(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】検査用アンテナシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 22/00 20060101AFI20220620BHJP
H01Q 1/12 20060101ALI20220620BHJP
G01R 29/08 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
G01N22/00 F
H01Q1/12 C
G01R29/08 C
(21)【出願番号】P 2021535312
(86)(22)【出願日】2019-03-07
(86)【国際出願番号】 CA2019050277
(87)【国際公開番号】W WO2020140147
(87)【国際公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-06-17
(32)【優先日】2018-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521266918
【氏名又は名称】クオンタム ヴァリー アイデアズ ラボラトリーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100158469
【氏名又は名称】大浦 博司
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー ジェームズ ピー
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-273518(JP,A)
【文献】特開2005-124084(JP,A)
【文献】特開2012-034313(JP,A)
【文献】特開平05-014291(JP,A)
【文献】特開平11-074824(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0363617(US,A1)
【文献】SANTOSH KUMAR,Rydberg-atom based radio-frequency electrometry using frequency modulation spectroscopy in room temperature vapor cells,OPTICS EXPRESS,2017年04月,Vol.25 No.8,pp.8625-8637
【文献】MATT T.SIMONS,Fiber-coupled vapor cell for a portable Rydberg atom-based radio frequency electric field sensor,Applied Optics,2018年08月,Vol.57 No.22,pp.6456-6460
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 22/00-22/04
G01R 29/08-29/10
H04B 17/00-17/40
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルタワーからの電磁放出を測定する方法であって、前記方法は、
前記セルタワーと関連した蒸気セルセンサシステムのところで、前記セルタワーに設けられたアンテナシステムからの電磁放射を受け取るステップと、
前記蒸気セルセンサシステムのところで、レーザシステムから伝えられた入力光信号をそれぞれの入力光チャネルにより受け取るステップと、
前記蒸気セルセンサシステムで、前記入力光信号および前記電磁放射に基づいて出力光信号を発生させるステップと、
前記蒸気セルセンサシステムから、前記出力光信号を1つまたは2つ以上のそれぞれの出力光チャネルによって検出システムに送るステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記アンテナシステムは、標的方向に沿って集束された少なくとも一部分を含む電磁放射の空間分布を生じさせるよう構成されている、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記アンテナシステムは、複数のアンテナを含み、前記蒸気セルセンサシステムは、各々が前記アンテナシステムのうちの前記アンテナの各々とそれぞれ関連した複数の蒸気セルセンサデバイスを含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記アンテナシステムは、複数のアンテナを含み、前記蒸気セルセンサシステムは、蒸気セルセンサデバイスのサブグループを含み、各サブグループは、前記複数のアンテナのうちの単一のそれぞれ対応したアンテナと関連している、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記レーザシステムは、前記入力光チャネルに前記セルタワーの外部に位置するそれぞれ入力光ポートによって結合され、
前記検出システムは、前記1つまたは2つ以上の出力光チャネルに前記セルタワーの外部に位置するそれぞれの出力光ポートによって結合されている、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記レーザシステムおよび前記検出システムは、モバイルプラットホームに設けられている、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記入力光チャネルおよび前記1つまたは2つ以上の出力光チャネルは、前記セルタワーから遠隔のサービスステーションまで延びている、請求項5記載の方法。
【請求項8】
前記入力光チャネルおよび前記1つまたは2つ以上の出力光チャネルは、前記セルタワーから遠隔のサービスステーションまで延び、
前記レーザシステムおよび前記検出システムは、前記サービスステーションのところに配置されている、請求項5記載の方法。
【請求項9】
前記蒸気セルセンサ
システムは、少なくとも一部が、前記電磁放射に対して透明な誘電体で作られている、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記アンテナシステムは、標的方向に沿って集束された少なくとも一部分を含む電磁放射の空間分布を生じさせるよう構成され、
前記方法は、前記検出システムのところで、前記出力光信号のうちの少なくとも1つを規定する光の周波数依存性透過率を測定するステップを含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
蒸気セルセンサシステムのところで、前記アンテナシステムからの電磁放射を受け取る前記ステップは、前記光の周波数依存性透過率を測定しながら前記標的方向を変更するステップを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記光の周波数依存性透過率を測定する前記ステップは、1対の透過率ピーク相互間の周波数分離度を算定するステップを含む、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記光の周波数依存性透過率を測定する前記ステップは、1対の透過率ピークのうちの一方または両方の振幅を算定するステップを含む、請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記光の周波数依存性透過率を測定する前記ステップは、前記アンテナシステムの全放射電力を算定するステップを含む、請求項10記載の方法。
【請求項15】
前記光の周波数依存性透過率を測定する前記ステップは、前記アンテナシステムの全等方性感度を算定するステップを含む、請求項10記載の方法。
【請求項16】
前記入力光信号
は2つの入力光信号である、請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記1つまたは2つ以上の出力光信号
は単一の出力光信号である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
セルタワーからの電磁放出を測定するシステムであって、前記システムは、
前記セルタワーに設けられたアンテナシステムからの電磁放射を受け取るよう位置決めされた蒸気セルセンサシステムを含み、前記蒸気セルセンサシステムは、前記電磁放射および入力光信号に基づいて1つまたは2つ以上の出力光信号を発生させるよう構成され、
レーザシステムからの前記入力光信号を前記蒸気セルセンサシステムに伝えるよう構成された入力光チャネルを含み、
前記蒸気セルセンサシステムからの前記1つまたは2つ以上の出力光信号を検出システムに伝えるよう構成された1つまたは2つ以上の出力光チャネルを含む、システム。
【請求項19】
前記アンテナシステムは、標的方向に沿って集束された少なくとも一部分を含む電磁放射の空間分布を生じさせるよう構成されている、請求項18記載のシステム。
【請求項20】
前記蒸気セルセンサシステムは、少なくとも一部が前記電磁放射に対して透明な誘電体で作られた蒸気セルセンサデバイスを含む、請求項18記載のシステム。
【請求項21】
前記入力光チャネルのうちの少なくとも一部分および前記1つまたは2つ以上の出力光チャネルのうちの少なくとも一部分は、光ファイバケーブルによって構成されている、請求項18記載のシステム。
【請求項22】
前記入力光信号を発生させるとともに前記入力光チャネルと関連した入力光ポートに結合するよう構成された前記レーザシステムと、
前記1つまたは2つ以上の出力光信号を受け取るとともに前記1つまたは2つ以上の出力光チャネルと関連した出力光ポートに結合するよう構成された前記検出システムとを含む、請求項18記載のシステム。
【請求項23】
前記入力光ポートおよび前記出力光ポートは、前記セルタワーの外部に位置している、請求項22記載のシステム。
【請求項24】
前記レーザシステムおよび前記検出システムは、モバイルプラットホームに設けられている、請求項22記載のシステム。
【請求項25】
前記入力光ポートおよび前記出力光ポートは、遠隔のサービスステーションのところに配置され、
前記入力光チャネルは、前記蒸気セルセンサシステムから前記入力光ポートまで延び、前記1つまたは2つ以上の出力光チャネルは、前記蒸気セルセンサシステムから前記出力光ポートまで延びている、請求項22記載のシステム。
【請求項26】
前記レーザシステムおよび前記検出システムは、モバイルプラットホームに設けられている、請求項25記載のシステム。
【請求項27】
前記レーザシステムおよび前記検出システムは、前記遠隔
のサービスステーションのところに配置されている、請求項25記載のシステム。
【請求項28】
前記入力光信号
は2つの入力光信号である、請求項18記載のシステム。
【請求項29】
前記1つまたは2つ以上の出力光信号
は単一の出力光信号である、請求項28記載のシステム。
【請求項30】
前記入力光信号
は3つの入力光信号である、請求項18記載のシステム。
【請求項31】
前記入力光信号
は3つの入力光信号である、請求項
1記載の方法。
【請求項32】
前記電磁放射は、100MHzから10THzまでの範囲にある周波数を有する、請求項1記載の方法。
【請求項33】
前記電磁放射は、2GHzから75GHzまでの範囲にある周波数を有する、請求項1記載の方法。
【請求項34】
前記電磁放射は、100MHzから10THzまでの範囲にある周波数を有する、請求項18記載のシステム。
【請求項35】
前記電磁放射は、2GHzから75GHzまでの範囲にある周波数を有する、請求項18記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
〔関連出願の説明〕
本願は、2018年12月31日に出願された米国特許仮出願第62/786,675号の優先権主張出願であり、この米国特許仮出願を参照により引用し、その開示内容を本明細書の一部とする。
【0002】
以下の説明は、検査用アンテナシステムに関する。
【0003】
セルラー方式(移動通信方式とも呼ばれる)は、セルラー対応デバイス(「ユーザ機器」)とワイヤレス通信するよう基地局のところに設置されたアンテナシステムを使用している。ミリ波スペクトルを使用するいわゆる5G(第5世代)セルラー方式は、一般にデータ転送速度を増大させるとともに信号の品質を高めるよう開発された。ミリ波スペクトルは、極高周波数および超高周波数バンドをカバーする高周波スペクトルのバンド(帯域)である。ミリ波は、10mmから1mmまでの範囲にある波長を有する。多くの用途に関し、ミリ波は、赤外線波およびマイクロ波よりも優れており、これらの理由で、ミリ波アンテナがワイヤレス通信および他の用途のために他の多くのコンテキスト(例えば、軍事環境および航空宇宙環境)においても使用される場合がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の一観点によれば、セルタワーからの電磁放出を測定する方法であって、
セルタワーと関連した蒸気セルセンサシステムのところで、セルタワーに設けられたアンテナシステムからの電磁放射を受け取るステップと、
蒸気セルセンサシステムのところで、レーザシステムから伝えられた入力光信号をそれぞれの入力光チャネルにより受け取るステップと、
蒸気セルセンサシステムで、入力光信号および電磁放射に基づいて出力光信号を発生させるステップと、
蒸気セルセンサシステムから、出力光信号を1つまたは2つ以上のそれぞれの出力光チャネルによって検出システムに送るステップとを含むことを特徴とする方法が提供される。
【0005】
本発明の別の観点によれば、セルタワーからの電磁放出を測定するシステムであって、
セルタワーに設けられたアンテナシステムからの電磁放射を受け取るよう位置決めされた蒸気セルセンサシステムを含み、蒸気セルセンサシステムは、電磁放射および入力光信号に基づいて1つまたは2つ以上の出力光信号を発生させるよう構成され、
レーザシステムからの入力光信号を蒸気セルセンサシステムに伝えるよう構成された入力光チャネルを含み、
蒸気セルセンサシステムからの1つまたは2つ以上の出力光信号を検出システムに伝えるよう構成された1つまたは2つ以上の出力光チャネルを含むことを特徴とするシステムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】セルタワーからの電磁放出を測定する例示のシステム略図である。
【
図2A】アンテナに結合された単一の蒸気セルセンサデバイスの一定の概略側面図である。
【
図2B】蒸気セルセンサシステムおよびセルタワーに設けられたアンテナシステムの概略平面図である。
【
図2C】アンテナに結合された蒸気セルセンサデバイスのアレイの一例の概略側面図である。
【
図3】
図1の例示のシステムの多数の場合がそれぞれのセルタワー上に配備された広域配備例の略図である。
【
図4】電磁放射の特性を算定する例示の測定システムの略図である。
【
図5A】電磁放射を発生させるよう構成されたアンテナの近くに位置決めされた例示としての蒸気セルセンサデバイスの略図である。
【
図5B】蒸気の状態の
87Rbを利用した二光子測定法のための例示の原子エネルギーレベル構造の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書において説明する内容の幾つかの観点では、セルタワーからの電磁放出を測定するシステムおよび方法が提供される。セルタワーは、例えば、5Gアンテナシステムであってよいセルラーアンテナシステムを含んでよい。幾つかの具体化例では、セルタワーからの電磁放出を測定するシステムがセルタワーに設けられたアンテナシステムからの電磁放射を受け取るよう位置決めされた蒸気セルセンサシステムを含む。蒸気セルセンサシステムは、電磁放射および入力光信号に基づいて1つまたは2つ以上の出力光信号を発生させるよう構成されてよい。本システムは、レーザシステムからの入力光信号を蒸気セルセンサシステムに伝えるよう構成された入力光チャネルをさらに含んでよい。本システムはさらに、蒸気セルセンサシステムからの1つまたは2つ以上の出力光信号をそれぞれ検出システムに伝えるよう構成された1つまたは2つ以上の出力光チャネルを含んでよい。幾つかの場合、本システムは、レーザシステムおよび検出システムを含む。レーザシステムは、入力光信号を発生させるとともに入力光チャネルとそれぞれ関連した入力光ポートに結合するよう構成されてよい。検出システムは、1つまたは2つ以上の出力光信号を受け取るとともに1つまたは2つ以上の出力光チャネルとそれぞれ関連した出力光ポートに結合するよう構成されてよい。
【0008】
幾つかの具体化例では、セルタワーからの電磁放出を測定する方法がセルタワーと関連した蒸気セルセンサシステムのところで、セルタワーに設けられたアンテナシステムからの電磁放射を受け取るステップを含む。本方法は、蒸気セルセンサシステムのところで、レーザシステムから伝えられた入力光信号をそれぞれの入力光チャネルにより受け取るステップをさらに含んでよい。本方法はさらに、蒸気セルセンサシステムで、入力光信号および電磁放射に基づいて出力光信号を発生させるステップを含んでよい。本方法はさらに、蒸気セルセンサシステムから、出力光信号を1つまたは2つ以上のそれぞれの出力光チャネルによって検出システムに送るステップを含んでよい。幾つかの場合、レーザシステムは、入力光チャネルにセルタワーの外部に位置するそれぞれ入力光ポートによって結合される。検出システムは、1つまたは2つ以上の出力光チャネルにセルタワーの外部に位置するそれぞれの出力光ポートによって結合されてよい。
【0009】
幾つかの具体化例では、本システムおよび本方法は、GHz台からTHz台にある波長向きに使用できるとともにセルタワーが指定されたガイドライン(例えば、調節および故障検査)内で働いているようにするためにセルタワーを検査するために使用できる。例えば、蒸気セルセンサシステムは、アンテナシステムの動作を較正するとともに検査することができるよう各セルタワー上に配置されてよい。蒸気セルセンサシステムは、アンテナシステムのうちの各アンテナの近くに設けられた(例えば、これに取り付けられた)1つまたは2つ以上の蒸気セルセンサを含んでよい。幾つかの蒸気セルセンサおよびアンテナは、例えばアンテナのような電磁放射源相互間の干渉により位相情報を提供するよう使用できる。蒸気セルセンサシステムの蒸気セルセンサを、幾つかの場合、近接場(近傍界ともいう)から非近接場(遠方界ともいう)まで動かすことができる。蒸気セルセンサはまた、タワー上の高い位置から例えばこれら蒸気セルセンサをレーザシステムおよび検出システムに接続することができる地表にファイバ結合されてよい。
【0010】
レーザシステムおよび検出システムは、幾つかのアンテナ配設場所から離れた場所に存在してよい。例えば、レーザシステムおよび検出システムは、トラック上に配置されてこれらを監視するようセルタワー(またはアンテナ)相互間で搬送されるのが良い。幾つかの場合、相当広い領域において多くのアンテナと関連した蒸気セルセンサは、遠隔検査を実施可能にするようサービスステーションにファイバ結合されてよい。検出システムは、光学的画像化のための個々の電力センサまたは電力センサのアレイであってよい。検出システムはまた、蒸気セルセンサシステムを多重入力・多重出力(MIMO)アンテナに組み込むことによってMIMOアンテナの各アンテナ素子を探査するよう構成されていてよい。
【0011】
幾つかの具体化例では、本明細書において説明するシステムおよび方法は、ミリ波ビーム生成アンテナのワイヤレス通信経由(over-the-air:OTA)試験を実施してこれらの機能を有効化するとともにこれら機能が動作基準に適合するようにするために使用できる。幾つかの場合、測定は、自動較正され、そしてミリ波方式で動作してよい。かかる検査および測定は、種々のセッティングにおいて有用であるといえ、かかるセッティングとしては、セルラー基地局保守および検査が挙げられる。例えば、ネットワークオペレータは、本明細書において説明するシステムおよび方法を用いて干渉および他の性能上の問題を費用効果の良い仕方で制御することができる。別の実施例として、監視官または他形式の制御主体は、これらシステムおよび方法によって提供される測定を利用して動作基準の順守を確認し、例えば、ミリ波スペクトルの使用の公平性を確認することができる。
【0012】
多くの環境では、ミリ波は、比較的僅かな距離にわたってしか伝搬することができず、このことは、5G通信システムおよびミリ波を利用した他の通信システムの設計にとって難題である。ミリ波(例えば、5~8kmオーダ)の短い伝搬距離は、セルタワーおよびかかる通信システムの具体化のための他の機器の数を劇的に増大させ、それにより保守費をエスカレートさせる。5Gセルラーシステムを一例として考慮すると、ビーム生成アンテナは、重要な役目を果たすとともにサービスおよび検査を必要とすることが見込まれる。バックホール(backhaul)システムに関し、5Gノードが諸都市全体を通じて高密度に配備される必要があり、かかるコンテキストでは、効率の良い保守(例えば、都市環境において高密度ネットワークのサービス、検査、測定)は、ネットワークの動作を向上させる。加うるに、向上したOTA検査は、ミリ波技術に関して地球全体にわたっての基準をハーモナイズさせるとともに5Gおよび他の技術の具体化例の迅速な採用を促進するのを助けることができる。
【0013】
ミリ波通信における自由空間経路損失を解消するため、アンテナアレイは、通常、ターゲットまたは受け取り装置に向いた操縦可能なビームを生成することによって高い方向性を達成するために用いられる。ビーム生成アンテナは、典型的には、方向特性を得るよう用いられる素子のアレイ、いわゆるMIMOアンテナを含む。放射パターンの性能評価のためのOTA検査は、例えば、5Gの新しい無線(NR)技術においてMIMOアンテナを用いる通信システムに有用であろう。例えば、アンテナアレイ較正は、アンテナアレイビーム操縦およびサイドローブ抑制にとって重要な場合がある。幾つかの実施例では、アンテナ素子相互の正確な位相および振幅の差は、性能を最大にするよう較正されるとともに調節される必要のある場合がある。幾つかのシステムでは、較正および最適化は、他のシステム素子、例えば、増幅器または送受信器(トランシーバ)がアンテナシステムに組み込まれる場合があるということにより複雑になる場合がある。アンテナシステムの較正に影響を及ぼすパラメータのうちの多くは、経時的に変化する場合もあり、というのは、これらが例えば、天候や経年劣化のような要因によって影響を受けるからである。マルチプルフィールドポイント測定は、ミリ波ビームを特徴づけるためにアンテナシステムのところで実施できる。
【0014】
5Gセルラーシステムの検査は、他の技術、例えば、4G(LTE)の検査とは異なるであろう。セルラー業界は、ユーザ機器内のネットワークの信頼性を保証したいと考えている。例えば、米国では、通信事業者は、デバイス性能に関する業界標準を設定しなければならない。OTA検査は、モバイルロケーションデバイスと固定ロケーションデバイスの両方においてシステムおよびコンポーネントの評価に有用であろう。例えば、絶対的自動較正センサおよび標準は、種々異なる環境において(例えば、現場とそれに対する研究および開発環境において)検査相互間の直接的な比較を行うのに有用な場合がある。ミリ波周波数での伝送距離が減少すると、広範な条件下において正確に検査を行うことが非常に重要になり、かかる条件は、自由空間経路損失、大気吸収、雨および粒状物に起因した散乱、および視線上の障害物のような影響を含む。基地局に関する較正および標準もまた、ワイヤレス通信を利用する技術(例えば、自動車両、ドローン、および公共の安全性に影響を及ぼす産業機器)の動作を向上させることになる。絶対的自己較正センサシステムもまた、かかるシステムの保証に有用な場合がある。
【0015】
ミリ波アンテナに関し、包装および取り付け装置を含むアンテナ近くのほぼ全てのコンポーネントは、性能に影響を及ぼす場合がある。MIMOアンテナに関連した他の技術的課題は、アンテナコンポーネントおよび互いに異なるアンテナ相互間の相互結合を含む。アンテナアレイの不規則性の結果として、各アンテナは、個々に較正されなければならない。サイズの両極端(小と大の両方)および何が基本的により正確でありかつ電磁的に透明な導体のないプローブであるかによって軽減できる電力について追加の技術的課題が存在する。
【0016】
今
図1を参照すると、セルタワー102からの電磁放出を測定する例示のシステム100の略図が示されている。例示のシステム100は、セルタワー102に設けられたアンテナシステム106からの電磁放射を受け取るよう位置決めされた蒸気セルセンサシステム104を含む。蒸気セルセンサシステム104は、電磁放射および入力光信号に基づいて1つまたは2つ以上の出力光信号を発生させるよう構成されている。例示のシステム100は、レーザシステムからの入力光信号を蒸気セルセンサシステム104に伝達するよう構成された入力光チャネル108をさらに含む。例示のシステム100はさらに、1つまたは2つ以上の出力光信号を蒸気セルセンサシステム104から検出システムに伝達するよう構成された1つまたは2つ以上の出力光チャネル110を含む。例えば、
図1に示された幾つかの具体化例では、入力光チャネル108の少なくとも一部分および1つまたは2つ以上の出力光チャネル110のうちの少なくとも一部分は、光ファイバケーブルによって構成される。
【0017】
幾つかの具体化例では、蒸気セルセンサシステム104は、少なくとも一部が電磁放射に対して透明である誘電体で作られた蒸気セルセンサデバイスを含む。蒸気セルセンサデバイスは、例えば、ジェイ・エー・セドラチェク等(J.A. Sedlacek, et al.),「マイクロウェーブ・エレクトロメトリ・ウィズ・リュードベリ・アトムズ・イン・ア・ヴェーパー・セル・ユージング・ブライト・アトミック・レゾナンシズ(Microwave electrometry with Rydberg atoms in a vapour cell using bright atomic resonances)」,ネイチャー・フィジックス(Nature Physics),2012年,8号,p.819‐824に記載された形式のものであってよい。他形式または他形態の蒸気セルセンサデバイスを幾つかの場合に使用することができる。誘電体は、蒸気セルセンサデバイスのための窓を構成するのが良く、この窓を通って電磁放射が受け取られる。誘電体の例としては、シリコン、シリケートを主成分とするガラス、および石英が挙げられる。蒸気セルセンサデバイスは、電磁放射に応答して光透過率を変える蒸気状態の原子(例えば、気化87Rbまたは133Cs)を含んでよい。光透過率は、蒸気状態の原子の第1の光学遷移および第2の光学遷移の影響を受ける場合がある。幾つかの場合、追加の光学遷移(例えば、第3の光学遷移)は、光透過率に影響を及ぼす場合がある。
【0018】
蒸気セルセンサシステム104は、アンテナシステム160の個々のアンテナに結合された(例えば、これに取り付けられた)1つまたは2つ以上の蒸気セルセンサデバイスを含んでよい。例えば、
図2Aは、アンテナ202に結合された単一の蒸気セルセンサデバイス200の概略側面図である。蒸気セルセンサデバイス200により、アンテナ202の電場を画像化することができ、それによりアンテナ202からの電磁放射の放出量を最適化することができる(例えば、アンテナ202からの空間投影または分布を最適化することができる)。蒸気セルセンサデバイス200は、アンテナ202の中央部分に位置決めされてよい。例えば、蒸気セルセンサデバイス200は、アンテナ202からの放射電力を測定するよう中央に位置決めされてよい。しかしながら、他の位置の採用が可能である。アンテナ202は、アンテナハウジング内に設けられた複数のアンテナにより構成されるMIMOアンテナであってよい。蒸気セルセンサデバイス200は、入力光チャネルおよび出力光チャネルを構成する1本または2本以上の光ファイバケーブル204に光結合されてよい。
【0019】
図2Aに示された構成は、
図1の例示のシステム100の基礎としての役目を果たすことができる。例えば、
図2Bは、セルタワー224に設けられた蒸気セルセンサシステム220およびアンテナシステム222の概略平面図である。蒸気セルセンサシステム220は、各々がアンテナシステム222を構成する複数のアンテナ228のうちの各アンテナ228にそれぞれ結合された複数の蒸気セルセンサデバイス226を含む。複数の蒸気セルセンサデバイス226は、それぞれの光ファイバケーブル230を有し、これら光ファイバケーブルは、対応の入力光チャネルおよび出力光チャネルとしての役目を果たす。入力および出力光チャネルは、ひとまとまりとなって、セルタワー224からの電磁放出を測定するシステム(例えば、
図1の例示のシステム100)のための入力光チャネルおよび出力光チャネルとして働くことができる。
図2Aは、6つの対応のアンテナ228に結合されるとともにセルタワー224周りに対称に配置された6つの蒸気セルセンサデバイス226を示しているが、蒸気セルセンサデバイス226およびアンテナ228について他の数および他の配置の採用が可能である。
【0020】
幾つかの変形例では、アンテナシステムのアンテナには、複数の蒸気セルセンサデバイスが結合されてよい。
図2Cは、アンテナ242に結合された蒸気セルセンサデバイス240のアレイの概略側面図である。蒸気セルセンサデバイス204のアレイは、アンテナ242の電場の画像化(例えば、単一の蒸気セルセンサデバイスに対して)向上させることができる。アンテナ202は、アンテナハウジング内に設けられた複数のアンテナにより構成されるMIMOアンテナであってよい。このアレイでは、蒸気セルセンサデバイス240のサブグループは、
図2Cに示されているように、1本または2本以上の光ファイバケーブル244を用いて直列に互いに光結合されてよい。光ファイバケーブル244は、入力光チャネルおよび出力光チャネルとしての役目を果たすことができる。しかしながら、幾つかの変形例では、1本または2本以上の光ファイバケーブルは、各蒸気セルセンサデバイス240と一義的に関連していてよい。
【0021】
次に
図1に戻ってこれを参照すると、アンテナシステム106は、標的方向に沿って集束された少なくとも一部分を含む電磁放射の空間分布を生じさせるよう構成されていてよい。例えば、アンテナシステム106は、電磁放射のビームを生成するよう動作可能な1つまたは2つ以上のMIMOアンテナを含んでよい。標的方向は、セルタワー102からの電磁放射を受け取るよう構成された装置またはデバイス(例えば、携帯電話、ノートブック型コンピュータ、デスクトップ型コンピュータ、タブレット、時計など)のところで終わってよい。幾つかの場合、アンテナシステム106は、100MHzから10THzまでの範囲にある周波数を有する電磁放射を生じさせるよう構成されている。幾つかの場合、アンテナシステム106は、2GHzから75GHzまでの範囲にある周波数を有する電磁放射を生じさせるよう構成されている。これらの場合、電磁放射は、5Gワイヤレスプロトコルを用いてワイヤレス通信を可能にする。しかしながら、他のワイヤレスプロトコル(例えば、3G、4Gなど)の採用が可能である。
【0022】
幾つかの具体化例では、例示のシステム100は、入力光信号を発生させるとともに入力光チャネルと関連した入力光ポートに結合するよう構成されたレーザシステム112を含む。例えば、レーザシステム112は、入力光信号を規定する2つの入力光信号を発生させるよう構成されていてよい。2つの入力光信号は、周波数が蒸気状態の原子、例えば、蒸気セルセンサデバイス内に入っている原子のそれぞれの光学遷移と共振してよい。単一の出力光信号は、蒸気セルセンサシステム104によって生じた1つまたは2つ以上の出力光信号を規定することができる。別の実施例では、レーザシステム112は、入力光信号を規定する3つの入力光信号を発生させるよう構成されていてよい。3つの入力光信号は、周波数が蒸気状態の原子、例えば、蒸気セルセンサデバイス内に入っている原子のそれぞれの光学遷移と共振してよい。単一の出力光信号が蒸気セルセンサシステム104によって生じた1つまたは2つ以上の出力光信号を規定してよい。別の具体化例では、例示のシステム100は、1つまたは2つ以上の出力光信号を受け取るとともに1つまたは2つ以上の出力光チャネルと関連した出力光ポートに結合するよう構成された検出システム114を含む。
【0023】
多くの具体化例では、例示のシステム100は、入力光チャネルと関連した入力光ポートおよび1つまたは2つ以上の出力光チャネルと関連した出力光ポートを含む。入力光ポートおよび出力光ポートは、セルタワー102の内部に位置してよい。例えば、入力光ポートおよび出力光ポートは、セルタワー102の地表面部分のところでサービス箱を介して接近可能であってよい。入力光リポートおよび出力光ポートはまた、セルタワー102の外部に位置してもよい。例えば、入力光ポートおよび出力光ポートは、遠隔サービスステーションのところに配置されてこの中で接近可能であってよい。
【0024】
例えば、
図1に示された幾つかの具体化例では、レーザシステム112および検出システム114は、モバイルプラットホーム、例えば、サービスバンに設けられる。モバイルプラットホームは、レーザ検出システム112および検出システム114を
図1の例示のシステム100に類似したシステムを有する他のセルタワーまで搬送するよう動作可能であってよい。他の具体化例では、レーザシステム112および検出システム114は、セルタワー102に隣接して位置する静止プラットホームに設けられる。例えば、レーザシステム112および検出システム114は、セルタワー102の地表面部分に隣接して保護エンクロージャ(例えば、サービス用物置)内に設けられてよい。レーザシステム112および検出システム114は、それぞれ、入力光チャネルと関連した入力光ポートおよび1つまたは2つ以上の出力光チャネルと関連した出力光ポートに光結合されてよい。
【0025】
幾つかの具体化例では、入力光ポートおよび出力光ポートは、遠隔サービスステーションのところに配置されている。これら具体化例では、入力光チャネルは、蒸気セルセンサシステム104から遠隔サービスステーションのところの入力光ポートまで延びている。同様に、1つまたは2つ以上の出力光チャネルは、蒸気セルシステム104から遠隔サービスステーションのところの出力光ポートまで延びている。
図3は、広域配備例300の略図であり、この配備例では、
図1の例示のシステム100の多くの実例302がそれぞれのセルタワー304上に配備されている。実例302およびこれらのそれぞれ対応したセルタワー304のうちの幾つかは、図面を分かりやすくするために
図3から省かれている。広域配備例300は、
図1の例示のシステム100の各実例302に光結合されたサービスステーション306を含む。かかる光結合は、オプションとして光ファイバケーブルによって構成された入力光チャネルおよび出力光チャネルを介して起こる。遠隔サービスステーション306は、各実例302について少なくとも1つの入力光ポートおよび少なくとも1つの出力光ポートを含む。幾つかの変形例では、実例302は、レーザシステムおよび検出システムを共有している。例えば、レーザシステムおよび検出システムは、モバイルプラットホームに設けられてよく、モバイルプラットホームは、レーザシステムおよび検出システムをそれぞれ入力光ポートおよび出力光ポートに結合可能に遠隔サービスステーションまで搬送してよい。別の実施例では、レーザシステムおよび検出システムは、遠隔サービスステーション306のところに配置されている。レーザシステムおよび検出システムは、それぞれ、入力光ポートおよび出力光ポートに光結合されてよい。
【0026】
今、
図1に戻ってこれを参照すると、動作の際、アンテナシステム106は、セルラー通信、検査または基準パターンに対応した電磁放射または他形式の電磁放射を発生させてよい。電磁放射は、蒸気セルセンサシステム104によって受け取られ、かかる受け取りにあたり、電磁放射を誘電体で形成された窓に通してよい。具体的には、電磁放射(またはその幾つかの部分)は、蒸気セルセンサシステム104の1つまたは2つ以上の蒸気セルセンサデバイスによって受け取られてよく、蒸気セルセンサデバイスは各々、誘電体で形成された窓を含む。1つまたは2つ以上の蒸気セルセンサデバイスは、原子を蒸気の状態で収容しており、これら蒸気状態の原子は、電磁放射と相互作用する。かかる相互作用中、入力光チャネルは、入力光信号をレーザシステム112から蒸気セルセンサシステム104に伝えることができる。入力光信号は、蒸気状態の原子を通過し、原子は、電磁放射の存在に起因して光透過率の変化を生じる。例えば、レーザシステム112は、蒸気状態の原子を通過する第1の入力光信号(またはプローブレーザ信号)および第2の入力光信号(または結合レーザ信号)を生じさせることができる。第1の入力光信号は、電場の存在に起因して周波数依存性吸収(または透過)を受けることができる。かかる現象は、原子を利用した電磁的に誘導される透過(EIT)をもたらすことができる。
【0027】
また、電磁放射と蒸気状態の原子との相互作用中、蒸気セルセンサシステム104は、1つまたは2つ以上の出力光信号を発生させることができる。1つまたは2つ以上の出力光信号は、蒸気状態の原子との相互作用後、入力光信号に基づいてよい。具体的には、1つまたは2つ以上の出力光チャネルが蒸気状態の原子との相互作用後、少なくとも1つの入力光信号を受け取ったときに1つまたは2つ以上の出力光信号を発生させてよい。例えば、第1の入力光信号(またはプローブレーザ信号)は、蒸気状態の原子との相互作用後に1つまたは2つ以上の出力光チャネルによって受け取られてよい。第1の入力光信号は、1つまたは2つ以上の出力光チャネルによって検出システム114に伝えられ、それにより1つまたは2つ以上の出力光信号を規定して(またはその一部をなして)よい。検出システム114は、1つまたは2つ以上の出力光チャネルと関連した出力光ポートに結合されてよい。検出システム114はまた、1つまたは2つ以上の出力光信号に基づいてデータを発生させてよく、かかるデータは、電磁放射の特性を表す。かかる特性の例としては、電磁放射の空間分布、電磁放射の全放射電力(TRP)が挙げられる。データは、アンテナシステム106の特性、例えば、アンテナシステム106の全等方性感度(TIS)を表してよい。
【0028】
幾つかの具体化例では、例示のシステム100は、GHz台の周波数からTHz台の周波数向きに構成され、したがって、かかる例示のシステムは、ミリ波アンテナシステム(例えば、セルタワー上に配備されたアンテナシステム)を測定するとともに検査し、そしてこれらが政府規制を含む指定されたガイドライン内で動作していることを保証するために使用できる。例えば、蒸気セルセンサシステムは、各セルタワーまたはアンテナシステム上に配置されてよく、その結果、アンテナシステム(またはこのアンテナシステム内の個々のアンテナ)の動作を較正するとともに検査することができるようになっている。幾つかの蒸気セルセンサデバイスおよび対応のアンテナは、電磁放射源相互間の干渉により位相情報を提供するよう使用できる。幾つかの場合、蒸気セルセンサシステム(または個々の蒸気セルセンサデバイス)を近接場から非近接場に移動させることができる。蒸気セルセンサシステムは、セルタワーから地表に光結合されてよく、この地表において、蒸気セルセンサシステムをレーザシステムおよび検出システムに接続されてよく、レーザシステムと検出システムは、ひとまとまりとなって、センサ読み取り装置を構成することができる。センサ読み取り装置は、必ずしも、アンテナシステムと関連したあらゆる場所に存在する必要はない。レーザシステムおよび検出システムをトラックに載せてよく、そして
図1に示されているように、アンテナシステム相互間で搬送してアンテナシステムを監視してよい。レーザシステムおよび検出システムは、他の場所、例えば、
図3に示されている中央データ処理および検査ステーションに配置可能である。検出システムは、電磁力を測定するよう構成された個々の蒸気セルセンサデバイスに光結合されてよい。検出システムはまた、電磁放射の空間分布を画像化するよう構成されまたは多重入力・多重出力(MIMO)アンテナの各素子を探査するよう位置決めされた蒸気セルセンサデバイスのアレイに光結合されてよい。
【0029】
幾つかの具体化例では、TRPの測定は、アンテナシステム106が送信器に接続されているときにアンテナシステム106(またはその個々のアンテナ)によって放射される電力の大きさを定める。TRP検査は、検査中のデバイス(DUT)内の送信器/受信器が能動型であってかつ電力供給される形式の能動型測定である。アンテナシステム106(または個々のアンテナ)の放射電力は、デバイス周りの互いに異なる場所で測定される。幾つかの場合、DUTの性能を特徴づける三次元パターンは、空間分布型測定から作られる。かかる測定は、電磁放射がビームの状態に成形されてこのビームを互いに異なる位置に操縦しているときに空間内の単一の点で実施される一連の測定であってよい。他の実現例では、蒸気セルセンサデバイスのアレイまたは画像化セルは、アンテナシステム106の現場に配置されてよく、測定は、多数の現場点で同時に実施されてよい。透明な誘電蒸気セルセンサデバイスは、DUTの現場で多数の測定デバイス相互間の干渉を減少させまたはなくすことができ、それにより現場を単一ショットで測定することができる。単一の蒸気セルセンサデバイスの場合であっても、この蒸気セルセンサデバイスは、放出を妨害することなく現場ユニット上の定位置に固定されたままであってよく、それにより放出量の変化を容易に追跡することができるようにすることによって単一点測定が良好になる。
【0030】
幾つかの具体化例では、TISの測定を用いると、受信器とアンテナシステム106との間の感度を求めることができる。TIS検査は、別の形式の能動型測定であり、これを用いると、蒸気セルセンサデバイスが信号に接続されたままであることができる最も低い電力レベルを見出すことによって、ノイズ障害により引き起こされるデバイスの感度を測定することができる。従来型TIS測定は、通常、検査基地局が無響室または電波暗室内に位置した状態で行われる。幾つかの場合、ビット誤り率(BER)測定は、デバイスを特徴づけるために実施できる。しかしながら、5Gシステムの場合、これら測定のうちの幾つかは、現場検査を必要とすることがある。TIS測定は、狭い場に対しては感度が良いので、電気的に透明な絶対的自己較正蒸気セルセンデバイスを用いると、電力レベルを標準化するとともに送信アンテナの性能を保証することができる。
【0031】
次に
図4を参照すると、電磁放射の特徴を突き止める例示の測定システム400の略図が示されている。例示の測定システム400は、レーザシステム404および検出システム406にファイバ接続されている蒸気セルセンサデバイス402(またはかかるデバイスのネットワーク)を含んでよい。レーザシステム404および検出システム406を例えば、
図4に示された単一のエンクロージャまたは組立体408に組み込んでよい。しかしながら、幾つかの変形例では、レーザシステム404と検出システム406は、別個のエンクロージャ内に位置してもよい。レーザシステム404は、EIT状の原子を利用した電磁検出のためのプローブおよび結合光を発生させるよう動作可能である。プローブおよび結合光を用いると、蒸気セルセンサデバイス402の位置で高周波電磁場(MHz~THz)を測定することができる。蒸気セルセンサデバイス402の位置は、セルタワーアンテナの位置に対して遠隔に位置してもよく、この位置に配置されてもよく、あるいはこの近くに配置されてもよい。プローブおよび結合光は、それぞれ第1の光ファイバケーブル410および第2の光ファイバケーブル412によって蒸気セルセンサデバイス402に伝送されてよい。同様に、蒸気セルセンサデバイス402からの出力光信号を第3の光ファイバケーブル414によって検出システム406(または単一のエンクロージャもしくは組立体408)に伝えられてよい。蒸気セルセンサデバイス402を通るプローブ光の透過率は、出力光信号を定めることができる。幾つかの実例では、蒸気セルセンサデバイス402は、蒸気セルセンサシステムを構成する複数の蒸気セルセンサデバイス(例えば、アレイ)の一部として役立ちうる。
【0032】
レーザシステム404は、光を供給するために用いられる波長可変レーザシステムであり、検出システム406は、蒸気セルセンサデバイス402を通るプローブ光の透過率を測定するよう構成されていてよい。レーザシステム404および検出システム406は、互いに異なるアンテナシステム相互間における搬送が可能であるようトラック内に設置されてよい。変形例として、レーザシステム404および検出システム406は、中央制御センターのところに設置されてもよく、それにより、あらゆるセルタワーのところでこれらシステム404,406と同じものを設置する必要が軽減されまたはなくなる。この形態では、例示の測定システム400は、地表高さ位置のところでの1つまたは2つ以上のセルタワーの検査を可能にする。多数の蒸気セルセンサデバイス402をセルタワーのアンテナシステムに取り付けてよく、かかるアンテナシステムとしては、アンテナシステムの個々のアンテナが挙げられる。
図4では、蒸気セルセンサデバイス402は、少なくとも一部が、アンテナシステム(またはその個々のアンテナ)によって生じた電磁放射に対して透明な誘電体によって作られてよい。例示の蒸気セルセンサデバイス402は、誘電体で作られているので、蒸気セルセンサデバイス402は、電磁場を妨げる度合いが最小限であり、例えば、蒸気セルセンサデバイス402は、もし全体が非誘電体で形成された場合よりも電磁的に透明である。さらに、例示の蒸気セルセンサデバイス402は、蒸気状態の原子を用いて電磁場を測定するので、蒸気セルセンサデバイス402は、調節および検査のための絶対的較正手段としての役目を果たすことができ、すなわち、例示の蒸気セルセンサデバイス402の測定は、原子の物理的定数および特性のみを利用する。
【0033】
少なくとも一部が誘電体で作られた蒸気セルセンサデバイス402を含む例示の測定システム400は、幾つかの互いに異なる仕方で具体化できる。例えば、単一蒸気セルセンサデバイスまたは蒸気セルセンサデバイスのアレイを用いることができる。例示の構成例の略図が
図2A~
図2Cに示されている。しかしながら、他の構成の採用が可能である。
【0034】
動作の幾つかの観点では、例示の測定システム400は、セルタワーに設けられているアンテナからの電磁放射を測定するために
図1と関連して説明した現象を利用してよい。幾つかの場合、アンテナは5Gセルラー通信プロトコルで動作するのが良く、これらアンテナは、ビーム生成アンテナを含んでよい。例示の測定システム400は、基地局のところでOTA測定を実施してよく、かかるOTA測定としては、TRPおよびTISの測定が挙げられる。例示の測定システム400は、ファイバ結合原子蒸気セルを含んでよく、蒸気セルセンサデバイス402は、センサヘッドとして配備されてよい。光ファイバケーブル(例えば、光ファイバケーブル410,412,414)をレーザシステムおよび検出システムへの接続のためにセルタワーの地表面まで引き回してよい。例示の測定システム400は、結合光の存在下において、蒸気セルセンサデバイス402を通るプローブ光の周波数依存性吸収率(または透過率)を測定することができる。例示の測定システム400内に設けられているエレクトロニクスは、検出システムからのデータを処理して蒸気セルセンサデバイス402に入射する電力を算定することができる。レーザシステムは、プローブ光および結合光を発生させ、かかるプローブ光および結合光は、蒸気セルセンサデバイス402内の気化状態の原子のリュードベリ遷移または状態に対する電磁放射の影響の狭いスペクトルバンド幅測定を行う。レーザシステムは、周波数安定化ダイオードレーザまたはファイバ増幅ダイオードレーザをさらに含んでよい。サブドップラー分光法を実施することができる他形式のレーザシステムもまた使用できる。レーザシステムおよび検出システムは、電磁放射の測定を実施するよう蒸気セルセンサデバイス402に光結合されてよい。レーザシステムおよび検出システムは、互いに異なる蒸気セルセンサデバイス向きのために使用でき、その結果、レーザシステムおよび検出システムを必要に応じてこれらの配設場所まで搬送することができる間(例えば、
図1に示されているようにサービスバンまたはトラックに載せた状態で)互いに異なる蒸気セルセンサデバイスを定位置に固定することができる。変形例として、レーザシステムおよび検出システムを多数の基地局およびアンテナシステム(例えば、
図3に示されている)にファイバ結合された中央データステーションに搬送してもよい。幾つかの具体化例では、コンパクトな小形検出・レーザシステムを基地局のところまたは幾つかのクラスター化基地局の近くに配置してもよい。
【0035】
次に、
図5Aを参照すると、電磁放射を発生させるよう構成されたアンテナ502の近くに位置決めされた例示の蒸気セルセンサデバイス500の略図が示されている。アンテナ502は、セルラー通信に対応した電磁放射を発生させることができまたは電磁放射の検査パターンを発生させることができる。例示の蒸気セルセンサデバイス500は、入力光信号を受け取り、これに応答して、1つまたは2つ以上の出力光信号を発生させるよう構成されている。
図5Aでは、蒸気セルセンサデバイス500は、光504のプローブビームおよび光506の結合ビームを受け取る。光504のプローブビームおよび光506の結合ビームをそれぞれのレーザ、例えば、波長可変レーザまたはダイオードレーザによって発生させることができる。光504のプローブビームおよび光506の結合ビームは、共通の光経路に沿ってまたは互いに逆方向に蒸気セルセンサデバイス500を通過する。このようにしている間、光504のプローブビームおよび光506の結合ビームは、蒸気セルセンサデバイス500のエンクロージャ内に入っている蒸気状態の原子と相互作用する。アンテナ502に向いたエンクロージャの側508は、電磁放射に対して透明な誘電体で作られてよく、それにより電磁放射のための窓としての役目を果たす。エンクロージャの他方の側もまた、誘電体で作られてよい。光504のプローブビームおよび光506の結合ビームの受け取りと付随して、蒸気セルセンサデバイス500はまた、エンクロージャの側508を通った電磁放射(またはその一部分)を受け取ることができる。電磁放射は、光透過率または検出器510によって記録される蒸気セルセンサデバイス508を通る光504のプローブビームを改変することができる。光透過率または光504のプローブビームの測定により、蒸気セルセンサデバイス500は、電磁放射の特性を測定することができる。
【0036】
電磁放射の特性の測定は、蒸気状態の原子と関連した2つまたは3つ以上の光学遷移を利用する場合がある。
図5Bは、蒸気状態の
87Rbおよび原子に基づく二光子測定のための例示の原子エネルギーレベル構造の略図を示している。
図5Bでは、5S
1/2~5P
3/2光学遷移および5P
3/2~53D
5/2光学遷移にアクセスするために用いられる光をダイオードレーザから発生させる。しかしながら、他形式のレーザまたはレーザシステムを使用することができる。プローブレーザからの光の透過率を結合レーザからの光存在下で記録する。電磁放射が
87Rb原子と相互作用していない場合、プローブが挿絵の上側のグラフ図に示されているように通常吸収されるプローブ光透過率の狭いピークが完成される。かかる現象を電磁誘導透過率(EIT)として参照することができる。電磁放射が
87Rb原子と相互作用する場合、そして特に、電磁放射が
87Rb原子の第3の光透過率と共振する電場成分を有する場合、下側の図に示されているように、プローブ光透過率の狭いピーク内で吸収率特徴が誘起される。吸収率特徴は、プローブ光透過率の狭いピークを2つの透過率ピークに分割することができる。狭いピークおよび吸収率特徴の測定は、蒸気セルセンサデバイス500の受ける電磁放射に極めて敏感であり、というのは、リュードベリ原子遷移が大きな遷移双極子モーメントを有し、かつ振幅が周波数の差に変換されるからである。EITがコヒーレント多光子プロセスであるので、これは、サブドップラーであり、したがって、これを蒸気セル内で実施することができる。
【0037】
幾つかの具体化例では、蒸気セルセンサデバイスは、少なくとも一部がアンテナにより生じる電磁放射に透明な誘電体で作られてよい。電磁放射は、GHz台からTHz台の範囲にある波長を有してよく、蒸気セルセンサデバイスは、例えば、
図1ならびに
図5Aおよび
図5Bと関連して説明した原子利用型電場検出を用いて電磁放射の特徴を測定することができる。特にリュードベリ原子電位測定法は、光学応答が入射マイクロ波場(または電磁放射)により既知の仕方で乱される干渉計として各原子を熱蒸気の状態でセットアップするよう明視野を使用することができる。入射マイクロ波場は、例えば、
図5Bに示されているようなリュードベリ遷移を介して各原子と共振的に相互作用することができる。次に、電場成分の測定を原子の特性および対応の物理的定数に関連づけ、これら両方を専門実験室内で実施される高性能測定により確立することができる。例示の蒸気セルセンサデバイスの少なくとも一部が誘電体で作られるので、かつ蒸気セルセンサデバイスをサイズが波長よりも小さく作ることができるので、電磁放射内に蒸気セルセンサデバイスが存在していても、これによって電磁放射が乱される度合いは、最小限であるといえる。さらに、蒸気セルセンサデバイス内に入れられた原子による測定を自己較正することができ、というのは、測定は、原子構造の物理定数および特性に関連づけられているからである。蒸気セルセンサデバイスは、光導波路(例えば、1本または2本以上の光ファイバケーブル)により信号読み取りシステムに遠隔的に結合できる。このように、信号は、干渉および減衰の影響を受けないと言える。多数の蒸気セルセンサデバイスを光ファイバケーブルにより中央サービスステーションに連係させることができる。かかる光ファイバリンクは、バックホール光ファイバ接続のための光ファイバケーブルの使用と比較して最小限であってよい。さらに、検査は、地表面で実施でき、というのは、蒸気セルセンサデバイスをアンテナに取り付けることができるからである。
【0038】
高周波(RF)電場(または電磁放射)のための原子利用型センサおよび測定システムは、強く励起されたリュードベリ原子または他の原子スケールシステムの遷移を利用することができる。例えば、
87Rbもしくは
133Cs原子またはリュードベリ状態で準備された(例えば、部分的)他形式の原子、誘電体の色中心、または他形式の原子スケールシステムを使用することができる。原子利用型センサは、一般に、例えば、RF電場が原子の光学遷移にどのような影響を及ぼすかを検出することによって動作することができる。原子は、例えば、
図5Bに示されているように電磁的に誘導された透過率(EIT)の原理を用いるレーザ場付きのコヒーレント量子干渉計としてセットアップできる。EITでは、共振プローブレーザビームからの光を、強い結合レーザビームの存在に起因して常態では吸収性の材料中を透過させる。プローブおよび結合場は、原子中の量子干渉を生じさせ、したがって、プローブビームの吸収は、プローブビーム吸収のプロセスならびに結合ビームによるコヒーレント励起およびエネルギーのより低い準位への遷移と弱め合うように干渉する。その結果、スペクトル的に狭い透過窓を常態では吸収性の材料に形成することができる。RF電場が別の遷移(例えば、
図5B参照)と共振する場合、RF電場は、原子中の干渉を変化させてプローブレーザ周波数の関数として観察される狭い吸収率特性を誘導しまたはプローブレーザ周波数の関数として観察される透過率曲線形状を分割することができる。
【0039】
EIT透過率ピークΔνの周波数分割は、理想的には、ピーク振幅E
0に比例し、かつリュードベリ原子遷移およびリュードベリ原子遷移の遷移双極子モーメントμ
RFおよびプランク定数hにのみ依存する。
【数1】
その実施例が
図5Bに示されている。入射電磁放射に起因するEIT透過率ピークの振幅変化は、E
0
2に比例し、かかる振幅変化はまた、電磁放射場の入射電力を測定するために使用できる。応答が非線形である場合、不均一な広がりが大きな役割を果たす条件下において、プローブレーザ透過率に対する電場成分の影響を高精度に計算することができ、というのは、リュードベリ原子特性が周知だからである。プローブレーザを後方励起結合およびプローブレーザ幾何学的形状において周波数が走査される場合、E
0に関する上式の右側に波長の不一致によって生じる残留ドップラー効果に起因するプローブレーザ波長λ
pと結合レーザ波長λ
cの比を乗算する。マイケルソン干渉計を用いてこれら波長を10
7の1部まで規定通りにかつ幾つかの場合においては非常に高い精度まで求めることができる。μ
RFは、現在、0.1~1%であることが知られている。例えば、実験を行って光周波数コムを参照する超安定レーザを用いてμ
RFを求める場合、これよりも高い精度が可能である。この方式は、GHz~THz範囲の電場を測定する自己較正手法であり、これよりも低い場は、100MHz範囲にある。この方式は、原子および物理定数の高精度測定に関連づけられる。一例として、5~20GHz範囲内のRF周波数で吸収性信号を用いて~30μVcm
-1Hz
-1/2の感度で~8μVcm
-1の最小限の検出可能な絶対的電場の振幅が観察された。また、感度を、例えば、ホモダイン検出技術を用いて約10だけ向上させることができる。ある特定のコンテキストに関し、計算後のショットノイズ限度は、約pVcm
-1であり、このことは、顕著な改良を実現することができるということを指示している。位相もまた、例えば、基準波が存在する場合、例えば第2のアンテナを用いて測定することができる。
【0040】
幾つかの具体化例では、無線(OTA)検査法を用いると、基地局アンテナに関する全放射電力(TRP)および全等方性感度(TIS)ならびに場合によっては他の特性を測定してその性能を較正し、最適化し、そして故障検査することができる。例えば、OTA検査は、各アンテナ素子のところにコネクタまたはプローブ箇所を設けない状態で実施することができ、それによりOTA検査をいっそう効率的にかつ費用効果が良いようにすることができる。TRPの測定は、制御された実験室環境内において高精度に測定できる遷移双極子モーメントおよび基礎定数を介して原子の特性に関連づけられているので、本方法は、電場、かくしてアンテナシステムからの放出電力の絶対的自己較正測定を提供することができる。したがって、測定は、幾つかの場合、各アンテナについて電力標準としての役目を果たすことができる。
【0041】
幾つかの具体化例では、セルタワーからの電磁放出を測定する方法がセルタワーと関連した蒸気セルセンサシステムのところで、セルタワーに設けられたアンテナシステムからの電磁放射を受け取るステップを含む。本方法は、蒸気セルセンサシステムのところで、レーザシステムから伝えられた入力光信号をそれぞれの入力光チャネルにより受け取るステップをさらに含む。本方法はさらに、蒸気セルセンサシステムで、入力光信号および電磁放射に基づいて出力光信号を発生させるステップを含む。本方法はさらに、蒸気セルセンサシステムから、出力光信号を1つまたは2つ以上のそれぞれの出力光チャネルによって検出システムに送るステップを含む。
【0042】
幾つかの具体化例では、電磁放射は、100MHzから10THzまでの範囲にある周波数を有する。幾つかの具体化例では、電磁放射は、2GHzから75GHzまでの範囲にある周波数を有する。幾つかの具体化例では、蒸気セルセンサデバイスは、少なくとも一部が、電磁放射に対して透明な誘電体で作られる。
【0043】
幾つかの具体化例では、レーザシステムは、入力光チャネルにセルタワーの外部に位置するそれぞれ入力光ポートによって結合され、検出システムは、1つまたは2つ以上の出力光チャネルにセルタワーの外部に位置するそれぞれの出力光ポートによって結合される。これら具体化例の幾つかの場合、レーザシステムおよび検出システムは、モバイルプラットホームに設けられる。これら具体化例の幾つかの場合、入力光チャネルおよび1つまたは2つ以上の出力光チャネルは、セルタワーから遠隔のサービスステーションまで延びる。これら具体化例の幾つかの場合、入力光チャネルおよび1つまたは2つ以上の出力光チャネルは、セルタワーから遠隔のサービスステーションまで延びてよく、レーザシステムおよび検出システムは、サービスステーションのところに配置される。
【0044】
幾つかの具体化例では、アンテナシステムは、標的方向に沿って集束された少なくとも一部分を含む電磁放射の空間分布を生じさせるよう構成されている。さらに、本方法は、検出システムのところで、出力光信号のうちの少なくとも1つを規定する光の周波数依存性透過率を測定するステップを含む。これら具体化例の幾つかの場合、蒸気セルセンサシステムのところで、アンテナシステムからの電磁放射を受け取るステップは、光の周波数依存性透過率を測定しながら標的方向を変更するステップを含む。これら具体化例の幾つかの場合、光の周波数依存性透過率を測定するステップは、1対の透過率ピーク相互間の周波数分離度を算定するステップを含む。これら具体化例の幾つかの場合、光の周波数依存性透過率を測定するステップは、1対の透過率ピークのうちの一方または両方の振幅を算定するステップを含む。これら具体化例の幾つかの場合、光の周波数依存性透過率を測定するステップは、アンテナシステムの全放射電力(TRP)を算定するステップを含む。これら具体化例の幾つかの場合、光の周波数依存性透過率を測定するステップは、全等方性感度(TIS)を算定するステップを含む。
【0045】
幾つかの具体化例では、2つの入力光信号が入力光信号を規定する。単一の出力光信号が1つまたは2つ以上の出力光信号を規定してよい。幾つかの具体化例では、3つの入力光信号が入力光信号を規定する。単一の出力光信号が1つまたは2つ以上の出力光信号を規定してもよい。
【0046】
幾つかの具体化例では、アンテナシステムは、標的方向に沿って集束された少なくとも一部分を含む電磁放射の空間分布を生じさせるよう構成される。幾つかの具体化例では、アンテナシステムは、複数のアンテナを含み、蒸気セルセンサシステムは、各々がアンテナシステムのうちのアンテナの各々とそれぞれ関連した複数の蒸気セルセンサデバイスを含む。他の場合、アンテナシステムは、複数のアンテナを含み、蒸気セルセンサシステムは、蒸気セルセンサデバイスのサブグループを含み、各サブグループは、複数のアンテナのうちの単一のそれぞれ対応したアンテナと関連している。
【0047】
また、セルタワーからの電磁放出を測定するシステムを以下の実施態様項によって説明できる。
〔実施態様項1〕
セルタワーからの電磁放出を測定するシステムであって、上記システムは、
上記セルタワーに設けられたアンテナシステムからの電磁放射を受け取るよう位置決めされた蒸気セルセンサシステムを含み、上記蒸気セルセンサシステムは、上記電磁放射および入力光信号に基づいて1つまたは2つ以上の出力光信号を発生させるよう構成され、
レーザシステムからの上記入力光信号を上記蒸気セルセンサシステムに伝えるよう構成された入力光チャネルを含み、
上記蒸気セルセンサシステムからの上記1つまたは2つ以上の出力光信号を検出システムに伝えるよう構成された1つまたは2つ以上の出力光チャネルを含む、システム。
〔実施態様項2〕
上記アンテナシステムは、標的方向に沿って集束された少なくとも一部分を含む電磁放射の空間分布を生じさせるよう構成されている、実施態様項1記載のシステム。
〔実施態様項3〕
上記蒸気セルセンサシステムは、少なくとも一部が上記電磁放射に対して透明な誘電体で作られた蒸気セルセンサデバイスを含む、実施態様項1または2記載のシステム。
〔実施態様項4〕
上記入力光チャネルのうちの少なくとも一部分および上記1つまたは2つ以上の出力光チャネルのうちの少なくとも一部分は、光ファイバケーブルによって構成されている、実施態様項1または2もしくは3記載のシステム。
〔実施態様項5〕
上記入力光信号を発生させるとともに上記入力光チャネルと関連した入力光ポートに結合するよう構成された上記レーザシステムと、
上記1つまたは2つ以上の出力光信号を受け取るとともに上記1つまたは2つ以上の出力光チャネルと関連した出力光ポートに結合するよう構成された上記検出システムとを含む、実施態様項1または2~4のうちいずれか一に記載のシステム。
〔実施態様項6〕
上記入力光ポートおよび上記出力光ポートは、上記セルタワーの外部に位置している、実施態様項5記載のシステム。
〔実施態様項7〕
上記レーザシステムおよび上記検出システムは、モバイルプラットホームに設けられている、実施態様項5または6記載のシステム。
〔実施態様項8〕
上記入力光ポートおよび上記出力光ポートは、遠隔のサービスステーションのところに配置され、
上記入力光チャネルは、上記蒸気セルセンサシステムから上記入力光ポートまで延び、上記1つまたは2つ以上の出力光チャネルは、上記蒸気セルセンサシステムから上記出力光ポートまで延びている、実施態様項5記載のシステム。
〔実施態様項9〕
上記レーザシステムおよび上記検出システムは、モバイルプラットホームに設けられている、実施態様項8記載のシステム。
〔実施態様項10〕
上記レーザシステムおよび上記検出システムは、上記遠隔サービスステーションのところに配置されている、実施態様項8記載のシステム。
〔実施態様項11〕
2つの入力光信号が上記入力光信号を規定する、実施態様項1または2~10のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項12〕
単一の出力光信号が上記1つまたは2つ以上の出力光信号を規定する、実施態様項11記載の方法。
〔実施態様項13〕
3つの入力光信号が上記入力光信号を規定する、実施態様項1または2~10のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項14〕
上記電磁放射は、100MHzから10THzまでの範囲にある周波数を有する、実施態様項1または2~13のうちいずれか一に記載のシステム。
〔実施態様項15〕
上記電磁放射は、2GHzから75GHzまでの範囲にある周波数を有する、実施態様項1または2~33のうちいずれか一に記載のシステム。
【0048】
また、セルタワーからの電磁放出を測定する方法を以下の実施態様項によって説明できる。
〔実施態様項16〕
セルタワーからの電磁放出を測定する方法であって、上記方法は、
上記セルタワーと関連した蒸気セルセンサシステムのところで、上記セルタワーに設けられたアンテナシステムからの電磁放射を受け取るステップと、
上記蒸気セルセンサシステムのところで、レーザシステムから伝えられた入力光信号をそれぞれの入力光チャネルにより受け取るステップと、
上記蒸気セルセンサシステムで、上記入力光信号および上記電磁放射に基づいて出力光信号を発生させるステップと、
上記蒸気セルセンサシステムから、上記出力光信号を1つまたは2つ以上のそれぞれの出力光チャネルによって検出システムに送るステップとを含む、方法。
〔実施態様項17〕
上記アンテナシステムは、標的方向に沿って集束された少なくとも一部分を含む電磁放射の空間分布を生じさせるよう構成されている、実施態様項16記載の方法。
〔実施態様項18〕
上記アンテナシステムは、複数のアンテナを含み、上記蒸気セルセンサシステムは、各々が上記アンテナシステムのうちの上記アンテナの各々とそれぞれ関連した複数の蒸気セルセンサデバイスを含む、実施態様項17記載の方法。
〔実施態様項19〕
上記アンテナシステムは、複数のアンテナを含み、上記蒸気セルセンサシステムは、蒸気セルセンサデバイスのサブグループを含み、各サブグループは、上記複数のアンテナのうちの単一のそれぞれ対応したアンテナと関連している、実施態様項17記載の方法。
〔実施態様項20〕
上記レーザシステムは、上記入力光チャネルに上記セルタワーの外部に位置するそれぞれ入力光ポートによって結合され、上記検出システムは、上記1つまたは2つ以上の出力光チャネルに上記セルタワーの外部に位置するそれぞれの出力光ポートによって結合されている、実施態様項16または17~19のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項21〕
上記レーザシステムおよび上記検出システムは、モバイルプラットホームに設けられている、実施態様項20記載の方法。
〔実施態様項22〕
上記入力光チャネルおよび上記1つまたは2つ以上の出力光チャネルは、上記セルタワーから遠隔のサービスステーションまで延びている、実施態様項20または21記載の方法。
〔実施態様項23〕
上記入力光チャネルおよび上記1つまたは2つ以上の出力光チャネルは、上記セルタワーから遠隔のサービスステーションまで延び、
上記レーザシステムおよび上記検出システムは、上記サービスステーションのところに配置されている、実施態様項20記載の方法。
〔実施態様項24〕
上記蒸気セルセンサデバイスは、少なくとも一部が、上記電磁放射に対して透明な誘電体で作られている、実施態様項16または17~23のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項25〕
上記アンテナシステムは、標的方向に沿って集束された少なくとも一部分を含む電磁放射の空間分布を生じさせるよう構成され、
上記方法は、上記検出システムのところで、上記出力光信号のうちの少なくとも1つを規定する光の周波数依存性透過率を測定するステップを含む、実施態様項16または17~24のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項26〕
蒸気セルセンサシステムのところで、上記アンテナシステムからの電磁放射を受け取る上記ステップは、上記光の周波数依存性透過率を測定しながら上記標的方向を変更するステップを含む、実施態様項25記載の方法。
〔実施態様項27〕
上記光の周波数依存性透過率を測定する上記ステップは、1対の透過率ピーク相互間の周波数分離度を算定するステップを含む、実施態様項25または26記載の方法。
〔実施態様項28〕
上記光の周波数依存性透過率を測定する上記ステップは、1対の透過率ピークのうちの一方または両方の振幅を算定するステップを含む、実施態様項25または26もしくは27記載の方法。
〔実施態様項29〕
上記光の周波数依存性透過率を測定する上記ステップは、上記アンテナシステムの全放射電力を算定するステップを含む、実施態様項25または26~28のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項30〕
上記光の周波数依存性透過率を測定する上記ステップは、上記アンテナシステムの全等方性感度を算定するステップを含む、実施態様項25または26~29のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項31〕
2つの入力光信号が上記入力光信号を規定する、実施態様項16または26~30のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項32〕
単一の出力光信号が上記1つまたは2つ以上の出力光信号を規定する、実施態様項31記載の方法。
〔実施態様項33〕
3つの入力光信号が上記入力光信号を規定する、実施態様項16または26~30のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項34〕
上記電磁放射は、100MHzから10THzまでの範囲にある周波数を有する、実施態様項16または26~33のうちいずれか一に記載の方法。
〔実施態様項35〕
上記電磁放射は、2GHzから75GHzまでの範囲にある周波数を有する、実施態様項16または26~34のうちいずれか一に記載の方法。
【0049】
本明細書は、多くの細部を含んでいるが、これら細部は、請求項に記載することができる内容の範囲に対する制限と理解されてはならず、これとは異なり、特定の実施例に固有の特徴の説明として理解されるべきである。また、別々の具体化例のコンテキストで本明細書において説明されまたは図示されているある特定の特徴を組み合わせることができる。また、これとは逆に、単一の具体化例のコンテキストで説明されまたは図示された種々の特徴を多数の実施例において別々にまたは任意適当なサブコンビネーションの状態で具体化することができる。
【0050】
同様に、作業が特定の順序で図面に示されているが、これは、所望の結果を達成するためにかかる作業を図示の特定の順序でまたは連続した順序で実施することを必要とするものとして理解されるべきではない。ある特定の環境では、並行作業および並行処理が有利な場合がある。さらに、上述の具体化例における種々のシステムコンポーネントの分離は、全ての具体化例においてかかる分離を必要とするものとして理解されてはならず、上述のプログラムコンポーネントおよびシステムを一般に、単一の製品に一緒に組み込むことができまたは多数の製品にパッケージ化することができるということは理解されるべきである。
【0051】
多くの実施例を説明した。それにもかかわらず、種々の改造を行うことができることは理解されよう。したがって、他の実施形態は、以下の請求項に記載された本発明の範囲に属する。