(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/01 20060101AFI20220621BHJP
B60C 13/00 20060101ALI20220621BHJP
B29D 30/06 20060101ALI20220621BHJP
B29C 33/02 20060101ALI20220621BHJP
B29C 35/02 20060101ALI20220621BHJP
B29K 21/00 20060101ALN20220621BHJP
B29K 105/24 20060101ALN20220621BHJP
B29L 30/00 20060101ALN20220621BHJP
【FI】
B60C11/01 A
B60C13/00 D
B29D30/06
B29C33/02
B29C35/02
B29K21:00
B29K105:24
B29L30:00
(21)【出願番号】P 2018037221
(22)【出願日】2018-03-02
【審査請求日】2021-01-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野津 良司
【審査官】弘實 由美子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭52-129104(JP,A)
【文献】特開2014-019310(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0041939(US,A1)
【文献】特開2018-114811(JP,A)
【文献】特開平08-216620(JP,A)
【文献】特開2016-198999(JP,A)
【文献】特開2007-050825(JP,A)
【文献】特開2003-211915(JP,A)
【文献】特開2006-256433(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0006462(KR,A)
【文献】特開2007-022367(JP,A)
【文献】特開2014-076769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
B29D 30/00-30/72
B29C 33/02
B29C 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
そのサイド面のトレッド端から最大幅位置の間に位置する突起部を備え、
上記突起部が、その外側面を周方向に貫通する
1本のみの溝を備え
、
上記溝の深さが、上記突起部の厚みの15%以上30%以下であるタイヤ。
【請求項2】
そのサイド面のトレッド端から最大幅位置の間に位置する突起部を備え、
上記突起部が、その外側面を周方向に貫通する溝を備え、
上記タイヤが、第一部と第二部とを備えこれらの分割線が周方向に延び上記サイド面と当接するモールドで形成されており、
上記溝が、上記分割線に対応するサイド面上の仮想線と重なる
、タイヤ。
【請求項3】
上記溝の深さが、上記突起部の厚みの15%以上30%以下である請求項
2に記載のタイヤ。
【請求項4】
上記溝が、半径方向において、このタイヤの外側端からの距離がこのタイヤの断面高さH1の15%から45%までの領域に位置している請求項1
から3のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項5】
上記溝の幅が1.5mm以上3.0mm以下である請求項1
から4のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項6】
半径方向において、上記突起部の、上記溝より内側の部分の幅Wiの、上記溝より外側の部分の幅Woに対する比(Wi/Wo)が、1.5以上2.5以下である請求項1から
5のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項7】
上記突起部の、上記溝より半径方向内側の部分の厚みTiの、上記溝より半径方向外側の部分の厚みToに対する比(Ti/To)が、0.95以上1.05以下である請求項1から
6のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項8】
上記突起部が外側面に小突起を備える、請求項1から7のいずれかに記載のタイヤ。
【請求項9】
そのサイド面に突起部を備えるタイヤを製造する方法であって、
(1)上記タイヤのローカバーを形成する工程
及び
(2)上記ローカバーを加硫する工程
を含み、
上記(2)の工程では、上記サイド面と当接する第一部と第二部とを備え、これらの分割線が周方向に延び、上記突起部の外側面に周方向に延びる溝を形成するための周方向に延びる突条を備え、上記分割線がこの突条と重なっているモールドにおいて、上記ローカバーが加圧及び加熱されるタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのサイド面には、縁石等の障害物と衝突することや石が当たることがある。これらによる損傷を防止するため、タイヤのサイド面を構成するサイドウォールは、対カット性に優れた架橋ゴムからなる。
【0003】
対カット性をより向上させるため、サイド面のトレッド端から最大幅位置の間に突起が設けられることがある。突起は、サイド面から突出している。突起が障害物等と接触することで、サイド面が保護される。さらにこの突起は、タイヤの外観に寄与する。この突起は、タイヤの外観に力強さを与える。サイド面に突起を備えたタイヤについての検討が、特開2012-6499公報で報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
突起を大きくすることで、より良好な耐カット性が実現される。大きな突起は、力強い外観に寄与しうる。サイド面のトレッド端から最大幅位置の間は、タイヤが転動したときの変形が大きい。突起を大きくするほど、突起の外側面の歪みが大きくなる。良好な耐カット性及び外観に貢献しつつ、この歪みによる損傷が防止された突起が求められている。
【0006】
本発明の目的は、良好な耐カット性及び外観、並びに損傷の防止が達成されたタイヤの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るタイヤは、そのサイド面のトレッド端から最大幅位置の間に位置する突起部を備える。上記突起部は、その外側面を周方向に貫通する溝を備える。
【0008】
好ましくは、上記溝は、半径方向において、このタイヤの外側端からの距離がこのタイヤの断面高さH1の15%から45%までの領域に位置している。
【0009】
好ましくは、上記溝の幅は1.5mm以上3.0mm以下である。
【0010】
好ましくは、上記溝の深さは、上記突起部の厚みの15%以上30%以下である。
【0011】
好ましくは、半径方向において、上記突起部の、上記溝より内側の部分の幅Wiの、上記溝より外側の部分の幅Woに対する比(Wi/Wo)は、1.5以上2.5以下である。
【0012】
好ましくは、上記突起部の、上記溝より半径方向内側の部分の厚みTiの、上記溝より半径方向外側の部分の厚みToに対する比(Ti/To)は、0.95以上1.05以下である。
【0013】
好ましくは、上記タイヤは、第一部と第二部とを備えこれらの分割線が周方向に延び上記サイド面と当接するモールドで形成されており、上記溝は、上記分割線に対応するサイド面上の仮想線と重なる。
【0014】
本発明は、そのサイド面に突起部を備えるタイヤを製造する方法に関する。この方法は、(1)上記タイヤのローカバーを形成する工程及び(2)上記ローカバーを加硫する工程を含む。上記(2)の工程では、上記サイド面と当接する第一部と第二部とを備え、これらの分割線が周方向に延び、上記突起部の外側面に周方向に延びる溝を形成するための周方向に延びる突条を備え、上記分割線がこの突条と重なっているモールドにおいて、上記ローカバーが加圧及び加熱される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るタイヤでは、サイド面の、トレッド端と最大幅位置との間に、突起部が位置している。この突起部は、外側面に、周方向に貫通する溝を備える。この溝は、突起部の外側面の歪みを効果的に低減する。このタイヤでは、突起部を大きくしても、突起部の外側面が、損傷の基点となることが防止されている。大きな突起部は、良好な耐カット性及び外観に寄与する。このタイヤでは、良好な耐カット性及び外観を実現しつつ、損傷が防止されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤの一部が示された断面の輪郭である。
【
図2】
図2は、
図1のタイヤの外面の一部が示された斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1のタイヤの製造に使用されるモールドの一例が示された平面図である。
【
図6】
図6は、
図5のモールドの一部が示された拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0018】
図1には、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ2が示されている。この図には、タイヤ2の周方向に垂直な断面の輪郭が示されている。
図1において、上下方向がタイヤ2の半径方向であり、左右方向がタイヤ2の軸方向であり、紙面との垂直方向がタイヤ2の周方向である。
図1において、一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表わす。実線BBLはビードベースラインを表している。このビードベースラインBBLは、タイヤ2が装着されるリムのリム径(JATMA参照)を規定する線に相当する。
【0019】
図2は、このタイヤ2のトレッド面4の一部及びサイド面6の一部が示された斜視図である。サイド面6とは、タイヤ2の外面のうち軸方向から目視されうる領域を意味する。
図2において、両矢印Aで示されるのがタイヤ2の周方向であり、矢印Xで示されるのがタイヤ2の半径方向である。
図1は、
図2のI線の位置において、タイヤ2を周方向に垂直な面で切ったときの、タイヤ2の断面の輪郭である。
【0020】
図1では詳細は省略されているが、このタイヤ2は、トレッド8、サイドウォール10、クリンチ12、ビード、カーカス、ベルト及びインナーライナーを備えている。トレッド面4は、トレッド8の外面で構成される。サイド面6は、主にサイドウォール10の外面で構成される。クリンチ12及びトレッド8の外面の一部もサイド面6を構成する。このタイヤ2は、チューブレスタイプである。このタイヤ2は、乗用車に装着される。
【0021】
図2で示されるように、トレッド面4には溝14が刻まれている。溝14は湾曲しながら、軸方向及び周方向に延びている。トレッド8の、この溝14に囲まれた部分は、ブロック16と称される。このトレッド8は、多数のブロック16を有している。
図1で符号TEはトレッド端を表す。トレッド端TEは、溝14がないとしたときの仮想のトレッド面4の、軸方向外側端である。
【0022】
図1において、符号PWは、サイド面6上の位置を表す。位置PWにおいて、このタイヤ2は、その軸方向幅が最大となる。位置PWは、最大幅位置である。
【0023】
図1及び2に示されるように、このタイヤ2は、サイド面6に突起部18を備える。突起部18は、トレッド端TEと、最大幅位置PWとの間に位置している。
図2で示されるように、複数の突起部18が、周方向に並べられている。
図2で示されるように、突起部18は、その外側面に小突起20を備えている。隣接する突起部18の間には、テーパー状の隆起部22が存在している。なお、
図1ではこの小突起20は省略されている。
【0024】
図3には、
図1の突起部18が拡大されて示されている。
図3で示されるように、半径方向において、突起部18の外側端部分は、外側に向けて厚みが小さくなる。この部分は、突起部18の外裾24と称される。突起部18の内側端部分は、内側に向けて厚みが小さくなる。この部分は、突起部18の内裾26と称される。外裾24と内裾26に挟まれた部分が、突起部18の本体28である。換言すれば、突起部18は、本体28と、外裾24と、内裾26とを備える。
【0025】
図3で示されるように、突起部18は、外側面27に溝29を備えている。
図2で示されるように、溝29は、周方向に延びている。溝29は、突起部18の周方向の一方の端から他方の端まで延びている。溝29は、外側面27を周方向に貫通している。
図3において、二点鎖線は、この突起部18がないとしたとのサイド面6を表す。
【0026】
このタイヤ2の製造方法は、ローカバーを形成する工程及びローカバーを加硫する工程を含む。ローカバーを形成する工程では、タイヤ2の構成部材が組み合わされて、ローカバーが形成される。ローカバーを加硫する工程では、このローカバーがモールド内で加硫される。
【0027】
図4及び5に、このモールド30の一例が示されている。
図4は、このモールド30の平面図である。
図4において、紙面に対して垂直な方向が軸方向であり、両矢印Aで示された方向が周方向である。
図5は、
図4のV-V線に沿った断面図である。
図5において、矢印Xで示された方向が半径方向であり、矢印Yで示された方向が軸方向であり、紙面と垂直な方向が周方向である。
図5には、このモールド30に入れられたローカバーRも示されている。
【0028】
図4及び5に示されるとおり、このモールド30は、複数のセグメント32と、一対のサイドプレート34と、一対のビードリング36とを備えている。これらは、モールド30の構成要素と称される。
図4に示される通り、セグメント32の平面形状は、実質的に円弧状である。複数のセグメント32が、リング状に配置されている。サイドプレート34及びビードリング36は、実質的にリング状である。
【0029】
図5では、モールド30は閉じられている。この状態において、セグメント32の内面、サイドプレート34の内面及びビードリング36の内面が組み合わされ、キャビティ面が構成される。キャビティ面は、ローカバーRと当接して、タイヤ2の外面を形成する。キャビティ面における、隣接する構成要素間の境界は、分割線と称される。
【0030】
図5で示されるように、ローカバーRのトレッド面38は、セグメント32の内面と当接する。図示されないが、セグメント32の内面には、トレッド面4の溝29に対応する山が設けられている。ローカバーRのサイド面40は、セグメント32の内面及びサイドプレート34の内面と当接する。ローカバーRのサイド面40の半径外側部分は、セグメント32の内面と当接する。ローカバーRのサイド面40の半径内側部分は、サイドプレート34の内面と当接する。セグメント32とサイドプレート34との分割線42は、サイド面40と当接している。
【0031】
図6は、
図5のセグメント32とサイドプレート34との分割線42の近辺が拡大された図である。図で示されるとおり、ローカバーRのサイド面40の突起部44は、セグメント32の内面及びサイドプレート34の内面と当接している。突起部44は、セグメント32とサイドプレート34との分割線42と当接している。セグメント32の内面及びサイドプレート34の内面には、タイヤ2の突起部18を形成するための窪み46が設けられている。この窪み46の底には、突起部18の外側面27の溝29を形成するための突条48が設けられている。この突条48は、周方向に延びる。このモールド30では、この突条48は、セグメント32とサイドプレート34との分割線42と重なっている。
【0032】
このモールド30に入れられたローカバーRは、このモールド30内で加圧及び加熱される。加圧及び加熱により、ローカバーRのゴム組成物が流動する。加熱によりゴムが架橋反応を起こし、タイヤ2が得られる。
【0033】
上記のとおり、タイヤ2の突起部18の溝29を形成するためのモールド30の突条48は、セグメント32とサイドプレート34との分割線42と重なっている。換言すれば、このモールド30を使用して得られたタイヤ2において、この分割線42に対応するサイド面6上の仮想線がVLとされたとき、突起部18の溝29は、この仮想線VLと重なっている。
【0034】
このタイヤ2を製造するためのモールド30は、
図4及び5に示される構成のモールド30に限られない。タイヤ2のサイド面6と当接する第一部と第二部とを備え、これらの分割線が周方向に延びており、突起部18に溝29を形成するための周方向に延びる突条を備えており、分割線がこの突条と重なっているモールドであればよい。
図4及び5のモールド30では、セグメント32がこの第一部に対応し、サイドプレート34がこの第二部に対応する。
【0035】
以下、本発明の作用効果が説明される。
【0036】
本発明に係るタイヤ2では、サイド面6の、トレッド端TEと最大幅位置PWとの間に、突起部18が位置している。トレッド端TEと最大幅位置PWとの間に位置する突起部18は、サイド面6の保護に寄与する。この突起部18は、タイヤ2の外観に寄与する。
【0037】
このタイヤ2では、突起部18は、外側面27に、周方向に貫通する溝29を備える。この溝29は、サイド面6が変形したときの、突起部18の外側面27の歪みを効果的に低減する。このタイヤ2では、突起部18を大きくしても、突起部18の外側面27が、損傷の基点となることが防止されている。大きな突起部18は、サイド面6を効果的に保護する。大きな突起部18は、力強い外観に効果的に寄与しうる。このタイヤ2では、良好な耐カット性及び外観を実現しつつ、損傷が防止されている。
【0038】
図1において、両矢印H1は、このタイヤ2の断面高さを表す。直線L15は、半径方向において、このタイヤ2の外側端からの距離が高さH1の15%である軸方向に延びる直線である。直線L45は、半径方向において、このタイヤ2の外側端からの距離が高さH1の45%である軸方向に延びる直線である。このタイヤでは、溝29は、直線L15と直線L45との間の領域に位置するのが好ましい。直線L15と直線L45との間の領域は、タイヤ2が転動したときに、変形が大きい。この部分に位置する突起部18の外側面27の歪みは、大きくなり易い。この部分に溝29を設けることで、この溝29は突起部18の外側面27の歪みを効果的に低減する。このタイヤ2では、突起部18の外側面27が、損傷の基点となることが防止されている。
【0039】
このタイヤ2では、内裾26及び外裾24を含む突起部18の全体が、直線L15と直線L45との間の領域に位置するのが好ましい。この領域に位置する突起部18は、サイド面6の保護に効果的に寄与する。この領域に位置する突起部18は、目立ちやすい。この突起部18は、タイヤ2の外観に効果的に寄与する。
【0040】
タイヤ2は、モールド30内で加圧及び加熱される。このとき、モールド30の隣接する構成要素間で、位置ずれが起こることがある。例えば
図5のモールド30のセグメント32が、サイドプレート34に対して、所定の位置から数ミリずれることが起こりうる。
図5のモールド30で示されるように、一般にモールドの分割線は、ローカバーのサイド面と当接する。分割線は、サイド面上の突起部と当接することが起こりうる。この分割線を構成するモールドの構成要素間の位置ずれは、タイヤの突起部の形状の歪みの要因となる。サイド面上の突起部は、目立ちやすい。これは、タイヤの外観に特に影響を及ぼす。モールドの構成要素間の位置ずれによる、タイヤの外観への影響を抑えることが重要となる。
【0041】
このタイヤ2では、突起部18の溝29は、セグメント32とサイドプレート34との分割線42に対応するサイド面6上の仮想線VLと重なっている。セグメント32とサイドプレート34との間に位置ずれが発生した場合でも、突起部18の形状の歪みは目立ちにくい。このタイヤ2では、モールド30の構成要素間の位置ずれによる、外観への影響が抑えられている。このタイヤ2では、優れた外観が実現されている。
【0042】
図3において、直線Lgは、溝29の開口の半径方向の両端を結ぶ仮想線である。両矢印GDは、溝29の深さを表す。深さGDは、直線Lgから溝29の底までの距離である。両矢印Tは、突起部18の厚みを表す。厚みTは、溝29の位置で計測される。詳細には、厚みTは、直線Lgの中央から引いた直線Lgの垂線に沿って計測した、直線Lgから、突起部18がないとしたときのサイド面6までの距離である。なお、厚みTは、突起部18の外側面27上の小突起20は存在しないとして計測される。
【0043】
深さGDの厚みTに対する比(GD/T)は、15%以上が好ましい。比(GD/T)を15%以上とすることで、この溝29は、突起部18の外側面27の歪みを効果的に低減する。比(GD/T)を15%以上とすることで、サイド部が変形したときの溝29底での歪みが抑えられている。このタイヤ2では、突起部18の外側面27及び溝29底が、損傷の基点となることが防止されている。この観点から比(GD/T)は、20%以上がより好ましい。比(GD/T)は、30%以下が好ましい。比(GD/T)を30%以下とすることで、この突起部18は、十分な耐カット性を有する。障害物等が衝突したときの突起部18の損傷が抑えられている。この観点から比(GD/T)は、25%以下がより好ましい。
【0044】
図3おいて、両矢印GWは、溝29の幅を表す。幅GWは、直線Lgの長さである。幅GWは、1.5mm以上が好ましい。幅GWを1.5mm以上とすることで、この溝29は、突起部18の外側面27の歪みを効果的に低減する。幅GWを1.5mm以上とすることで、サイド部が変形したときの溝29底での歪みが抑えられている。突起部18の外側面27及び溝29底が、損傷の基点となることが防止されている。この観点から、幅GWは1.8mm以上がより好ましい。幅GWは3.0mm以下が好ましい。幅GWを3.0mm以下とすることで、この突起部18は、十分な耐カット性を有する。障害物等が衝突したときの突起部18の損傷が抑えられている。さらに、幅GWを3.0mm以下とすることで、この突起部18のデザイン上の一体感が維持されている。このタイヤ2は外観に優れる。これらの観点から、幅GWは2.5mm以下がより好ましい。
【0045】
厚みTは、4.0mm以上が好ましい。厚みTを4.0mm以上とすることで、この突起部18は、サイド面6の保護に効果的に寄与する。このタイヤ2は、耐カット性に優れる。さらにこの突起部18は、目立ちやすい。この突起部18は、タイヤ2の外観に効果的に寄与する。これらの観点から、厚みTは5.0mm以上がより好ましい。厚みTは、8.0mm以下が好ましい。厚みTを8.0mm以下とすることで、この突起部18によるタイヤ2質量への影響が抑えられている。この観点から、厚みTは7.0mm以下がより好ましい。
【0046】
突起部18の本体28の、溝29から半径方向内側の部分は、内側本体28aと称される。突起部18の本体28の、溝29から半径方向外側の部分は、外側本体28bと称される。
図3において、両矢印Wiは、内側本体28aの幅を表す。この幅は本体28の外側面27に沿って計測される。両矢印Woは、外側本体28bの幅を表す。この幅は本体28の外側面27に沿って計測される。
【0047】
幅Wiの幅Woに対する比(Wi/Wo)は、1.5以上が好ましい。サイド面6の半径方向外側の部分は、タイヤ2の転動時の変形が大きい。外側本体28bでは、内側本体28aよりも歪みが大きくなり易い。比(Wi/Wo)を1.5以上とすることで、外側本体28bが小さくされる。これは、外側本体28bの外側面27の歪みを効果的に低減する。このタイヤ2では、外側本体28bの外側面27が、損傷の基点となることが防止されている。比(Wi/Wo)は、2.5以下が好ましい。比(Wi/Wo)を2.5以下とすることで、内側本体28aの大きさが適正に抑えられる。これは、内側本体28aの外側面27の歪みを効果的に低減する。このタイヤ2では、内側本体28aの外側面27が、損傷の基点となることが防止されている。
【0048】
図3において、両矢印Tiは、内側本体28aの厚みを表す。厚みTiは、内側本体28aの幅方向の中央で計測される。厚みTiは、突起部18の外側面27上の小突起20が存在しないものとして計測される。両矢印Toは、外側本体28bの厚みを表す。厚みToは、外側本体28bの幅方向の中央で計測される。厚みTiの厚みToに対する比(Ti/To)は、0.95以上1.05以下が好ましい。比(Ti/To)を0.95以上1.05以下とすることで、内側本体28a及び外側本体28bの歪みの差が大きくなることが防止される。このタイヤ2では、突起部18の外側面27が、損傷の基点となることが防止されている。
【0049】
図3において、両矢印Wは、本体28の幅を表す。この幅は本体28の外側面27に沿って計測される。幅Wの断面高さH1に対する比(W/H1)は、10%以上が好ましい。比(W/H1)を10%以上とすることで、この突起部18は、サイド面6の保護に効果的に寄与する。このタイヤ2は、耐カット性に優れる。さらにこの突起部18は、目立ちやすい。この突起部18は、タイヤ2の外観に効果的に寄与する。比(W/H1)は、25%以下が好ましい。比(W/H1)を25%以下とすることで、この突起部18の外側面27での歪みが、効果的に抑えられている。
【0050】
本発明では、タイヤ2の各部材の寸法及び角度は、タイヤ2が正規リムに組み込まれ、正規内圧となるようにタイヤ2に空気が充填された状態で測定される。測定時には、タイヤ2には荷重がかけられない。本明細書において正規リムとは、タイヤ2が依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。本明細書において正規内圧とは、タイヤ2が依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITSAT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【実施例】
【0051】
以下、実施例によって本発明の効果が明らかにされるが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるべきではない。
【0052】
[実施例1]
図1に示されたタイヤを製作した。このタイヤのサイズは、285/70R17とされた。このタイヤのサイド面に設けられた突起部の諸元が、表1に示されている。このタイヤの製造には、
図4-6で示されたモールドが使用された。このモールドのセグメントとサイドプレートのとの分割線に対応するサイド面上の仮想線は、この溝と重なっている。比(W/H1)は15%とされ、厚みTは6mmとされた。
【0053】
[比較例1]
突起部が溝を有しないことの他は実施例1と同様にして、比較例1のタイヤを得た。突起部は溝を有しないため、分割線に対応するサイド面上の仮想線は、溝とは重なっていない。
【0054】
[実施例2-3]
比(GD/T)を表1に示された値とした他は実施例1と同様にして、実施例2-3のタイヤを得た。
【0055】
[実施例4-5]
溝の幅GWを表1に示された値とした他は実施例1と同様にして、実施例4-5のタイヤを得た。
【0056】
[外側面歪み]
タイヤを正規リム(サイズ=7.5J)に組み込み、正規内圧となるように空気が充填された。このタイヤに、JATMAにて規定される最大負荷荷重に相当する縦荷重を負荷した。実施例及び比較例のタイヤそれぞれについて、全ての突起部の外側面の幅の変動値が測定され、その最大値が求められた。実施例のタイヤにおいては、外側本体の外側面の幅の変動値と、内側本体の外側面の幅の変動値との合計が、突起部の外側面の幅の変動値とされた。比較例1のタイヤについては、本体の外側面の幅の変動値が、突起部の外側面の幅の変動値とされた。これらの最大値の逆数に基づいて、外側面歪みが評価された。この結果が比較例1を100とした指数で表1に示されている。数値が大きいほど、好ましい。
【0057】
[溝底歪み]
タイヤを正規リム(サイズ=7.5J)に組み込み、正規内圧となるように空気が充填された。このタイヤに、JATMAにて規定される最大負荷荷重に相当する縦荷重を負荷した。実施例及び比較例のタイヤそれぞれについて、全ての突起部の溝底近辺(溝の最深部の中点からの距離が、0.1mm以下の範囲の部分)の幅の変動値が測定され、その最大値が求められた。これらの最大値に基づいて、溝底歪みが評価された。この結果が実施例1を100とした指数で表1に示されている。数値が大きいほど、好ましい。
【0058】
[耐カット性]
タイヤを正規リム(サイズ=7.5J)に組み込み、後輪駆動の乗用車に装着した。このタイヤの内圧は正規内圧とされた。装着後、JATMAにて規定される最大負荷荷重に相当する縦荷重をタイヤに負荷した。ドライバーに、この車両をダートコースで1000kmの距離を走行させた後、タイヤがリムから取り外された。このタイヤのサイド面を目視で観察し、亀裂の数及び大きさを確認した。この結果が、比較例1を100とした指数で表1に示されている。数値が大きいほど、好ましい。数値が大きいほど、耐カット性に優れる。
【0059】
[モールドずれ外観]
タイヤの製作の際に、セグメントとサイドプレートとの間に、0.5mmの位置ずれを与えた。完成したタイヤの外観を、目視で確認した。この結果が、比較例1を100とした指数で表1に示されている。数値が大きいほど、好ましい。
【0060】
【0061】
表1に示されるように、実施例のタイヤは総合的に評価が高い。この評価結果から、本発明の優位性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係るタイヤは、種々の車両に適用されうる。
【符号の説明】
【0063】
2・・・タイヤ
4・・・トレッド面
6・・・サイド面
8・・・トレッド
10・・・サイドウォール
12・・・クリンチ
14・・・トレッドの溝
16・・・ブロック
18・・・突起部
20・・・小突起
22・・・隆起部
24・・・外裾
26・・・内裾
27・・・突起部の外側面
28・・・本体
28a・・・内側本体
28b・・・外側本体
29・・・溝
30・・・モールド
32・・・セグメント
34・・・サイドプレート
36・・・ビードリング
38・・・ローカバーのトレッド面
40・・・ローカバーのサイド面
42・・・分割線
44・・・ローカバーの突起部
46・・・窪み
48・・・突条