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特許7091558薬物がコーティングされたマイクロニードル及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】薬物がコーティングされたマイクロニードル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/08 20190101AFI20220620BHJP
   A61K 38/06 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 31/375 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 47/52 20170101ALI20220620BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20220620BHJP
   A61M 37/00 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20220620BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20220620BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
A61K38/08
A61K38/06
A61K31/375
A61K47/52
A61K9/00
A61M37/00 505
A61M37/00 520
A61K8/02
A61K8/64
A61K8/67
A61Q19/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021520888
(86)(22)【出願日】2018-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 KR2018016032
(87)【国際公開番号】W WO2020004745
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2020-12-22
(31)【優先権主張番号】10-2018-0076060
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520506497
【氏名又は名称】エスアール バイオテック インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】SR BIOTEK INC.
【住所又は居所原語表記】B101-3ho,B101-2ho,B101-1ho,JeB101ho Jeji1F,484,Dunchon-daero,Jungwon-gu,Seongnam-si Gyeonggi-do 13229,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ビュンホ
(72)【発明者】
【氏名】チョン,クァンテク
(72)【発明者】
【氏名】チ,ミンジェ
(72)【発明者】
【氏名】ナム,ダヨン
(72)【発明者】
【氏名】オム,ヘソン
(72)【発明者】
【氏名】キム,チヨン
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0064410(KR,A)
【文献】Proceedings of the 28th IEEE EMBS Annual International Conference,2006年,p.4088-4091
【文献】Advanced Drug Delivery Reviews,2003年,Vol.55,p.199-215
【文献】International Journal of Pharmaceutics,2014年,Vol.477,p.613-622
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00
A61K 47/00
A61M 37/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)シリカ(SiO)含有マイクロニードルの表面を改質して、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むシリカ(SiO)含有マイクロニードルを製造するステップと、
(b)薬物に、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むリンカーを結合させて、下記化学式2~8よりなる群から選択されるスルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含む薬物を製造するステップと、
(c)スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むシリカ(SiO)含有マイクロニードルと、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含む薬物とを酸化反応させるステップと、を含む、化学式1で表され、皮膚浸透後に酸化還元反応によって薬物が放出されることを特徴とする、薬物がコーティングされたマイクロニードルの製造方法。
[化学式1]
MN-S-S-D
(式中、MNはシリカ(SiO)含有マイクロニードルであり、S-Sはジスルフィド結合であり、Dは薬物である。)
[化学式2]:Lys-His-Gly-X
[化学式3]:Gly-His-Lys-X
[化学式4]:Ser-Lys-Thr-Thr-Lys-X
[化学式5]:Lys-Thr-Thr-Lys-Ser-X
[化学式6]:Arg-Arg-Gln-Met-Glu-Glu-X
[化学式7]:Glu-Glu-Met-Gln-Arg-Arg-X
[化学式8]:
(前記化学式2~8中、Xは、チオグリコール酸(Thioglycolic acid)及び11-メルカプトウンデカン酸(11-Mercaptoundecanoic acid)よりなる群から選択される1種以上である。)
【請求項2】
前記シリカ(SiO2)含有マイクロニードルが海綿動物由来の針状骨片であることを特徴とする、請求項1に記載の薬物がコーティングされたマイクロニードルの製造方法。
【請求項3】
前記シリカ(SiO2)含有マイクロニードルの表面改質は、
シリカ(SiO2)含有マイクロニードルに、3-メルカプトプロピル-メチルジメトキシシラン((3-Mercaptopropyl)methyldimethoxysilane)、3-メルカプトプロピル-トリメトキシシラン)(3-Mercaptopropyl)trimethoxysilane)、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン(N-[3-(Trimethoxysilyl)propyl]ethylenediamine)、チオグリコール酸(Thioglycolic acid、3-Mercaptopropionic acid)、11-メルカプトウンデカン酸(11-Mercaptoundecanoic acid)及び3,3’-ジチオジプロピオン酸(3,3’-Dithiodipropionic acid)よりなる群から選択される1種を攪拌させることを特徴とする、請求項1に記載の薬物がコーティングされたマイクロニードルの製造方法。
【請求項4】
前記スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むシリカ(SiO)含有マイクロニードルと、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含む薬物との酸化反応は、ヨウ素(Iodine)、リン酸カリウム(Potassium Phosphate)、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン(2,3-Dichloro-5,6-dicyano-p-benzoquinone、DDQ)、デヒドロアスコルビン酸(Dehydroascorbic acid)、過酸化水素(H)、及び酸素(O)よりなる群から選択される1種以上の酸化剤によって行われることを特徴とする、請求項1に記載の薬物がコーティングされたマイクロニードルの製造方法。
【請求項5】
スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むシリカ(SiO )含有マイクロニードルと、化学式2~8よりなる群から選択される1以上であるスルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含む薬物との結合で製造され、
化学式1で表され、皮膚浸透後に酸化還元反応によって薬物が放出されることを特徴とする、薬物がコーティングされたマイクロニードル。
[化学式1]
MN-S-S-D
(式中、MNはシリカ(SiO)含有マイクロニードルであり、S-Sはジスルフィド結合であり、Dは薬物である。)
[化学式2]:Lys-His-Gly-X
[化学式3]:Gly-His-Lys-X
[化学式4]:Ser-Lys-Thr-Thr-Lys-X
[化学式5]:Lys-Thr-Thr-Lys-Ser-X
[化学式6]:Arg-Arg-Gln-Met-Glu-Glu-X
[化学式7]:Glu-Glu-Met-Gln-Arg-Arg-X
[化学式8]:

(前記化学式2~8中、Xは、チオグリコール酸(Thioglycolic acid)及び11-メルカプトウンデカン酸(11-Mercaptoundecanoic acid)よりなる群から選択される1種以上である。)
【請求項6】
前記シリカ(SiO)含有マイクロニードルは海綿動物由来の針状骨片であることを特徴とする、請求項に記載のマイクロニードル。
【請求項7】
前記シリカ(SiO)含有マイクロニードルは、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を0.8×10-6mol/g~10×10-6mol/g含むことを特徴とする、請求項に記載のマイクロニードル。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか一項に記載のマイクロニードルを含む化粧品組成物。
【請求項9】
前記化粧品は、柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アンプル、ジェル、アイクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、スプレー及びパウダーよりなる群から選択されることを特徴とする、請求項に記載の化粧品組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物がコーティングされたマイクロニードル及びその製造方法に係り、より詳細には、皮膚の角質層を物理的に穿孔して薬物を送達する、薬物がコーティングされたマイクロニードル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、外部環境から人体を保護する、生化学的及び物理的に最も重要な組織であって、大きく表皮(epidermis)、真皮(dermis)及び皮下(hypodermis)に分けられる。皮膚の最外殻層である角質層は、皮膚の水分蒸発及び吸収調節機能と、化学物質、毒性物質、細菌などの侵入に対するバリア機能とがある。皮膚の角質層(Stratum Corneum)は、基底層(Basal layer)で生産されたケラチノサイト(Keratinocyte)が約14日かけて顆粒層まで上がってくる。顆粒層では、ケラトヒアリン(Keratohyalin)の作用により角質化が開始すると、細胞中の体液が抜け出して細胞は平坦な状態に角質化する。ケラチノサイトは、一日に数百万個ずつ皮膚から剥がれ落ち、新しいケラチノサイトに交換される。
【0003】
皮膚老化の兆候の一つは、死んだ細胞を脱落させる能力の低下により、細胞の再生サイクルが増加し、皮膚が活力及び弾力性を失ってしまうことである。これを改善するために、皮膚剥離術を用いて表皮層を除去することにより、基底層での細胞の再生を刺激してハリのある皮膚に戻そうとする努力が盛んに行われている。
【0004】
現在までに開発された角質除去用化粧品は、その角質除去方法によって大きく三つに区分される。一番目は、皮膚摩擦やレーザーなどの物理的な作用によって表皮を細かく削り取る方法であり、二番目は、角質溶解効果のあるAHA(Aalpha-Hydroxy Acid)、BHA(Beta-Hydroxy Acid)、尿素などの化学成分を用いる化学的方式であり、三番目は、角質除去機能を有するタンパク質分解酵素を用いて角質を剥皮させる方式である。これらの剥皮方法は、皮膚をまず剥ぎ取った後、皮膚自体の再生力を誘導する方式である。
【0005】
しかし、物理的な研磨の場合は、皮膚への適用の際に、かなりの刺激により皮膚が赤く腫れるか或いは激しい痛みを誘発するため、施術時に麻酔薬を使用するので、家庭用として使用し難いという問題点がある。また、化学的な剥皮の場合は、家庭用に使用することが難しいうえ、色素性皮膚異常変色、感染または傷跡などの永続的後遺症といった合併症を引き起こすおそれがあるという問題点がある。タンパク質分解酵素を用いた剥皮の場合は、高価で、保管上及び使用上の問題点があるので、家庭での使用に適さない。
【0006】
かかる問題点を解決するために、海綿動物骨片を化粧料組成物として活用する研究が行われた。韓国特許第0937389号公報は、過酸化水素溶液を用いて海綿動物から微細針を抽出するステップと、抽出された微細針の多孔性を向上させるステップと、多孔質が向上した微細針を、幹細胞由来物質と皮膚有効成分とが混合された溶液に浸漬させて、コーティングを行うステップと、微細針が浸漬された混合溶液を凍結乾燥させるステップと、を含む、スキンケア化粧品組成物の製造方法を開示しており、韓国特許第1810231号公報は、プロポリスエキス、ローヤルゼリーエキス、ユガネバナエキス、及び紅参エキスで構成された複合抽出物と、微細針粉末を有効成分として含むニキビ及びアトピー改善用化粧料組成物を開示しており、韓国特許第1854446号公報は、クロイゲエキスと微細針を含有する化粧料組成物を開示している。
【0007】
しかし、有効成分である薬物をマイクロニードルに浸漬コーティングさせるか或いは単純混合させる場合には、薬物によっては浸漬コーティング率が低いか、或いは皮膚浸透後に薬物が放出されないため、効果が微々たるという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明者らは、上述した問題点を解決するために努力した結果、ジスルフィド結合によって薬物と結合されたマイクロニードルを用いる場合、皮膚浸透後に酸化還元反応によって薬物が放出されるので、機能に優れるものの、皮膚透過性は低い薬物も効果的に送達することができるということを見出し、本発明の完成に至った。
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、薬物送達効果に優れたマイクロニードル及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、薬物送達効果に優れながらも使用が簡便であって、家庭でも使用可能な化粧品組成物を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的を達成するために、本発明は、(a)シリカ(SiO)含有マイクロニードルの表面を改質して、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むシリカ(SiO)含有マイクロニードルを製造するステップと、
(b)薬物に、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むリンカーを結合させて、下記化学式2~8よりなる群から選択されるスルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含む薬物を製造するステップと、
(c)スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むシリカ(SiO)含有マイクロニードルと、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含む薬物とを酸化反応させるステップと、を含む、化学式1で表され、皮膚浸透後に酸化還元反応によって薬物が放出されることを特徴とする、薬物がコーティングされたマイクロニードルの製造方法である。
[化学式1]
MN-S-S-D
(式中、MNはシリカ(SiO)含有マイクロニードルであり、S-Sはジスルフィド結合であり、Dは薬物である。)
[化学式2]:Lys-His-Gly-X
[化学式3]:Gly-His-Lys-X
[化学式4]:Ser-Lys-Thr-Thr-Lys-X
[化学式5]:Lys-Thr-Thr-Lys-Ser-X
[化学式6]:Arg-Arg-Gln-Met-Glu-Glu-X
[化学式7]:Glu-Glu-Met-Gln-Arg-Arg-X
[化学式8]:

(前記化学式2~8中、Xは、チオグリコール酸(Thioglycolic acid)及び11-メルカプトウンデカン酸(11-Mercaptoundecanoic acid)よりなる群から選択される1種以上である。)

【0014】
本発明において、前記シリカ(SiO)含有マイクロニードルの表面改質は、シリカ(SiO)含有マイクロニードルに、3-メルカプトプロピル-メチルジメトキシシラン((3-Mercaptopropyl)methyldimethoxysilane)、3-メルカプトプロピル-トリメトキシシラン)(3-Mercaptopropyl)trimethoxysilane)、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン(N-[3-(Trimethoxysilyl)propyl]ethylenediamine)、チオグリコール酸(Thioglycolic acid、3-Mercaptopropionic acid)、11-メルカプトウンデカン酸(11-Mercaptoundecanoic acid)及び3,3’-ジチオジプロピオン酸(3,3’-Dithiodipropionic acid)よりなる群から選択される1種を攪拌させることを特徴とする。
【0015】
本発明において、前記スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むシリカ(SiO)含有マイクロニードルと、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含む薬物との酸化反応は、ヨウ素(Iodine)、リン酸カリウム(Potassium Phosphate)、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン(2,3-Dichloro-5,6-dicyano-p-benzoquinone、DDQ)、デヒドロアスコルビン酸(Dehydroascorbic acid)、過酸化水素(H)、及び酸素(O)よりなる群から選択される1種以上の酸化剤によって行われることを特徴とする。
【0016】
本発明は、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むシリカ(SiO )含有マイクロニードルと、化学式2~8よりなる群から選択される1以上であるスルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含む薬物との結合で製造され、
化学式1で表され、皮膚浸透後に酸化還元反応によって薬物が放出されることを特徴とする、薬物がコーティングされたマイクロニードルである。
[化学式1]
MN-S-S-D
(式中、MNはシリカ(SiO)含有マイクロニードルであり、S-Sはジスルフィド結合であり、Dは薬物である。)
[化学式2]:Lys-His-Gly-X
[化学式3]:Gly-His-Lys-X
[化学式4]:Ser-Lys-Thr-Thr-Lys-X
[化学式5]:Lys-Thr-Thr-Lys-Ser-X
[化学式6]:Arg-Arg-Gln-Met-Glu-Glu-X
[化学式7]:Glu-Glu-Met-Gln-Arg-Arg-X
[化学式8]:

(前記化学式2~8中、Xは、チオグリコール酸(Thioglycolic acid)及び11-メルカプトウンデカン酸(11-Mercaptoundecanoic acid)よりなる群から選択される1種以上である。)
【0017】
本発明は、上記のマイクロニードルを含む化粧品組成物である
【0018】
前記化粧品は、柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アンプル、ジェル、アイクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、スプレー及びパウダーよりなる群から選択されることを特徴とする。
【0034】
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る薬物がコーティングされたマイクロニードルは、機能に優れるものの、皮膚透過性は低い薬物を効果的に送達することにより、美白、シワ改善、抗炎などの機能性化粧品素材として有用である。
【0036】
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明の一実施例によって精製されたシリカ(SiO)含有マイクロニードルのSEM及び顕微鏡写真である。
【0038】
図2】本発明の一実施例によって製造されたスルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むマイクロニードルのgあたりスルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基のモル数を測定して示すグラフである。
【0039】
図3】本発明の一実施例によって製造されたスルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含む薬物の細胞毒性を評価して示すグラフである。
【0040】
図4】本発明の一実施例によって製造されたスルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含む薬物のコラーゲン生成能を評価して示すグラフである。
【0041】
図5】スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基の種類によるマイクロニードルから分離された薬物のコラーゲン生成能を評価して示すグラフである。
【0042】
図6】GSH(glutathione)の含有量による薬物のコラーゲン生成能を評価して示すグラフである。
【0043】
図7】本発明の一実施例によって製造されたクリームのシワ改善効果を確認して示す顕微鏡写真である。
【0044】
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明では、機能に優れるものの、皮膚透過性は低い薬物を、マイクロニードルとジスルフィド結合させる場合、薬物がマイクロニードルと共に皮膚の角質層に浸透した後、酸化還元反応によって放出されるので、薬物を効果的に送達することができるということを確認しようとした。
【0046】
本発明では、海綿動物由来のマイクロニードルの表面を改質して、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むシリカ(SiO)含有マイクロニードルを製造し、薬物に、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むリンカーを結合させて、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含む薬物を製造した後、これらを酸化反応させて、最終的に、薬物がコーティングされたマイクロニードルを製造した。製造された薬物がコーティングされたマイクロニードルの細胞毒性及びコラーゲン生成能を確認した結果、細胞毒性はなく、コラーゲン生成効果に優れるということを確認した。
【0047】
したがって、本発明は、ある観点から、(a)シリカ(SiO)含有マイクロニードルの表面を改質して、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むシリカ(SiO)含有マイクロニードルを製造するステップと、(b)薬物に、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むリンカーを結合させて、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含む薬物を製造するステップと、(c)スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むシリカ(SiO)含有マイクロニードルと、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含む薬物とを酸化反応させるステップと、を含む、化学式1で表され、皮膚浸透後に酸化還元反応によって薬物が放出されることを特徴とする、薬物がコーティングされたマイクロニードルの製造方法に関する。
【0048】
[化学式1]
【0049】
MN-S-S-D
【0050】
化学式1中、MNはシリカ(SiO)含有マイクロニードルであり、S-Sはジスルフィド結合であり、Dは薬物である。
【0051】
【0052】
本発明において、シリカ(SiO)含有マイクロニードルは、海綿動物由来の針状骨片であるものを用いることができる。前記海綿動物としては、スポンジラ・ラクストリス(Spongilla lacustris)、スポンジラ・フラジリス(Spongilla fragilis)、エフィダチア・フルビアチリス(Ephydatia fluviatilis)などを例示することができるが、これらに限定されない。
【0053】
前記針状骨片の大きさは、特に制限されず、長さ約100~300μm及び幅約10~30μmのものを用いることができる。
【0054】
前記シリカ(SiO)含有マイクロニードルは、海綿動物由来の針状骨片の粉末を、硫酸及び水酸化ナトリウムを順次入れて撹拌、濾過、洗浄する精製過程を経たものを使用することが好ましい。図1は本発明の一実施例によって精製されたシリカ(SiO)含有マイクロニードルのSEM及び顕微鏡写真である。
【0055】
【0056】
ペプチドのように単独で皮膚浸透が難しい薬物を皮膚に浸透させるために、薬物をマイクロニードルに結合させなければならないが、このように薬物とマイクロニードルとをジスルフィド結合させるためには、薬物とマイクロニードルのそれぞれにスルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を導入しなければならない。
【0057】
まず、本発明では、シリカ(SiO)含有マイクロニードルの表面を改質して、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むシリカ(SiO)含有マイクロニードルを製造した。
【0058】
前記シリカ(SiO)含有マイクロニードルの表面改質は、シリカ(SiO)含有マイクロニードルに、3-メルカプトプロピル-メチルジメトキシシラン((3-Mercaptopropyl)methyldimethoxysilane)、3-メルカプトプロピル-トリメトキシシラン)(3-Mercaptopropyl)trimethoxysilane)、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン(N-[3-(Trimethoxysilyl)propyl]ethylenediamine)、チオグリコール酸(Thioglycolic acid、3-Mercaptopropionic acid)、11-メルカプトウンデカン酸(11-Mercaptoundecanoic acid)及び3,3’-ジチオジプロピオン酸(3,3’-Dithiodipropionic acid)よりなる群から選択される1種を攪拌させて製造することができる。
【0059】
このように製造されたシリカ(SiO)含有マイクロニードルは、マイクロニードルの形状、表面改質のためのメルカプトシランの種類及び反応条件によって異なり得るが、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を0.8×10-6mol/g~10×10-6mol/g含むことができ、マイクロニードルの表面積を考慮すると、2.0×10-6mol/gを超えて結合させることが好ましい。
【0060】
【0061】
また、本発明では、薬物に、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むリンカーを結合させて、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含む薬物を製造した。
【0062】
前記薬物は、皮膚に浸透して皮膚鎮静、活力増進、抗酸化、美白、保湿、皮膚再生、抗老化、抗炎、コラーゲン合成促進などの皮膚改善効果を向上させることができるものであれば、特に制限なく使用することができ、合成化合物だけでなく、ペプチドも使用することができる。
【0063】
前記スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むリンカーは、チオグリコール酸(Thioglycolic acid)、3-メルカプトプロピオン酸(3-Mercaptopropionic acid)、11-メルカプトウンデカン酸(11-Mercaptoundecanoic acid)、システイン(cysteine)などを例示することができるが、これらに限定されない。
【0064】
薬物としてペプチドを用いるとき、システインをリンカーとして用いると、アミノ酸配列及び構造によって特性が変わり得るので、チオグリコール酸(Thioglycolic acid)、3-メルカプトプロピオン酸(3-Mercaptopropionic acid)、11-メルカプトウンデカン酸(11-Mercaptoundecanoicacid)を用いることが好ましく、分子量の小さいチオグリコール酸(Thioglycolic acid)を用いることがより好ましい。
【0065】
本発明では、ペプチドまたは化合物薬物に、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むリンカーを結合させて製造したスルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含む薬物として、化学式2~8を例示しているが、これに限定されるものではない。
【0066】
[化学式2]:Lys-His-Gly-X
【0067】
[化学式3]:Gly-His-Lys-X
【0068】
[化学式4]:Ser-Lys-Thr-Thr-Lys-X
【0069】
[化学式5]:Lys-Thr-Thr-Lys-Ser-X
【0070】
[化学式6]:Arg-Arg-Gln-Met-Glu-Glu-X
【0071】
[化学式7]:Glu-Glu-Met-Gln-Arg-Arg-X
【0072】
[化学式8]:
【0073】
前記化学式2~8中、Xは、チオグリコール酸(Thioglycolic acid)、3-メルカプトプロピオン酸(3-Mercaptopropionic acid)、11-メルカプトウンデカン酸(11-Mercaptoundecanoic acid)及びシステイン(cysteine)よりなる群から選択される1種以上である。
【0074】
【0075】
本発明では、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むシリカ(SiO)含有マイクロニードルと、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含む薬物とを酸化反応させて、薬物がコーティングされたマイクロニードルを製造した。
【0076】
前記酸化反応のための酸化剤としては、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むシリカ(SiO)含有マイクロニードルと、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含む薬物とを酸化反応によって結合させることができるものであれば、特別な制限なしに使用することができ、ヨウ素(Iodine)、リン酸カリウム(Potassium Phosphate)、2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン(2,3-Dichloro-5,6-dicyano-p-benzoquinone、DDQ)、デヒドロアスコルビン酸(Dehydroascorbic acid)、過酸化水素(H)、酸素(O)などを例示することができる。
【0077】
本発明では、上記の方法で皮膚浸透後に酸化還元反応によって薬物が放出されることを特徴とする、薬物がコーティングされたマイクロニードルを製造した。
【0078】
したがって、本発明は、他の観点から、化学式1で表され、皮膚浸透後に酸化還元反応によって薬物が放出されることを特徴とする、薬物がコーティングされたマイクロニードルに関する。
【0079】
[化学式1]
【0080】
MN-S-S-D
【0081】
化学式1中、MNはシリカ(SiO)含有マイクロニードルであり、S-Sはジスルフィド結合であり、Dは薬物である。
【0082】
【0083】
また、本発明は、前記薬物がコーティングされたマイクロニードルを含む化粧品組成物に関する。
【0084】
前記薬物がコーティングされたマイクロニードルは、化粧品の種類によって異なるが、全体化粧品組成物に対して0.1~10.0重量%含まれ得る。
【0085】
前記化粧品としては、柔軟化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アンプル、ジェル、アイクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、スプレー、パウダーなどを例示することができるので、これに限定されるものではない。
【0086】
前記化粧品組成物は、それぞれの剤形において、前記薬物がコーティングされたマイクロニードルの他、剤形の種類または使用目的などに応じて、本発明に係る目的を阻害しない範囲内で他の成分が適切に配合できる。
【0087】
また、最終製品の品質または機能に応じて、当該分野で通常使用される脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤、ゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤(foaming agent)、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型または非イオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤、キレート化剤、保存剤、遮断剤、湿潤化剤、エッセンシャルオイル、染料、顔料、親水性または親油性活性剤、及び化粧品組成物で通常使用される任意の他の成分などの化粧料学または皮膚科学分野で通常使用される補助剤をさらに含むことができる。
【0088】
但し、前記補助剤及びその混合割合は、本発明に係る化粧料組成物の好ましい性質に影響を及ぼさないように適切に選択することが好ましい。
【0089】
【実施例
【0090】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されないのは、当業分野における通常の知識を有する者にとって自明である。
【0091】
【0092】
実施例1:薬物がコーティングされたマイクロニードルの製造
【0093】
1-1:シリカ(SiO)含有マイクロニードルの精製
【0094】
スポンジラ・フラジリス・レイディ(Spongilla fragilis Leidy)由来の針状骨片(289g)を硫酸(80g)と一緒に反応槽に入れて1時間攪拌した後、水を入れてさらに攪拌及び濾過した。針状骨片を水で洗浄し、さらに1~2時間撹拌し、NaOH及びHNOをそれぞれ入れて撹拌を行い、pH6~8に合わせた後、水で洗浄した。最終的に、エタノールで針状骨片を洗浄した後、濾過し、乾燥させた。
【0095】
【0096】
1-2:シリカ(SiO)含有マイクロニードルの表面改質
【0097】
精製された針状骨片(シリカ(SiO)含有マイクロニードル)にスルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を導入するために、加水分解反応及び脱アルコキシ反応を行った。
【0098】
1-2-1:加水分解反応を用いた表面改質
【0099】
下記[反応式1]に示すように、反応槽に精製されたマイクロニードル10g、3-メルカプトプロピル-トリメトキシシラン[(3-Mercaptopropyl)trimethoxysilane;MPTMS]0.1~3.0ml、水/エタノール混合液(50%エタノール)100gを添加した後、常温で4時間反応させた。反応物を洗浄した後、70℃で4時間減圧乾燥させ、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むシリカ(SiO)含有マイクロニードルを得た(No.1)。
【0100】
[反応式1]
【0101】

【0102】
【0103】
1-2-2乃至1-2-4:加水分解反応を用いた表面改質
【0104】
前記実施例1-2-1の条件で反応時間を8、16及び24時間に異ならせてそれぞれ反応させた。反応後、70℃で4時間減圧乾燥させて、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むシリカ(SiO)含有マイクロニードルを得た(No.2~4)。
【0105】
【0106】
1-2-5及び1-2-6:加水分解反応を用いた表面改質
【0107】
前記実施例1-2-1の条件で反応温度をそれぞれ40℃及び60℃に調節し、24時間反応させた。反応後、70℃で4時間減圧乾燥させて、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むシリカ(SiO)含有マイクロニードルを得た(No.5及び6)。
【0108】
【0109】
得られたスルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むシリカ(SiO)含有マイクロニードルのgあたりスルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基のモル数をEllman Assay方法によって分光光度計(Agilent 8453 UV Spectrophotometer)で測定し、表1及び図2に示した。
【0110】
【表1】
【0111】
表1及び図2から、反応温度及び反応時間に応じてMN1gの-SHモル数は0.9132~1.7344μmol/gであることが確認された。
【0112】
【0113】
1-2-7:脱アルコキシ反応を用いた表面改質
【0114】
下記[反応式2]に示すように、反応槽に、精製されたマイクロニードル5.02g、3-メルカプトプロピル-トリメトキシシラン[(3-Mercaptopropyl)trimethoxysilane;MPTMS]0.1~3.0ml及びトルエン50gを添加した後、90℃で4時間反応させた。反応物を洗浄した後、70℃で20時間減圧乾燥させ、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むシリカ(SiO)含有マイクロニードルを得た(No.1)。
【0115】
[反応式2]
【0116】

【0117】
【0118】
1-2-8乃至1-2-10:脱アルコキシ反応を用いた表面改質
【0119】
前記実施例1-2-7の条件で反応時間を8、16及び24時間に異ならせてそれぞれ反応させた。反応後、70℃で4時間減圧乾燥させて、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むシリカ(SiO)含有マイクロニードルを得た(No.2~4)。
【0120】
【0121】
1-2-11及び1-2-12:脱アルコキシ反応を用いた表面改質
【0122】
前記実施例1-2-7の条件で還流反応としてpH2~3で反応時間をそれぞれ16及び24時間に異ならせて反応させた。反応後、70℃で4時間減圧乾燥させて、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むシリカ(SiO)含有マイクロニードルを得た(No.5及び6)。
【0123】
【0124】
得られたスルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むシリカ(SiO)含有マイクロニードルのgあたりスルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基のモル数を、Ellman Assay方法によって分光光度計(Agilent 8453 UV Spectrophotometer)で測定し、表2及び図2に示した。
【0125】
【表2】
【0126】
表2及び図2から、反応温度及び反応時間に応じてMN1gの-SHモル数は0.9786~10.055μmol/gであることが確認された。
【0127】
【0128】
1-3:薬物とスルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むリンカーとの結合
【0129】
1-3-1:ペプチド薬物のリンカー結合
【0130】
本発明に使用されるアミノ酸の命名及び略語は、次のとおりに表記する。
【0131】
Lys:リシン/His:ヒスチジン/Gly:グリシン/Ser:セリン/Thr:スレオニン/Arg:アルギニン/Gln:グルタミン/Met:メチオニン/Glu:グルタミン酸
【0132】
【0133】
1-3-1-1:化学式2及び化学式3で表されるスルフヒドリル-トリペプチド(Sulfhydryl-Tripeptide)の製造
【0134】
下記(1)~(6)の方法及び[反応式3]のように同じ合成サイクルに応じて連続的にペプチドを縮合(カップリング)した。つまり、化合物2及び3のアミノ酸配列の順序で下記アミノ酸を反応容器に添加してペプチド結合を行い、最終的に、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を有するリンカー(X)[チオグリコール酸(Thioglycolic acid、TA)、3-メルカプトプロピオン酸(3-Mercaptopropionic acid、MPA)、11-メルカプトウンデカン酸(11-Mercaptoundecanoic acid、MUD)及びシステイン(cysteine、CS)]をそれぞれ添加してアミド結合を行い、化学式2及び化学式3で表されるスルフヒドリド-トリペプチド(Sulfhydryl-Tripeptide)を製造した。
【0135】
(1)DMF溶媒(10mL)で3回/ジクロロメタン(Dichloromethane、DCM)溶媒(10mL)で3回洗浄
【0136】
(2)20%(w/v)ピペリジンDMF溶液(3mL)を用いて10分間2回脱保護
【0137】
(3)DMF溶媒(10mL)で5回洗浄
【0138】
(4)Fmoc-アミノ酸を添加
【0139】
(5)縮合試薬を添加してアミノ酸活性化及び2時間縮合
【0140】
(6)DMF溶媒(10mL)で5回洗浄
【0141】
【0142】
[化学式2]:Lys-His-Gly-X
【0143】
[化学式3]:Gly-His-Lys-X
【0144】
[反応式3]
【0145】

【0146】
【0147】
1-3-1-2:化学式4及び化学式5で表されるスルフヒドリル-ペンタペプチド(Sulfhydryl-Pentapeptide)の製造
【0148】
[反応式4]及び前記1-3-1-1に記載されたペプチド合成方法によって、化学式4及び化学式5で表されるスルフヒドリル-ペンタペプチド(Sulfhydryl-Pentapeptide)を製造した。
【0149】
[化学式4]:Ser-Lys-Thr-Thr-Lys-X
【0150】
[化学式5]:Lys-Thr-Thr-Lys-Ser-X
【0151】
【0152】
[反応式4]
【0153】

【0154】
【0155】
1-3-1-3:化学式6及び化学式7で表されるスルフヒドリル-ヘキサペプチド(Sulfhydryl-Hexapeptide)の製造
【0156】
[反応式5]及び前記1-3-1-1に記載されたペプチド合成方法によって、化学式6及び化学式7で表されるスルフヒドリル-ヘキサペプチド(Sulfhydryl-Hexapeptide)を製造した。
【0157】
[化学式6]:Arg-Arg-Gln-Met-Glu-Glu-X
【0158】
[化学式7]:Glu-Glu-Met-Gln-Arg-Arg-X
【0159】
[反応式5]
【0160】

【0161】
【0162】
1-3-2:合成化合物薬物のリンカー結合
【0163】
[反応式6]に示すように、デヒドロアスコルビン酸(Dehydroascorbic acid)に、リパーゼと一緒に、スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を有するリンカー(X)[チオグリコール酸(Thioglycolic acid、TA)、3-メルカプトプロピオン酸(3-Mercaptopropionic acid、MPA)、11-メルカプトウンデカン酸(11-Mercaptoundecanoic acid、MUD)及びシステイン(cysteine)]を反応させ、還元して、化学式8で表されるスルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含む合成化合物を製造した。
【0164】
[化学式8]:
【0165】

【0166】
【0167】
[反応式6]
【0168】

【0169】
【0170】
1-4:薬物がジスルフィド結合されたマイクロニードルの製造
【0171】
実施例1-2で製造されたスルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含むシリカ(SiO)含有マイクロニードルと、実施例1-3で製造されたスルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含む薬物とを酸化反応によってジスルフィド結合させた。
【0172】
【0173】
1-4-1:ペプチド薬物の結合
【0174】
1-4-1-1:ヨウ素を用いた酸化反応ジスルフィド結合
【0175】
反応容器に、実施例1-2で製造されたスルフヒドリルマイクロニードル0.3gと精製水/エタノール(50%エタノール)5.0mLを入れ、60分間攪拌してマイクロニードルを均一に分散させた後、ヨウ素(Iodine、Iモル分子量253.81、東京化成工業製)を12.7μg(0.5μmol)添加し、実施例1-3-1で製造された化学式2~7のペプチド1.2μmolを添加した後、攪拌した。反応終了後、エタノール5.0mLで5回以上洗浄し、25℃で12時間減圧乾燥させて、ペプチドがジスルフィド結合されたマイクロニードルを製造した。
【0176】
【0177】
1-4-1-2:リン酸カリウムを用いた酸化反応ジスルフィド結合
【0178】
精製水/エタノール(50%エタノール)5.0mLの代わりに精製水5.0mLを使用し、ヨウ素(Iodine、Iモル分子量253.81、東京化成工業製)12.7μg(0.5μmol)の代わりにリン酸カリウム(KHPO、モル分子量136.06g/mol)40.8μg(0.3μmol)を使用した以外は、1-4-1-1と同様にして、ペプチドがジスルフィド結合されたマイクロニードルを製造した。
【0179】
【0180】
1-4-1-3:DDQを用いた酸化反応ジスルフィド結合
【0181】
精製水/エタノール(50%エタノール)5.0mLの代わりにジクロロメタン5.0mLを使用し、ヨウ素(Iodine、Iモル分子量253.81、東京化成工業製)12.7μg(0.5μmol)の代わりに2,3-ジクロロオ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン(略語:DDQ、モル分子量227.0g/mol)68.1μg(0.3μmol)を使用した以外は、1-4-1-1と同様にして、ペプチドがジスルフィド結合されたマイクロニードルを製造した。
【0182】
【0183】
1-4-1-4:ジヒドロアスコルビン酸を用いた酸化反応ジスルフィド結合
【0184】
精製水/エタノール(50%エタノール)5.0mLの代わりに0.2M酢酸ナトリウム緩衝液5.0mLを使用し、ヨウ素(Iodine、Iモル分子量253.81、東京化成工業製)12.7μg(0.5μmol)の代わりにデヒドロアスコルビン酸(Dehydroascorbic acid、モル分子量174.11g/mol)52.84μg(0.3μmol)を使用した以外は、1-4-1-1と同様にして、ペプチドがジスルフィド結合されたマイクロニードルを製造した。
【0185】
【0186】
1-4-1-5:過酸化水素を用いた酸化反応ジスルフィド結合
【0187】
精製水/エタノール(50%エタノール)5.0mLの代わりに0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液5.0mLを使用し、ヨウ素(Iodine、Iモル分子量253.81、東京化成工業製)12.7μg(0.5μmol)の代わりに30%過酸化水素10μLを使用した以外は、1-4-1-1と同様にして、ペプチドがジスルフィド結合されたマイクロニードルを製造した。
【0188】
【0189】
1-4-2:合成化合物薬物の結合
【0190】
1-4-2-1:ヨウ素を用いた酸化反応ジスルフィド結合
【0191】
反応容器に、実施例1-2で製造されたスルフヒドリルマイクロニードル0.3gと精製水/エタノール(50%エタノール)5.0mLを入れ、60分間攪拌してマイクロニードルを均一に分散させた後、ヨウ素(Iodine、Iモル分子量253.81、東京化成工業製)を12.7μg(0.5μmol)添加し、実施例1-3-2で製造された化学式8の化合物112.6μg(0.45μmol)を添加した後に攪拌した。反応終了後、精製水とエタノール5.0mLで5回以上洗浄し、70℃で12時間減圧乾燥させて、アスコルビン酸がジスルフィド結合されたマイクロニードルを製造した。
【0192】
【0193】
1-4-2-2:リン酸カリウムを用いた酸化反応ジスルフィド結合
【0194】
精製水/エタノール(50%エタノール)5.0mLの代わりに精製水5.0mLを使用し、ヨウ素(Iodine、Iモル分子量253.81、東京化成工業製)12.7μg(0.5μmol)の代わりにリン酸カリウム(KHPO、モル分子量136.06g/mol)40.8μg(0.3μmol)を使用した以外は、1-4-2-1と同様にして、アスコルビン酸がジスルフィド結合されたマイクロニードルを製造した。
【0195】
【0196】
1-4-2-3:DDQを用いた酸化反応ジスルフィド結合
【0197】
精製水/エタノール(50%エタノール)5.0mLの代わりにジクロロメタン5.0mLを使用し、ヨウ素(Iodine、Iモル分子量253.81、東京化成工業製)12.7μg(0.5μmol)の代わりに2,3-ジクロロ-5,6-ジシアノ-p-ベンゾキノン(略語:DDQ、モル分子量227.0g/mol)68.1μg(0.3μmol)を使用した以外は、1-4-2-1と同様にして、アスコルビン酸がジスルフィド結合されたマイクロニードルを製造した。
【0198】
【0199】
1-4-2-4:ジヒドロアスコルビン酸を用いた酸化反応ジスルフィド結合
【0200】
精製水/エタノール(50%エタノール)5.0mLの代わりに0.2M酢酸ナトリウム緩衝液5.0mLを使用し、ヨウ素(Iodine、Iモル分子量253.81、東京化成工業製)12.7μg(0.5μmol)の代わりにデヒドロアスコルビン酸(Dehydroascorbic acid、モル分子量174.11g/mol)52.84μg(0.3μmol)を使用した以外は、1-4-2-1と同様にして、アスコルビン酸がジスルフィド結合されたマイクロニードルを製造した。
【0201】
【0202】
1-4-2-5:過酸化水素を用いた酸化反応ジスルフィド結合
【0203】
精製水/エタノール(50%エタノール)5.0mLの代わりに0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液5.0mLを使用し、ヨウ素(Iodine、Iモル分子量253.81、東京化成工業製)12.7μg(0.5μmol)の代わりに30%過酸化水素10μLを使用した以外は、1-4-2-1と同様にして、アスコルビン酸がジスルフィド結合されたマイクロニードルを製造した。
【0204】
【0205】
実験例1:スルフヒドリル(Sulfhydryl、-SH)反応基を含む薬物のコラーゲン合成促進能の評価
【0206】
1-1:細胞株の選択及び培養
【0207】
韓国細胞株銀行から購入した繊維芽細胞(CCD-986SK)を培養皿上に接種した後、ペニシリン(100IU/mL)、ストレプトマイシン(100μg/mL)、10%FBS(fetal bovine serum)を含有するDMEM(Dulbecco’s Modifided Eagle’s Medium)培地を入れ、37℃を維持して、5%二酸化炭素を含む培養器内で培養した。
【0208】
【0209】
1-2:細胞毒性試験方法(CCK assay)
【0210】
繊維芽細胞(CCD-986SK)を24ウェル(または96ウェル)プレートにウェルあたり1.0×10(~5.0×10)個で分注した後、細胞培養条件で24時間培養した。培地を捨て、PBSで洗浄した後、10%FBSを含まない新しいDMEM培地に交換し、一定濃度の試験物質(GHK及びGHK-TA)を細胞に処理した後、24時間培養した。培養後には、CCKを培地の1/10だけ仕込み、ELISAリーダー450nmで測定し、その結果を図3に示した。
【0211】
図3に示すように、GHKペプチドは、70~200ppmの濃度で細胞生存率の平均が82.2%であり、GHK-TAは、70~200ppmの濃度で細胞生存率の平均が100.9%と安定的であることを確認することができた。
【0212】
【0213】
1-3:細胞株コラーゲン量の測定
【0214】
繊維芽細胞(CCD-986SK)を24ウェル(または96ウェル)プレートにウェルあたり1.0×10~5.0×10個で分注した後、細胞培養条件で24時間培養した。培地を捨て、PBSで洗浄した後、試験物質(トリペプチド(GHK)、実施例1-3-1-1で製造された(GHK)-TA、ペンタペプチド(KTTKS)、実施例1-3-1-2で製造された(KTTKS)-TA、ヘキサペプチド(EEMQRR)、実施例1-3-1-3で製造された(EEMQRR)-TA)及び新しいDMEM培地を入れ、24時間培養した。培養上澄み液を取り、コラーゲンの量を韓国の食品医薬品安全処のガイドラインに基づいて次のとおり測定し、その結果を図4に示した。
【0215】
抗体-PoDコンジュゲート溶液(Antibody-PoD conjugate solution)100μLをウェルに入れた後、培養液及び標準溶液20μLを入れ、37℃で3時間培養した。ウェルから培養液を除去した後、リン酸塩緩衝液(PBS)400μLで4回洗浄した。発色試薬(Procollagen type I peptide EIA kit、タカラバイオ株式会社製)100μLを入れ、常温で15分間培養し、1N硫酸100μLを入れた後、450nmでELISAリーダーで測定した。
【0216】
図4に示すように、GHKの場合、80ppm以下の濃度では、繊維芽細胞(Fibrolast、CCD-986sk)のコラーゲン合成及び促進が行われていないが、これに対し、スルフヒドリルGHK(GHK-TA)は、70~80ppmの濃度でもコラーゲン合成及び促進効果に優れている。このことから、GHKとスルフヒドリルGHK(GHK-TA)は同じ配列のアミノ酸がペプチドを成しているが、スルフヒドリル基を導入する場合、70~100ppmの低い濃度で機能が発現されるのに対し、GHKは相対的に高い濃度で効果が発現されることが分かった。
【0217】
KTTKSは、50~200ppmまで濃度に比例しながらコラーゲンの合成及び促進効果が増加した。KTTKSよりはスルフヒドリルKTTKS(KTTKS-TA)の効果がさらに優れた。
【0218】
EEMQRRは、チオグリコール酸(Thioglycolic acid、TA)をリンカーとして使用することが、システイン(cysteine、CS)をリンカーとして使用することよりもコラーゲンの合成及び促進効果に優れることが分かった。
【0219】
【0220】
実験例2:薬物がコーティングされたマイクロニードルのコラーゲン合成促進能の評価
【0221】
2-1:スルフヒドリル(-SH)反応基を有するリンカー(X)によるコラーゲン生成能
【0222】
実施例1-4で製造された薬物がコーティングされたマイクロニードル(GHK-TA-MN、GHK-MPA-MN、GHK-CS-MN)0.3g及び0.1MGSH(グルタチオン)40μlを用いて840分間マイクロニードルからペプチドを分離し、上澄み液を遠心分離した後、実験例1-3と同様の方法で、細胞内のコラーゲン生成促進能を評価し、その結果を図5に示した。
【0223】
図5に示すように、スルフヒドリル(-SH)反応基を有するリンカー(X)の種類に応じて、コラーゲン生成促進能の差があることが分かった。このような差は、スルフヒドリル(-SH)反応基を有するリンカーの分子量に起因したものと類推される。参考までに、リンカーの分子量はTA<CS<MPAの順であり、CSは側鎖にアミン基を有する。
【0224】
【0225】
2-2:GSH(グルタチオン)の濃度によるコラーゲン生成能
【0226】
実施例1-4で製造された薬物がコーティングされたマイクロニードル(GHK-MPA-MN、GHK-CS-MN、KTTKS-TA-MN、GHK-TA-MN)0.3gに0.1M GSH(グルタチオン)40μlを入れ、840分間マイクロニードルからペプチドを分離し、上澄み液を遠心分離した後、実験例1-3と同様の方法で、細胞内のコラーゲン生成促進能を評価し、その結果を図5に示した。
【0227】
また、実施例1-4で製造された薬物がコーティングされたマイクロニードル(GHK-MPA-MN、GHK-CS-MN、KTTKS-TA-MN、GHK-TA-MN)0.3gに0.1M GSH(グルタチオン)100μlを入れ、180分間マイクロニードルからペプチドを分離し、上澄み液を遠心分離した後、実験例1-3と同様の方法で、細胞内のコラーゲン生成促進能を評価し、その結果を図6に示した。
【0228】
図6に示すように、GSH(グルタチオン)を40μl使用する場合と100μl使用する場合のコラーゲン生成率は類似している。つまり、GSH(グルタチオン)は、ジスルフィド結合を分離するのに必要な最小量だけ存在すれば、マイクロニードルに結合された薬物が放出されてその効果を示すことができることが分かった。
【0229】
【0230】
製造例1:薬物がコーティングされたマイクロニードルを含む化粧品
【0231】
1-1:アンプルの製造
【0232】
下記表3の組成でクリームを製造した。
【0233】
【表3】
【0234】
【0235】
実験例3:薬物がコーティングされたマイクロニードルを含む化粧品の効能
【0236】
製造例1で製造されたアンプル(原料名:スポンジリアトリペプチド-1)を4週間、1日2回(朝、夕)皮膚に100ウォン硬貨の大きさだけ肌のキメに沿って滑らかに伸ばして塗り、軽く叩いて吸収させた。試料の適用2週目及び4週目に皮膚の変化を顕微鏡で確認し、その結果を図7に示した。
【0237】
図7に示すように、GHK-TA-MNを含むクリームは、シワ改善効果に優れることが分かった。
【0238】
【0239】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に説明したが、当業分野における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な技術は好適な実施態様に過ぎず、これに本発明の範囲が制限されないのは明らかである。よって、本発明の実質的な範囲は、添付された請求の範囲とそれらの等価物によって定義されるべきである。
【0240】
【産業上の利用可能性】
【0241】
本発明に係る薬物がコーティングされたマイクロニードルは、機能に優れるものの、皮膚透過性は低い薬物を効果的に送達することにより、美白、シワ改善、抗炎などの機能性化粧品素材として有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7