(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20220621BHJP
H01L 29/788 20060101ALI20220621BHJP
H01L 29/792 20060101ALI20220621BHJP
H01L 27/11573 20170101ALI20220621BHJP
H01L 27/11536 20170101ALI20220621BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20220621BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
H01L29/78 371
H01L27/11573
H01L27/11536
H01L27/088 A
(21)【出願番号】P 2018012004
(22)【出願日】2018-01-26
【審査請求日】2020-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】315002243
【氏名又は名称】ユナイテッド・セミコンダクター・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】江間 泰示
(72)【発明者】
【氏名】安田 真
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-184721(JP,A)
【文献】特開2007-288060(JP,A)
【文献】特開2009-049328(JP,A)
【文献】特開平10-223892(JP,A)
【文献】特開2007-258401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 27/11573
H01L 27/11536
H01L 21/8234
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の上方に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜の上方に設けられたゲート電極と、
前記ゲート電極の側壁及び前記半導体基板の上方に設けられた
第1サイドウォール絶縁膜と、
前記第1サイドウォール絶縁膜上に設けられた第2サイドウォール絶縁膜と、
前記ゲート電極の両側の前記半導体基板内にそれぞれ設けられ、第1導電型の不純物を含むソース領域及びドレイン領域と、
前記半導体基板内であって、前記
第1サイドウォール絶縁膜の前記ゲート電極よりも前記ソース領域側に位置する第1の部分の下方に設けられ、前記ソース領域よりも低濃度で第1導電型の不純物を含む第1の半導体領域と、
前記半導体基板内であって、前記
第1サイドウォール絶縁膜の前記ゲート電極よりも前記ドレイン領域側に位置する第2の部分の下方に設けられ、第1導電型の不純物の濃度が前記ドレイン領域及び前記第1の半導体領域よりも低い第2の半導体領域と、
前記第1の半導体領域と前記第2の半導体領域との間の前記半導体基板内に設けられたチャネル領域と、
前記チャネル領域の下方の前記半導体基板内に設けられ、前記チャネル領域よりも高濃度の前記第1導電型とは異なる第2導電型の不純物を含む第3の半導体領域と、
を有し、
平面視で、前記ソース領域の前記ゲート電極側の縁は、前記第1サイドウォール絶縁膜の前記第1の部分の前記ソース領域側の縁と一致し、前記ドレイン領域の前記ゲート電極側の縁は、前記第1サイドウォール絶縁膜の前記第2の部分の前記ドレイン領域側の縁と一致し、前記第2サイドウォール絶縁膜は、前記ソース領域の一部及び前記ドレイン領域の一部と重なり、
前記
第1サイドウォール絶縁膜に電荷を蓄積することによって情報を記憶することを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記
第1サイドウォール絶縁膜は、
酸化シリコン膜と、
前記酸化シリコン膜上の窒化シリコン膜と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第3の半導体領域の前記第2導電型の不純物の濃度は、
前記第1の半導体領域の前記第1導電型の不純物の濃度よりも低く、
前記第2の半導体領域の前記第1導電型の不純物の濃度よりも高いことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2の半導体領域の前記第1導電型の不純物の濃度は、前記第3の半導体領域の前記第2導電型の不純物の濃度の1/10以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1の半導体領域の前記第1導電型の不純物の濃度は、3×10
19cm
-3以上5×10
20cm
-3以下であることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2の半導体領域の前記第1導電型の不純物の濃度は、5×10
17cm
-3以下であることを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記チャネル領域は、ノンドープ領域であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第2の半導体領域は、ノンドープ領域であることを特徴とする請求項1乃至
7のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第3の半導体領域の下方の前記半導体基板内に設けられ、前記第3の半導体領域よりも低濃度の前記第2導電型の不純物を含む第4の半導体領域と、
前記第4の半導体領域の下方の前記半導体基板内に設けられ、前記第4の半導体領域よりも高濃度の前記第2導電型の不純物を含む第5の半導体領域と、
を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の1つに、不揮発性メモリがある。例えば、ゲート電極側壁のサイドウォール絶縁膜に電荷(ホットキャリア)を蓄積することによって情報を記憶するMOS(Metal Oxide Semiconductor)型電界効果トランジスタをメモリトランジスタとして含む不揮発性メモリが知られている。
【0003】
サイドウォール絶縁膜にホットキャリアを蓄積することによって情報を記憶するメモリトランジスタ群を備えた不揮発性メモリでは、不揮発性メモリ全体のプログラムスピードが、個々のメモリトランジスタのプログラムスピードに依存してくる。個々のメモリトランジスタのプログラムスピードが十分でないと、不揮発性メモリの容量によっては、その不揮発性メモリを含むシステム上で許容される時間内に所定のプログラムが行えないといった不具合を招く恐れがある。
【0004】
そこで、メモリトランジスタのプログラムスピードの向上を図った半導体装置が特許文献1に提案されている。この半導体装置によれば、所期の目的を達成することができる。
【0005】
その一方で、不揮発性メモリには、多サイクルのプログラム動作及びイレーズ動作に対する耐久性(endurance)の向上が望まれている。特許文献1に記載の半導体装置によれば、それまでの半導体装置と比較して優れた耐久性が得られるものの、近時の要望に応え得るのに十分な耐久性が得られないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、プログラム動作及びイレーズ動作に対してより優れた耐久性を得ることができる半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
半導体装置の一態様は、半導体基板の上方に設けられたゲート絶縁膜と、前記ゲート絶縁膜の上方に設けられたゲート電極と、前記ゲート電極の側壁及び前記半導体基板の上方に設けられた第1サイドウォール絶縁膜と、前記第1サイドウォール絶縁膜上に設けられた第2サイドウォール絶縁膜と、前記ゲート電極の両側の前記半導体基板内にそれぞれ設けられ、第1導電型の不純物を含むソース領域及びドレイン領域と、前記半導体基板内であって、前記第1サイドウォール絶縁膜の前記ゲート電極よりも前記ソース領域側に位置する第1の部分の下方に設けられ、前記ソース領域よりも低濃度で第1導電型の不純物を含む第1の半導体領域と、前記半導体基板内であって、前記第1サイドウォール絶縁膜の前記ゲート電極よりも前記ドレイン領域側に位置する第2の部分の下方に設けられ、第1導電型の不純物の濃度が前記ドレイン領域及び前記第1の半導体領域よりも低い第2の半導体領域と、前記第1の半導体領域と前記第2の半導体領域との間の前記半導体基板内に設けられたチャネル領域と、前記チャネル領域の下方の前記半導体基板内に設けられ、前記チャネル領域よりも高濃度の前記第1導電型とは異なる第2導電型の不純物を含む第3の半導体領域と、を有し、平面視で、前記ソース領域の前記ゲート電極側の縁は、前記第1サイドウォール絶縁膜の前記第1の部分の前記ソース領域側の縁と一致し、前記ドレイン領域の前記ゲート電極側の縁は、前記第1サイドウォール絶縁膜の前記第2の部分の前記ドレイン領域側の縁と一致し、前記第2サイドウォール絶縁膜は、前記ソース領域の一部及び前記ドレイン領域の一部と重なり、前記第1サイドウォール絶縁膜に電荷を蓄積することによって情報を記憶する。
【発明の効果】
【0009】
開示の技術によれば、プログラム動作及びイレーズ動作に対してより優れた耐久性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図2】メモリトランジスタを詳細に示す断面図である。
【
図3A】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図3B】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図3C】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
【
図3D】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その4)である。
【
図3E】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その5)である。
【
図3F】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その6)である。
【
図3G】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その7)である。
【
図3H】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その8)である。
【
図3I】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その9)である。
【
図3J】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その10)である。
【
図3K】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その11)である。
【
図3L】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その12)である。
【
図3M】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その13)である。
【
図4】複数のメモリトランジスタを含む不揮発性メモリのレイアウトを示す図である。
【
図5】複数のメモリトランジスタを含む不揮発性メモリのプログラム動作を示す図である。
【
図6】複数のメモリトランジスタを含む不揮発性メモリのリード動作を示す図である。
【
図7】複数のメモリトランジスタを含む不揮発性メモリのイレーズ動作を示す図である。
【
図8】第2の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図9】第3の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図10A】第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図10B】第3の実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図11】第4の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【
図12A】第1の実施形態に係る半導体装置の変形例の製造方法を示す断面図(その1)である。
【
図12B】第1の実施形態に係る半導体装置の変形例の製造方法を示す断面図(その2)である。
【
図13】不純物濃度とばらつきとの関係を示すグラフである。
【
図14】不純物濃度と電流との関係を示すグラフである。
【
図15】不純物濃度とリーク電流との関係を示すグラフである。
【
図16】不純物がAsの場合のゲート電圧とリード電流との関係を示すグラフである。
【
図17】不純物がPの場合のゲート電圧とリード電流との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願発明者らは、製品の不揮発性メモリに求められる程度の多サイクルのプログラム動作及びイレーズ動作に対して十分な耐性が得られるよう鋭意検討を行った。この結果、詳細は後述するが、従来、ソース領域とドレイン領域との間に設けられている二つのLDD(Lightly Doped Drain)領域について、ソース領域側のLDD領域の不純物濃度をドレイン領域側のLDD領域よりも高くすることが効果的であることが判明した。また、不純物濃度にも好適な範囲があり、例えば、ドレイン領域側の領域については、不純物を導入せずにノンドープとすることが好ましいことも判明した。
【0012】
以下、実施形態について添付の図面を参照しながら具体的に説明する。
【0013】
(第1の実施形態)
先ず、第1の実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0014】
第1の実施形態に係る半導体装置100は、不揮発性メモリの一例であって、そのメモリ領域1に設けられたトランジスタ(メモリトランジスタ)10、ロジック領域2に設けられたトランジスタ(ロジックトランジスタ)20、及び入出力(I/O)領域3に設けられたトランジスタ(I/Оトランジスタ)を有する。メモリトランジスタ10、ロジックトランジスタ20及びI/Oトランジスタ30は、p型又はn型の共通の半導体基板101上に形成(混載)される。半導体基板101には、シリコン(Si)基板、シリコンゲルマニウム(SiGe)等の各種半導体基板が用いられる。メモリトランジスタ10が形成される領域(素子領域)、ロジックトランジスタ20が形成される領域(素子領域)、及びI/Oトランジスタ30が形成される領域(素子領域)は、STI(Shallow Trench Isolation)法、熱酸化法等を用いて半導体基板101に形成された素子分離領域107によって画定される。
【0015】
尚、
図1には1つのメモリトランジスタ10を例示するが、半導体装置100のメモリ領域1には、複数のメモリトランジスタ10、或いは少なくとも1つのメモリトランジスタ10とその他のメモリトランジスタが含まれ得る。
図1には1つのロジックトランジスタ20を例示するが、半導体装置100のロジック領域2には、複数のロジックトランジスタ20、或いは少なくとも1つのロジックトランジスタ20とその他のロジックトランジスタが含まれ得る。
図1には1つのI/Oトランジスタ30を例示するが、半導体装置100のI/O領域3には、複数のI/Oトランジスタ30、或いは少なくとも1つのI/Oトランジスタ30とその他のI/Oトランジスタが含まれ得る。
【0016】
図2は、メモリトランジスタ10を詳細に示す断面図である。
図1及び
図2に示すように、メモリトランジスタ10は、半導体基板101の上方に設けられたゲート絶縁膜212、ゲート絶縁膜212の上方に設けられたゲート電極211、並びにゲート電極211の側壁及び半導体基板101の上方に設けられたサイドウォール絶縁膜253を有する。メモリトランジスタ10は更に、ゲート電極211の両側(ゲート長方向の両側)の半導体基板101内にそれぞれ設けられ、ソース領域又はドレイン領域として機能する第1導電型の不純物領域114(ソース領域114s及びドレイン領域114d)を有する。メモリトランジスタ10は、半導体基板101内であって、サイドウォール絶縁膜253のゲート電極211よりもソース領域114s側に位置する第1の部分253sの下方に設けられ、ソース領域114sよりも低濃度で第1導電型の不純物を含む第1の半導体領域115sを有する。メモリトランジスタ10は、半導体基板101内であって、サイドウォール絶縁膜253のゲート電極211よりもドレイン領域114d側に位置する第2の部分253dの下方に設けられ、第1導電型の不純物の濃度がドレイン領域114d及び第1の半導体領域115sよりも低い第2の半導体領域115dを有する。第1の半導体領域115sは、例えばLDD領域であり、第2の半導体領域115dは、例えばノンドープ領域である。第2の半導体領域115dがLDD領域であってもよい。
【0017】
ゲート絶縁膜212には、酸化シリコン(SiO2)、窒化シリコン(Si3N4)、酸化ハフニウム(HfO2)等、各種絶縁材料を用いることができる。ゲート絶縁膜212の膜厚は、例えば、メモリトランジスタ10について設定される閾値電圧に基づいて設定される。
【0018】
ゲート電極211には、多結晶シリコン(ポリシリコン)のほか、チタン(Ti)、タングステン(W)等の金属やその窒化物を用いることができる。
【0019】
サイドウォール絶縁膜253は、例えば、絶縁膜である酸化膜251と窒化膜252が積層された構造を含む。酸化膜251には、例えば、酸化シリコンが用いられる。窒化膜252には、例えば、窒化シリコンが用いられる。例えば、半導体基板101上にはゲート絶縁膜212がそのまま延在し、ゲート電極211の側面にはゲート電極211を熱酸化して形成した酸化膜が設けられることによって、全体としてゲート電極211の側壁及び半導体基板101上に断面L字状に酸化膜251とゲート絶縁膜212とが設けられ、この酸化膜251とゲート絶縁膜212との上に窒化膜252が設けられる。
図1には、酸化膜251並びにゲート絶縁膜212及び窒化膜252の2層構造のサイドウォール絶縁膜253を例示するが、サイドウォール絶縁膜253を、断面L字状とした酸化膜並びに絶縁膜及び窒化膜の上に更に酸化膜を設けた3層構造としたり、4層以上の絶縁膜の積層構造としたりすることもできる。サイドウォール絶縁膜253は、酸化膜や窒化膜の単層構造とすることも可能である。例えば、サイドウォール絶縁膜253は、ゲート電極211のゲート長方向(半導体基板101の平面方向)の幅(厚み)W1が、ロジックトランジスタ20の後述するサイドウォール絶縁膜254の幅(厚み)W2よりも大きくなるように、設けられてもよい。
【0020】
不純物領域114には、所定の導電型の不純物、即ち、リン(P)やヒ素(As)等のn型の不純物、又はホウ素(B)等のp型の不純物が、所定の濃度で含まれる。
【0021】
メモリトランジスタ10では、ゲート電極211の下方の、第1の半導体領域115sと第2の半導体領域115dとの間の領域が、キャリア(電子又は正孔)が移動するチャネル領域116として機能する。第2の半導体領域115dがチャネル領域の一部として機能することもある。
【0022】
メモリトランジスタ10は、チャネル領域116の下方に設けられた第3の半導体領域112を有する。第3の半導体領域112は、チャネル領域116よりも高濃度の不純物を含む領域である。第3の半導体領域112は、スクリーン層(SCR層)とも称される。第3の半導体領域112には、ソース領域114s及びドレイン領域114dに含まれる不純物とは異なる導電型の不純物が、所定の濃度で含まれる。第3の半導体領域112の不純物濃度によって、メモリトランジスタ10の閾値電圧が制御される。また、第3の半導体領域112により、ソース領域114sとドレイン領域114dとの間のパンチスルーが抑制される。第3の半導体領域112は、半導体基板101とゲート絶縁膜212との界面からチャネル領域116の厚さ分、半導体基板101の内部に埋め込まれた位置に設けられ、その不純物濃度で閾値電圧が調整されるため、例えば、1×1019cm-3程度の比較的高い不純物濃度とされる。第3の半導体領域112の第2導電型の不純物の濃度は、第1の半導体領域115sの第1導電型の不純物の濃度よりも低く、第2の半導体領域115dの第1導電型の不純物の濃度よりも高いことが好ましい。また、第2の半導体領域115dの第1導電型の不純物の濃度は、第3の半導体領域112の第2導電型の不純物の濃度の1/10以下であることがより好ましい。
【0023】
メモリトランジスタ10は、サイドウォール絶縁膜253に電荷(電子又は正孔)を蓄積することによって情報を記憶する、不揮発性メモリトランジスタである。ゲート絶縁膜212並びに酸化膜251及び窒化膜252の積層構造を含むサイドウォール絶縁膜253を備えたメモリトランジスタ10では、主にその窒化膜252に電荷が蓄積される。窒化シリコンのような窒化膜252は、電荷をトラップする準位を有し、また、酸化シリコンのような酸化膜251及びゲート絶縁膜212は、窒化膜252に蓄積された電荷の散逸を抑える。
【0024】
ロジックトランジスタ20は、
図1に示すように、半導体基板101の上方に設けられたゲート絶縁膜222、ゲート絶縁膜222の上方に設けられたゲート電極221、ゲート電極221の側壁及び半導体基板101の上方に設けられたサイドウォール絶縁膜254を有する。ロジックトランジスタ20は更に、ゲート電極221の両側(ゲート長方向の両側)の半導体基板101内にそれぞれ設けられ、ソース領域又はドレイン領域として機能する二つの不純物領域124を有する。ロジックトランジスタ20はまた、サイドウォール絶縁膜254の下方の半導体基板101内で、二つの不純物領域124の内側に、LDD領域123を有してよい。
【0025】
ゲート絶縁膜222には、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム等、各種絶縁材料を用いることができる。ゲート絶縁膜222の膜厚は、例えば、ロジックトランジスタ20について設定される閾値電圧に基づいて設定され、例えば、ゲート絶縁膜222はゲート絶縁膜212より薄い。
【0026】
ゲート電極221には、ポリシリコンのほか、チタン等の金属やその窒化物を用いることができる。
【0027】
サイドウォール絶縁膜254は、酸化シリコン等の酸化膜、又は窒化シリコン等の窒化膜を含む。サイドウォール絶縁膜254は、必ずしも酸化膜と窒化膜の積層構造を含むことを要せず、酸化膜や窒化膜といった絶縁膜の単層構造とすることができる。サイドウォール絶縁膜254は、ゲート電極221のゲート長方向(半導体基板101の平面方向)の幅W2が、メモリトランジスタ10のサイドウォール絶縁膜253の幅W1よりも小さくなるように、設けられてもよい。
【0028】
不純物領域124には、n型又はp型の導電型の不純物が、所定の濃度で含まれる。LDD領域123には、不純物領域124に含まれる不純物と同じ導電型の不純物が、不純物領域124よりも低濃度で含まれる。
【0029】
ロジックトランジスタ20では、ゲート電極221の下方の、二つのLDD領域123の間の領域が、キャリア(電子又は正孔)が移動するチャネル領域126として機能する。
【0030】
ロジックトランジスタ20は、チャネル領域126の下方に設けられた比較的高濃度の半導体領域122を有する。半導体領域122は、ロジックトランジスタ20の閾値電圧のばらつきの低減、消費電力の低減等に寄与する。
【0031】
ロジック領域2のロジックトランジスタ20は、例えば、メモリ領域1のメモリトランジスタ10に対してリード(読み出し)を行うために用いられる。
【0032】
I/Oトランジスタ30は、
図1に示すように、半導体基板101の上方に設けられたゲート絶縁膜232、ゲート絶縁膜232の上方に設けられたゲート電極231、ゲート電極231の側壁及び半導体基板101の上方に設けられたサイドウォール絶縁膜254を有する。I/Oトランジスタ30は更に、ゲート電極231の両側(ゲート長方向の両側)の半導体基板101内にそれぞれ設けられ、ソース領域又はドレイン領域として機能する二つの不純物領域134を有する。I/Oトランジスタ30はまた、サイドウォール絶縁膜254の下方の半導体基板101内で、二つの不純物領域134の内側に、LDD領域133を有してよい。
【0033】
ゲート絶縁膜232には、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ハフニウム等、各種絶縁材料を用いることができる。ゲート絶縁膜232の膜厚は、例えば、I/Oトランジスタ30について設定される閾値電圧に基づいて設定され、例えば、ゲート絶縁膜212の膜厚と同程度である。
【0034】
ゲート電極231には、ポリシリコンのほか、チタン等の金属やその窒化物を用いることができる。
【0035】
不純物領域134には、n型又はp型の導電型の不純物が、所定の濃度で含まれる。LDD領域133には、不純物領域134に含まれる不純物と同じ導電型の不純物が、不純物領域134よりも低濃度で含まれる。
【0036】
I/Oトランジスタ30では、ゲート電極231の下方の、二つのLDD領域133の間の領域が、キャリア(電子又は正孔)が移動するチャネル領域136として機能する。I/Oトランジスタ30は、例えば、メモリ領域1のメモリトランジスタ10に対してプログラム(書き込み)、イレーズ(消去)を行うために用いられる。
【0037】
次に、メモリトランジスタ10のプログラム、リードの各動作について説明する。ここでは、メモリトランジスタ10をnチャネル型とし、半導体基板101はp型、ソース領域114s、ドレイン領域114d及び第1の半導体領域115s(LDD領域113)はn型、第2の半導体領域115dはi型とする。
【0038】
プログラム動作は、ゲート電極211、ソース領域114s及びドレイン領域114d並びに半導体基板101の各ノードを所定の電位にしてホットキャリアを生成させ、生成させたホットキャリアをサイドウォール絶縁膜253に注入、蓄積(保持)させることで、行う。例えば、ソース領域114s及び半導体基板101を接地し、ゲート電極211及びドレイン領域114dに正電圧を印加する。半導体基板101には負電圧を印加するようにしてもよい。このように電位を調整すると、メモリトランジスタ10では、チャネル領域116に反転層(図示せず)が形成され、チャネル領域116をソース領域114sからドレイン領域114dに向かって電子が流れる。チャネル領域116をドレイン領域114dに向かって流れる電子は、ドレイン領域114dの近傍で、ドレイン領域114dに印加された正電圧による電界によって高エネルギー状態となり、これによりホットエレクトロンが生成される。ドレイン領域114dの近傍で生成されたホットエレクトロンは、ゲート電極211に印加された正電圧による電界によって、第2の部分253dに注入、蓄積される。
【0039】
リード動作は、例えば、ドレイン領域114d及び半導体基板101を接地し、ゲート電極211及びソース領域114sに正電圧を印加することで、行う。ゲート電極211に印加する正電圧は大きなリード電流を得るために比較的高く設定し、ソース領域114sに印加する正電圧はリードディスターブを軽減し、また、消費電流を低く抑えるために低く設定する。第2の部分253dに電子が注入、蓄積されていれば、第2の半導体領域115dの電子に対するポテンシャルが高くなり、結果として第2の半導体領域115dの抵抗が高くなる。そのため、ソース領域114sからドレイン領域114dに流れる電流が低下する。第2の部分253dに電子が注入、蓄積されていなければ、第2の半導体領域115dの抵抗が高くならず、ソース領域114sからドレイン領域114dに流れる電流は低下しない。このようにソース領域114sからドレイン領域114dに流れる電流によって、第2の部分253dの電子の有無(“0”又は“1”の情報)が読み出される。
【0040】
メモリトランジスタ10をpチャネル型とする場合には、半導体基板101はn型、ソース領域114s、ドレイン領域114d及び第1の半導体領域115s(LDD領域113)はp型とされる。
【0041】
pチャネル型のメモリトランジスタ10では、例えば、各ノードに上記のプログラム動作時とは反対符号の電圧を印加することで、第2の部分253dへの正孔の注入、蓄積が行われる。また、pチャネル型のメモリトランジスタ10では、例えば、各ノードに上記のリード動作時とは反対符号の電圧を印加することで、第2の部分253dの正孔の有無が読み出される。
【0042】
このような第1の実施形態に係る半導体装置100では、第1の半導体領域115sの不純物濃度が第2の半導体領域115dの不純物領域よりも高いため、より優れた耐久性を得ることができる。
【0043】
次に、第1の実施形態に係る半導体装置100を製造する方法について説明する。
図3A~
図3Mは、第1の実施形態に係る半導体装置100を製造する方法を工程順に示す断面図である。
【0044】
まず、
図3Aに示すように、半導体基板101上にレジストパターン501を形成する。レジストパターン501は、メモリ領域1及びロジック領域2を露出し、I/O領域3を覆う。次いで、レジストパターン501をマスクにして不純物を注入することで、メモリ領域1にpウェル111及びp型の第3の半導体領域112を形成し、ロジック領域2にpウェル121及びp型の半導体領域122を形成する。レジストパターン501を形成する前に、アライメントマークを形成したり、保護膜として酸化シリコン膜を形成したりしてもよい。
【0045】
この不純物注入は、例えば、次のような条件で行われる。ホウ素を135keVの加速エネルギーでドーズ量3.5~4.5×1013cm-2程度の条件で注入する。ゲルマニウムを30keVの加速エネルギーでドーズ量4.5~5.5×1014cm-2程度の条件で注入する。炭素を5keVの加速エネルギーでドーズ量4.5~5.5×1014cm-2程度の条件で注入する。ホウ素を20keVの加速エネルギーでドーズ量6~8×1012cm-2程度の条件で注入する。フッ化ホウ素を10keVの加速エネルギーでドーズ量2.5~3.5×1012cm-2程度の条件で注入する。尚、ゲルマニウム及び炭素を注入することで、半導体領域112及び122に含まれるp型不純物の、下方や上方の領域への拡散が抑制される。
【0046】
その後、
図3Bに示すように、レジストパターン501を除去し、半導体基板101上にレジストパターン502を形成する。レジストパターン502は、メモリ領域1を露出し、ロジック領域2及びI/O領域3を覆う。続いて、レジストパターン502をマスクにして不純物を注入することで、第3の半導体領域112の不純物濃度を高める。この不純物の注入では、例えば、ホウ素を20keVの加速エネルギーでドーズ量1~2×10
13cm
-2程度の条件で注入する。
【0047】
次いで、
図3Cに示すように、レジストパターン502を除去し、半導体基板101上にレジストパターン503を形成する。レジストパターン503は、ロジック領域2を露出し、メモリ領域1及びI/O領域3を覆う。その後、レジストパターン503をマスクにして不純物を注入することで、p型の半導体領域122の不純物濃度を高める。この不純物の注入では、例えば、フッ化ホウ素を10keVの加速エネルギーでドーズ量5~6×10
12cm
-2程度の条件で注入する。
【0048】
続いて、
図3Dに示すように、レジストパターン503を除去し、半導体基板101上に半導体材料をエピタキシャル成長させ、半導体層106(ノンドープ層)を形成する。例えば、半導体層106はシリコン層である。半導体層106に、メモリトランジスタ10のチャネル領域116、ロジックトランジスタ20のチャネル領域126及びI/Oトランジスタ30のチャネル領域136が形成される。
【0049】
次いで、
図3Eに示すように、メモリ領域1、ロジック領域2及びI/O領域3の素子領域を画定し、これらを互いから絶縁分離する素子分離領域107を形成する。例えば、素子分離領域107はSTI(Shallow Trench Isolation)法により形成することができる。
【0050】
その後、
図3Fに示すように、半導体基板101上にレジストパターン504を形成する。レジストパターン504は、I/O領域3の素子領域を露出し、メモリ領域1及びロジック領域2を覆う。続いて、レジストパターン504をマスクにして不純物を注入することで、I/O領域3にpウェル131を形成する。その後、I/Oトランジスタ30の閾値電圧を調整するための不純物注入をpウェル131に行ってもよい。
【0051】
次いで、
図3Gに示すように、レジストパターン504を除去し、メモリ領域1及びI/O領域3に絶縁膜201を形成し、ロジック領域2に絶縁膜201より薄い絶縁膜202を形成する。絶縁膜201及び202の形成では、例えば、熱酸化法により半導体層106の表面に第1の酸化膜を形成し、ロジック領域2の酸化膜を除去し、熱酸化法により第1の酸化膜より薄い第2の酸化膜をロジック領域2に形成する。第2の酸化膜の形成時に第1の酸化膜の膜厚が増加した第3の酸化膜が絶縁膜201になり、第2の酸化膜が絶縁膜202になる。例えば、絶縁膜201の厚さは6~8nm程度であり、絶縁膜202の厚さは1.5~2.5nm程度である。その後、絶縁膜201及び202上にゲート電極材料であるポリシリコン膜203を形成する。例えば、ポリシリコン膜203の厚さは105nmである。絶縁膜201に、メモリトランジスタ10のゲート絶縁膜212及びI/Oトランジスタ30のゲート絶縁膜232が形成され、絶縁膜202に、ロジックトランジスタ20のゲート絶縁膜222が形成される。なお、熱酸化法によればシリコン上に第1の酸化膜、第2の酸化膜及び第3の酸化膜が形成されることになるが、例えば他の方法であるCVD法等により半導体基板101上に他の絶縁膜を形成しても良い。そのため、絶縁膜201、絶縁膜202は、他の方法により絶縁膜を形成することも含めて説明する為に、素子分離領域107上にも形成されるように図示している。
【0052】
続いて、
図3Hに示すように、ポリシリコン膜203上にレジストパターン505を形成する。レジストパターン505は、ロジック領域2及びI/O領域3を覆うと共に、メモリ領域1内ではゲート電極211の形成予定領域を覆いつつ、残部を露出する。次いで、レジストパターン505をマスクにして、ポリシリコン膜203のエッチングを行う。この結果、メモリ領域1のゲート電極211が形成される。ポリシリコン膜203を除去した領域には、絶縁膜201が残存する。
【0053】
その後、
図3Iに示すように、レジストパターン505を除去し、ポリシリコン膜203及び絶縁膜201上にレジストパターン506を形成する。レジストパターン506は、ロジック領域2及びI/O領域3を覆うと共に、メモリ領域1内では第2の半導体領域115dの形成予定領域を覆いつつ、第1の半導体領域115sの形成予定領域を露出する。次いで、ゲート電極211及びレジストパターン506をマスクにして不純物を注入することで、メモリ領域1にn型のLDD領域113を形成する。この不純物の注入では、例えば、ヒ素を10keVの加速エネルギーでドーズ量5.5~6.5×10
13cm
-2程度の条件で注入する。
【0054】
その後、
図3Jに示すように、レジストパターン506を除去し、ゲート電極211及びポリシリコン膜203を熱酸化して酸化膜を形成し、この酸化膜上に窒化膜を形成する。例えば、酸化膜の酸化温度は780~820℃程度、酸化膜の厚さは1.8~2.2nm程度とし、窒化膜の成膜温度は680~720℃程度、窒化膜の厚さは60~80nm程度とする。続いて、窒化膜をエッチバックする。この結果、
図3Jに示すように、酸化膜251及び窒化膜252を含むサイドウォール絶縁膜253が形成される。絶縁膜201はサイドウォール絶縁膜253の外側まで残存する。尚、ゲート電極211以外のポリシリコン膜203の側壁と半導体基板101の上方(素子分離領域107上)にも同様に、サイドウォール絶縁膜253が形成される。また、窒化膜252をエッチバックした際に、絶縁膜201よりも薄い酸化膜251はオーバーエッチング等により除去され得る。説明の便宜上、ゲート電極211及びポリシリコン膜203の上方の酸化膜251は消失したものとして
図3Jには図示している。
【0055】
次いで、
図3Kに示すように、ポリシリコン膜203等の上にレジストパターン507を形成する。レジストパターン507は、メモリ領域1を露出し、ロジック領域2及びI/O領域3を覆う。その後、レジストパターン507、ゲート電極211及びメモリ領域1内のサイドウォール絶縁膜253をマスクにして不純物を注入することで、メモリ領域1にn型の不純物領域114を形成する。この不純物の注入は、LDD領域113よりも高濃度で、LDD領域113よりも深い領域まで不純物が注入されるような条件で行う。この不純物の注入では、例えば、リンを8keVの加速エネルギーでドーズ量1~2×10
16cm
-2程度の条件で注入する。n型の不純物領域114はメモリトランジスタ10のソース領域114s又はドレイン領域114dとして機能する。
【0056】
続いて、
図3Lに示すように、レジストパターン507を除去し、ポリシリコン膜203等の上にレジストパターン508を形成する。レジストパターン508は、メモリ領域1を覆うと共に、ロジック領域2内ではゲート電極221の形成予定領域を覆いつつ、残部を露出し、I/O領域3内ではゲート電極231の形成予定領域を覆いつつ、残部を露出する。次いで、レジストパターン508をマスクにして、ポリシリコン膜203のエッチングを行う。この結果、ロジック領域2のゲート電極221及びI/O領域3のゲート電極231が形成される。
【0057】
その後、
図3Mに示すように、レジストパターン508を除去し、熱酸化によりゲート電極221及び231の側壁に酸化膜255を形成し、ロジック領域2及びI/O領域3の半導体基板101に対してそれぞれ、不純物注入を行う。この不純物注入によって、ゲート電極221の両側の半導体基板101内にLDD領域123が形成され、ゲート電極231の両側の半導体基板101内にLDD領域133が形成される。LDD領域123は、例えば、n型の不純物であるヒ素を、加速エネルギーが1.5keV、ドーズ量が1~1.5×10
15cm
-2程度の条件で注入することで、形成することができる。LDD領域133は、例えば、n型の不純物であるリンを、加速エネルギーが35keV、ドーズ量が1~1.5×10
13cm
-2程度の条件で注入することで、形成することができる。
【0058】
次いで、絶縁膜、例えば酸化シリコン膜を膜厚70~90nm程度で形成し、それをエッチバックする。この結果、
図3Mに示すように、ゲート電極221の側壁と半導体基板101の上方にサイドウォール絶縁膜254が形成され、ゲート電極231の側壁と半導体基板101の上方にサイドウォール絶縁膜254が形成される。また、絶縁膜201及び202もエッチングされ、絶縁膜201からゲート絶縁膜212及びゲート絶縁膜232が形成され、絶縁膜202からゲート絶縁膜222が形成される。素子分離領域107上に残るポリシリコン膜203の側壁にも同様に、サイドウォール絶縁膜254が形成され、メモリ領域1内のサイドウォール絶縁膜253上にもサイドウォール絶縁膜254が形成される。
【0059】
その後、ゲート電極221及び231とこれらの側壁のサイドウォール絶縁膜254をマスクにして、ロジック領域2及びI/O領域3の半導体基板101に不純物を注入することで、ロジック領域2にn型の不純物領域124を形成し、I/O領域3にn型の不純物領域134を形成する。n型の不純物領域124の形成では、LDD領域123よりも高濃度で、LDD領域123よりも深い領域まで達するような条件で不純物を注入する。n型の不純物領域134の形成では、LDD領域133よりも高濃度で、LDD領域133よりも深い領域まで達するような条件で不純物を注入する。これらの不純物の注入では、例えば、リンを8keVの加速エネルギーでドーズ量1~1.5×1016cm-2程度の条件で注入する。n型の不純物領域124はロジックトランジスタ20のソース領域又はドレイン領域として機能し、n型の不純物領域134はトランジスタ30のソース領域又はドレイン領域として機能する。
【0060】
これらの不純物注入は、ロジック領域2及びI/O領域3の両方について同時に行ってもよいし、ロジック領域2及びI/O領域3についてどちらかを先に行ってもよい。
【0061】
以上の工程により、
図3Mに示すような、共通の半導体基板101上にメモリトランジスタ10、ロジックトランジスタ20及びI/Oトランジスタ30が混載された半導体装置100(不揮発性メモリ)が得られる。以後は、層間絶縁膜の形成、プラグの形成、配線やビア等の導体部を含む上層の配線層の形成等が行われる。
【0062】
次に、複数のメモリトランジスタ10を含む不揮発性メモリについて説明する。
図4は、複数のメモリトランジスタ10を含む不揮発性メモリの一例を示す図である。
図4には、複数のメモリトランジスタ10を含む不揮発性メモリの一例の要部平面レイアウトを模式的に図示している。
【0063】
図4に示すように、複数のメモリトランジスタ10を含む不揮発性メモリ80(半導体装置)は、素子分離領域(素子分離領域107に相当)に画定された素子領域として、方向Sに延在され、方向Sと直交する方向Tに並設された複数(一例として4つ)のアクティブ領域81a,81b,81c,81dを有する。これらのアクティブ領域81a,81b,81c,81dを横切るように、方向Tに、ゲート絶縁膜(ゲート絶縁膜212に相当)を介して、ワード線WL1,WL2(ゲート電極211に相当)が延在される。ワード線WL1,WL2の側壁には、サイドウォール絶縁膜83(サイドウォール絶縁膜253に相当)が形成される。各アクティブ領域81a,81b,81c,81dのワード線WL1,WL2の両側にそれぞれ、ソース領域又はドレイン領域として機能する不純物領域84(不純物領域114に相当)が形成される。サイドウォール絶縁膜83の下方で、二つの不純物領域84の内側には、第1の半導体領域(第1の半導体領域115sに相当)及び第2の半導体領域(第2の半導体領域115dに相当)が形成され、これらの間にチャネル領域(チャネル領域116に相当)が形成される。また、チャネル領域の下方に、SCR層となる不純物領域(第3の半導体領域112に相当)が形成される。不揮発性メモリ80には、これらの要素によって形成された複数(一例として8つ)のメモリトランジスタ90a,90b,90c,90d,90e,90f,90g,90h(メモリトランジスタ10に相当)が含まれる。
【0064】
各不純物領域84上には、上層に向かって延びるプラグ91(コンタクト)が形成される。各不純物領域84は、プラグ91を介して、第1層目の導体層に含まれる配線92a,92bに接続される。
【0065】
配線92aは、方向Tに延在される。配線92aは、アクティブ領域81aのメモリトランジスタ90a,90bで共用される不純物領域84に、プラグ91を介して接続される。配線92aは、アクティブ領域81bのメモリトランジスタ90c,90dで共用される不純物領域84に、プラグ91を介して接続される。配線92aは、アクティブ領域81cのメモリトランジスタ90e,90fで共用される不純物領域84に、プラグ91を介して接続される。配線92aは、アクティブ領域81dのメモリトランジスタ90g,90hで共用される不純物領域84に、プラグ91を介して接続される。配線92aは、ソース線(SL1)として用いられる。
【0066】
配線92bは、各メモリトランジスタ90a,90b,90c,90d,90e,90f,90g,90hの、ソース線SL1と繋がる不純物領域84とは反対側の不純物領域84に、プラグ91を介して接続される。
【0067】
各配線92b上には、上層に向かって延びるビア93が形成される。アクティブ領域81aのメモリトランジスタ90a,90bの不純物領域84に繋がる配線92bは、ビア93を介して、方向Sに延在されるビット線BL1に接続される。アクティブ領域81bのメモリトランジスタ90c,90dの不純物領域84に繋がる配線92bは、ビア93を介して、方向Sに延在されるビット線BL2に接続される。アクティブ領域81cのメモリトランジスタ90e,90fの不純物領域84に繋がる配線92bは、ビア93を介して、方向Sに延在されるビット線BL3に接続される。アクティブ領域81dのメモリトランジスタ90g,90hの不純物領域84に繋がる配線92bは、ビア93を介して、方向Sに延在されるビット線BL4に接続される。ビット線BL1,BL2,BL3,BL4は、不揮発性メモリ80の第2層目の導体層に含まれる。
【0068】
不揮発性メモリ80では、個々のメモリトランジスタ90a,90b,90c,90d,90e,90f,90g,90hが、1つのメモリセルとして機能する。不揮発性メモリ80における情報のプログラム、リード及びイレーズの各動作の一例について、
図5、
図6及び
図7を参照して具体的に説明する。尚、ここでは、nチャネル型のメモリトランジスタ90a,90b,90c,90d,90e,90f,90g,90hを備える不揮発性メモリ80を例にする。
【0069】
図5は、不揮発性メモリ80のプログラム動作を示す図である。
図5(A)にはプログラム動作時の当該不揮発性メモリの要部平面を模式的に図示し、
図5(B)にはプログラム動作時の当該不揮発性メモリの要部断面を模式的に図示している。尚、
図5(B)は
図5(A)のL1-L1断面模式図である。
【0070】
例えば、メモリトランジスタ90a(メモリセル)に対するプログラム動作時には、ゲート絶縁膜81上のワード線WL1の電位がhigh(4V~5V)、ビット線BL1の電位がlow(0V)、ソース線SL1の電位がhigh(4V~5V)とされる。非選択のワード線WL2の電位はlow(0V)、非選択のビット線BL2~BL4の電位はhigh(4V~5V)とされる。これにより、メモリトランジスタ90aの第2の半導体領域86(第2の半導体領域115dに相当)上方のサイドウォール絶縁膜83(第2の部分253dに相当)に、ホットエレクトロン(ホットキャリア49、電荷49a)が注入、蓄積され、情報のプログラムが行われる。
【0071】
メモリトランジスタ90aの第2の半導体領域86が極低濃度であるため、第2の半導体領域86の電場は比較的小さい。一方、第2の半導体領域86の外側に隣接する不純物領域84は高濃度であるため、電場は不純物領域84の端部で急激に大きくなる。結果として、ソース線SL1側の不純物領域84(ドレイン)近傍でホットエレクトロンが効率的に生成され、生成されたホットエレクトロンが第2の半導体領域86上方のサイドウォール絶縁膜83に効率良く注入される。また、第1の半導体領域85の不純物濃度が第2の半導体領域86の不純物濃度よりも高いため、優れた耐久性を得ることができる。
【0072】
図6は、不揮発性メモリ80のリード動作を示す図である。
図6(A)にはリード動作時の当該不揮発性メモリの要部平面を模式的に図示し、
図6(B)にはリード動作時の当該不揮発性メモリの要部断面を模式的に図示している。尚、
図6(B)は
図6(A)のL2-L2断面模式図である。
【0073】
メモリトランジスタ90aに対するリード動作時には、ワード線WL1の電位がhigh(2.0V)、ビット線BL1の電位がhigh(0.5V)、ソース線SL1の電位がlow(0V)とされる。非選択のワード線WL2の電位はlow(0V)、非選択のビット線BL2~BL4の電位はlow(0V)とされる。尚、
図6には、サイドウォール絶縁膜83に電荷49aが注入、蓄積されたメモリトランジスタ90aを例示している。このような電位とした時にビット線BL1側からソース線SL1側に流れる電流を検出することで、メモリトランジスタ90aの情報のリードが行われる。
【0074】
図7は、不揮発性メモリ80のイレーズ動作を示す図である。
図7(A)にはイレーズ動作時の当該不揮発性メモリの要部平面を模式的に図示し、
図7(B)にはイレーズ動作時の当該不揮発性メモリの要部断面を模式的に図示している。尚、
図7(B)は
図7(A)のL3-L3断面模式図である。
【0075】
メモリトランジスタ90aに対するイレーズ動作時には、まず、ワード線WL1に繋がるメモリトランジスタ90a,90c,90e,90gに対して上記のようなプログラム動作が行われる。このようにメモリトランジスタ90a,90c,90e,90gがプログラム状態とされた後、ワード線WL1の電位が負(negative,-5V~-6V)、ビット線BL1~BL4の電位がlow(0V)、ソース線SL1の電位がhigh(5V~6V)とされる。非選択のワード線WL2の電位はlow(0V)とされる。これにより、メモリトランジスタ90aを含む、ワード線WL1に繋がるメモリトランジスタ90a,90c,90e,90gにプログラムされた情報のイレーズが行われる。
【0076】
イレーズ動作時には、ソース線SL1側の不純物領域84近傍でホットホール(ホットキャリア49)が生成され、第2の半導体領域86上方のサイドウォール絶縁膜83に蓄積されていた電子(電荷49a)が中和される。ホットホールは、ソース線SL1側の不純物領域84近傍で生成されるため、当該不純物領域84から離れた領域の閾値電圧への影響が抑えられる。従って、ワード線WL1のゲート長Lgを過剰に小さくしなければ、全体としての閾値電圧は正、つまりメモリトランジスタ90aのオフ電流が初期の値を大きく超えることはない。
【0077】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
図8は、第2の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0078】
第2の実施形態に係る半導体装置200は、不揮発性メモリの一例であって、メモリトランジスタ10に代えてメモリトランジスタ40をメモリ領域1に有する。メモリトランジスタ40は、第1の実施形態における第3の半導体領域112の下方に、第3の半導体領域112及びpウェル111(第4の半導体領域)と同じ導電型、すなわちp型の高濃度埋め込み層215(第5の半導体領域)を有する。高濃度埋め込み層215は、pウェル111よりも高濃度でp型不純物を含有する。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0079】
第2の実施形態によれば、高濃度埋め込み層215が設けられているため、半導体基板101にバイアス(基板バイアス)を印加する際の抵抗(ウェル抵抗)の低減を図ることができる。ウェル抵抗が低減されることで、例えば、印加する基板バイアスの低減を図ることが可能になる。
【0080】
高濃度埋め込み層215は、次のようにして形成することができる。例えば、第3の半導体領域112の不純物濃度を高める工程(
図3B)の後に、レジストパターン502をマスクにして、ホウ素を200keVの加速エネルギーでドーズ量1~2×10
14cm
-2程度の条件で注入する。その後、第1の実施形態と同様の処理を行うことで、第2の実施形態に係る半導体装置200を製造することができる。
【0081】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
図9は、第3の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0082】
第3の実施形態に係る半導体装置300は、不揮発性メモリの一例であって、メモリトランジスタ10に代えてメモリトランジスタ50をメモリ領域1に有する。メモリトランジスタ50では、第1の実施形態における第2の半導体領域115dがノンドープ領域ではなく、LDD領域113と同じ導電型、すなわちn型のLDD領域216となっている。LDD領域216のn型不純物の濃度は、LDD領域113のn型不純物の濃度よりも低い。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0083】
第3の実施形態によっても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0084】
次に、第3の実施形態に係る半導体装置300を製造する方法について説明する。
図10A~
図10Bは、第3の実施形態に係る半導体装置300を製造する方法を工程順に示す断面図である。
【0085】
まず、
図10Aに示すように、第1の実施形態と同様にして、ゲート電極211の形成までの処理を行う(
図3H)。次いで、レジストパターン505を除去し、ポリシリコン膜203及び絶縁膜201上にレジストパターン511を形成する。レジストパターン511は、ロジック領域2及びI/O領域3を覆い、メモリ領域1を露出する。その後、ゲート電極211及びレジストパターン511をマスクにして不純物を注入することで、メモリ領域1にn型のLDD領域216を形成する。この不純物の注入では、例えば、リンを20keVの加速エネルギーでドーズ量5.5~6.5×10
11cm
-2程度の条件で注入する。この工程で注入される不純物が非常に低濃度であるため、この不純物がポリシリコン膜203に注入されてもロジックトランジスタ20及びI/Oトランジスタ30への影響は無視できる程度である。従って、レジストパターン511を形成せずに不純物を注入してもよい。レジストパターン511の形成を省略することで、工数を低減し、製造コストを低減することができる。
【0086】
続いて、
図10Bに示すように、レジストパターン511を除去し、ポリシリコン膜203及び絶縁膜201上にレジストパターン506を形成する。レジストパターン511を形成せずにLDD領域216を形成している場合は、LDD領域216の形成後に、そのままレジストパターン506を形成する。次いで、ゲート電極211及びレジストパターン506をマスクにして不純物を注入することで、第1の実施形態と同様に、メモリ領域1にn型のLDD領域113を形成する。この不純物の注入では、例えば、ヒ素を10keVの加速エネルギーでドーズ量5.5~6.5×10
13cm
-2程度の条件で注入する。その後、第1の実施形態と同様の処理を行うことで、第3の実施形態に係る半導体装置200を製造することができる。
【0087】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。
図11は、第4の実施形態に係る半導体装置を示す断面図である。
【0088】
第4の実施形態に係る半導体装置400は、不揮発性メモリの一例であって、ロジックトランジスタ20に代えてロジックトランジスタ60をロジック領域2に有する。ロジックトランジスタ60には、第1の実施形態における半導体領域122が含まれておらず、LDD領域123及びチャネル領域126がpウェル121と接している。他の構成は第1の実施形態と同様である。
【0089】
第4の実施形態によっても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0090】
尚、不純物領域114を、不純物領域124及び/又は不純物領域134と同時に形成してもよい。この場合、
図12Aに示すように、ゲート電極221及び231が形成された時点では不純物領域114が形成されておらず、その後、
図12Bに示すように、不純物領域124及び/又は不純物領域134と同時に不純物領域114を形成する。ただし、この変形例では、
図12Bに示すように、不純物領域114の形成の際にサイドウォール絶縁膜254もマスクとして機能し、平面視で不純物領域114と窒化膜252との間に隙間が存在する。従って、サイドウォール絶縁膜254に酸化シリコンを用いている場合、不純物領域114上にシリサイド層を形成すべく自然酸化膜を除去する処理を行うと、サイドウォール絶縁膜254が後退し、シリサイド層が第1の半導体領域115sや第2の半導体領域115dに接触し、接合リークが大きくなるおそれがある。従って、サイドウォール絶縁膜254に酸化シリコンを用いる場合は、サイドウォール絶縁膜254の形成前に不純物領域114を形成しておくこと、すなわち不純物領域114を不純物領域124及び不純物領域134よりも先に形成しておくことが好ましい。サイドウォール絶縁膜254に窒化シリコンを用いる場合は、自然酸化膜の除去の際にサイドウォール絶縁膜254は後退しないため、シリサイド層と第1の半導体領域115sや第2の半導体領域115dとの接触を避けることができる。
【0091】
尚、不純物領域114(ソース領域114s及びドレイン領域114d)に含まれる不純物は特に限定されず、ヒ素が用いられてもよいが、リンが好ましい。
【0092】
次に、本願発明者らが行ったメモリトランジスタの特性試験について説明する。
【0093】
第1の特性試験では、第2の半導体領域115dの不純物濃度を変化させながら、第1の実施形態に倣って複数のメモリトランジスタを作製し、それらについて10000サイクルのプログラム動作及びイレーズ動作を行い、200℃で24時間のベーク処理を行った後の電流変化のウィンドウを測定した。この結果を
図13に示す。
図13の横軸は第2の半導体領域115dの不純物濃度、ここではリンの濃度を示し、縦軸は各メモリトランジスタのリード電流の標準偏差σに対するプログラム状態とイレーズ状態のリード電流差分の割合を示す。
図13に示すように、不純物濃度が5×10
17cm
-3以下であれば、5σ以上のウィンドウが得られる。従って、第2の半導体領域115dの不純物濃度は5×10
17cm
-3以下であることが好ましい。
【0094】
第2の特性試験では、LDD領域113(第1の半導体領域115s)の不純物濃度を変化させながら、第1の実施形態に倣って複数のメモリトランジスタを作製し、それらについてプログラム動作による電流の変化を測定した。この結果を
図14に示す。
図14の横軸は第1の半導体領域115sの不純物濃度、ここではヒ素の濃度を示し、縦軸はプログラム動作前の電流値を1としたときのプログラム動作後の電流値を示す。
図14に示すように、不純物濃度が3×10
19cm
-3以上であれば、プログラム動作の前後で電流値がほとんど変化しない。従って、第1の半導体領域115sの不純物濃度は3×10
19cm
-3以上であることが好ましい。すなわち、第1の半導体領域115sの不純物濃度を第2の半導体領域115dの不純物濃度より大きくすることが、耐久性(endurance)を改善するための必須要件であることが明らかである。
【0095】
第3の特性試験では、LDD領域113(第1の半導体領域115s)の不純物濃度を変化させながら、接合リーク電流を測定した。この結果を
図15に示す。
図15の横軸は第1の半導体領域115sの不純物濃度、ここではヒ素の濃度を示し、縦軸はリーク電流を示す。
図15に示すように、不純物濃度が5×10
20cm
-3以下であれば、リーク電流が低く抑えられる。従って、第1の半導体領域115sの不純物濃度は5×10
20cm
-3以下であることが好ましい。
【0096】
第4の特性試験では、ソース領域114s及びドレイン領域114dにヒ素又はリンを含有させ、イレーズ動作に伴うリード電流Idの変化を測定した。ヒ素を含有させた場合の結果を
図16に示し、リンを含有させた場合の結果を
図17に示す。
図16及び
図17には、プログラム動作前後及びイレーズ動作後のリード動作で得られるゲート電圧Vg[V]とリード電流Id[A/μm]の関係を示している。
【0097】
メモリトランジスタ10に対するプログラム動作は、ソース領域114s及び半導体基板101を共に0Vとし、ゲート電極211及びドレイン領域114dを共に4V(プログラム電圧Vp=4V)とし、プログラム時間Tpを1μsとして行われる。プログラム動作後のイレーズ動作は、ソース領域114s及び半導体基板101を共に0Vとし、ゲート電極211を-5V、ドレイン領域114dを5V(イレーズ電圧Ve=5V)とし、イレーズ時間Teを10ms、100ms、1sとして行われる。プログラム前後及びイレーズ後のリード動作は、ドレイン領域114d及び半導体基板101を0Vとし、ゲート電極211に所定の電圧、ソース領域114sに0.5V(ドレイン電圧Vd=0.5V)を印加して行われる。このリード動作時のゲート電圧Vgとリード電流Idの関係を、
図16及び
図17に示している。
【0098】
プログラム電圧Vp=4V、プログラム時間Tp=1μsの条件でプログラム動作を行うと、プログラム動作後の閾値電圧は、プログラム動作前(initial)よりも高Vg側にシフトする。
【0099】
このプログラム動作後のメモリトランジスタ10に対し、イレーズ電圧Ve=5V、イレーズ時間1sの条件でイレーズ動作を行うと、
図16及び
図17に示すように、ソース領域114s及びドレイン領域114dに含まれる不純物によって特性が異なる。すなわち、ヒ素が含まれる場合(
図16)は、高Vg側で電流劣化が生じるが、リンが含まれる場合(
図17)は、ヒ素が含まれる場合(
図16)と比較して、イレーズ動作に伴う電流劣化が小さく、接合リークが小さい。従って、不純物領域114(ソース領域114s及びドレイン領域114d)に含まれる不純物はヒ素よりもリンが好ましい。
【0100】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
半導体基板の上方に設けられたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜の上方に設けられたゲート電極と、
前記ゲート電極の側壁及び前記半導体基板の上方に設けられたサイドウォール絶縁膜と、
前記ゲート電極の両側の前記半導体基板内にそれぞれ設けられ、第1導電型の不純物を含むソース領域及びドレイン領域と、
前記半導体基板内であって、前記サイドウォール絶縁膜の前記ゲート電極よりも前記ソース領域側に位置する第1の部分の下方に設けられ、前記ソース領域よりも低濃度で第1導電型の不純物を含む第1の半導体領域と、
前記半導体基板内であって、前記サイドウォール絶縁膜の前記ゲート電極よりも前記ドレイン領域側に位置する第2の部分の下方に設けられ、第1導電型の不純物の濃度が前記ドレイン領域及び前記第1の半導体領域よりも低い第2の半導体領域と、
前記第1の半導体領域と前記第2の半導体領域との間の前記半導体基板内に設けられたチャネル領域と、
前記チャネル領域の下方の前記半導体基板内に設けられ、前記チャネル領域よりも高濃度の前記第1導電型とは異なる第2導電型の不純物を含む第3の半導体領域と、
を有し、
前記サイドウォール絶縁膜に電荷を蓄積することによって情報を記憶することを特徴とする半導体装置。
(付記2)
前記サイドウォール絶縁膜は、
酸化シリコン膜と、
前記酸化シリコン膜上の窒化シリコン膜と、
を有することを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
(付記3)
平面視で、前記ソース領域及び前記ドレイン領域の前記ゲート電極側の縁が前記窒化シリコン膜の前記ゲート電極とは反対側の縁と一致していることを特徴とする付記2に記載の半導体装置。
(付記4)
前記第3の半導体領域の前記第2導電型の不純物の濃度は、
前記第1の半導体領域の前記第1導電型の不純物の濃度よりも低く、
前記第2の半導体領域の前記第1導電型の不純物の濃度よりも高いことを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記5)
前記第2の半導体領域の前記第1導電型の不純物の濃度は、前記第3の半導体領域の前記第2導電型の不純物の濃度の1/10以下であることを特徴とする付記1乃至4のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記6)
前記第1の半導体領域の前記第1導電型の不純物の濃度は、3×1019cm-3以上5×1020cm-3以下であることを特徴とする付記1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記7)
前記第2の半導体領域の前記第1導電型の不純物の濃度は、5×1017cm-3以下であることを特徴とする付記1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記8)
前記第2の半導体領域は、ノンドープ領域であることを特徴とする付記1乃至7のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記9)
前記第3の半導体領域は、前記ソース領域及び前記ドレイン領域と接することを特徴とする付記1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記10)
前記ソース領域及び前記ドレイン領域は、前記第1導電型の不純物としてリンを含有することを特徴とする付記1乃至9のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記11)
前記第3の半導体領域の下方の前記半導体基板内に設けられ、前記第3の半導体領域よりも低濃度の前記第2導電型の不純物を含む第4の半導体領域と、前記第4の半導体領域の下方の前記半導体基板内に設けられ、前記第4の半導体領域よりも高濃度の前記第2導電型の不純物を含む第5の半導体領域を有することを特徴とする付記1乃至10のいずれかに記載の半導体装置。
(付記12)
メモリ領域及びロジック領域を有する半導体装置の製造方法であって、
前記メモリ領域内に第1のトランジスタを形成する工程と、
前記ロジック領域内に第2のトランジスタを形成する工程と、
を有し、
前記第1のトランジスタを形成する工程は、
窒化膜をマスクにして半導体基板内に不純物を注入することで第1のソース領域及び第1のドレイン領域を形成する工程を有し、
前記第2のトランジスタを形成する工程は、
前記窒化膜とは異なる膜をマスクにして前記半導体基板内に不純物を注入することで第2のソース領域及び第2のドレイン領域を形成する工程を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0101】
10、40、50:メモリトランジスタ
100、200、300、400:半導体装置
101:半導体基板
112:第3の半導体領域(スクリーン層)
113:LDD領域
114:不純物領域
114s:ソース領域
114d:ドレイン領域
115s:第1の半導体領域
115d:第2の半導体領域
211:ゲート電極
212:ゲート絶縁膜
215:高濃度埋め込み層(第5の半導体領域)
251:酸化膜
252:窒化膜
253:サイドウォール絶縁膜