(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】開閉構造、住宅、及び開閉構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
E06B 7/02 20060101AFI20220620BHJP
E05D 7/081 20060101ALI20220620BHJP
E06B 3/984 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
E06B7/02
E05D7/081
E06B3/984 A
(21)【出願番号】P 2021187969
(22)【出願日】2021-11-18
【審査請求日】2021-11-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 スイングドア設置展示場リストに記載の通りに公開 令和 3年 8月 5日に、株式会社ヒノキヤグループのウェブサイトにて公開 (https://www.hinokiya.jp/life-style/products/standard/#door) 令和 3年 8月12日に、YouTubeのウェブサイトにて公開 (https://www.youtube.com/watch?v=sAJfJR6Y0QQ) 令和 3年 8月16日に、株式会社ヒノキヤグループのニュースリリースにて公開
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511167618
【氏名又は名称】株式会社ヒノキヤグループ
(73)【特許権者】
【識別番号】000000413
【氏名又は名称】永大産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】荒木 伸介
(72)【発明者】
【氏名】葭葉 司
(72)【発明者】
【氏名】塚本 晃久
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-127563(JP,A)
【文献】特開2004-100170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00ー1/70
7/00ー7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁体に設けられた開口を枢戸式の建具が開閉する開閉構造において、
前記建具が閉じている場合、前記建具は前記開口の内側に配され、前記建具の周縁部の全周と前記開口の周縁部の全周との間に、空気が通流する隙間が設けられ
、
前記建具は戸尻框を備える框戸であり、
前記戸尻框の下端部に、一の枢軸が設けられた一の枢軸部材と、一の穴部が設けられており、該一の穴部に前記一の枢軸が挿入される一の軸支持部材との一方が固定され、
前記戸尻框の上端部に、他の枢軸が設けられた他の枢軸部材と、他の穴部が設けられており、該他の穴部に前記他の枢軸が挿入される他の軸支持部材との一方が固定され、
前記開口の下縁部に、前記一の穴部に前記一の枢軸が挿入されるようにして前記一の枢軸部材と前記一の軸支持部材との他方が固定され、
前記開口の上縁部に、前記他の穴部に前記他の枢軸が挿入される前記他の枢軸部材と前記他の軸支持部材との他方が固定され、
前記建具は下框及び上框を更に備え、
前記下框の戸尻側の端部は、前記戸尻框の下端部の戸先側の面及び下面にわたって設けられている一の凹部に挿入され、
前記上框の戸尻側の端部は、前記戸尻框の上端部の戸先側の面及び上面にわたって設けられている他の凹部に挿入され、
前記一の枢軸部材と前記一の軸支持部材との一方は前記戸尻框の下端部及び前記下框夫々に固定され、
前記他の枢軸部材と前記他の軸支持部材との一方は前記戸尻框の上端部及び前記上框夫々に固定されることを特徴とする開閉構造。
【請求項2】
壁体に設けられた開口を枢戸式の建具が開閉する開閉構造において、
前記建具が閉じている場合、前記建具は前記開口の内側に配され、前記建具の周縁部の全周と前記開口の周縁部の全周との間に、空気が通流する隙間が設けられ、
前記建具は、
戸先框、
該戸先框よりも薄い鏡板、及び
該鏡板との間に手指を挿入可能な空間が設けられるようにして、前記戸先框の戸尻側の面から前記鏡板に沿うように突出する板状の指掛け部材
を備える框戸であることを特徴とする開閉構造。
【請求項3】
枢軸が設けられた枢軸部材が、前記枢軸が前記建具の下端面から下向きに突出するようにして、前記下端面に埋設され、
穴部が設けられた軸支持部材が、前記穴部が上向きに開口し、前記穴部に前記枢軸が挿入されるようにして、前記開口の下縁部に固定され、
前記枢軸部材は前記軸支持部材よりも大型の部材であることを特徴とする請求項
2に記載の開閉構造。
【請求項4】
壁体に設けられた開口を枢戸式の建具が開閉する開閉構造において、
前記建具が閉じている場合、前記建具は前記開口の内側に配され、前記建具の周縁部の全周と前記開口の周縁部の全周との間に、空気が通流する隙間が設けられ、
枢軸が設けられた枢軸部材が、前記枢軸が前記建具の下端面から下向きに突出するようにして、前記下端面に埋設され、
穴部が設けられた軸支持部材が、前記穴部が上向きに開口し、前記穴部に前記枢軸が挿入されるようにして、前記開口の下縁部に固定され、
前記枢軸部材は前記軸支持部材よりも大型の部材であることを特徴とする開閉構造。
【請求項5】
壁体に設けられた開口を枢戸式の建具が開閉する開閉構造において、
前記建具が閉じている場合、前記建具は前記開口の内側に配され、前記建具の周縁部の全周と前記開口の周縁部の全周との間に、空気が通流する隙間が設けられ、
前記建具と前記開口の側縁部との間の前記隙間は小さく、
前記建具と前記開口の下縁部との間の前記隙間は中程度であり、
前記建具と前記開口の上縁部との間の前記隙間は大きいことを特徴とする開閉構造。
【請求項6】
壁体に設けられた開口を枢戸式の建具が開閉する開閉構造において、
前記建具が閉じている場合、前記建具は前記開口の内側に配され、前記建具の周縁部の全周と前記開口の周縁部の全周との間に、空気が通流する隙間が設けられ、
前記建具は戸尻框を備える框戸であり、
前記戸尻框の下端部に、一の枢軸が設けられた一の枢軸部材と、一の穴部が設けられており、該一の穴部に前記一の枢軸が挿入される一の軸支持部材との一方が固定され、
前記戸尻框の上端部に、他の枢軸が設けられた他の枢軸部材と、他の穴部が設けられており、該他の穴部に前記他の枢軸が挿入される他の軸支持部材との一方が固定され、
前記開口の下縁部に、前記一の穴部に前記一の枢軸が挿入されるようにして前記一の枢軸部材と前記一の軸支持部材との他方が固定され、
前記開口の上縁部に、前記他の穴部に前記他の枢軸が挿入される前記他の枢軸部材と前記他の軸支持部材との他方が固定されることを特徴とする開閉構造。
【請求項7】
前記建具は下框及び上框を更に備え、
前記一の枢軸部材と前記一の軸支持部材との一方は前記戸尻框の下端部及び前記下框夫々に固定され、
前記他の枢軸部材と前記他の軸支持部材との一方は前記戸尻框の上端部及び前記上框夫々に固定されることを特徴とする請求項6に記載の開閉構造。
【請求項8】
前記建具は戸先框を更に備え、
前記戸尻框は前記戸先框よりも幅広であることを特徴とする請求項1、6、又は7に記載の開閉構造。
【請求項9】
前記建具の一部が透明であり、透明な部分を通して前記建具の一面側の空間から他面側の空間が視認可能であることを特徴とする請求項1から
8の何れか一項に記載の開閉構造。
【請求項10】
開口が設けられた壁体と、
前記開口を開閉する枢戸式の建具と
を屋内に備える住宅において、
前記建具が閉じている場合、前記建具は前記開口の内側に配され、前記建具の周縁部の全周と前記開口の周縁部の全周との間に、空気が通流する隙間が設けられ
、
前記建具は戸尻框を備える框戸であり、
前記戸尻框の下端部に、一の枢軸が設けられた一の枢軸部材と、一の穴部が設けられており、該一の穴部に前記一の枢軸が挿入される一の軸支持部材との一方が固定され、
前記戸尻框の上端部に、他の枢軸が設けられた他の枢軸部材と、他の穴部が設けられており、該他の穴部に前記他の枢軸が挿入される他の軸支持部材との一方が固定され、
前記開口の下縁部に、前記一の穴部に前記一の枢軸が挿入されるようにして前記一の枢軸部材と前記一の軸支持部材との他方が固定され、
前記開口の上縁部に、前記他の穴部に前記他の枢軸が挿入される前記他の枢軸部材と前記他の軸支持部材との他方が固定され、
前記建具は下框及び上框を更に備え、
前記下框の戸尻側の端部は、前記戸尻框の下端部の戸先側の面及び下面にわたって設けられている一の凹部に挿入され、
前記上框の戸尻側の端部は、前記戸尻框の上端部の戸先側の面及び上面にわたって設けられている他の凹部に挿入され、
前記一の枢軸部材と前記一の軸支持部材との一方は前記戸尻框の下端部及び前記下框夫々に固定され、
前記他の枢軸部材と前記他の軸支持部材との一方は前記戸尻框の上端部及び前記上框夫々に固定されることを特徴とする住宅。
【請求項11】
開口が設けられた壁体と、
前記開口を開閉する枢戸式の建具と
を屋内に備える住宅において、
前記建具が閉じている場合、前記建具は前記開口の内側に配され、前記建具の周縁部の全周と前記開口の周縁部の全周との間に、空気が通流する隙間が設けられ、
前記建具は、
戸先框、
該戸先框よりも薄い鏡板、及び
該鏡板との間に手指を挿入可能な空間が設けられるようにして、前記戸先框の戸尻側の面から前記鏡板に沿うように突出する板状の指掛け部材
を備える框戸であることを特徴とする住宅。
【請求項12】
開口が設けられた壁体と、
前記開口を開閉する枢戸式の建具と
を屋内に備える住宅において、
前記建具が閉じている場合、前記建具は前記開口の内側に配され、前記建具の周縁部の全周と前記開口の周縁部の全周との間に、空気が通流する隙間が設けられ、
枢軸が設けられた枢軸部材が、前記枢軸が前記建具の下端面から下向きに突出するようにして、前記下端面に埋設され、
穴部が設けられた軸支持部材が、前記穴部が上向きに開口し、前記穴部に前記枢軸が挿入されるようにして、前記開口の下縁部に固定され、
前記枢軸部材は前記軸支持部材よりも大型の部材であることを特徴とする住宅。
【請求項13】
壁体に設けられた開口を枢戸式の建具が開閉する開閉構造を施工する方法において、
前記建具が閉じている場合に前記建具が前記開口の内側に配され、空気が通流する隙間が前記建具の周縁部の全周と前記開口の周縁部の全周との間に設けられるようにして、前記建具を前記開口の周縁部に取り付け
、
前記建具を前記開口の周縁部に取り付けるために、
一の枢軸が設けられた一の枢軸部材と、前記一の枢軸が挿入される一の穴部が設けられた一の軸支持部材との一方を、前記建具の戸尻側の下端部となる部分に固定し、
前記一の枢軸部材と前記一の枢軸部材との他方を、前記開口の下縁部に固定し、
前記一の枢軸部材と前記一の枢軸部材との他方を固定する前に、前記建具が閉じている場合に前記建具が前記開口の内側に配され、且つ、前記建具の周縁部の内の戸先側の部分及び戸尻側の部分夫々と前記開口の周縁部との間に前記隙間が設けられるようにして、前記一の枢軸部材と前記一の枢軸部材との他方を固定する位置を求め、
他の枢軸が設けられた他の枢軸部材と、前記他の枢軸が挿入される他の穴部が設けられた他の軸支持部材との一方を、前記建具の戸尻側の上端部となる部分に固定し、
前記他の枢軸部材と前記他の軸支持部材との一方を前記建具に固定した後、前記他の枢軸を前記他の穴部に挿入することにより、前記他の枢軸部材と前記他の軸支持部材との一方に他方を取り付け、
前記一の枢軸部材と前記一の枢軸部材との一方及び他方夫々の固定後、且つ、前記他の枢軸部材と前記他の軸支持部材との一方への他方の取り付け後、前記一の枢軸を前記一の穴部に挿入することにより、前記一の枢軸部材と前記一の軸支持部材との一方を他方に取り付け、
前記一の枢軸部材と前記一の軸支持部材との一方への他方の取り付け後、前記他の枢軸部材と前記他の軸支持部材との他方を前記開口の上縁部に固定し、
前記一の枢軸部材と前記一の軸支持部材との一方への他方の取り付け時に、前記建具の下端面と前記開口の下縁部との間及び前記建具の上端面と前記開口の上縁部との間夫々に前記隙間が設けられるようにすることを特徴とする開閉構造の施工方法。
【請求項14】
壁体に設けられた開口を枢戸式の建具が開閉する開閉構造を施工する方法において、
前記建具が閉じている場合に前記建具が前記開口の内側に配され、空気が通流する隙間が前記建具の周縁部の全周と前記開口の周縁部の全周との間に設けられるようにして、前記建具を前記開口の周縁部に取り付け、
戸尻框及び横框を備える框戸として構成された前記建具を前記開口の周縁部に取り付けるために、前記建具の枢支用の部材を前記戸尻框及び前記横框夫々に固定することを特徴とする開閉構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、開閉構造、住宅、及び開閉構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、矩形状の開口が設けられた壁体と、壁体の開口を開閉する矩形板状の建具とを屋内に備える住宅が広く用いられている。
一般に、開口を通して換気を行なう場合には建具が開け放たれる。
特許文献1に記載の建具においては、建具の一面側の空間と他面側の空間との間で空気が流通する隙間が、建具の下縁部と床との間に設けられている。故に、この建具を用いた場合は、建具を閉めたままでも換気することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の建具の場合、空気が通流する隙間が建具の下縁部にしかないので、空気の流通量は少ない。故に、建具が閉じているときの換気効率が悪い。
【0005】
本開示の目的は、換気効率を向上させることができる開閉構造、住宅、及び開閉構造の施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る開閉構造は、壁体に設けられた開口を枢戸式の建具が開閉する開閉構造において、前記建具が閉じている場合、前記建具は前記開口の内側に配され、前記建具の周縁部の全周と前記開口の周縁部の全周との間に、空気が通流する隙間が設けられることを特徴とする。
【0007】
本開示にあっては、建具が閉じている場合でも、建具の周縁部と壁体の開口の周縁部との間に設けられた隙間を通して、建具の一面側の空間と他面側の空間との間で空気が通流する。この隙間は、建具の全周と開口の全周との間に設けられるので、空気の流通量が多い。故に、建具が閉じているときの換気効率を向上させることができる。
【0008】
建具は枢戸式であり、建具が閉じている場合は開口の内側に配される。
故に、使用者は建具の一面側からでも他面側からでも建具を押し開けることができる。建具が取っ手又は指掛け等を備える場合、使用者は建具の一面側からでも他面側からでも建具を引き開けることができる。従って、使用者の利便性を向上させることができる。
【0009】
また、開かれた建具は開口の奥側にも手前側にも進入することができる。更に、建具は開口の周縁部又は家具等に当接するまで枢軸を中心に揺動することができる。換言すれば、建具の揺動範囲は広いので、建具の開閉により開口を通した空気の流通が自然に促進される。この結果、換気効率を更に向上させることができる。
【0010】
本開示に係る開閉構造は、前記建具は戸尻框を備える框戸であり、前記戸尻框の下端部に、一の枢軸が設けられた一の枢軸部材と、一の穴部が設けられており、該一の穴部に前記一の枢軸が挿入される一の軸支持部材との一方が固定され、前記戸尻框の上端部に、他の枢軸が設けられた他の枢軸部材と、他の穴部が設けられており、該他の穴部に前記他の枢軸が挿入される他の軸支持部材との一方が固定され、前記開口の下縁部に、前記一の穴部に前記一の枢軸が挿入されるようにして前記一の枢軸部材と前記一の軸支持部材との他方が固定され、前記開口の上縁部に、前記他の穴部に前記他の枢軸が挿入される前記他の枢軸部材と前記他の軸支持部材との他方が固定されることを特徴とする。
【0011】
本開示にあっては、枢軸部材と軸支持部材との組を2つ用いることにより、建具及び壁体夫々に枢軸又は穴部を直接的に形成する場合に比べて、開閉構造を容易に得ることができる。
【0012】
本開示に係る開閉構造は、前記建具は下框及び上框を更に備え、前記下框の戸尻側の端部は、前記戸尻框の下端部の戸先側の面及び下面にわたって設けられている一の凹部に挿入され、前記上框の戸尻側の端部は、前記戸尻框の上端部の戸先側の面及び上面にわたって設けられている他の凹部に挿入され、前記一の枢軸部材と前記一の軸支持部材との一方は前記戸尻框の下端部及び前記下框夫々に固定され、前記他の枢軸部材と前記他の軸支持部材との一方は前記戸尻框の上端部及び前記上框夫々に固定されることを特徴とする。
【0013】
本開示にあっては、戸尻框(戸尻側の縦框)の下端部に一の凹部が設けられている。下框(下側の横框)の戸尻側の端部は一の凹部に挿入される。一の枢軸部材又は一の軸支持部材は、戸尻框の下端部に固定されると共に下框にも固定される。以上の結果、戸尻框と下框とを互いに強固に連結することができる。一の凹部は戸尻框の戸先側の面及び下面にわたって開口しているので、下框を一の凹部に容易に挿入することができる。
同様に、戸尻框と上框(上側の横框)とを互いに強固に連結することができ、上框を他の凹部に容易に挿入することができる。
【0014】
本開示に係る開閉構造は、前記建具は戸先框を更に備え、前記戸尻框は前記戸先框よりも幅広であることを特徴とする。
【0015】
本開示にあっては、戸尻框が戸先框(戸先側の縦框)よりも幅広なので、戸尻框の機械的強度の向上を図ることができ、延いては建具の機械的強度の向上を図ることができる。
戸尻框が戸先框よりも幅広であることにより、建具の外観を左右非対称にして意匠性の向上を図ることができる。
枢軸部材も軸支持部材も建具の枢支用の部材である。機械的強度が大きい戸尻框に枢支用の部材が固定されるので、枢支用の部材が建具に取り付けられること、又は建具が枢支されることによる建具の歪みを防止することができる。
【0016】
本開示に係る開閉構造は、前記建具は、戸先框、該戸先框よりも薄い鏡板、及び該鏡板との間に手指を挿入可能な空間が設けられるようにして、前記戸先框の戸尻側の面から前記鏡板に沿うように突出する板状の指掛け部材を備える框戸であることを特徴とする。
【0017】
本開示にあっては、板状の指掛け部材が戸先框の戸尻側の面から鏡板に沿うように突出するので、指掛け部材が建具から建具の厚さ方向に突出する突出量を抑制することができる。故に、指掛け部材が使用者の衣服に引っかかったり使用者に当接したりすることを抑制することができる。また、指掛け部材が開口の周縁部又は家具等に当接することによって建具の揺動範囲を狭めることを抑制することができる。
使用者は、指掛け部材と鏡板との間に設けられる空間に手指を挿入することにより、指掛け部材を用いて建具を引き開けることができる。
【0018】
本開示に係る開閉構造は、枢軸が設けられた枢軸部材が、前記枢軸が前記建具の下端面から下向きに突出するようにして、前記下端面に埋設され、穴部が設けられた軸支持部材が、前記穴部が上向きに開口し、前記穴部に前記枢軸が挿入されるようにして、前記開口の下縁部に固定され、前記枢軸部材は前記軸支持部材よりも大型の部材であることを特徴とする。
【0019】
本開示にあっては、枢軸部材が、枢軸が建具の下端面から下向きに突出するようにして建具の下端面に埋設される。軸支持部材は、穴部が上向きに開口するようにして開口の下縁部に固定される。
枢軸は穴部に挿入され、枢軸を除く枢軸部材は建具の下端面に埋設されるので、大型の部材である枢軸部材が目隠しされる。小型の部材である軸支持部材は目立ちにくい。以上の結果、開閉構造の美観を向上させることができる。
【0020】
本開示に係る開閉構造は、前記建具の一部が透明であり、透明な部分を通して前記建具の一面側の空間から他面側の空間が視認可能であることを特徴とする。
【0021】
本開示にあっては、建具の一部が透明なので、透明な部分を通して採光することができる。また、使用者は透明な部分を通して建具の向こう側を視認することができるので、建具を押し開ける場合の安全性を向上させることができる。
本開示に係る開閉構造は、壁体に設けられた開口を枢戸式の建具が開閉する開閉構造において、前記建具が閉じている場合、前記建具は前記開口の内側に配され、前記建具の周縁部の全周と前記開口の周縁部の全周との間に、空気が通流する隙間が設けられ、前記建具は戸尻框を備える框戸であり、前記戸尻框の下端部に、一の枢軸が設けられた一の枢軸部材と、一の穴部が設けられており、該一の穴部に前記一の枢軸が挿入される一の軸支持部材との一方が固定され、前記戸尻框の上端部に、他の枢軸が設けられた他の枢軸部材と、他の穴部が設けられており、該他の穴部に前記他の枢軸が挿入される他の軸支持部材との一方が固定され、前記開口の下縁部に、前記一の穴部に前記一の枢軸が挿入されるようにして前記一の枢軸部材と前記一の軸支持部材との他方が固定され、前記開口の上縁部に、前記他の穴部に前記他の枢軸が挿入される前記他の枢軸部材と前記他の軸支持部材との他方が固定され、前記建具は下框及び上框を更に備え、前記下框の戸尻側の端部は、前記戸尻框の下端部の戸先側の面及び下面にわたって設けられている一の凹部に挿入され、前記上框の戸尻側の端部は、前記戸尻框の上端部の戸先側の面及び上面にわたって設けられている他の凹部に挿入され、前記一の枢軸部材と前記一の軸支持部材との一方は前記戸尻框の下端部及び前記下框夫々に固定され、前記他の枢軸部材と前記他の軸支持部材との一方は前記戸尻框の上端部及び前記上框夫々に固定されることを特徴とする。
本開示に係る開閉構造は、壁体に設けられた開口を枢戸式の建具が開閉する開閉構造において、前記建具が閉じている場合、前記建具は前記開口の内側に配され、前記建具の周縁部の全周と前記開口の周縁部の全周との間に、空気が通流する隙間が設けられ、前記建具は、戸先框、該戸先框よりも薄い鏡板、及び該鏡板との間に手指を挿入可能な空間が設けられるようにして、前記戸先框の戸尻側の面から前記鏡板に沿うように突出する板状の指掛け部材を備える框戸であることを特徴とする。
本開示に係る開閉構造は、壁体に設けられた開口を枢戸式の建具が開閉する開閉構造において、前記建具が閉じている場合、前記建具は前記開口の内側に配され、前記建具の周縁部の全周と前記開口の周縁部の全周との間に、空気が通流する隙間が設けられ、枢軸が設けられた枢軸部材が、前記枢軸が前記建具の下端面から下向きに突出するようにして、前記下端面に埋設され、穴部が設けられた軸支持部材が、前記穴部が上向きに開口し、前記穴部に前記枢軸が挿入されるようにして、前記開口の下縁部に固定され、前記枢軸部材は前記軸支持部材よりも大型の部材であることを特徴とする。
本開示に係る開閉構造は、壁体に設けられた開口を枢戸式の建具が開閉する開閉構造において、前記建具が閉じている場合、前記建具は前記開口の内側に配され、前記建具の周縁部の全周と前記開口の周縁部の全周との間に、空気が通流する隙間が設けられ、前記建具と前記開口の側縁部との間の前記隙間は小さく、前記建具と前記開口の下縁部との間の前記隙間は中程度であり、前記建具と前記開口の上縁部との間の前記隙間は大きいことを特徴とする。
本開示に係る開閉構造は、壁体に設けられた開口を枢戸式の建具が開閉する開閉構造において、前記建具が閉じている場合、前記建具は前記開口の内側に配され、前記建具の周縁部の全周と前記開口の周縁部の全周との間に、空気が通流する隙間が設けられ、前記建具は戸尻框を備える框戸であり、前記戸尻框の下端部に、一の枢軸が設けられた一の枢軸部材と、一の穴部が設けられており、該一の穴部に前記一の枢軸が挿入される一の軸支持部材との一方が固定され、前記戸尻框の上端部に、他の枢軸が設けられた他の枢軸部材と、他の穴部が設けられており、該他の穴部に前記他の枢軸が挿入される他の軸支持部材との一方が固定され、前記開口の下縁部に、前記一の穴部に前記一の枢軸が挿入されるようにして前記一の枢軸部材と前記一の軸支持部材との他方が固定され、前記開口の上縁部に、前記他の穴部に前記他の枢軸が挿入される前記他の枢軸部材と前記他の軸支持部材との他方が固定されることを特徴とする。
本開示に係る開閉構造は、前記建具は下框及び上框を更に備え、前記一の枢軸部材と前記一の軸支持部材との一方は前記戸尻框の下端部及び前記下框夫々に固定され、前記他の枢軸部材と前記他の軸支持部材との一方は前記戸尻框の上端部及び前記上框夫々に固定されることを特徴とする。
【0022】
本開示に係る住宅は、開口が設けられた壁体と、前記開口を開閉する枢戸式の建具とを屋内に備える住宅において、前記建具が閉じている場合、前記建具は前記開口の内側に配され、前記建具の周縁部の全周と前記開口の周縁部の全周との間に、空気が通流する隙間が設けられることを特徴とする。
【0023】
本開示にあっては、住宅の屋内に本開示の開閉構造が設けられているので、開口を通した屋内の換気効率を向上することができる。
本開示に係る住宅は、開口が設けられた壁体と、前記開口を開閉する枢戸式の建具とを屋内に備える住宅において、前記建具が閉じている場合、前記建具は前記開口の内側に配され、前記建具の周縁部の全周と前記開口の周縁部の全周との間に、空気が通流する隙間が設けられ、前記建具は戸尻框を備える框戸であり、前記戸尻框の下端部に、一の枢軸が設けられた一の枢軸部材と、一の穴部が設けられており、該一の穴部に前記一の枢軸が挿入される一の軸支持部材との一方が固定され、前記戸尻框の上端部に、他の枢軸が設けられた他の枢軸部材と、他の穴部が設けられており、該他の穴部に前記他の枢軸が挿入される他の軸支持部材との一方が固定され、前記開口の下縁部に、前記一の穴部に前記一の枢軸が挿入されるようにして前記一の枢軸部材と前記一の軸支持部材との他方が固定され、前記開口の上縁部に、前記他の穴部に前記他の枢軸が挿入される前記他の枢軸部材と前記他の軸支持部材との他方が固定され、前記建具は下框及び上框を更に備え、前記下框の戸尻側の端部は、前記戸尻框の下端部の戸先側の面及び下面にわたって設けられている一の凹部に挿入され、前記上框の戸尻側の端部は、前記戸尻框の上端部の戸先側の面及び上面にわたって設けられている他の凹部に挿入され、前記一の枢軸部材と前記一の軸支持部材との一方は前記戸尻框の下端部及び前記下框夫々に固定され、前記他の枢軸部材と前記他の軸支持部材との一方は前記戸尻框の上端部及び前記上框夫々に固定されることを特徴とする。
本開示に係る住宅は、開口が設けられた壁体と、前記開口を開閉する枢戸式の建具とを屋内に備える住宅において、前記建具が閉じている場合、前記建具は前記開口の内側に配され、前記建具の周縁部の全周と前記開口の周縁部の全周との間に、空気が通流する隙間が設けられ、前記建具は、戸先框、該戸先框よりも薄い鏡板、及び該鏡板との間に手指を挿入可能な空間が設けられるようにして、前記戸先框の戸尻側の面から前記鏡板に沿うように突出する板状の指掛け部材を備える框戸であることを特徴とする。
本開示に係る住宅は、開口が設けられた壁体と、前記開口を開閉する枢戸式の建具とを屋内に備える住宅において、前記建具が閉じている場合、前記建具は前記開口の内側に配され、前記建具の周縁部の全周と前記開口の周縁部の全周との間に、空気が通流する隙間が設けられ、枢軸が設けられた枢軸部材が、前記枢軸が前記建具の下端面から下向きに突出するようにして、前記下端面に埋設され、穴部が設けられた軸支持部材が、前記穴部が上向きに開口し、前記穴部に前記枢軸が挿入されるようにして、前記開口の下縁部に固定され、前記枢軸部材は前記軸支持部材よりも大型の部材であることを特徴とする。
【0024】
本開示に係る開閉構造の施工方法は、壁体に設けられた開口を枢戸式の建具が開閉する開閉構造を施工する方法において、前記建具が閉じている場合に前記建具が前記開口の内側に配され、空気が通流する隙間が前記建具の周縁部の全周と前記開口の周縁部の全周との間に設けられるようにして、前記建具を前記開口の周縁部に取り付けることを特徴とする。
【0025】
本開示にあっては、本開示に係る開閉構造を施工することができる。
【0026】
本開示に係る開閉構造の施工方法は、戸尻框を備える框戸として構成された前記建具を前記開口の周縁部に取り付けるために、前記建具の枢支用の部材を前記戸尻框に固定することを特徴とする。
【0027】
本開示にあっては、框戸として構成された建具の戸尻框に枢支用の部材を固定することにより、戸尻框及び壁体夫々に枢軸又は穴部を直接的に形成する場合に比べて、本開示に係る開閉構造を容易に施工することができる。
【0028】
本開示に係る開閉構造の施工方法は、前記建具を前記開口の周縁部に取り付けるために、一の枢軸が設けられた一の枢軸部材と、前記一の枢軸が挿入される一の穴部が設けられた一の軸支持部材との一方を、前記建具の戸尻側の下端部となる部分に固定し、前記一の枢軸部材と前記一の枢軸部材との他方を、前記開口の下縁部に固定し、前記一の枢軸部材と前記一の枢軸部材との他方を固定する前に、前記建具が閉じている場合に前記建具が前記開口の内側に配され、且つ、前記建具の周縁部の内の戸先側の部分及び戸尻側の部分夫々と前記開口の周縁部との間に前記隙間が設けられるようにして、前記一の枢軸部材と前記一の枢軸部材との他方を固定する位置を求め、他の枢軸が設けられた他の枢軸部材と、前記他の枢軸が挿入される他の穴部が設けられた他の軸支持部材との一方を、前記建具の戸尻側の上端部となる部分に固定し、前記他の枢軸部材と前記他の軸支持部材との一方を前記建具に固定した後、前記他の枢軸を前記他の穴部に挿入することにより、前記他の枢軸部材と前記他の軸支持部材との一方に他方を取り付け、前記一の枢軸部材と前記一の枢軸部材との一方及び他方夫々の固定後、且つ、前記他の枢軸部材と前記他の軸支持部材との一方への他方の取り付け後、前記一の枢軸を前記一の穴部に挿入することにより、前記一の枢軸部材と前記一の軸支持部材との一方を他方に取り付け、前記一の枢軸部材と前記一の軸支持部材との一方への他方の取り付け後、前記他の枢軸部材と前記他の軸支持部材との他方を前記開口の上縁部に固定し、前記一の枢軸部材と前記一の軸支持部材との一方への他方の取り付け時に、前記建具の下端面と前記開口の下縁部との間及び前記建具の上端面と前記開口の上縁部との間夫々に前記隙間が設けられるようにすることを特徴とする。
【0029】
本開示にあっては、枢軸部材と軸支持部材との組を2つ用いることにより、建具及び壁体夫々に枢軸又は穴部を直接的に形成する場合に比べて、本開示に係る開閉構造を容易に施工することができる。
建具の上縁部については、枢軸部材と軸支持部材との一方を建具の上縁部に固定した後、枢軸部材と軸支持部材との他方を開口の上縁部に固定する前に、枢軸部材と軸支持部材との一方に他方を取り付ける。故に、作業者の目の高さよりも高い位置で枢軸部材の枢軸を軸支持部材の穴部に挿入する作業を行なう必要がない。即ち作業性を向上させることができる。
本開示に係る開閉構造の施工方法は、壁体に設けられた開口を枢戸式の建具が開閉する開閉構造を施工する方法において、前記建具が閉じている場合に前記建具が前記開口の内側に配され、空気が通流する隙間が前記建具の周縁部の全周と前記開口の周縁部の全周との間に設けられるようにして、前記建具を前記開口の周縁部に取り付け、前記建具を前記開口の周縁部に取り付けるために、一の枢軸が設けられた一の枢軸部材と、前記一の枢軸が挿入される一の穴部が設けられた一の軸支持部材との一方を、前記建具の戸尻側の下端部となる部分に固定し、前記一の枢軸部材と前記一の枢軸部材との他方を、前記開口の下縁部に固定し、前記一の枢軸部材と前記一の枢軸部材との他方を固定する前に、前記建具が閉じている場合に前記建具が前記開口の内側に配され、且つ、前記建具の周縁部の内の戸先側の部分及び戸尻側の部分夫々と前記開口の周縁部との間に前記隙間が設けられるようにして、前記一の枢軸部材と前記一の枢軸部材との他方を固定する位置を求め、他の枢軸が設けられた他の枢軸部材と、前記他の枢軸が挿入される他の穴部が設けられた他の軸支持部材との一方を、前記建具の戸尻側の上端部となる部分に固定し、前記他の枢軸部材と前記他の軸支持部材との一方を前記建具に固定した後、前記他の枢軸を前記他の穴部に挿入することにより、前記他の枢軸部材と前記他の軸支持部材との一方に他方を取り付け、前記一の枢軸部材と前記一の枢軸部材との一方及び他方夫々の固定後、且つ、前記他の枢軸部材と前記他の軸支持部材との一方への他方の取り付け後、前記一の枢軸を前記一の穴部に挿入することにより、前記一の枢軸部材と前記一の軸支持部材との一方を他方に取り付け、前記一の枢軸部材と前記一の軸支持部材との一方への他方の取り付け後、前記他の枢軸部材と前記他の軸支持部材との他方を前記開口の上縁部に固定し、前記一の枢軸部材と前記一の軸支持部材との一方への他方の取り付け時に、前記建具の下端面と前記開口の下縁部との間及び前記建具の上端面と前記開口の上縁部との間夫々に前記隙間が設けられるようにすることを特徴とする。
本開示に係る開閉構造の施工方法は、壁体に設けられた開口を枢戸式の建具が開閉する開閉構造を施工する方法において、前記建具が閉じている場合に前記建具が前記開口の内側に配され、空気が通流する隙間が前記建具の周縁部の全周と前記開口の周縁部の全周との間に設けられるようにして、前記建具を前記開口の周縁部に取り付け、戸尻框及び横框を備える框戸として構成された前記建具を前記開口の周縁部に取り付けるために、前記建具の枢支用の部材を前記戸尻框及び前記横框夫々に固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本開示の開閉構造、住宅、及び開閉構造の施工方法によれば、換気効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図2】
図1におけるII-II線による断面図である。
【
図3】
図1におけるIII-III線による断面図である。
【
図4】
図2におけるIV-IV線による断面図である。
【
図5】
図1におけるII-II線による拡大断面図である。
【
図6】開閉構造を施工する手順を説明するための模式図である。
【
図7】開閉構造を施工する手順を説明するための模式図である。
【
図8】開閉構造を施工する手順を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本開示の実施の形態について説明する。以下の説明では、図において矢符で示す上下、前後、及び左右を使用する。
【0033】
図1は実施の形態に係る住宅の正面図である。
図2は
図1におけるII-II線による断面図である。
図3は
図1におけるIII-III線による断面図である。
図中1は住宅である。
図1~
図3に示すように、住宅1は床11及び壁体12を備える。床11及び壁体12夫々は下地材が面材で覆われた構成を有し、住宅1の屋内に設けられている。
床11の上面は水平面である。壁体12は床11の上面に垂直である。
【0034】
壁体12には矩形状の開口13が設けられている。開口13の上縁部、左縁部、及び右縁部は壁体12の一部である。開口13の下縁部は床11の一部である。
開口13は、例えば居室14と廊下15とを連通するが、これに限定されず、例えば居室同士を連通してもよい。
図においては居室14の側が前側であり、廊下15の側が後側である。また、廊下15から居室14に向かって左側/右側が図における左側/右側である。
【0035】
なお、開口13の周縁部はドア枠、見切り材、巾木等で縁取られていてもよい。
図2及び
図3においては開口13の左縁部の内面(右向きの面)及び開口13の左縁部の内面(左向きの面)夫々に見切り材131が上下方向の全長にわたって設けられている。
【0036】
開口13を開閉するために、住宅1は建具2を備える。
建具2は一方向に長い矩形板状をなす。建具2は長手方向が上下に向くようにして用いられる。以下では建具2の短手方向を幅方向という。建具2の全長は開口13の高さ(下縁部の内面から上縁部の内面までの長さ)よりも適長短い。建具2の幅は開口13の間口(左縁部の内面から右縁部の内面までの長さ)よりも適長短い。
本実施の形態の建具2は縦勝ちの四方框戸であり、戸先框21、戸尻框22、下框23、上框24、及び鏡板25を備える。
【0037】
戸先框21は矩形断面を有する棒体であり、長手方向が上下に向くようにして戸先側の縦框として用いられる。戸先框21の戸尻側の側面には嵌め込み溝210が全長にわたって設けられている。嵌め込み溝210は建具2の厚さ方向の中央部に配されている。
以下では戸先框21の、建具2の幅方向/厚さ方向の長さを、戸先框21の幅/厚さという。
【0038】
図を簡単にするために、戸先框21は中実の棒体として図示されているが、軽量化のために、中空の棒体であることが望ましい。例えば戸先框21は軸長方向に長い四角筒状をなす。戸先框21の軸長方向の両端の開口は合成樹脂製のカバーにより閉鎖される。戸先框21の4つの側壁の内、3つはアルミニウム製の溝形部材により構成され、残る1つは合成樹脂製の帯板部材により構成される。戸先框21は、溝形部材が戸尻側に向き、帯板部材が戸先側に向くようにして用いられる。
【0039】
図4は
図2におけるIV-IV線による断面図である。
図1~
図4に示すように、戸尻框22は一方向に長い矩形状の板材であり、長手方向が上下に向き、幅方向が建具2の幅方向に沿うようにして、戸尻側の縦框として用いられる。戸尻框22の戸先側の端面には嵌め込み溝220が全長にわたって設けられている。
戸尻框22の厚さは戸先框21の厚さと同程度である。戸尻框22の幅は戸先框21の幅よりも広い。
戸尻框22は、例えば木材製(無垢材製又は木質材製)であり、フラッシュパネルでもよく、中実の板材でもよい。
【0040】
戸尻框22には下側凹部221(一の凹部)及び上側凹部222(他の凹部)が設けられている。下側凹部221は矩形状をなし、戸尻框22の下端部の戸先側の端面及び下面にわたって開口している。上側凹部222は矩形状をなし、戸尻框22の上端部の戸先側の端面及び上面にわたって開口している。下側凹部221及び上側凹部222は嵌め込み溝220の上端部及び下端部に連通している。
【0041】
下框23は矩形断面を有する棒体であり、長手方向が建具2の幅方向に沿うようにして下側の横框として用いられる。下框23の、建具2の厚さ方向の長さは、戸先框21の厚さと同程度である。
【0042】
下框23の上面には嵌め込み溝230が全長にわたって設けられている。下框23の戸尻側の端部には、上向きに開口する収容部231が設けられている。収容部231は、例えば下框23の上向きの側面に設けられた凹部である。
図を簡単にするために、下框23は中実の棒体として図示されているが、軽量化のために、中空の棒体であることが望ましい。下框23が矩形筒状の場合、収容部231は、例えば上向きの側壁を切り欠くことにより、下框23の内部空間を利用して設けることができる。
【0043】
下框23の戸先側の端部は戸先框21の下端部の戸尻側の面に固定(例えばビス留め)されている。下框23の戸尻側の端部は下側凹部221に挿入されて下側凹部221の内面に固定(例えばビス留め)されている。
【0044】
上框24は下框23と類似の構成である。ただし、上框24は上側の横框として用いられる。上框24の下面には嵌め込み溝240が全長にわたって設けられている。上框24の戸尻側の端部には、上向きに開口する収容部241が設けられている。上框24の戸先側の端部は戸先框21の上端部の戸尻側の面に固定されている。上框24の戸尻側の端部は上側凹部222に挿入されて上側凹部222の内面に固定されている。
【0045】
鏡板25は一方向に長い矩形状をなす透明な板材であり、例えば熱処理ガラス製である。鏡板25は戸先框21よりも薄い。鏡板25の戸先側の長辺部は戸先框21の嵌め込み溝210に緩衝材を介在して嵌め込まれている(後述する
図5参照)。同様に、鏡板25の戸尻側の長辺部、下辺部、及び上辺部は、嵌め込み溝220,230,220に嵌め込まれている。
【0046】
建具2は6本の横桟26を備える。各横桟26は矩形断面を有する棒体であり、長手方向が建具2の幅方向に沿うようにして、鏡板25の前面又は後面に配されている。鏡板25の前面には3本の横桟26が上下方向に適長離隔して並設されている。鏡板25の後面には前面側の3本の横桟26と同様にして3本の横桟26が並設されている。
本実施の形態の横桟26は装飾用であり、一側面が鏡板25に固定(例えば両面テープを用いて接着)されている。
【0047】
なお、横桟26の両端部が戸先框21及び戸尻框22に固定されてもよい。
横桟26の本数は6本に限定されない。また、複数本の横桟26が並設される構成に限定されず、例えば複数本の縦桟が並設されてもよく、複数本の横桟26と複数本の縦桟とが格子状に配されてもよい。
鏡板25は1枚のガラス板に限定されず、例えば合成樹脂製の板材でもよく、上下に並べられた複数枚の板材でもよい。鏡板25が上下に並べられた複数枚の板材である場合、横桟26が、隣り合うガラス同士を仕切ると共に上側のガラスの下縁部及び下側のガラスの上縁部を支持する構成でもよい。
【0048】
図1及び
図2に示すように、建具2は居室14側及び廊下15側に1つずつ指掛け部材27を備える。各指掛け部材27は一番下の横桟26と中央の横桟26との間に配されている。
以下では居室14側の指掛け部材27の構成について説明するが、廊下15側の指掛け部材27の構成も略同様である。
【0049】
図5は
図1におけるII-II線による拡大断面図であり、指掛け部材27の近傍を示している。
指掛け部材27は板状をなし、戸先框21の戸尻側の面から鏡板25に沿うようにして戸尻側に突出している。指掛け部材27は指掛け本体271及び指掛け基部272を一体に備える。
【0050】
指掛け本体271は、鏡板25に平行に配された矩形板である(
図1参照)。指掛け本体271と鏡板25との間には手指を挿入可能な空間が設けられている。建具2の厚さ方向について、指掛け本体271の居室14側の面は、戸先框21の居室14側の面よりも僅かに居室14側に突出している。
指掛け基部272は、指掛け本体271の戸尻側の一辺部から戸先框21に向けて延設された板であり、戸先框21の戸尻側の面に固定(
図5においてはビス留め)されている。
【0051】
図3及び
図4に示すように、建具2の下端面及び上端面は枢軸部材41(一の枢軸部材、枢軸部材)及び軸支持部材42(他の軸支持部材)が埋設されている。開口13の下縁部及び上縁部には軸支持部材43(一の軸支持部材、軸支持部材)及び枢軸部材44(他の枢軸部材)が設けられている。枢軸部材41、軸支持部材42、軸支持部材43、及び枢軸部材44夫々は建具2の枢支用の部材である。枢軸部材41と軸支持部材43とは互いに対応しており、建具2の戸尻側の下隅近傍に配される。軸支持部材43と枢軸部材44とは互いに対応しており、建具2の戸尻側の上隅近傍に配される。
【0052】
図4に示すように、枢軸部材41は、枢軸411(一の枢軸、枢軸)、ケーシング412、及び2つの固定片413を備える。枢軸411はケーシング412の内部にて図示しない軸受に回動可能に支持されている。枢軸411の軸長方向の一側はケーシング412の一面からケーシング412の外部に突出している。ケーシング412は、建具2の下端面から枢軸411が下向きに突出するようにして、下框23の収容部231に収容されている。2つの固定片413夫々はケーシング412の外面に予め固定されている。一方の固定片413は戸尻框22の下端面に固定(例えばビス留め)されている。同様に、他方の固定片413は下框23の下面に固定されている。
【0053】
軸支持部材42は、一面に穴部421(他の穴部)が設けられている部品本体422と、2つの固定片423とを備える。部品本体422は、穴部421が上向きに開口するようにして、上框24の収容部241に収容されている。2つの固定片413夫々は部品本体422からその上面に面一になるようにして延出している。一方の固定片413は戸尻框22の上端面に固定(例えばビス留め)されている。同様に、他方の固定片413は上框24の上面に固定されている。
【0054】
軸支持部材43は、穴部431(一の穴部、穴部)が設けられている板材である。軸支持部材43は、穴部431が上向きに開口するようにして、開口13の下縁部の内面に固定(例えばビス留め)されている。穴部431には枢軸部材41の枢軸411の下端部が挿入されている。穴部431に挿入された枢軸411は、軸支持部材43に対して相対的に静止する。このために枢軸411の下端部の断面及び穴部431夫々は例えば長円状をなす。
1枚の板材である軸支持部材43に比べて、枢軸部材41は上下方向及び下框23に沿う方向夫々に長い大型の部材である。
【0055】
枢軸部材44は、枢軸441(他の枢軸)及び基板442を備える。枢軸441は基板442の一面に垂直に突設されている。基板442は、枢軸441が下向きに突出するようにして、開口13の上縁部の内面に固定(例えばビス留め)されている。枢軸441の下端部は軸支持部材42の穴部421に遊びを有して挿入されている。穴部421に挿入された枢軸441は、穴部421の内周面に回動可能に支持される。図に示す穴部421は貫通孔であるが、非貫通孔であっても、穴部421の深さが枢軸441の全長に等しいか、より大きければよい。
【0056】
枢軸411,441は同軸に配されている。
図2に示すように、建具2は枢軸411,441を中心に揺動する枢戸式の建具である。建具2は、居室14側の一面が開口13の右縁部に当接するまで居室14側に開き、廊下15側の一面が開口13の右縁部に当接するまで廊下15側に開く。建具2の揺動範囲は、例えば256°である。
以上のように、壁体12に設けられた開口13を枢戸式の建具2が開閉する開閉構造が住宅1に設けられている。
【0057】
枢軸部材41が大型の部材である理由は、ケーシング412にコイルばね414が収容されているからである。
コイルばね414は枢軸411に係脱可能に係合する。建具2が閉じている場合、枢軸411は中立位置にあり、コイルばね414は枢軸411に係合している。
【0058】
建具2が開く場合、枢軸411は一方向に回転する。枢軸411に係合しているコイルばね414は、枢軸411を回転方向の逆方向に付勢する。この結果、回転した枢軸411が中立位置に戻るので、開かれた建具2は自動的に閉じる。
ただし、枢軸411が中立位置から所定の角度(例えば90°)以上回転した場合、枢軸411とコイルばね414との係合が解除される。枢軸411とコイルばね414との係合が解除されている場合、開かれた建具2はその位置で静止する。建具2に外力が加わることにより、枢軸411が中立位置から所定の角度未満まで回転すると、コイルばね414は再び枢軸411に係合する。
【0059】
建具2が閉じている場合、建具2は開口13の内側に配され、建具2の周縁部の全周と開口13の周縁部の全周との間に、空気が通流する隙間が設けられる。建具2の左端面と開口13の左縁部の内面との間の距離Aは、建具2の右端面と開口13の右縁部の内面との間の距離Bと同程度である。建具2の下端面と開口13の下縁部の内面との間の距離Cは、距離Aよりも長く、建具2の上端面と開口13の上縁部の内面との間の距離Dよりも短い(
図3参照)。
【0060】
このように、距離A~DにはA=B<C<Dの関係があることが望ましい。建具2の左端面と開口13の左縁部の内面との間の隙間と建具2の右端面と開口13の右縁部の内面との間の隙間とは何れも狭いので目立たない。建具2の下端面と開口13の下縁部の内面との間の隙間はやや広いが、足元にあるので目立たない。建具2の上端面と開口13の上縁部の内面との間の隙間は広いが、目の高さよりも上にあるので目立たない。以上の結果、建具2の周縁部と開口13の周縁部との間に隙間が設けられていることによる違和感を低減することができる。なお、A=B<C<Dに限定されるものではない。
【0061】
本実施の形態の開閉構造は、建具2が閉じている場合に建具2が開口13の内側に配され、空気が通流する隙間が建具2の周縁部の全周と開口13の周縁部の全周との間に設けられるようにして、建具2を開口13の周縁部に取り付けることによって得られる。以下では開閉構造を施工する手順の一例を説明する。
【0062】
図6~
図8は開閉構造を施工する手順を説明するための模式図である。
作業者は、建具2、枢軸部材41、軸支持部材42、軸支持部材43、及び枢軸部材44を準備する。
図6に示すように、作業者は枢軸部材41を建具2の戸尻側の下端部となる部分に固定する。具体的には、作業者は、建具2の下端面から枢軸411が下向きに突出するようにして、枢軸部材41のケーシング412を下框23の収容部231に収容し、2つの固定片413を戸尻框22の下端面及び下框23の下面夫々にビス留め固定する(
図8参照)。
【0063】
また、作業者は軸支持部材42を建具2の戸尻側の上端部となる部分に固定する。具体的には、作業者は、穴部421が上向きに開口するようにして、軸支持部材42の部品本体422を上框24の収容部241に収容し、2つの固定片423を戸尻框22の上端面及び上框24の上面にビス留め固定する。軸支持部材42の建具2への固定後、作業者は、枢軸部材44の枢軸441を軸支持部材42の穴部421に挿入して基板442を軸支持部材42の上面に載置することにより、枢軸部材44を軸支持部材42に着脱可能に取り付ける(
図8参照)。
【0064】
枢軸411,441を互いに同軸に配するために、作業者は、枢軸部材41及び軸支持部材42の建具2への固定前に、枢軸411と穴部421とが互いに同軸に配されるように枢軸部材41及び軸支持部材42夫々を位置決めする必要がある。穴部421への挿入により、枢軸部材44は容易に位置決めされ、枢軸411,441は互いに同軸に配される。
【0065】
次に作業者は、軸支持部材43の位置決めを行なってから、
図7に示すように穴部431が上向き気に開口するようにして軸支持部材43を開口13の下縁部の内面にビス留め固定する。作業者は、軸支持部材43を固定する位置を、建具2が閉じている場合に建具2が開口13の内側に配され、且つ、建具2の戸先側(及び戸尻側)の端面と開口13の左縁部(及び右縁部)の内面との間に所定の隙間が設けられるようにして求める。ここで、所定の隙間とは、建具2の戸先側の端面と開口13の左縁部の内面との離間距離が距離Aとなり、建具2の戸尻側の端面と開口13の右縁部の内面との離間距離が距離Bとなる隙間である。
枢軸部材41、軸支持部材42、及び軸支持部材43を固定する順番は限定されない。
【0066】
枢軸部材41、軸支持部材42、及び軸支持部材43夫々の固定後、且つ、枢軸部材44の軸支持部材42への取り付け後、作業者は
図8に示すように枢軸部材41を軸支持部材43に取り付ける。このために、作業者は枢軸部材41の枢軸411の下端部を軸支持部材43の穴部431に挿入する。
【0067】
枢軸411の穴部431への挿入により、枢軸411の下端が穴部431の内底面に接触する。この結果、枢軸部材41及び軸支持部材43が建具2の下端面と開口13の下縁部の内面との間に介在するスペーサとして機能する。建具2の下端面と開口13の下縁部の内面との間の距離Cは、枢軸411の、建具2の下端面からの突出長さと、穴部431の内底面の、開口13の下縁部の内面からの高さとの和に等しい。建具2の上端面と開口13の上縁部の内面との間の距離Dは、距離Cと建具2の全長との和を、開口13の高さから差し引いたものに等しい。
【0068】
枢軸部材44の枢軸441が基端部まで軸支持部材42の穴部421に挿入されているので、枢軸部材44の基板442の上面と開口13の上縁部の内面との間に空隙が形成される。
その後、作業者は枢軸部材44を持ち上げて基板442を開口13の内面にネジ留め固定する(
図4参照)。
【0069】
以上のような開閉構造の施工手順においては、建具2及び開口13の周縁部夫々に建具2を枢支するための枢軸又は穴部を直接的に形成する必要がないので、開閉構造を容易に施工することができる。
建具2の上縁部については、作業者の目の高さよりも高い位置で枢軸部材44の枢軸441を軸支持部材42の穴部421に挿入する作業を行なう必要がない。即ち作業性を向上させることができる。
【0070】
なお、建具2の下隅に軸支持部材が固定され、開口13の下縁部に枢軸部材が固定されてもよい。また、建具2の上隅に枢軸部材が固定され、開口13の上縁部に軸支持部材が固定されてもよい。
開閉構造の施工手順は前述の手順に限定されない。例えば開口13の上縁部に固定された軸支持部材に、建具2の上隅に固定された枢軸部材が、けんどん式に取り付けられてもよい。
【0071】
以上のような開閉構造によれば、建具2が閉じている場合でも、建具2の周縁部と開口13の周縁部との間に設けられた隙間を通して、居室14と廊下15との間で空気が通流する。この隙間は、建具2の全周と開口13の全周との間に設けられるので、空気の流通量が多い。故に、建具2が閉じているときの換気効率を向上させることができる。
【0072】
建具2は枢戸式であり、建具2が閉じている場合は開口13の内側に配される。しかも壁体12には戸当たりが設けられていない。故に、使用者は居室14側からでも廊下15側からでも建具2を押し開けることができる。建具2は両面夫々に指掛け部材27を備えるので、使用者は指掛け部材27と鏡板25との間に設けられる空間に手指を挿入することにより、指掛け部材27を用いて居室14側からでも廊下15側からでも建具2を引き開けることができる。従って、使用者の利便性を向上させることができる。
【0073】
また、開かれた建具2は居室14にも廊下15にも進入することができる。更に、建具2は開口13の右縁部(又は開口13の近傍に配された家具等)に当接するまで枢軸411,441を中心に揺動することができる。換言すれば、建具2の揺動範囲は広いので、建具2の開閉により開口13を通した空気の流通が自然に促進される。この結果、換気効率を更に向上させることができる。故に、本開示に係る開閉構造は、居室14が人の出入りが多い部屋(リビングルーム又はダイニングルーム等)である場合に特に好適である。
【0074】
本開示にあっては、枢軸部材41及び軸支持部材42を建具2に固定し、軸支持部材43及び枢軸部材44を開口13の周縁部に固定することにより、建具2及び壁体12夫々に枢軸又は穴部を直接的に形成する場合に比べて、開閉構造を容易に得ることができる。
【0075】
本開示にあっては、下框23の戸尻側の端部は戸尻框22の下側凹部221に挿入され、枢軸部材41は戸尻框22の下端部に固定されると共に下框23にも固定される。また、上框24の戸尻側の端部は戸尻框22の上側凹部222に挿入され、軸支持部材42は戸尻框22の上端部に固定されると共に上框24にも固定される。故に、戸尻框22と下框23及び上框24夫々とを互いに強固に連結することができる。
下側凹部221は戸尻框22の戸先側の面及び下端面にわたって開口しているので、下框23を下側凹部221に容易に挿入することができる。上側凹部222は戸尻框22の戸先側の面及び上端面にわたって開口しているので、上框24を上側凹部222に容易に挿入することができる。
【0076】
本開示にあっては、戸尻框22が戸先框21よりも幅広なので、戸尻框22の機械的強度の向上を図ることができ、延いては建具2の機械的強度の向上を図ることができる。
戸尻框22が戸先框21よりも幅広であることにより、建具2の外観を左右非対称にして意匠性の向上を図ることができる。
枢軸部材41及び軸支持部材42は何れも機械的強度が大きい戸尻框22に固定される。故に、枢軸部材41又は軸支持部材42が建具2に取り付けられることによる建具2の歪み、及び建具2が枢支されることによる建具2の歪みを防止することができる。
【0077】
本開示にあっては、指掛け部材27が戸先框21の戸尻側の面から鏡板25に沿うように突出するので、指掛け部材27が建具2から建具2の厚さ方向に突出する突出量を抑制することができる。故に、指掛け部材27が使用者の衣服に引っかかったり使用者に当接したりすることを抑制することができる。また、指掛け部材27が開口13の周縁部又は家具等に当接することによって建具2の揺動範囲を狭めることを抑制することができる。
【0078】
本開示にあっては、枢軸部材が、枢軸が建具2の下端面から下向きに突出するようにして建具2の下端面に埋設される。軸支持部材は、穴部が上向きに開口13するようにして開口13の下縁部に固定される。
枢軸は穴部に挿入され、枢軸411を除く枢軸部材41は建具2の下端面に埋設されるので、大型の部材である枢軸部材41が目隠しされる。小型の板状部材である軸支持部材43は目立ちにくい。以上の結果、開閉構造の美観を向上させることができる。
【0079】
本開示にあっては、鏡板25が透明なので、鏡板25を通して採光することができる。また、鏡板25を通して居室14側の空間から廊下15側の空間が視認可能であると共に、廊下15側の空間から居室14側の空間が視認可能である。故に、建具2を押し開ける場合の安全性を向上させることができる。
【0080】
本開示にあっては、住宅1の屋内に本開示の開閉構造が設けられているので、開口13を通した屋内の換気効率を向上することができる。このような住宅1は、屋内の全体的な空気調和(いわゆる全館空調)を行なう場合に特に好適である。
【0081】
建具2は縦勝ちの四方框戸に限定されず、例えば横勝ちの四方框戸、又は二方框戸でもよい。建具2は框戸に限定されず、例えばフラッシュ戸、又は一枚板で構成された戸でもよい。
本実施の形態において、枢支用の部材は戸尻框22及び横框(下框23又は上框24)の両方に固定されているが、何れか一方に固定されてもよい。横框の戸尻側の端部は戸尻框22に埋設されているが、これに限定されず、戸尻框22の戸先側の端面に固定されてもよい。横框の戸先側の端部は戸先框21に埋設されてもよい。
【0082】
戸尻框22は戸先框21よりも幅広であるが、逆に戸先框21が戸尻框22よりも幅広でもよい。また、戸先框21及び戸尻框22夫々の幅が互いに等しくてもよい。
建具2の透明な部分は鏡板25全体に限定されない。使用者が建具2を押し開ける場合に建具2の向こう側に他者が存在するか否かが容易に視認可能であればよいので、少なくとも鏡板25の下部(足元が見通せる部分)が透明であればよい。
【0083】
枢軸部材41及び軸支持部材43の組において、枢軸411は枢軸部材41側で回動可能に支持され、軸支持部材43側で固定的に支持されるが、逆に枢軸部材41側で固定的に支持され、軸支持部材43側で回動可能に支持されてもよい。同様に、軸支持部材42及び枢軸部材44の組において、枢軸441は軸支持部材42側で固定可能に支持され、枢軸部材44側で回動的に支持されてもよい。
【0084】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0085】
1 住宅
12 壁体
13 開口
2 建具
21 戸先框
22 戸尻框
221 下側凹部(一の凹部)
222 上側凹部(他の凹部)
23 下框
24 上框
25 鏡板(透明な部分)
27 指掛け部材
41 枢軸部材(一の枢軸部材、枢軸部材、枢支用の部材)
411 枢軸(一の枢軸、枢軸)
42 軸支持部材(他の軸支持部材、枢支用の部材)
421 穴部(他の穴部)
43 軸支持部材(一の軸支持部材、軸支持部材)
431 穴部(一の穴部、穴部)
44 枢軸部材(他の枢軸部材)
441 枢軸(他の枢軸)
【要約】
【課題】換気効率を向上させることができる開閉構造、住宅、及び開閉構造の施工方法を提供する。
【解決手段】本開示に係る開閉構造は、壁体12に設けられた開口13を枢戸式の建具2が開閉する開閉構造において、前記建具2が閉じている場合、前記建具2は前記開口13の内側に配され、前記建具2の周縁部の全周と前記開口13の周縁部の全周との間に、空気が通流する隙間が設けられることを特徴とする。本開示にあっては、建具2が閉じている場合でも、建具2の周縁部と壁体12の開口13の周縁部との間に設けられた隙間を通して、建具2の一面側の空間と他面側の空間との間で空気が通流する。この隙間は、建具2の全周と開口13の全周との間に設けられるので、空気の流通量が多い。故に、建具2が閉じているときの換気効率を向上させることができる。
【選択図】
図1