 勇治
(74)【代理人】
【識別番号】100199543
【氏名又は名称】黒田 隆史
(72)【発明者】
【氏名】北本 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 親臣
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-109918(JP,A)
【文献】特開平7-274708(JP,A)
【文献】登録実用新案第3017692(JP,U)
【文献】特開2017-64695(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02B 7/00
A01F 25/00
F25D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内に、少なくとも、原料玄米を詰入した複数の玄米袋を保管する玄米貯蔵庫と、該玄米貯蔵庫の玄米袋を開袋して原料玄米を張り込む玄米張込部と、該玄米張込部からの原料玄米を搬送する玄米搬送部と、該玄米搬送部から搬送されてくる原料玄米を貯留する複数個の玄米タンクを配備した玄米タンク室と、該原料玄米を精白米に精米する複数個の精米機を配備した精米室とを備えてなり、上記建物に冬期の降雪を貯留する貯雪庫が配備され、該貯雪庫内の降雪の冷気を上記玄米タンク室及び上記精米室に導入する冷気供給装置と玄米タンク室及び精米室に導入された冷気を該貯雪庫内に回収する冷気回収装置とからなる冷気循環経路を構成し、上記降雪の冷気を冷熱源として上記玄米タンク室及び上記精米室の室内温度を2℃乃至8℃に設定し、上記複数個の玄米タンクを2℃乃至8℃の室温の玄米タンク室で保管すると共に該2℃乃至8℃の室温の玄米タンク室の玄米タンク内で保管された直後の原料玄米を2℃乃至8℃の室温の精米室の精米機で精米することを特徴とする利雪精米方法。
【請求項2】
建物内に、少なくとも、原料玄米を詰入した複数の玄米袋を保管する玄米貯蔵庫と、該玄米貯蔵庫の玄米袋を開袋して原料玄米を張り込む玄米張込部と、該玄米張込部からの原料玄米を搬送する玄米搬送部と、該玄米搬送部から搬送されてくる原料玄米を貯留する複数個の玄米タンクを配備した玄米タンク室と、該原料玄米を精白米に精米する複数個の精米機を配備した精米室とが備えられ、上記建物に冬期の降雪を貯留する貯雪庫が配備され、該貯雪庫内の降雪の冷気を上記玄米タンク室及び上記精米室に導入する冷気供給装置と玄米タンク室及び精米室に導入された冷気を該貯雪庫内に回収する冷気回収装置からなる冷気循環経路が構成され、上記降雪の冷気を冷熱源として上記玄米タンク室及び上記精米室の室内温度は2℃乃至8℃に設定され、上記複数個の玄米タンクは2℃乃至8℃の室温の玄米タンク室で保管されると共に該2℃乃至8℃の室温の玄米タンク室の玄米タンク内で保管された直後の原料玄米は2℃乃至8℃の室温の精米室の精米機で精米されることを特徴とする利雪精米設備。
【請求項3】
上記原料玄米を貯留する複数個の玄米タンクを配備した上記玄米タンク室は上記建物の上階に配置され、該原料玄米を精白米に精米する複数個の精米機を配備した上記精米室は玄米タンク室の階下に配置され、該複数個の玄米タンクと上記複数個の精米機とを選択的に連通する玄米配管装置を配備した玄米配管室を備えてなることを特徴とする請求項2記載の利雪精米設備。
【請求項4】
上記玄米貯蔵庫と上記貯雪庫との間及び上記玄米配管室と該貯雪庫との間に該貯雪庫内の冷気と玄米貯蔵庫又は玄米配管室の空気との間で熱交換する熱交換器が配備され、該貯雪庫内の降雪の冷気により該玄米貯蔵庫及び玄米配管室の室内温度は12℃乃至15℃に設定されていることを特徴とする請求項2又は3記載の利雪精米設備。
【請求項5】
上記建物内に配置された色彩選別機及び石抜き・異物除去機を配備した機械室、上記精白米を貯留する複数個の精米タンクを配備した精米タンク室、計量機及び包装機を配備した包装出荷室内の各室内温度は空調設備により20℃乃至25℃に設定されていることを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の利雪精米設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冬期の降雪の冷気を利用し、原料玄米を精米機により精白米に精米する利雪精米方法及びその精米設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の精米方法及びその精米設備として、例えば、
図7の構成系統説明図に示す如く、原料玄米を詰入した複数の原料玄米袋は玄米貯蔵庫1に保管され、玄米貯蔵庫1の室内温度は空調設備2により原料玄米の鮮度保持の点から5℃乃至8℃の温度範囲に設定され、そして、原料玄米の精米に当たり、順化室及び張込室3で原料玄米の穀温を結露防止及び精米機内の詰り防止の点から12℃乃至15℃程度まで昇温順化させ、順化後、原料玄米を玄米張込部に張り込み、原料玄米は玄米搬送部により搬送されて玄米タンク室4の複数個の玄米タンクに貯留され、次いで、玄米タンク内の順化後の原料玄米は精米室5の複数個の精米機により精白米に精米され、精米後に精白米を機械室6の色彩選別機及び石抜き・異物除去機を通過させ、精白米は精米タンク室7の精米タンク内に貯留され、包装出荷室8で計量及び包装され、出荷エリア9から出荷されることになる。
【0003】
また、他の従来技術として、9℃乃至15℃の工場内で精米直前まで玄米を保管し、9℃乃至15℃の工場内で前記玄米を精米した後、9℃乃至15℃の工場内で精米直後の精白米を広げて冷却して保管する精米方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記従来構造の場合、前者の構造にあっては、原料玄米の精米に当たり、順化室及び張込室で原料玄米の穀温を結露防止及び精米機内の詰り防止の点から12℃乃至15℃程度まで昇温順化させる順化工程が必要となり、当該、順化工程の存在により精米の作業能率の低下が余儀なくされ、又、後者の構造にあっては、工場内温度の9℃乃至15℃の温度管理は空調設備のみに依存するため、設備の大型化及び複雑化が生じ、設備コストの高騰を余儀なくされることがあるという不都合を有している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこれらの不都合を解決することを目的とするもので、本発明のうち、請求項1記載の方法の発明は、建物内に、少なくとも、原料玄米を詰入した複数の玄米袋を保管する玄米貯蔵庫と、該玄米貯蔵庫の玄米袋を開袋して原料玄米を張り込む玄米張込部と、該玄米張込部からの原料玄米を搬送する玄米搬送部と、該玄米搬送部から搬送されてくる原料玄米を貯留する複数個の玄米タンクを配備した玄米タンク室と、該原料玄米を精白米に精米する複数個の精米機を配備した精米室とを備えてなり、上記建物に冬期の降雪を貯留する貯雪庫が配備され、該貯雪庫内の降雪の冷気を上記玄米タンク室及び上記精米室に導入する冷気供給装置と玄米タンク室及び精米室に導入された冷気を該貯雪庫内に回収する冷気回収装置とからなる冷気循環経路を構成し、上記降雪の冷気を冷熱源として上記玄米タンク室及び上記精米室の室内温度を2℃乃至8℃に設定し、上記複数個の玄米タンクを2℃乃至8℃の室温の玄米タンク室で保管すると共に該2℃乃至8℃の室温の玄米タンク室の玄米タンク内で保管された直後の原料玄米を2℃乃至8℃の室温の精米室の精米機で精米することを特徴とする利雪精米方法にある。
【0007】
又、請求項2記載の設備の発明は、建物内に、少なくとも、原料玄米を詰入した複数の玄米袋を保管する玄米貯蔵庫と、該玄米貯蔵庫の玄米袋を開袋して原料玄米を張り込む玄米張込部と、該玄米張込部からの原料玄米を搬送する玄米搬送部と、該玄米搬送部から搬送されてくる原料玄米を貯留する複数個の玄米タンクを配備した玄米タンク室と、該原料玄米を精白米に精米する複数個の精米機を配備した精米室とが備えられ、上記建物に冬期の降雪を貯留する貯雪庫が配備され、該貯雪庫内の降雪の冷気を上記玄米タンク室及び上記精米室に導入する冷気供給装置と玄米タンク室及び精米室に導入された冷気を該貯雪庫内に回収する冷気回収装置からなる冷気循環経路が構成され、上記降雪の冷気を冷熱源として上記玄米タンク室及び上記精米室の室内温度は2℃乃至8℃に設定され、上記複数個の玄米タンクは2℃乃至8℃の室温の玄米タンク室で保管されると共に該2℃乃至8℃の室温の玄米タンク室の玄米タンク内で保管された直後の原料玄米は2℃乃至8℃の室温の精米室の精米機で精米されることを特徴とする利雪精米設備にある。
【0008】
又、請求項3記載の設備の発明は、上記原料玄米を貯留する複数個の玄米タンクを配備した上記玄米タンク室は上記建物の上階に配置され、該原料玄米を精白米に精米する複数個の精米機を配備した上記精米室は玄米タンク室の階下に配置され、該複数個の玄米タンクと上記複数個の精米機とを選択的に連通する玄米配管装置を配備した玄米配管室を備えてなることを特徴とするものである。
【0009】
又、請求項4記載の設備の発明は、上記玄米貯蔵庫と上記貯雪庫との間及び上記玄米配管室と該貯雪庫との間に該貯雪庫内の冷気と玄米貯蔵庫又は玄米配管室の空気との間で熱交換する熱交換器が配備され、該貯雪庫内の降雪の冷気により該玄米貯蔵庫及び玄米配管室の室内温度は12℃乃至15℃に設定されていることを特徴とするものであり、又、請求項5記載の設備の発明は、上記建物内に配置された色彩選別機及び石抜き・異物除去機を配備した機械室、上記精白米を貯留する複数個の精米タンクを配備した精米タンク室、計量機及び包装機を配備した包装出荷室内の各室内温度は空調設備により20℃乃至25℃に設定されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述の如く、請求項1又は2記載の発明にあっては、建物に冬期の降雪を貯留する貯雪庫が配備され、上記玄米タンク室及び上記精米室の室内温度は上記貯雪庫の降雪の冷気を冷熱源として2℃乃至8℃に設定され、2℃乃至8℃の室温の玄米タンク室の玄米タンク内で保管された直後の原料玄米を2℃乃至8℃の室温の精米室の精米機で精米するようにしているから、冬期間の降雪を冷熱源として利用することができ、雪の有効利用を図ることができ、かつ、原料玄米の精米に際して原料玄米の結露防止及び精米機内の詰り防止等トラブル防止の点から不可欠な原料玄米の穀温を昇温順化させるための順化工程を省くことができ、精米に要する時間の短縮化を図ることができ、精米の作業能率の向上を図ることができ、かつ、順化に必要なスペースも省くことができ、コンパクトな精米設備とすることができ、さらに、玄米タンク内で保管された直後の原料玄米を2℃乃至8℃の室温の精米室の精米機で精米するから、米粒に内在する酵素活性を抑制することができ、独特の古米臭とされる糠の酸化反応を抑制することができ、酸化臭の吸着が抑えられ良食味の精白米を精米することができ、害虫の発生が抑えられ、温度負荷を与えない精白米を得ることができ、良好な精米処理、精米効率の向上及びコンパクトな精米設備を構築することができる。
【0011】
又、請求項3記載の発明にあっては、上記原料玄米を貯留する複数個の玄米タンクを配備した上記玄米タンク室は上記建物の上階に配置され、原料玄米を精白米に精米する複数個の精米機を配備した上記精米室は玄米タンク室の階下に配置され、複数個の玄米タンクと上記複数個の精米機とを選択的に連通する玄米配管装置を配備した玄米配管室を備えて構成しているから、例えば、産地、品種、産年等の種類別に各玄米タンクに貯留され、複数個の玄米タンクと上記複数個の精米機とを玄米配管装置により種類別に選択的に連通して精米室の精米機に給送することができ、精米室の精米機に対する玄米タンクからの原料玄米の供給を重力利用により効率的に行うことができ、精米効率の向上を図ることができる。
【0012】
又、請求項4記載の発明にあっては、上記玄米貯蔵庫と上記貯雪庫との間及び上記玄米配管室と貯雪庫との間に貯雪庫内の冷気と玄米貯蔵庫又は玄米配管室の空気との間で熱交換する熱交換器が配備され、貯雪庫内の降雪の冷気により玄米貯蔵庫及び玄米配管室の室内温度は12℃乃至15℃に設定されているから、原料玄米の品質低下を防ぐことができ、又、請求項5記載の発明にあっては、上記建物内に配置された色彩選別機及び石抜き・異物除去機を配備した機械室、上記精白米を貯留する複数個の精米タンクを配備した精米タンク室、計量機及び包装機を配備した包装出荷室内の各室内温度は空調設備により20℃乃至25℃に設定されているから、精白米の食味の低下の抑制及び作業環境の快適化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施の形態例の構成系統説明図である。
【
図2】本発明の実施の形態例の建物の説明正縦断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態例の建物の説明側縦断面図である。
【
図4】本発明の実施の形態例の建物の一階平断面図である。
【
図5】本発明の実施の形態例の建物の二階平断面図である。
【
図6】本発明の実施の形態例の建物の三階平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1乃至
図6は本発明の実施の形態例を示し、この場合、
図1、
図2、
図3の如く、大別して、建物K内に、少なくとも、原料玄米M
Rを詰入した複数の玄米袋M
F・・を保管する玄米貯蔵庫Aと、玄米貯蔵庫Aの玄米袋M
F・・を開袋して原料玄米M
Rを張り込む玄米張込部Bと、玄米張込部Bからの原料玄米M
Rを搬送する玄米搬送部Cと、玄米搬送部Cから搬送されてくる原料玄米M
Rを貯留する複数個の玄米タンクM
T・・を配備した玄米タンク室Dと、原料玄米M
Rを精白米R
Cに精米する複数個の精米機R
M・・を配備した精米室Eとが備えられ、上記建物Kに冬期の降雪Sを貯留する貯雪庫S
Wが配備され、貯雪庫S
W内の降雪Sの冷気S
Aを上記玄米タンク室D及び上記精米室Eに導入する冷気供給装置F
1と玄米タンク室D及び精米室Eに導入された冷気S
Aを貯雪庫S
W内に回収する冷気回収装置F
2からなる冷気循環経路Fが構成されており、上記降雪Sの冷気S
Aを冷熱源として上記玄米タンク室D及び上記精米室Eの室内温度は2℃乃至8℃に設定され、上記複数個の玄米タンクM
T・・は2℃乃至8℃の室温の玄米タンク室Dで保管されると共に2℃乃至8℃の室温の玄米タンク室Dの玄米タンクM
T・・内で保管された直後の原料玄米M
Rは2℃乃至8℃の室温の精米室Eの精米機R
M・・で精米されることになる。
【0015】
又、この場合、
図2、
図3の如く、上記原料玄米M
Rを貯留する複数個の玄米タンクM
T・・を配備した上記玄米タンク室Dは上記建物Kの上階に配置され、原料玄米M
Rを精白米R
Cに精米する複数個の精米機R
M・・を配備した上記精米室Eは玄米タンク室Dの階下に配置され、複数個の玄米タンクM
T・・と上記複数個の精米機R
M・・とを選択的に連通する玄米配管装置G
Mを配備した玄米配管室Gを備えて構成している。
【0016】
この場合、
図2、
図3の如く、上記原料玄米M
Rは、例えば、産地、品種、産年等の種類別に各玄米タンクM
T・・に貯留され、複数個の玄米タンクM
T・・と上記複数個の精米機R
M・・とを玄米配管装置G
Mにより種類別に選択的に連通して精米室Eの精米機R
M・・に給送するように構成している。
【0017】
又、この場合、
図1、
図4、
図5の如く、上記玄米貯蔵庫Aと上記貯雪庫S
Wとの間及び上記玄米配管室Gと貯雪庫S
Wとの間に貯雪庫S
W内の冷気S
Aと玄米貯蔵庫A又は玄米配管室Gの空気G
Aとの間で熱交換する熱交換器H
E・H
Eが配備され、これら熱交換器H
E・H
Eは原料玄米M
Rの品質を考慮して温度及び湿度の全ての熱を交換する全熱交換式のものが用いられ、また、この場合、
図1の如く、貯雪庫S
W内の降雪Sの冷気S
Aにより玄米貯蔵庫A及び玄米配管室Gの室内温度は12℃乃至15℃に設定され、さらに、この場合、
図1の如く、上記建物K内に配置された色彩選別機K
B及び石抜き・異物除去機K
Dを配備した機械室K
M、上記精白米R
Cを貯留する複数個の精米タンクR
T・・を配備した精米タンク室K
R、計量機K
H及び包装機K
Pを配備した包装出荷室K
S内の各室内温度は空調設備K
Cにより20℃乃至25℃に設定されている。
【0018】
この場合、
図2、
図3、
図4、
図5、
図6の如く、上記建物Kは屋根1a及び側壁1b並びに床スラブ1cにより仕切区画して囲繞形成され、建物Kの内部は仕切区画形成され、建物Kの一階には精米室E、包装出荷室K
S、出荷エリアK
Aが構築され、建物Kの二階に玄米配管室G、機械室K
Mが構築され、建物Kの三階には玄米タンク室D、精米タンク室K
Rが構築され、建物Kの一階及び二階に冬期の降雪Sを貯留する貯雪庫S
Wを併設配備し、建物Kは高気密高断熱構造として構成している。
【0019】
この場合、
図1の如く、上記玄米タンク室D及び上記精米室Eの室内温度を2℃乃至8℃に設定しているが、その理由は、降雪Sにより室内温度を2℃未満に設定することは、他の機器の稼働運転により生ずる熱影響を受けることにより現実には困難であり、又、室内温度が8℃を超えると精白米R
Cの品質に悪影響を及ぼす場合があるからである。なお、玄米タンク室D及び上記精米室Eの室内温度の管理目標は約5℃であるが、実情を考慮し、玄米タンク室D及び上記精米室Eの室内の管理温度を2℃乃至8℃に設定している。
【0020】
又、この場合、
図1の如く、上記玄米貯蔵庫A及び玄米配管室Gの室内温度を12℃乃至15℃に設定しているが、その理由は、降雪Sにより室内温度を12℃未満にすることは、原料玄米M
Rの品質の低下を考慮して採用した上記温度及び湿度の全ての熱を交換する全熱交換方式の熱交換器H
E・H
Eにあっては、現実には困難であるからであり、又、降雪Sにより室内温度を15℃を超えて設定することは、現状において、玄米の貯蔵温度は約10℃乃至約15℃、室内湿度70%乃至80%を採用していること、15℃を超えると害虫の羽化活動が活発になること、及び、農林水産省が玄米貯蔵温度を15℃以下を推奨していることなどから、玄米貯蔵庫A及び玄米配管室Gの室内温度を12℃乃至15℃に設定している。
【0021】
又、この場合、
図1の如く、上記建物K内に配置された色彩選別機K
B及び石抜き・異物除去機K
Dを配備した機械室K
M、上記精白米R
Cを貯留する複数個の精米タンクR
T・・を配備した精米タンク室K
R、計量機K
H及び包装機K
Pを配備した包装出荷室K
Sの各室内温度を空調設備K
Cにより20℃乃至25℃に設定するとしているが、その理由は、5℃で保存された原料玄米M
Rは精米すると摩擦熱等により約20℃となり、その20℃の温度を更に下げて約20℃未満にすることは、この更なる温度変化により精白米R
Cに負荷を与えて食味を低下させることがあり、精白米R
Cの食味の低下を抑制するため20℃以上としたのであり、又、約25℃を超えると人的な作業環境の快適化を害することがあり、作業環境の快適化を考慮して25℃以下とし、精白米R
Cの食味の低下の抑制及び作業環境の快適化を図るようにしたからである。
【0022】
この実施の形態例は上記構成であるから、
図1、
図2、
図3の如く、原料玄米M
Rを詰入した複数の玄米袋M
F・・は玄米貯蔵庫Aに保管され、玄米貯蔵庫Aの玄米袋M
F・・を開袋して原料玄米M
Rを玄米張込部Bに張り込み、玄米張込部Bからの原料玄米M
Rは玄米搬送部Cにより搬送され、玄米搬送部Cから搬送されてくる原料玄米M
Rは玄米タンク室Dの複数個の玄米タンクM
T・・に貯留され、精米室Eには原料玄米M
Rを精白米R
Cに精米する複数個の精米機R
M・・が配備され、建物Kに冬期の降雪Sを貯留する貯雪庫S
Wが配備され、貯雪庫S
W内の降雪Sの冷気S
Aは冷気供給装置F
1により上記玄米タンク室D及び上記精米室Eに導入され、さらに、玄米タンク室D及び精米室Eに導入された冷気S
Aは冷気回収装置F
2により貯雪庫S
W内に回収され、しかして、貯雪庫S
Wと玄米タンク室Dとの間及び貯雪庫S
Wと精米室Eとの間に冷気循環経路Fが構成されており、上記玄米タンク室D及び上記精米室Eの室内温度は上記貯雪庫S
Wの降雪Sの冷気S
Aを冷熱源として2℃乃至8℃に設定され、上記複数個の玄米タンクM
T・・は2℃乃至8℃の室温の玄米タンク室Dで保管されると共に2℃乃至8℃の室温の玄米タンク室Dの玄米タンクM
T・・内で保管された直後の原料玄米M
Rは2℃乃至8℃の室温の精米室Eの精米機R
M・・で精米されることになる。
【0023】
したがって、建物Kに冬期の降雪Sを貯留する貯雪庫SWが配備され、上記玄米タンク室D及び上記精米室Eの室内温度は上記貯雪庫SWの降雪Sの冷気SAを冷熱源として2℃乃至8℃に設定され、2℃乃至8℃の室温の玄米タンク室Dの玄米タンクMT・・内で保管された直後の原料玄米MRを2℃乃至8℃の室温の精米室Eの精米機RM・・で精米するようにしているから、冬期間の降雪Sを冷熱源として利用することができ、雪の有効利用を図ることができ、かつ、原料玄米MRの精米に際して原料玄米MRの結露防止及び精米機RM・・内の詰り防止等トラブル防止の点から不可欠な原料玄米MRの穀温を昇温順化させるための順化工程を省くことができ、精米に要する時間の短縮化を図ることができ、精米の作業能率の向上を図ることができ、かつ、順化に必要なスペースも省くことができ、コンパクトな精米設備とすることができ、さらに、玄米タンクMT・・内で保管された直後の原料玄米MRを2℃乃至8℃の室温の精米室Eの精米機RM・・で精米するから、米粒に内在する酵素活性を抑制することができ、独特の古米臭とされる糠の酸化反応を抑制することができ、酸化臭の吸着が抑えられ良食味の精白米RCを精米することができ、害虫の発生が抑えられ、温度負荷を与えない精白米RCを得ることができ、良好な精米処理、精米効率の向上及びコンパクトな精米設備を構築することができる。
【0024】
この場合、
図2、
図3の如く、上記原料玄米M
Rを貯留する複数個の玄米タンクM
T・・を配備した上記玄米タンク室Dは上記建物Kの上階に配置され、原料玄米M
Rを精白米R
Cに精米する複数個の精米機R
M・・を配備した上記精米室Eは玄米タンク室Dの階下に配置され、複数個の玄米タンクM
T・・と上記複数個の精米機R
M・・とを選択的に連通する玄米配管装置G
Mを配備した玄米配管室Gを備えて構成しているから、例えば、産地、品種、産年等の種類別に各玄米タンクM
T・・に貯留され、複数個の玄米タンクM
T・・と上記複数個の精米機R
M・・とを玄米配管装置G
Mにより種類別に選択的に連通して精米室Eの精米機R
M・・に給送することができ、精米室Eの精米機R
M・・に対する玄米タンクM
T・・からの原料玄米M
Rの供給を重力利用により効率的に行うことができ、精米効率の向上を図ることができる。
【0025】
又、この場合、
図1、
図4、
図5の如く、上記玄米貯蔵庫Aと上記貯雪庫S
Wとの間及び上記玄米配管室Gと貯雪庫S
Wとの間に貯雪庫S
W内の冷気S
Aと玄米貯蔵庫A又は玄米配管室Gの空気G
Aとの間で熱交換する熱交換器H
E・H
Eが配備され、これら熱交換器H
E・H
Eは原料玄米M
Rの品質を考慮して温度及び湿度の全ての熱を交換する全熱交換式の構造のものが用いられ、また、この場合、
図1の如く、貯雪庫S
W内の降雪Sの冷気S
Aにより玄米貯蔵庫A及び玄米配管室Gの室内温度は12℃乃至15℃に設定されているから、原料玄米M
Rの品質低下を防ぐことができ、さらに、この場合、
図1の如く、上記建物K内に配置された色彩選別機K
B及び石抜き・異物除去機K
Dを配備した機械室K
M、上記精白米R
Cを貯留する複数個の精米タンクR
T・・を配備した精米タンク室K
R、計量機K
H及び包装機K
Pを配備した包装出荷室K
S内の各室内温度は空調設備K
Cにより20℃乃至25℃に設定されているから、精白米R
Cの食味の低下の抑制及び作業環境の快適化を図ることができる。
【0026】
尚、本発明は上記実施の形態例のものに限られるものではなく、玄米貯蔵庫A、玄米張込部B、玄米搬送部C、玄米タンク室D、精米室E、冷気供給装置F1、冷気回収装置F2、玄米配管室G、玄米配管装置GM、熱交換器HE・HE、建物K、色彩選別機KB、石抜き・異物除去機KD、機械室KM、精米タンク室KR、計量機KH、包装機KP、包装出荷室KS、空調設備KC、玄米タンクMT、精米機RM、貯雪庫SW、精米タンクRT等の形状や大きさ、材質や構造等は適宜変更して設計される。
【0027】
以上の如く、所期の目的を充分達成することができる。
【符号の説明】
【0028】
A 玄米貯蔵庫
B 玄米張込部
C 玄米搬送部
D 玄米タンク室
E 精米室
F 冷気循環経路
F1 冷気供給装置
F2 冷気回収装置
G 玄米配管室
GM 玄米配管装置
GA 空気
HE 熱交換器
K 建物
KB 色彩選別機
KD 石抜き・異物除去機
KM 機械室
KR 精米タンク室
KH 計量機
KP 包装機
KS 包装出荷室
KC 空調設備
MR 原料玄米
MF 玄米袋
MT 玄米タンク
RC 精白米
RM 精米機
RT 精米タンク
S 降雪
SW 貯雪庫
SA 冷気