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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】表示媒体、ならびに表示媒体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/324 20140101AFI20220621BHJP
   B42D 25/24 20140101ALI20220621BHJP
   B42D 25/23 20140101ALI20220621BHJP
   B42D 25/309 20140101ALI20220621BHJP
   B42D 25/41 20140101ALI20220621BHJP
   B41M 3/14 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
B42D25/324
B42D25/24
B42D25/23
B42D25/309
B42D25/41
B41M3/14
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018027722
(22)【出願日】2018-02-20
(65)【公開番号】P2019142083
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前平 誠
(72)【発明者】
【氏名】井ノ口 雅美
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-349624(JP,A)
【文献】特開2005-134718(JP,A)
【文献】特開2011-134048(JP,A)
【文献】特開2012-208438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/324
B42D 25/24
B42D 25/23
B42D 25/309
B42D 25/41
B41M 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に光透過性を有するプラスチックシートを、少なくとも2層以上、積層してなる表示媒体において、
表面に凹凸構造を有するレリーフ構造形成層と、パターン状の光学素子隠蔽層と、を少なくとも有する光学素子が、前記2層以上のプラスチックシートのいずれかの層間に内包されてなる表示媒体であって、
前記光学素子隠蔽層が設けられている領域と少なくとも一部が重なる領域で、前記表示媒体のいずれかの面に、前記光学素子隠蔽層のパターンに準じて配置された画素からなる潜像領域を有する任意の絵柄を設けてなり、
前記光学素子隠蔽層が、反射層であり、
前記反射層は、金属からなる薄膜であり、
前記光学素子隠蔽層が、万線パターン状に設けられていることを特徴とする請求項に記載の表示媒体。
【請求項2】
前記光学素子隠蔽層と前記潜像領域が重なる領域を少なくとも除く領域において、前記2層以上のプラスチックシートのいずれかの層に媒体隠蔽層を有することを特徴とする請求項に記載の表示媒体。
【請求項3】
前記表示媒体において、前記絵柄が印字された面とは反対側の面側から、前記光学素子隠蔽層と前記潜像領域の重なった領域を観察した際に、
観察角度によって、少なくとも2つの異なる画像が視認されることを特徴とする請求項1または請求項に記載の表示媒体。
【請求項4】
請求項1から請求項に記載の表示媒体において、少なくとも顔写真からなる認証画像が設けられてなることを特徴とする表示媒体。
【請求項5】
表面に凹凸構造を有するレリーフ構造形成層と、パターン状の光学素子隠蔽層と、を少なくとも有する光学素子を、いずれかの層間に内包し、実質的に光透過性を有するプラスチックシートを少なくとも2層以上積層してなる表示媒体に絵柄の印字を行う表示媒体の製造方法であって、
前記光学素子隠蔽層が、反射層であり、
前記反射層が、金属からなる薄膜であり、
前記光学素子隠蔽層が、万線パターン状に設けられており、
絵柄を印字するための複数の画素の位置を示す印字情報を、前記複数の画素の一部を隠蔽する前記光学素子隠蔽層のパターン位置に準じて生成する工程と、
前記印字情報に基づいて、印字対象の表面に前記複数の画素を形成する工程と、
前記複数の画素の一部が前記光学素子隠蔽層のパターンによって隠蔽された表示媒体を、前記光学素子隠蔽層と前記画素との重ね合わせによって製造する工程とを含み、
前記印字情報を生成することが、前記光学素子側からの観察において、前記複数の画素のみが表示する画像とは異なり、かつ観察角度によって、少なくとも2つの異なる画像が表示可能となるように、前記光学素子隠蔽層のパターンの位置に準じて、前記画素の位置に関する情報を生成することを含む、表示媒体の製造方法。
【請求項6】
前記複数の画素が、顔料型インクリボンを用いた感熱転写方式によって形成されることを特徴とする請求項に記載の表示媒体の製造方法。
【請求項7】
前記複数の画素が、2色以上の画素から構成されることを特徴とする請求項または請求項に記載の表示媒体の製造方法。
【請求項8】
前記複数の画素が、レーザエングレービングによって形成されることを特徴とする請求項に記載の表示媒体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パスポートや査証などの冊子、カード等の表示媒体において、偽造防止効果の高い画像を有する表示媒体、ならびに表示媒体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パスポートや査証用ステッカー、あるいはカード類といった表示媒体においては、従来、色々なセキュリティ手法が提案されてきている。
【0003】
例えば、パスポートにおいては、現在使用されているパスポートあるいはICAOの規定によれば、目視および光学文字識別方式の両方で読めなければならないとされている。(ICAOは、International Civil Aviation Organizationの略)
ICAOの規定によれば、パスポートに使用する材質やセキュリティに関しては各国の自由裁量であり、セキュリティ機能として一般に使われているものは、有機溶剤等で反応する化学反応体、虹彩色のパールチップ、ファイバー(絹もしくは合成繊維、可視もしくは不可視、蛍光もしくは非蛍光)、ホログラムやマイクロ文字の印刷されたフィルムのセキュリティ糸、透かし模様等を盛り込んだ用紙や退色性インキ、蛍光インキ、感熱インキ、光学的に変化するインキ(いわゆるOVIなど)等の各種インキ、細線印刷、レインボー印刷、凹版印刷、ピクセル印刷等の様々な技法を盛り込んだセキュリティと美観の同時向上を図っている。
【0004】
パスポートの目視確認情報としての顔写真は、従来写真を貼りあわせたものであったが、近年では写真情報をデジタル化し、これをパスポートに再現する傾向にある。パスポートへの画像再現方法としては、顔料を分散させた樹脂型溶融タイプやワックス溶融タイプ、更には染料の昇華・拡散を用いた昇華タイプなどの転写リボンによる感熱転写記録法、電子写真法、インクジェット法、などが検討されている。
【0005】
この種の個人認証データの入った画像表示媒体としては、画像データに基づいて形成された画像パターンをポリ塩化ビニルやポリカーボネート等の基材上に備えたものや、紙基材上に備えたもの、更には上記画像パターンに加えてホログラムや回折格子を具備するもの等が知られている。
【0006】
パスポートやIDカードなどの個人認証データを含む画像表示媒体において、顔写真などの画像パターンに加えて、ホログラムや回折格子を形成する方法として、例えば特許文献1に示すように、顔写真などの画像パターンが形成される受像シートとして、ホログラム層を有する中間転写媒体を用いた中間転写方法による画像形成法などを例示することができる。
【0007】
このようなホログラムまたは回折格子転写箔は、偽造防止効果としては十分な機能を果たすが、パスポートのように顔写真などの画像形成後に該画像上にホログラムまたは回折格子転写層を熱的に転写しているため、偽造技術の発達した現在では何らかの手法により転写層を一旦取り去り、画像データ等の改ざんを行った後、改めて転写箔を載せるといったことが行われる可能性もでてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平6-106740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記従来の技術的問題点に鑑みてなされた発明であり、高いセキュリティ性を求められる表示媒体に対して、耐改ざん性を向上させるもので、万一それらの不正がなされた場合であっても表示媒体を観察すれば、容易に改ざんの有無を判別できるような判別容易性を備えた表示媒体、ならびに表示媒体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものである。
すなわち、請求項1に記載の発明は、実質的に光透過性を有するプラスチックシートを、少なくとも2層以上、積層してなる表示媒体において、表面に凹凸構造を有するレリーフ構造形成層と、パターン状の光学素子隠蔽層と、を少なくとも有する光学素子が、前記2層以上のプラスチックシートのいずれかの層間に内包されてなる表示媒体であって、前記光学素子隠蔽層が設けられている領域と少なくとも一部が重なる領域で、前記表示媒体のいずれかの面に、前記光学素子隠蔽層のパターンに準じて配置された画素からなる潜像領域を有する任意の絵柄を設けてなることを特徴とする表示媒体である。
【0011】
請求項に記載の発明は、前記光学素子隠蔽層が、万線パターン状に設けられていることを特徴とす表示媒体である。
【0012】
請求項に記載の発明は、前記光学素子隠蔽層が、反射層であり、前記反射層が金属からなる薄膜であることを特徴とする請求項に記載の表示媒体である。
【0013】
請求項に記載の発明は、前記光学素子隠蔽層と前記潜像領域が重なる領域を少なくとも除く領域において、前記2層以上のプラスチックシートのいずれかの層に媒体隠蔽層を有することを特徴とする請求項に記載の表示媒体である。
【0014】
請求項に記載の発明は、前記表示媒体において、前記絵柄が印字された面とは反対側の面側から、前記光学素子隠蔽層と前記潜像領域の重なった領域を観察した際に、観察角度によって、少なくとも2つの異なる画像が視認されることを特徴とする請求項1または請求項に記載の表示媒体である。
【0015】
請求項に記載の発明は、請求項1から請求項に記載の表示媒体において、少なくとも顔写真からなる認証画像が設けられてなることを特徴とする表示媒体である。
【0016】
請求項に記載の発明は、表面に凹凸構造を有するレリーフ構造形成層と、パターン状の光学素子隠蔽層と、を少なくとも有する光学素子を、いずれかの層間に内包し、実質的に光透過性を有するプラスチックシートを少なくとも2層以上積層してなる表示媒体に絵柄の印字を行う表示媒体の製造方法であって、
前記光学素子隠蔽層が、反射層であり、前記反射層が、金属からなる薄膜であり、前記光学素子隠蔽層が、万線パターン状に設けられており、絵柄を印字するための複数の画素の位置を示す印字情報を、前記複数の画素の一部を隠蔽する前記光学素子隠蔽層のパターン位置に準じて生成する工程と、前記印字情報に基づいて、印字対象の表面に前記複数の画素を形成する工程と、前記複数の画素の一部が前記光学素子隠蔽層のパターンによって隠蔽された表示媒体を、前記光学素子隠蔽層と前記画素との重ね合わせによって製造する工程とを含み、前記印字情報を生成することが、前記光学素子側からの観察において、前記複数の画素のみが表示する画像とは異なり、かつ観察角度によって、少なくとも2つの異なる画像が表示可能となるように、前記光学素子隠蔽層のパターンの位置に準じて、前記画素の位置に関する情報を生成することを含む、表示媒体の製造方法である。
【0017】
請求項に記載の発明は、前記複数の画素が、顔料型インクリボンを用いた感熱転写方式によって形成されることを特徴とする請求項に記載の表示媒体の製造方法である。
【0018】
請求項に記載の発明は、前記複数の画素が、2色以上の画素から構成されることを特徴とする請求項または請求項に記載の表示媒体の製造方法である。
【0019】
請求項に記載の発明は、前記複数の画素が、レーザエングレービングによって形成されることを特徴とする請求項に記載の表示媒体の製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明の表示媒体、ならびに表示媒体の製造方法を用いることにより、絵柄を印字した面とは反対側の面から光学素子を介して、観察した際に、観察角度によって、少なくとも2つの異なる画像を視認することが可能で、身分証明書、運転免許書、パスポート、各種カード類等の認証媒体として、高い偽造防止効果を有する表示媒体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の表示媒体の例を示す断面図である。
図2】本発明の視認効果を説明するための概念図である。
図3】本発明の光学素子用転写箔の例を示す平面図である。
図4】本発明の光学素子用転写箔の断面の例を示す断面図である。
図5】本発明の表示媒体の例を示す平面図である。
図6】本発明の潜像領域を光学素子側から観察した際の例を示す平面図である。
図7】本発明の表示媒体の具体例を示す断面図である。
図8】本発明の表示媒体を製造するための印字装置の例を示す概念図である。
図9】中間転写箔の例を示す断面図である。
図10】転写リボンの例を示す平面図である。
図11】印字装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下の説明において適宜図面を参照するが、図面に記載された態様は本発明の例示であり、本発明はこれらの図面に記載された態様に制限されない。
【0023】
(表示媒体)
図1は、本発明の表示媒体の例を示す断面図である。図1では、表示媒体1は、プラスチック1(11)とプラスチックシート2(12)との間に、レリーフ構造形成層(13)とパターン状に設けられた光学素子隠蔽層(14)とを含む光学素子(20)が内包されており、パターン状の光学素子隠蔽層(14)が設けられている領域と少なくとも一部重なる領域に画素A(15A)、画素B(15B)からなる絵柄層(16)と、認証画像部(17)が設けられ、絵柄層(16)と認証画像部(17)とが設けられた面の反対側の面に媒体隠蔽層(18)が設けられた構成として示している。
【0024】
ここで、画素A(15A)と画素B(15B)とは、光学素子(20)に設けられた光学素子隠蔽層(14)のパターンに準じて配置されている。
【0025】
これにより、図2に示すように、光学素子(20)に設けられたパターン状の光学素子隠蔽層(14)側から、絵柄層(16)を観察する際に、例えば、垂直方向の観察位置(30A)から観察した場合には、画素A(15A)からなる画像が観察され、別の角度である観察位置(30B)から観察した場合には、画素B(15B)からなる画像が観察される。
【0026】
従って、観察する角度(30A、30B)の違いによって、それぞれ異なる画像を観察することが可能となる。
【0027】
ここで、画素A(15A)と画素B(15B)とは、必ずしも単一の色ドットである必要はなく、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(B)などの各色のドットが2つ以上組み合わされたものから形成されてあっても良い。
【0028】
また、図1では、絵柄部(16)と認証画像部(17)とが、分離された位置に設けられているが、これらは必ずしも分離されている必要はなく、互いが隣接されて設けられてあっても良く、更には認証画像部(17)の少なくとも一部が、絵柄部(16)として形成されてあっても何ら問題ない。
【0029】
また、図2に示すように、パターン状の光学素子隠蔽層(14)を介して、絵柄層(16)を観察する際には、光源が観察位置(30A、30B)と同じ側ではなく、対向する面側、すなわち絵柄層が設けられている側に設けられていることが望ましく、所謂透過画像として観察することが望ましい。
【0030】
これにより、各画素(15A、15B)の色彩を容易に認識することが可能となり、観察角度を変えて、特定の観察位置(30A)から別の観察位置(30B)に変化した際の画像の変化を認識しやすくすることができる。
【0031】
ここで、プラスチックシート1(11)とプラスチックシート2(12)の層間に内包される光学素子(20)は、一般的には、図3に示す光学素子箔(21)のようなロール状の転写箔として供給され、プラスチックシート1(11)あるいはプラスチックシート2(12)のいずれかに転写して、光学素子(20)を形成した後、プラスチックシート1(11)およびプラスチックシート2(12)をラミネート接着することによって形成される。
【0032】
この時、光学素子箔(21)の層構成を、例えば、図4に示すように例示することができる。
【0033】
図4に例示した光学素子箔(21)は、支持体(22)の一方の面上に、剥離層(23)、レリーフ構造形成層(24)、反射層(25)、マスク層(26)、接着層(27)が順次積層された構成となっている。
【0034】
反射層(25)は、パターン状に形成されており、光学素子隠蔽層(14)として機能するように設計されている。
【0035】
光学素子隠蔽層(14)は、必ずしも反射層(25)によって形成される必要はなく、例えば、反射層(25)として、光透過性を有する金属化合物などからなる誘電体薄膜を、レリーフ構造形成層(24)の凹凸構造を有する面側全面に設け、その上に、印刷法などによって、パターン状の光学素子隠蔽層(14)を設ける手法が取られてあっても何ら問題ない。
【0036】
上述のような光学素子箔(21)は、例えば、次のような工程で作製することができる。
【0037】
支持体(22)として、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリイミド、トリアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル樹脂などからなるプラスチックフィルムを用意し、支持体(22)の片面に、剥離層(23)やレリーフ構造形成層(24)用の塗布液を、グラビア法、リバースグラビア法、ロールコート法、ダイコート法などの従来公知のコーティング法を用いて塗布、乾燥して、剥離層(23)、レリーフ構造形成層(24)を得る。
【0038】
ここで、剥離層(23)は光学素子箔(21)から、光学素子(20)を転写する際に、支持体(22)からの剥離を容易にするためのもので、例えば、アクリル系樹脂、メラミン樹脂、塩化ゴム系樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂などを例示することができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0039】
また、これらの樹脂は、単独あるいは2種類以上の混合物や積層物などの複合物として用いられても良く、更には、必要に応じて、硬化剤、シリコーンオイル類や各種ワックス類などの滑剤、シリカやタルクなどのフィラー類などが添加されてあっても良い。
【0040】
レリーフ構造形成層(24)は、その表面に光学素子(20)として機能するための凹凸構造を形成する層であり、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、放射線硬化樹脂などを用いることができる。
【0041】
熱可塑性樹脂を用いる場合には、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂などや、これらの混合物、またはこれらの共重合体などを使用することができる。
【0042】
レリーフ構造形成層(24)として、熱硬化性樹脂を用いる場合には、例えば、アクリル系ポリオール樹脂やポリエステル系ポリオール樹脂などのポリオール系樹脂とイソシアネート化合物との架橋反応によって形成されるウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂などや、これらの混合物、またはこれらの共重合物を使用することができる。
【0043】
また、放射線硬化樹脂を用いる場合には、放射線硬化樹脂は、典型的には、重合性化合物と開始剤とを含んでいる。
【0044】
重合性化合物としては、例えば、光ラジカル重合が可能な化合物を使用する。具体的には、エチレン性不飽和結合またはエチレン性不飽和基を有したモノマー、オリゴマーまたはポリマーを使用することができる。あるいは光ラジカル重合が可能な化合物として、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエイスリトールペンタアクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のモノマー、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートおよびポリエステルアクリレート等のオリゴマー、またはウレタン変性アクリル樹脂およびエポキシ変性アクリル樹脂等のポリマーなどを使用してもよい。
【0045】
重合性化合物として光ラジカル重合が可能な化合物を使用する場合、開始剤としては、光ラジカル重合開始剤を使用することができる。
【0046】
この光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテルおよびベンゾインエチルエーテル等のベンゾイン系化合物、アントラキノンおよびメチルアントラキノン等のアントラキノン系化合物、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニ
ルケトン、α-アミノアセトフェノンおよび2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モリホリノプロパン-1-オン等のフェニルケトン系化合物、ベンジルジメチルケタール、チオキサントン、アシルホスフィンオキサイド、または、ミヒラーズケトンなどを使用することができる。
【0047】
あるいは、重合性化合物として、光カチオン重合が可能な化合物を使用してもよい。光カチオン重合が可能な化合物としては、例えば、エポキシ基を備えたモノマー、オリゴマーもしくはポリマー、キセタン骨格含有化合物、または、ビニルエーテル類を使用する。
【0048】
重合性化合物として光カチオン重合が可能な化合物を使用する場合、開始剤としては、光カチオン重合開始剤を使用する。この光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ホスホニウム塩または混合配位子金属塩を使用する。
【0049】
あるいは、重合性化合物として、光ラジカル重合が可能な化合物と光カチオン重合が可能な化合物との混合物を使用してもよい。
【0050】
この場合、開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤との混合物を使用する。あるいは、この場合、光ラジカル重合および光カチオン重合の双方の開始剤として機能しうる重合開始剤を使用してもよい。
【0051】
このような開始剤としては、例えば、芳香族ヨードニウム塩または芳香族スルホニウム塩を使用する。
【0052】
また、重合開始剤を使用しない例として、電子線照射により重合性化合物の重合反応を引き起こす方法を用いてもよい。
【0053】
前記放射線硬化樹脂は、増感色素、染料、顔料、重合禁止剤、レベリング剤、消泡剤、タレ止め剤、付着向上剤、塗面改質剤、可塑剤、含窒素化合物、エポキシ樹脂等の添加剤、離型剤またはこれらの組合せを更に含んでいてもよい。
【0054】
また、上述のような各種樹脂は、単独または混合物として用いることができ、例えば、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の組み合わせや、放射線硬化樹脂と熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の組み合わせなど、各種の混合物を用いることができる。
【0055】
このようにして得られたレリーフ構造形成層(24)に対し、凹凸構造を形成する際には、凹凸パターンを有するニッケルなどの金属からなるプレス版を加熱押圧することによって、凹凸構造を成形し、必要に応じて、紫外線や電子線などの放射線を照射して、プレス版を剥がすことにより、形成することができる。
【0056】
次いで、レリーフ構造形成層(24)の表面に、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、印刷あるいはコーティング法等の従来公知の手法を用いて、反射層(25)が設けられる。
【0057】
このような反射層(25)としては、例えば、Al、Sn、Cu、Au、Ag、Cr、Feなどの金属からなる薄膜、あるいはこれら金属薄膜を鱗片状にして、インキ化した高輝度インキ、更にはレリーフ構造形成層とは屈折率の異なる誘電体で、例えば、Sb、Fe、TiO、CdS、CeO、ZnS、PbCl、CdO、SbO、WO、SiO、Si、In、PbO、Ta、ZnO、Cd、Alなどの無機材料からなる透過性薄膜や、これら無機材料からなる透過性薄膜を複数の層に組み合
わせたもの、あるいは部分的設けた金属薄膜と透過性薄膜を組み合わせたものなどを用いることができる。
【0058】
その後、従来公知のオフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法などによって、任意のパターン状にマスク層(26)の印刷を施した後、エッチング加工を実施することにより、マスク層(26)が設けられた部分の金属薄膜を残して、他の部分を除去する事ができ、反射層(25)からなるパターン状の光学素子隠蔽層(14)を形成することができる。
【0059】
金属薄膜からなる反射層(25)をパターン状に設ける手法は、必ずしもこれらの手法に限定されるものではなく、反射層(25)を除去したい部分に予め水溶性インキを設け、水洗することにより、水溶性インキと共に、金属薄膜を除去する方法や、レリーフ構造形成層(13)に設けられる特殊なレリーフ構造と、金属薄膜層上に設けられる誘電体層との組合せなどにより、パターン状のエッチングを可能にする方法、更には、金属薄膜を鱗片状にして、インキ化した高輝度インキを直接パターン状に印刷する方法など、従来公知の手法を用いることができる。
【0060】
また、反射層(25)として、光透過性を有しレリーフ構造形成層(13)とは屈折率の異なる誘電体を用いる場合には、必ずしも反射層(25)をパターン状に形成する必要はなく、先に述べたように、反射層(25)上に、オフセット印刷法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法などの従来公知の印刷法を用いて、パターン状の光学素子隠蔽層(14)が形成されてあっても良い。
【0061】
但し、表示媒体(1)を絵柄部(16)からではなく、その裏面側から反射光による観察を実施した際の光学素子(20)の視認性や装飾性を考慮すると、反射層(25)を光学素子隠蔽層(14)とすることが望ましい。
【0062】
ここで、パターン状の光学素子隠蔽層(14)におけるパターンは、絵柄部(16)を形成する際に、各画素を前記パターンに準じて配置することができれば、任意のパターンとすることができるが、万線パターン状であることが望ましいと言える。
【0063】
光学素子隠蔽層(14)を万線パターン状に設けることにより、絵柄部(16)をサーマルヘッドのようなアレイ状の印字ヘッドを用いて絵柄部(16)を形成する場合であっても、各画素を光学素子隠蔽層(14)のパターンに準じて配置することが比較的容易とすることができる。
【0064】
万線パターンは、任意の方向に配向された万線パターンとすることができるが、光学素子隠蔽層(14)を設ける光学素子箔(21)は、その製造工程あるいは後加工工程において、巻き取りによる加工が行われ、各工程において、熱や巻取りテンション等の力が加えられるため、万線パターンのピッチ等で、変動やバラツキが発生することがある。
【0065】
そのため、光学素子箔(21)に設けられる光学素子隠蔽層(14)の万線パターンは、図3のように、光学素子箔(21)の搬送方向に対して、斜め方向に設けられていることが望ましく、具体的には、搬送方向に対して、40°~50°程度の傾きを有することが好ましく、より好ましくは、45°程度である。
【0066】
また、上述のようにして得られた万線パターンは、表示媒体(1)中に内包される際にも、表示媒体(1)に対して絵柄部(16)を形成するサーマルヘッドなどのライン状印字ヘッドの位置を印字媒体に対して走査する方向、すなわち副走査方向に対しても、上述のような角度関係となるように配置されることが望ましい。
【0067】
このように、万線パターンの方向を制御することにより、光学素子箔(21)加工時の万線パターンのピッチづれ量を低減すると共に、絵柄部(16)の画素(15A、15B)の配置を万線パターンに合わせ易くすることができる。
【0068】
接着層(27)は、表示媒体(1)を構成する実質的に光透過性を有するプラスチックシート(11または12)との接着性を有する材料であれば、いずれも用いることができ、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニルや酢酸ビニルなどのビニル系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、あるいはこれらの各種誘導体や共重合体などを例示することができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0069】
接着層に用いられる各種樹脂は、単独あるいは混合物などとして用いられてもよく、更には、シリカ、タルク、炭酸カルシウム等に例示されるフィラー類や、ワックス類などが添加されてあっても良い。
【0070】
また、光学素子(20)として、反射層(25)が設けられた領域よりも広い面積で、プラスチックシート(11,12)内に内包される場合には、接着層(27)の可視光屈折率とプラスチックシート(11,12)の可視光屈折率の差が、0.3以下であることが望ましく、更に望ましくは0.2以下であることが好ましい。
【0071】
このようにすることにより、光学素子(20)とプラスチックシート(11,12)との境界を視認し難くすることができ、たとえ光学素子(20)転写時に、光学素子(20)周縁部にバリ等が発生しても目立つことが無い。
【0072】
上述のようにして得られた光学素子(20)を内包し、認証画像部(17)等が設けられた表示媒体(1)例の平面図を図5に示した。
【0073】
図5では、光学素子隠蔽層(14)のパターンに準じて配置された画素(15A、15B)が設けられた潜像領域(40)が、認証画像部(41)の背景部分に設けられている例を示している。
【0074】
潜像領域(40)を有する絵柄部(16)は、必ずしも認証画像部(41)の背景部分に限定されるものではなく、認証画像部(41)とは分離された位置に設けられても良いし、また認証画像部(41)内に含まれてあっても良い。
【0075】
図5では、表示媒体(1)を絵柄部(16)が設けられた側から観察すると、潜像領域(40)は、特に模様等を有しないベタ柄の背景画像として認識され、更に少なくとも一部に光学素子(20)からなるセキュリティ柄が割り印のように重なったセキュリティ表示媒体として認識される。
【0076】
これに対し、絵柄部(16)が設けられた面とは反対側の面から、特定の観察位置(例えば、30A)から、光学素子隠蔽層(14)を介して、観察される潜像領域(40’)の例を図6に示した。
【0077】
図6では、特定の観察位置(例えば、30A)から、光学素子隠蔽層(14)を介して観察される潜像領域(40’)は、図2に示すように画素A(15A)によって形成された画像である1、2、3などの文字情報が観察されているが、観察される画像は、必ずしも文字情報に限定されるものではなく、任意の画像を表現することができる。
【0078】
また、別の観察位置(例えば、30B)から、光学素子隠蔽層(14)を介して観察される潜像領域(40’)では、画素B(15B)によって形成された画像が観察されることとなり、ベタ柄、あるいは図6で示したものとは別の画像を認識することが可能となる。
【0079】
認証画像部(41)の背景部分、あるいは認証画像部内に潜像領域(40)を設けることにより、表示媒体(1)を変造しようとする悪意ある第三者が、認証画像部(41)を取除こうとする際、認証画像部(41)とともに潜像領域(40)が取除かれる可能性を高めることができる。
【0080】
光学素子隠蔽層(14)に準じて配置された画素(15A、15B)が一旦取除かれると、真正の表示媒体と同じ状態にならない限り、光学素子隠蔽層(14)を介して観察される潜像領域(40’)の画像が再現されないため、表示媒体の変造防止効果を高めることができる。
【0081】
図7には、このような表示媒体(1)の具体的な構成例の断面図を示している。表示媒体(1)は、例えば、コアシート(51)の両面に、レーザ印字層(52)を設け、レーザ印字層(52)が設けられたコアシート(51)を2枚の透明シート(53)で挟み込んだ構成において、一方のレーザ印字層(52)と透明シート(53)の間に、光学素子(20)が設けられ、光学素子(20)と接している側の透明シート(53)とは、反対面側の透明シート(53)の表面に、プライマ層(54)を介して、絵柄部(16)が設けられた転写層(55)が配置された構成となっている。
【0082】
ここで、コアシート(51)や、透明シート(53)としては、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂、アクリル系樹脂、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂などからなるプラスチックシートを例示することができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0083】
また、レーザ印字層(52)としては、レーザ印字によって炭化するポリカーボネート樹脂や、上記コアシート(51)や透明シート(53)と同様の樹脂に対して、発色剤を混入したものなどを例示することができる。
【0084】
発色剤としては、レーザ光線を吸収し光熱変換による発熱によって有色になる金属酸化物等が好ましく用いられ、具体的には、コントラストの高い黒色系の酸化物を形成しうる金属として、銅、鉄、ニッケル、マンガン、チタン、鉛、クロム、コバルト、錫、タリウム、バナジウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、タンタル、タングステン、銀等を例示することができる。
【0085】
プライマ層(54)、ならびに転写層(55)については、後ほど、詳述する。
【0086】
また、図7では、媒体隠蔽層(18)が示されていないが、媒体隠蔽層(18)は、表示媒体(1)の2層以上のプラスチックシートのいずれかの層間、あるいは表面に設けることができるが、絵柄部(16)の潜像領域(40)とパターン状に設けられた光学素子隠蔽層(14)とが重なる領域においては、媒体隠蔽層(18)を設けないことが重要である。
【0087】
このような媒体隠蔽層(18)は、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、白鉛華などの白色顔料やカーボンに代表される有色顔料などを含む印刷層として設けられてあっても良く、また、例えば、コアシート(51)に上記顔料を添加して媒体隠蔽層(18)とし、局部的に潜像領域(40)と光学素子隠蔽層(14)とが重なる領域について、顔料が添加されていないコアシート(51)を設ける手法が用いられても何ら問題ない。
【0088】
上述のようにして得られる表示媒体(1)において、特定の観察位置(30A)と別の観察位置(30B)は、万線パターン状の光学素子隠蔽層(14)におけるライン幅(a)、スペース幅(b)や、絵柄部(16)と光学素子(20)との距離(h)、更には画素A(15A)、画素B(15B)の解像度などの相互関係によって、任意に設定することができる。
【0089】
具体的には、例えば、光学素子隠蔽層(14)の万線パターンにおいて、ピッチ(c)を270μm(a=150μm、b=120μm)とし、絵柄部(16)を印字するプリンタとして、600dpiのサーマルヘッドを用いて印字を行う場合には、絵柄部(16)と光学素子隠蔽層(14)との間の距離(h)が、100μm~400μmの範囲であれば、観察位置に応じて、少なくとも2種類の異なる画像を認識することが可能となる。
【0090】
(表示媒体の作製方法)
図8は、上述のような表示媒体を作製するための装置である印字装置(60)の例を示す概念図である。
【0091】
図8に示した印字装置(60)では、中間転写方式を例に示しており、転写層(55)が設けられた中間転写箔(61)、ならびに複数のインキ層が設けられた転写リボン(62)が巻取りで供給され、互いに対向配置され、サーマルヘッド(63)により、中間転写箔(61)の転写層(55)上に画像形成がなされた後、熱ローラ(65)を用いて、転写リボン(62)によって形成された画像を含む転写層(55)を被転写体(66)に転写するというものである。
【0092】
ここで、被転写体(66)は、先に図7において示した透明シート(53)/光学素子(20)/レーザ印字層(52)/コアシート(51)/レーザ印字層(52)/透明シート(53)の部分、あるいはプライマ層(54)までを含む部分などを例示することができる。
【0093】
中間転写箔(61)は、例えば、図9に示す構成のものを例示することができる。すなわち、中間転写箔基材(71)の片面に剥離性保護層(72)、中間層(73)、受像層(74)等からなる転写層(55)が設けられている。
【0094】
中間転写箔基材(71)は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリピロピレン、トリアセチルセルロースなど、従来公知の樹脂フィルムからなる基材を用いることができるが、取扱いの容易性やコストを考慮すると、ポリエチレンテレフタレートを好適に用いることができる。
【0095】
剥離性保護層(72)は、中間転写箔基材(71)からの加熱時剥離性や切れ性を有すると共に、被転写体(66)に転写された後、外部からの化学的、機械的破損を防止する機能を有することが望ましく、使用される材料としては、例えば、熱可塑性アクリル樹脂、メラミン樹脂、塩化ゴム系樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、セルロース系樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂などを例示することができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0096】
また、これらの樹脂は、単独あるいは2種類以上の混合物や積層物などの複合物として用いられても良く、更には、フッ素樹脂パウダー、ポリエチレンパウダー、動物系ワックス、植物系ワックス、鉱物系ワックス、石油系ワックス等の天然ワックス、合成炭化水素
系ワックス、脂肪族アルコールと酸系ワックス、アミン及びアマイド系ワックス、塩素化炭化水素系ワックス、合成動物ロウ系ワックス、アルファーオレフィン系ワックス等の合成ワックス、及び、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸の金属塩などの耐摩擦剤や、無機物などが添加されてあっても良い。
【0097】
中間層(73)は、必ずしも設けられている必要はないが、用途等に応じて、任意に設けることができ、例えば、ホログラムや回折格子などによるセキュリティ画像を有するOVD(Optical Variable Device)層として設けられてあっても良い。
【0098】
OVD層が用いられる場合には、感光性ポリマー等からなる層内の屈折率変化によって画像形成を行う所謂体積型ホログラムや、レリーフ構造形成層および反射層からなるレリーフ構造体などを例示することができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0099】
受像層(74)に用いられる材料としては、例えば、線状飽和ポリエステル等のポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニルや塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂等の塩化ビニル系樹脂、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸-2-メトキシエチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸-2-ナフチル、ポリアクリル酸イソボルニル、ポリメタクリロメチル、ポリアクリロニトリル、ポリメチルクロロアクリレート、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸-tert-ブチル、ポリメタクリル酸イソブチル、ポリメタクリル酸フェニル、メタクリル酸メチルとメタクリル酸アルキル(但し、アルキル基の炭素数は2~6)の共重合樹脂等のアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリジビニルベンゼン、ポリビニルベンゼン、スチレン-ブタジエン共重合樹脂、スチレンとメタクリル酸アルキル(但し、アルキル基の炭素数は2~6)等のビニル系樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などを例示することができるが、これらに限定されるものではない。また、このような樹脂は、単独あるいは2種以上の混合物として用いることが出来る。
【0100】
また、受像層(74)には、紫外線吸収剤や、フィラー類などの各種添加剤が添加されてあっても何ら問題ない。
【0101】
図10は、転写リボン(62)の例を示す平面図である。転写リボン(62)は、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリイミドなどのフィルムからなる転写リボン基材上に、イエローインキ層(Y)、マゼンタインキ層(M)、シアンインキ層(C)などの各色インキ層が面順次に設けられている。図10では、3色のみのインキ層が示されているが、必要に応じて、黒色インキ層や蛍光インキ層などが、更に設けられてあっても良い。
【0102】
また、被転写体(66)側に、プライマ層(54)が設けられていない場合には、転写リボン(62)に、プライマインキ層が設けられてあっても良い。
【0103】
各色インキ層は、色材、バインダ樹脂を少なくとも含むインキ組成物からなる。色材は従来公知の染料あるいは顔料をいずれも用いることができるが、インキ層を用いて形成される画像の耐久性等を考慮すると顔料を好適に用いることができる。
【0104】
バインダ樹脂としては、熱可塑性樹脂であれば、いずれも用いることができるが、例えば、ブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニルや酢酸ビニルなどのビニル系樹脂等を挙げることができ、これらの樹脂は単独あるいは2種以上の混合物として使用することができる。
【0105】
また、各色インキ層には、必要に応じて、分散剤、レベリング剤、粘度調整剤などが添
加されてあっても何ら問題ない。
【0106】
また、プライマ層(54)としては、熱可塑性樹脂を好適に用いることができ、例えば、ブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニルや酢酸ビニルなどのビニル系樹脂、ウレタン樹脂、アクリル-エチレン共重合体等を用いることができ、これらの樹脂は、単独で用いられてもよいし、2種以上の混合物として用いられても良い。
【0107】
また、プライマ層(54)には、シリカやタルクなどのフィラー類が添加されてあっても良いが、その添加量は、表示媒体(1)の光透過性を損なわない範囲であることが望ましい。
【0108】
このようなプライマ層(54)は、予め被転写体(66)に塗布されて設けられてあっても良い。
【0109】
上述のようにして得られた転写リボン(62)と中間転写箔(61)は、互いの機能層すなわち、各色インキ層(Y、M、C)と受像層(74)とが対向配置され、サーマルヘッド(63)を用いて印字することにより、絵柄部(16)や認証画像部(17)が形成される。
【0110】
ここでは、中間転写方式を例として示したが、各色インキ層を直接被転写体に転写する直接転写方式が採用されてあっても何ら問題ない。その場合には、転写リボン(62)に転写性保護層を設けることが望ましい。
【0111】
絵柄部(16)を形成する際には、印字装置(60)において、絵柄を印字するための複数の画素の位置を示す印字情報を、前記複数の画素の一部を隠蔽する前記光学素子隠蔽層のパターン位置に準じて生成する工程と、前記印字情報に基づいて、印字対象の表面に前記複数の画素を形成する工程と、前記複数の画素の一部が前記光学素子隠蔽層のパターンによって隠蔽された表示媒体を、前記光学素子隠蔽層と前記画素との重ね合わせによって製造する工程とを含み、前記印字情報を生成することが、前記光学素子側からの観察において、前記複数の画素のみが表示する画像とは異なり、かつ観察角度によって、少なくとも2つの異なる画像が表示可能となるように、前記光学素子隠蔽層のパターンの位置に準じて、前記画素の位置に関する情報を生成する工程などの各工程を経ることが重要である。
【0112】
図8図11を参照しながら各工程を説明する。印字装置(60)は、情報生成部、形成部および転写部を備えている。情報生成部は、複数の画素(例えば、15A、15B)の位置を示す印字情報を、光学素子隠蔽層(14)のパターンの位置に準じて生成する。
【0113】
形成部において、印字情報に基づいて印字対象の表面に複数の画素(15A、15B)を印字し、潜像領域(40)を形成した後、転写部において複数の画素(15A、15B)が、光学素子隠蔽層(14)を介して観察した時に、観察する位置に応じて、見え隠れされるように光学素子隠蔽層(14)と潜像領域(40)とを重ね合わせる。
【0114】
具体的には、印字装置(60)は、中間転写箔搬送部(61A)、転写リボン搬送部(62A)、サーマルヘッド(63)、熱ローラ(65)を備えている。
【0115】
情報生成部(81)において生成された印字情報により各画素(15A、15B)の印字位置が決定されると、転写箔搬送制御部(83)により中間転写箔搬送部(61A)において中間転写箔巻出部(61Aa)から中間転写箔(61)の印字開始位置がサーマル
ヘッド(63)の位置まで巻きだされ、印字されるべき画素(15A、または15B)に応じて、リボン搬送制御部(84)により転写リボン搬送部(62A)において転写リボン(62)が所定の位置まで巻きだされる。
【0116】
ついで、サーマルヘッド(63)によって、転写リボン(62)に設けられた色インキ層毎に、生成された印字情報に基づいて、印字が行われる。
【0117】
この際、中間転写箔(61)は、印字される色インキ毎に、印字開始位置まで巻き戻しが実施され、所望の位置に各画素(15A、15B)が形成される。
【0118】
各画素(15A、15B)が形成された中間転写箔(61)は、光学素子隠蔽層(14)を備えた被転写体(66)に対し、複数の画素(15A、15B)からなる潜像領域(40)と、光学素子隠蔽層(14)とが重ね合わせられるべき位置まで搬送され、熱ローラ(65)によって、転写が実施される。
【0119】
この時、観察する位置に応じて、観察されたり観察されなかったりする複数の画素は、少なくとも2色以上の画素から構成されていることが望ましい。
【0120】
これにより、表示媒体(1)に形成されている絵柄部(16)を、光学素子隠蔽層(14)を介して観察した際に、観察する位置に応じて、異なる色彩からなる像を認識することが可能となる。
【0121】
印字装置(60)は、必要に応じて任意のセンサーを設けることができ、また中間転写箔(61)、転写リボン(62)には、従来公知のセンサーマークを設けることができる。
【0122】
また、複数の画素(例えば、15A、15B)は、必ずしも感熱転写方式によって形成されたものである必要はなく、例えば、レーザ印字層(52)に対してレーザ光を照射して発色させるレーザエングレービング方式によって形成されたものであっても良い。
【0123】
表示媒体(1)中におけるレーザ印字層(52)を設ける位置は、2層以上のプラスチックシートのいずれの層に設けられてあっても良いが、最表面以外の層として設けることにより、表示媒体(1)を改ざんしようとする悪意ある第三者に対して、改ざんを困難なものとすることができる。
【0124】
すなわち、例えば、図7に示すように、コアシート(51)と透明シート(53)との間に設けることにより、レーザ印字によって形成された複数の画素(例えば、15A、15B)を除去して、新たな画素形成しようとした場合、表示媒体(1)自体を破壊してレーザ印字層(52)を取除く必要があるためである。
【0125】
上述のようにして作製された表示媒体(1)は、認証画像部(17)や絵柄部(16)が設けられた面側からの観察では、一般的な画像が形成された表示媒体としてのみ認識されるが、光学素子(20)に設けられた光学素子隠蔽層(14)を介して、絵柄部(16)中の潜像領域(40)を観察すると、観察する位置に応じて、少なくとも2つの異なる画像を認識することが可能な極めて偽造防止効果の高い表示媒体とすることができる。
【符号の説明】
【0126】
1 … 表示媒体
11 … プラスチックシート1
12 … プラスチックシート2
13 … レリーフ構造形成層
14 … 光学素子隠蔽層
15A… 画素A
15B… 画素B
16 … 絵柄部
17 … 認証画像部
18 … 媒体隠蔽層
20 … 光学素子
21 … 光学素子箔
22 … 支持体
23 … 剥離層
24 … レリーフ構造形成層
25 … 反射層
26 … マスク層
27 … 接着層
30A、30B… 観察位置
40 … 潜像領域
40’… 光学素子隠蔽層を介して観察される潜像領域
41 … 認証画像部
42 … 文字情報部
51 … コアシート
52 … レーザ印字層
53 … 透明シート
54 … プライマ層
55 … 転写層
60 … 印字装置
61 … 中間転写箔
61A… 中間転写箔搬送部
61Aa… 中間転写箔巻出部
61Ab… 中間転写箔巻取部
62 … 転写リボン
62A… 転写リボン搬送部
62Aa… 転写リボン巻出部
62Ab… 転写リボン巻取部
63 … サーマルヘッド
64 … プラテンローラ
65 … 熱ローラ
66 … 被転写体
71 … 中間転写箔基材
72 … 剥離性保護層
73 … 中間層
74 … 受像層
80 … 制御部
81 … 情報生成部
82 … 形成制御部
83 … 転写箔搬送制御部
84 … リボン搬送制御部
85 … 転写制御部
86 … 記憶部
a … ライン幅
b … スペース幅
c … 万線ピッチ
h … 絵柄部と光学素子隠蔽部との距離
Y … イエローインキ層
M … マゼンタインキ層
C … シアンインキ層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11