(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】切削工具用ホルダ
(51)【国際特許分類】
B23B 29/12 20060101AFI20220621BHJP
B23B 27/16 20060101ALI20220621BHJP
B23B 27/10 20060101ALI20220621BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
B23B29/12 Z
B23B27/16 B
B23B27/10
B23Q11/10 D
(21)【出願番号】P 2019532401
(86)(22)【出願日】2018-05-23
(86)【国際出願番号】 JP2018019753
(87)【国際公開番号】W WO2019021605
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2019-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2017145605
(32)【優先日】2017-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503212652
【氏名又は名称】住友電工ハードメタル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 力
(72)【発明者】
【氏名】久木野 暁
(72)【発明者】
【氏名】島本 陽介
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/034339(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/143089(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0067786(US,A1)
【文献】国際公開第16/121663(WO,A1)
【文献】特開2012-183634(JP,A)
【文献】特開昭62-034703(JP,A)
【文献】特開2002-346810(JP,A)
【文献】国際公開第2017/003342(WO,A1)
【文献】特開平07-227702(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0305531(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 29/12
B23B 27/10
B23B 27/16
B23Q 11/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
すくい面と、前記すくい面に連なる逃げ面と、前記すくい面と前記逃げ面との境界を成す稜線により構成される切れ刃とを有する切削インサートを支持する切削工具用ホルダであって、
前記切削インサートが載置される着座面を有するホルダ本体と、
前記着座面に載置される前記切削インサートを前記ホルダ本体に位置決めして固定するための押さえ部材と、
前記押さえ部材を前記ホルダ本体に固定する固定部材とを備え、
前記押さえ部材は、前記着座面に載置される前記切削インサートの前記切れ刃に近い方の端部である先端部と、前記着座面に載置される前記切削インサートの前記切れ刃から遠い方の端部である基端部とを有し、
前記押さえ部材には、前記固定部材が通される貫通穴が設けられており、
前記貫通穴の平面形状の長軸方向は、前記先端部から前記基端部に向かう方向と平行になっており、
前記先端部には、クーラントが噴出する第1クーラント噴出口が設けられ、
前記ホルダ本体の内部には、前記クーラントが流れる第1流路が設けられ、
前記押さえ部材の内部には、前記押さえ部材が前記ホルダ本体に固定されたときに前記第1流路に接続されるとともに前記第1流路から供給される前記クーラントを貯留するクーラント溜まりと、前記クーラント溜まりに貯留された前記クーラントを前記第1クーラント噴出口に供給する第2流路とが設けられ、
前記クーラント溜まりは、前記第1流路及び前記第2流路よりも前記クーラントの流れ方向に直交する断面における断面積が大きく、
前記クーラント溜まりの全体は、前記先端部から前記基端部に向かう方向において、前記固定部材の中心軸よりも前記基端部側に配置され、
前記クーラント溜まりは、前記基端部において、前記第1流路に接続されて
おり、
前記ホルダ本体には、前記着座面に載置される前記切削インサートの前記逃げ面側から前記切削インサートの前記切れ刃へ前記クーラントを噴出する第2クーラント噴出口が設けられ、
前記ホルダ本体の内部には、前記第2クーラント噴出口に前記第1流路を流れる前記クーラントを供給する第3流路が設けられる、切削工具用ホルダ。
【請求項2】
前記押さえ部材は、前記着座面に載置される前記切削インサートの前記すくい面に垂直な方向から見て前記基端部から前記先端部に向かう方向に平行かつ前記固定部材に接する直線に関して前記固定部材と反対側に位置する部分においてのみ、前記ホルダ本体に接触する、請求項1に記載の切削工具用ホルダ。
【請求項3】
前記第2流路の前記クーラントの流れ方向に直交する断面における断面積は、前記クーラント溜まりから前記第1クーラント噴出口に向かうにしたがって小さくなる、請求項1又は請求項2に記載の切削工具用ホルダ。
【請求項4】
前記クーラントの噴出方向に垂直かつ前記着座面に載置される前記切削インサートの前記すくい面に平行な方向における前記第1クーラント噴出口の幅は、前記着座面に載置される前記切削インサートの前記すくい面に垂直方向における前記第1クーラント噴出口の幅よりも大きい、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の切削工具用ホルダ。
【請求項5】
前記第2流路は、前記クーラントの噴出方向に垂直かつ前記着座面に載置される前記切削インサートの前記すくい面に平行な方向における前記第2流路の端である第1端と、前記第1端の反対側の端である第2端とを有し、
前記着座面に載置される前記切削インサートの前記すくい面に垂直な方向から見て前記第1端を示す直線を前記第1クーラント噴出口から延長した第1延長線と、前記着座面に載置される前記切削インサートの前記すくい面に垂直な方向から見て前記第2端を示す直線を前記第1クーラント噴出口から延長した第2延長線とは、前記着座面に載置される前記切削インサートの前記すくい面に垂直な方向から見て、前記着座面に載置される前記切削インサートの前記切れ刃と重なる位置において交差する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の切削工具用ホルダ。
【請求項6】
前記第2流路は、前記クーラントの噴出方向に垂直かつ前記着座面に載置される前記切削インサートの前記すくい面に平行な方向における前記第2流路の端である第1端と、前記第1端の反対側の端である第2端とを有し、
前記着座面に載置される前記切削インサートの前記すくい面に垂直な方向から見て前記第1端を示す直線を前記第1クーラント噴出口から延長した第1延長線と、前記着座面に載置される前記切削インサートの前記すくい面に垂直な方向から見て前記第2端を示す直線を前記第1クーラント噴出口から延長した第2延長線とは、前記着座面に載置される前記切削インサートの前記すくい面に垂直な方向から見て、前記切れ刃からずれた位置において交差する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の切削工具用ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、切削工具用ホルダに関する。本出願は、2017年7月27日に出願した日本特許出願である特願2017-145605号に基づく優先権を主張する。当該日本特許出願に記載された全ての記載内容は、参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
従来から、特開2015-160266号公報(特許文献1)に記載の刃先交換式バイトが知られている。特許文献1に記載の刃先交換式バイトは、ホルダ本体と、切削インサートと、クランプ駒と、クランプねじとを有している。ホルダ本体は、取付座を有している。切削インサートは、ホルダ本体の取付座に載置される。クランプ駒は、クランプねじによりホルダ本体に取り付けられている。クランプ駒は、切削インサートをホルダ本体に対して押圧することにより、切削インサートをホルダ本体に固定している。ホルダ本体には、クーラント供給孔が設けられている。クーラント供給孔は、切削インサートの逃げ面側から切削工具の切れ刃に向かって、クーラントを供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様に係る切削工具用ホルダは、すくい面と、すくい面に連なる逃げ面と、すくい面と逃げ面との境界を成す稜線により構成される切れ刃とを有する切削インサートを支持する切削工具用ホルダである。本開示の一態様に係る切削工具用ホルダは、切削インサートが載置される着座面を有するホルダ本体と、着座面に載置される切削インサートをホルダ本体に位置決めして固定するための押さえ部材と、押さえ部材をホルダ本体に固定する固定部材とを備える。押さえ部材は、着座面側に載置される切削インサートの切れ刃に近い方の端部である先端部と、着座面に載置される切削インサートの切れ刃から遠い方の端部である基端部とを有する。先端部には、クーラントが噴出する第1クーラント噴出口が設けられる。
【0005】
ホルダ本体の内部には、クーラントが流れる第1流路が設けられる。押さえ部材の内部には、押さえ部材がホルダ本体に固定されたときに第1流路に接続されるとともに第1流路から供給されるクーラントを貯留するクーラント溜まりと、クーラント溜まりに貯留されたクーラントを第1クーラント噴出口に供給する第2流路とが設けられる。クーラント溜まりは、第1流路及び第2流路よりもクーラントの流れ方向に直交する断面における断面積が大きい。クーラント溜まりは、先端部から基端部に向かう方向において、押さえ部材がホルダ本体に固定される位置よりも基端部側に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る切削工具用ホルダの斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る切削工具用ホルダにおけるホルダ本体1の斜視図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る切削工具用ホルダにおける押さえ部材2の上面図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る切削工具用ホルダにおける押さえ部材2の正面図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態に係る切削工具用ホルダにおける押さえ部材2の底面図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態に係る切削工具用ホルダにおける押さえ部材2と切削インサート4との位置関係を示す模式図である。
【
図9】
図9は、切削インサート4の一実施形態における斜視図である。
【
図10】
図10は、第2実施形態に係る切削工具用ホルダにおける押さえ部材2の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
切削の際に、被削材から切り出される切屑は、切れ刃からすくい面側に向かう。そのため、クーラントによる切屑破砕効果を得るためには、クーラントは、すくい面側から切れ刃に供給されることが好ましい。しかしながら、特許文献1に記載の刃先交換式バイトにおいては、クーラントは逃げ面側から切れ刃に供給されることになる。
【0008】
また、切削工具の加工精度を向上させる観点からは、ホルダの剛性を確保することにより、切削加工時のホルダの変形を抑制する必要がある。
【0009】
本開示は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本開示は、剛性を確保しながら切削インサートのすくい面側からクーラントを供給することが可能な切削工具用ホルダを提供するものである。
【0010】
[本開示の効果]
本開示の一態様に係る切削工具用ホルダによると、剛性を確保しながら切削インサートのすくい面側から切れ刃にクーラントを供給することができる。
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
まず、本開示の実施態様を列記して説明する。
【0012】
(1)本開示の一態様に係る切削工具用ホルダは、すくい面と、すくい面に連なる逃げ面と、すくい面と逃げ面との境界を成す稜線により構成される切れ刃とを有する切削インサートを支持する切削工具用ホルダである。本開示の一態様に係る切削工具用ホルダは、切削インサートが載置される着座面を有するホルダ本体と、着座面に載置される切削インサートをホルダ本体に位置決めして固定するための押さえ部材と、押さえ部材をホルダ本体に固定する固定部材とを備える。押さえ部材は、着座面側に載置される切削インサートの切れ刃に近い方の端部である先端部と、着座面に載置される切削インサートの切れ刃から遠い方の端部である基端部とを有する。先端部には、クーラントが噴出する第1クーラント噴出口が設けられる。
【0013】
ホルダ本体の内部には、クーラントが流れる第1流路が設けられる。押さえ部材の内部には、押さえ部材がホルダ本体に固定されたときに第1流路に接続されるとともに第1流路から供給されるクーラントを貯留するクーラント溜まりと、クーラント溜まりに貯留されたクーラントを第1クーラント噴出口に供給する第2流路とが設けられる。クーラント溜まりは、第1流路及び第2流路よりもクーラントの流れ方向に直交する断面における断面積が大きい。クーラント溜まりは、先端部から基端部に向かう方向において、押さえ部材がホルダ本体に固定される位置よりも基端部側に配置される。
【0014】
上記(1)の切削工具用ホルダによると、剛性を確保しながら切削インサートのすくい面側から切れ刃にクーラントを供給することができる。
【0015】
(2)上記(1)の切削工具用ホルダにおいて、押さえ部材は、着座面に載置される切削インサートのすくい面に垂直な方向から見て、基端部から先端部に向かう方向に平行かつ固定部材に接する直線に関して固定部材と反対側に位置する部分においてのみ、ホルダ本体に接触していてもよい。
【0016】
上記(2)の切削工具用ホルダによると、押さえ部材により、切削インサートをより均一に固定することができる。
【0017】
(3)上記(1)又は上記(2)の切削工具用ホルダにおいて、第2流路のクーラントの流れ方向に直交する断面における断面積は、クーラント溜まりから第1クーラント噴出口に向かうにしたがって小さくなっていてもよい。
【0018】
上記(3)の切削工具用ホルダによると、第1クーラント噴出口から噴出するクーラントの圧力がより高圧となる。そのため、上記(3)の切削工具用ホルダによると、クーラントによる切れ刃の冷却効果及び切屑破砕効果を高めることができる。
【0019】
(4)上記(1)~上記(3)の切削工具用ホルダにおいて、クーラントの噴出方向に垂直かつ着座面に載置される切削インサートのすくい面に平行な方向における第1クーラント噴出口の幅は、着座面に載置される切削インサートのすくい面に垂直方向における第1クーラント噴出口の幅よりも大きくてもよい。
【0020】
上記(4)の切削工具用ホルダによると、第1クーラント噴出口から噴出するクーラントが、切れ刃の延在方向に沿った扁平な形状で、切れ刃近傍に供給される。そのため、上記(4)の切削工具用ホルダにおいては、クーラントが切れ刃と切屑の間に入り込みやすい。その結果、上記(4)の切削工具用ホルダによると、切屑破砕効果をさらに高めることができる。
【0021】
(5)上記(1)~上記(4)の切削工具用ホルダにおいて、第2流路は、クーラントの噴出方向に垂直かつ着座面に載置される切削インサートのすくい面に平行な方向における第2流路の端である第1端と第1端の反対側の端である第2端とを有していてもよい。着座面に載置される切削インサートのすくい面に垂直な方向から見て第1端を示す直線を第1クーラント噴出口から延長した第1延長線と、着座面に載置される切削インサートのすくい面に垂直な方向から見て第2端を示す直線を第1クーラント噴出口から延長した第2延長線とは、着座面に載置される切削インサートのすくい面に垂直な方向から見て、着座面に載置される切削インサートの切れ刃と重なる位置において交差していてもよい。
【0022】
上記(5)の切削工具用ホルダにおいては、第1クーラント噴出口から噴出するクーラントが、最も集束した状態で切れ刃に供給される。そのため、上記(5)の切削工具によると、クーラントによる切れ刃の冷却効果及び切屑破砕効果を部分的に最大化することができる。
【0023】
(6)上記(1)~上記(4)の切削工具用ホルダにおいて、第2流路は、クーラントの噴出方向に垂直かつ着座面に載置される切削インサートのすくい面に平行な方向における第2流路の端である第1端と第1端の反対側の端である第2端とを有していてもよい。着座面に載置される切削インサートのすくい面に垂直な方向から見て第1端を示す直線を第1クーラント噴出口から延長した第1延長線と、着座面に載置される切削インサートのすくい面に垂直な方向から見て第2端を示す直線を第1クーラント噴出口から延長した第2延長線とは、着座面に載置される切削インサートのすくい面に垂直な方向から見て、切れ刃からずれた位置において交差していてもよい。
【0024】
上記(6)の切削工具用ホルダにおいては、第1クーラント噴出口から噴出するクーラントが、切れ刃の延在方向に沿って広がった状態で、切れ刃に供給される。そのため、上記(6)の切削工具用ホルダによると、クーラントにより切れ刃のより幅広い領域を冷却することができる。
【0025】
(7)上記(1)~上記(6)の切削工具用ホルダにおいて、ホルダ本体には、着座面に載置される切削インサートの逃げ面側から切削インサートの切れ刃へクーラントを噴出する第2クーラント噴出口が設けられていてもよい。ホルダ本体の内部には、第2クーラント噴出口に第1流路を流れるクーラントを供給する第3流路が設けられていてもよい。
【0026】
上記(7)の切削工具用ホルダにおいては、切削インサートのすくい面側及び切削インサートの逃げ面側の双方から、切削インサートの切れ刃にクーラントを供給することができる。そのため、上記(7)の切削工具用ホルダによると、クーラントによる冷却効果及びクーラントによる潤滑効果をさらに高めることができる。
【0027】
[本開示の実施形態の詳細]
次に、本開示の実施形態の詳細を、図面を参照して説明する。なお、各図中同一又は相当部分には同一符号を付している。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0028】
(第1実施形態)
以下に、第1実施形態に係る切削工具用ホルダの構成を説明する。
【0029】
図1は、第1実施形態に係る切削工具用ホルダの斜視図である。
図1に示すように、第1実施形態に係る切削工具用ホルダは、切削インサート4を支持する。第1実施形態に係る切削工具用ホルダは、ホルダ本体1と、押さえ部材2と、固定部材3とを有している。第1実施形態に係る切削工具用ホルダは、さらに座金5を有していてもよい。なお、第1実施形態に係る切削工具用ホルダは、切削インサート4を支持するが、本開示に係る切削工具用ホルダはこれに限られず、種々の切削工具を支持する用途に適用可能である。
【0030】
図2は、第1実施形態に係る切削工具用ホルダにおけるホルダ本体1の斜視図である。
図2に示すように、ホルダ本体1は、第1端1aと、第2端1bとを有している。第2端1bは、第1端1aとは反対側の端である。第1端1aは、後述する着座面11が設けられる側の端である。第2端1bは、シャンク側の端である。例えば、ホルダ本体1は、第2端1bから第1端1aに向かって延在する形状を有している。ホルダ本体1は、第1面1cと、第2面1dと、第3面1eとを有している。第2面1dは、第1面1cの反対面である。第3面1eは、第1面1c及び第2面1dに連なっている。
【0031】
ホルダ本体1は、着座面11を有している。着座面11は、ホルダ本体1の第1面1cに設けられ、第1面1cから一段下がった面である。着座面11には、切削インサート4が載置される。なお、本実施形態においては、切削インサート4と着座面11との間に座金5を配置しているが、座金5を省略することも可能である。
【0032】
ホルダ本体1には、ネジ穴12が設けられている。ネジ穴12は、ホルダ本体1の第1面1cからホルダ本体1の内部に向かう方向に延在している。ホルダ本体1には、挿入部13が設けられている。ホルダ本体1の第1面1cは、挿入部13において、ホルダ本体1の内部に向かう方向に凹んでいる。
【0033】
図3は、
図2のIII-IIIにおける断面図である。なお、
図3中において、クーラントの流れは、矢印で示されている。
図3に示すように、ホルダ本体1には、第1流路14が設けられている。第1流路14の一方端は、挿入部13においてホルダ本体1の外部と接続している。第1流路14の他方端は、例えばホルダ本体1の第2面1dにおいて、ホルダ本体1の外部と接続している。第1流路14には、クーラントが流れる。クーラントは、例えば切削油である。第1流路14は、断面積A1を有している。断面積A1は、クーラントの流れ方向に直交する断面における第1流路14の断面積である。第1流路14の一方端と他方端との間には、断面積A1が周囲よりも部分的に大きくなっている部分がない。すなわち、断面積A1は、一方端側から他方端側に向かって単調減少、単調増加又は一定となっている。このことを別の観点からいえば、ホルダ本体1の内部には、クーラント溜まりが設けられていない。ホルダ本体1には、クーラント噴出口15がさらに設けられていてもよい。ホルダ本体1の内部には、第3流路16とがさらに設けられていてもよい。クーラント噴出口15は、ホルダ本体1の第1端1a側に設けられている。ホルダ本体1は、クーラント噴出口15において、開口している。第3流路16は、一方端において第1流路14に接続しており、他方端においてクーラント噴出口15に接続している。そのため、第1流路14を流れるクーラントの一部は、第3流路16を介して、クーラント噴出口15から噴出される。
図1に示されるように、クーラント噴出口15は、切削インサート4に設けられた切れ刃43を向くように配置されていることが好ましい。つまり、クーラント噴出口15から噴出するクーラントは、逃げ面42側から切れ刃43近傍に供給される。
【0034】
図4は、第1実施形態に係る切削工具用ホルダにおける押さえ部材2の上面図である。
図5は、第1実施形態に係る切削工具用ホルダにおける押さえ部材2の正面図である。押さえ部材2は、着座面11に載置される切削インサート4(
図1、
図9参照)をホルダ本体1に位置決めして固定するための部材である。
図4及び5に示すように、押さえ部材2は、先端部2aと、基端部2bとを有している。先端部2aは、押さえ部材2がホルダ本体1に取り付けられた際に(
図1参照)着座面11側に位置する押さえ部材2の端部である。言い換えれば、先端部2aは、ホルダ本体1の着座面11に載置される切削インサート4の切れ刃43から近い方の端部である。基端部2bは、先端部2aの反対側の端部である。言い換えれば、基端部2bは、ホルダ本体1の着座面11に載置される切削インサート4の切れ刃43から遠い方の端部である。押さえ部材2は、基端部2bにおいて、ホルダ本体1の挿入部13に挿入される。
【0035】
押さえ部材2にはクーラント噴出口21が設けられている。クーラント噴出口21は、押さえ部材2の先端部2aに設けられている。クーラント噴出口21の数は、複数であってもよい。押さえ部材2は、クーラント噴出口21において開口している。クーラント噴出口21からは、クーラントが噴出する。押さえ部材2には、クーラント流入口22が設けられている。
図6は、第1実施形態に係る切削工具用ホルダにおける押さえ部材2の底面図である。
図6に示すように、クーラント流入口22は、押さえ部材2の基端部2bに設けられている。押さえ部材2は、クーラント流入口22において、開口している。クーラント流入口22から、クーラントが押さえ部材2の内部に流入する。
【0036】
図7は、
図4のVII-VIIにおける断面図である。
図7に示すように、押さえ部材2には、クーラント溜まり23と、第2流路24とが設けられている。クーラント溜まり23及び第2流路24は、押さえ部材2の内部に設けられている。
【0037】
クーラント溜まり23は、押さえ部材2の内部において、第2流路24よりも基端部2b側に位置している。クーラント溜まり23は、クーラント流入口22において、押さえ部材2の外部と接続している。クーラント溜まり23は、クーラント流入口22と反対側の端において、第2流路24に接続している。第2流路24は、押さえ部材2の内部において、クーラント溜まり23よりも先端部2a側に位置している。第2流路24は、クーラント噴出口21において、押さえ部材2の外部と接続している。
【0038】
押さえ部材2がホルダ本体1に固定されたときに押さえ部材2の基端部2bが挿入部13に挿入されることにより、クーラント溜まり23と第1流路14とが接続される。そのため、第1流路14を流れるクーラントは、クーラント溜まり23に供給され、クーラント溜まり23において貯留される。上記のとおり、クーラント溜まり23と第2流路24とは、互いに接続されている。そのため、クーラント溜まり23に貯留されているクーラントは、第2流路24を介して、クーラント噴出口21から噴出する。
【0039】
クーラント溜まり23は、クーラントの流れ方向に直交する断面において、断面積A2を有している。第2流路24は、クーラントの流れ方向に直交する断面において、断面積A3を有している。断面積A2は、断面積A3よりも大きい。断面積A2は、断面積A1よりも大きい。このことを別の観点からいえば、クーラントを貯留するクーラント溜まりは、ホルダ本体1の内部にではなく、押さえ部材2の内部に設けられている。
【0040】
断面積A3は、クーラント溜まり23側からクーラント噴出口21側に向かうにしたがって、小さくなっていることが好ましい。このことを別の観点からいえば、第2流路24は、クーラント溜まり23側からクーラント噴出口21側に向かって断面積が小さくなるテーパ形状を有していることが好ましい。
【0041】
図8は、第1実施形態に係る切削工具用ホルダにおける押さえ部材2と切削インサート4との位置関係を示す模式図である。
図8に示すように、好ましくは、クーラント噴出口21は、切削インサート4に設けられた切れ刃43に向くように配置されている。
【0042】
第2流路24は、第1端24aと、第2端24bとを有している。第1端24aは、クーラントの噴出方向に垂直かつ着座面11に載置される切削インサート4のすくい面41に平行な方向における第2流路24の端である。なお、後述のとおり、切削インサート4は、すくい面41の反対面が着座面11と対向するように配置されるため、すくい面41がすくい面41の反対面と平行である場合、着座面11に垂直な方向がすくい面41に垂直な方向と一致する。第2端24bは、第1端24aの反対側の端である。着座面11に載置される切削インサート4のすくい面41に垂直な方向から見て、第1端24aは、第1直線L1により示されている。着座面11に載置される切削インサート4のすくい面41に垂直な方向から見て、第2端24bは、第2直線L2により示されている。第1直線L1をクーラント噴出口21から延長した延長線である第1延長線EL1と、第2直線L2をクーラント噴出口21から延長した延長線である第2延長線EL2とは、交点CPにおいて交差する。交点CPは、着座面11に載置される切削インサート4のすくい面41に垂直な方向から見て、切れ刃43と重なる位置にあることが好ましい。なお、交点CPは、切れ刃43からずれた位置にあってもよい。交点CPが切れ刃43からずれた位置にあるとは、交点CPがクーラント噴出口21から噴出されるクーラントの流れの方向において切れ刃43からずれた位置にあること、又は交点CPがクーラント噴出口21から噴出されるクーラントの流れの方向に直交する方向において切れ刃43からずれた方向にあることをいう。
【0043】
図4に示すように、押さえ部材2には、貫通穴25が設けられている。貫通穴25は、ネジ穴12の位置と重なるように配置されている。貫通穴25には、固定部材3が通される。固定部材3は、例えばネジである。固定部材3は、ネジ穴12に締結される。これにより、押さえ部材2は、ホルダ本体1に固定される。なお、ホルダ本体1に固定される押さえ部材2の位置を、固定位置FPという。上記の例においては、固定位置FPは、固定部材3の中心軸の位置と一致する。
【0044】
先端部2aから基端部2bに向かう方向における貫通穴25の幅は、先端部2aから基端部2bに向かう方向に直交する方向における貫通穴25の幅よりも大きいことが好ましい。貫通穴25の平面形状は、例えば、先端部2aから基端部2bに向かう方向に長軸を有する長円形状である。
【0045】
切削インサート4のすくい面41に垂直な方向から見て、基端部2bから先端部2aに向かう方向に平行であり、かつ、固定部材3に接する直線を、直線L3とする(
図4を参照)。押さえ部材2は、直線L3に関して固定部材3の反対側に位置している部分においてのみ、ホルダ本体1に接触していることが好ましい。
【0046】
図7に示すように、クーラント溜まり23は、先端部2aから基端部2bに向かう方向において固定位置FPよりも基端部2b側に位置している。より具体的には、クーラント溜まり23は、先端部2aから基端部2bに向かう方向において、固定部材3の中心軸よりも基端部2b側に位置している。
【0047】
なお、押さえ部材2は、例えば、3Dプリンタ、MIM法(Metal Injection Molding、金属粉末射出成型法)により形成することができる。
【0048】
図9は、切削インサート4の一実施形態における斜視図である。
図9に示すように、切削インサート4は、すくい面41と、逃げ面42と、切れ刃43とを有している。切削インサート4は、すくい面41の反対面が着座面11と対向するように、着座面11上に載置される。切削インサート4は、先端部2a側に位置する押さえ部材2で押圧されることにより、着座面11に固定されている。逃げ面42は、すくい面41に連なっている。切れ刃43は、すくい面41及び逃げ面42の境界を成す稜線により構成されている。
【0049】
以下に、第1実施形態に係る切削工具用ホルダの効果を説明する。
第1実施形態に係る切削工具用ホルダにおいては、クーラントは、ホルダ本体1の内部に設けられた第1流路14並びに押さえ部材2の内部に設けられたクーラント溜まり23及び第2流路24を介して、クーラント噴出口21から噴出されて、切削インサート4に供給される。そのため、第1実施形態に係る切削工具用ホルダにおいては、クーラントをすくい面41側から切れ刃43に供給することができる。
【0050】
クーラント溜まりをホルダ本体1の内部に設ける場合、クーラント溜まりを設ける部分においてホルダ本体1の肉厚が薄くなる。また、クーラント溜まりをホルダ本体1の内部に設ける場合、ホルダ本体1の全長がその分だけ長くなる。そのため、クーラント溜まりをホルダ本体1の内部に設ける場合、ホルダ本体1の剛性が低下してしまう。ホルダ本体1の剛性が低下すると、切削加工時にホルダ本体1が弾性変形し、振動(ビビり)の原因となるなど、切削加工の精度低下を引き起こす可能性がある。また、クーラント溜まりをホルダ本体1の内部に設けることによるホルダ本体1の剛性低下を補うためにホルダ本体1の肉厚を大きくすることは、ホルダ本体1の外形寸法の増加につながり、切削加工時にホルダ本体1と被削物及び加工装置のその他の部分との干渉が起こりやすくなる。
【0051】
他方、第1実施形態に係る切削工具用ホルダにおいては、クーラント溜まり23は、ホルダ本体1の内部ではなく、押さえ部材2の内部に配置されている。そのため、第1実施形態に係る切削工具用ホルダにおいては、クーラント溜まりを形成することに伴うホルダ本体1の剛性低下を抑制することができる。
【0052】
なお、第1実施形態に係る切削工具用ホルダにおいては、クーラント溜まり23は、先端部2aから基端部2bに向かう方向において、固定位置FPよりも基端部2b側に配置されている。切削インサート4の固定に寄与するのは、主として、固定位置FPよりも先端部2a側にある押さえ部材2の部分である。そのため、第1実施形態に係る切削工具用ホルダにおいては、切削インサート4を固定するために必要な押さえ部材2の剛性を確保することができる。
【0053】
以上のように、第1実施形態に係る切削工具用ホルダによると、切削工具用ホルダの剛性を確保しながら、切削インサート4のすくい面41側から切れ刃43にクーラントを供給することができる。
【0054】
第1実施形態に係る切削工具用ホルダにおいて、押さえ部材2が、切削インサート4のすくい面41に垂直な方向から見て、直線L3に関して固定部材3の反対側に位置している部分においてのみ、ホルダ本体1に接触している場合、固定部材3で押さえ部材2をホルダ本体1に固定することによって切削インサート4をホルダ本体1にクランプする際、切削インサート4の引き込み方向に沿って押さえ部材2が引き込まれるため、押さえ部材2によってより均一に切削インサート4を固定することができる。
【0055】
第1実施形態に係る切削工具用ホルダにおいて、断面積A3がクーラント溜まり23側からクーラント噴出口21に向かうにしたがって小さくなっている場合には、クーラント溜まり23側からクーラント噴出口21に向かうにしたがって第2流路24を流れるクーラントの圧力が上昇するため、圧力がより高いクーラントを切削インサート4に供給することができる。したがって、この場合には、クーラントによる冷却効果及び切屑破砕効果をより高めることができる。
【0056】
第1実施形態に係る切削工具用ホルダにおいて、交点CPが切れ刃43と重なる位置にある場合、クーラントが最も集束した状態で切れ刃43に供給される。そのため、この場合、クーラントによる冷却効果及び切屑破砕効果を部分的に最大化することができる。第1実施形態に係る切削工具用ホルダにおいて、交点CPが切れ刃43からずれた位置にある場合、クーラントが、切れ刃43の延在方向に沿って広がった状態で、切れ刃43に供給される。そのため、この場合には、切れ刃43のより幅広い領域をクーラントにより冷却することができる。
【0057】
第1実施形態に係る切削工具用ホルダにおいて、ホルダ本体1にクーラント噴出口15が設けられるとともに、ホルダ本体1の内部に第3流路16が設けられている場合、すくい面41側及び逃げ面42側の双方から、切れ刃43にクーラントを供給することができる。そのため、クーラントによる冷却効果及びクーラントによる潤滑効果をさらに高めることができる。
【0058】
(第2実施形態)
以下に、第2実施形態に係る切削工具用ホルダを説明する。なお、以下においては、第1実施形態に係る切削工具用ホルダと異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0059】
第2実施形態に係る切削工具用ホルダは、ホルダ本体1と、押さえ部材2と、固定部材3とを有している。これらの点において、第2実施形態に係る切削工具用ホルダは、第1実施形態に係る切削工具用ホルダと共通している。しかしながら、第2実施形態に係る切削工具用ホルダは、クーラント噴出口21の構成において、第1実施形態に係る切削工具用ホルダと異なっている。
図10は、第2実施形態に係る切削工具用ホルダにおける押さえ部材2の正面図である。
【0060】
図10に示すように、クーラント噴出口21は、第1幅W1と第2幅W2とを有している。第1幅W1は、クーラントの噴出方向に垂直かつ着座面11に載置される切削インサート4のすくい面41に平行な方向におけるクーラント噴出口21の幅である。第2幅W2は、着座面11に載置される切削インサート4のすくい面41に垂直な方向におけるクーラント噴出口21の幅である。好ましくは、第1幅W1は、第2幅W2よりも大きい。クーラント噴出口21の平面形状は、例えば、楕円形状である。但し、クーラント噴出口21の形状は、これに限られるものではない。クーラント噴出口21の平面形状は、例えば長方形形状であってもよい。
【0061】
第2実施形態に係る切削工具用ホルダにおいては、上記のとおり、第1幅W1が第2幅W2よりも大きいため、クーラントが、切れ刃43に沿った扁平な形状で、切れ刃43近傍に供給される。その結果として、クーラントが、切れ刃43と切屑の間に入り込みやすくなる。そのため、この場合には、クーラントによる切屑破砕効果をさらに高めることができる。
【0062】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態ではなく請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
1 ホルダ本体、1a 第1端、1b 第2端、1c 第1面、1d 第2面、11 着座面、12 ネジ穴、13 挿入部、14 第1流路、15 クーラント噴出口、16 第3流路、2 押さえ部材、2a 先端部、2b 基端部、21 クーラント噴出口、22 クーラント流入口、23 クーラント溜まり、24 第2流路、24a 第1端、24b 第2端、25 貫通穴、3 固定部材、4 切削インサート、41 すくい面、42 逃げ面、43 切れ刃、5 座金、A1,A2,A3 断面積、CP 交点、EL1 第1延長線、EL2 第2延長線、FP 固定位置、L1 第1直線、L2 第2直線、L3 直線、W1 第1幅、W2 第2幅。