(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】放射線画像撮影システム、放射線画像撮影装置、充電装置および防水性能検査方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
A61B6/00 300S
A61B6/00 300W
(21)【出願番号】P 2018027275
(22)【出願日】2018-02-19
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100155620
【氏名又は名称】木曽 孝
(72)【発明者】
【氏名】駒坂 友則
(72)【発明者】
【氏名】太田 生馬
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-097036(JP,A)
【文献】特開2016-133313(JP,A)
【文献】特開2013-142557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に照射された放射線を検出する放射線検出素子およびバッテリーを収納する筐体を備え、内部および外部の空気を流通させる通気孔が前記筐体に設けられている放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置が着脱され、前記バッテリーを充電する充電装置と、
を含む放射線画像撮影システムであって、
前記放射線画像撮影装置は、
前記筐体の内部気圧を測定する気圧測定部と、
圧力の操作によって前記筐体の内部気圧が変化した後に、当該圧力の操作の終了による前記内部気圧の変化の態様に基づいて、前記放射線画像撮影装置の防水性能を検査する防水性能検査部と、
を備え、
前記放射線画像撮影装置および前記充電装置の少なくとも一方には、前記放射線画像撮影装置が前記充電装置に装着された場合に、前記通気孔を介した前記空気の流通量を減少させる流通量調節部が備えら
れ、
前記流通量調節部は、
前記通気孔の開度を操作する開度操作部材と、
前記筐体が前記充電装置に装着された場合に、前記通気孔の開度を下げるように前記開度操作部材の位置を制御する位置制御部と、を含む、
放射線画像撮影システム。
【請求項2】
前記防水性能検査部は、前記筐体の内部気圧が操作された後、前記気圧測定部によって測定された前記内部気圧の、大気圧に戻ろうとする変化の仕方に基づいて、前記放射線画像撮影装置の防水性能を検査する、
請求項1に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項3】
前記位置制御部は、前記防水性能検査部によって前記防水性能を検査した後に、前記通気孔の開度を上げるように前記開度操作部材の位置を制御する、
請求項
1に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項4】
前記開度操作部材は、前記放射線画像撮影装置の前記筐体に設けられている、
請求項
1に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項5】
前記放射線画像撮影装置は、前記筐体の前記内部気圧を操作する気圧操作部を備える、
請求項
1に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項6】
前記気圧操作部は、前記筐体の内部の空気を加熱する熱源を含む、
請求項
5に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項7】
前記熱源は、前記バッテリーの充電に伴って電流が印加される電子部品である、
請求項
6に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項8】
前記充電装置は、前記開度操作部材と、前記放射線画像撮影装置の前記筐体を保持するホルダーと、前記筐体が前記ホルダーに保持されている状態において前記バッテリーに充電電力を供給する電力供給部と、を備え、
前記開度操作部材は、前記筐体が前記ホルダーに保持されている状態において、前記通気孔の開度を下げるように構成されている、
請求項
1に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項9】
前記気圧操作部は、前記筐体の外部から荷重が付与されることで前記筐体の一部が弾性変形する加重付与部を含む、
請求項
5に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項10】
前記筐体に複数の前記通気孔が設けられ、
前記開度操作部材は、1以上の前記通気孔の開度を操作可能に構成されている、
請求項
1に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項11】
被写体に照射された放射線を検出する放射線検出素子およびバッテリーを収納する筐体を備え、内部および外部の空気を流通させる通気孔が前記筐体に設けられている放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置が着脱され、前記バッテリーを充電する充電装置と、
を含む放射線画像撮影システムであって、
前記放射線画像撮影装置は、
前記筐体の内部気圧を測定する気圧測定部と、
圧力の操作によって前記筐体の内部気圧が変化した後に、当該圧力の操作の終了による前記内部気圧の変化の態様に基づいて、前記放射線画像撮影装置の防水性能を検査する防水性能検査部と、
前記バッテリーの充電に伴って電流が印加され、前記筐体の内部の空気を加熱する熱源となる電子部品を含み、前記筐体の前記内部気圧を操作する気圧操作部と、
を備え、
前記放射線画像撮影装置および前記充電装置の少なくとも一方には、前記放射線画像撮影装置が前記充電装置に装着された場合に、前記通気孔を介した前記空気の流通量を減少させる流通量調節部が備えられている、
放射線画像撮影システム。
【請求項12】
被写体に照射された放射線を検出する放射線検出素子およびバッテリーを収納する筐体を備え、内部および外部の空気を流通させる通気孔が前記筐体に設けられている放射線画像撮影装置であって、
前記筐体の内部気圧を測定する気圧測定部と、
圧力の操作によって前記筐体の内部気圧が変化した後に、当該圧力の操作の終了による前記内部気圧の変化の態様に基づいて、前記放射線画像撮影装置の防水性能を検査する防水性能検査部と、
前記通気孔の開度を操作する開度操作部材と、前記バッテリーが充電される場合に、
前記通気孔の開度を下げるように前記開度操作部材の位置を制御して、前記通気孔を介した前記空気の流通量を減少させる
位置制御部と、を含む流通量調節部と、を備える、
放射線画像撮影装置。
【請求項13】
被写体に照射された放射線を検出する放射線検出素子およびバッテリーを収納する筐体を備え、内部および外部の空気を流通させる通気孔が前記筐体に設けられている放射線画像撮影装置であって、
前記筐体の内部気圧を測定する気圧測定部と、
圧力の操作によって前記筐体の内部気圧が変化した後に、当該圧力の操作の終了による前記内部気圧の変化の態様に基づいて、前記放射線画像撮影装置の防水性能を検査する防水性能検査部と、
前記バッテリーが充電される場合に、前記通気孔を介した前記空気の流通量を減少させる流通量調節部と、
前記バッテリーの充電に伴って電流が印加され、前記筐体の内部の空気を加熱する熱源となる電子部品を含み、前記筐体の内部気圧を操作する気圧操作部と、を備える、
放射線画像撮影装置。
【請求項14】
被写体に照射された放射線を検出する放射線検出素子およびバッテリーを収納する筐体を備え、内部および外部の空気を流通させる通気孔が前記筐体に設けられている放射線画像撮影装置の前記バッテリーを充電する充電装置であって、
前記放射線画像撮影装置の前記筐体を保持するホルダーと、
前記通気孔の開度を操作する開度操作部材と、前記筐体が保持されている状態において、
前記通気孔の開度を下げるように前記開度操作部材の位置を制御して、前記通気孔を介した前記空気の流通量を減少させる
位置制御部と、を含む流通量調節部と、を備える、
充電装置。
【請求項15】
被写体に照射された放射線を検出する放射線検出素子およびバッテリーを収納する筐体を備え、内部および外部の空気を流通させる通気孔が前記筐体に設けられている放射線画像撮影装置における防水性能を検査する防水性能検査方法であって、
前記バッテリーが充電される場合に、
前記通気孔の開度を操作する開度操作部材の位置を、前記通気孔の開度を下げるように制御することで、前記通気孔を介した前記空気の流通量
を減少させた状態として前記筐体の内部気圧を操作し、
操作後の前記内部気圧を測定し、
測定された内部気圧の変化の態様に基づいて、前記筐体の防水性能を検査する、
防水性能検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影システム、放射線画像撮影装置、充電装置および防水性能検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、患部すなわち患者の撮影部位にX線等の放射線を照射し、患部を透過した放射線の画像を撮影する放射線画像撮影装置が種々開発されている。従前の放射線画像撮影装置は、支持台等と一体的に形成された、いわゆる専用機型ないし固定型の装置が多かった。これに対し、近年では、FPD(Flat Panel Detector)と称される、持ち運び可能とした可搬型(カセッテ型ともいう。)の放射線画像撮影装置が開発され、実用化されている。FPDは、放射線の検出素子を含む種々の電子部品を筐体内に収納した構成であり、患部に照射された放射線の線量に応じて検出素子で電荷を発生させ、発生した電荷に基づいて画像データを生成し、生成された画像データを表示用のコンピューターに出力することができる。
【0003】
このようなFPDは、従来、放射線画像撮影(以下、単に撮影という。)に用いられてきたCR(Computed Radiography)カセッテと同様に、撮影時に撮影台に着脱することができる。また、FPDは、撮影時に患者の身体に直接あてがう、或いは患者がFPDの上に載った状態で使用することができる等の、専用機型の装置にはない特徴を有している。
【0004】
ところで、FPDを患者の身体にあてがって使用する、或いは患者がFPDの上に載った状態で撮影を行うような場合に、患者の体液(例えば、尿、血液、汗、唾液など)がFPDに付着する場合がある。ここで、付着した体液がFPDの筐体内に浸入すると、衛生上の問題のみならず、筐体内の種々の部品に悪影響を及ぼす虞があり、また、FPDの故障等の原因となる。
【0005】
近年のFPDは、上述した使用状態を考慮して、筐体に防水機能を持たせたタイプのものが増えている。他方、耐久等によりFPD(筐体)の防水性能が低下すると、付着した体液がFPDの内部に浸入しやすくなり、上述した問題が発生し得る。このような事情から、FPDの防水性能を定期的に検査する必要がある。
【0006】
かかる防水性能の検査方法として、特許文献1では、筺体への押圧によって生じた筺体内の気圧変化が外気圧へ戻るまでの応答性を測定し、防水性が担保されているか、どの程度担保されているかを推定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の技術は、筺体への押圧時に十分な気圧変化を生じさせることが容易でなく、防水性能の検査に必要となる労力、技能、人的資源等の点からも、改良が求められていた。
【0009】
具体的には、FPDの筐体には、内部および外部の気圧を一定に保つための通気孔が設けられている。これに対し、特許文献1記載の技術では、防水性能の検査を行う場合、通気孔から漏れる(流出する)空気が存在し、防水性能を精度よく、短時間で検査することができなかった。また、特許文献1記載の技術では、この問題に対処するためにユーザーが手作業で通気孔を塞ぐことが必要となるが、通気孔の塞ぎ方がユーザー毎に異なるものとなり、やはり防水性能の検査の精度や迅速性等を確保し難かった。
【0010】
本発明の目的は、日常使用時において迅速かつ精度良く放射線画像撮影装置の防水性能を検査することが可能な、放射線画像撮影システム、放射線画像撮影装置、充電装置および防水性能検査方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る放射線画像撮影システムの一態様は、
被写体に照射された放射線を検出する放射線検出素子およびバッテリーを収納する筐体を備え、内部および外部の空気を流通させる通気孔が前記筐体に設けられている放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置が着脱され、前記バッテリーを充電する充電装置と、
を含む放射線画像撮影システムであって、
前記放射線画像撮影装置は、
前記筐体の内部気圧を測定する気圧測定部と、
圧力の操作によって前記筐体の内部気圧が変化した後に、当該圧力の操作の終了による前記内部気圧の変化の態様に基づいて、前記放射線画像撮影装置の防水性能を検査する防水性能検査部と、
を備え、
前記放射線画像撮影装置および前記充電装置の少なくとも一方には、前記放射線画像撮影装置が前記充電装置に装着された場合に、前記通気孔を介した前記空気の流通量を減少させる流通量調節部が備えられ、
前記流通量調節部は、
前記通気孔の開度を操作する開度操作部材と、
前記筐体が前記充電装置に装着された場合に、前記通気孔の開度を下げるように前記開度操作部材の位置を制御する位置制御部と、を含む。
本発明に係る放射線画像撮影システムの他の態様は、
被写体に照射された放射線を検出する放射線検出素子およびバッテリーを収納する筐体を備え、内部および外部の空気を流通させる通気孔が前記筐体に設けられている放射線画像撮影装置と、
前記放射線画像撮影装置が着脱され、前記バッテリーを充電する充電装置と、
を含む放射線画像撮影システムであって、
前記放射線画像撮影装置は、
前記筐体の内部気圧を測定する気圧測定部と、
圧力の操作によって前記筐体の内部気圧が変化した後に、当該圧力の操作の終了による前記内部気圧の変化の態様に基づいて、前記放射線画像撮影装置の防水性能を検査する防水性能検査部と、
前記バッテリーの充電に伴って電流が印加され、前記筐体の内部の空気を加熱する熱源となる電子部品を含み、前記筐体の前記内部気圧を操作する気圧操作部と、
を備え、
前記放射線画像撮影装置および前記充電装置の少なくとも一方には、前記放射線画像撮影装置が前記充電装置に装着された場合に、前記通気孔を介した前記空気の流通量を減少させる流通量調節部が備えられている。
【0012】
本発明に係る放射線画像撮影装置の一態様は、
被写体に照射された放射線を検出する放射線検出素子およびバッテリーを収納する筐体を備え、内部および外部の空気を流通させる通気孔が前記筐体に設けられている放射線画像撮影装置であって、
前記筐体の内部気圧を測定する気圧測定部と、
圧力の操作によって前記筐体の内部気圧が変化した後に、当該圧力の操作の終了による前記内部気圧の変化の態様に基づいて、前記放射線画像撮影装置の防水性能を検査する防水性能検査部と、
前記通気孔の開度を操作する開度操作部材と、前記バッテリーが充電される場合に、前記通気孔の開度を下げるように前記開度操作部材の位置を制御して、前記通気孔を介した前記空気の流通量を減少させる位置制御部と、を含む流通量調節部と、を備える。
本発明に係る放射線画像撮影装置の他の態様は、
被写体に照射された放射線を検出する放射線検出素子およびバッテリーを収納する筐体を備え、内部および外部の空気を流通させる通気孔が前記筐体に設けられている放射線画像撮影装置であって、
前記筐体の内部気圧を測定する気圧測定部と、
圧力の操作によって前記筐体の内部気圧が変化した後に、当該圧力の操作の終了による前記内部気圧の変化の態様に基づいて、前記放射線画像撮影装置の防水性能を検査する防水性能検査部と、
前記バッテリーが充電される場合に、前記通気孔を介した前記空気の流通量を減少させる流通量調節部と、
前記バッテリーの充電に伴って電流が印加され、前記筐体の内部の空気を加熱する熱源となる電子部品を含み、前記筐体の内部気圧を操作する気圧操作部と、を備える。
【0013】
本発明に係る充電装置の一態様は、
被写体に照射された放射線を検出する放射線検出素子およびバッテリーを収納する筐体を備え、内部および外部の空気を流通させる通気孔が前記筐体に設けられている放射線画像撮影装置の前記バッテリーを充電する充電装置であって、
前記放射線画像撮影装置の前記筐体を保持するホルダーと、
前記通気孔の開度を操作する開度操作部材と、前記筐体が保持されている状態において、前記通気孔の開度を下げるように前記開度操作部材の位置を制御して、前記通気孔を介した前記空気の流通量を減少させる位置制御部と、を含む流通量調節部と、を備える。
【0014】
本発明に係る防水性能検査方法の一態様は、
被写体に照射された放射線を検出する放射線検出素子およびバッテリーを収納する筐体を備え、内部および外部の空気を流通させる通気孔が前記筐体に設けられている放射線画像撮影装置における防水性能を検査する防水性能検査方法であって、
前記バッテリーが充電される場合に、前記通気孔の開度を操作する開度操作部材の位置を、前記通気孔の開度を下げるように制御することで、前記通気孔を介した前記空気の流通量を減少させた状態として前記筐体の内部気圧を操作し、
操作後の前記内部気圧を測定し、
測定された内部気圧の変化の態様に基づいて、前記筐体の防水性能を検査する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、日常使用時において迅速かつ精度良く放射線画像撮影装置の防水性能を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1Aおよび
図1Bは、本実施の形態における放射線画像撮影システムの概要構成図である。
【
図2】本実施の形態における放射線画像撮影装置(FPD)の外観を表す斜視図である。
【
図3】FPDをクレードルに装着した状態を示す外観図である。
【
図4】FPDの通気孔の周辺の構成例を示す断面図である。
【
図5】本実施の形態におけるFPDの要部を説明するための概要構成図である。
【
図6】
図6Aおよび
図6Bは、FPDの内部のバッテリーの充電中および充電後における内部気圧の実測結果を示す特性グラフである。
【
図7】気圧センサーにより検知された値を補正する処理を説明する図である。
【
図8】本実施の形態におけるFPDの内部気圧の変化を測定する方法を説明する特性グラフである。
【
図9】FPDの内部気圧の測定時において特徴量を抽出する方法を説明する特性グラフである。
【
図10】FPDの内部気圧の測定時において特徴量を抽出する方法を説明する特性グラフである。
【
図11】本実施の形態におけるFPDの内部気圧測定に関するフローチャートである。
【
図12】FPDの内部気圧を操作するための更なる構成例を説明する図である。
【
図13】FPDの内部気圧の他の測定方法を説明するための特性図であり、FPDの内部気圧を負のピーク値まで減圧した後に内部気圧の上がり方の特徴量を抽出する場合の一例を示す。
【
図14】大気圧が変動する環境下でFPDを充電した場合を説明する図であり、防水性能が良好なFPDおよび防水性能が劣化したFPDの各々の気圧変動を平均化した例を表す特性グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した放射線画像撮影システムの実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1(
図1Aおよび1B)は、放射線画像撮影システムとしてのX線撮影システム100の主要な構成を示す。本実施の形態のX線撮影システム100は、病院内で患者(以下、被写体という)SにX線を照射してX線画像(放射線画像)の撮影を行うシステムである。
【0018】
X線撮影システム100は、被写体Sに照射されたX線(放射線)を検出して放射線画像(撮影画像)として出力する放射線画像撮影装置としてのFPD(フラットパネルディテクター)1、かかる照射用のX線を生成して出力するX線照射装置8を含む。また、X線撮影システム100は、FPD1から出力された撮影画像の表示等を行うコンソール装置3、FPD1内の後述するバッテリーの充電等を行う周辺機器としてのクレードル装置(以下、単にクレードルという)5、上記の装置間で無線通信を行うための基地局7を含む。さらに、X線撮影システム100は、病院内の種々のデータの管理等を行うホストコンピューター4を含む。X線撮影システム100を構成する上記の各装置は、ネットワークNを介して互いに接続されている。
【0019】
図1に示す例では、FPD1、基地局7、およびX線照射装置8は、例えば鉛等で外部への放射線漏洩防止を施された撮影室6内に設置される。他方、コンソール装置3およびクレードル5は、撮影室6の前室9に設置されている。ユーザー(医者等)および被写体Sは、前室9のドア9bを通じて撮影室6および前室9間を行き交うことができ、また、撮影室6のドア6aおよび前室9のドア9aを通じて他の病室等に移動できる。ホストコンピューター4は、病院の図示しないデータ管理室に設置されている。
【0020】
X線照射装置8は、図示しない公知のX線管(真空管)を備え被写体Sに近接して使用されるX線照射部81(
図1B参照)、X線照射部81から出力されるX線を制御する制御部82等を備える。制御部82は、X線照射部81のX線管に電圧を印加する電源部、電源部を制御するプロセッサー等を備える。このうち、電源部は、X線管の陰極に設けられたフィラメントを加熱するフィラメント電源、X線管の陽極表面にあるターゲットに衝突させる電子を加速させるための高圧電源を備える。プロセッサーは、フィラメント電源および高圧電源の電源を制御することによって、X線照射部81のX線管から出力されるX線を制御する。
【0021】
コンソール装置3は、主として、放射線画像撮影(以下、単にX線撮影ともいう)の制御、FPD1から取得されたX線画像の表示、かかるX線画像のデータに関する画像処理内容等の指示を行うコンピューターである。コンソール装置3は、プロセッサー、マウスやキーボードなどの操作入力部、LCD(液晶表示ディスプレイ)などの表示部36を備え、表示部36に表示されるメニュー画面等の各種画面を通じて、上述した制御、表示、指示等を行う。
【0022】
ホストコンピューター4は、院内のX線撮影の予約管理を行い、撮影予約が入るとコンソール装置3に撮影要求(撮影オーダ)の指示を送信し、X線撮影後にコンソール装置3から転送される放射線画像データを記憶する。
【0023】
FPD1は、
図2に示す平面略矩形の板状の外形を有する筐体2内に、X線を検出するセンサーパネルSP(
図1B参照)が収容されている。本実施形態では、筐体2は、X線の入射面(曝射面)Rを有する中空の角筒状のハウジング本体部2Aと、ハウジング本体部2Aの両側の開口部を閉塞する保護カバー2B,2Cと、を備える。ハウジング本体部2Aは、放射線を透過するカーボン板(すなわち、カーボン繊維を樹脂等で板状に固めたもの)で形成されている。
【0024】
なお、筐体2の形状は、上記のものに限定されるものではなく、例えば箱型形状など、平面略矩形の形状であればよい。筐体2の形状を箱型とした場合、(言い換えるとハウジング本体部2Aを容器状とした場合)、ハウジング本体部2Aの裏面U(
図3参照)の材質は、上述したカーボン繊維等以外のもの、例えば金属部材などの他の材質を使用してもよい。
【0025】
筐体2の一の側面をなす保護カバー2Bには、電源スイッチ21、切替スイッチ22、コネクター23、インジケーター24などが設けられている。このうち、コネクター23は、FPD1の外部装置との電気的接続を図るものであり、本実施の形態では、クレードル5に接続される。また、インジケーター24は、LED(Light Emitting Diode)等で構成され、後述するバッテリーの状態や、FPD1の稼働状態等を表示する表示部としての機能を有する。
【0026】
詳細な図示はしないが、FPD1のセンサーパネルSPは、センサー基板上に複数の放射線検出素子(フォトダイオード等)がn×mの二次元マトリクス状に配列された構成であり、各々の放射線検出素子によって、被写体Sに照射されたX線が検出される。
図1Bおよび
図2では筐体2の曝射面Rを上側に示しており、センサーパネルSPの放射線検出素子は、筐体2の曝射面R(以下、表面Rともいう)を透過したX線を検出する。
【0027】
また、FPD1は、放射線検出素子で検出されたX線を電気信号に変換する変換部、変換された電気信号をデジタル化するA/D変換部、デジタル化された信号を撮影画像としてコンソール装置3に出力する出力部、などを備える。FPD1の他の構成については後述する。
【0028】
クレードル5は、FPD1の周辺機器ないし付属装置としての機能を有する。本実施の形態では、クレードル5は、FPD1の後述するバッテリーを充電する充電装置として機能し、FPD1に電力(充電電流)を供給する電力供給部、かかる電力供給部およびクレードル5全体を制御するプロセッサーなどを備えている。
【0029】
図3に示すように、クレードル5は、FPD1のバッテリー充電の際、あるいはX線撮影を行わないときに、FPD1を装着することができる。このため、クレードル5の筐体には、FPD1を挿入して保持するためのホルダー51が設けられている。
図3は、非曝射面となる筐体2の裏面Uを手前側とし、保護カバー2Bおよび2Cを各々右側および左側としてFPD1をクレードル5のホルダー51に装着した状態を示している。この装着状態において、上述した保護カバー2Bのコネクター23は、ホルダー51の対応する位置に設けられた充電コネクタ(図示せず)に接続されており、FPD1内のバッテリーがクレードル5によって充電される。
【0030】
以下、被写体Sの胸部のX線撮影を行う場合を例として、X線撮影システム100の概略的な動作を説明する。
【0031】
このX線撮影に先立って、コンソール装置3の表示部36には不図示のメニュー画面が表示される。本実施の形態では、コンソール装置3のマウス等の操作により、メニュー画面から患者データベースにアクセスし、被写体Sとなる患者(以下、単に被写体Sという。)に関する種々の情報(患者ID、氏名、生年月日、性別、撮影しようとする患部名(この例では胸部正面)、など)を予め入力して、患者データベースの登録や更新を行う。
【0032】
また、X線撮影に先立って、臥位用テーブル6bに取り付けられるFPD1の位置を、被写体Sの胸部の位置になるように調整する。続いて、被写体Sを臥位用テーブル6b上に仰向けに寝かせ、被写体Sの背中をFPD1に対応する位置になるよう位置調整を行うとともに、X線照射部81を当該患者の胸部正面に対向位置させる。
【0033】
さらに、メニュー画面を通じて、X線撮影を実行するための不図示の操作画面が表示部36に表示され、かかる操作画面を通じて、X線照射部81から出力されるX線の強度等のパラメーターが、コンソール装置3のマウス等の入力操作により入力される。続いて、操作画面に表示された図示しない撮影ボタンを選択すると、X線照射装置8が作動し、設定されたパラメーターに従ってX線照射部81からX線が出力される。
【0034】
かくして出力されたX線は、被写体Sの患部を透過してFPD1のセンサーパネルSPに照射される。FPD1は、被写体Sの患部を透過したX線の強度(強弱の分布)をセンサーパネルSPによって検出し、該検出されたX線を電気信号に変換し、該変換された電気信号をデジタル化して撮影画像を生成する。生成された撮影画像のデータは、この後、FPD1からコンソール装置3に転送され、表示部36にX線画像として表示される。このX線画像は、コンソール装置3により適宜加工等がなされた後に、ホストコンピューター4に転送され、ホストコンピューター4の保有する患者データベース等に保存される。
【0035】
ところで、FPD1を被写体Sの身体にあてがって使用する、或いは被写体SがFPDの上に載った状態で撮影を行うような場合に、被写体Sの体液(例えば、尿、血液、汗、唾液など)がFPD1に付着する場合がある。ここで、付着した体液がFPD1の筐体2内に浸入すると、衛生上の問題のみならず、筐体2内の種々の部品に悪影響を及ぼす虞があり、また、FPD1の故障等の原因となる。
【0036】
上述した使用状態を考慮して、本実施の形態のFPD1の筐体2は、
図4で後述するように、筐体2の通気性を確保しながら、液体が筐体2の内部に浸入することを阻止する防水機能を備えた構造となっている。他方、耐久等によりFPD1(筐体2)の防水性能が低下すると、付着した体液がFPD1の内部に浸入しやすくなり、上述した問題が発生し得る。このような事情から、FPD1の防水性能を定期的に検査する必要がある。
【0037】
以下、
図4を参照して、FPD1の筐体2の構成についてより詳しく説明する。FPD1の筐体2には、筐体2の内外の空気を流通可能とするための通気孔Hが設けられている。この通気孔Hは、FPD1を空輸したり標高が高い所で使用したりする際に、筐体2内の気圧が外気圧より高くなって筐体2が膨らむことに伴う不具合(例えばセンサーパネルSPの損傷など)を防止する役割を担う。
図4では、保護カバー2B、2Cが取り付けられる筐体2の側面部に通気孔Hを設けた例を示している。なお、通気孔Hは、例えば、筐体2のハウジング本体部2Aの裏面U(
図3参照)の部分や、表面Rの周縁部、或いは、ハウジング本体部2Aのいずれかの側面など、種々の位置に構成され得る。また、通気孔Hの形状、サイズ、数等は、任意の構成とすることができる。FPD1の内部の電子部品の放熱性等を考慮して、筐体2に通気孔Hを複数個設けてもよい。
【0038】
図4に示す例では、筐体2のハウジング本体部2Aの端部部分2A1の内側に内側カバー2bが挿入され、内側カバー2bの係止部2b1が端部部分2A1の先端2A2に係止することで、内側カバー2bによりハウジング本体部2Aの開口部が封止される。また、ハウジング本体部2Aの端部部分2A1および内側カバー2bの外側を覆うように保護カバー2Bを取り付けることで、ハウジング本体部2Aの開口部が閉塞されるようになっている。保護カバー2Cの側も同様である。
【0039】
また、
図4に示す例では、保護カバー2Bおよび内側カバー2bには孔H1およびH2が各々穿設され、孔H1およびH2が連通する位置に設けられることで、FPD1の筐体2の側面に通気孔Hが形成されるようになっている。また、通気孔Hを介して筐体2内に液体が浸入することを防止し、かつ通気を可能にするために、通気孔Hには、撥水性を有する通気フィルターFが設けられている。
【0040】
このような構成によれば、筐体2の内外の空気の流通は、保護カバー2Bと内側カバー2bにそれぞれ設けられた各孔H1、H2で形成される通気孔Hを通り、通気フィルターFを介して行われる。他方、仮に被写体Sの体液等が通気孔H(保護カバー2Bの孔H1)に入ったとしても、かかる体液等は撥水性を有する通気フィルターFではじかれることから、通気孔Hから筐体2内に体液等が浸入することが防止される。
【0041】
通気フィルターFとしては、例えばPTFE(polytetrafluoroethylene、ポリテトラフルオロエチレン)多孔質膜等のフッ素樹脂系の膜等を用いることが可能であり、上記の機能を有するものであれば、通気性を有する他の材料の膜等を用いてもよい。
【0042】
他方、
図2で上述した電源スイッチ21、切替スイッチ22、コネクター23、インジケーター24などの部品に対しては、当該部品の取り付け箇所(この例では保護カバー2B)に、ゴムなどのシール材を用いた防水用パッキンが配置されている。
【0043】
なお、変形例として、筐体2の形状を箱型とした場合、すなわちハウジング本体部2Aを容器形状とした場合、上述した保護カバー2B,2Cのうちの一方のみを蓋部分として使用し、他の一方を省略することができる。この場合、当該蓋部分として使用する保護カバー(2B又は2C)と、ハウジング本体部2Aの取り付け箇所との間で、上述の防水用パッキンを配置すればよい。
【0044】
このような構成により、FPD1の筐体2は、液体が筐体2内部に浸入することを防止する防水性能を備えた構造になっている。他方、FPD1は持ち運びが容易であることから、移動時にぶつけたり床に落下する等のケースがあり得る。この場合、FPD1に加わった衝撃(外力)により、例えばハウジング本体部2Aの端部部分2A1と保護カバー2B,2Cとの間の隙間が大きくなる、または、これらの部品に微細なクラック等が発生する等が考えられ、この結果、防水性能が劣化し得る。また、通常の使用状態であっても、長期の使用により、上述した防水用パッキンや筐体2の各部分が劣化し、筐体2の備える本来の防水性能が徐々に落ちていく。したがって、FPD1は、定期的に防水性能の検査を行うことが必要になる。
【0045】
かかる防水性能の検査に関し、上述した特許文献1記載の技術は、筺体2への押圧時に十分な気圧変化を生じさせることが容易でなく、防水性能の検査に必要となる労力、技能、人的資源等の点からも、改良が求められていた。
【0046】
より具体的には、特許文献1記載の技術では、通気フィルターFを介して通気孔Hから空気が流出することから、防水性能検査を開始するために必要となる筐体2の内部気圧の十分な変化量を、短時間で実現することが容易ではなかった。また、特許文献1記載の技術では、防水性能の検査時に通気孔Hから漏れる(流出する)空気により、真に捉えたい空気のリーク量(内部気圧の変化量)が、通気孔Hを介して流出するリーク量に埋もれる問題があった。このため、特許文献1記載の技術では、FPD1の防水性能を精度よく、短時間で検査することができなかった。
【0047】
上記問題に対処するために、特許文献1記載の技術では、防水性能の検査の際にユーザーが手作業で通気孔Hを塞ぐ必要があり、病院等の医療現場において、かかる労力、技能、人的資源等を確保するには限界があった。また、通気孔Hを手作業で塞いだ場合、通気孔Hの構成(数や配置、形状等)によっては、十分に塞ぐことが困難となる、あるいは通気孔Hの塞ぎ方がユーザーによって異なるものとなり、検査の迅速性および精度等を確保し難かった。別の観点から言うと、特許文献1記載の技術では、通気孔Hの構成(数や配置、形状等)に関する設計の自由度が大幅に制限される問題があった。
【0048】
上述のような問題点に鑑みて、本実施の形態では、防水性能検査の開始に必要となる筐体2の内部気圧の十分な変化量(大気圧からの乖離)を確保すべく、筐体2の内部気圧がピーク値に到達するように、通気孔Hを介した空気の流通量を減少させる流通量調節部を設ける構成とした。ここで、流通量調節部は、FPD1とクレードル5(周辺機器)のいずれか一方あるいは両方に設けてもよい。以下は、流通量調節部をFPD1に設けた構成例を中心に説明する。
【0049】
次に、
図5以下を参照して、流通量調節部および防水性能の検査に関するFPD1等の構成を説明する。
図5は、本実施の形態におけるFPD1の筐体2の内部の部品を概要的に示す図であり、簡明のため、バッテリーやセンサーパネルSP等の図示を省略している。
【0050】
図5に示すように、FPD1の筐体2内には、回路基板25が収容され、この回路基板25上に、各部の制御を司るCPU26、CPU26の外部記憶装置としてのメモリー27、筐体2内の気圧を検出する気圧センサー28、熱源29等が搭載されている。
【0051】
CPU26は、FPD1の各部を制御するとともに、外部装置との通信を行い、また、後述する防水性能の検査に関する各種処理を実行する。
【0052】
メモリー27は、RAM、HDD、フラッシメモリなどの各種のデータ記憶媒体から構成され、CPU26が読み出して実行する防水性能検査プログラムを含む種々のプログラム、後述する防水性能の正常なFPD1の特性データ、などを格納している。
【0053】
気圧センサー28は、内部に隔膜構造を持ち、膜の両側の圧力差によって生じる膜の変位を測定することにより、筐体2内の気圧(以下、内部気圧という)を測定する。気圧センサー28は、筐体2の内部気圧を測定する気圧測定部として機能する。
【0054】
図5に示す実施の形態では、通気孔Hは、
図4に示す例とは異なり、筐体2における裏面Uに近い側の位置に設けられている。そして、本実施の形態では、通気孔Hの開度を調整するための開度操作部材としてのシャッター30が、筐体2内で移動可能に設けられている。この例では、シャッター30は、図示しないモーターやソレノイド等の駆動源に接続されており、CPU26の制御の下、かかる駆動源が駆動されることにより、
図5中に両矢印で示す方向に移動する。
【0055】
図5は、通気孔Hが全開の状態を示している。この状態からCPU26の制御によりシャッター30が図中の左方向に移動すると、通気孔Hの内側(
図4の孔H2参照)がシャッター30で覆われ、通気孔Hを介した空気の流通が防止ないし大幅に抑制され、筐体2の気密性が向上する。したがって、CPU26は、通気孔Hに対するシャッター30の位置を制御する位置制御部としての役割を有する。また、この例では、シャッター30およびその駆動源とCPU26により、通気孔Hを介した空気の流通量を調節する流通量調節部が構成される。
【0056】
図示しないが、筐体2内には、FPD1の上述した各部に電流を供給するバッテリー(電源電池)が収容される。このバッテリーは、例えばリチウムイオン電池等の繰り返し充電できる蓄電池が使用される。上述したセンサーパネルSPは、回路基板25と筐体2との間に配置され、或いは回路基板25の下面に配置されることができる。
【0057】
熱源29は、後述する防水性能の検査時(バッテリー充電時や気圧センサー28の作動時など)に発熱する一以上の電子部品であり、筐体2内に収容される種々のものが含まれる。例えば、熱源29として、充電時に使用される電源回路のコイル、ROIC(read out integrated circuit;読み出し集積回路)、X線撮影システム100内の他の装置と無線通信を行うための無線モジュールなどが該当する。他にも、熱源29として種々の電子部品(例えばヒーターなど)を含めることができる。
【0058】
この例では、CPU26および熱源29は、筐体2の内部気圧を操作する(すなわち大気圧から変動させる)ための気圧操作部として機能する。
【0059】
一般に、ある程度気密性が保たれている空間内では、ボイルシャルルの法則が適用でき、空気の温度と気圧は、比例関係が成立する。本実施の形態では、この原理を利用して、筐体2内の空気の温度を操作する(加熱および加熱中止する)ことにより、筐体2内の気圧の操作(加圧および減圧)を行う。
【0060】
図6Aおよび
図6Bは、筐体2の防水性能が正常であるFPD1内のバッテリーをクレードル5によって充電している間および当該充電が終了した後のFPD1の内部気圧を実測した結果を示す特性グラフである。かかる実測に際しては、予めシャッター30の位置を
図5に示す状態から左側に移動して通気孔Hを閉塞して、筐体2をほぼ気密状態としてFPD1の内部気圧を計測した。
【0061】
かくして、
図6Aから分かるように、バッテリーの充電中は、熱源29の温度が上昇して筐体2内の空気が暖められることから、ボイルシャルルの法則により、FPD1の内部気圧が徐々に上昇して行く。また、バッテリーの充電終了後は、バッテリーおよび熱源29への電力供給が行われなくなり、かかる熱源29の温度下降に伴い、筐体2内の空気の温度が外気温と等しくなるように徐々に下がって行く。したがって、バッテリーの充電終了後、かかる内部気温の下降により、筐体2の内部気圧は、
図6Bに示すように、大気圧に向けて徐々に下がって行く。
【0062】
なお、気圧センサー28による実際の測定値(出力波形の生データ)は、
図7中に実線で示すように、±0.1hpa程度の微細なバラツキが発生する。したがって、FPD1の内部気圧測定時に、CPU26は、気圧センサー28による測定値(生データ)の微細なバラツキを、
図7中に点線で示すように平均化するように補正するとよい。このような補正処理を行うことで、防水性能の評価精度の向上が図られる。なお、後述のように、筐体2の防水性能が正常なFPD1の気圧変化の測定値を比較対象として用いる場合も、上記補正を行った後のデータをメモリー27等に記憶しておくとよい。
【0063】
次に、FPD1(筐体2)の防水性能を検査する方法についてより具体的に説明する。
図8は、筐体2の内部気圧の変化の仕方を例示した特性図であり、縦軸は筐体2の内部気圧の値を、横軸は時間(t)の経過を各々示す。
【0064】
本実施の形態では、FPD1がクレードル5に装着された時刻t1から加圧が開始される時刻t2までの間に、CPU26の制御により、シャッター30を移動させて通気孔Hの開度を下げる。かかる処理により、防水性能が正常な筐体2であれば気密性が確保され、防水性能が劣化している筐体2であれば当該劣化の程度に応じて気密性が低下する。
【0065】
そして、CPU26は、シャッター30の移動により通気孔Hの開度を下げた後の時刻t2から筐体2内の気圧を変動(この例では上昇)させる気圧操作(この例では加圧)の処理を開始し、かかる内部気圧がピーク値に達した後の時刻t3に、気圧操作の処理を終了させる。
【0066】
本実施の形態では、気圧操作(加圧)の処理として、上述のように、FPD1内のバッテリーの充電時に熱源29が発熱して筐体2内の空気が温められる(温度上昇する)ことによる気圧上昇を利用する(
図6A参照)。この際に、後述のような、追加的または補足的な気圧操作(加圧)の処理を行ってもよい。
【0067】
かくして、筐体2内の加圧の操作を終了した場合、FPD1の内部気圧は、大気圧と等しくなるように徐々に変動(この例では低下)する(
図6B参照)。このため、CPU26は、気圧操作を終了した時刻t
3から大気圧に戻った時刻t
4までの間の気圧の変動(低下)の仕方を測定する。ここで、
図8の時刻t
3からt
4の期間中、防水性能が正常なFPD1の内部気圧の変化の仕方を太い点線で示し、防水性能が劣化しているFPD1の内部気圧の変化の仕方を実線で示している。これら2本の曲線を比較して分かるように、防水性能が正常なFPD1の場合、ピーク値から大気圧に戻るまでの内部気圧の変化(下降)の仕方が全体的に緩やかになる。これに対し、防水性能が劣化しているFPD1の場合、筐体2内の加圧された空気が当該劣化部分から外部に漏れるため、内部気圧のピーク値からの変化の仕方(下降の傾き)が大きくなる。
【0068】
なお、簡明のため、
図8では、防水性能が正常なFPD1の場合と防水性能が劣化しているFPD1の場合とで、時刻t
3からt
4の間の気圧変動の特性だけ異なるように示している。実際には、防水性能が正常な場合と防水性能が劣化している場合とでは、時刻t
2からt
3の間の気圧変動の特性も異なり得る。但し、時刻t
2からt
3の間の気圧変動の特性は、防水性能以外の他の要因(例えばバッテリーの残量などの充電環境等)によっても異なって来るため、防水性能の如何(正常または劣化している)に関わらず、一定の特性が得られにくい。また、後述のように、筐体2の内部気圧をピーク値まで変更するための気圧操作の処理には種々の変形例が考えられ、かかる処理内容によっても時刻t
2からt
3の間の気圧変動の特性が変わって来る。
【0069】
これに対して、気圧操作の終了時刻t3(内部気圧のピーク時)から大気圧に戻る時刻t4までの間は、専ら筐体2の気密性に基づいた気圧変動特性となるため、内部気圧の変動(低下)の仕方は、防水性能が正常な場合と劣化している場合とで容易に区別できる。したがって、本実施の形態では、基本的に、気圧センサー28により計測される上述した時刻t3から時刻t4まで間の気圧変動の仕方(特性、特徴点等)から、FPD1の防水性能を評価する。
【0070】
本実施の形態において、CPU26は、気圧操作の停止時刻t
3から大気圧に達した時刻t
4までの間の筐体2の内部気圧の変化の特徴量を抽出することによって、FPD1の防水性能の劣化の程度を推定する。以下、かかる手法を、
図9および
図10をも参照しながら説明する。
【0071】
図9および
図10は、FPD1の内部気圧をピーク値まで上昇させた後、内部気圧の下がり方の特徴量を抽出する方法の具体例を、各々示す。
図9および
図10中、防水性能が劣化しているFPD1の内部気圧の変化特性を実線で示し、防水性能が正常なPD1の内部気圧の変化特性を点線で示している。
【0072】
図8に示すように、防水性能が劣化しているFPD1は、防水性能が正常なFPD1と比較して、基本的に、気圧操作を終了した時点(時刻t
3)から所定時刻(すなわち内部気圧がある程度下がった時点)までの気圧変化の傾きが大きくなる。したがって、この範囲において、防水性能の劣化度の推定、優劣の判別等がしやすい。他方、内部気圧がある程度下がった時点から大気圧に戻るまでの気圧変化の傾きは、防水性能が劣化しているFPD1と防水性能が正常なFPD1とで区別しにくい場合がある。さらに、防水性能が正常なFPD1と防水性能が劣化しているFPD1とでは、時刻t
3から大気圧に戻る時刻t
4までの時間の長さが異なり得るものであり、一般に、防水性能の劣化度が大きいほど大気圧に戻るまでの時間(時刻t
3からt
4まで)が短くなる。総じて、CPU26による防水性能の劣化度の推定、優劣の判別等の評価は、気圧操作を終了した時点(時刻t
3)から速やかに行うこと、および、FPD1の内部気圧がある程度大気圧に近くなっている時点では既に終了していることが望ましい。
【0073】
上述に鑑みて、本実施の形態では、
図9および
図10に示すように、CPU26は、基本的に、防水性能が劣化しているFPD1の気圧変化の傾きが、防水性能の正常なFPD1よりも大きくなる領域において、防水性能の劣化度の推定、優劣の判別等を行う。
【0074】
より具体的には、CPU26は、
図9に示すように、FPD1の内部気圧が、ピーク値またはピーク値から若干下がった気圧Aである時刻(t
31)から、気圧Bに下がった時刻までの時間または気圧変化の傾き(気圧変動値/時間)を算出する。なお、気圧Bは、気圧Aよりも低く、大気圧よりも相当程度高い値である。
【0075】
ここで、防水性能が劣化しているFPD1は、気圧Aになった時刻(t31)から気圧Bに下がった時刻(t32)までの時間が、防水性能が正常なFPD1の場合(t31からt33までの時間)よりも短くなる。また、防水性能が劣化しているFPD1は、気圧Aになった時点(t31)から気圧Bに下がった時点(t32)までの気圧変化の傾きが、防水性能が正常なFPD1における傾きよりも大きくなる。さらに、FPD1は、筐体2の防水性能の劣化度が大きくなるほど、気圧Aから気圧Bに下がるまでの時間が短くなり、また、気圧変化の傾きが大きくなる。
【0076】
したがって、CPU26は、気圧センサー28の検出結果から、防水性能の検査対象となるFPD1の内部気圧が気圧Aから気圧Bに下がるまでの時間または気圧変化の傾きを特徴量として算出する。そして、CPU26は、当該算出された時間または気圧変化の傾きを、防水性能の正常なFPD1の当該時間または気圧変化の傾きと比較することにより、検査対象となるFPD1の防水性能の劣化度を推定することができる。ここで、防水性能の正常なFPD1の特性(気圧Aから気圧Bに下がるまでの時間または気圧変化の傾き)は、通気孔Hの開度やピーク値などの条件を同一にして測定した実測値をテーブル化してメモリー27に記憶しておき、防水性能の検査時にCPU26が読み出す。
【0077】
図10を参照して、FPD1の防水性能の評価手法の他の例を説明する。上述したように、防水性能が劣化しているFPD1の場合、筐体2内の加圧された空気が当該劣化部分から外部に漏れるため、内部気圧のピーク値からの変化の仕方(下降の傾き)が大きくなる。反面、筐体2内の加圧された空気がある程度抜けると、その後は気圧変化の仕方(下降の傾き)が比較的緩やかになる。
【0078】
上記のような現象を考慮すると、
図10に示すように、気圧操作の終了後に、防水性能が正常なFPD1の内部気圧と、防水性能が劣化しているFPD1の内部気圧との気圧差が最大化する時刻ないし時間帯が存在するものと考えられる。
図10に示す例では、時刻t
3(気圧操作の終了時)の後の時刻t
34において、防水性能の正常なFPD1の内部気圧(気圧C)と、防水性能の劣化したFPD1の内部気圧(気圧D(C>D))との気圧差(乖離)が最大となっている。
【0079】
したがって、CPU26は、気圧操作終了時の時刻t3から所定時間経過後の時刻t34におけるFPD1の内部気圧の測定値(気圧D)を特徴量として算出し、防水性能の正常なFPD1の対応する測定値(気圧C)と比較して、防水性能の劣化度を推定する。このような処理を行うことにより、FPD1の防水性能の劣化度を高い精度で推定することができる。なお、防水性能の正常なFPD1の測定値(時刻t34および気圧C)は、上述と同様に、通気孔Hの開度やピーク値などの条件を同一にして測定した測定値を特性テーブルとしてメモリー27に記憶しておき、防水性能の検査時にCPU26が読み出す。
【0080】
次に、
図11のフローチャートを参照して、FPD1がクレードル5に装着されて充電を行う場合にFPD1のCPU26が行う防水性能検査処理の流れについて説明する。
【0081】
図3で上述したように、FPD1がクレードル5のホルダー51に装着されると、コネクター23を通じてクレードル5から供給される電力(充電電流)によって、筐体2内のバッテリーの充電が開始される。このとき、CPU26は、例えばこの充電電流を検知する、あるいはクレードル5から出力された接続信号を受信することにより、FPD1がクレードル5に装着されたことを検知する(ステップS100)。
【0082】
続いて、CPU26は、シャッター30の駆動源に制御信号を出力して、筐体2の通気孔Hを閉じる(シャッター30で塞ぐ)ように、シャッター30の位置を制御する(ステップS120)。かかる処理により、通気孔Hの開度が最小限化し、通気孔Hを介した空気の流通が禁止ないし大幅に抑制されることから、筐体2の気密性が高まり、気圧操作時における内部気圧のピーク値を確保することができる。
【0083】
ステップS140において、CPU26は、気圧センサー28の出力信号を監視しながら、筐体2の内部気圧を
図8等で説明したピーク値(正のピーク圧)に到達させるための気圧操作に関する種々の処理を行う。
【0084】
一例では、CPU26は、バッテリーの充電環境等に応じて、適宜、気圧上昇を支援するための処理を行う。例えば、バッテリーの容量があまり減っていない状態で充電を開始したような場合、充電完了までの時間が短くなり、内部気圧が上述したピーク値に達しないケースが発生し得る。したがって、CPU26は、充電開始時におけるバッテリーの残留電荷の量(残量)や充電完了までの予測時間を求め、充電完了までに内部気圧がピーク値に達しない可能性がある場合、バッテリーを放電した後に充電を開始すべき旨の指示をクレードル5に出力する。或いは、CPU26は、バッテリーの残量チェックを行わず、一律に、上記の指示をクレードル5に出力してもよい。
【0085】
かくして、FPD1がクレードル5に装着された後のバッテリーの充電時に熱源29が発熱することにより、筐体2内の空気の温度が上昇し、かかる温度上昇に伴って筐体2の内部気圧が外部気圧(大気圧)に対して徐々に高くなっていく(
図6A参照)。
【0086】
CPU26は、バッテリーの充電が開始されると、気圧センサー28の出力信号を監視して、FPD1の内部気圧が予め設定されたピーク値に到達したか否かを判定する(ステップS160)。CPU26は、FPD1の内部気圧が所定値に到達していない(ステップS160、NO)と判定した場合、ステップS160に戻って当該判定を繰り返す。他方、CPU26は、FPD1の内部気圧が所定値に到達した(ステップS160、YES)と判定した場合、ステップS180に移行する。
【0087】
ステップS180において、CPU26は、気圧センサー28により測定された値をメモリー27に逐次格納して、筐体2内の気圧の推移(変化の仕方)を記録するとともに、該測定された値に基づいて、上述のようにFPD1(筐体2)の防水性能の評価を行う。
【0088】
すなわち、CPU26は、気圧センサー28により測定された値(生データ)の微細なバラツキを平均化するように補正し(
図7参照)、該補正後の気圧の値を、防水性能が正常なFPD1の気圧変化特性のデータ(
図8~
図10参照)と比較することにより、防水性能を評価する。
【0089】
より具体的には、CPU26は、補正後の気圧の値が、防水性能が正常なFPD1の気圧変化特性に対して
図9および
図10で上述したような時間、傾き、気圧変化幅における乖離(特異点)が生じたか否かを判定する。そして、CPU26は、かかる乖離(特異点)が生じたと判定した場合、防水性能が劣化している旨の警告をインジケーター24等に表示する。他方、CPU26は、乖離(特異点)が生じていないと判定した場合、防水性能は正常である旨をインジケーター24等に表示する。この表示の処理に関し、CPU26は、代替的あるいは追加的に、X線撮影システム100を構成する他の装置、例えばコンソール装置3、ホストコンピューター4、クレードル5(周辺機器)などに、防水性能の評価結果(劣化の有無等)のメッセージを送信することができる。
【0090】
ステップS200において、CPU26は、気圧センサー28により測定された気圧の値が大気圧と同じになったか否かを判定する。そして、CPU26は、気圧センサー28の測定値が大気圧よりも高い値を示している間は(ステップS200、NO)、上述した防水性能の評価を続行する。他方、CPU26は、気圧センサー28の測定値が大気圧を示した場合(ステップS200、YES)、防水性能の評価を終了してステップS220に移行する。
【0091】
ステップS220において、CPU26は、シャッター30の駆動源(モーター等)を駆動して、筐体2の通気孔Hを通常の開状態に戻す(シャッター30での閉塞状態を解除する)ように、シャッター30の位置を制御した後、一連の処理を終了する。
【0092】
なお、ステップS220の他のタイミングとして、CPU26は、FPD1の防水性能の評価結果が出た場合、シャッター30の位置を制御して、筐体2の通気孔Hを通常の開状態に戻してもよい。この場合、通気孔Hを通じて筐体2内の加圧された空気が外部に流出できるので、筐体2の内部気圧を速やかに大気圧に戻すことができる。
【0093】
さらに、他の制御例として、CPU26は、FPD1の内部気圧がピーク値に達した後は、防水性能の評価中であっても、シャッター30の位置を制御して、筐体2の通気孔Hの開度をある程度開く制御を行ってもよい。この場合、防水性能の評価中に筐体2の気密性が低下するため、通気孔Hの開度によっては防水性能推定の精度が低下する場合が生じ得るが、反面、防水性能の評価の結果をより早く導き出せるメリットがある。このような制御を行う場合、防水性能の正常なFPD1の特性のデータを、シャッター30を移動するタイミングや移動位置(通気孔Hの開度)についても同一条件とした測定結果のデータをメモリー27に記憶しておく。
【0094】
上述のような処理を行う本実施の形態によれば、日々の使用の中でユーザー(医師や看護師等の医療関係者)が意識することなく、FPD1の防水性能を迅速かつ精度良く検査することができる。
【0095】
かくして、FPD1の充電に伴って通気孔Hを通じた空気の流通量を制御して筐体2の防水性能を自動で検査する本実施の形態によれば、防水性能の検査時に必要となるユーザーの労力、技能、人的資源等の大幅な削減を図ることができる。また、主たるユーザーすなわち医師や看護師等の医療関係者に要求される労力等が軽減され、医療現場における日々の使用の中で医療関係者が意識することなく、FPD1の防水性能を迅速かつ高い精度で検査することができる。
【0096】
上述した構成例では、通気孔Hの開度調整に際して、CPU26がシャッター30の位置を自動制御する場合を説明した。他方、FPD1の通気孔Hの開度を操作するための構成(空気流通量を調整するための構成)は、これ以外にも種々の変形例が考えられる。
【0097】
図5で上述した構成は、シャッター30を筐体2の内部(内面側)に配置してCPU26により位置を制御する例であった。これに対して、シャッター30を筐体2の外部(外面側)に配置して、手動で位置操作できる構成としてもよい。この場合、例えば通気孔Hを
図3における筐体2の上方の領域に設け、シャッター30をスライド操作等によりユーザーが手動で移動できるようにする。このような構成の場合、CPU26は、ステップS120およびステップS220で、シャッター30を手動操作して通気孔Hを閉塞するようユーザーを促す表示を行う。この場合、防水性能の検査時にユーザーの労力が多少増えるが、1回の操作で通気孔Hの開度を一定に保持することができるので、防水性能検査の間、ユーザー(医師等)は別の病室等に移動することができる。また、シャッター30の駆動源が不要となり低コスト化できるメリットがある。
【0098】
他の例として、上述のようにシャッター30を筐体2の外部(外面側)に配置して、手動で位置操作できる構成とした場合、シャッター30を駆動する駆動源をクレードル5側に設ける構成としてもよい。この場合、CPU26は、FPD1がクレードル5に装着された後のステップS120およびステップS220で、クレードル5側の駆動源を制御すればよい。
【0099】
さらには、例えば、通気孔Hを
図3における筐体2の下方の領域(クレードル5のホルダー51に対向する側面)に設けるとともに、通気孔Hの開度を変更する部材(開度操作部材)を、クレードル5(ホルダー51)の対応する位置に設ける構成としてもよい。かかる開度操作部材としては、例えば、ゴムなどの弾性を有するクッション材などを用いることができる。このような構成とすることで、FPD1をクレードル5のホルダー51に装着した際に、かかるクッション材によって通気孔Hが塞がれるので、ユーザーの手間を省くことができる。さらに、かかるクッション材の駆動源をクレードル5に設け、通気孔Hに対するクッション材の位置を変更することで通気孔Hの開度を調整できるようにしてもよい。
【0100】
低コスト化を図るための他の例として、
図12に示すように、筐体2の裏面Uの一部を可撓性部材で構成することで、内部気圧の操作を、図示しない万力などの治具、或いは予め定められた重量の錘を用いて行う構成としてもよい。この場合、当該裏面Uの一部は、気圧操作部の一部をなし、外部から荷重が付与されることで弾性変形する加重付与部として機能する。かかる構成は、上述したステップS140における気圧上昇を支援する場合にも有効と考えられる。
【0101】
一例では、CPU26は、上述のようにバッテリーの充電完了までに内部気圧がピーク値に達しない可能性がある場合、筐体2の裏面Uを治具等で押圧するようにユーザーを促す表示を行う。このとき、CPU26は、気圧センサー28の出力信号を監視し、FPD1の内部気圧が予め設定されたピーク値に達した(ステップS160、YES)と判定した場合、治具等の押圧状態を維持するようにユーザーに通知する表示を行う。この後、当該ユーザー(医師等)は、診断等のため他の病室に移動することができる。
【0102】
さらに、FPD1の通気孔Hは、筐体2に複数個設けられる構成とすることができる。筐体2に通気孔Hを複数設ける場合、上述した防水性能の検査時に、例えば1つの通気孔だけ開度を調整せず、他の通気孔の開度をシャッター30で操作する構成とすることができる。この場合、内部気圧の操作を行う際に、不図示のエアポンプを周辺機器として使用し、エアポンプから送出される空気を、開度を調整しない通気孔を通じて筐体2内に送り込むことができる。
【0103】
なお、ユーザーの労力をできるだけ軽減する観点からは、筐体2に開閉対象となる通気孔Hを複数設ける場合で、シャッター30を手動で移動させる構成とする場合、1つのシャッター30で複数の通気孔Hの開度を一度に操作できるようにすることが望ましい。この場合、例えば、開閉対象となる複数の通気孔Hを筐体2の1つの面に一直線上に配列し、通気孔Hの形状に対応したスリットが形成されたシャッター30を、かかる線上に沿ってスライド(往復移動)する構造とすればよい。
【0104】
総じて、本実施の形態では、防水性能の検査時に、通気孔Hを完全に塞ぐことは必須ではなく、防水性能の検査時における通気孔を通じた空気の流通量が、通常使用時における通気孔Hを通じた空気の流通量に比べて十分小さくなっていればよい。より具体的には、上述した気圧操作によって筐体2の内部気圧が予め設定されたピーク値まで到達することができ、かつ、CPU26による評価時に、防水性能の正常なFPD1との差異が判別できる程度に通気孔Hが塞がれる(開度が低くなる)構成であればよい。
【0105】
上述した実施の形態では、筐体2の内部気圧を外気(大気圧)よりも上げて(加圧して)正のピーク値まで達した後に、内部気圧の下がり方を測定して防水性能の評価を行う構成例について説明した。
【0106】
他の例としては、
図13に示すように、筐体2の内部気圧を大気圧よりも下げて(減圧して)負のピーク値まで到達させた後に、内部気圧の上がり方(大気圧に戻ろうとする変化の仕方)を測定して防水性能の評価を行う構成例としてもよい。
【0107】
この場合の一具体例としては、筐体2に通気孔Hを複数設けるとともに、CPU26は、FPD1がクレードル5に装着された時刻t1から減圧が開始される時刻t2までの間に、シャッター30を移動させて、複数の通気孔Hの開度を低下させる。そして、時刻t2から筐体2内の気圧を変動(この例では減圧)させる気圧操作の処理を行う。一例では、シャッター30による開閉の対象とされていない通気孔Hを通じて、上述したエアポンプを用いて筐体2の内部の空気を筐体2外に排出する(エアポンプで吸い出す)ことにより、筐体2内の気圧を減圧する。
【0108】
そして、筐体2の内部気圧が負のピーク値に達した後の時刻t3に、減圧操作の処理を停止するとともに、クレードル5によりFPD1のバッテリーの充電を開始する。この後、上述のように、熱源29の放熱による筐体2内の大気の加温(温度上昇)に基づく気圧上昇を利用して、上述と同様の処理により、FPD1の防水性能の評価を行う。すなわち、CPU26は、筐体2の内部気圧が負のピーク値から大気圧に向けて上昇する過程での内部気圧の値(気圧センサー28による検出値)を記録して、上述したような特徴量を算出する。
【0109】
ところで、自然界における大気圧は常に変動するため、充電開始時の大気圧と充電終了時の大気圧とが同一であるとは限らない。加えて、FPD1は、持ち運びが容易であり、例えば航空機や車両などでの異動中に充電されるようなケースも考えられる。そして、充電中に大気圧が変動すると、筐体2内の気圧変動にも影響を受け、この結果、防水性能の良否が正確に判定できない場合が発生する虞がある。
【0110】
このような問題に対し、本発明者らは、防水性能の良好なFPD1および防水性能の劣化したFPD1の各々に対し、大気圧が変動する環境下において、各FPD1の充電を行いながら、各FPD1の内部気圧の値を測定する実験を繰り返し行った。その結果、測定されたFPD1の内部気圧の各々の変動値を平均化する処理を行うことで、気圧変動のばらつきが収束化され、
図14に示すように、防水性能が良好なFPD1(特性A)と、防水性能の劣化したFPD1(特性B)との違いが明確になることが分かった。
図14中、変動特性Aは、防水性能が良好なFPD1における充電中の内部気圧を、大気圧が変動する種々の環境下で測定して得られたデータを平均化した特性線を示す。他方、変動特性Bは、防水性能が劣化したFPD1における充電中の内部気圧を、防水性能が良好なFPD1と同一環境下で測定して得られたデータを平均化した特性線を示す。
【0111】
したがって、他の例として、CPU26は、メモリー27に格納された複数回の充電時における筐体2の内部気圧の測定データを平均化する処理を行い、かかる平均化処理されたデータを用いてFPD1(筐体2)の防水性能の評価を行ってもよい。
【0112】
上記の平均化処理の方法は一例であり、複数回の充電時における筐体2の内部気圧の測定データを用いてFPD1(筐体2)の防水性能の評価を行う手法は、種々のものが採用できる。例えば、CPU26は、メモリー27に格納された複数回の充電時における筐体2の内部気圧の測定データを機械学習などで解析し、かかる解析結果のデータから、筐体2の気圧変化幅における特異点を抽出して、防水性能の評価を行ってもよい。
【0113】
上述した実施の形態では、FPD1内のバッテリーを充電する充電装置としてのクレードル5にFPD1を装着した際に防水性能の検査を行う構成例とした。他方、上述したエアポンプなど、クレードル5(充電装置)以外の他の周辺機器にFPD1を接続した場合に防水性能の検査を行う構成とすることもでき、さらには周辺機器に接続していない場合でも防水性能の検査を行うことができる構成としてもよい。
【0114】
筐体2の裏面Uの一部を加重付与部とし、筐体2に通気孔Hを複数設けた場合の他の具体例として、FPD1をクレードル5等の周辺機器に装着せずに、FPD1の表面Rを床等に載置した状態(
図12参照)で防水性能の検査を実行する例を説明する。
【0115】
この例では、
図13に示す時刻t
1に、ユーザー操作によって防水性能の検査開始指示が入力されたものと仮定する。CPU26は、時刻t
1で防水性能の検査開始指示を検出すると、FPD1の裏面Uに錘を載せるようにユーザーを促す表示を行う。この時点では、シャッター30の位置は初期状態のままであり、各通気孔Hの開度は最大の状態にある。
【0116】
続いて、FPD1の裏面Uに錘が載せられると、錘の自重により裏面Uが下側に弾性変形して(
図12の矢印参照)、錘の加重に従った量の空気が、各通気孔Hを通じて筐体2の外部に排出される。
【0117】
この後、気圧操作の開始指示が入力されると、かかる指示を検出したCPU26は、シャッター30を移動させて、1つ以上の通気孔Hの開度(空気の流通量)を低下させ、筐体2の気密性を向上させる。
【0118】
続いて、CPU26は、FPD1の裏面Uに載っている錘を外すようにユーザーを促す表示を行う。この後、錘が取り外されると(
図13の時刻t
2参照)、筐体2の裏面Uに加えられていた加重が無くなるため、裏面Uが元の形状に戻るように変位(復元)する。この動作により、筐体2の内部の空気の密度が低くなり、FPD1の内部気圧が急速に下がる。
【0119】
CPU26は、筐体2の内部気圧が負のピーク値に到達したことを検知すると(時刻t3参照)、筐体2の内部気圧がピーク値から大気圧に向けて上昇する過程での内部気圧の値(気圧センサー28による検出値)を記録して、上述したような特徴量を算出する。
【0120】
この例では、筐体2の内部気圧を操作する際にユーザーの労力を要するが、予め定められた重量の錘を使用することにより、ユーザー間での気圧操作のバラツキを防止することができる。
【0121】
上述した実施の形態では、防水性能の評価を、FPD1のCPU26で行う構成とした。他方、防水性能の評価は、X線撮影システム100を構成する他の装置のプロセッサー、例えば、クレードル5(充電装置)、コンソール装置3、ホストコンピューター4のプロセッサーで行ってもよい。この場合、FPD1のCPU26は、当該プロセッサーに対してネットワークNや基地局7等を介して通信を行い、気圧センサー28の測定値など、必要となるデータを相手方の装置に転送すればよい。
【0122】
上述した各種の構成例は、適宜、選択的に或いは組み合わせることができる。例えば、クレードル5に、上述したエアポンプや、裏面Uの加重付与部を一定の加圧力で押圧する機構などを付加してもよい。また、
図3で上述したクレードル5は、FPD1を縦方向に装着する縦置き型の構成であった。クレードル5の他の例として、
図12に示すように裏面Uが上側となるようにFPD1を横方向から着脱する横置き型の構成とし、かつ、上述した錘を裏面Uに対して移動させる機構を付加してもよい。
【0123】
上述した実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0124】
100 X線撮影システム(放射線画像撮影システム)
1 FPD(放射線画像撮影装置)
2 筐体
3 コンソール装置
4 ホストコンピューター
5 クレードル(充電装置)
26 CPU(気圧操作部、防水性能検査部、流通量調節部(位置制御部))
27 メモリー
28 気圧センサー(気圧測定部)
29 熱源(気圧操作部)
30 シャッター(流通量調節部(開度操作部材))
51 ホルダー
H 通気孔
SP センサーパネル(放射線検出素子)
S 被写体