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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】収容庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/00 20060101AFI20220620BHJP
【FI】
F25D23/00 302Z
F25D23/00 307
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021148557
(22)【出願日】2021-09-13
【審査請求日】2021-10-22
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002129
【氏名又は名称】住友商事株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000208709
【氏名又は名称】第一施設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506070143
【氏名又は名称】住商グローバル・ロジスティクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】目良 聡
(72)【発明者】
【氏名】大野 雄輔
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-206852(JP,A)
【文献】特許第6844058(JP,B1)
【文献】特開2007-075096(JP,A)
【文献】特開2021-088370(JP,A)
【文献】特開2021-066449(JP,A)
【文献】特開2008-273622(JP,A)
【文献】特開2001-204428(JP,A)
【文献】特許第6499366(JP,B1)
【文献】特許第6839261(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 11/00
F25D 23/00
A23L 3/32
B65D 88/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容室を内部に有する収容庫本体と、
前記収容庫本体の外壁の一部を構成する所定の壁部の内側の表面である内面に設けられ、前記収容室に電界を形成する電極と、を備え、
前記収容庫本体は、電気的に接地されており、
前記収容庫本体の外部と前記収容室とを隔てるように設けられ、且つ前記収容庫本体の外壁を構成する複数の壁部のうち、前記所定の壁部に対向して配置される壁部を対向壁部とし、前記所定の壁部及び前記対向壁部を除く残りの複数の壁部を複数の非対向壁部とするとき、
前記所定の壁部は、前記収容庫本体の上壁部であり、
前記対向壁部は、前記収容庫本体の底壁部であり、
複数の前記非対向壁部は、前記収容庫本体の複数の壁部のうち、前記上壁部、前記底壁部、及び扉部を除く残りの壁部であり、
前記収容庫本体の前記底壁部の内側の表面である内面は、電気的に接地されており、
前記収容庫本体の前記上壁部の内側の表面である内面の一部又は全部は、電気的に絶縁されており、
前記収容庫本体の前記上壁部、前記底壁部、及び前記扉部を除く残りの壁部のうちの少なくとも一つの内側の表面である内面の一部又は全部は、電気的に絶縁されており、
前記収容庫本体の底壁部の内面に、前記収容室に収容される収容物を設置可能に構成されている
収容庫。
【請求項2】
前記収容庫本体の前記上壁部の内面は、全面に亘って電気的に絶縁されている
請求項1に記載の収容庫。
【請求項3】
前記収容庫本体の前記上壁部、前記底壁部、及び前記扉部を除く残りの壁部の内面は、全面に亘って電気的に絶縁されている
請求項1又は2に記載の収容庫。
【請求項4】
前記収容庫本体の前記上壁部の内面には、前記収容庫本体とは別の部材からなる絶縁部材が設けられ
前記収容庫本体の前記上壁部、前記底壁部、及び前記扉部を除く残りの壁部の内面には、前記収容庫本体とは別の部材からなる絶縁部材が設けられている
請求項1~のいずれか一項に記載の収容庫。
【請求項5】
前記絶縁部材は、全体が絶縁材料により形成されている
請求項に記載の収容庫。
【請求項6】
前記絶縁部材は、所定の素材の周囲に絶縁材料を塗布することで形成されている
請求項に記載の収容庫。
【請求項7】
前記電極に電圧を印加する変圧器と、
前記変圧器を制御する制御盤と、を備え、
前記変圧器の総重量は36kg未満である
請求項1~のいずれか一項に記載の収容庫。
【請求項8】
当該収容庫は、新品又は中古品である
請求項1~のいずれか一項に記載の収容庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1に記載の収容庫がある。特許文献1に記載の収容庫は、その内部に配置される電極と、電極に電圧を印加する電源とを備えている。収容庫は矩形箱状に形成されている。電極は収容庫の一側壁部の内面に固定されており、電源から印加される電圧に基づいて収容庫の内部に静電界の雰囲気を形成する。これにより、収容庫内に静電界が形成されていない場合と比較すると、収容庫に収容されている生鮮食品等の鮮度を長く保つことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-204428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の収容庫では、電極が配置されている一つの側壁部を除く残りの他側壁部が接地されているため、収容庫内の電界は、基本的には、一側壁部から他側壁部に向かうように形成される。具体的には、特許文献1に記載の収容庫では、その底壁部に電極が配置されているため、電極から右側壁部、左側壁部、及び上壁部にそれぞれ向かう方向の電界が形成される。このとき、電極から上壁部までの距離と比較すると、電極から両側壁部までの距離の方が短いため、電極から両側壁部に向かう方向の電界が形成され易くなる一方、電極から上壁部に向かう方向の電界が形成され難くなる。これが、収容庫内の電界強度の分布にばらつきを生じさせる要因となる。仮に収容庫内において電界の弱い領域に生鮮食品等が配置されると、その鮮度を保つことができないおそれがある。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より的確に電界強度の分布のばらつきを抑制することが可能な収容庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する収容庫は、収容庫本体と、電極と、を備える。収容庫本体は、収容室を内部に有する。電極は、収容庫本体の外壁の一部を構成する所定の壁部の内面に設けられ、収容室に電界を形成する。収容庫本体の外壁を構成する複数の壁部のうち、所定の壁部に対向して配置される壁部を対向壁部とし、所定の壁部及び対向壁部を除く残りの複数の壁部を複数の非対向壁部とするとき、対向壁部の内面は、電気的に接地されており、所定の壁部の全部又は一部は、電気的に絶縁されており、複数の非対向壁部のうちの少なくとも一つの内面の一部又は全部は、電気的に絶縁されている。
【0007】
この構成のように、所定の壁部及び非対向壁部のそれぞれの内面が電気的に絶縁されていれば、それらの内面が電気的に絶縁されていない構成と比較すると、電極から、電気的に接地されている部分までの距離を長くすることができる。これにより、電極から対向壁部の内面に向かう方向の電界が形成され易くなる一方、電極から所定の壁部及び非対向壁部に向かう方向の電界が形成され難くなる。結果的に、電極により形成される電界の指向性を高めることができるため、より的確に電界強度の分布のばらつきを抑制することが可能となる。
【0008】
上記の収容庫において、収容庫本体は、矩形箱状に形成されており、所定の壁部は、収容庫本体の上壁部であり、対向壁部は、収容庫本体の底壁部であり、複数の非対向壁部は、収容庫本体の複数の壁部のうち、上壁部、底壁部、及び扉部を除く残りの壁部であることが好ましい。
この構成によれば、収容室に収容される物品が、収容庫本体の上壁部に配置される電極に接触し難くなるため、例えば電極の破損を回避し易くなる。
【0009】
上記の収容庫において、所定の壁部は、全面に亘って電気的に絶縁されていることが好ましい。
この構成によれば、電極から所定の壁部に向かう方向の電界が殆ど形成されないため、より的確に電界強度の分布のばらつきを抑制することが可能となる。
【0010】
上記の収容庫において、非対向壁部は、全面に亘って電気的に絶縁されていることが好ましい。
この構成によれば、電極から非対向壁部に向かう方向の電界が殆ど形成されないため、より的確に電界強度の分布のばらつきを抑制することが可能となる。
【0011】
上記の収容庫において、所定の壁部及び非対向壁部には、収容庫本体とは別の部材からなる絶縁部材が設けられていることが好ましい。
この構成によれば、仮に収容庫本体が電気的に接地されている場合であっても、後付けで絶縁部材を設置することにより、対向壁部の内面のみが電気的に接地されている構造を容易に実現することができる。
【0012】
上記の収容庫において、絶縁部材は、全体が絶縁材料により形成されていることが好ましい。あるいは、絶縁部材は、所定の素材の周囲に絶縁材料を塗布することで形成されていることが好ましい。
上記の収容庫において、電極に電圧を印加する変圧器と、変圧器を制御する制御盤と、を備え、変圧器の総重量は36[kg]未満であることが好ましい。
【0013】
上記の収容庫は、新品又は中古品であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の収容庫によれば、より的確に電界強度の分布のばらつきを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の収容庫の斜視構造を示す斜視図。
図2図1のII-II線に沿った断面構造を示す断面図。
図3図2のIII-III線に沿った断面構造を示す断面図。
図4】(A),(B)は、実施形態の絶縁部材の断面構造を示す断面図。
図5】比較例の収容庫の断面構造を示す断面図。
図6図5のVI-VI線に沿った断面構造を示す断面図。
図7図6に示される測定点P1~P5における電界強度を比較例の収容庫と実施形態の収容庫とを比較して示す図表。
図8】他の実施形態の収容庫の断面構造を示す断面図。
図9】他の実施形態の収容庫の断面構造を示す断面図。
図10図9のX-X線に沿った断面構造を示す断面図。
図11】他の実施形態の収容庫の断面構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、収容庫の一実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
図1に示される収容庫10は、その内部に収容される物品を冷蔵保存する冷蔵庫として用いられる。収容庫10に収容される物品は生鮮食品や乳製品、麺類等である。生鮮食品は、例えば魚や貝等の魚介類、いちごやりんご等の果物、キャベツやトマト等の野菜、牛肉や豚肉等の食肉、エッグ、並びにそれらの加工食品である。乳製品は牛乳やチーズ等である。麺類は、小麦粉やそば粉等の穀物の粉体から作られるものである。なお、収容庫10に収容される物品は、食品に限らず、生花や薬品、臓器等であってもよい。
【0017】
収容庫10は固定型冷蔵庫や移動型冷蔵庫等として用いることができる。固定型冷蔵庫は、食品の加工工場や保管庫等の屋内に設置される冷蔵庫である。移動型冷蔵庫は、船舶や飛行機等の移動体に積み込まれる冷蔵庫である。また、収容庫10は輸送用その他のコンテナや、プレハブ倉庫等の移動不可能な倉庫であってよい。さらに、収容庫10は新品及び中古品のいずれであってもよい。
図1に示されるように、収容庫10は、物品を内部に収容可能な収容庫本体20と、収容庫本体20に内蔵される冷却装置30とを備えている。なお、図1では、鉛直方向上方が矢印Z1で示され、鉛直方向下方が矢印Z2で示されている。
【0018】
収容庫本体20は、箱体40と、一対の扉部50とを有している。箱体40及び扉部50はアルミニウムやステンレス鋼等の金属材料により形成されるとともに、電気的に接地されている。
箱体40は、正面に開口部を有する矩形箱状に形成されている。箱体40の正面の開口部は一対の扉部50により閉塞されている。以下では、図2及び図3に示される箱体40の外壁を構成する複数の壁部41~45のうち、鉛直方向上方Z1に配置される壁部41を「上壁部41」と称し、扉部50から見たときに右側に配置される壁部42を「右側壁部42」と称し、扉部50から見たときに左側に配置される壁部43を「左側壁部43」と称し、扉部50から見たときに奥側に配置される壁部44を「背壁部44」と称し、鉛直方向下方Z2に配置される壁部45を「底壁部45」と称する。これらの壁部41~45及び扉部50により囲まれる空間は、収容庫本体20の内部空間である収容室S10を形成している。収容室S10は、物品が収容される空間である。収容庫10の冷蔵性能を高めるために、箱体40の壁部41~45及び扉部50のそれぞれの内部には、収容室S10から収容庫10の外部への熱伝達を抑制するための断熱材が埋め込まれている。
【0019】
図1に示されるように、一対の扉部50は、箱体40に対して開閉自在に連結されている。収容庫10では、扉部50を開くことにより収容室S10に任意の物品を入れたり、収容室S10に収容されている物品を外部に持ち出したりすることが可能となる。また、扉部50を閉じることにより収容室S10が閉空間となり、収容室S10の内部の物品が冷却環境下で保存される。
【0020】
冷却装置30は、電力の供給に基づいて駆動することにより収容室S10に冷風を供給して、収容室S10内を冷却する。
図2及び図3に示されるように、収容庫10は、収容庫本体20の内部に配置される絶縁部材61~65及び電極70を更に備えている。
【0021】
絶縁部材61は収容庫本体20の上壁部41に設けられている。絶縁部材61は、樹脂等の絶縁材料により板状に形成されている。なお、絶縁部材61は、図4(A)に示されるように全体が絶縁材料600であるといった構造を有するものであってもよいし、図4(B)に示されるように所定の素材601の周囲に絶縁材料602が塗布されるといった構造を有するものであってもよい。所定の素材601は例えば鉄により形成される。絶縁部材61は、絶縁材料からなる図示しないブラケット等を介して収容庫本体20の上壁部41の内面に固定されている。絶縁部材61は、上壁部41の内面を全面に亘って、若しくは上壁部41の内面の殆どを覆うように配置されている。絶縁部材61の底面には電極70が固定されている。
【0022】
なお、電極70は、収容庫本体20の上壁部41に直接取り付けられていてもよいし、絶縁部材61に取り付けられることにより絶縁部材61を介して収容庫本体20の上壁部41に固定されていてもよい。収容庫本体20の上壁部41に対する電極70等の取り付け方法としては、収容庫本体20の上壁部41にボルトを用いて締結する方法や、アングルに載置する方法等、任意の方法を採用することが可能である。また、ボルトやアングル等の留め具を用いることなく、収容庫本体20の上壁部41に電極70等を取り付けても良い。すなわち、電極70等の取り付け方法や、その取り付けに用いられる留め具の有無、また留め部の材質に関しては問わない。
【0023】
絶縁部材62~64は収容庫本体20の右側壁部42、左側壁部43、及び背壁部44のそれぞれの内面に設けられている。また、絶縁部材65は一対の扉部50の内面に設けられている。これらの絶縁部材62~65は、例えばポリエステルフィルム等の絶縁材料からなるシートにより形成されており、壁部42~44及び扉部50のそれぞれの内面に接着等により貼り付けられている。なお、絶縁部材62~65も、絶縁部材61と同様に、素材そのものが絶縁体であるといった構造を有するものであってもよいし、他の素材(例えば鉄)の周囲に絶縁素材が塗布されるといった構造を有するものであってもよい。絶縁部材62~65は、壁部42~44及び扉部50のそれぞれの内面を全面に亘って、若しくはそれらの内面の殆どを覆うように配置されている。
【0024】
このように、本実施形態の収容庫10では、収容庫本体20の上壁部41、右側壁部42、左側壁部43、及び背壁部44のそれぞれの内面、並びに扉部50の内面が絶縁部材61~65により電気的に絶縁されている。一方、収容庫本体20の底壁部45の内面は電気的に接地されている。
【0025】
本実施形態の収容庫10では、上壁部41が、内面に電極70を有する所定の壁部に相当する。また、底壁部45が、所定の壁部に対向する対向壁部に相当する。更に、右側壁部42、左側壁部43、背壁部44、及び扉部50が、所定の壁部及び対向壁部を除く非対向壁部に相当する。
【0026】
図2に示されるように、電極70は、収容庫本体20の内部又は外部に設けられる電圧印加装置80に接続されている。電圧印加装置80は、変圧器81及び制御盤82等を有して構成されており、所定の高電圧を電極70に印加する。変圧器81は、電源から供給される電圧を昇圧して電極70に印加する。制御盤82は、変圧器81を制御するための各種回路等を有している。電圧印加装置80から電極70に印加される高電圧は、例えば時間の経過に伴って周期的に大きさや向きが変化する交番電圧であってもよいし、時間の経過に伴って大きさや向きが変化しない一定の電圧であってもよい。電極70は、電圧印加装置80により印加される高電圧に基づいて収容室S10内に電界を形成する。
【0027】
次に、本実施形態の収容庫10の作用及び効果について説明する。なお、以下では、収容室S10に収容されている物品を収容物とも称する。
収容室S10内に電界が形成されることにより、収容室S10内の収容物に殺菌処理を施すことができるとともに、収容物の熟成を促進させることもできる。そのため、鮮度を保ったまま収容物を長期間に亘って保存することができるとともに、収容物の旨味を増幅させることができる。また、所定の電界の環境下に収容物が存在することにより収容物の凍結点を下げることができるため、より低温の環境下、例えばマイナス温度の環境下であっても凍結することなく収容物を保存することができる。そのため、収容物の鮮度をより長期間に亘って維持することが可能となる。
【0028】
一方、収容室S10内の電界強度の分布にばらつきが存在すると、特に電界強度が弱い領域に存在する収容物に関しては、上記の電界形成により本来得られるべき効果よりも低い効果しか得られなかったり、その効果をそもそも得ることができなかったりするおそれがある。
【0029】
この点、本実施形態の収容庫10では、上述の通り、収容庫本体20の上壁部41、右側壁部42、左側壁部43、及び背壁部44のそれぞれの内面、並びに扉部50の内面が電気的に絶縁されている。また、収容庫本体20の底壁部45の内面が電気的に接地されている。そのため、電極70が収容室S10内に電界を形成した際に、収容室S10内には、図2及び図3に矢印で示されるような電界が形成され易くなる。すなわち、電極70から、電気的に絶縁されている上壁部41、右側壁部42、左側壁部43、背壁部44、及び扉部50に向かう方向の電界が形成され難くなる一方、電極70から、電気的に接地されている底壁部45の内面に向かう上下方向の電界のみが形成され易くなる。結果的に、電極70により形成される電界の指向性を高めることができるため、収容室S10内の電界強度の分布のばらつきをより的確に抑制することが可能となる。
【0030】
具体的には、本実施形態の収容庫10では、図5に示される比較例の収容庫100と比較すると、電界強度の分布のばらつきが抑制される。図5に示される比較例の収容庫100は、収容庫本体20の右側壁部42、左側壁部43、及び底壁部45に絶縁部材が設けられていない点で、本実施形態の収容庫10と異なる。この比較例の収容庫100において電極70に「7[kV]」の電圧を印加して、図6に示される底壁部45の測定点P1~P5の電界強度を実験的に測定した。なお、図6では、扉部50の図示が省略されている。本実施形態の収容庫10に関しても同様に電極70に「7[kV]」の電圧を印加して底壁部45の測定点P1~P5の電界強度を実験的に測定した。それらの測定結果は図7に示される通りである。なお、図7に記載の「増加率」は、比較例の収容庫100の電界強度に対する本実施形態の収容庫10の電界強度の比率を百分率で示したものである。
【0031】
図7に示されるように、測定点P1~P5のいずれの場所でも比較例の収容庫100の電界強度よりも本実施形態の収容庫10の電界強度の方が高くなっている。図7に示されるように、比較例の収容庫100では、電界強度の最小値(812[V/m])に対する電界強度の最大値(2831[V/m])の比率が約3.5である。これに対し、本実施形態の収容庫100では、電界強度の最小値(1622[V/m])に対する電界強度の最大値(4164[V/m])の比率が約2.6である。このように、本実施形態の収容庫10では、より均一な電界を収容室S10内に形成することが可能である。よって、収容室S10のいずれの領域に存在する収容物に対しても、上記の電界形成を通じて本来得られるべき効果をより確実に得ることができるようになる。また、比較例の収容庫100と比較すると、本実施形態の収容庫10では、対向壁部である底壁部45における電界強度を維持したまま、電圧印加装置80から発生させる電圧を低減することが可能である。よって、電圧印加装置80では、よりキャパシティの小さい変圧器81を使用することができるため、電圧印加装置80を軽量化することが可能である。したがって、電圧印加装置80が収容庫10に内蔵されている場合には、電圧印加装置80の軽量化により収容庫10の全体の重量を従来の収容庫よりも軽くすることが可能となる。さらに、電圧印加装置80から発生させる電圧を低電圧に抑えることができれば、安全性の向上や、コストダウンし得る可能性、あるいは軽量化による収容庫10の最大載積量の増加等、多くの効果を期待することが可能である。
【0032】
一方、従来の収容庫では、生鮮食品の鮮度の確保等に関してより高い効果を得るためには、より強度の高い電界を形成する必要がある。すなわち、より高い電圧を電極に印加する必要がある。このような要求に対応するために、電圧印加装置から電極に印加される電圧のパターンには、低電圧に対応した電圧パターンだけでなく、高電圧に対応した電圧パターン等の複数のパターンが設けられている。複数の電圧パターンを実現するためには、それらに対応した変圧器の容量が必要となる。結果的に従来の収容庫では複数の変圧器を搭載しなければならなくなっている。これが電圧印加装置の重量を増加させ、ひいては収容庫全体の重量を増加させる要因になっている。
【0033】
これに対して、本実施形態の収容庫10では、上述の通り、より均一な電界を収容庫10内に形成することが可能であるため、電圧パターンの数を減らしたとしても、十分な電界強度を得られる可能性が高い。電圧パターンの数を減らすことができれば、変圧器の容量を減少させることができる。すなわち、変圧器81の数を減らすことができる。したがって、本実施形態の収容庫10では変圧器81の総重量及び総体積を従来の収容庫よりも減らすことが可能である。
【0034】
具体的には、従来の収容庫では、電圧印加装置から電極に印加される電圧パターンとして、例えば2[kV]から7[kV]の範囲で1[kV]毎に設定される電圧パターンが用いられており、合計6つの電圧パターンが用いられている。この6つの電圧パターンを実現するためには、電圧印加装置に6つの変圧器が必要となる。したがって、1つの変圧器当たりの重量が「6[kg]」であるとすると、変圧器の総重量が「36[kg](=6[kg]×6)」となる。これに対して、本実施形態の収容庫10では、変圧器81の数を6つよりも減らすことができるため、変圧器の総重量を「36[kg]」未満にすることが可能である。
【0035】
同様に、一つの変圧器当たりの体積が「0.00594[m3]」であるとすると、従来の収容庫では、変圧器の総体積が「0.03564[m3](=0.00594[m3]×6)」となる。これに対して、本実施形態の収容庫10では、変圧器81の数を6つよりも減らすことができるため、変圧器81の総体積を「0.03564[m3]」未満にすることが可能である。
【0036】
また、本実施形態の収容庫10では、収容庫本体20の上壁部41の内面に電極70が設置されている。これにより、収容庫本体20に収容される収容物が電極70に接触し難くなるため、例えば電極70の破損を回避し易くなる。
さらに、本実施形態の収容庫10では、電極70が配置される収容庫本体20の上壁部41の内面が全面に亘って、若しくはその殆どが絶縁部材61により絶縁されている。また、収容庫本体20の右側壁部42、左側壁部43、及び背壁部44のそれぞれの内面、並びに扉部50の内面も全面に亘って、若しくはそれらの殆どが絶縁部材62~65により絶縁されている。これらの構成によれば、電極70から収容庫本体20の底壁部45に向かう方向の電界がより的確に形成され易くなるため、電界強度の分布のばらつきを一層抑制することが可能となる。
【0037】
また、本実施形態の収容庫10では、収容庫本体20の上壁部41に、収容庫本体20とは別部材からなる板状の絶縁部材61が貼り付けられている。また、収容庫本体20の右側壁部42、左側壁部43、及び背壁部44のそれぞれの内面、並びに扉部50の内面には、それらとは別部材からなるシート状の絶縁部材62~65が貼り付けられている。これらの構成によれば、収容庫本体20が電気的に接地されている場合であっても、絶縁部材61~65を後付けで設置することにより、収容庫本体20の底壁部45の内面のみが電気的に接地されている構造を容易に実現することができる。
【0038】
なお、上記実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
・収容庫本体20の右側壁部42、左側壁部43、及び背壁部44のそれぞれの内面、及び扉部50の内面は予め樹脂等の絶縁材料により形成されていてもよい。
【0039】
・収容庫本体20の上壁部41の内面は、必ずしも全面に亘って絶縁されている必要はない。例えば図8に示されるように、収容庫本体20の上壁部41の内面は、その一部が絶縁部材61により覆われていなくてもよい。
・収容庫本体20の右側壁部42、左側壁部43、及び背壁部44のそれぞれの内面、並びに扉部50の内面も、必ずしも全面に亘って絶縁されている必要はない。例えば図9及び図10に示されるように、収容庫本体20の右側壁部42、左側壁部43、及び背壁部44のそれぞれの内面、並びに扉部50の内面は、それらの一部が絶縁部材62~65により覆われていなくてもよい。
【0040】
・収容庫本体20では、対向壁部に相当する底壁部45の内面が電気的に接地されるとともに、所定の壁部に相当する上壁部41の内面の一部又は全部が電気的に絶縁され、且つ非対向壁部に相当する右側壁部42、左側壁部43、背壁部44、及び扉部50のうちの少なくとも一つの内面の一部又は全部が電気的に絶縁されていればよい。例えば底壁部45の内面が電気的に接地されるとともに、上壁部41、右側壁部42、左側壁部43、及び背壁部44のそれぞれの内面の一部又は全部が絶縁部材により覆われ、且つ扉部50の内面が絶縁部材により覆われていなくてもよい。この場合、右側壁部42、左側壁部43、及び背壁部44が、収容庫本体20の複数の壁部のうち、所定の壁部である上壁部41、対向壁部である底壁部45、及び扉部50を除く残りの壁部に相当する。
【0041】
・電極70は、収容庫本体20の上壁部41に限らず、収容庫本体20の右側壁部42、左側壁部43、背壁部44、及び底壁部45、並びに扉部50のいずれかに設けられていれば、収容室S10内の電界の印加方向は任意である。例えば、図11に示されるように、収容庫本体20の右側壁部42に電極70を設ける場合には、収容庫本体20の上壁部41、右側壁部42、背壁部44、及び底壁部45のそれぞれの内面、並びに扉部50の内面に絶縁部材61~65を設ければよい。また、収容庫本体20の左側壁部43の内面を電気的に接地すればよい。この場合には、収容室S10内の電界の印加方向は左右方向となる。なお、図11に示される収容庫10では、収容庫本体20の右側壁部42が所定の壁部に相当し、収容庫本体20の左側壁部43が対向壁部に相当し、収容庫本体20の上壁部41、背壁部44、及び底壁部45、並びに扉部50が非対向壁部に相当する。
【0042】
・収容庫本体20の構造は適宜変更可能である。例えば収容庫本体20の内部には複数の収容室が形成されていてもよい。また、収容庫本体20は、前面に扉部50を有する構造に限らず、上面に扉部50を有する構造であってもよい。さらに、収容庫本体20は、一対の扉部50を有する構造に限らず、一つの扉部のみを有する構造や、3つ以上の扉部を有する構造であってもよい。
【0043】
・収容庫10は、冷蔵庫に限らず、常温庫や加温庫、冷凍庫、凍結庫等であってもよい。
・本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0044】
S10…収容室、10…収容庫、20…収容庫本体、41…上壁部(壁部、所定の壁部)、42…右側壁部(壁部、非対向壁部)、43…左側壁部(壁部、非対向壁部)、44…背壁部(壁部、非対向壁部)、45…底壁部(壁部、対向壁部)、50…扉部(壁部、非対向壁部)、61~65…絶縁部材、70…電極、81…変圧器、82…制御盤、600…絶縁材料、601…素材、602…絶縁材料。
【要約】
【課題】より的確に電界強度の分布のばらつきを抑制することが可能な収容庫を提供する。
【解決手段】収容庫10は、収容庫本体20と、電極70と、を備える。収容庫本体20は、収容室S10を内部に有する。電極70は、収容庫本体20の上壁部41の内面に設けられ、収容室S10に電界を形成する。収容庫本体20の外壁を構成する複数の壁部のうち、上壁部41に対向して配置される底壁部45の内面は電気的に接地されており、上壁部41の内面は電気的に絶縁されており、上壁部41及び底壁部45を除く右側壁部42、左側壁部43、及び背壁部の内面は電気的に絶縁されている。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11