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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】動き物体検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/527 20060101AFI20220621BHJP
   G01S 15/52 20060101ALI20220621BHJP
   G01S 15/46 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
G01S7/527
G01S15/52
G01S15/46
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019048485
(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公開番号】P2020148722
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2020-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】709002004
【氏名又は名称】学校法人東北学院
(74)【代理人】
【識別番号】100082762
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 正知
(74)【代理人】
【識別番号】100123973
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 拓真
(72)【発明者】
【氏名】松尾 行雄
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-072318(JP,A)
【文献】国際公開第2013/128878(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/090696(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/163904(WO,A1)
【文献】米国特許第05973996(US,A)
【文献】特開2003-075531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号と対応する超音波送信信号複数回、送信する送信部と、
超音波反射信号を受信して受信信号を発生する受信部と、
前記送信信号及び前記受信信号が供給され、前記送信信号と前記受信信号の相関値を演算する演算部とを備え、
前記演算部は、複数回の送信の中の連続する2回の送信でそれぞれ得られた前記相関値の差分を計算し、前記相関値の差分の中でしきい値より大となる局所ピークを検出し、検出された前記局所ピークの遅延時間から対象物までの距離を推定し、
連続して得られた二つの距離推定結果の差分を計算し、
前記差分が予め設定した第1の閾値より小さい場合を計数し、
設定した回数の処理後の計数値が第2の閾値より大きい場合に、前記対象物を動き物体として検知するようにした動き物体検出装置。
【請求項2】
ほぼ同一の位置に、それぞれが異なる指向性を有する複数のマイクロホンを異なる方向に向けて配置し、
前記複数のマイクロホンの出力から対象物の定位を行なうようにした請求項1に記載の動き物体検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を使用して侵入者等の動き物体を検出することができる動き物体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波センサを車のバンパに取り付けて障害物を検知することが提案されている(例えば特許文献1)。特許文献1では、反射超音波の振幅から障害物の有無を検出するようにしている。しかしながら、侵入者のような動き物体の場合には、静止物体と異なり、単に反射超音波の振幅から動き物体を検出することができない。
【0003】
例えば介護施設では、被介護者の動きをモニタする見守りが重要な業務となっている。監視カメラの場合は、被介護者の人権が侵害されるおそれがある。超音波を使用することによって匿名性を保持することができる利点がある。特許文献2には、反射波のピーク値のレベル変動の周波数が2倍以上になったことを侵入者として検出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-25712号公報
【文献】特開平1-237483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の侵入者検出装置は、侵入者が存在しない状態での反射波と侵入者が存在する状態の反射波の振幅の変化に基づいて侵入者を検知するものであった。かかる方式は、侵入者とノイズの区別が不十分であり、高精度に侵入者を検出することができない問題があった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、高精度に侵入者などの動き物体を検出することができる動き物体検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、送信信号と対応する超音波送信信号複数回、送信する送信部と、
超音波反射信号を受信して受信信号を発生する受信部と、
送信信号及び受信信号が供給され、送信信号と受信信号の相関値を演算する演算部とを備え、
演算部は、複数回の送信の中の連続する2回の送信でそれぞれ得られた相関値の差分を計算し、相関値の差分の中でしきい値より大となる局所ピークを検出し、検出された局所ピークの遅延時間から対象物までの距離を推定し、
連続して得られた二つの距離推定結果の差分を計算し、
差分が予め設定した第1の閾値より小さい場合を計数し、
設定した回数の処理後の計数値が第2の閾値より大きい場合に、対象物を動き物体として検知するようにした動き物体検出装置である。
【発明の効果】
【0008】
少なくとも一つの実施形態によれば、相関値を比較することによって動き物体を検知するので、静止物体からの超音波反射信号の影響を受けないで、高精度に動き物体を検知することができる。なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本明細書に記載されたいずれかの効果又はそれらと異質な効果であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る動き物体検出装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、一実施形態における送信信号の説明のための略線図である。
図3図3は、一実施形態における動き物体の検出及び距離算出の処理を説明するためのフローチャートである。
図4図4は、エコー及び相関値の一例の波形図である。
図5図5は、相関値及び差分値の一例の波形図である。
図6図6は、一実施形態における相関値及び差分値の一例の波形図である。
図7図7は、動き物体の定位の一例のマイクロホン(以下、マイクと適宜称する)の配置を示す平面図である。
図8図8は、マイクの指向性を示すグラフである。
図9図9は、マイクの振幅比を示すグラフである。
図10図10は、動き物体の定位の一例の処理を示すフローチャートである。
図11図11は、動き物体の定位の他の例のマイクの配置を示す平面図である。
図12図12は、マイクの指向性を示すグラフである。
図13図13は、マイクの振幅比を示すグラフである。
図14図14は、動き物体の定位の他の例の処理を示すフローチャートである。
図15図15は、動き物体の定位のさらに他の例のマイクの配置を示す平面図である。
図16図16は、マイクの指向性を示すグラフである。
図17図17は、動き物体の定位のさらに他の例の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態等について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態等は本発明の好適な具体例であり、本発明の内容がこれらの実施形態等に限定されるものではない。
【0011】
図1は本発明による動き物体検出装置1の一実施形態の構成を示す。超音波送波器としてスピーカ2が使用され、対象物で反射された超音波(以下、エコーと適宜称する)を受信する超音波受波器としてマイク3が使用される。スピーカ2に対して送信回路4が接続され、マイク3に対して受信回路5が接続されている。
【0012】
スピーカ2及びマイク3は、近接して配置されている。例えば対象物が人(侵入者、被介護者など)の場合、監視対象の出入り口付近に向けてスピーカ2が超音波を発射し、マイク3がそのエコーを受信するようになされる。なお、後述するように、一実施形態では、対象物の方向を定位するために、マイク3として複数のマイクを使用している。動き物体の検知は、一つのマイクを使用すればよい。
【0013】
送信回路4は、スピーカ2に対する送信信号を形成する。送信信号として例えば図2に示すように、5msの時間で、周波数が50kHzから20kHzまで変化するサイン波(線形チャープ信号)が使用される。1回の送信信号が5msの長さのチャープ信号とされる。チャープ信号を使用するのは、分解能と精度を上げるために、超音波帯域を広帯域にするためである。周波数の範囲は、マイク3によって電気信号に変換可能な範囲とされる。さらに、送信信号は、所定の間隔例えば0.2秒間隔で所定回数例えば6回送信される。なお、上述したチャープ信号の周波数帯域幅、送信周期、送信信号の長さは一例であり、他の値を使用することができる。また、広帯域に限らず狭帯域の超音波も使用することができる。
【0014】
送信超音波の長さと送信周期によって動き物体の検知率が表1の測定結果で示すように変化する。表1は、1mの距離のところで人が動いている場合の検知率を示している。この測定結果から動いている人を検知する場合、送信超音波の長さが1~10(ms)で、送信周期50~400msが好ましいことが分かる。特に、長さが10msの場合に最も高い検知率が得られた。
【0015】
【表1】
【0016】
送信回路4からの送信信号がスピーカ2と演算部6に供給される。演算部6には、距離算出部7a、動き物体検出部7b及び方向算出部7cが含まれる。距離算出部7aは、送信信号とエコーの時間差から対象物の距離を算出する。動き物体検出部7bは、対象物が動き物体であることを検出する。方向算出部7cは、対象物の方向を算出する。算出部6から検出結果8が出力される。検出結果8が例えば表示装置(図示せず)に供給され、対象物までの距離及び対象物の方向が表示される。さらに、対象物を検出したことを表す表示及び/又は音響信号を発生するようにしてもよい。
【0017】
なお、上述した実施形態における演算部6は、A/D変換器、CPU(Central Processing Unit )(又はMPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)など)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などで構成され、デジタル信号処理を行なう構成とされている。また、演算部6の機能は、磁気ディスク、光磁気ディスク、ROM等の記録媒体にプログラムとして記録することができる。したがって、この記録媒体をコンピュータで読み取ってCPUなどが実行することにより動き物体検出装置の機能を実現することができる。
【0018】
図3のフローチャートは、演算部6の処理を説明するためのものである。ステップST1から処理が開始する。
ステップST2:初期化の処理であり、送信番号N=0,Count=0とされる。Nは、送信番号を表し、(N=0)は、初期値である。ピークがあり、1回前の送信に対する距離推定結果と比較し、距離推定結果の差分がある範囲内(しきい値内)であれば、Countを+1とする。合計6回の送信を行なった結果、Countが基準値C0 より多い場合、対象物を動き物体と検知する。
【0019】
ステップST3:送信開始、Nを+1する。
ステップST4:送信信号とエコーの相関解析から相関値を計算する。
ステップST5:相関値からピークを検出し、距離を推定する。
【0020】
図4Aは、送信信号の波形を示し、図4Bは、送信信号に対応するエコーを示す。送信信号とエコーが次の式にしたがって演算され、相関値Rが算出される。この式において、xが送信信号、yがエコー、τが遅延時間である。図4Cは、相関値Rの一例を示す。図4Cでは、ピーク値に対して○を付加している。時間差がかなり小さい隣り合うピーク値は、同じ対象物からのエコーとみなす。例えば、人の小さな動きの結果、距離が変化することを除外するようにしている。
【0021】
【数1】
【0022】
相関値Rがしきい値以上の遅延時間τに対象物からのエコーがあるとみなす。遅延時間τから対象物までの距離が算出(推定)される。すなわち、(距離=(τ×v)/2)である。vは、空気中の超音波の速度(340m/s)である。この例では、送信周期より短い時間にエコーが受信されることが必要である。但し、送信信号としてゴールド符号などの疑似雑音系列を使用し、送信信号と対応するエコーを検出することを可能として送信周期より長い遅延時間のエコーを検出するようにしてもよい。
【0023】
図3のフローチャートに戻って説明する。
ステップST6:1回前の送信に対する相関値との差分が計算される。
ステップST7:差分値からピーク値を検出し、距離推定がなされる。
【0024】
図5Aは、算出された相関値を示す。図5Bが1回前(0.2秒前)の送信で得られた相関値を示す。両者の差分をとると、図5Cのような差分値が得られる。差分値がしきい値以上のピーク値(○を付して示す)が検出される。対象物が静止物体の場合には、Xで示すように、差分値がしきい値未満となる。一方、対象物が動き物体の場合には、差分値がしきい値以上となる。ピーク値の遅延時間から距離推定がなされる。
【0025】
この発明の一実施形態では、対象物が人の場合を検知するようにしている。人は、瞬間的に大きく移動することが困難である。但し、人工物と異なり、全く動かない状態(固定された状態)を維持していることも困難である。このような特性に着目して一実施形態は、動き物体として主に人を検知するようにしている。
【0026】
図3のフローチャートに戻って説明する。
ステップST8:1回前の送信に対する距離推定結果(差分値に基づく距離推定結果)と比較される。
ステップST9:距離推定結果の差分がしきい値以下かどうかが判定される。ステップST7において、ピーク値に基づいた距離測定は、動き物体の距離を測定することを意味している。さらに、ステップST8及びST9においては、距離の変化(動き量)が大きすぎないことを判定している。人の動きから考えられる許容範囲内にピーク値が続けて存在することを確認している。
【0027】
ステップST10:ステップST9の判定結果がYesの場合には、Countが+1される。
ステップST11:送信番号Nが設定された番号N0 (この例では、N0 =6)に同じかどうかが判定される。同じでない場合に、処理がステップST3(送信開始、Nを+1)に戻り、上述したステップST4~ST11を繰り返す。
ステップST12:ステップST11において、N=N0 と判定されると、Countが予め設定した基準値C0 以上かどうかが判定される。基準値C0 は、好ましい検知率と対応して予め設定される。Countが基準値C0 未満の場合には、処理がステップST2(N=0,Count=0)に戻り、最初から処理がなされる。
【0028】
ステップST13:ステップST12の判定結果がYesの場合には、対象物が動き物体(特に人)と判定し、検知結果が演算部6から出力される。なお、ステップST6及びST7の処理を省略して、ステップST8の処理を行なうように簡略化してもよい。
【0029】
図6Aは、送信信号と受信信号の相関解析から求めた相関値の一例を示す。6回の送信回数(送信番号が1~6)と対応して相関値が示されている。図6Bは、図6Aに示す相関値の差分値を示している。図6Aにおいて、同じ時間に発生する相関値のピーク値は、差分をとることによって除かれて時間的に異なる相関値のピーク値が差分値として得られる。
【0030】
最初の差分値は、1回目の送信により発生した相関値と2回目の送信により発生した相関値の差分である。2番目の差分値は、2回目の送信により発生した相関値と3回目の送信により発生した相関値の差分である。以下同様に差分値が求められ、6回目の送信により発生した相関値と5回目の送信により発生した相関値の差分が求められる。差分値のピーク値からそれぞれ距離推定結果が求められ、これらの距離推定結果の差分がしきい値以下となる回数Countが基準値C0 以上であれば、動き物体(特に人)が検知される。なお、差分値として正のみを扱っており、負の場合は0としている。
【0031】
上述したように、本発明の一実施形態では、相関演算によってノイズなどの影響を受けずに動き物体を高精度に検出することができる。また、距離推定結果が所定の範囲内であることを検出することによって、動き物体の動きの速さに応じた検出が可能となり、検出精度を向上させることができる。距離推定結果が所定の範囲内にあるかどうかの判定のしきい値は、検出しようとする対象の動きの程度に応じて設定するようになされる。この一実施形態と異なり、動きの速い対象を検知する場合には、距離推定結果の差分値が所定のしきい値より大きいことが条件となされる。このように、動き物体であっても、動きの速さに基づいて検知対象を設定することができる。
【0032】
次に本発明の一実施形態における検知された対象物の方向算出部7cの処理について説明する。従来では、異なる位置に設置した複数のマイクに到達する時間差を用いて方向推定を行なう方法や、異なる位置に設置した複数マイクに到達する音圧差を用いて方向推定を行なう方法が提案されている。しかしながら、人が洋服などを装着した場合などの反射は複雑となり、単純な時間差や音圧差だけでは誤差が大きい問題点があった。
【0033】
本発明ではかかる問題点を解消するために次のようにして対象物の定位(すなわち、対象物の方向の検出)を行なう。
・ある特定の方向から音をより受信可能な指向性マイクを使用し、複数のマイクを同じ位置に異なる向きに設置(重ねて設置)する。
・同じ位置に設置することで時間的な特徴は同じとなり、マイクに到達時においては時間差も音圧差の情報も得られない。ただし、マイクの向きによって指向性を含めてエコーを受信可能である。
・例えば、マイクを左右に回転させて配置したときの2つのマイクの受信振幅比を求める。
・受信振幅比を用いて方向推定を行なう。
【0034】
図7は、2本の指向性マイクMIC1,MIC2を、60度の角度を持つように、同じ位置(白丸で示す)に重ねて配置した例を示す。マイクMIC1,MIC2は、近傍に配置されたスピーカからの超音波のエコーを受信するようになされている。マイクMIC1及びMIC2は、それぞれ正面方向の感度が最大となる指向特性を有する。ただし、対象物がスピーカなどの超音波発生器を有して対象物から超音波が発射されるようにしてもよい。
【0035】
図8は、正面位置の角度を0度とした場合のMIC1及びMIC2のそれぞれの指向特性の一例を示す。マイクMIC1は、+30度の方向を最大とする指向特性を有し、マイクMIC2は、-30度の方向を最大とする指向特性を有する。これらのマイクの指向特性から計算される振幅比(MIC1/MIC2)を計算する。図9は、計算された振幅比を示す。
【0036】
図10は、方向算出部7cの処理の流れを示すフローチャートである。
ステップST21:定位が開始される。
ステップST22:検知された動き物体の距離のエコー振幅を使用して振幅比R1を次の式で計算する。エコー振幅をA1(マイクMIC1)及びA2(マイクMIC2)とそれぞれ表す。エコー振幅としては、複数回(上述した例では6回)の送信に対する一つのエコー振幅を使用してもよいし、複数回の送信に対するエコー振幅の平均値を使用してもよい。
R1=A1/A2
ステップST24:R1の値とマイクの指向特性から計算される振幅比(図9参照)から方向を推定する。すなわち、R1の値が指向特性の振幅比を決め、その値の角度を検知された物体の方向とする。
【0037】
図11に示すように、3本のマイクMIC1,MIC2及びMIC3を使用してもよい。中央のマイクMIC2に対して、マイクMIC1及びMIC3を、30度の角度を持つように、同じ位置(白丸で示す)に重ねて配置する。マイクMIC1,MIC2,MIC3は、近傍に配置されたスピーカからの超音波のエコーを受信するようになされている。正面が最大感度となる指向特性を有するマイクMIC2の出力を使用して上述したような動き物体の検知を行なうことができる。なお、方向定位のみを考慮した場合、対象物がスピーカなどの超音波発生器を有し、対象物から超音波が発射されるようにしてもよい。
【0038】
図12は、正面位置の角度を0度とした場合のMIC1,MIC2及びMIC3のそれぞれの指向特性の一例を示す。これらのマイクの指向特性から計算される振幅比(MIC1/MIC2)並びに(MIC2/MIC3)を計算する。図13は、計算された二つの振幅比を示す。
【0039】
図14は、3個のマイクを使用する方向定位の処理の流れを示すフローチャートである。
ステップST31:定位が開始される。
ステップST32:例えば検知された動き物体の距離のエコー振幅を使用して振幅比R1及びR2を次の式で計算する。エコー振幅をA1(マイクMIC1)、A2(マイクMIC2)及びA3(マイクMIC3)とそれぞれ表す。
R1=A1/A2
R2=A2/A3
ステップST34:R1及びR2の値とマイクの指向特性から計算される振幅比(図13参照)から方向を推定する。すなわち、R1及びR2の値が指向特性の振幅比を決め、その値の角度を検知された物体の方向とする。なお、振幅比の組み合わせについては、R1=A1/A3、R2=A2/A3のような任意の組み合わせでもよい。
【0040】
対象物の定位の他の方法について図15図16及び図17を参照して説明する。図15に示すように、中央のマイクMIC2に対して、マイクMIC1及びMIC3を、60度の角度を持つように、同じ位置(白丸で示す)に重ねて配置する。マイクMIC1,MIC2,MIC3は、近傍に配置されたスピーカからの超音波のエコーを受信するようになされている。ただし、対象物がスピーカなどの超音波発生器を有して対象物から超音波が発射されるようにしてもよい。
【0041】
図16は、正面位置の角度を0度とした場合のMIC1,MIC2及びMIC3のそれぞれの指向特性の一例を示す。図16において、-30度、+30度の角度にそれぞれ破線が描かれている。これらの破線によって角度の範囲(-90度~+90度)が3分割することができる。簡略化した方法では、対象物がこれらの3個の角度範囲のいずれに属しているかを検知するようにしている。
【0042】
図17のフローチャートを参照して説明する。
ステップST41:定位が開始する。
ステップST42:検知された動き物体の距離のエコー振幅を検出する。エコー振幅をA1(マイクMIC1)、A2(マイクMIC2)及びA3(マイクMIC3)とそれぞれ表す。
ステップST43:エコー振幅A1,A2及びA3の最大値を検出する。
【0043】
ステップST44:エコー振幅A1が最大と検出される場合は、対象物が(-60度)又は(-60度)を中心とする角度範囲(-90度~-30度)に存在するものと検出される。
ステップST45:エコー振幅A2が最大と検出される場合は、対象物が(0度)又は(0度)を中心とする角度範囲(-30度~+30度)に存在するものと検出される。
ステップST46:エコー振幅A3が最大と検出される場合は、対象物が(+60度)又は(+60度)を中心とする角度範囲(+30度~+90度)に存在するものと検出される。
この方法では、振幅比を計算する必要がないので、処理を簡略化することができる。
【0044】
上述したように、本発明の一実施形態は、動き物体の距離と方向を検知することができるので、広範囲の侵入者検知、被介護者の見守りなどを行なうことができる。
【0045】
以上、本発明の一実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の一実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。例えば動き物体として人を対象とする場合に、人の動きの速さに応じてしきい値を設定することによって被介護者とそれ以外の人物を区別して検知することができる。さらに、対象物は、人、動物などの生物に限らず、動く人工物を検知するようにしてもよい。また、上述の実施形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料及び数値などはあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料及び数値などを用いてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1・・・動き物体検出装置、2・・・スピーカ、3・・・マイクロホン、
4・・・送信回路、5・・・受信回路、6・・・演算部、7a・・・距離算出部、
7b・・・移動物体検出部、7c・・・方向算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17