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特許7091562希土類磁石、希土類スパッタリング磁石、希土類拡散磁石及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】希土類磁石、希土類スパッタリング磁石、希土類拡散磁石及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/057 20060101AFI20220620BHJP
   H01F 41/02 20060101ALI20220620BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20220620BHJP
   B22F 3/00 20210101ALI20220620BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20220620BHJP
   B22F 9/04 20060101ALI20220620BHJP
   B22F 3/24 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
H01F1/057 170
H01F41/02 G
C22C38/00 303D
B22F3/00 F
B22F1/00 Y
B22F9/04 D
B22F9/04 E
B22F9/04 C
B22F3/24 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021534243
(86)(22)【出願日】2018-12-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-25
(86)【国際出願番号】 CN2018125316
(87)【国際公開番号】W WO2020133341
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-06-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515173194
【氏名又は名称】三環瓦克華(北京)磁性器件有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】515173183
【氏名又は名称】北京中科三環高技術股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING ZHONG KE SAN HUAN HI-TECH CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】27/F,Building A,No.66 East Road,Zhong Guan Cun,Haidian District,Beijing 100190,China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】陳国安
(72)【発明者】
【氏名】王浩頡
(72)【発明者】
【氏名】方彬
(72)【発明者】
【氏名】杜飛
(72)【発明者】
【氏名】王湛
(72)【発明者】
【氏名】趙玉剛
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-132628(JP,A)
【文献】特開2017-017121(JP,A)
【文献】特開2016-184720(JP,A)
【文献】特開2017-183318(JP,A)
【文献】国際公開第2018/180891(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106601407(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/057
H01F 41/02
C22C 38/00
B22F 3/00
B22F 1/00
B22F 9/04
B22F 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類磁石の結晶粒界相において、白色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の1~3%を占めて、灰色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の2~10%を占め、前記灰色結晶粒界相は、Nd Fe 13 Ga相、すなわち、6:13:1相であり、前記白色結晶粒界相は、R ~T~M相であり、R の原子百分率は30at%を超え、R は、希土類元素であり、Nd及び/又はPrを含み、TはFeおよび/またはCoならびに不可避の不純物元素であり、MはAl、Cu、Nb、Zr、Snのうちの少なくとも1つであり、
前記希土類磁石の成分は、質量百分率で、
Rの含有量は28~32wt%であり、RはDyとTbを含まない希土類元素であり、R中のPrおよび/またはNdの割合は98~100wt%であり、
Dyおよび/またはTbの含有量は0~2wt%であり、
Mの含有量は0.1~1.4wt%であり、MはAl、Cu、Nb、Zr、Snのうちの少なくとも1つであり、
Gaの含有量は0.3~0.8wt%であり、
Bの含有量は0.96wt%~1.0wt%であり、
残りはTであり、TはFeおよび/またはCoならびに不可避の不純物元素であことを特徴とする希土類磁石。
【請求項2】
前記MがAlおよびCuであり、前記希土類磁石中のAlの含有量が0.05~1wt%であり、Cuの含有量が0.05~0.3wt%である、ことを特徴とする、請求項に記載の希土類磁石。
【請求項3】
希土類磁石の製造方法であって、
A.主合金粉末と補助合金粉末を95~99:1~5の質量比で混合し、混合合金粉末を得ることであって、主合金の各元素の質量比は、R28~320.1~1.4Ga0.3~0.80.97~1.0(DyTb)0~2balであり、補助合金の各元素の質量比はR31~350~1.4Ga0.5~0.80.82~0.92(DyTb)0~2balであり、ここでRはDyとTbを含まない希土類元素であり、R中のPrおよび/またはNdの割合は98~100wt%であり、MはAl、Cu、Nb、Zr、Snのうちの少なくとも1つの元素であり、TはFeおよび/またはCoならびに不可避の不純物元素である、混合合金粉末を得ることと、
B.磁場下で前記混合合金粉末を配向させ、プレスしてコンパクトを形成することと、
C.前記コンパクトを真空焼結炉に入れて焼結し、焼結磁石を得ることと、
D.前記焼結磁石を焼き戻して、前記希土類磁石を得ることであって、前記ステップDの焼戻し処理が、
800℃~950℃の温度で、2~6時間保温する、一次焼戻し処理と、
470℃~520℃の温度で、2~8時間保温する、二次焼戻し処理とを含む、前記希土類磁石を得ることとを含む、ことを特徴とする、希土類磁石の製造方法。
【請求項4】
MがAlおよびCuであり、前記希土類磁石中のAlの含有量が0.05~1wt%であり、Cuの含有量が0.05~0.3wt%である、ことを特徴とする、請求項に記載の希土類磁石の製造方法。
【請求項5】
希土類拡散磁石の結晶粒界相において、白色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の1~3%を占め、灰色結晶粒界相の面積が、微細構造観察領域の総面積の2~4%を占め、前記希土類拡散磁石の最大磁気エネルギー積(BH)maxと固有保磁力Hcjの合計値が75を超えて、最大磁気エネルギー積(BH)maxの単位はMGOeであり、前記固有保磁力Hcjの単位がkOeであり、前記灰色結晶粒界相は、Nd Fe 13 Ga相、すなわち、6:13:1相であり、前記白色結晶粒界相は、R ~T~M相であり、R の原子百分率は30at%を超え、R は、希土類元素であり、Nd及び/又はPrを含み、TはFeおよび/またはCoならびに不可避の不純物元素であり、MはAl、Cu、Nb、Zr、Snのうちの少なくとも1つである、ことを特徴とする希土類拡散磁石。
【請求項6】
希土類拡散磁石の製造方法であって、
A.主合金粉末と補助合金粉末を95~99:1~5の質量比で混合し、混合合金粉末を得ることであって、主合金の各元素の質量比は、R28~320.1~1.4Ga0.3~0.80.97~1.0(DyTb)0~2balであり、補助合金の各元素の質量比はR31~350~1.4Ga0.5~0.80.82~0.92(DyTb)0~2balであり、ここでRはDyとTbを含まない希土類元素であり、R中のPrおよび/またはNdの割合は98~100wt%であり、MはAl、Cu、Nb、Zr、Snのうちの少なくとも1つの元素であり、TはFeおよび/またはCoならびに不可避の不純物元素である、混合合金粉末を得ることと、
B.磁場下で前記混合合金粉末を配向させ、プレスしてコンパクトを形成することと、
C.前記コンパクトを真空焼結炉に入れて焼結し、焼結磁石を得ることと、
E.前記焼結磁石または焼戻し処理した前記焼結磁石を機械加工して、基材を得ることと、
F.前記基材をスパッタし、最初に第1のターゲットをスパッタリングして基材の表面に第一のめっき層を形成し、次に第二のターゲットをスパッタリングして第一のめっき層の表面に第二のめっき層を形成して希土類スパッタリング磁石を得ることであって、
前記第一のめっき層はNdめっき層またはPrめっき層、或いはNd、Pr、Cuのうちの少なくとも2つ以上の合金めっき層であり、前記第二のめっき層はTbめっき層である、希土類スパッタリング磁石を得ることと、
G.前記希土類スパッタリング磁石を結晶粒界拡散処理して、希土類拡散磁石を得ることであって、前記結晶粒界拡散処理が、
750℃~1000℃の温度で1時間~10時間保温する、一次拡散処理と、
450℃~520℃の温度で1時間~10時間の保温する、二次拡散処理とを含む、希土類拡散磁石を得ることとを含む、ことを特徴とする、希土類拡散磁石の製造方法。
【請求項7】
前記ステップFで、前記基材の表面にスパッタリングした前記第一のめっき層の厚さが1~2μmであり、スパッタリングした前記第二のめっき層の厚さが2~12μmであり、前記ステップFで、配向方向に垂直な基材の表面をスパッタする、ことを特徴とする、請求項に記載の希土類拡散磁石の製造方法。
【請求項8】
前記ステップFが、第二のターゲットをスパッタリングし、次に第三のターゲットをスパッタリングして、第二のめっき層の表面に第三のめっき層を形成することをさらに含み、第三のめっき層はDyめっき層であり、
第一のめっき層の厚さが1~2μmであり、第二のめっき層の厚さが2~10μmであり、第三のめっき層の厚さが1~2μmである、ことを特徴とする、請求項に記載の希土類拡散磁石の製造方法。
【請求項9】
MがAlおよびCuであり、希土類磁石中のAlの含有量が0.05~1wt%であり、Cuの含有量が0.05~0.3wt%である、ことを特徴とする、請求項に記載の希土類拡散磁石の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希土類磁石に関し、特に、希土類磁石、希土類スパッタリング磁石、希土類拡散磁石、その製造方法及び希土類永久磁石モーターに関する。
【背景技術】
【0002】
焼結Nd―Fe―Bは、これまで人類が発見したエネルギー密度が最も高い永久磁石であり、大規模な商業生産を実現した。焼結Nd―Fe―Bマグネットは、コンピューターハードディスク、ハイブリッドカー、医療、風力発電など多くの分野で広く使用されており、その適用範囲と産出量が年々増加している。特に新エネルギー車の分野では、焼結Nd―Fe―Bマグネットは、ある高温環境にあることが求められると同時に、永久磁石は軽量であることが求められるため、高い残留磁気だけでなく、高い保磁力も求められる。
【0003】
従来の技術では、磁気エネルギー積と固有保磁力の合計がより高い磁石を得るために、DyおよびTbを使用してNdを部分的に置き換えて保磁力を増加させた。ただし、重い希土類のDyとTbの埋蔵量は少なく、高価であり、残留磁気を減少させる。さらに、DyとTbは希土類政策の影響を受けやすいため、価格が不安定になり、コストが大幅に変動する。
【0004】
別の方法は、原材料の磁石のBの含有量を減らす同時に、Ga、Al、およびCuの1つまたは複数の金属元素を追加し、焼き戻しプロセス中に添加されたGa、Al、およびCuの1つまたは複数の金属元素が、希土類とFeなどの遷移金属とが形成されたNdFe17相(2:17相)と反応して、NdFe13Ga相(6:13:1相)を形成された。Dyの使用量を減らすと、高い残留磁気と高い保磁力を備えた高性能磁石が得られる。ただし、上記の方法で、大量生産において、NdFe13Ga相を十分に生成できない場合、NdFe17相が磁石に存在するため、保磁力が低くなり、同じバッチで生成される磁石の固有保磁力偏差が大きくなる。さらに、低B含有量の磁石が重い希土類Dy、Tbを拡散させると、保磁力の増加が少なくなり、拡散後の減磁曲線の角形度が悪くなる。
【発明の概要】
【0005】
上記の問題を解決するために、本発明は、希土類磁石、希土類スパッタリング磁石、希土類拡散磁石及びその製造方法、希土類永久磁石モーターを提案する。二重合金法を用いて希土類磁石が製造られることで、主合金と補助合金のGaとB元素の含有量を制御し、磁石の保磁力を高め、DyやTbなどの重い希土類元素の使用を減らした。同時に、大量生産では、磁石の性能の一貫性が確保され、高い残留磁気と高い保磁力を備えた高性能磁石を製造することができる。
【0006】
本発明は、希土類磁石の製造方法を提供する。当該製造方法は、以下のステップが含まれる。
【0007】
A.主合金粉末と補助合金粉末を95~99:1~5の質量比で混合し、混合合金粉末を得る。主合金の各元素の質量比は、R28~32 0.1~1.4Ga0.3~0.80.97~1.0(DyTb)0~2 balであり、補助合金の各元素の質量比はR31~35 0~1.4Ga0.5~0.80.82~0.92(DyTb)0~2balである。ここでRはDyとTbを含まない希土類元素であり、R中のPrおよび/またはNdの割合は98~100wt%であり、MはAl、Cu、Nb、Zr、Snの少なくとも1つの元素であり、TはFeおよび/またはCo、および不可避の不純物元素である。
【0008】
B.磁場下で混合合金粉末を配向させ、プレスしてコンパクトを形成する。
【0009】
C.前記コンパクトを真空焼結炉に入れて焼結し、焼結磁石を得る。
【0010】
D.前記焼結磁石を焼き戻して、前記希土類磁石を得る。
【0011】
前記希土類磁石の製造方法において、MはAlおよびCuであり、希土類磁石中のAlの含有量は0.05~1wt%であり、Cuの含有量は0.05~0.3wt%である。
【0012】
前記希土類磁石の製造方法おいて、前記ステップAの前には、各元素の質量比に応じて主合金原料および補助合金原料を作製し、主合金原料および補助合金原料をそれぞれクイックセット処理して、主合金フレークおよび補助合金フレークが得られ、主合金フレークおよび補助合金フレークに対して、それぞれ水素粉砕および研磨を行い、主合金粉末および補助合金粉末が得られるステップを含む。
【0013】
上記の希土類磁石の製造方法におけるステップDの焼き戻し処理は、一次焼き戻し処理及び二次焼き戻し処理が含まれる。なお、一次焼き戻し処理が800℃~950℃の温度で2~6時間保持することであり、および二次焼き戻し処理が470℃~520℃の温度で2~8時間保持することである。
【0014】
本発明は、希土類スパッタリング磁石の製造方法をさらに提供する。本発明は、以下のステップを含むことを特徴とする。
【0015】
E.上記の焼結磁石または希土類磁石を機械加工して、基材を得る。
【0016】
F.基材をスパッタし、最初に第一ターゲットをスパッタして基材の表面に第一めっき層を形成し、次に第二ターゲットをスパッタして第一めっき層の表面に第二めっき層を形成し、希土類スパッタリング磁石を取得します。第一めっき層はNdめっき層、またはPrめっき層、またはNd、Pr、およびCuのうちの少なくとも2つ以上の合金めっき層であり、第二めっき層はTbめっき層である。
【0017】
希土類スパッタリング磁石の作製方法のステップFにおいて、基材上にスパッタされた第一めっき層の厚さは1~2μmであり、スパッタされた第二めっき層の厚さは2~12μmである。
【0018】
希土類スパッタリング磁石の作製方法のステップFにおいて、配向方向に垂直な基材の表面をスパッタする。
【0019】
希土類スパッタリング磁石を作製する方法のステップFは、第二ターゲットをスパッタリングし、次に第三ターゲットをスパッタリングして第二のめっき層の表面に第三のめっき層を形成することをさらに含み、第三のめっき層はDyめっき層である。
【0020】
上記の希土類スパッタリング磁石の作製方法において、第一のめっき層の厚さは1~2μm、第二のめっき層の厚さは2~10μm、第三のめっき層の厚さは1~2μmである。
【0021】
本発明はまた、以下のステップを含む、希土類拡散磁石の作製方法を提供する。
【0022】
G.希土類スパッタリング磁石に結晶粒界拡散処理を行い、希土類拡散磁石を得る。
【0023】
上記の希土類拡散磁石の作製方法において、結晶粒界拡散処理は、一次拡散処理:750℃~1000℃で1時間~10時間の保温、二次拡散処理:450℃~520℃で1時間~10時間の保温を含む。
【0024】
本発明はまた、上記の希土類磁石の作製方法によって作製された希土類磁石を提供し、その成分は、質量パーセントで、Rの含有量は28~32重量%であり、Rは、DyおよびTbを含まない希土類元素であり、R中には、Prおよび/またはNdの割合は98~100wt%であり、Dyおよび/またはTbの含有量は0~2wt%であり、Mの含有量は0.1~1.4wt%であり、MはAl、Cu、Nb、Zr、Snの少なくとも1つであり、Ga含有量は0.3~0.8wt%、B含有量は0.96~1.0wt%、残りはTであり、TはFeおよび/またはCoおよび不可避の不純物元素である。
【0025】
上記の希土類磁石では、Ga含有量は0.5~0.8wt%である。
【0026】
上記の希土類磁石では、MはAlおよびCuであり、希土類磁石中のAlの含有量は0.05~1wt%であり、Cuの含有量は0.05~0.3wt%である。
【0027】
本発明はまた、上記希土類スパッタリング磁石の製造方法によって作製された希土類スパッタリング磁石を提供し、ここで、基材の表面上に複合めっき層を形成して希土類スパッタリング磁石が得られる;複合めっき層は、第1のめっき層および第二のめっき層を含む。第一のめっき層は基材の表面に堆積され、第一のめっき層はNdめっき層、またはPrめっき層、またはNd、Pr、およびCuのうちの少なくとも2つ以上の合金めっき層であり;第二のめっき層は第一のめっき層の外面において配置され、第二のめっき層はTbめっき層である。
【0028】
上記希土類スパッタリング磁石では、第一のめっき層の厚さは1~2μmであり、第二のめっき層の厚さは2~12μmである。
【0029】
上記希土類スパッタリング磁石において、複合めっき層はさらに第三めっき層を含み、第三めっき層はDyめっき層であり、第三めっき層は第二めっき層の外面に配置されている。
【0030】
上記希土類スパッタリング磁石では、第一めっき層の厚さは1~2μm、第二めっき層の厚さは2~10μm、第三めっき層の厚さは1~2μmである。
【0031】
本発明はまた、希土類拡散磁石を提供し、希土類スパッタリング磁石に対して熱拡散処理を実行して、希土類拡散磁石を得る。
【0032】
好ましくは、前記希土類拡散磁石の最大磁気エネルギー積(BH)max(単位:MGOe)と固有保磁力Hcj(単位:kOe)の合計値が75を超える。
【0033】
希土類磁石の結晶粒界相では、白い結晶粒界相面積が微細構造観測領域の総面積の1~3%を占め、灰色結晶粒界相面積が微細構造観測領域の総面積の2~10%を占める。
【0034】
最大磁気エネルギー積(BH)maxと固有保磁力Hcjの合計が75を超える希土類拡散磁石の結晶粒界相では、白い結晶粒界相面積が微細構造観測領域の総面積の1~3%を占め、灰色の結晶粒界相面積が微細構造観察領域の総面積の2~4%を占める。
【0035】
本発明はまた、ステーターおよびローターを有する希土類永久磁石モーターを提供し、ここで、ステーターまたはローターは、上記の希土類磁石を使用することによって作製される。
【0036】
本発明はまた、ステーターおよびローターを有する希土類永久磁石モーターを提供し、ここで、ステーターまたはローターは、上記の希土類拡散磁石で作製される。
【0037】
本発明の希土類磁石、希土類スパッタリング磁石、希土類拡散磁石および作製方法、ならびに希土類永久磁石モーターは、二重合金プロセスを採用して希土類磁石を作製し、主合金および補助合金中の希土類元素、GaおよびB元素の含有量を制御することにより、希土類磁石の保磁力を改良する。 DyやTbなどの重い希土類元素の使用を削減すると同時に、大量生産において、磁石の性能の一貫性がよいことが確保され、かつ減磁曲線の角形度が良好で、高い残留磁気と高い保磁力を備えた高性能磁石が作製される。希土類磁石の表面に複数の希土類ターゲットをスパッタリングして新しいタイプの複合めっき層を形成し、熱拡散処理を行った後、保磁力を大幅に向上させ、残留磁気をわずかに低減し、超高性能磁石を得ることができる。
【0038】
本発明の希土類永久磁石モーターのローターまたはステーターは、上記の希土類磁石または希土類拡散磁石を使用し、高性能モーターを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】本発明の実施例の希土類スパッタリング磁石の構造の模式図である。
図2】走査型電子顕微鏡EDS分析を通して配向方向に垂直な断面に沿って取られた、本発明の実施例1の希土類磁石の4000倍のBSE電子画像である。
図3】走査型電子顕微鏡分析を通して配向方向に垂直な断面に沿って取られた、本発明の実施例1の希土類磁石の8000倍のBSE電子画像1である。
図4】走査型電子顕微鏡分析を通して配向方向に垂直な断面に沿って取られた、本発明の実施例1の希土類磁石の8000倍のBSE電子画像2である。
図5】走査型電子顕微鏡分析を通して配向方向に垂直な断面に沿って取られた、本発明の実施例1の希土類磁石の8000倍のBSE電子画像3である。
図6】走査型電子顕微鏡分析を通して配向方向に垂直な断面に沿って取られた、本発明の比較実施例1の希土類磁石1の4000倍のBSE電子画像である。
図7】走査型電子顕微鏡分析を通して配向方向に垂直な断面に沿って取られた、本発明の比較実施例1の希土類磁石2の4000倍のBSE電子画像である。
図8】走査型電子顕微鏡分析を通して配向方向に垂直な断面に沿って取られた、本発明の実施例7の焼き戻し後の希土類磁石の4000倍のBSE電子画像である。
図9】走査型電子顕微鏡分析を通して配向方向に垂直な断面に沿って取られた、本発明の実施例7の希土類拡散磁石の4000倍のBSE電子画像である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明およびその各利点をよりよく理解するために、添付の図面および実施例を利用して本発明の実施形態をより詳細に説明する。しかしながら、以下に記載される特定の実施形態および実施例は例示にすぎず、本発明を限定するものではない。
【0041】
本発明で言及される「接続」は、他に明確に指定または限定されない限り、広い意味で理解されるべきであり、それは、直接接続されるか、または中間体を介して接続され得る。なお、本発明の説明において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「「上端」、「下端」などによって示される方位または位置関係は、添付図面に基づいて示される方位または位置関係である。これは、参照されるデバイスまたは素子が特定の方向を有しなければならなく、特定の方位で構築および操作されなければならないことを示したり暗示したりするのではなく、本発明を説明し、説明を単純化するための便宜のためだけである。本発明の限定として理解すべきではない。
【0042】
本発明の実施形態は、希土類磁石を提供し、希土類磁石の組成は、R、M、T、Ga、およびBを含む。各成分の質量百分率は次のとおりです。Rの含有量は28~32wt%であり、RはDyおよびTbを含まない希土類元素であり、Prおよび/またはNdはRの98~100wt%を占め、Dyおよび/またはTbの含有量は0~2wt%であり; Mの含有量は0.1~1.4wt%であり、MはAl、Cu、Nb、Zr、Snの少なくとも1つであり; Gaの含有量は0.3~0.8wt%であり、好ましくはGaの含有量は0.5~0.8 wt%であり; Bの含有量は0.96~1.0wt%であり;残りはTであり、TはFeおよび/またはCoおよび不可避の不純物元素である。上記の希土類磁石において、MはAlおよびCuであり、希土類磁石中のAlの含有量は0.05~1wt%であり、Cuの含有量は0.05~0.3wt%である。
【0043】
この実施形態の希土類磁石は、二重合金法を採用して製作する。主合金と補助合金の組成を調整することにより、大量生産された磁石は、高い固有保磁力の一貫性と減磁曲線の良好な角形度を有して、大量生産に適した。
【0044】
図1に示すように、本発明の実施形態はまた、希土類スパッタリング磁石を提供する。希土類磁石を基材1として、物理的堆積を行って、複合めっき層2が基材1の表面に形成されて、希土類スパッタリング磁石が得られる。複合めっき層2は、第一のめっき層21および第二のめっき層22を含む。第一のめっき層21は、基材1の表面に堆積される。第一のめっき層は、Ndめっき層、またはPrめっき層、またはNd、Pr、およびCuのうちの少なくとも2つ以上の合金めっき層である。第二のめっき層22は、第一のめっき層21の外面上に配置され、第二のめっき層22は、Tbめっき層である。
【0045】
複合めっき層2は、基材1の1つの表面のみに存在し得るか、または基材1の2つの対称的な表面上にそれぞれ配置され得る。基材1に物理的に堆積されるとき、基材1の1つの表面に最初に物理的に堆積され、次に裏返され、他の表面に物理的に堆積され得る。この実施形態で使用される物理的堆積方法は、マグネトロンスパッタリングであり、他の物理的堆積方法も使用することができる。
【0046】
物理的に堆積を行う場合、基材の1つの表面のみに物理的に堆積するか、基材の2つの反対側の表面に物理的に堆積することができます。図1に示すように、複合めっき層は基材の上面と下面の両方に堆積されます。この実施形態では、めっき層の厚さは、単層の厚さを指す。上記の希土類磁石では、第一のめっき層の厚さは1~2μmであり、第二のめっき層の厚さは2~12μmである。
【0047】
任意選択で、複合めっき層は、第三のめっき層23をさらに含み、第三のめっき層23は、Dyめっき層であり、第三のめっき層23は、第二のめっき層22の外面に配置される。好ましくは、第一のめっき層の厚さは1~2μmであり、第二のめっき層の厚さは2~10μmであり、第三のめっき層の厚さは1~2μmである。
【0048】
本発明の実施形態はまた、希土類拡散磁石を提供し、当該実施形態では、上記の希土類スパッタリング磁石に対して熱拡散処理を実行して、希土類拡散磁石を得る。好ましくは、希土類拡散磁石は、磁石の最大磁気エネルギー積(BH)max(単位:MGOe)と固有保磁力Hcj(単位:kOe)の合計値が75より大きいである。
【0049】
本発明では、二重合金法で作製した希土類磁石または焼結磁石を基材として使用し、スパッタリングにより複合めっき層を得た後、熱拡散処理を行って超高性能希土類拡散磁石を得る;好ましくは最大磁気エネルギー積(BH)maxと固有の保磁力Hcjの合計値が75より大きいである。また、大量生産にも適しており、希土類拡散磁石間の性能の一貫性が良好です。
【0050】
希土類磁石の結晶粒界相では、BSE微細構造観測により、白い結晶粒界相面積が微細構造観測領域の総面積の1~3%を占め、灰色結晶粒界相面積が微細構造観測領域の総面積の2-10%を占める。簡単にするために、明細書の以下の説明では、白い結晶粒界相の面積比と灰色結晶粒界相の面積比を使用して、微細構造観察領域の総面積に対する白い結晶粒界相の面積の比率と、微細構造観察領域の総面積に対する灰色結晶粒界相の面積の比率を置き換えます。灰色結晶粒界相はNdFe13Ga相、すなわち6:13:1相であり、白い結晶粒界相は希土類含有量が高い領域であり、組成はR~T~M相であり、その希土類元素Rの原子百分比率は30at%より大きいであり、T元素とM元素の含有量は大きく異なる。Rは希土類元素であり、RはNdおよび/またはPrを含む必要があり、TはFeおよび/またはCoおよび不可避の不純物元素であり、MはAl、Cu、Nb、Zr、およびSnの少なくとも1つである。
【0051】
白い結晶粒界相と灰色結晶粒界相はいずれも主に三角結晶粒界領域に集中しており、それらの存在により主相結晶粒を分離し、磁石Hcjを増加させることができる。灰色結晶粒界相は6:13:1相、準安定相である。焼結後、520℃以下の低温焼戻し処理により、磁石の2:17(NdFe17)相が6:13:1相に変化する。その変化の程度は、磁石の焼き戻しプロセスによって影響をやすく受ける。6:13:1相を十分に生成できない場合、焼き戻し処理後も2:17相が磁石内に存在して、Hcjと減磁曲線の角形度が減少する。白色結晶粒界相は安定相であり、焼き戻しプロセス中に比較的容易に形成され、灰色結晶粒界相を部分的に置き換えて磁石Hcjを改善することができる。白い結晶粒界相の面積比と灰色結晶粒界相の面積比を適切な範囲で制御する必要がある。高すぎると、磁石の主相結晶粒の面積率が低下し、磁石の残留磁気が減少する;低すぎると磁石の保磁力の増加を助長しない。
【0052】
希土類拡散磁石の場合、スパッタリング基材として使用する焼結磁石が520℃以下の低温焼き戻し熱処理を行っていない場合、450℃~520℃の拡散熱処理の二次拡散処理中に、2:17相から6:13:1相への相変化反応が起こる。
【0053】
最大磁気エネルギー積(BH)maxと固有保磁力Hcjが75を超える希土類拡散磁石の結晶粒界相では、微細構造観察領域の総面積に対する白い結晶粒界相の面積の割合は1~3%であり、灰色の結晶粒界相の面積の割合は2~4%である。
【0054】
上記の希土類磁石および希土類拡散磁石を使用して、希土類永久磁石モーターのステーターまたはローターを作製することができる。
【実施例1】
【0055】
希土類磁石の作製ステップは以下のとおりである。
【0056】
1.各元素の質量比に応じて、主合金原料と補助合金原料を作製する。主合金原料の各元素の質量比は((PrNd)31.5Al0.8Co1.0Cu0.1Ga0.510.98Nb0.25Zr0.08Febalであり、補助合金原料の各元素の質量比は(PrNd)33Al0.2Co1.0Cu0.1Ga0.510.86Febalである。
【0057】
2.600kg /回のストリップ鋳造炉(ストリップキャスティング)で主合金原料と補助合金原料をそれぞれ溶かし、1.5m/sのローラーの線速度でスケールを鋳造して、最終的に平均厚さ0.2mmの主合金フレークと補助合金フレークが得られる。
【0058】
3.主合金フレークと補助合金フレークをそれぞれ水素破砕し、詳しくは、飽和水素吸収後540℃で6時間脱水素を行い、脱水素後の水素含有量を1200ppmにして、主合金と補助合金の中破砕粉末を得る。主合金と補助合金の中破砕粉末をそれぞれジェットミルに入れて、D50=3.8μmの主合金粉末と補助合金粉末を得る。
【0059】
4.主合金粉末と補助合金粉末を質量比97:3で混合し、混合合金粉末を得る。
【0060】
5.混合合金粉末は、自動プレスの磁場下で配向させ、プレスしてコンパクトを形成する。配向磁場は1.8Tであり、コンパクトの初期圧縮密度は4.5g/cmである。
【0061】
6.コンパクトを真空焼結炉に入れて焼結し、焼結磁石を得る。焼結温度は980℃、時間は8hであり、焼結後の磁石密度は7.51g/cmである。
【0062】
7.焼結磁石を焼き戻し、希土類磁石を得る。焼き戻し処理は、一次焼き戻し:920℃で2時間の保温、二次焼き戻し:480℃で6時間の保温である。
【0063】
この実施例の希土類磁石の同じバッチのサンプルを、ランダムに10個サンプリングして、性能試験を行った。試験結果は、以下の通りである:
【0064】
【表1】
【0065】
表1中:Brは残留磁気、Hcjは固有の保磁力、Hk/Hcjは減磁曲線の角形度、(BH)maxは最大磁気エネルギー積である。
【0066】
30バッチの希土類磁石の磁気特性がテストされ、結果が分析された。
【0067】
品質条件Brを13.0±0.1、Hcjを20.0±1kOeに設定し、BrのCPK=1.67とHcjのCPK=1.87を計算した。CPKは工程能力指数である。
【0068】
希土類磁石の配向方向に垂直な断面の微細構造を走査型電子顕微鏡で観察し、後方散乱(BSE)画像を得る。磁石の三角領域の結晶粒界相は灰色結晶粒界相と白色結晶粒界相を持っている。4000倍の倍率で、図2に異なる位置にある灰色の結晶粒界相と白い結晶粒界相をEDSエネルギースペクトルで分析し、結晶粒界相の各元素の含有量を以下のように得る。
【0069】
【表2】
【0070】
表2中:R=PrとNdの合計含有量、T=FeとCoの合計含有量、M=Ga、Cu、Al、Zrの合計含有量、R%=R/(R+T+M)、 T%=T/(R+T+M)、M%=M/(R+ T+M)。走査型電子顕微鏡サンプルの作製中に酸素元素が持ち込まれる可能性があることを考慮して、それはTの含有量に含まれていない。
【0071】
表における1、2、3、4、7、11は白色結晶粒界相であり、5、6、8、9、10は灰色結晶粒界相である。灰色結晶粒界相における各元素の原子百分率から分析してからわかるように、灰色結晶粒界相は6:13:1相の特徴に一致する。白い結晶粒界相は、希土類の含有量が比較的多い領域であり、R~T~M相であり、その希土類元素Rの原子百分率はいずれも30at%を超えている。白い部分の結晶粒界相の組成は灰色の部分よりも複雑で、T元素とM元素の比率が大きく異なる。白い部分の結晶粒界相点2の相組成は、R 602020相(3:1:1相)の特徴に一致し、R%の含有量は60~65 at%、T%とM%は20at%に近い;点1、11のR1__Mの結晶粒界相の各元素の比率は、R%の含有量が40at%を超え、M%の含有量が2at%未満、T%の含有量が30~50at%、M元素の含有量が比較的少ないことである;3、4、7のR1__M結晶粒界相の各元素の割合は、R%の含有量が40at%を超え、M%の含有量が10~20at%、T%の含有量が20~40at%、M元素の含有量が比較的多いことである。
【0072】
上記の走査型電子顕微鏡観察フィールドで、図3~5に示すように、異なる領域を選択し、倍率を8000倍に拡大して、異なるコントラストで磁石の結晶粒界相を分析する。微細構造観察領域の総面積に対する異なる結晶粒界相の面積の割合を計算すると、結果は次のようになる:
【0073】
【表3】
【0074】
(比較例1)
希土類磁石の作製ステップは以下のとおりです。
【0075】
1.各元素の質量比に応じて合金原料を作製する。各元素の質量比は(PrNd)31.5Al0.7Co1.0Cu0.1Ga0.510.94Nb0.25Zr0.08Febalです。
【0076】
ステップ2~7は、実施例1と同じですが、主合金粉末と補助合金粉末を混合するステップ4がない。
【0077】
実施例1と比較して、比較例1の希土類磁石は、より低いB(ボロン)含有量を有する。比較例1の希土類磁石の同じバッチのサンプルを、ランダムに10個サンプリングして、性能試験を行った。試験結果は次のとおりである。
【0078】
【表4】
【0079】
実施例1と比較して、比較例1の磁石の組成は、B含有量の組成が実施例1よりも低く、他の元素は基本的に同じであり、作製プロセスは同じである。実施例1と比較して、比較例1の残留磁気と固有の保磁力の離散は非常に大きく、性能は不安定であり、大量生産には適していない。
【0080】
比較例1で同じバッチの2つの磁石を取り、それぞれ走査型電子顕微鏡で配向方向に垂直な磁石の断面の微細構造を観察して、図6と7に示す4000倍の後方散乱(BSE)画像を得る。三角形の領域でリッチしている白いと灰色の結晶粒界相の成分をEDS分析し、それらの灰色の結晶粒界相が実施例1の灰色の結晶粒界相と同じであり、いずれも6:13:1相であることを発見する。白い結晶粒界相成分もまた、実施例1の白い結晶粒界相と同じであり、R1__M相である。希土類元素Rの含有量は30原子%を超えており、TとMの含有量は大きく異なる。異なるコントラストで磁石の結晶粒界相をランダムに分析し、微細構造観察領域の総面積に対する異なる結晶粒界相の面積の割合を計算すると、結果は次のようになる:
【0081】
【表5】
【0082】
実施例1と比較例1の2つのサンプルを比較すると、比較例1の2つの磁石の灰色結晶粒界相の面積比は、いずれも実施例1の灰色結晶粒界相の面積比よりもはるかに高いことが発見する。白い結晶粒界相面積/観察面積の比の差が小さいことが発見する。発明者は、比較例1の灰色結晶粒界相の面積比が実施例1よりも高いことは、比較例1の磁石は、作製プロセス中に灰色結晶粒界相をよりやすく生成し、灰色結晶粒界相は6:13:1相であり、準安定相に属し、焼き戻しプロセスの影響を大きく受け、プロセスウィンドウが狭くなることを示していると考えている。同じバッチの磁石を大量生産する焼き戻し熱処理プロセスにおいて、焼き戻し熱処理炉内の個々の磁石の焼き戻し温度を完全に同じにすることはできず、偏差が生じ、異なる磁石間の2:17相から完全に6:13:1相に変換する程度が異なるため、同じバッチの磁石間のHcj偏差が大きくなり、大量生産を助長しない。
【実施例2】
【0083】
希土類磁石の作製ステップは以下のとおりである。
【0084】
1.各元素の質量比に応じて、主合金原料と補助合金原料を作製する。主合金原料の各元素の質量比は(PrNd)31Al0.2Co1.0Cu0.1Ga0.60.97Sn0.1Febalである。補助合金原料の各元素の質量比は(PrNd)32.5Al0.15Co1.0Cu0.1Ga0.60.89Febalである。
【0085】
2.600kg/回のストリップ鋳造炉(ストリップキャスティング)で主合金原料と補助合金原料をそれぞれ溶かし、1.5m/sのローラーの線速度でスケールを鋳造して、最終的に平均厚さ0.25mmの主合金フレークと補助合金フレークが得られる。
【0086】
3.主合金フレークと補助合金フレークをそれぞれ水素破砕し、詳しくは、飽和水素吸収後540℃で6時間脱水素を行い、水素含有量を1200ppmにして主合金と補助合金の中破砕粉末を得る。主合金と補助合金の中破砕粉末をそれぞれジェットミルに入れて、D50=3.8μmの主合金粉末と補助合金粉末を得る。
【0087】
4.主合金粉末と補助合金粉末を質量比98:2で混合し、混合合金粉末を得る。
【0088】
5.混合合金粉末は、自動プレスの磁場下で配向させ、プレスしてコンパクトを形成する。配向磁場は1.8Tであり、コンパクトの初期圧縮密度は4.2g/cmである。
【0089】
6.コンパクトを真空焼結炉に入れて焼結し、焼結磁石を得る。焼結温度は1000℃、時間は6hであり、焼結後の磁石密度は7.52g/cmである。
【0090】
7.焼結磁石を焼き戻し、希土類磁石を得る。焼き戻し処理プロセスは次のとおりである。
【0091】
一次焼戻し:900℃で2時間の保温、二次焼戻し:490℃で4時間の保温。
【0092】
この実施例の希土類磁石の同じバッチのサンプルを、ランダムに10個サンプリングして、性能試験を行った。試験結果は、以下の通りである:
【0093】
【表6】
【0094】
30バッチの希土類磁石の磁気特性がテストされ、結果が分析された。
【0095】
品質条件Brを13.8±0.1、Hcjを17.5±1kOeに設定し、BrのCPK = 1.68とHcjのCPK=1.87を計算した。
【0096】
(比較例2)
希土類磁石の作製ステップは以下のとおりである。
【0097】
1.各元素の質量比に応じて、主合金原料と補助合金原料を作製する。主合金原料の各元素の質量比は(PrNd)31Al0.2Co1.0Cu0.1Ga0.60.97Sn0.1Febalである。補助合金原料の各元素質量比は(PrNd)32.5Al0.15Co1.0Cu0.1Ga0.60.94Febalである。
【0098】
ステップ2~7は実施例2と同じである。
【0099】
実施例2と比較して、比較例2の希土類磁石は、補助合金中のB含有量が高い。この比較例の希土類磁石の同じバッチのサンプルを、ランダムに10個サンプリングして、性能試験を行った。試験結果は次のとおりである。
【0100】
【表7】
【0101】
実施例2と比較例2を比較すると、同じバッチで生産された実施例2のBrとHcjの偏差は小さく、比較例2のBrとHcjの偏差は大きい。磁石の磁気特性の偏差が大きいと、当該希土類磁石を利用したモータの実用化には問題がある。したがって、比較例2は大量生産には適していない。
【実施例3】
【0102】
[実施例3~1]
希土類拡散磁石の作製ステップは以下のとおりである。
【0103】
実施例2のステップ1~6を繰り返す。
【0104】
7.焼結磁石を30×20×2mmの大きさの基材に加工し、表面を表面の脱脂と酸洗い処理を行う。
【0105】
8.基材をスパッタして、めっき層を形成して、スパッタリング中の圧力は0.52Paで、基材は10mm/sの速度でターゲットを通過し、ターゲットと基材の間の距離は100mmに保たれる。ターゲットはTbターゲット、Tbターゲットのスパッタリングパワーは25kW、Tbめっき層の厚さは6μmである。磁石の片面をスパッタリングした後、磁石を裏返し、同じスパッタリングプロセスに従って磁石のもう一方の表面をスパッタして、希土類スパッタリング磁石を得る。めっき層の厚さは、X線蛍光厚さゲージによって測定される。
【0106】
9.スパッタされた希土類スパッタリング磁石に結晶粒界拡散処理を行い、希土類拡散磁石を得る。結晶粒界拡散処理の条件は、一次拡散処理:920℃で8時間の保温、二次拡散処理:480℃で6時間の保温である。
【0107】
この実施例の希土類拡散磁石をランダムに32枚サンプリングして磁気特性試験を行った。試験結果は、以下の通りである。
【0108】
【表8】
【0109】
30バッチの希土類拡散磁石の磁気特性がテストされ、結果が分析された。
【0110】
品質条件Brを13.7±0.1、Hcjを28.0±1kOeに設定し、BrのCPK=1.35とHcjのCPK=1.50を計算した。
【0111】
[実施例3~2]
希土類拡散磁石の作製ステップは以下のとおりである。
【0112】
基本的に実施例3-1と同じですが、違いは次のとおりである。ステップ8で、基材をスパッタリングするとき、基材は最初に第一のターゲットを通過し、第一のターゲットはNdターゲットであり、スパッタリングパワーが4kWである。第1のめっき層-Ndめっき層は1μmの厚さで基材上に形成される。その後、基材が第二のターゲットを通過し、第二のターゲットがTbターゲットであり、スパッタリングパワーが24kWである。5.4μmの厚さの第二のめっき層-Tbめっき層が第一のめっき層の表面に形成され、希土類スパッタリング磁石が得られる。
【0113】
この実施例の希土類拡散磁石をランダムに32枚サンプリングして磁気特性試験を行った。試験結果は、以下の通りである。
【0114】
【表9】
【0115】
30バッチの希土類拡散磁石の磁気特性がテストされ、結果が分析された。
【0116】
品質条件Brを13.8±0.1、Hcjを28.0±1kOeに設定し、BrのCPK=1.67とHcjのCPK=1.77を計算した。
【0117】
[実施例3~3]
希土類拡散磁石の作製ステップは以下のとおりである。
【0118】
基本的に実施例3-1と同じですが、違いは次のとおりである。ステップ8で、基材をスパッタリングするとき、基材は最初に第一のターゲットを通過し、第一のターゲットはNdターゲットであり、スパッタリングパワーが4kWである。第1のめっき層-Ndめっき層は1μmの厚さで基材上に形成される。その後、基材は第二のターゲットを通過し、第二のターゲットはTbターゲットであり、スパッタリングパワーが17kWであり、3.5μmの厚さの第二のめっき層-Tbめっき層が、第一のめっき層の表面に形成される。その後、基材は第三のターゲットを通過し、第三のターゲットはDyターゲットであり、スパッタリングパワーは10kWであり、第三のめっき層-Dyめっき層が第二のめっき層の表面に厚さ1.8μmで形成される。
【0119】
この実施例の希土類拡散磁石をランダムに32枚サンプリングして磁気特性試験を行った。試験結果は、以下の通りである。
【0120】
【表10】
【0121】
希土類拡散磁石の30バッチの磁気特性がテストされ、分析結果は次のとおりである。
【0122】
品質条件Brを13.8±0.1、Hcjを28.0±1kOeに設定し、BrのCPK=1.67とHcjのCPK=1.77を計算した。
【0123】
実施例3~1、3~2、3~3を比較すると、実施例3~2、3~3のBrは比較的高く、磁気特性が優れており、かつBrとHcjのCPK値も比較的高い。実施例3~3は、3~2と比較して、使用されるTbターゲットの一部の量を減らすことができ、さらにコストを減らすことができる。
【0124】
(比較例3~1)
1. 各元素の質量比に応じて、合金原料を作製する。合金原料の各元素の質量比は、(PrNd)32.5Al0.1Co1.0Cu0.1Ga0.510.89ebalである。
【0125】
2. 600kg/回のストリップキャスティング炉(ストリップキャスティング)で合金原料を溶かし、1.5m/sのローラーの線速度でスケールキャスティングを行い、最終的に平均厚さ0.15mmの合金フレークを得る。
【0126】
3.合金フレークを水素破砕し、飽和水素吸収後540℃で6時間脱水素を行い、脱水素後の水素含有量を1200ppmにして、合金の中破砕粉末を得る。合金の中破砕粉末をジェットミルに入れて、D50=3.6μmの合金粉末を得る。
【0127】
4.合金粉末は、自動プレスの磁場下で配向させ、プレスしてコンパクトを形成する。配向磁場は1.8Tであり、コンパクトの初期圧縮密度は4.2g/cmである。
【0128】
5.コンパクトを真空焼結炉に入れて焼結し、焼結磁石を得る。焼結温度は1000℃、時間は6hであり、焼結後の磁石密度は7.52g/cmである。
【0129】
6.焼結磁石を30×20×2mmの大きさの基材に加工し、表面を表面の脱脂と酸洗い処理を行う。
【0130】
7.基材をスパッタして、めっき層を形成して、スパッタリング中の圧力は0.52Paで、基材は10mm/sの速度でターゲットを通過し、ターゲットと基材の間の距離は100mmに保たれる。ターゲットはTbターゲット、Tbターゲットのスパッタリングパワーは20 kW、Tbめっき層の厚さは4μmである。磁石の片面をスパッタリングした後、磁石を裏返し、同じスパッタリングプロセスに従って磁石のもう一方の表面をスパッタして、希土類スパッタリング磁石を得る。
【0131】
8.希土類スパッタリング磁石に結晶粒界拡散処理を行い、希土類拡散磁石を得る。結晶粒界拡散処理の条件は、一次拡散処理:920℃で8時間の保温、二次拡散処理:480℃で6時間の保温である。
【0132】
この比較例の希土類拡散磁石をランダムに32枚サンプリングして磁気特性試験を行った。試験結果は、以下の通りである。
【0133】
【表11】
【0134】
比較例3~1の希土類拡散磁石のB含有量は、実施例3~1よりも低く、残りは基本的に同じである。2つの磁石の性能を比較すると、実施例3~1の磁石の各特性は、比較例3~1の磁石よりも大幅に優れている。磁石中のBの含有量を増やし、Gaの含有量を制御することにより、本発明は、希土類拡散磁石の総合なの性能を明らかに改善することができる。
【0135】
(比較例3~2)
希土類拡散磁石の作製ステップは以下のとおりである。
【0136】
希土類磁石の作製は、実施例3~2と同じであり、希土類スパッタリング磁石および希土類拡散磁石の作製プロセスは基本的に実施例3~2と同じであり、違いは次のとおりである:ステップ8で、基材をスパッタリングするとき、基材は最初に第1のターゲットを通過し、第一のターゲットはAlターゲットであり、スパッタリングパワーが4kWである。第1のめっき層-Alめっき層は1μmの厚さで基材上に形成される。その後、基材が第二のターゲットを通過し、第二のターゲットがTbターゲットであり、スパッタリングパワーが24kWであり、厚さ5.4μmの第二のめっき層-Tbめき層が、第一のめっき層の表面に形成される。
【0137】
この比較例の希土類拡散磁石をランダムに32枚サンプリングして磁気特性試験を行った。。試験結果は、以下の通りである。
【0138】
【表12】
【0139】
30バッチの希土類拡散磁石の磁気特性がテストされ、結果が分析された。
【0140】
品質条件Brは13.7±0.1、Hcjは26.0±1kOeに設定し、BrのCPK=1.50とHHcjのCPK=1.65を計算した。
【0141】
比較例3~2の希土類拡散磁石の各特性を実施例3~2の特性と比較した。実施例3~2の磁石の各特性は、比較例3~2の磁石の特性よりも著しく良好である。第一のめっき層がAl層である希土類拡散磁石の磁気特性の改善効果は第一のめっき層がNd層である希土類拡散磁石ほど良くないことが分かる。
【実施例4】
【0142】
希土類磁石の作製ステップは以下のとおりである。
【0143】
1.各元素の質量比に応じて、主合金原料と補助合金原料を作製する。主合金原料の各元素の質量比は(PrNd)30Al0.05Co0.7Cu0.2Ga0.40.97Febalである。補助合金原料の各元素の質量比は(PrNd)32.5Al0.15Co1.0Cu0.2Ga0.40.89Febalである。
【0144】
2.600Kg/回のストリップ鋳造炉(ストリップキャスティング)で主合金原料と補助合金原料をそれぞれ溶かし、1.5m/sのローラーの線速度でスケールを鋳造して、最終的に平均厚さ0.15mmの主合金フレークと補助合金フレークが得る。
【0145】
3.主合金フレークと補助合金フレークをそれぞれ水素破砕し、飽和水素吸収後540℃で6時間脱水素を行い、脱水素後の水素含有量を1200ppmにして、主合金と補助合金の中破砕粉末を得る。主合金と補助合金の中破砕粉末をそれぞれジェットミルに入れて、D50 =3.6μmの主合金粉末と補助合金粉末をそれぞれ得る。
【0146】
4.主合金粉末と補助合金粉末を質量比99:1で混合し、混合合金粉末を得る。
【0147】
5.混合合金粉末は、自動プレスの磁場下で配向させ、プレスしてコンパクトを形成する。配向磁場は1.8Tであり、コンパクトの初期圧縮密度は4.1g/cmである。
【0148】
6.コンパクトを真空焼結炉に入れて焼結し、焼結磁石を得る。焼結温度は1010℃、時間は5hであり、焼結後の磁石密度は7.51g/cmである。
【0149】
7.焼結磁石を焼き戻し、希土類磁石を得る。焼き戻しプロセスは次のとおりである。
【0150】
一次焼戻し:920℃で2時間の保温、二次焼戻し:490℃で8時間の保温。
【0151】
この実施例の希土類磁石の同じバッチのサンプルをランダムに10個サンプリングして、特性試験を行った。試験結果は、以下の通りである。
【0152】
【表13】
【0153】
30バッチの希土類磁石の磁気特性がテストされ、結果が分析された。
【0154】
品質条件Brは14.2±0.1、Hcjは15.0±1kOeに設定し、BrのCPK=1.71とHcjのCPK=1.77を計算した。
【0155】
(比較例4)
1.各元素の質量比に応じて、合金原料を作製する。合金原料の各元素の質量比は、(PrNd)30Al0.05Co0.7Cu0.2Ga0.40.90Febalである。
【0156】
ステップ2~7は、実施例4と同じですが、主合金粉末と補助合金粉末を混合するステップ4がない。
【0157】
比較例4の希土類磁石の同じバッチのサンプルをランダムに10個サンプリングして、特性試験を行った。試験結果は、以下の通りである。
【0158】
【表14】
【0159】
比較例4の希土類磁石は、残留磁気と固有の保磁力の離散が非常に大きく、性能が不安定であり、大量生産には適していない。
【0160】
比較例4を比較すると、実施例4の減磁曲線の角形度は、比較例4のそれよりも著しく良好であり、実施例4の希土類磁石は、安定した性能を有し、大量生産に適している。
【実施例5】
【0161】
[実施例5~1]
希土類拡散磁石の作製ステップは以下のとおりである。
【0162】
実施例4のステップ1~6を繰り返す。
【0163】
7.希土類磁石を30×20×2mmの大きさの基材に加工し、表面の脱脂と酸洗い処理を行う。
【0164】
8.基材をスパッタして、めっき層を形成して、スパッタリング中の圧力は0.52Paで、基材は10mm/sの速度でターゲットを通過し、ターゲットと基材との間の距離は95mmに保たれる。ターゲットはTbターゲット、Tbターゲットのスパッタリングパワーは25kW、Tbめっき層の厚さは10μmである。磁石の片面をスパッタリングした後、磁石を裏返し、同じスパッタリングプロセスに従って磁石のもう一方の表面をスパッタして、希土類スパッタリング磁石を得る。
【0165】
9.希土類スパッタリング磁石に結晶粒界拡散処理を行い、希土類拡散磁石を得る。結晶粒界拡散処理の条件は、一次拡散処理:950℃で7時間の保温、二次拡散処理:480℃で8時間の保温です。
【0166】
この実施例の希土類拡散磁石をランダムに32枚サンプリングして磁気特性試験を行った。試験結果は、以下の通りである。
【0167】
【表15】
【0168】
希土類拡散磁石の30バッチの磁気特性がテストされ、分析結果は次のとおりである。
【0169】
品質条件Brは14.1±0.1、Hcjは25.5±1kOeに設定し、BrのCPK=1.71とHcjのCPK=1.77を計算した。
【0170】
[実施例5~2]
希土類拡散磁石の作製ステップは以下のとおりである。
【0171】
基本的に実施例5-1と同じですが、違いは次のとおりである。ステップ8で、基材をスパッタリングするとき、基材は最初に第一のターゲットを通過し、第一のターゲットはNdターゲットであり、スパッタリングパワーが6kWである。第1のめっき層-Ndめっき層は2μmの厚さで基材上に形成される。その後、基材が第二のターゲットを通過し、第二のターゲット材料がTbターゲットであり、スパッタリングパワーが25kWであり、8.5μmの厚さの第二のめっき層-Tbめっき層が、第一のめっき層の表面に形成される。
【0172】
この実施例の希土類拡散磁石をランダムに32枚サンプリングして磁気特性試験を行った。試験結果は、以下の通りである。
【0173】
【表16】
【0174】
30バッチの希土類拡散磁石の磁気特性がテストされ、分析結果は次のとおりである。
【0175】
品質条件Brを14.0±0.1、Hcjを25.5±1kOeに設定し、BrのCPK=1.65とHcjのCPK=1.75を計算した。
【0176】
[実施例5~3]
希土類拡散磁石の作製ステップは以下のとおりである。
【0177】
基本的に実施例5~1と同じですが、違いは次のとおりである。ステップ8で、基材をスパッタリングするとき、基材は最初に第一のターゲットを通過し、第一のターゲットはNdターゲットであり、スパッタリングパワーが5kWである。第1のめっき層-Ndめっき層は1.5μmの厚さで基材上に形成される。その後、基材が第二のターゲットを通過し、第二のターゲットがTbターゲットであり、スパッタリングパワーが25kWであり、7.5μmの厚さの第二のめっき層-Tbめっき層が、第一のめっき層の表面に形成される。その後、基材は第三のターゲットを通過し、第三のターゲットはDyターゲットであり、スパッタリングパワーは12kWであり、2μmの厚さの第三のめっき層-Dyめっき層が第二のめっき層の表面に形成される。
【0178】
この実施例の希土類拡散磁石をランダムに32枚サンプリングして磁気特性試験を行った。試験結果は、以下の通りである。
【0179】
【表17】
【0180】
30バッチの希土類拡散磁石の磁気特性がテストされ、分析結果は次のとおりである。
【0181】
品質条件Brを14.2±0.1、Hcjを23.5±1kOeに設定し、BrのCPK = 1.67とHcjのCPK=1.74を計算した。
【実施例6】
【0182】
[実施例6~1]
1.各元素の質量比に応じて、主合金原料と補助合金原料を作製する。主合金原料の各元素の質量比は、(PrNd)30Ho0.5DyTb0.5Al0.2Co1.0Cu0.1Ga0.511.0Febal、補助合金原料の各元素の質量比は(PrNd)32.5Al0.15Co1.0Cu0.1Ga0.510.82Febalである。
【0183】
2.600Kg/回のストリップ鋳造炉(ストリップキャスティング)で主合金原料と補助合金原料を溶かし、1.5m/sのローラーの線速度でスケールを鋳造して、最終的に平均厚さ0.15mmの主合金フレークと補助合金フレークが得る。
【0184】
3.主合金フレークと補助合金フレークをそれぞれ水素破砕し、詳しくは、飽和水素吸収後540℃で6時間脱水素を行い、脱水素後の水素含有量を1200ppmにして、主合金と補助合金の中破砕粉末を得る。主合金と補助合金の中破砕粉末をそれぞれジェットミルに入れて、D50=3.6μmの主合金粉末と補助合金粉末を得る。
【0185】
4.主合金粉末と補助合金粉末を質量比98:2で混合し、混合合金粉末を得る。
【0186】
5.混合合金粉末は、自動プレスの磁場下で配向させ、プレスしてコンパクトを形成する。配向磁場は1.8Tであり、コンパクトの初期圧縮密度は4.2g/cmである。
【0187】
6.コンパクトを真空焼結炉に入れて焼結し、焼結磁石を得る。焼結温度は1000℃、時間は6時間である。焼結後の磁石密度は7.55g/cmである。
【0188】
7.焼結磁石を30×20×2mmの大きさの基材に加工し、表面を表面の脱脂と酸洗い処理を行う。
【0189】
8.基材をスパッタして、めっき層を形成して、スパッタリング中の圧力は0.52Paで、基材は10mm/sの速度でターゲットを通過し、ターゲットと基材の間の距離は100mmに保たれる。ターゲットはTbターゲット、Tbターゲットのスパッタリングパワーは24kW、Tbめっき層の厚さは5.4μmである。磁石の片面をスパッタリングした後、磁石を裏返し、同じスパッタリングプロセスに従って磁石のもう一方の表面をスパッタして、希土類スパッタリング磁石を得る。
【0190】
9.希土類スパッタリング磁石に結晶粒界拡散処理を行い、希土類拡散磁石を得る。結晶粒界拡散処理の条件は、一次拡散処理:920℃で8時間の保温、二次拡散処理:480℃で6時間の保温である。
【0191】
この実施例の希土類拡散磁石をランダムに32枚サンプリングして磁気特性試験を行った。試験結果は、以下の通りである。
【0192】
【表18】
【0193】
30バッチの希土類拡散磁石の磁気特性がテストされ、結果が分析された。
【0194】
品質条件Brは13.4±0.1、Hcjは33.0±1kOeに設定し、BrのCPK=1.35とHcjのCPK=1.65を計算した。
【0195】
[実施例6~2]
希土類拡散磁石の作製ステップは以下のとおりである。
【0196】
基本的に実施例6~1と同じですが、違いは次のとおりです。ステップ8で、基材をスパッタリングするとき、基材は最初に第一のターゲットを通過し、第一のターゲットはPrターゲットであり、スパッタリングパワーは4kWです。第一のめっき層-Prめっき層は1μmの厚さで基材上に形成されます。その後、基材は第二のターゲットを通過し、第二のターゲット材料はTbターゲットであり、スパッタリングパワーは22kWであり、4.4μmの厚さの第二のめっき層-Tbめっき層が第一のめっき層の表面に形成される。
【0197】
この実施例の希土類拡散磁石をランダムに32枚サンプリングして磁気特性試験を行った。試験結果は、以下の通りである。
【0198】
【表19】
【0199】
30バッチの希土類拡散磁石の磁気特性をテストし、分析結果は次のとおりである。
【0200】
品質条件Brを13.5±0.1、Hcjを33.0±1kOeに設定し、BrのCPK=1.67、HcjのCPK=1.77を計算した。
【0201】
[実施例6~3]
希土類拡散磁石の作製ステップは以下のとおりである。
【0202】
基本的に実施例6~1と同じですが、違いは次のとおりです。ステップ8で、基材をスパッタリングするとき、基材は最初に第一のターゲットを通過し、第一のターゲットはPrCuターゲットで、スパッタリングパワーは4kWである。第1のめっき層-Ndめっき層は1μmの厚さで基材上に形成されます。その後、基材は第二のターゲットを通過し、第二のターゲット材料はTbターゲットであり、スパッタリングパワーは15kWであり、2.8μmの厚さの第二のめっき層-Tbめっき層が第一のめっき層の表面に形成される。その後、基材は第三のターゲットを通過し、第三のターゲット材料はDyターゲットであり、スパッタリングパワーは12kWであり、2μmの厚さの第三のめっき層-Dyめっき層が第二のめっき層の表面に形成される。
【0203】
この実施例の希土類拡散磁石をランダムに32枚サンプリングして磁気特性試験を行った。試験結果は、以下の通りである。
【0204】
【表20】
【0205】
30バッチの希土類拡散磁石の磁気特性がテストされ、分析結果は次のとおりである。
【0206】
品質条件Brは13.6±0.1、Hcjは33.0±1kOeに設定し、BrのCPK=1.58とHcjのCPK=1.77を計算した。
【0207】
実施例6~1、6~2、および6~3によればわかるように、本発明の解決策は、超高性能磁石を得ることができる。磁石の最大磁気エネルギー積(BH)maxと固有保磁力Hcjの合計は、75より大きく、磁石性能は安定しており、大型スケール生産に適している。実施例6~1、6~2、6~3を比較すると、実施例6~2、6~3のBrは比較的高く、磁気特性も優れて、かつBrとHcjのCPK値も比較的高い。実施例6~3は、6~2と比較して、使用されるTbターゲットの量を部分的に減らすことができ、さらにコストを削減することができる。
【実施例7】
【0208】
1.各元素の質量比に応じて、主合金原料と補助合金原料を作製する。主合金原料の各元素の質量比は、(PrNd)29.2Tb1.8Al0.1Co1.0Cu0.1Ga0.30.97Febal、補助合金原料の各元素の質量比は(PrNd)32.5Al0.1Co1.0Cu0.1Ga0.30.89Febalである。
【0209】
ステップ2~5は、実施例6-1と同じである。
【0210】
6.コンパクトを真空焼結炉に入れて焼結し、焼結磁石を得る。焼結温度は1000℃、時間は6hであり、焼結後の磁石密度は7.59g/cmである。
【0211】
7.焼結磁石を焼き戻し、希土類磁石を得る。焼き戻しプロセスは次のとおりである。
【0212】
一次焼戻し:920℃で2時間の保温、二次焼戻し:475℃で6時間の保温。
【0213】
焼き戻し後の同じバッチのサンプルを10個ランダムにサンプリングして測定し、性能試験を行った。試験結果は、以下の通りである:
【0214】
【表21】
【0215】
8.ステップ7で焼き戻した後、希土類磁石を30×20×2mmのサイズの基材に加工し、表面の脱脂と酸洗い処理を行う。
【0216】
9.基材をスパッタし、スパッタリング中の圧力は0.55Paで、基材は10mm/sの速度でターゲットを通過し、ターゲットと基材の間の距離は95mmに保たれる。基材は最初に第1のターゲットを通過し、第1のターゲット材料はNdターゲットであり、スパッタリングパワーは4kWであり、第1のめっき層-Ndめっき層が1μmの厚さで基材上に形成される。その後、基材は第二のターゲットを通過し、第二のターゲット材料はTbターゲットであり、スパッタリングパワーは22kWであり、4.5μmの厚さの第二のめっき層-Tbめっき層が第一のめっき層の表面に形成される。その後、基材は第三のターゲットを通過し、第三のターゲット材料はDyターゲットであり、スパッタリングパワーは8kWであり、1.6μmの厚さの第三のめっき層-Dyめっき層が、第二のめっき層の表面に形成される。磁石の片面をスパッタリングした後、磁石を裏返し、同じスパッタリングプロセスに従って磁石のもう一方の表面をスパッタして、希土類スパッタリング磁石を得る。
【0217】
10.希土類スパッタリング磁石に結晶粒界拡散処理を行い、希土類拡散磁石を得る。結晶粒界拡散処理の条件は、一次拡散処理:920℃で8時間の保温、二次拡散処理:480℃で6時間の保温である。
【0218】
この実施例の希土類拡散磁石をランダムに32枚サンプリングして磁気特性試験を行った。試験結果は、以下の通りである。
【0219】
【表22】
【0220】
30バッチの希土類拡散磁石の磁気特性がテストされ、結果が分析された。
【0221】
品質条件Brは14.0±0.1、Hcjは30.0±1kOeに設定し、BrのCPK=1.67とHcjのCPK=1.78を計算した。
【0222】
この実施例によればわかるように、本発明の解決策は、超高性能磁石を得ることができる。磁石の最大磁気エネルギー積(BH)maxと固有保磁力Hcjの合計は、75より大きく、磁石性能は安定しており、大型スケール生産に適している。
【0223】
走査型電子顕微鏡により、希土類磁石の配向方向に垂直な断面と希土類拡散磁石の断面の微細構造を観察したところ、図8および図9に示される4000倍の後方散乱(BSE)画像を得た。異なるコントラストで磁石の結晶粒界相を分析して、微細構造観察領域の総面積に対する異なる灰色の結晶粒界相の面積の割合と、微細構造観察領域の総面積に対する白い結晶粒界相の割合を計算した。結果は次のとおりである。
【0224】
【表23】
【0225】
三角形の領域でリッチしている白いと灰色の結晶粒界相の成分をEDS分析し、それらの灰色の結晶粒界フェーズが実施例1の灰色の結晶粒界フェーズと同じであり、いずれも6:13:1フェーズであることを発見する。白い結晶粒界相成分もまた、実施例1の白い結晶粒界相と同じであり、R~T~M相であり、DyとTbを含まない希土類元素Rの含有量が30at%を超えており、TとMの含有量は大きく異なることを発見する。図8図9では、希土類磁石と希土類拡散磁石とは、両者の白い結晶粒界相の面積の比は近似しており、実施例1と同様にいずれも1~3%の範囲である。希土類磁石の灰色の結晶粒界相の面積比と、希土類拡散磁石の灰色の結晶粒界相の面積比とを比較してもほとんど変化がなく、希土類磁石の拡散前後の結晶粒界相の面積比へほとんど影響がないことを示している。実施例1と比較して、実施例7の希土類磁石と希土類拡散磁石の灰色結晶粒界相の面積比がはるかに低いことは明らかである。磁石の灰色結晶粒界相と白色結晶粒界相の比率を下げると、主相の比率が増加し、さらに磁石のBrが増加することができる。このようにして、BrとHcjの高い拡散基材が得られる。重希土類拡散処理を行った後、最大磁気エネルギー積(BH)maxと固有保磁力Hcjの合計が75を超える超高性能磁石が最終的に得られる。図9の微細構造解析によるとわかるように、最大磁気エネルギー積(BH)maxと固有保磁力Hcjの合計は75を超える超高性能磁石が得る。その灰色結晶粒界相の面積比は2~4%に制御する必要があり、白い結晶粒界相の割合は1~3%に制御する必要がある。
【実施例8】
【0226】
1.各元素の質量比に応じて、主合金原料と補助合金原料をを作製する。主合金原料の各元素の質量比は、(PrNd)30.5DyAl0.95Co1.0Cu0.1Ga0.520.96Febalです。補助合金原料の各元素の質量比は(PrNd)32.5Co1.0Ga0.510.85Febalである。
【0227】
ステップ2~5は、実施例6~1と同じであるが、ステップ4の主合金と補助合金の質量混合比は95:5である。
【0228】
6.コンパクトを真空焼結炉に入れて焼結し、焼結磁石を得る。焼結温度は1000℃、時間は6hであり、焼結後の磁石密度は7.56g/cmである。
【0229】
7.焼結磁石を30×20×2mmの大きさの基材に加工し、表面を脱脂と酸洗い処理を行う。
【0230】
8.基材をスパッタして、めっき層を形成して、スパッタリング中の圧力は0.55Paで、基材は10mm/sの速度でターゲットを通過し、ターゲットと基材の間の距離は95mmに保たれる。基材は最初に第1のターゲットを通過し、第1のターゲットはNdターゲットであり、スパッタリングパワーは4kWであり、第1のめっき層-Ndめっき層が1μmの厚さで基材上に形成される。その後、基材は第二のターゲットを通過し、第二のターゲット材料はTbターゲットであり、スパッタリングパワーは20kWであり、厚さ4μmの第二のめっき層-Tbめっき層が第一のめっき層の表面に形成される。その後、基材は第三のターゲットを通過し、第三のターゲットはDyターゲットであり、スパッタリングパワーは12kWであり、2μmの厚さの第三のめっき層-Dyめっき層が第二のめっき層の表面に形成される。磁石の片面をスパッタリングした後、磁石を裏返し、同じスパッタリングプロセスに従って磁石のもう一方の表面をスパッタして、希土類スパッタリング磁石を得る。
【0231】
9.希土類スパッタリング磁石に結晶粒界拡散処理を行い、希土類拡散磁石を得る。結晶粒界拡散処理の条件は、一次拡散処理:920℃で8時間の保温、二次拡散処理:500℃で6時間の保温である。
【0232】
この実施例の希土類拡散磁石をランダムに32枚サンプリングして磁気特性試験を行った。試験結果は、以下の通りである。
【0233】
【表24】
【0234】
30バッチの希土類拡散磁石の磁気特性をテストし、結果が分析された。
【0235】
品質条件Brは13.2±0.1、Hcjは33.0±1kOeに設定し、BrのCPK=1.67とHcjのCPK=1.77を計算した。
【0236】
この実施例によればわかるように、本発明の解決策は、超高性能磁石を得ることができる。磁石の最大磁気エネルギー積(BH)maxと固有保磁力Hcjの合計は、75より大きく、かつ磁石性能は安定しており、大型スケール生産に適している。
【実施例9】
【0237】
1.各元素の質量比に応じて、主合金原料と補助合金原料を作製する。主合金原料の各元素の質量比は、(PrNd)31.3Dy0.5Tb0.7Al0.95Co1.0Cu0.3Ga0.80.96Febal、補助合金原料の各元素の質量比は(PrNd)31.3Dy0.5Tb0.7Al0.1Co1.0Cu0.1Ga0.80.89Febalである。
【0238】
ステップ2~10は、実施例8と同じで、希土類拡散磁石を得る。
【0239】
本実施例の希土類拡散磁石をランダムに32枚サンプリングして磁気特性試験を行った。試験結果は、以下の通りである。
【0240】
【表25】
【0241】
30バッチの希土類拡散磁石の磁気特性をテストし、結果が分析された。
【0242】
品質条件Brは12.7±0.1、Hcjは38.0±1kOeに設定し、BrのCPK=1.65とHcjのCPK=1.77を計算した。
【0243】
本実施例から明らかなように、本発明の構成によれば、超高性能な磁石を得ることができる。磁石の最大磁気エネルギー積(BH)maxと固有保磁力Hcjの合計は、75より大きく、かつ磁石性能は安定しており、大型スケール生産に適している。
【0244】
なお、添付の図面を参照して記載された上記の様々な実施例は、本発明を説明するためのもののみであるが本発明の範囲を限定するものではない。当業者にとっては理解すべきように、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明に対してなされた修正または同等の置換は、すべて本発明の範囲内に含まれるべきである。さらに、文脈で別段の指示がない限り、単数形で表示される単語には複数形が含まれ、その逆も同様である。さらに、特に明記しない限り、任意の実施例の全部または一部を、他の任意の実施例の全部または一部と組み合わせて使用することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9