(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】制御弁
(51)【国際特許分類】
F16K 11/07 20060101AFI20220621BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
F16K11/07 C
F16K31/06 305K
F16K31/06 305H
(21)【出願番号】P 2018018602
(22)【出願日】2018-02-05
【審査請求日】2021-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】特許業務法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 かおり
(72)【発明者】
【氏名】村上 敏夫
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-122292(JP,A)
【文献】特開2005-121069(JP,A)
【文献】特開2009-103219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 11/07
F16K 31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付対象に取り付けられ、作動油が供給される供給ポート、作動油を出力する出力ポート、作動油を排出する排出ポート、及び前記各ポートに連通する弁孔を有するバルブボディと、
前記弁孔内を軸方向移動することにより前記各ポート間の連通状態を可変とするスプールと、
前記スプールを軸方向一側に移動させる移動力を前記スプールに付与する移動部と、
前記スプールを軸方向他側に付勢する弾性体と、を備え、
前記弾性体は、前記弁孔の一端部を閉塞する底壁と前記スプールの一端部との間に形成されたダンパ室に収容され、前記ダンパ室に満たされた作動油によって前記スプールのダンピング効果が得られ、
前記バルブボディは、
前記取付対象の鉛直方向下面に取り付けられ、前記各ポートが前記鉛直方向下面に向かい合う上面に開口しており、かつ前記取付対象に取り付けられた状態において前記ダンパ室の鉛直方向上方にあたる位置に、前記ダンパ室に連通して作動油を貯留することが可能な貯留部を有
しており、
前記貯留部は、前記バルブボディが前記取付対象に取り付けられた状態において鉛直方向上方に開口している、
制御弁。
【請求項2】
前記貯留部に貯留することが可能な作動油の量は、前記スプールが前記底壁から最も離間した位置から前記底壁に最も接近した位置まで移動したときに前記ダンパ室から排出される作動油の量よりも多い、
請求項1に記載の制御弁。
【請求項3】
前記貯留部の上端開口部からの作動油の漏出が前記取付対象によって抑止されている、
請求項1又は2に記載の制御弁。
【請求項4】
前記バルブボディには、前記弁孔の長手方向において前記移動部が配置される側とは反対側の端部における側壁に、前記貯留部と前記バルブボディの外部とを連通させるオリフィスが形成されている、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の制御弁。
【請求項5】
前記バルブボディは、前記貯留部と堰部によって区画された凹部を有すると共に、前記弁孔の長手方向において前記移動部が配置される側とは反対側の端部における側壁に凹部と前記バルブボディの外部とを連通させるオリフィスが形成され、
前記オリフィスが前記堰部の上端面よりも鉛直方向下方に形成されている、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の制御弁。
【請求項6】
前記移動部は、電磁コイルの磁力によって磁性体からなるプランジャが前記スプールを押圧する電磁ソレノイドである、
請求項1乃至5の何れか1項に記載の制御弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブボディに対するスプールの軸方向移動によって作動油の吐出圧を可変とする制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、供給ポート、出力ポート、及び排出ポートを有するバルブボディと、バルブボディに設けられた孔内を移動することにより各ポート間の連通状態を可変とするスプールと、スプールを軸方向一側に押圧するソレノイドと、スプールを軸方向他側に付勢する戻しばねとを備えた制御弁が、例えば自動車用の自動変速機においてクラッチ等を動作させる油圧の制御用に用いられている。このような制御弁には、スプールの振動によって出力ポートから出力される油圧の脈動を抑制するための構成を備えたものがある(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1,2に記載の制御弁は、バルブボディにダンパ室、油溜め室、及びダンパ室と油溜め室とを接続するオリフィスが設けられている。油溜め室には、オリフィスよりも高い位置でドレン管が上方に開口している。戻しばねは、スプールの一端部に当接しており、このスプールの一端部と共にダンパ室に収容されている。オリフィスは、ダンパ室に発生した気泡を油溜め室に排出できるように、ダンパ室の上端部に開口している。この制御弁において、スプールが軸方向に移動すると、それに伴うダンパ油の容積変化によってダンパ室と油溜め室との間で作動油がオリフィスを介して流動する。そして、作動油の粘性による減衰効果により、スプールの軸方向振動を抑えることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-130513号公報
【文献】特開2009-103219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように構成された制御弁は、戻しばねが圧縮される方向にスプールが移動すると、ダンパ室の容積が小さくなり、ダンパ室から油溜め室に作動油が流動する。これにより油溜め室における油面の高さがドレン管の開口の位置よりも高くなると、ドレン管を通じて一部の作動油がオイルタンクに戻される。一方、戻しばねが伸長する方向にスプールが移動すると、ダンパ室の容積が拡大し、油溜め室からダンパ室に作動油が流動する。この際、油溜め室からの作動油が円滑にダンパ室に流動しないと、オリフィスに空気が流れ込み、作動油の流動抵抗が急激に減少してしまう。そして、この流動抵抗の急激な減少がスプールの振動発生原因になってしまうおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、スプールの移動に伴ってダンパ室に円滑に作動油が流れ込むようにすることで、スプールの振動をより確実に抑制することが可能な制御弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するため、取付対象に取り付けられ、作動油が供給される供給ポート、作動油を出力する出力ポート、作動油を排出する排出ポート、及び前記各ポートに連通する弁孔を有するバルブボディと、前記弁孔内を軸方向移動することにより前記各ポート間の連通状態を可変とするスプールと、前記スプールを軸方向一側に移動させる移動力を前記スプールに付与する移動部と、前記スプールを軸方向他側に付勢する弾性体と、を備え、前記弾性体は、前記弁孔の一端部を閉塞する底壁と前記スプールの一端部との間に形成されたダンパ室に収容され、前記ダンパ室に満たされた作動油によって前記スプールのダンピング効果が得られ、前記バルブボディは、前記取付対象の鉛直方向下面に取り付けられ、前記各ポートが前記鉛直方向下面に向かい合う上面に開口しており、かつ前記取付対象に取り付けられた状態において前記ダンパ室の鉛直方向上方にあたる位置に、前記ダンパ室に連通して作動油を貯留することが可能な貯留部を有しており、前記貯留部は、前記バルブボディが前記取付対象に取り付けられた状態において鉛直方向上方に開口している、制御弁を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る制御弁によれば、バルブボディに対するスプールの振動を確実に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】(a)は本発明の第1の実施の形態に係る制御弁を示す上面図であり、(b)は(a)のA-A線断面図である。
【
図2】(a)及び(b)は、
図1(a)及び(b)の部分拡大図である。
【
図3】
図2(a)のB-B線断面における制御弁をトランスミッションケースと共に示す断面図である。
【
図4】(a)は第1の実施の形態の変形例に係るバルブボディの一部を上面から見た上面図であり、(b)は(a)のC―C線断面図である。
【
図5】(a)は本発明の第2の実施の形態に係るバルブボディの一部を上面から見た上面図であり、(b)は(a)のD-D線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施の形態]
本発明の第1の実施の形態について、
図1乃至
図3を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実施する上での好適な具体例として示すものであり、技術的に好ましい種々の技術的事項を具体的に例示している部分もあるが、本発明の技術的範囲は、この具体的態様に限定されるものではない。
【0011】
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る制御弁を示す上面図であり、
図1(b)は、
図1(a)のA-A線断面図である。
図2(a)及び(b)は、
図1(a)及び(b)の部分拡大図である。
図3は、
図2(a)のB-B線断面における制御弁を取付対象としての自動車のトランスミッションケースと共に示す断面図である。
図3では、トランスミッションの内部における油路を模式的に示している。
【0012】
制御弁1は、取付対象であるトランスミッションケース6の鉛直方向下面6aに取り付けられるバルブボディ2と、バルブボディ2に形成された弁孔20に収容されたスプール3と、スプール3を軸方向一側に移動させる移動力をスプール3に付与する移動部としての電磁ソレノイド4と、スプール3を軸方向他側に付勢する弾性体としてのリターンスプリング5と、を備えている。本実施の形態では、バルブボディ2に6つの弁孔20が互いに平行に形成され、それぞれの弁孔20にスプール3が収容されている。スプール3は軸状であり、弁孔20内を軸方向に移動可能である。
【0013】
バルブボディ2は、鋳型を用いた鋳造により成形された金属からなり、それぞれの弁孔20に対応して、作動油が供給される供給ポート21、作動油を出力する出力ポート22、作動油を排出する排出ポート23、出力ポート22と排出ポート23との間に設けられた中間ポート24、及びフィードバック圧を供給するフィードバックポート25を有している。供給ポート21、出力ポート22、排出ポート23、中間ポート24、及びフィードバックポート25は、弁孔20の軸方向の異なる位置で弁孔20に連通している。これらの各ポート間の連通状態は、スプール3が弁孔20内を軸方向移動することにより可変である。
【0014】
バルブボディ2は、上面2aがトランスミッションケース6の鉛直方向下面6aに向かい合うように、複数のボルト挿通孔29に挿通されるボルトによってトランスミッションケース6に取り付けられる。供給ポート21、出力ポート22、排出ポート23、中間ポート24、及びフィードバックポート25は、上面2aに開口している。なお、
図1及び
図2では、スプール3の図示を省略している。
【0015】
トランスミッションケース6には、供給ポート21に連通して作動油を供給する供給油路61、出力ポート22に連通して作動油をクラッチ等の動作部に導く出力油路62、排出ポート23から排出された作動油をオイルタンク8に導く排出油路63、及び出力油路62から分岐して作動油の一部をフィードバックポート25に導くフィードバック油路64が形成されている。供給油路61は、図略のポンプから吐出された作動油を供給ポート21に導く。ポンプは、オイルタンク8から作動油を組み上げて供給油路61に吐出する。
【0016】
また、バルブボディ2は、電磁ソレノイド4を保持する保持部26を有している。電磁ソレノイド4は、6つのスプール3のそれぞれに対応して配置され、本実施の形態ではバルブボディ2に6つの保持部26が設けられている。スプール3は、電磁ソレノイド4から移動力としての軸方向の押圧力を受け、弁孔20の長手方向において電磁ソレノイド4が配置される側とは反対側におけるバルブボディ2の側壁27に向かって弁孔20内を移動する。
【0017】
側壁27には、ねじ孔270が設けられ、このねじ孔270に栓体28が螺合している。栓体28は、例えば加締めによってねじ孔270に対して緩み止めされている。また、栓体28は、円盤状の底部281及び円筒状の円筒部282を一体に有する有底円筒状であり、円筒部282の外周面に雄ねじが形成されている。底部281は、弁孔20の一端部を閉塞する底壁の一態様である。
【0018】
電磁ソレノイド4は、バルブボディ2の保持部26に固定されたソレノイドケース41と、ソレノイドケース41に保持されたボビン42と、ボビン42に巻き回された電磁コイル43と、電磁コイル43が発生する磁束を受けてソレノイドケース41に対して軸方向に移動する円筒状のプランジャ44と、プランジャ44と一体に軸方向移動してスプール3を押圧するシャフト45と、シャフト45を挿通させる挿通孔を有してソレノイドケース41の内側に配置されたソレノイドコア46と、プランジャ44及びシャフト45の軸方向移動をガイドするブッシュ47,48と、シャフト45に外嵌されたリング状のストッパ49とを有している。
【0019】
ソレノイドケース41は、円筒状の本体部411と円板状の底部412と、底部412から本体部411の内側に突出した円筒状の突出部413とを一体に有している。本体部411と突出部413との間には、電磁コイル43及びボビン42の軸方向の一部が収容されている。ソレノイドコア46は、ソレノイドケース41の本体部411の一端部を加締めることで、ソレノイドケース41に固定されている。プランジャ44及びシャフト45は、ストッパ49がソレノイドコア46に当接することで軸方向一側への移動が規制され、シャフト45の後端部がソレノイドケース41の底部412に当接することで軸方向他側への移動が規制される。
【0020】
スプール3は、ストッパ49がソレノイドコア46に当接した前進端位置と、シャフト45の後端部がソレノイドケース41の底部412に当接した後退端位置との間で軸方向に進退移動する。
図3では、スプール3及びシャフト45の中心軸Oよりも上側にスプール3が前進端位置にある状態を示し、中心軸Oよりも下側にスプール3が後退端位置にある状態を示している。
【0021】
スプール3には、電磁ソレノイド4側から側壁27側に向かって、第1乃至第4のランド31~34が形成されている。第1乃至第3のランド31~33の外径はそれぞれ等しく、第4のランド34の外径は第1乃至第3のランド31~33の外径よりも小さく形成されている。第3のランド33と第4のランド34との径差により、フィードバックポート25に供給される作動油の圧力に応じてスプール3を電磁ソレノイド4側に押圧する力が発生する。
【0022】
第3のランド33は、スプール3の軸方向移動に応じて、供給ポート21と出力ポート22との間の流路面積を変化させる。第2のランド32は、スプール3の軸方向移動に応じて、出力ポート22と中間ポート24との間の流路面積を変化させる。また、第1のランド31は、スプール3の軸方向移動に応じて中間ポート24と排出ポート23の間の流路面積を変化させる。これにより、スプール3の軸方向移動によって出力ポート22から出力される作動油の圧力が変化する。
【0023】
スプール3における電磁ソレノイド4とは反対側の一端部には、第4のランド34よりも栓体28側に、外径側に張り出した環状の鍔部35が設けられている。鍔部35と栓体28の底部281との間には、コイルばねからなるリターンスプリング5が軸方向に圧縮された状態で配置されている。リターンスプリング5は、その復元力により、スプール3を電磁ソレノイド4側に弾性的に付勢している。
【0024】
電磁ソレノイド4は、電磁コイル43の磁力によって磁性体からなるプランジャ44がシャフト45を介してスプール3を押圧する。電磁コイル43に励磁電流が供給されない非作動状態では、リターンスプリング5の復元力によりスプール3が後退端位置に移動する。このとき、供給ポート21と出力ポート22との連通が第3のランド33によって遮断され、出力ポート22と排出ポート23とが中間ポート24を介して連通する。これにより、作動油が出力油路62に出力されなくなる。
【0025】
この状態から、電磁コイル43に励磁電流が供給されて作動状態となると、電磁コイル43の磁力を受けたプランジャ44と共に移動するシャフト45がスプール3を押圧し、スプール3が軸方向に移動する。これに伴い、供給ポート21と出力ポート22とが連通すると共に、出力ポート22と中間ポート24との連通が第2のランド32によって遮断され、中間ポート24と排出ポート23との連通が第1のランド31によって遮断される。これにより、供給油路61に供給された作動油が出力油路62に出力される。
【0026】
栓体28の底部281とスプール3の第4のランド34との間の空間は、第4のランド34の外周面と弁孔20の内周面20aとの間の僅かな隙間から漏れ出た作動油で満たされ、スプール3の振動を抑制するダンパ室200となる。ダンパ室200には、フィードバックポート25との差圧によって作動油が流れ込む。リターンスプリング5は、このダンパ室200に収容されている。スプール3が栓体28側に移動すると、ダンパ室200の容積が小さくなり、スプール3が電磁ソレノイド4側に移動すると、ダンパ室200の容積が大きくなる。
【0027】
バルブボディ2は、ダンパ室200に連通して作動油を貯留することが可能な貯留部201を有している。貯留部201は、バルブボディ2がトランスミッションケース6に取り付けられた状態において、ダンパ室200の鉛直方向上方にあたる位置に設けられており、連通孔202を介してダンパ室200と連通している。本実施の形態では、連通孔202がバルブボディ2の上面2aと平行で、スプール3の中心軸Oに対して垂直な方向(
図1及び
図2の左右方向)に長い長孔として形成されている。
【0028】
貯留部201に貯留することが可能な作動油の量は、スプール3が栓体28の底部281から最も離間した後退端位置から栓体28の底部281に最も接近した前進端位置まで移動したときにダンパ室200から排出される作動油の量よりも多い。これにより、スプール3が前進端位置と後退端位置との間を進退移動しても、ダンパ室200には常に作動油が満たされた状態となる。そして、このダンパ室200に満たされた作動油によって、スプール3が軸方向移動する際の防振効果、すなわちダンピング効果が得られる。
【0029】
貯留部201は、バルブボディ2がトランスミッションケース6に取り付けられた状態において、鉛直方向上方に開口している。貯留部201に面した部分のトランスミッションケース6の下面6aは平坦な面であり、貯留部201の上端開口部からの作動油の漏出がトランスミッションケース6によって抑止されている。
【0030】
バルブボディ2の側壁27には、貯留部201とバルブボディ2の外部とを連通させるオリフィス271が形成されている。オリフィス271の流路面積は、連通孔202の流路面積よりも狭く、オリフィス271を介して貯留部201からバルブボディ2の外部に作動油が流出する際には、所定の流動抵抗が発生する。オリフィス271は、スプール3の中心軸Oと平行に側壁27を貫通し、中心軸Oよりも高い位置(トランスミッションケース6側の位置)に形成されている。オリフィス271は、その延伸方向に対して直交する断面の形状が円形であり、その直径が例えば1.5mm以上3.0mm以下である。
【0031】
オリフィス271は、バルブボディ2の鋳造後においてドリルを用いた機械加工により穿設されている。オリフィス271の上端部とバルブボディ2の上面2aとの間の距離d(
図3参照)は、1.5mm以上3.0mm以下であることが望ましい。この距離dが1.5mm未満であると、機械加工の際に側壁27にひび割れ等が発生するおそれがあり、距離dが3.0mmを超えると、貯留部201に貯留可能な作動油の量を確保するために必要なバルブボディ2の上下方向の厚みが大きくなってしまうためである。
【0032】
オリフィス271からは、貯留部201における作動油の油面S
1の位置が貯留部201の内面におけるオリフィス271の開口位置よりも高い状態でスプール3が栓体28側に移動したとき、余剰な作動油がバルブボディ2の外部に排出される。オリフィス271から排出された作動油は、オイルタンク8に流れ落ちる。なお、
図3では、オイルタンク8における作動油の油面S
2がスプール3の中心軸Oよりも下方にあり、バルブボディ2の一部がオイルタンク8の作動油に浸かった状態を図示しているが、オイルタンク8における作動油の油面S
2は、中心軸Oよりも上方であってもよく、例えばオリフィス271やバルブボディ2の上面2aより上方にあってもよい。
【0033】
(第1の実施の形態の作用及び効果)
以上説明した第1の実施の形態によれば、ダンパ室200の鉛直方向上方にあたる位置に貯留部201が設けられており、スプール3が後退端位置に向かって移動してダンパ室200の容積が大きくなると、貯留部201からダンパ室200に作動油が供給される。これにより、ダンパ室200の作動油によるスプール3のダンピング効果が得られ、出力ポート22から出力される作動油の圧力が脈動してしまうことが抑制されるので、クラッチ等の動作部を安定して動作させることが可能となる。
【0034】
また、貯留部201に貯留することが可能な作動油の量を、スプール3が後退端位置から前進端位置まで移動したときにダンパ室200から排出される作動油の量よりも多くすることにより、ダンパ室200に空気が流れ込むことがなくなり、スプール3の全行程においてダンパ室200内の作動油によるダンピング効果が確実に得られる。
【0035】
また、貯留部201は、バルブボディ2の上面2aに開口しているので、バルブボディ2の鋳造時に鋳抜きによって形成することができ、製造工程を簡略化することが可能である。また、オリフィス271は、バルブボディ2の側壁27に形成されているので、例えば機械加工による穿孔により容易に形成することが可能である。
【0036】
[第1の実施の形態の変形例]
次に、本発明の第1の実施の形態の変形例について、
図4を参照して説明する。
図4(a)は、本実施の形態に係るバルブボディ2の一部を上面2aから見た上面図であり、
図4(b)は、
図4(a)のC―C線断面図である。
【0037】
第1の実施の形態では、オリフィス271が断面円形の孔である場合について説明したが、本変形例では、オリフィス271がバルブボディ2の上面2aに中心軸Oと平行に設けられた溝であり、その断面形状が半円状である。そして、バルブボディ2がトランスミッションケース6に取り付けられることによってオリフィス271の上面2a側の開口が閉塞され、作動油の流路となる。
【0038】
この変形例によっても、上記と同様の作用及び効果を得ることができる。また、オリフィス271をより高い位置に設けることができるので、貯留部201に貯留することが可能な作動油の量を多くすることができる。
【0039】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の実施の形態について、
図5を参照して説明する。
図5(a)は、第2の実施の形態に係るバルブボディ2の一部を上面2aから見た上面図であり、
図5(b)は、
図5(a)のD-D線断面図である。
【0040】
本実施の形態では、バルブボディ2が貯留部201と堰部272によって区画された凹部204を有すると共に、オリフィス271が凹部204とバルブボディ2の外部とを連通させるように側壁27に形成されている。また、オリフィス271は、断面円形であり、堰部272の上端面272aよりも鉛直方向下方に形成されている。
【0041】
堰部272は、連通孔202が開口する貯留部201の下面201aから上方(トランスミッションケース6側)に突出しており、上端面272aとトランスミッションケース6の下面6aとの間には作動油が流通する流路203が形成される。ダンパ室200から貯留部201に余剰な作動油が流入すると、作動油が堰部272を乗り越えて凹部204に流れ込む。凹部204に流れ込んだ作動油は、凹部204内の圧力に応じて、オリフィス271からバルブボディ2の外部に排出される。
【0042】
また、貯留部201において下面201aと堰部272の上端面272aとの間に貯留することが可能な作動油の量は、スプール3が後退端位置から前進端位置まで移動したときにダンパ室200から排出される作動油の量よりも多い。
【0043】
本実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様の作用及び効果を得ることが可能となる。また、オリフィス271の上端部とバルブボディ2の上面2aとの間の距離を十分に確保できるので、オリフィス271を機械加工する際に側壁27にひび割れ等が発生するおそれがない。
【0044】
(付記)
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、これらの実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0045】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記の実施の形態では、バルブボディ2がトランスミッションケース6の鉛直方向下面6aに取り付けられる場合について説明したが、これに限らず、バルブボディ2をトランスミッションケース6の鉛直方向上面に取り付けるように変形してもよい。この場合、貯留室201は、ダンパ室200に対してトランスミッションケース6側とは反対側の上方に設けられる。
【符号の説明】
【0046】
1…制御弁 2…バルブボディ
20…弁孔 21…供給ポート
22…出力ポート 23…排出ポート23
200…ダンパ室 201…貯留部
204…凹部 27…側壁
271…オリフィス 272…堰部
272a…上端面 28…栓体
281…底部(底壁) 3…スプール
4…電磁ソレノイド(移動部) 43…電磁コイル
44…プランジャ 5…リターンスプリング(弾性体)
6…トランスミッションケース(取付対象) 6a…下面