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特許7091466二重活性基を持つ分子量調節剤を用いたポリアマイド製造方法及びそれにより製造されたポリアマイド
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  • 特許-二重活性基を持つ分子量調節剤を用いたポリアマイド製造方法及びそれにより製造されたポリアマイド 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】二重活性基を持つ分子量調節剤を用いたポリアマイド製造方法及びそれにより製造されたポリアマイド
(51)【国際特許分類】
   C08G 69/18 20060101AFI20220620BHJP
【FI】
C08G69/18
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020549524
(86)(22)【出願日】2018-10-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 KR2018012909
(87)【国際公開番号】W WO2019107756
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-06-05
(31)【優先権主張番号】10-2017-0160752
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520161344
【氏名又は名称】ハンファ ソリューションズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドゥ ギョン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジン ソ
(72)【発明者】
【氏名】クォン、ギョン ホ
(72)【発明者】
【氏名】ト、スン ホェ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヘ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イム、ギョン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム、デ ハク
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-069638(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170248(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102079814(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0045889(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0115171(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0088899(US,A1)
【文献】特開2014-218665(JP,A)
【文献】特開平05-059167(JP,A)
【文献】特開昭50-029553(JP,A)
【文献】特開昭61-031431(JP,A)
【文献】特表2013-538928(JP,A)
【文献】特表2015-517598(JP,A)
【文献】国際公開第2017/005753(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰イオン重合反応による分子量調節剤を含むポリアマイド製造方法であって、
ラクタム、前記ラクタム全体100重量部に対して、開始剤としてアルカリ金属水素化物(alkali metal hydride)を含む金属触媒0.01乃至20重量部、二重活性基を持つ分子量調節剤として下記化学式2で示される化合物0.01乃至5.0重量部、活性化剤0.01乃至5.0重量部を用いた下記化学式1:
【化1】
(n及びmはそれぞれ独立的にn=m又はn>mを満足する有理数で、kは化学式1で示される化合物の重量平均分子量(Mw)20,000~100,000g/molを満足する有理数である)
化学式2:
【化2】
で示される化合物を含む
ことを特徴とするポリアマイド製造方法。
【請求項2】
前記ラクタムはカプロラクタム、ラウロラクタム、ピロリドン、ピペリジノン及びそれらの混合物を含む群より選ばれる少なくとも1種以上を含む
請求項1に記載の二重活性基を持つ分子量調節剤を用いたポリアマイド製造方法。
【請求項3】
前記ラクタムのうち選択された2種のラクタムは20~80:80~20重量比で含む
請求項2に記載の二重活性基を持つ分子量調節剤を用いたポリアマイド製造方法。
【請求項4】
前記活性化剤は二酸化炭素(CO)、ベンゾイルクロリド(benzoyl chloride)、N-アセチルカプロラクタム(N-acetyl caprolactam)、N-アセチルラウロラクタム(N-acetyl laurolactam)、オクタデシルイソシアネート(octadecyl isocyanate(SIC))、トルエンジイソシアネート(toluene diisocyanate(TDI))、ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate(HDI))及びそれらの混合物からなる群より選択された1種以上を含む
請求項1に記載の二重活性基を持つ分子量調節剤を用いたポリアマイド製造方法。
【請求項5】
前記重合温度は160乃至300℃範囲で行われる
請求項1に記載の二重活性基を持つ分子量調節剤を含むポリアマイド製造方法。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のポリアマイド製造方法で製造されたポリアマイドであって、
前記ポリアマイドは4以下の分子量分布範囲を持ち、
前記ポリアマイドの重量平均分子量(Mw)は20,000乃至100,000g/mol以内の範囲を持ち
前記ポリアマイドは線形、分枝型、超分枝型(hyperbranched)又は樹枝状(denditric)構造である
ことを特徴とするポリアマイド。
【請求項7】
請求項6によるポリアマイドを含む車両用素材、電子機器用素材、産業用パイプ素材、建築土木用素材、3Dプリンタ用素材、繊維用素材、被服素材、工作機械用素材、医療用素材、航空用素材、太陽光素材、電池用素材、スポーツ用素材、家電用素材、家庭用素材及び化粧品用素材からなる群より選択される
ことを特徴とする部品素材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、二重活性基を持つ分子量調節剤を用いたポリアマイド製造方法及びそれにより製造されたポリアマイドに関し、さらに詳しくは、ポリアマイドの陰イオン開環共重合で二重活性基を含有した分子量調節剤を使用することによって、前記分子量調節剤の添加反応による分子量制御が可能な二重活性基を持つ分子量調節剤を用いたポリアマイド製造方法及びそれにより製造されたポリアマイドに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂はアミド(-NHCO-)結合によって結合された直線型高分子であって、強靭で耐摩擦、耐摩耗、耐油、耐溶劑性などの物性に優れ溶融成形が容易で、衣服素材用、産業資材用繊維、エンジニアリングプラスチックなどとして広く用いられている。ポリアミドは分子構造によって脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミド、脂肪族環ポリアミドに分類されることができ、そのうち脂肪族ポリアミドの場合はナイロン(Nylon)、芳香族ポリアミドの場合はアラミド(Aramid)と通称することもある。
【0003】
このようなポリアミドは、様々な重合方法で製造され、ナイロン6のようにラクタムの開環重合によるもの、ナイロン6,6、ナイロン6,10及びナイロン4,6のようにジアミンと二塩基酸の重縮合によるもの、ナイロン11及びナイロン12のようにアミノカルボン酸の重縮合によるものに大きく分けられる。その他、カプロラクタムと6,10-ナイロン塩(ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸塩)との混成縮合物などの所謂共重合ナイロンが工業的に生産されており、また、分子中に側鎖、水酸基などの作用基、芳香環とヘテロ環を含む各種のポリアミドが研究されている。
【0004】
ラクタム、例えばカプロラクタムは陰イオン重合され得る。この方法は、一般に触媒、及び/又は開始剤(活性剤とも呼ばれる)を使用する(活性化された陰イオン重合)。これまで主に使用される開始剤又は活性剤はジイソシアネート又はそれらの誘導体を含む。
【0005】
特許文献1には、ビウレット基(biuret group)を含み非芳香族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネートを活性剤として使用してポリアマイドを製造するラクタムの活性化された陰イオン重合が記述されている。
【0006】
特許文献2には、平均3.5個を超過するNCO作用基を有するポリイソシアヌレートを成分Aとして含む組成物、及び/又は、前述の組成物を用いて表面コーティング組成物を製造する方法が開示されている。
【0007】
特許文献3はキャッピングされていないポリイソシアネートを使用し(よって、反応性を顕著に減少させる)、その実施例における活性剤濃度は非常に低く(1/200~1/50モル)、重合時間が相当遅延する。
【0008】
特許文献4は多重作用性活性剤の前駆体としてゴム(すなわち、弾性重合体)を使用し、したがって、その結果として生成されたPAは最大1.12GPaで硬質ではない。前記活性剤は高いMwを有し、ここでは、多量の活性剤が必要である(20%以上)。二官能性活性剤と多官能性活性剤の混合物が使用され、よって、生成されたポリアマイドは架橋された物質ではない。
【0009】
また、特許文献5では、押出機によるラクタム陰イオン重合技術として一定の吐出量(output)及び均一な粘度と物性を得るために押出機本体(body)と押出機ダイ(die)の間に定量ポンプ(metering pump)を設置した方法で、粘度の不均一性を機械的に解決しようとしたが根本的な解決策ではない。
【0010】
特許文献6では、熱分解によって粘度が不安定な問題と構造的に不規則な分岐構造(disorderly branching structure)の形成を指摘しているが、合成した重合体の分解(decomposition)を防ぐために、より酸性を持つ添加剤で問題の解決を試みているのみで、不均一な分岐構造の解決に対する言及は皆無である。ちなみにポリアマイド陰イオン重合時に発生する分岐副反応に関しては、非特許文献1~2で詳細に言及している。
【0011】
特に、特許文献7では、より均一な製品を得るために触媒と開始剤(反応促進剤)を同時に含有する溶液液体システム(solution liquid system)を導入している。ここでは、溶液システムを導入して一定の品質を有する均一な製品を得て、再現性の高い結果を得たと述べているが、反応押出方法に適用するには溶媒除去の問題などにより効率的ではない問題点がある。
【0012】
特に、従来の方法は付加的な副反応などによって高い分子量を誘導する方法に頼らざるを得ないもので、高温で重合されるポリアマイド12又はポリアマイド612の場合のように高温の重合温度では反応が急速に進み十分な反応による高分子鎖が生成される前に反応が不均一に起こる現象が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】US4754000号(Bayer AG)
【文献】EP1091991号(BASF AG)
【文献】US3423372号
【文献】EP0156129号
【文献】米国特許第4067861号(1978年)
【文献】米国特許第3878173号(1975年)
【文献】米国特許第5747634号(1998年)
【非特許文献】
【0014】
【文献】M. P. Stevens、‘Polymer Chemistry’、2nd Ed.、Oxford University Press、p429(1990)
【文献】G. Odian、‘Principles of Polymerization’、2nd Ed.、John Wiley&Sons、p541(1981)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本願発明は、上記の従来技術の問題点と過去から求められてきた技術的課題を解決することを目的とする。
【0016】
本発明の目的は、ポリアマイドの陰イオン開環共重合で二重活性基を含有した分子量調節剤を使用することによって、前記分子量調節剤の添加反応による分子量制御を可能にする二重活性基を持つ分子量調節剤を用いたポリアマイド製造方法及びそれにより製造されたポリアマイドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
このような目的を達成するための本願発明による二重活性基を持つ分子量調節剤を用いたポリアマイド製造方法は、
陰イオン重合反応による分子量調節剤を含むポリアマイド製造方法であって、
ラクタム、前記ラクタム全体100重量部に対して、開始剤としてアルカリ金属0.01乃至20重量部、二重活性基を持つ分子量調節剤として下記化学式2で示される化合物0.01乃至5.0重量部、活性化剤0.01乃至5.0重量部を用いた下記化学式1で示される化合物を含むポリアマイド製造方法。
【0018】
【化1】
【0019】
n及びmはそれぞれ独立的にn=m又はn>mを満足する有理数で、kは化学式1で示される化合物の重量平均分子量(Mw)20,000~100,000g/molを満足する有理数である。
【0020】
【化2】
【0021】
本発明の好ましい一例で、前記ラクタムはカプロラクタム、ラウロラクタム、ピロリドン、ピペリジノン及びそれらの混合物を含む群より少なくとも1種以上を選択して含むことができる。
【0022】
本発明の好ましい一例で、前記ラクタムのうち選択された2種のラクタムは20~80:80~20重量比で含むことができる。
【0023】
本発明の好ましい一例で、前記活性化剤は二酸化炭素(CO)、ベンゾイルクロリド(benzoyl chloride)、N-アセチルカプロラクタム(N-acetyl caprolactam)、N-アセチルラウロラクタム(N-acetyl laurolactam)、オクタデシルイソシアネート(octadecyl isocyanate(SIC))、トルエンジイソシアネート(toluene diisocyanate(TDI))、ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate(HDI))及びそれらの混合物からなる群より1種以上を選択して含むことができる。
【0024】
本発明の好ましい一例で、前記活性化剤はトルエンジイソシアネート(toluene diisocyanate:TDI)であることを特徴とする二重活性基を含むことができる。
【0025】
本発明の好ましい一例で、前記分子量調節剤は溶融温度(Tm)が160~180℃範囲以内であり得る。
【0026】
本発明の好ましい一例で、前記アルカリ金属は金属水素化物(metal hydride)、金属水酸化物(metal hydroxide)及び金属アルコキシド(metal alkoxide)からなる群より少なくとも1種以上を選択して含むことができる。
【0027】
本発明の好ましい一例で、前記重合温度は160乃至300℃範囲で行われ得る。ここで、本発明によれば、前記重合反応は実験用反応器を基準として0.5乃至120分間行われ得る。特に、前記重合反応時間は特に制限されず、投入される化合物の重量又は反応器のサイズ及び種類によって適切に調節され得ることは無論である。
【0028】
一方、本発明は上記の製造方法で製造されたポリアマイドを提供する。
【0029】
本発明の好ましい一例で、前記ポリアマイドは4.0以下の分子量分布範囲を有し得る。
【0030】
本発明の好ましい一例で、前記ポリアマイドの重量平均分子量(Mw)は20,000乃至100,000g/mol以内の範囲を有し得る。
【0031】
本発明の好ましい一例で、前記ポリアマイドは線形、分枝型、超分枝型(hyperbranched)又は樹枝状(denditric)構造であり得る。
【0032】
また、本発明は、前記ポリアマイドを含んで製造される車両用素材、電子機器用素材、産業用パイプ素材、建築土木用素材、3Dプリンタ用素材、繊維用素材、被服素材、工作機械用素材、医療用素材、航空用素材、太陽光素材、電池用素材、スポーツ用素材、家電用素材、家庭用素材及び化粧品用素材からなる群より選択される部品素材を提供する。
【0033】
具体的な例で、前記部品素材を含む製品は車両用エアダクト、プラスチック/ゴム化合物、接着剤、ライト、高分子光学繊維、燃料フィルタキャップ、ラインシステム、電子機器のケーブル、反射体、ケーブルのシース、光学繊維、電線保護管、コントロールユニット、ライト、パイプ用管、ライナー、パイプコーティング剤、油田探査ホース、3Dプリンタ、マルチフィラメント、スプレーホース、バルブ、ダクト、パルプ、ギア、医療用カテーテル、航空機用難燃材、太陽電池保護板、化粧料、高硬度フィルム、スキーブーツ、ヘッドセット、メガネフレーム、歯ブラシ、水さし又はアウトソールであるが、これに限定されるものではない。
【発明の効果】
【0034】
以上、説明した通り、本発明は、ポリアマイドの陰イオン開環共重合で二重活性基を含有した分子量調節剤を使用することによって、前記分子量調節剤の添加反応による分子量制御が可能なポリアマイドを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明によって製造された分子量調節剤の13C-NMR分析結果を示すグラフである。
図2】本発明によって製造された分子量調節剤のDSC分析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0036】
後述する本発明に対する説明は、本発明が実施され得る特定の実施例を例示として参照する。これらの実施例は当業者が本発明を十分に実施できるように詳細に説明される。本発明の様々な実施例は、互いに異なるが相互排他的である必要はないことが理解されるべきである。例えば、ここに記載される特定の形状、構造及び特性は一実施例に関連して本発明の精神及び範囲から逸脱することなく他の実施例として具現され得る。
【0037】
したがって、後述する詳細な説明は限定的な意味として取ろうとするものでなく、本発明の範囲は、適切に説明された場合、その請求項らが主張するものと均等な全ての範囲とともに添付された請求項によってのみ限定される。
【0038】
また、本明細書で特に言及がない限り、“置換”乃至“置換された”は、本発明の作用基のうち1つ以上の水素原子がハロゲン原子(-F、-Cl、-Br又は-I)、ハイドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、カルボキシル基、エステル基、ケトン基、置換又は非置換されたアルキル基、置換又は非置換された脂環族有機基、置換又は非置換されたアリール基、置換又は非置換されたアルケニル基、置換又は非置換されたアルキニル基、置換又は非置換されたヘテロアリール基、及び置換又は非置換されたヘテロ環基からなる群より選択される1種以上の置換基に置換されたことを意味し、前記置換基らは互いに連結されて環を形成することもできる。
【0039】
本発明で、前記“置換”は特に言及がない限り、水素原子がハロゲン原子、炭素数1乃至20の炭化水素基、炭素数1乃至20のアルコキシ基、炭素数6乃至20のアリールオキシ基などの置換基に置換されたことを意味する。
【0040】
また、前記“炭化水素基”は特に言及がない限り、線形、分枝型又は環状の飽和又は不飽和炭化水素基を意味し、前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基などは線形、分枝型又は環状であり得る。
【0041】
また、本明細書で特に言及がない限り、“アルキル基”とは、C1乃至C30アルキル基を意味し、“アリール基”とは、C6乃至C30アリール基を意味する。本明細書で、“ヘテロ環基”とは、O、S、N、P、Si及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるヘテロ原子を1つの環内に1つ乃至3つ含有する基を意味し、例えば、ピリジン、チオフェン、ピラジンなどを意味するが、これに制限されない。
【0042】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できるようにするために、本発明の好ましい実施例に関して詳細に説明する。
【0043】
上述のように、従来の陰イオン重合で使用される活性化剤の場合、分子構造内に環状構造を解くカルボニル基を1つしか持たないため、高い分子量のポリアマイドを得るには限界があった。
【0044】
よって、本発明では、陰イオン重合反応で二重活性基を有する分子量調節剤を用いた陰イオン共重合によってポリアマイドの製造方法を提供し、前述した問題点に対する解決案を模索した。
【0045】
具体的には、本発明によれば、陰イオン重合反応による分子量調節剤を含むポリアマイド製造方法であって、
ラクタム、前記ラクタム全体100重量部に対して、開始剤としてアルカリ金属0.01乃至20重量部、二重活性基を持つ分子量調節剤として下記化学式2で示される化合物0.01乃至5.0重量部、活性化剤0.01乃至5.0重量部を用いた下記化学式1で示される化合物を含むことができる、
【0046】
【化3】
【0047】
n及びmはそれぞれ独立的にn=m又はn>mを満足する有理数で、kは化学式1で示される化合物の重量平均分子量(Mw)20,000~100,000g/molを満足する有理数である。
【0048】
【化4】
【0049】
より具体的には、以下、本発明によるアミイド系分子量調節剤を含むポリアマイド製造に含まれる組成物を説明する。
【0050】
まず、本発明による前記ラクタムはポリアマイドを製造するためのモノマーとしてラウロラクタムが好ましく用いられることができる。ただし、これに限定されず、環内で炭素数4乃至12を含むものとして、例えば、カプロラクタム、ピペリドン、ピロリドン、エナントールラクタム及びカプリルラクタムを含むことができ、場合によっては、プロピオラクタム(propiolactam)、2-ピロリドン(2-pyrrolidone)、バレロラクタム(valerolactam)、カプロラクタム(caprolactam)、ヘプタラクタム(heptanolactam)、オクタノラクタム(octanolactam)、ノナノラクタム(nonanolactam)、デカノラクタム(decanolactam)、ウンデカンラクタム(undecanolactam)及びドデカノラクタム(dodecanolactam)を含むことができる。
【0051】
本発明による前記アルカリ金属触媒は、ポリアマイドを製造するための開始剤であって前記ラウロラクタム陰イオン形成を許容する化合物として、金属水素化物(metal hydride)、金属水酸化物(metal hydroxide)及び金属アルコキシド(metal alkoxide)からなる群より選択された少なくとも1種以上を含むことができる。
【0052】
具体的な例で、前記金属水素化物は水素化ナトリウム(sodium hydride)及び水素化カリウム(potassium hydride)を含むことができ、前記金属水酸化物は水酸化ナトリウム(sodium hydroxide)及び水酸化カリウム(potassium hydroxide)を含むことができ、前記金属アルコキシドはカリウムtert-ブトキシド(potassium tert-butoxide)及びアルミニウムイソプロポキシド(aluminum isopropoxide)を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0053】
例えば、 前記金属アルコキシドはナトリウムカプロラクタメート又はカリウムカプロラクタメート、アルカリ土類金属カプロラクタメート、例えば、マグネシウムブロマイドカプロラクタメート、マグネシウムクロライドカプロラクタメート、又はマグネシウムビスカプロラクタメート、アルカリ金属、例えば、ナトリウム又はカリウム、アルカリ金属塩基、又は、例えば、ナトリウム塩基、例えば、水素化ナトリウム、ナトリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムメタノラート、ナトリウムエタノラート、ナトリウムプロパンオラート、又はナトリウムブタノラート、又は、例えば、カリウム塩基、例えば、水素化カリウム、カリウム、水酸化カリウム、カリウムメタノラート、カリウムエタノラート、カリウムプロパンオラート、カリウムブタノラート、又はそれらの混合物からなる群、好ましくはナトリウムカプロラクタメート、カリウムカプロラクタメート、マグネシウムブロマイドカプロラクタメート、マグネシウムクロライドカプロラクタメート、マグネシウムビスカプロラクタメート、水素化ナトリウム、ナトリウム、水酸化ナトリウム、ナトリウムエタノラート、ナトリウムメタノラート、ナトリウムプロパンオラート、ナトリウムブタノラート、水素化カリウム、カリウム、水酸化カリウム、カリウムメタノラート、カリウムエタノラート、カリウムプロパンオラート、カリウムブタノラート、又はそれらの混合物からなる群より選択された1種以上を含むことができる。また、水素化ナトリウム、ナトリウム、及びナトリウムカプロラクタメート、及びそれらの混合物からなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0054】
このような金属触媒は固体の形態又は溶液として用いられることができるが、触媒を固体の形態で用いることが好ましい。触媒は好ましくは触媒が溶解され得るラクタム溶融物に添加される。これらの触媒は特に迅速な反応をもたらし、これにより、本発明によるポリアマイドのための製造工程の効率を増加させることができる。
【0055】
ここで、本発明によれば、前記アルカリ金属触媒は前記ラクタム全体100重量部に対して、0.01乃至20重量部で含むことができる。好ましくは0.1乃至10重量部で含むことができ、さらに好ましくは0.5乃至5重量部で含むことができる。
【0056】
この時、前記アルカリ金属触媒が0.01重量部未満で添加される場合は未重合又は反応速度の低下問題が生じる場合があり、前記アルカリ金属触媒が20重量部を超過する場合は分子量低下問題が生じる場合があるので上記の範囲が良い。
【0057】
次に、本発明による前記分子量調節剤は、好ましくは下記の化学式2で示される化合物を含む二重活性基を含む。
【0058】
【化5】
【0059】
場合によっては、エチレン-ビス-ステアロアマイド(EBS:ethylene-bis-stearamide)であり得るが、これに限定されず、アミン(amine)化合物、ウレア(urea)化合物及びジウレア(di-urea)化合物からなる群より選択された少なくとも1種以上を含むことができる。
【0060】
ここで、本発明によれば、前記分子量調節剤は前記ラクタム全体100重量部に対して、0.01乃至5重量部で含むことができる。好ましくは0.01乃至2重量部で含むことができ、さらに好ましくは0.01乃至1重量部で含むことができる。
【0061】
この時、前記分子量調節剤が0.01重量部未満で添加される場合はゲル化(架橋、ブランチング反応)問題が生じる場合があり、前記分子量調節剤が5重量部を超過する場合は分子量低下問題が生じる場合があるので上記の範囲が良い。
【0062】
これに関して、図1に示したように、上記のように製造された分子量調節剤の13C-NMR及びDSC分析結果から上記の分子量調節剤の場合に溶融温度(Tm)が上昇することを確認し、これより前記分子量調節剤を投入した場合は分子量調節剤自体の長鎖構造又は環状構造によって重合過程での重合鎖間の迅速な反応速度を制御して分子量を調節できることが期待できる。
【0063】
最後に、前記活性化剤は特に制限されず、例えば、
親電子性部分によってN-置換されたラクタム、脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、2つを超過するイソシアネート基を有するポリイソシアネート、及び脂肪族ジアシルハロゲン化物と芳香族ジアシルハロゲン化物の群より選択される。また、活性化剤(c)としてそれらの混合物からなる群より選択された少なくとも1種以上を含むことができる。
【0064】
具体的には、本発明によれば、好ましくは前記活性化剤として二酸化炭素(CO)を含むことができるが、これに限定されず、例えば、ベンゾイルクロリド(benzoyl chloride)、N-アセチルカプロラクタム(N-acetyl caprolactam)、N-アセチルラウロラクタム(N-acetyl laurolactam)、オクタデシルイソシアネート(octadecyl isocyanate(SIC))、トルエンジイソシアネート(toluene diisocyanate(TDI))、ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate(HDI))及びそれらの混合物からなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0065】
ここで、前記二酸化炭素は前記ラクタム全体100重量部に対して、0.002乃至1.0重量部で含むことができる。好ましくは0.005乃至0.5重量部で含むことができ、さらに好ましくは0.01乃至0.1重量部で含むことができる。
【0066】
この時、前記二酸化炭素が0.002重量部未満で添加される場合は未重合又は反応速度の低下問題が生じる場合があり、前記二酸化炭素が1.0重量部を超過する場合はゲル化(gelation)又は解重合(depolymerization)問題が生じる場合があるので上記の範囲が良い。
【0067】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例(example)を提示する。ただし、下記の実施例は本発明の理解を助けるためのものに過ぎず、本発明が下記の実験例によって限定されることはない。
【0068】
[製造例]
IBL(isophthaloyl-bis-laurolactam)分子量調節提議調節剤の製造
3-neckフラスコにスターラー、環流コンデンサ管と滴下漏斗を設置した。この時全てのガラス器具は水分に敏感な反応物を考慮して窒素雰囲気下に予め乾燥させた。フラスコにモノマーであるラウロラクタム1mol当量(197.32g)、triethylamine 1mol、500ml THFを入れて攪拌させた。ここで、triethylamineはラウロラクタムとisophthaloyl chlorideが反応すると生成される塩酸を捉えるスカベンジャーの役割を行う。上記用意した混合物をかき混ぜながら氷で冷やし150ml THFに0.5mol当量のisophthaloyl chlorideを溶かした溶液を40分間緩やかに滴下した。投入が完了した後に反応混合物を常温で30分の間攪拌させてからフィルタリングした。白色の固体生成物は空気下に乾燥させた後、反応副産物であるEtNHClを除去するために200mlの水に入れて攪拌させた。フィルターペーパーの上で100mlの蒸溜水でそれぞれ2回に分けて洗浄した。白色粉末は80℃の真空オーブンで乾燥させDSCと13C-NMRを用いて物質を確認した。
【実施例
【0069】
[実施例]
<実施例1>
二重活性基を有する分子量調節剤(IBL)用いたポリアマイドの製造
単量体のカプロラクタムとラウロラクタムと開始剤のNaHのモル比をそれぞれ50:50:1になるように称量した後、3-neckフラスコに入れてオイルバス(oil bath)の温度を160℃に合わせ、窒素雰囲気下にモノマーと開始剤を一次的に溶かした後、反応物がすべて溶けたことを確認した後、真空をかけて反応物に発生した水素気体を除去した。重合反応が実際的に起こる温度230℃に合わせた後、ラクタム全体100モルに対して分子量調節剤0.05モル及び活性化剤TDI0.15モルを投入した。重合が完了するとギ酸と水の1:1の混合溶液を入れて反応を終結させた後、水とアルコールで複数回洗浄した後、真空オーブンで最終乾燥させ、下記表1による含有量を持つ試料を回収した。各試料の相対粘度を確認し、その結果を表2に表した。この時、相対粘度は1、1、1、3、3、3-Hexafluoro-2-propanol(HFIP)に重合体を入れて2wt%溶液を製造して25℃で測定した。
【0070】
【表1】
【0071】
<実施例2>
上記表1のように末端封止材0.2モル比を投入した点を除けば実施例1と同じ方法でポリアマイドを製造した。
【0072】
<実施例3>
上記表1のように活性化剤としてTDIの代わりにCOを投入した点を除けば実施例1と同じ方法でポリアマイドを製造した。
【0073】
[比較例]
<比較例1>
イソフタロイル-ビス-ラウロラクタム(isophthaloyl-bis-laurolactam)の代わりにイソフタロイル-ビス-カプロラクタム(isophthaloyl-bis-caprolactam)を使用するが、THFの代わりにトルエン(toluene)を使用しラウロラクタム(laurolactam)の代わりにカプロラクタム(caprolactam)を使用して分子量調節剤を製造し、これにより実施例1と同様にポリアマイドを製造した。
【0074】
<比較例2>
イソフタロイル-ビス-ラウロラクタム(isophthaloyl-bis-laurolactam)を添加しない点を除けば実施例1と同様に重合試料を製造した。
【0075】
【表2】
【0076】
上記表2に示したように、上記比較例1と比較例2は実施例1乃至実施例3に比べて分子量が調節されずゲル化を示した。
【0077】
以上、本発明の実施例による図面を参照して説明したが、本発明の属する分野における通常の知識を持つ者であれば上記内容に基づいて本発明の範疇内で多様な応用及び変形を行うことが可能である。
図1
図2