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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】画像形成装置および搬送制御方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20220621BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20220621BHJP
   B65H 9/00 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G15/00 303
B65H9/00 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2018039673
(22)【出願日】2018-03-06
(65)【公開番号】P2019152823
(43)【公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100155620
【弁理士】
【氏名又は名称】木曽 孝
(72)【発明者】
【氏名】塩川 康夫
(72)【発明者】
【氏名】川上 嘉輝
(72)【発明者】
【氏名】大久保 貴弘
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-157330(JP,A)
【文献】特開2015-022117(JP,A)
【文献】特開2009-051595(JP,A)
【文献】特開2015-094876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/01
G03G 13/02
G03G 13/14-13/16
G03G 13/34
G03G 15/00
G03G 15/01
G03G 15/02
G03G 15/14-15/16
G03G 15/36
G03G 21/00
G03G 21/02
G03G 21/14
G03G 21/20
B65H 9/00- 9/20
B65H 13/00-15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写位置において用紙に画像を転写する中間転写ベルトを備えた転写部と、
前記転写位置における前記中間転写ベルトの軸方向の位置のずれを矯正する動作を行う転写体位置矯正部と、
用紙搬送方向における前記転写位置の上流側に設けられ、前記用紙を搬送する用紙搬送部材と、
前記転写位置における前記用紙の側端の位置を検知する用紙位置検知部と、
前記用紙を該用紙の幅方向に沿って揺動させるように前記用紙搬送部材を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記用紙位置検知部の検知信号に基づいて、前記中間転写ベルトの前記ずれの方向を特定し、前記転写位置における前記中間転写ベルトの軸方向の位置に追従するように前記用紙搬送部材の揺動を制御する、
画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記用紙の側端を目標位置に合わせるように前記用紙搬送部材の揺動を制御し、前記目標位置を、前記中間転写ベルトの前記ずれの方向と同一方向に変更する、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記転写位置における前記中間転写ベルトの軸方向の位置を検知する転写体位置検知部を備え、
前記制御部は、前記転写体位置検知部による検知結果に基づいて、前記中間転写ベルトの前記ずれの方向を特定する、
請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記用紙位置検知部の検知信号に基づいて、前記転写位置における前記用紙の前記側端の、基準位置に対する差が小さくなるように、前記転写体位置矯正部を制御する、
請求項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記用紙の種類に応じて、前記用紙搬送部材の揺動態様を変更する、
請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記画像形成装置の周囲の温湿度に応じて、前記用紙搬送部材の揺動態様を変更する、
請求項1から3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記用紙搬送部材の劣化状況に応じて、前記用紙搬送部材の揺動態様を変更する、
請求項1からのいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記転写位置に前記用紙が進入した後、前記用紙が前記転写位置と前記用紙搬送部材の位置の両方で挟持されている状態では、前記転写体位置検知部による検知結果と、前記用紙搬送方向における前記転写位置の上流側で前記用紙の側端の位置を検知するラインセンサーによる検知結果に基づいて、前記用紙搬送部材の揺動を制御する、
請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記転写位置に前記用紙が進入する前、前記用紙が前記用紙搬送部材に挟持されている状態では、前記ラインセンサーによる検知結果に基づいて、前記用紙の前記側端を目標位置に合わせるように前記用紙搬送部材の揺動を制御する、
請求項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記用紙の種類に応じて、前記転写位置に前記用紙が進入した後の前記転写体位置矯正部の動作の有無を切り替える、
請求項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
転写位置において用紙に画像を転写する中間転写ベルトを備えた転写部と、前記転写位置における前記中間転写ベルトの軸方向の位置のずれを矯正する動作を行う転写体位置矯正部と、用紙搬送方向における前記転写位置の上流側に設けられ、前記用紙を搬送する用紙搬送部材と、前記転写位置における前記用紙の側端の位置を検知する用紙位置検知部と、を備えた画像形成装置における搬送制御方法であって、
前記用紙位置検知部の検知信号に基づいて、前記中間転写ベルトの前記ずれの方向を特定し、前記転写位置における前記中間転写ベルトの軸方向の位置を検知し、
検知した位置に追従するように前記用紙搬送部材を揺動させる、
搬送制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および搬送制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真プロセス技術を利用した画像形成装置(プリンター、複写機、ファクシミリ等)は、帯電した感光体ドラム(像担持体)に対して、画像データに基づくレーザー光を照射(露光)することにより静電潜像を形成する。そして、画像形成装置では、静電潜像が形成された感光体ドラムへ現像部よりトナーを供給することにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。さらに、画像形成装置では、このトナー像を一次的または二次的に用紙に転写させ、該用紙を定着部の定着ニップで加熱、加圧して、用紙にトナー像を定着させる。また、画像形成装置において、用紙に画像を転写させる転写部の上流側には、用紙の幅方向における位置ずれを補正するレジストローラーが設けられる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-133634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一次転写ベルト(中間転写ベルトともいう)等の転写体を備えた二次転写方式の画像形成装置において、かかる中間転写ベルトの幅方向位置を規制する装置を備えない機種では、突発的な外力等によって二次転写ニップにおける中間転写ベルトの幅方向位置がずれる場合があり得る。すなわち、中間転写ベルト方式の作像系の場合、感光体ドラムからまず中間転写ベルトにトナー像を転写し(一次転写)、この後、中間転写ベルト上の当該トナー像を用紙に二次転写させる。かかる二次転写時に、機械のアライメントや中間転写ベルトの状態等によっては、ベルトの片寄りが発生し、中間転写ベルトが斜行してしまう場合がある。このような中間転写ベルトのずれ(斜行)が発生すると、用紙の幅方向における本来意図した正しい位置に画像が転写されず、画像ずれの原因となる。さらには、中間転写ベルトが破損するなど、部材にダメージが生じる虞がある。
【0005】
従来、このような問題に対処するために、中間転写ベルトの幅方向の端部に例えば板状のカラーを突き当てて、当該突き当て位置に中間転写ベルトを保持させる技術がある。また、中間転写ベルト自体のアライメントを可変することにより、中間転写ベルトを中立の位置に保持する技術(いわゆるベルトステアリング)がある。
【0006】
ここで、ベルトステアリングの技術では、基本的には画像ずれが生じない範囲で中間転写ベルトのアライメントを可変するが、場合により、二次転写ニップの位置で、搬送方向に垂直な幅方向(軸方向)にベルトが動くことにより、わずかな画像ずれが生じる虞がある。
【0007】
本発明の目的は、転写体の位置ずれに伴う画像不良の発生を抑制することが可能な画像形成装置および搬送制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る画像形成装置は、
転写位置において用紙に画像を転写する中間転写ベルトを備えた転写部と、
前記転写位置における前記中間転写ベルトの軸方向の位置のずれを矯正する動作を行う転写体位置矯正部と、
用紙搬送方向における前記転写位置の上流側に設けられ、前記用紙を搬送する用紙搬送部材と、
前記転写位置における前記用紙の側端の位置を検知する用紙位置検知部と、
前記用紙を該用紙の幅方向に沿って揺動させるように前記用紙搬送部材を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記用紙位置検知部の検知信号に基づいて、前記中間転写ベルトの前記ずれの方向を特定し、前記転写位置における前記中間転写ベルトの軸方向の位置に追従するように前記用紙搬送部材の揺動を制御する。
【0009】
本発明に係る搬送制御方法は、
転写位置において用紙に画像を転写する中間転写ベルトを備えた転写部と、前記転写位置における前記中間転写ベルトの軸方向の位置のずれを矯正する動作を行う転写体位置矯正部と、用紙搬送方向における前記転写位置の上流側に設けられ、前記用紙を搬送する用紙搬送部材と、前記転写位置における前記用紙の側端の位置を検知する用紙位置検知部と、を備えた画像形成装置における搬送制御方法であって、
前記用紙位置検知部の検知信号に基づいて、前記中間転写ベルトの前記ずれの方向を特定し、前記転写位置における前記中間転写ベルトの軸方向の位置を検知し、
検知した位置に追従するように前記用紙搬送部材を揺動させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、転写体の位置ずれに伴う画像不良の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態における画像形成装置の全体構成を概略的に示す図である。
図2】本実施の形態における画像形成装置の制御系の主要部を示す。
図3】本実施の形態におけるベルト位置検知部の構成およびレジスト揺動制御の動作を説明する図である。
図4図4Aおよび図4Bは、中間転写ベルトの端部と用紙側端の通常の目標位置および変更後の目標位置を説明する図である。
図5】ベルト位置検知部の他の構成例を説明する図である。
図6】ベルト位置検知部の他の構成例および用紙が二次転写ニップに入る前のレジスト揺動制御の例を説明する図である。
図7図6に示す構成例において用紙が二次転写ニップに入った後のレジスト揺動制御の例を説明する図である。
図8】本実施の形態の画像形成装置におけるレジスト揺動に関する制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本実施の形態を詳細に説明する。図1は、本実施の形態における画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。図2は、本実施の形態における画像形成装置1の制御系の主要部を示す。
【0013】
本実施の形態の画像形成装置1は、用紙Sとして長尺紙または非長尺紙を使用し、当該用紙Sに画像を形成する。
【0014】
本実施の形態において、長尺紙は、一般に良く用いられるA4サイズ、A3サイズ等の用紙よりも搬送方向の長さが長い枚葉紙であり、機内の給紙トレイユニット51a~51cに収容できない長さを有する。以下、単に「用紙」という場合、長尺紙および非長尺紙の両方が含まれ得る。
【0015】
画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト421に一次転写し、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙に二次転写することにより、トナー像を形成する。
【0016】
また、画像形成装置1には、YMCKの4色に対応する感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
【0017】
図2に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60、ベルト位置検知部80、ベルト位置矯正部90、および制御部100等を備える。
【0018】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103等を備える。CPU101は、ROM102から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM103に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、記憶部72に格納されている各種データが参照される。記憶部72は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。
【0019】
制御部100は、通信部71を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部100は、例えば、外部の装置から送信された画像データを受信し、この画像データ(入力画像データ)に基づいて用紙にトナー像を形成させる。通信部71は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
【0020】
画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11および原稿画像走査装置12(スキャナー)等を備えて構成される。
【0021】
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることができる。
【0022】
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿またはコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
【0023】
操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21および操作部22として機能する。表示部21は、制御部100から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部100に出力する。
【0024】
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定またはユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、制御部100の制御下で、記憶部72内の階調補正データ(階調補正テーブルLUT)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
【0025】
画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42等を備える。
【0026】
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示及び説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、又はKを添えて示す。図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
【0027】
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414、およびドラムクリーニング装置415等を備える。
【0028】
感光体ドラム413は、例えばアルミニウム製の導電性円筒体(アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。電荷発生層は、電荷発生材料(例えばフタロシアニン顔料)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト)に分散させた有機半導体からなり、露光装置411による露光により一対の正電荷と負電荷を発生する。電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト樹脂)に分散させたものからなり、電荷発生層で発生した正電荷を電荷輸送層の表面まで輸送する。
【0029】
制御部100は、感光体ドラム413を回転させる駆動モーター(図示略)に供給される駆動電流を制御することにより、感光体ドラム413を一定の周速度(線速度)で回転させる。
【0030】
帯電装置414は、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。これにより、感光体ドラム413の表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
【0031】
現像装置412は、例えば二成分現像方式の現像装置であり、感光体ドラム413の表面に各色成分のトナーを付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
【0032】
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に摺接されるクリーニング部材等を有する。ドラムクリーニング装置415は、一次転写後に感光体ドラム413の表面に残存する転写残トナーをクリーニングブレードによって除去する。
【0033】
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424、及びベルトクリーニング装置426等を備える。
【0034】
中間転写ベルト421は、無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも1つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向下流側に配置されるローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、一次転写部におけるベルトの走行速度を一定に保持しやすくなる。駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
【0035】
一次転写ローラー422は、各色成分の感光体ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に圧接されることにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される。
【0036】
二次転写ローラー424は、駆動ローラー423Aのベルト走行方向下流側に配置されるバックアップローラー423Bに対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラー423Bに圧接されることにより、中間転写ベルト421から用紙Sへトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。
【0037】
中間転写ベルト421、バックアップローラー423Bおよび二次転写ローラー424により形成される二次転写ニップは、本発明の「転写位置」に対応する。
【0038】
次に、ベルト位置矯正部90の構成を説明する。本実施の形態では、中間転写ベルト421を支持する複数の支持ローラー423の内の最上部の支持ローラー423が、ベルト位置矯正部90の一部をなすステアリングローラー423Sとして機能する。ステアリングローラー423Sは、かかるローラーの軸方向に往復移動可能に構成され、ベルト位置矯正部90の一部をなす図示しないアクチュエーター等の駆動源に接続されている。制御部100は、かかる駆動源に制御信号を出力してステアリングローラー423Sを軸方向に移動させることにより、中間転写ベルト421の軸方向の位置ずれを矯正する制御を行う。
【0039】
一具体例では、制御部100は、中間転写ベルト421が予め定められた位置(図4に示す基準位置BP参照)の前後(装置の手前奥方向)でわずかに移動するように、ステアリングローラー423Sを軸方向に微妙に揺動させて、中間転写ベルト421の位置を矯正する。このようなベルトステアリングの制御を行うことにより、中間転写ベルト421の軸方向の位置(装置に対する手前/奥の位置)がある一定範囲内に保たれる。
【0040】
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光体ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の一次転写ローラー422と当接する側にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
【0041】
その後、用紙が二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー像が用紙に二次転写される。具体的には、二次転写ローラー424に二次転写バイアスを印加し、用紙の二次転写ローラー424と当接する側にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は用紙に静電的に転写される。トナー像が転写された用紙は定着部60に向けて搬送される。
【0042】
ベルトクリーニング装置426は、中間転写ベルト421の表面に摺接するベルトクリーニングブレード等を有し、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。
【0043】
定着部60は、用紙の定着面側に配置される定着面側部材を有する上側定着部60A、用紙の定着面の反対の面側に配置される裏面側支持部材を有する下側定着部60B、及び加熱源60C等を備える。定着面側部材に裏面側支持部材が圧接されることにより、用紙を狭持して搬送する定着ニップが形成される。
【0044】
上側定着部60Aは、定着面側部材である無端状の定着ベルト61、加熱ローラー62、上加圧ローラー63等を有する(ベルト加熱方式)。定着ベルト61は、加熱ローラー62と上加圧ローラー63とに所定のベルト張力(例えば、400N)で張架されている。
【0045】
下側定着部60Bは、例えば裏面側支持部材である下加圧ローラー65を有する(ローラー加圧方式)。下加圧ローラー65は、定着ベルト61を介して上加圧ローラー63に所定の定着荷重で圧接される。このようにして、定着ベルト61と下加圧ローラー65との間には、用紙Sを狭持して搬送する定着ニップが形成される。
【0046】
定着部60は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた用紙を定着ニップで加熱、加圧することにより、用紙にトナー像を定着させる。定着部60は、定着器F内にユニットとして配置される。
【0047】
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52および搬送経路部53等を備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a~51cには、坪量(剛度)やサイズ等に基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類ごとに収容される。搬送経路部53は、レジストローラー対53a等の複数の搬送ローラー、用紙の両面に画像形成するための両面搬送経路等を有する。レジストローラー対53aは、本発明の「用紙搬送部材」に対応する。
【0048】
レジストローラー対53aは、制御部100の制御の下、用紙Sの幅方向における位置を補正する。具体的には、レジストローラー対53aのニップに用紙Sが挟持されると、レジストローラー対53aが幅方向に移動して用紙Sを移動させるレジスト揺動の制御が行われることにより、用紙Sの幅方向における位置が補正される。かかるレジスト揺動の制御内容については後述する。
【0049】
レジストローラー対53aは、用紙Sの幅方向における位置を補正した後、当該用紙Sがレジストローラー対53aを通過し終わる前、すなわち用紙Sの搬送途中で離間して、移動する前の位置に戻される。そして、レジストローラー対53aは、用紙Sの後端が通過した後、再度圧着される。
【0050】
また、レジストローラー対53aにおける用紙Sの搬送速度は、制御部100の制御の下、バックアップローラー423Bと二次転写ローラー424とにより形成される二次転写ニップにおける用紙Sの搬送速度よりも速く設定される。
【0051】
用紙搬送方向におけるレジストローラー対53aの下流側で二次転写ニップの上流側には、ラインセンサー54が配置されている。ラインセンサー54は、光電変換素子をライン状に配置したセンサーであり、用紙Sの幅方向の片寄り、すなわち基準位置からのずれを検知する役割を担う。
【0052】
給紙トレイユニット51a~51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー対53aにより、給紙された用紙Sの傾きが補正されるとともに搬送タイミングが調整される。
【0053】
そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。なお、両面印刷時には、第一面への画像形成が行われた用紙Sは、両面搬送経路を通って表裏が反転された後、第二面にトナー像が二次転写および定着された後、排紙部52により機外に排紙される。
【0054】
ところで、上述したようなベルト位置矯正部90(すなわちベルトステアリング機構)を備えた画像形成装置1では、基本的には、画像ずれが生じない範囲で中間転写ベルト421のアライメント(幅方向の位置)が可変される。他方、例えば突発的な外力の作用等により、二次転写ニップの位置で、搬送方向に垂直な幅方向(軸方向)に中間転写ベルト421が比較的大きく動く、すなわち幅ないし軸方向の位置ずれが生じる場合がある。このような場合、レジストローラー対53aの揺動制御により、搬送される用紙Sの側端(幅方向のアライメント)を正しい位置にしても、わずかな画像ずれが生じる虞がある。
【0055】
そこで、本実施の形態では、基本的に、中間転写ベルト421の軸方向の位置に応じて、レジスト揺動制御におけるレジストローラー対53aの揺動量を決めるようにする。具体的には、図3に示すように、二次転写ニップの位置における中間転写ベルト421の端部(軸方向の位置)を検知するベルト位置検知部80を設ける。ベルト位置検知部80は、例えば光照射部(発光素子)と受光部(光センサーなど)を有し、中間転写ベルト421の端部を光学的な方法で検出する公知の光学デバイスを使用することができる。そして、制御部100は、ベルト位置検知部80の検知信号を入力し、かかる検知信号から二次転写ニップにおける中間転写ベルト421の端部の位置(さらには位置ずれの有無等)を特定し、該特定された中間転写ベルト421の端部の位置に追従するようにレジストローラー対53aの揺動を制御する。
【0056】
すなわち、制御部100は、ベルト位置検知部80による検知結果から、上述したベルト位置矯正部90の作動に伴って図3中の両矢印X(搬送方向(矢印Y参照)に直交するX)方向に移動する中間転写ベルト421の移動方向と同方向(搬送方向に直交するX方向)にレジストローラー対53aを揺動させる。
【0057】
図4Aおよび図4Bを参照して、本実施の形態の動作をより詳しく説明する。図4Aは、通常または正常状態での印刷中における中間転写ベルト421の端部の基準位置BPと、レジスト揺動制御における用紙側端の通常の目標位置TPを表している。他方、図4Bは、ベルト位置矯正部90でステアリングローラー423Sを軸方向(図4Bに示す例では装置手前側)に大きく移動させた場合の動作を説明する図である。なお、理解を容易にするために、図4Bではステアリングローラー423Sおよび中間転写ベルト421等の移動量を誇張して表している。
【0058】
図4Aに示すように、正常状態では、ベルト位置矯正部90におけるステアリングローラー423Sの軸方向への揺動動作は、上述のようにごく僅かな量で行われる。この場合、二次転写ニップの位置における中間転写ベルト421の端部は、図4A中に示す基準位置BPから殆ど動かない。したがって、この場合、制御部100は、用紙Sの端部を通常の目標位置TPに合致させるようにレジストローラー対53aの揺動を制御すればよい。
【0059】
これに対して、例えば図4Bに示すように、何らかの外力等によりステアリングローラー423Sおよび中間転写ベルト421(上方の部位)が軸方向(この例では白抜き矢印に示す装置手前側)に移動(斜行)した場合、ステアリングローラー423Sの移動と共に、中間転写ベルト421のステアリングローラー423Sに巻かれている上方部分が同方向に移動する。かかるステアリングローラー423Sの移動に伴う中間転写ベルト421の上方部分の移動は、速やか(ほぼ同時)に二次転写ニップの領域に伝搬され、二次転写ニップに挟持されている用紙Sを軸方向(この例では装置手前側)に移動させようとする力が発生する(点線矢印参照)。
【0060】
かくして、ステアリングローラー423Sの移動により中間転写ベルト421の上方の領域の端部を図4B中のBPからBPの位置まで移動させると、二次転写ニップにおける中間転写ベルト421の端部も、速やかにBPの位置に移動する。このとき、制御部100は、用紙Sの側端の目標位置を、通常のTPからTPの位置に移動させて、レジストローラー対53aおよび用紙Sを揺動させるように制御する。
【0061】
このような制御を行うことにより、中間転写ベルト421の位置ずれ(斜行等)に伴って発生し得る用紙Sの斜行が未然に防止され、ひいては用紙S上に二次転写されるトナー像の画像ずれを抑制することができる。
【0062】
本実施の形態では、レジストローラー対53aの下流側に配置されたラインセンサー54によって用紙Sの側端を検知し、また、二次転写ニップの位置における中間転写ベルト421の端部をベルト位置検知部80によって検知する(図3参照)。したがって、本実施の形態では、用紙Sの側端位置と、中間転写ベルト421の端部位置との複数の情報に基づいてレジストローラー対53aの揺動態様(揺動量および揺動速度)を決定することができ、用紙Sに印刷されるトナー像の転写位置の精度を高めることができる。
【0063】
図4Bでは、中間転写ベルト421の端部位置の移動量(BP-BP)と同量で、レジスト揺動制御における揺動(用紙Sの側端)の目標位置を(TPからTPに)変更した場合を例示した。他方、レジスト揺動制御における揺動の目標位置の変更量(すなわちTPの位置)およびレジストローラー対53aの揺動の速度は、用紙Sの紙種(剛度等)、温湿度等の環境、レジストローラー対53aの使用状況(耐久等)に応じて変えることが好ましい。
【0064】
すなわち、上述のように、ベルト位置矯正部90(ステアリングローラー423S)による中間転写ベルト421のステアリング量は、斜行等の突発的な不具合が生じていない通常の作動時には、画像ずれが生じない程度の一定の範囲内に収まるように設定されている。これに対して、用紙Sの側端の位置合わせのためのレジスト揺動制御で必要となるレジストローラー対53aの揺動量や揺動速度に関しては、上記のような使用状況によって変わり得る。例えば、一般に、レジストローラー対53aの劣化度が大きい程、レジストローラー対53aの揺動時に用紙Sがレジストローラー対53aから滑りやすくなる。また、用紙Sの剛度が低くなるほど、或いは温湿度が高くなるほど、レジストローラー対53aの揺動時に用紙Sがレジストローラー対53aから滑りやすくなる。
【0065】
そこで、制御部100は、中間転写ベルト421の端部位置の移動量に対するレジスト揺動制御における揺動の目標位置の変更量およびレジストローラー対53aの揺動態様(揺動速度など)を、用紙Sの紙種(剛度等)、温湿度等の環境、レジストローラー対53aの使用状況(耐久等)に応じて決定する。このような個別的な決定を行うことにより、使用条件が変わっても用紙Sの揺動量(シフト量)を中間転写ベルト421の端部位置の移動量に対応させた量とすることができ、用紙S上に印刷される画像のさらなる高精度化を図ることができる。
【0066】
なお、レジストローラー対53aの劣化度が相当に進んでいる場合、揺動時における用紙Sの滑り量が一定にならない場合がある。したがって、例えば、用紙Sの側端が目標位置に到達しない場合、または到達させるまでの時間がある程度長くなったような場合、制御部100は、レジストローラー対53aのメンテナンスまたは交換を行うべき旨を表示部21等に表示して、部品の清掃や交換等をユーザーに促す。
【0067】
図5は、ベルト位置検知部80の他の構成例および他の制御例を説明する図である。図5に示すベルト位置検知部80は、図3で上述した光学デバイスをバックアップローラー423Bの軸方向に沿って2つ配置したものであり、装置奥側の検知部80Aと、装置手前側の検知部80Bと、を備える。図5の構成例では、検知部80Aおよび80Bの配置によって中間転写ベルト421の位置ずれの許容範囲が定義される。言い換えると、図5中に示す両矢印Xは、ベルト位置ずれの許容範囲量を示すものであり、理解容易のために誇張して長く表している。
【0068】
図5に示す構成例の一具体例では、制御部100は、検知部80Aおよび80Bの検知信号の強度等から、中間転写ベルト421の端部の位置を特定し、特定された端部位置に応じてレジスト揺動制御における用紙Sの側端の目標位置(図4のTPを参照)を変える。また、制御部100は、中間転写ベルト421の端部の位置が上述の許容範囲を脱しないように、ベルト位置矯正部90の動作を制御する。
【0069】
図5に示す構成における一具体例では、制御部100は、中間転写ベルト421の端部の位置と、ラインセンサー54で検出された用紙Sの端部の位置とが相対的に変わった場合に、レジスト揺動における揺動量(レジストローラー対53aの揺動速度等)を補正させる。
【0070】
具体的に説明すると、ベルト位置検知部80により検知された中間転写ベルト421の位置ずれの程度が大きく、ベルト位置矯正部90によって中間転写ベルト421を大きく揺動させた場合、二次転写ニップで転写される画像と用紙Sの幅方向位置とが合わなくなるおそれがある。加えて、用紙Sは、例え同種且つ同ロットの紙であっても1枚毎に剛度等の特性にばらつきがあるため、中間転写ベルト421の端部の位置情報だけに基づいてレジストローラー対53aを揺動させると、1枚毎の用紙Sのばらつきを吸収することができない。
【0071】
上記問題に対処するために、制御部100は、二次転写ニップの上流かつレジストローラー対53aの下流に配置されているラインセンサー54による検知結果に基づいて、用紙Sの側端の位置を目標位置に合わせる用紙位置合わせのためのレジスト揺動の制御を、用紙Sが二次転写ニップに入った後も実施する。
【0072】
さらに、制御部100は、ベルト位置検知部80による検知結果(すなわち中間転写ベルト421の端部の位置情報)に基づいて、レジスト揺動における用紙Sの側端の目標位置(TP)を補正する。レジスト揺動の制御をこのように実施することで、二次転写ニップで転写される画像の幅方向位置と用紙Sの幅方向位置とをより厳密に合致させることができる。
【0073】
次に図6および図7を参照して、用紙Sの搬送方向の先端が二次転写ニップに入る前および入った後におけるレジスト揺動の制御の切り替え等について説明する。なお、図6および図7の例は、ベルト位置検知部80として、上述したラインセンサー54と同様のラインセンサーを用いていること以外は図4および図5に示す構成と同様である。
【0074】
図6は、用紙Sが二次転写ニップに到達する前の搬送状態を示している。このとき、制御部100は、ラインセンサー54の検知信号を監視して通常のレジスト揺動の制御を行うようにレジストローラー対53aの揺動を制御する。かかる制御により、当該用紙Sの搬送方向先端がレジストローラー対53aに挟持され二次転写ニップに入る前は、用紙Sの側端が常に一定の目標位置(TP)に合わせられるように揺動動作が行われる。図6に示す例では用紙Sが装置奥側に位置ずれしており、この場合、制御部100は、ラインセンサー54の検知信号を監視して、用紙Sの側端が目標位置(TP)に合致するまでレジストローラー対53aを装置手前側(図6中の矢印方向)に揺動させる制御を行う。
【0075】
図7は用紙Sの搬送方向先端が二次転写ニップに入った後の搬送状態を示している。このとき、制御部100は、ベルト位置検知部80の検知信号を監視して、中間転写ベルト421の端部の通常位置(BP)からのずれ(方向と量)を特定し、当該ずれが解消されるようにベルト位置矯正部90を制御する。
【0076】
一具体例では、制御部100は、中間転写ベルト421の端部の通常位置(BP)からのずれに応じた値で用紙Sの側端の目標位置をTPからずらしてレジストローラー対53aを揺動させる。より具体的には、ベルト位置矯正部90によるベルトステアリング動作が行われることにより、中間転写ベルト421の端部の通常位置(BP)からのずれ値(方向と量)が動的に変化するため、制御部100は、かかる変化に応じて用紙Sの側端の目標位置(TPからのずらし量)を決定する。したがって、レジスト揺動における用紙Sの側端の目標位置も動的に変化することになる。
【0077】
ここで、図7に示すように、用紙Sが二次転写ニップとレジストローラー対53aの両方で搬送(挟持)されている状態では、レジストローラー対53aによる揺動の応力が用紙Sを介して中間転写ベルト421に伝達される(図7中の矢印XおよびX参照)。したがって、このような場合、中間転写ベルト421の軸方向の位置を矯正するための動作は、ベルト位置矯正部90(ステアリングローラー423S)のみならず、レジストローラー対53aの揺動動作も関係してくる。
【0078】
このため、中間転写ベルト421の位置の矯正中のレジスト揺動制御に関して、以下のような種々の態様の制御が考えられる。
【0079】
一具体例としては、制御部100は、上述のように、ベルト位置検知部80で検知された中間転写ベルト421の位置と、ラインセンサー54によって検知された用紙Sの端部の位置が相対的に変わった場合に、レジストローラー対53aの揺動量を補正する。
【0080】
具体的に説明すると、ベルト位置検知部80により検知された中間転写ベルト421の位置ずれの程度が大きく、ベルト位置矯正部90(ステアリングローラー423Sの揺動)を通じて中間転写ベルト421を軸方向に大きく動かすと、二次転写ニップで転写される画像と用紙Sの幅方向位置が合わなくなるおそれがある。加えて、用紙Sは、例え同種且つ同ロットの紙であっても1枚毎に剛度等の特性にばらつきがあるため、中間転写ベルト421の端部の位置情報だけに基づいてレジストローラー対53aを揺動させると、個々の用紙Sのばらつきに対応した印刷を行うことができない。
【0081】
上記問題に対処するために、制御部100は、二次転写ニップの上流かつレジストローラー対53aの下流に配置されているラインセンサー54による検知結果を用いて、用紙Sの側端の位置を目標位置(TP)に合わせる用紙位置合わせのためのレジスト揺動の制御を、用紙Sが二次転写ニップに入った後も実施する。
【0082】
さらに、制御部100は、ベルト位置検知部80等の検知結果により中間転写ベルト421の端部の位置ずれ(斜行等)が発生した場合、ステアリングローラー423Sの揺動を通じて中間転写ベルト421を軸方向(当該位置ずれを矯正する方向)に動かす。このとき、制御部100は、レジストローラー対53aの揺動制御において、ラインセンサー54により検知される用紙Sの側端の目標位置を、中間転写ベルト421の軸方向の位置に応じて変えて行くように、通常の基準位置からずらす(軸方向に沿って変える)ように補正する。一具体例として、制御部100は、用紙Sの側端の目標位置を、まず中間転写ベルト421の位置ずれ方向と同方向の位置(図4B参照)にずらし、続いて、中間転写ベルト421の端部の位置が正常位置(図4中のBP参照)に近づくに従って、用紙Sの側端の目標位置を通常の基準位置(TP))に近付けるように補正する。
【0083】
上述のように、ステアリングローラー423Sによる中間転写ベルト421の位置矯正中におけるレジスト揺動の制御を、複数の位置情報(用紙側端とベルト端部の位置情報)および複数の基準位置を用いて、かつ、用紙Sの位置合わせの制御と併せて実施することで、二次転写ニップで転写される画像の幅方向位置と用紙Sの幅方向位置とをより良く合わせることができる。
【0084】
以下、画像形成装置1におけるレジストローラー対53aひいては用紙Sの揺動制御に関する動作の一例について説明する。図8は、図6および図7で説明した構成の画像形成装置1における揺動制御の動作例の一例を示すフローチャートである。図8に示す処理は、用紙Sが長尺紙である場合の制御の一例であり、印刷ジョブの実行において、画像形成される用紙Sの一枚毎に実行される。
【0085】
印刷ジョブの実行時に、制御部100は、入力画像データやユーザー設定情報を取得して、用紙Sの搬送および当該用紙Sに印刷する画像(トナー像)の形成の処理を開始するように各部を制御する(ステップS100)。ここで、制御部100は、用紙Sの搬送方向先端が二次転写ニップに入るまでは、図6で上述したように、ラインセンサー54による検知結果に基づいて、用紙Sの側端を目標位置(TP)に合致させる通常のレジスト揺動制御を実行する。制御部100は、用紙Sの搬送方向先端が二次転写ニップに入ると、ステップS120に移行する。
【0086】
ステップS120において、制御部100は、ベルト位置検知部80の検知信号から中間転写ベルト421の位置を検知する処理を開始する。続くステップS140において、制御部100は、中間転写ベルト421の端部が通常位置BP図7参照)からずれたか否かを判定する。制御部100は、中間転写ベルト421の端部が通常位置BPからずれていないと判定した場合(ステップS140、NO)、中間転写ベルト421の位置検知(ステップS120)およびステップS140の判定を繰り返す。制御部100は、中間転写ベルト421の端部が通常位置BPからずれたと判定した場合(ステップS140、YES)、ステップS160に移行する。
【0087】
ステップS160において、制御部100は、ベルト位置矯正部90を制御して、上述したベルトステアリング動作を実行する。続くステップS180において、制御部100は、レジスト揺動制御における用紙Sの側端の目標位置を、当該ベルトステアリング動作による中間転写ベルト421の移動量に応じた量で、通常位置TPからずらすように変更する(図4Bの位置TP参照)。ステップS200において、制御部100は、ラインセンサー54の検知信号に基づいて、当該変更された目標位置に用紙Sの側端を合致させるように、レジストローラー対53aの揺動を制御する。
【0088】
このような制御を行うことにより、中間転写ベルト421の幅方向の位置ずれが生じた場合に用紙S上の画像転写位置が幅方向にずれることを抑制することができる。
【0089】
ステップS220において、制御部100は、印刷ジョブが終了したか否かについて判定する。かかる判定の結果、印刷ジョブが終了していない場合(ステップS220、NO)、制御部100は、ステップS100に戻り、次の用紙Sの搬送および画像形成等の印刷処理を行う。他方、制御部100は、印刷ジョブが終了したと判定した場合(ステップS220、YES)、上述した一連の処理を終了する。
【0090】
以下、上述した実施の形態の変形例について説明する。
【0091】
図6および図7に示す構成例では、ベルト位置検知部80としてラインセンサーを使用し、かかるラインセンサーで二次転写ニップにおける中間転写ベルト421の端部の位置を検出するものとした。他の構成例として、かかるラインセンサー(ベルト位置検知部80)を用紙位置検知部(以下、位置検知センサー80という。)として、二次転写ニップにおける用紙Sの側端を検知するように配置してもよい。
【0092】
この場合の一具体例として、制御部100は、位置検知センサー80によって検知された用紙Sの側端の位置が基準位置(TP)からずれた場合、中間転写ベルト421も同じだけずれたものとみなして、ラインセンサー54により検知される用紙Sの側端の基準位置も当該ずれ分だけ基準位置(TP)からずらしてレジストローラー対53aを揺動させる。さらに、制御部100は、位置検知センサー80によって検知された二次転写ニップにおける用紙Sの側端の位置を基準位置(TP)に戻すようにベルト位置矯正部90を動作させ、側端の位置が基準位置(TP)に近づくにつれて、ラインセンサー54により検知される用紙Sの側端の位置も基準位置(TP)に近付けるようにレジストローラー対53aの揺動(量および速度)を制御する。このように、二次転写ニップにおける用紙Sの側端を一定位置に保つようにする制御では、通常、レジストローラー対53aの揺動量は微小なものとなるが、かかる微小な揺動は、中間転写ベルト421の位置ずれの発生を抑制するための規制力としても有効に作用する。
【0093】
上述の実施の形態では、制御部100は、二次転写ニップにおける中間転写ベルト421の端部位置(位置ずれの有無やずれ方向)を、ベルト位置検知部80の検知結果から判断して、ベルト位置矯正部90の制御および用紙Sの目標位置の変更等を行う場合を説明した。他の例として、制御部100は、中間転写ベルト421を駆動する駆動源(モーター等)のトルクを検知した信号に基づいて、中間転写ベルト421の位置ずれの有無やずれ方向を判別して、ベルト位置矯正部90の制御および用紙Sの目標位置の変更等を行うこともできる。この場合、制御部100は、例えば上記モーター等のトルク変動量が少なくなる方向に中間転写ベルト421を移動させるようにベルト位置矯正部90を制御することで、中間転写ベルト421の位置ずれを矯正することができる。
【0094】
上述した実施の形態では、基本的に、ベルト位置矯正部90により中間転写ベルト421の幅方向の位置矯正(いわゆるベルトステアリング)を行い、かかる位置矯正の動作に伴ってレジストローラー対53aを揺動(追従)させる制御とした。言い換えると、中間転写ベルト421の位置ずれは、基本的に、ベルト位置矯正部90の作動によって完全に矯正できる場合を前提としていた。
【0095】
他方、用紙Sの紙種によっては、例えば厚紙のように二次転写ニップの変形量が大きい用紙Sの場合、ベルト位置矯正部90によるベルトステアリングだけでは中間転写ベルト421の片寄りを完全に矯正できないおそれがあることが分かった。本発明者らの実験結果では、坪量が301g/m以上のいわゆる超厚紙と呼ばれる用紙Sを使用した場合、ベルト位置矯正部90によるベルトステアリング時に中間転写ベルト421の片寄りを完全に矯正できない場合が発生した。
【0096】
そこで、このような場合、制御部100は、ベルト位置矯正部90による中間転写ベルト421の位置矯正(ベルトステアリング)に追従させるレジストローラー対53aの揺動制御において、当該用紙Sの紙種に応じた揺動量または揺動速度の補正値を適用する。すなわち、一般に用紙Sの厚さが厚いほど、紙が硬くなる(剛性が高くなる)ため、レジストローラー対53aの揺動時の応力を、用紙Sを介して中間転写ベルト421に伝達することができる。このため、ベルト位置矯正部90によるステアリング機能の不足分または不具合をレジストローラー対53aの揺動によって補うまたは是正すること、言い換えるとレジストローラー対53aの揺動によるベルトステアリング機能を持たせることができる。
【0097】
このような補正値を適用した揺動制御を行うことによって、使用される用紙Sの紙種を確保しつつ、中間転写ベルト421の幅方向の位置(アライメント)調整機能を強化することができる。
【0098】
かかるレジストローラー対53aの揺動によるベルトステアリング効果は、用紙Sの紙種が上述した超厚紙である場合のみならず、普通紙や厚紙に対しても有効に機能する。本発明者らによる実験結果では、用紙Sの坪量が53~300g/mの範囲(普通紙や厚紙)であれば、レジストローラー対53aおよび用紙Sの揺動を用いたベルトステアリング効果により、ベルト位置矯正部90(ステアリングローラー423S)を用いることなく中間転写ベルト421の位置ずれを矯正できることが分かった。したがって、制御部100は、用紙Sが普通紙や厚紙(一例では坪量が53~300g/mの紙種)の場合、用紙Sが二次転写ニップに進入した後は、ベルト位置矯正部90(ステアリングローラー423S)の動作(ベルトステアリング機能)を自動でオフにしてもよい。
【0099】
他方、用紙Sが薄紙の場合、一般に厚さが薄くなるほど紙がやわらかくなるため、レジストローラー対53aの揺動によるベルトステアリング効果が低減してしまう場合がある。したがって、制御部100は、用紙Sが薄紙の場合(一例では坪量が52g/m以下の場合)、用紙Sが二次転写ニップに進入した後の用紙Sの側端の基準位置(TP)の補正を行わないようにしてもよい。
【0100】
総じて、上述したレジストローラー対53aの揺動によるベルトステアリング機能(すなわち補正値の適用)のオン(通紙性優先)またはオフ(ステアリング優先)のモードは、ユーザー設定画面等を通じてユーザーが選択可能な構成としてもよい。
【0101】
上述した実施の形態では、転写体として中間転写ベルト421を使用し、印刷する画像を用紙Sに二次的に転写させる転写部を備えた画像形成装置の例を説明した。他方、上記実施の形態は、印刷する画像を用紙Sに一次的に転写させる方式の画像形成装置(例えば転写ドラム方式のプリンタなど)に対しても、同様に適用されることができる。
【0102】
上述した実施の形態では、二次転写ニップの上流側に設けられ制御部100により揺動制御される用紙搬送部材がレジストローラー対53aである場合を説明した。他の例として、用紙搬送部材は、例えば、レジストローラー対53a以外のローラー、用紙搬送ガイド、などが付加的または代替的に適用されることができる。
【0103】
上述した実施の形態では、用紙Sとして枚葉紙を使用する場合を説明した。他方、上記実施の形態は、ロール紙に対しても同様に適用することができる。
【0104】
その他、上記実施の形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0105】
1 画像形成装置
20 操作表示部
30 画像処理部
40 画像形成部
50 用紙搬送部
53a レジストローラー対(用紙搬送部材)
54 ラインセンサー
80 ベルト位置検知部(位置検知センサー)
90 ベルト位置矯正部(転写体位置矯正部)
100 制御部
421 中間転写ベルト(転写体)
423B バックアップローラー
423S ステアリングローラー
424 二次転写ローラー
BP 中間転写ベルトの端部の基準位置(通常の目標位置)
BP 中間転写ベルトの端部のずれた位置
TP 用紙の側端の通常の目標位置
TP 用紙の側端の変更された目標位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8