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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 5/14 20060101AFI20220621BHJP
   B29D 30/30 20060101ALI20220621BHJP
   B60C 9/00 20060101ALI20220621BHJP
   B60C 9/08 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
B60C5/14 Z
B29D30/30
B60C5/14 A
B60C9/00 J
B60C9/08 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018002694
(22)【出願日】2018-01-11
(65)【公開番号】P2019119422
(43)【公開日】2019-07-22
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 洋
【審査官】橋本 有佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-248445(JP,A)
【文献】特開2002-178714(JP,A)
【文献】国際公開第2016/060128(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/199816(WO,A1)
【文献】特開2015-030399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 5/14
B60C 9/00
B29D 30/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んで構成される熱可塑性エラストマー組成物のフィルムと該フィルムの少なくとも片側に積層されたゴム組成物とからなる積層体と、該積層体に隣接して配置され、スチールコードから構成される少なくとも1層の補強層とを備え、前記積層体のタイヤ周方向の端部同士がタイヤ周上の少なくとも1箇所で重ね合わされてラップスプライス部を形成し、該ラップスプライス部において前記フィルムの層間に前記ゴム組成物からなる層間ゴム層が介在する空気入りタイヤにおいて、前記ラップスプライス部における前記積層体のタイヤ周方向のラップ長さLが下記式(1)を満たし、
前記ラップスプライスを含んで前記ラップスプライス部からタイヤ周方向の両側にそれぞれ10mmの領域において、他のタイヤ構成部材のタイヤ周方向の端部同士が互いに重ね合わされたラップスプライス部が存在しないことを特徴とする空気入りタイヤ。
L≧Gf×Pg×Gg/(Pf×Dc) (1)
但し、Gf:前記ラップスプライス部以外における前記フィルムの平均厚さ[mm]
Gg:前記ラップスプライス部における前記層間ゴム層の平均厚さ[mm]
Pf:前記フィルムの酸素透過係数[10-3・mm・cc/(m2・day・mmHg)]
Pg:前記層間ゴム層の酸素透過係数[10-3・mm・cc/(m2・day・mmHg)]
Dc:前記フィルムの端部から前記補強層を構成するスチールコードまでのフィルム厚さ方向の距離[mm]
【請求項2】
前記フィルムの酸素透過係数Pf[10-3・mm・cc/(m2・day・mmHg)]を前記ラップスプライス部以外における前記フィルムの平均厚さGf[mm]で除して得られる前記フィルムの酸素透過度[10-3・cc/(m2・day・mmHg)]と前記タイヤの最大空気圧P[kPa]とがPf/Gf≦50000/Pの関係を満たすことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記フィルムの温度23℃、湿度65%における酸素透過係数Pfが20[10-3・mm・cc/(m2・day・mmHg)]以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ラップスプライス部以外における前記フィルムの平均厚さGfが0.03mm~0.50mmであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記層間ゴム層の温度23℃、湿度65%における酸素透過係数Pgが2000[10-3・mm・cc/(m2・day・mmHg)]以下であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記ラップスプライス部における前記層間ゴム層の平均厚さGgが0.10mm~1.00mmであることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記補強層がカーカス層であり、前記フィルムが前記カーカス層よりもタイヤ内面側に配置されていることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んでなる熱可塑性エラストマー組成物のフィルムとゴム組成物とからなる積層体と、該積層体に隣接して配置される補強層とを備えた空気入りタイヤにおいて、補強層の局所的な劣化を防止し、耐久性を改善することを可能にした空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとからなる熱可塑性エラストマー組成物で形成されたフィルムをインナーライナー層などのタイヤ構成部材として使用することが提案されている。このようなフィルムは少なくとも片側に接着用のゴム組成物が積層された積層体としてタイヤ製造工程に供され、その積層体のタイヤ周方向の端部同士を重ね合わせることでラップスプライス部が形成される(例えば、特許文献1~3参照)。
【0003】
しかしながら、上述のような積層体のタイヤ周方向の端部同士を重ね合わせることでラップスプライス部を形成した場合、ラップスプライス部においてフィルムの層間に層間ゴム層が介在した構造が形成される。このような層間ゴム層を通じて空気が透過し、僅かではあるものの空気漏れが発生することがある。タイヤ周上に占める層間ゴム層の面積は小さいので空気入りタイヤ全体への影響は少ないが、上述した空気漏れに起因して、カーカス層やベルト層等の補強層において局所的な劣化が生じるという問題がある。特に、バス、トラック用等の重荷重用空気入りタイヤは空気圧が高いので、上述したフィルムをインナーライナー層として用いる場合には空気漏れが大きくなる傾向があり、補強層の局所的な劣化が生じ易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-240658号公報
【文献】国際公開第2016/063785号公報
【文献】国際公開第2016/2060128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んでなる熱可塑性エラストマー組成物のフィルムとゴム組成物とからなる積層体と、該積層体に隣接して配置される補強層とを備えた空気入りタイヤにおいて、補強層の局所的な劣化を防止し、耐久性を改善することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための空気入りタイヤは、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んで構成される熱可塑性エラストマー組成物のフィルムと該フィルムの少なくとも片側に積層されたゴム組成物とからなる積層体と、該積層体に隣接して配置され、スチールコードから構成される少なくとも1層の補強層とを備え、前記積層体のタイヤ周方向の端部同士がタイヤ周上の少なくとも1箇所で重ね合わされてラップスプライス部を形成し、該ラップスプライス部において前記フィルムの層間に前記ゴム組成物からなる層間ゴム層が介在する空気入りタイヤにおいて、前記ラップスプライス部における前記積層体のタイヤ周方向のラップ長さLが下記式(1)を満たし、前記ラップスプライスを含んで前記ラップスプライス部からタイヤ周方向の両側にそれぞれ10mmの領域において、他のタイヤ構成部材のタイヤ周方向の端部同士が互いに重ね合わされたラップスプライス部が存在しないことを特徴とするものである。
L≧Gf×Pg×Gg/(Pf×Dc) (1)
但し、Gf:前記ラップスプライス部以外における前記フィルムの平均厚さ[mm]
Gg:前記ラップスプライス部における前記層間ゴム層の平均厚さ[mm]
Pf:前記フィルムの酸素透過係数[10-3・mm・cc/(m2・day・mmHg)]
Pg:前記層間ゴム層の酸素透過係数[10-3・mm・cc/(m2・day・mmHg)]
Dc:前記フィルムの端部から前記補強層を構成するスチールコードまでのフィルム厚さ方向の距離[mm]
【発明の効果】
【0007】
本発明者は、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んでなる熱可塑性エラストマー組成物のフィルムとゴム組成物とからなる積層体と、その積層体に隣接して配置され、スチールコードから構成される補強層とを備えた空気入りタイヤについて、鋭意研究した結果、補強層の局所的な劣化の防止に必要なラップ長さに関し、フィルムと層間ゴム層のそれぞれの平均厚さ及び酸素透過係数と、ラップスプライス部のフィルムの端部から補強層のスチールコードまでのフィルム厚さ方向の距離とに基づく関係式を導き出し、本発明に至ったのである。
【0008】
本発明では、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んで構成される熱可塑性エラストマー組成物のフィルムとそのフィルムの少なくとも片側に積層されたゴム組成物とからなる積層体と、その積層体に隣接して配置され、スチールコードから構成される少なくとも1層の補強層とを備え、上記積層体のタイヤ周方向の端部同士がタイヤ周上の少なくとも1箇所で重ね合わされてラップスプライス部を形成し、そのラップスプライス部においてフィルムの層間にゴム組成物からなる層間ゴム層が介在する空気入りタイヤにおいて、ラップスプライス部における積層体のタイヤ周方向のラップ長さLが上記式(1)を満たすことで、積層体のラップスプライス部における必要最小限のタイヤ周方向のラップ長さLが確保されるので、補強層の局所的な劣化を防止し、耐久性を改善することができる。そのため、バス、トラック用等の重荷重用空気入りタイヤにおいても、補強層の局所的な劣化を防止し、耐久性を効果的に改善することができる。
【0009】
本発明では、フィルムの酸素透過係数Pf[10-3・mm・cc/(m2・day・mmHg)]をラップスプライス部以外におけるフィルムの平均厚さGf[mm]で除して得られるフィルムの酸素透過度[10-3・cc/(m2・day・mmHg)]とタイヤの最大空気圧P[kPa]とはPf/Gf≦50000/Pの関係を満たすことが好ましい。上記フィルムをインナーライナー層として用いる場合に、十分な空気透過防止性能を確保し、耐久性を効果的に改善することができる。
【0010】
本発明では、フィルムの温度23℃、湿度65%における酸素透過係数Pfは20[10-3・mm・cc/(m2・day・mmHg)]以下であることが好ましい。これにより、コスト及び重量の増加を抑制することができる。
【0011】
本発明では、ラップスプライス部以外におけるフィルムの平均厚さGfは0.03mm~0.50mmであることが好ましい。これにより、成形時の不具合を抑制し、ユニフォーミティーの悪化を防止することができる。
【0012】
本発明では、層間ゴム層の温度23℃、湿度65%における酸素透過係数Pgは2000[10-3・mm・cc/(m2・day・mmHg)]以下であることが好ましい。これにより、ユニフォーミティーの悪化を防止することができる。
【0013】
本発明では、ラップスプライス部における層間ゴム層の平均厚さGgは0.10mm~1.00mmであることが好ましい。これにより、成形時の不具合を抑制し、ユニフォーミティーの悪化を防止することができる。
【0014】
本発明では、補強層はカーカス層であり、フィルムはカーカス層よりもタイヤ内面側に配置されていることが好ましい。これにより、クラックの発生を抑制し、耐久性を効果的に改善することができる。
【0015】
本発明において、フィルム及び層間ゴム層の酸素透過係数[10-3・mm・cc/(m2・day・mmHg)]は、温度23℃、湿度65%の条件下でJIS K-7126-2(等圧法)に準拠して測定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の空気入りタイヤの実施形態の一例を示した一部破砕斜視図であり、ラップスプライス部のタイヤ内における位置関係を説明するものである。
図2】本発明の空気入りタイヤの積層体におけるラップスプライス部の実施形態の一例を示し、タイヤ赤道方向断面の一部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の空気入りタイヤの実施形態の一例を示すものである。図2は本発明の空気入りタイヤの積層体におけるラップスプライス部の実施形態の一例を示すものである。図1及び図2では本発明の空気入りタイヤを構成する補強層の一例としてカーカス層を示す。なお、図1,2において、矢印Tcはタイヤ周方向、矢印Twはタイヤ幅方向を示している。
【0018】
図1に示す空気入りタイヤには、トレッド部11の左右にサイドウォール部12とビード部13が連接するように設けられている。そのタイヤ内側には、タイヤの骨格たるカーカス層14(補強層)が、タイヤ幅方向に左右のビード部13間に跨るように設けられており、各ビード部13に配置されたビードコア16の廻りにタイヤ内側から外側へ折り返されている。このカーカス層14は、タイヤ径方向に延びる複数本のスチールコード14Aから構成される。トレッド部11に対応するカーカス層14の外周側にはスチールコードからなる2層のベルト層15が設けられている。カーカス層14の内側には、インナーライナー層10が配され、そのラップスプライス部4がタイヤ幅方向に延在している。即ち、インナーライナー層10はカーカス層14よりもタイヤ内面側に配置されている。
【0019】
図2に示す空気入りタイヤでは、インナーライナー層10として積層体1を用い、その積層体1のタイヤ周方向の端部同士はタイヤ周上の少なくとも1箇所で互いに重ね合わされてラップスプライス構造を有している。積層体1は、フィルム2とその少なくとも片側に積層したゴム組成物3の少なくとも2層構造で構成される。フィルム2は、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んでなる熱可塑性エラストマー組成物のフィルムである。フィルム2に積層したゴム組成物3はフィルム2に加硫接着する。ラップスプライス部4において、フィルム2の層間にゴム組成物3からなる層間ゴム層3Aが存在する。なお、図2において、フィルム2及びゴム組成物3の本体の断面は、理解を容易にするため直線状に描かれている。
【0020】
積層体1をラップスプライスする際、フィルム2を1枚使用する場合は、フィルム2のタイヤ周方向の両端部同士がゴム組成物3を介してラップスプライスされて環状を成すように形成される。或いは、フィルム2を複数枚使用する場合は、各フィルム2のタイヤ周方向の端部同士がゴム組成物3を介してラップスプライスされることで、各フィルム2が繋ぎ合わされ全体で一つの環状を成すように形成される。また、図2に示すように、積層体1がフィルム2とその両側に積層したゴム組成物3の3層構造で構成される場合、このような積層体1のタイヤ周方向の端部同士の接合は、ゴム組成物3を介してフィルム2が互いに重なる構造であり、ゴム-ゴム同士が加硫接合するため、接着力が大きい。
【0021】
上記空気入りタイヤにおいて、ラップスプライス部4における積層体1のタイヤ周方向のラップ長さLは下記式(1)を満たすように構成される。下記式(1)において、Gfはラップスプライス部4以外におけるフィルム2の平均厚さ[mm]であり、Ggはラップスプライス部4における層間ゴム層3Aの平均厚さ[mm]であり、Pfはフィルム2の酸素透過係数[10-3・mm・cc/(m2・day・mmHg)]であり、Pgは層間ゴム層3Aの酸素透過係数[10-3・mm・cc/(m2・day・mmHg)]であり、Dcはフィルム2の端部から補強層(図2ではカーカス層14)を構成するスチールコード(図2ではスチールコード14A)までのフィルム厚さ方向の距離[mm]である。
L≧Gf×Pg×Gg/(Pf×Dc) (1)
【0022】
上記式(1)では、層間ゴム層3Aにおいて平均厚さが厚くなる或いは酸素が透過し易くなるほど(Pg又はGgが大きくなるほど)、ラップ長さLを長くする必要があることを示している。その一方で、フィルム2のラップスプライス部4以外の部位で酸素が透過し易くなれば(後述する酸素透過度を示すPf/Gfが大きくなれば)、層間ゴム層3Aを透過する酸素は減少する傾向があるのでラップ長さLを短くすることができると共に、フィルム2の端部からカーカス層14を構成するスチールコード14Aまでのフィルム厚さ方向の距離Dcが大きくなれば、カーカス層14への影響が少なくなるのでラップ長さLが短くすることができることを示している。なお、ラップ長さLは、フィルム2の一方の端部の先端から他方の端部の先端までのタイヤ周方向の長さを測定したものである。フィルム2の平均厚さGf、層間ゴム層3Aの平均厚さGg、フィルム2の酸素透過係数Pf、層間ゴム層3Aの酸素透過係数Pg及びフィルム2の端部から補強層を構成するスチールコードまでのフィルム厚さ方向の距離Dcは、いずれもベルト層のタイヤ幅方向の中心位置で測定したものである。
【0023】
上述した空気入りタイヤでは、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んで構成される熱可塑性エラストマー組成物のフィルム2とそのフィルム2の少なくとも片側に積層されたゴム組成物3とからなる積層体1と、その積層体1に隣接して配置され、スチールコードから構成される少なくとも1層の補強層(カーカス層14)とを備え、積層体1のタイヤ周方向の端部同士がタイヤ周上の少なくとも1箇所で重ね合わされてラップスプライス部4を形成し、そのラップスプライス部4においてフィルム2の層間にゴム組成物3からなる層間ゴム層3Aが介在する空気入りタイヤにおいて、ラップスプライス部4における積層体1のタイヤ周方向のラップ長さLが上記式(1)を満たすことで、積層体1のラップスプライス部4における必要最小限のタイヤ周方向のラップ長さLが確保されるので、補強層の局所的な劣化を防止し、耐久性を改善することができる。そのため、バス、トラック用等の重荷重用空気入りタイヤにおいても、補強層の局所的な劣化を防止し、耐久性を効果的に改善することができる。
【0024】
上記空気入りタイヤにおいて、積層体1のラップスプライス部4の付近(ラップスプライス部4を含んでラップスプライス部4からタイヤ周方向の両側にそれぞれ10mmの領域)において、他のタイヤ構成部材(例えば、カーカス層など)のタイヤ周方向の端部同士が互いに重ね合わされたラップスプライス部が存在しないことが好ましい。
【0025】
上記空気入りタイヤにおいて、ラップスプライス部4以外におけるフィルム2の平均厚さGf(図2参照)は0.03mm~0.50mmであると良い。このようにフィルム2の平均厚さGfを適度に設定することで、成形時の不具合を抑制し、ユニフォーミティーの悪化を防止することができる。ここで、フィルム2の平均厚さGfが0.03mmより薄いと成形時にフィルム2が皺になり易く、逆に0.50mmより厚くなるとユニフォーミティーが悪化する傾向がある。
【0026】
また、フィルム2の酸素透過係数Pf[10-3・mm・cc/(m2・day・mmHg)]をラップスプライス部4以外におけるフィルム2の平均厚さGf[mm]で除して得られるフィルム2の酸素透過度[10-3・cc/(m2・day・mmHg)]とタイヤの最大空気圧P[kPa]とはPf/Gf≦50000/Pの関係を満たすことが好ましい。このようにフィルム2の酸素透過度(Gf/Pf)をタイヤの最大空気圧Pに対して適度に設定することで、フィルム2をインナーライナー層10として用いる場合に、十分な空気透過防止性能を確保し、耐久性を効果的に改善することができる。ここで、フィルム2の酸素透過度が50000/Pを超えると、フィルム2をインナーライナー層10として用いる場合に空気透過防止性能が低下し、耐久性が低下する傾向がある。
【0027】
特に、フィルム2の温度23℃、湿度65%における酸素透過係数Pfは20[10-3・mm・cc/(m2・day・mmHg)]以下であると良い。下限として、0.5[10-3・mm・cc/(m2・day・mmHg)]以上に設定することが好ましい。このようにフィルム2の酸素透過係数Pfを適度に設定することで、コスト及び重量の増加を抑制することができる。ここで、フィルム2の酸素透過係数Pfが20[10-3・mm・cc/(m2・day・mmHg)]よりも大きいとインナーライナー層10(積層体1)の厚さを厚くする必要があるのでコスト及び重量の増加に繋がる。フィルム2の酸素透過係数Pfが0.5[10-3・mm・cc/(m2・day・mmHg)]よりも小さいと耐久性が悪化し、クラックが発生し易くなる。
【0028】
上記空気入りタイヤにおいて、ラップスプライス部4における層間ゴム層3Aの平均厚さGg(図2参照)は0.10mm~1.00mmであると良い。このように層間ゴム層3Aの平均厚さGgを適度に設定することで、成形時の不具合を抑制し、ユニフォーミティーの悪化を防止することができる。ここで、層間ゴム層3Aが0.10mmよりも薄いと成形時にゴム組成物3が皺になり易く、逆に1.00mmより厚くなるとユニフォーミティーが悪化する傾向がある。
【0029】
また、層間ゴム層3Aの温度23℃、湿度65%における酸素透過係数Pgは2000[10-3・mm・cc/(m2・day・mmHg)]以下であることが好ましい。下限として、50[10-3・mm・cc/(m2・day・mmHg)]以上に設定することが好ましい。このように層間ゴム層3Aの酸素透過係数Pgを適度に設定することで、ユニフォーミティーの悪化を防止することができる。ここで、層間ゴム層3Aの酸素透過係数Pgが2000[10-3・mm・cc/(m2・day・mmHg)]よりも大きいとラップ長さLが過度に長くなるのでユニフォーミティーの悪化に繋がる。層間ゴム層3Aの酸素透過係数Pgが50[10-3・mm・cc/(m2・day・mmHg)]よりも小さいと耐久性が悪化する傾向がある。
【0030】
本発明において、フィルム2は、熱可塑性樹脂のフィルムか、又は熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んで構成される熱可塑性エラストマー組成物のフィルムである。
【0031】
フィルム2に用いることのできる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂〔例えば、ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66共重合体(N6/66)、ナイロン6/66/610共重合体(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T、ナイロン9T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体〕及びそれらのN-アルコキシアルキル化物〔例えば、ナイロン6のメトキシメチル化物、ナイロン6/610共重合体のメトキシメチル化物、ナイロン612のメトキシメチル化物、ポリエステル系樹脂〔例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミドジ酸/ポリブチレンテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステル〕、ポリニトリル系樹脂〔例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、(メタ)アクリロニトリル/スチレン共重合体、(メタ)アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体〕、ポリメタクリレート系樹脂〔例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル〕、ポリビニル系樹脂〔例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレン共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体(ETFE)〕、セルロース系樹脂〔例えば、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース〕、フッ素系樹脂〔例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフロロエチレン/エチレン共重合体〕、イミド系樹脂〔例えば、芳香族ポリイミド(PI)〕等を用いることができる。
【0032】
なかでも、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂が、物性面や加工性、取扱い性などの点で好ましい。
【0033】
また、フィルム2を構成することができる熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物(熱可塑性エラストマー組成物)は、熱可塑性樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続相として分散した構造をとる。かかる構造をとることにより、熱可塑性樹脂と同等の成形加工性を得ることができる。熱可塑性エラストマー組成物を構成する熱可塑性樹脂とエラストマーのうち、熱可塑性樹脂については上述のものを使用できる。熱可塑性エラストマー組成物を構成するエラストマーとしては、例えば、ジエン系ゴム及びその水添物〔例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR、高シスBR及び低シスBR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR〕、オレフィン系ゴム〔例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M-EPM)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニル又はジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー〕、含ハロゲンゴム〔例えば、Br-IIR、CI-IIR、臭素化イソブチレン-p-メチルスチレン共重合体(BIMS)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、塩素化ポリエチレンゴム(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレンゴム(M-CM)〕、シリコンゴム〔例えば、メチルビニルシリコンゴム、ジメチルシリコンゴム、メチルフェニルビニルシリコンゴム〕、含イオウゴム〔例えば、ポリスルフィドゴム〕、フッ素ゴム〔例えば、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン-プロピレン系ゴム、含フッ素シリコン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム〕、熱可塑性エラストマー〔例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ボリアミド系エラストマー〕等を好ましく使用することができる。
【0034】
特に、複数のエラストマーをブレンドするとき、そのうち50重量%以上が、ハロゲン化ブチルゴム又は臭素化イソブチレンパラメチルスチレン共重合ゴム又は無水マレイン酸変性エチレンαオレフィン共重合ゴムであることが、ゴム体積率を増やして低温から高温に至るまで柔軟、高耐久化できる点で好ましい。
【0035】
また、熱可塑性エラストマー組成物中の熱可塑性樹脂の50重量%以上が、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66共重合体、ナイロン6/12共重合体、ナイロン6/10共重合体、ナイロン4/6共重合体、ナイロン6/66/12共重合体、芳香族ナイロン、及びエチレン/ビニルアルコール共重合体のいずれかであることが優れた耐久性を得ることができるものであり、好ましい。
【0036】
また、上述した特定の熱可塑性樹脂及びエラストマーを組合せて熱可塑性エラストマー組成物を調製する際に、両者の相溶性が不足する場合は、第3成分として適当な相溶化剤を用いて相溶化させることができる。熱可塑性樹脂及びエラストマーのブレンド系に相溶化剤を混合することにより、熱可塑性樹脂とエラストマーとの界面張力が低下し、その結果、分散相を形成しているエラストマーの粒子径が微細になることから両成分の特性はより有効に発現されることになる。そのような相溶化剤としては、一般的に熱可塑性樹脂及びエラストマーの両方又は片方の構造を有する共重合体、あるいは熱可塑性樹脂又はエラストマーと反応可能なエポキシ基、カルボニル基、ハロゲン基、アミノ基、オキサゾリン基、水酸基等を有した共重合体の構造をとるものとすることができる。これらはブレンドされる熱可塑性樹脂とエラストマーの種類によって選定すればよいが、通常使用されるものには、スチレン/エチレン・ブチレンブロック共重合体(SEBS)及びそのマレイン酸変性物、EPDM、EPM、EPDM/スチレン又はEPDM/アクリロニトリルグラフト共重合体及びそのマレイン酸変性物、スチレン/マレイン酸共重合体、反応性フェノキシン等を挙げることができる。かかる相溶化剤の配合量には特に限定されないが、好ましくは、ポリマー成分(熱可塑性樹脂とエラストマーとの合計)100重量部に対して、0.5~10重量部が良い。
【0037】
熱可塑性エラストマー組成物において、熱可塑性樹脂とエラストマーとの組成比は、特に限定されるものではない。例えば、熱可塑性樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続相として分散した構造をとるように、組成比を適宜決めればよい。熱可塑性樹脂とエラストマーとの組成比は、熱可塑性樹脂/エラストマーの重量比で、好ましくは90/10~20/80、より好ましくは80/20~30/70であると良い。
【0038】
本発明において、熱可塑性樹脂、又は熱可塑性樹脂とエラストマーをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物には、例えば、フィルム2を構成することに必要な特性を損なわない範囲内で、上述した相溶化剤以外にも、他のポリマーを混合することができる。他のポリマーを混合する目的は、材料の成型加工性を良くするため、耐熱性向上のため、コストダウンのため等があり、これに用いられる材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ABS、SBS、ポリカーボネート(PC)等を例示することができる。
【0039】
また、一般的にポリマー配合物に配合される充填剤(炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ等)、カーボンブラック、ホワイトカーボン等の補強剤、軟化剤、可塑剤、加工助剤、顔料、染料、老化防止剤等をフィルム2としての必要特性を損なわない限り、任意に配合することもできる。
【0040】
また、熱可塑性樹脂とブレンドされるエラストマーは、熱可塑性樹脂との混合の際に、動的に加硫することもできる。動的に加硫する場合の加硫剤、加硫助剤、加硫条件(温度、時間)等は、添加するエラストマーの組成に応じて適宜決定すればよく、特に限定されるものではない。
【0041】
このように熱可塑性樹脂組成物中のエラストマーが動的加硫をされていることは、得られる熱可塑性エラストマー組成物が加硫エラストマーを含んだものとなるので、外部からの変形に対して抵抗力(弾性)があり、本発明の効果を大きくできることになり好ましい。
【0042】
加硫剤としては、一般的なゴム加硫剤(架橋剤)を用いることができる。具体的には、イオウ系加硫剤としては粉末イオウ、沈降性イオウ、高分散性イオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウ、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド等を例示でき、例えば、0.5~4phr(本明細書において、「phr」は、エラストマー成分100重量部あたりの重量部をいう。以下、同じ。)程度用いることができる。
【0043】
また、有機過酸化物系の加硫剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジ(パーオキシルベンゾエート)等が例示され、例えば、1~20phr程度用いることができる。
【0044】
更に、フェノール樹脂系の加硫剤としては、アルキルフェノール樹脂の臭素化物や、塩化スズ、クロロプレン等のハロゲンドナーとアルキルフェノール樹脂とを含有する混合架橋系等が例示でき、例えば、1~20phr程度用いることができる。
【0045】
その他として、亜鉛華(5phr程度)、酸化マグネシウム(4phr程度)、リサージ(10~20phr程度)、p-キノンジオキシム、p-ジベンゾイルキノンジオキシム、テトラクロロ-p-ベンゾキノン、ポリ-p-ジニトロソベンゼン(2~10phr程度)、メチレンジアニリン(0.2~10phr程度)が例示できる。
【0046】
また、必要に応じて、加硫促進剤を添加しても良い。加硫促進剤としては、アルデヒド・アンモニア系、グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオ酸塩系、チオウレア系等の一般的な加硫促進剤を、例えば、0.5~2phr程度用いることができる。
【0047】
また、ゴム組成物3を構成するゴム材料には、天然ゴム、イソプレンゴム、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、水素化スチレンブタジエンゴム等のジエン系ゴムや、エチレンプロピレンゴム、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴムなどのオレフィン系ゴム等を好ましく使用できる。
【0048】
そして、上記フィルム2は、隣接するゴム組成物3との接着性を高めるために接着層を介在させて積層するとよい。接着層を構成するポリマーとしては、分子量100万以上、好ましくは300万以上の超高分子量ポリエチレン、エチレンエチルアクリレート共重合体、エチレンメチルアクリレート樹脂、エチレンアクリル酸共重合体等のアクリレート共重合体類及びそれらの無水マレイン酸付加物、ポリプロピレン及びそのマレイン酸変性物、エチレンプロピレン共重合体及びそのマレイン酸変性物、ポリブタジエン系樹脂及びその無水マレイン酸変性物、スチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン共重合体、フッ素系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂などが好ましく使用される。
【0049】
上述した実施形態では、補強層がカーカス層14である空気入りタイヤについて説明したが、本発明は補強層がベルト層やサイド補強層である空気入りタイヤにも適用することもできる。特に、補強層がカーカス層14であって、積層体1を構成するフィルム2がカーカス層14よりもタイヤ内面側に配置されている場合には、クラックの発生を抑制し、耐久性を効果的に改善することができる。
【実施例
【0050】
タイヤサイズ195/65R15(乗用車用)、275/70R22.5(重荷重用)で、熱可塑性樹脂とエラストマーのブレンド物を含んでなる熱可塑性エラストマー組成物のフィルムとそのフィルムの両側に積層されたゴム組成物とからなる積層体と、その積層体に隣接して配置され、スチールコードから構成される1層の補強層とを備え、積層体のタイヤ周方向の端部同士が重ね合わされてラップスプライス部を形成し、そのラップスプライス部においてフィルムの層間にゴム組成物からなる層間ゴム層が介在する空気入りタイヤにおいて、タイヤの種類、ラップ長さL、フィルムの平均厚さGf、フィルムの酸素透過係数Pf、層間ゴム層の平均厚さGg、層間ゴム層の酸素透過係数Pg、フィルムの端部から補強層のスチールコードまでのフィルム厚さ方向の距離Dc、Gf×Pg×Gg/(Pf×Dc)を表1のように異ならせた比較例1~3及び実施例1~5のタイヤを作製した。
【0051】
なお、各試験タイヤにおいて、積層体に隣接して配置される補強層はカーカス層であることを共通にした。また、比較例1,3及び実施例3(表1の酸素透過係数Pf=10)のタイヤにおいて、フィルムは、ナイロン6/66共重合体(N6/66)と、臭素化イソブチレン-p-メチルスチレン共重合体(BIMS)とを、重量比50/50で含む熱可塑性エラストマー組成物であり、比較例2及び実施例1,5(表1の酸素透過係数Pf=5)のタイヤにおいて、フィルムはN6/66とBIMSとを重量比75/25で含む熱可塑性エラストマー組成物であり、実施例2,4(表1の酸素透過係数Pf=20)のタイヤにおいて、フィルムはN6/66とBIMSとを重量比30/70で含む熱可塑性エラストマー組成物である。各試験タイヤにおいて、ゴム組成物は、天然ゴムとスチレンブタジエンゴムを主成分とするゴム組成物であることを共通にした。
【0052】
これら試験タイヤについて、下記試験方法により耐久性を評価し、その結果を表1に併せて示した。
【0053】
耐久性:
各試験タイヤをリムサイズ15×6JJ(乗用車用)、リムサイズ22.5×7.50(重荷重用)のいずれかに組み付け、タイヤ内圧で240kPa(乗用車用)又は900kPa(重荷重用)となるように空気を充填した。このタイヤを室内ドラム試験機にかけて、JATMAで規定される最大負荷能力の120%の荷重を負荷し、速度80km/h(乗用車用)又は50km/h(重荷重用)で20,000km走行させた。その後、補強層を構成するスチールコードを目視で観察してセパレーションの発生を確認し、発生した場合はセパレーションの長さ[mm]を測定した。
【0054】
【表1】
【0055】
表1から判るように、実施例1~5のタイヤは、積層体のタイヤ周方向のラップ長さLを本発明で規定する式(1)から求められる長さ以上となるように設定したので、補強層を構成するスチールコードにおけるセパレーションの発生を防止することができ、比較例1~3のタイヤに比して耐久性が改善した。
【符号の説明】
【0056】
1 積層体
2 フィルム
3 ゴム組成物
3A 層間ゴム層
4 ラップスプライス部
10 インナーライナー層
11 トレッド部
12 サイドウォール部
13 ビード部
14 カーカス層
14A スチールコード
15 ベルト層
16 ビードコア
L ラップ長さ
図1
図2