(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】異常診断装置および異常診断方法
(51)【国際特許分類】
F02M 59/44 20060101AFI20220621BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20220621BHJP
【FI】
F02M59/44 Z
G01M99/00 A
(21)【出願番号】P 2018055187
(22)【出願日】2018-03-22
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】特許業務法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 優介
(72)【発明者】
【氏名】蔀 克士
(72)【発明者】
【氏名】野田 久仁男
(72)【発明者】
【氏名】石井 大貴
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 文彦
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-108171(JP,A)
【文献】特開2011-196186(JP,A)
【文献】特開2004-068810(JP,A)
【文献】特開2007-071067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 59/44
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯留部から汲み上げられた燃料の流量を調整する流量調整弁と、流量が調整された前記燃料を加圧して蓄圧部へ吐出する高圧ポンプとを備えた燃料ポンプの異常を診断する異常診断装置であって、
前記蓄圧部内の前記燃料の圧力の検出値を受け取る入力部と、
前記検出値が前記圧力の目標値未満である場合、前記目標値と前記検出値との差圧と、前記燃料ポンプから吐出される前記燃料の吐出量とを算出する算出部と、
前記差圧が第1閾値以上、第2閾値未満であり、かつ、前記吐出量が第3閾値以上、第4閾値未満である状態で、予め設定された時間が経過したか否かを判定する判定部と、を有し、
前記判定部は、
前記時間が経過した場合、前記高圧ポンプに異常が発生したと判定し、
前記時間が経過しなかった場合、前記流量調整弁に異常が発生したと判定
し、
前記第1閾値は、前記高圧ポンプに備えられた複数のプランジャの全部が正常に動作している場合の前記差圧の上限値であり、
前記第2閾値は、前記複数のプランジャのうち、少なくとも1つが正常に動作しており、かつ、少なくとも1つが故障している場合の前記差圧の上限値であり、
前記第3閾値は、前記複数のプランジャのうち、少なくとも1つが正常に動作しており、かつ、少なくとも1つが故障している場合の前記高圧ポンプの最大吐出可能量の下限値であり、
前記第4閾値は、前記複数のプランジャの全部が正常に動作している場合の前記高圧ポンプの最大吐出可能量の下限値である、
異常診断装置。
【請求項2】
前記算出部は、
前記蓄圧部から供給された前記燃料の噴射を行うインジェクタの目標噴射量と、内燃機関の回転数とに基づいて、前記吐出量を算出する、
請求項
1に記載の異常診断装置。
【請求項3】
貯留部から汲み上げられた燃料の流量を調整する流量調整弁と、流量が調整された前記燃料を加圧して蓄圧部へ吐出する高圧ポンプとを備えた燃料ポンプの異常を診断する異常診断方法であって、
前記蓄圧部内の前記燃料の圧力の検出値を受け取るステップと、
前記検出値が前記圧力の目標値未満である場合、前記目標値と前記検出値との差圧と、前記燃料ポンプからの前記燃料の吐出量とを算出するステップと、
前記差圧が第1閾値以上、第2閾値未満であり、かつ、前記吐出量が第3閾値以上、第4閾値未満である状態で、予め設定された時間が経過したか否かを判定するステップと、
前記時間が経過した場合、前記高圧ポンプに異常が発生したと判定する一方、前記時間が経過しなかった場合、前記流量調整弁に異常が発生したと判定するステップと、を含
み、
前記第1閾値は、前記高圧ポンプに備えられた複数のプランジャの全部が正常に動作している場合の前記差圧の上限値であり、
前記第2閾値は、前記複数のプランジャのうち、少なくとも1つが正常に動作しており、かつ、少なくとも1つが故障している場合の前記差圧の上限値であり、
前記第3閾値は、前記複数のプランジャのうち、少なくとも1つが正常に動作しており、かつ、少なくとも1つが故障している場合の前記高圧ポンプの最大吐出可能量の下限値であり、
前記第4閾値は、前記複数のプランジャの全部が正常に動作している場合の前記高圧ポンプの最大吐出可能量の下限値である、
異常診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料ポンプの異常を診断する異常診断装置および異常診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料タンクに貯留されている燃料を内燃機関側(例えば、コモンレール)へ供給する燃料供給システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。例えば、燃料供給システムでは、フィードポンプによって燃料タンクから汲み上げられた燃料は、燃料フィルタを通過し、流量調整弁によって流量を調整された後、高圧ポンプによって加圧されて内燃機関側へ吐出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した燃料ポンプにおいて異常が発生した場合、異常発生箇所を特定するためには、燃料ポンプを分解して調べる必要があるという問題があった。
【0005】
本開示の目的は、分解の必要なく、異常発生箇所を特定することができる異常診断装置および異常診断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る異常診断装置は、貯留部から汲み上げられた燃料の流量を調整する流量調整弁と、流量が調整された前記燃料を加圧して蓄圧部へ吐出する高圧ポンプとを備えた燃料ポンプの異常を診断する異常診断装置であって、前記蓄圧部内の前記燃料の圧力の検出値を受け取る入力部と、前記検出値が前記圧力の目標値未満である場合、前記目標値と前記検出値との差圧と、前記燃料ポンプから吐出される前記燃料の吐出量とを算出する算出部と、前記差圧が第1閾値以上、第2閾値未満であり、かつ、前記吐出量が第3閾値以上、第4閾値未満である状態で、予め設定された時間が経過したか否かを判定する判定部と、を有し、前記判定部は、前記時間が経過した場合、前記高圧ポンプに異常が発生したと判定し、前記時間が経過しなかった場合、前記流量調整弁に異常が発生したと判定し、前記第1閾値は、前記高圧ポンプに備えられた複数のプランジャの全部が正常に動作している場合の前記差圧の上限値であり、前記第2閾値は、前記複数のプランジャのうち、少なくとも1つが正常に動作しており、かつ、少なくとも1つが故障している場合の前記差圧の上限値であり、前記第3閾値は、前記複数のプランジャのうち、少なくとも1つが正常に動作しており、かつ、少なくとも1つが故障している場合の前記高圧ポンプの最大吐出可能量の下限値であり、前記第4閾値は、前記複数のプランジャの全部が正常に動作している場合の前記高圧ポンプの最大吐出可能量の下限値である。
【0007】
本開示の一態様に係る異常診断方法は、貯留部から汲み上げられた燃料の流量を調整する流量調整弁と、流量が調整された前記燃料を加圧して蓄圧部へ吐出する高圧ポンプとを備えた燃料ポンプの異常を診断する異常診断方法であって、前記蓄圧部内の前記燃料の圧力の検出値を受け取るステップと、前記検出値が前記圧力の目標値未満である場合、前記目標値と前記検出値との差圧と、前記燃料ポンプからの前記燃料の吐出量とを算出するステップと、前記差圧が第1閾値以上、第2閾値未満であり、かつ、前記吐出量が第3閾値以上、第4閾値未満である状態で、予め設定された時間が経過したか否かを判定するステップと、前記時間が経過した場合、前記高圧ポンプに異常が発生したと判定する一方、前記時間が経過しなかった場合、前記流量調整弁に異常が発生したと判定するステップと、を含み、前記第1閾値は、前記高圧ポンプに備えられた複数のプランジャの全部が正常に動作している場合の前記差圧の上限値であり、前記第2閾値は、前記複数のプランジャのうち、少なくとも1つが正常に動作しており、かつ、少なくとも1つが故障している場合の前記差圧の上限値であり、前記第3閾値は、前記複数のプランジャのうち、少なくとも1つが正常に動作しており、かつ、少なくとも1つが故障している場合の前記高圧ポンプの最大吐出可能量の下限値であり、前記第4閾値は、前記複数のプランジャの全部が正常に動作している場合の前記高圧ポンプの最大吐出可能量の下限値である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、分解の必要なく、異常発生箇所を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の実施の形態に係る燃料供給システムおよび異常診断装置の構成の一例を示す図
【
図2】本開示の実施の形態に係る設定範囲の一例を示す図
【
図3】本開示の実施の形態に係る異常診断装置の動作の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
本開示の実施の形態に係る燃料供給システム1および異常診断装置100の構成について、
図1を用いて説明する。
【0012】
図1は、燃料供給システム1および異常診断装置100の構成の一例を示す図である。
図1において、実線の矢印は燃料の流れを示しており、破線の矢印は電気信号の流れを示している。
【0013】
図1に示す燃料供給システム1および異常診断装置100は、燃料(例えば、軽油)により駆動する内燃機関(例えば、ディーゼルエンジン)を備えた車両に搭載される。燃料供給システム1は、内燃機関に燃料を供給するシステムであり、異常診断装置100は、燃料供給システム1の燃料ポンプ5における異常の発生、および、異常発生箇所を特定する装置である。
【0014】
まず、燃料供給システム1の構成について説明する。
【0015】
燃料供給システム1は、燃料を貯留する燃料タンク2(貯留部の一例)、燃料タンク2から燃料を汲み上げるフィードポンプ3、燃料に含まれる異物を捕集する燃料フィルタ4、燃料をコモンレール8へ吐出する燃料ポンプ5を有する。
【0016】
燃料ポンプ5は、燃料の流量を調整する流量調整弁6、および、燃料を高圧に加圧する高圧ポンプ7を有する。
【0017】
流量調整弁6の開度は、コモンレール8に蓄えられた燃料の圧力(コモンレール圧)が運転状況(例えば、内燃機関の回転数およびアクセル開度)に基づいて決まる目標コモンレール圧となるように、図示しない制御装置(例えば、ECU:Electric Control Unit)によって制御される。
【0018】
高圧ポンプ7は、ポンプシリンダ内を往復移動する複数のプランジャ(図示略)を備える。
【0019】
コモンレール8(蓄圧部の一例)には、随時、上述したコモンレール圧を検出し、検出されたコモンレール圧を示す値(以下、検出圧力値という)を異常診断装置100へ出力する圧力センサ9が設けられている。
【0020】
なお、
図1では、フィードポンプ3が燃料フィルタ4の上流側に設けられる場合を図示したが、これに限定されず、フィードポンプ3は、例えば燃料ポンプ5に設けられてもよい。
【0021】
また、
図1において、燃料フィルタ4の上流側(例えば、燃料タンク2とフィードポンプ3との間)に、燃料フィルタ4とは別の燃料フィルタが設けられてもよい。
【0022】
このように構成された燃料供給システム1では、燃料タンク2に貯留された燃料は、フィードポンプ3により汲み上げられ、燃料フィルタ4により異物が捕集された後、燃料ポンプ5へ流入する。そして、燃料は、流量調整弁6により内燃機関の運転状況に基づいた流量に調整され、高圧ポンプ7により高圧に加圧されてから、コモンレール8へ吐出される。コモンレール8に蓄えられた燃料は、内燃機関のインジェクタ(図示略)に供給され、インジェクタにより燃焼室へ噴射される。
【0023】
次に、異常診断装置100の構成について説明する。
【0024】
異常診断装置100は、入力部110、算出部120、および判定部130を有する。
【0025】
図示は省略するが、異常診断装置100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)等の記憶媒体、RAM(Random Access Memory)等の作業用メモリ、および通信回路を有する。後述する算出部120および判定部130の機能は、CPUがコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0026】
入力部110は、圧力センサ9から検出圧力値を随時受け取る。
【0027】
また、入力部110は、クランク角度センサ10から検出角度値を随時受け取る。検出角度値は、クランク角度センサ10により検出された内燃機関のクランク軸(図示略)の角度を示す値である。
【0028】
また、入力部110は、アクセル開度センサ11から検出開度値を随時受け取る。検出開度値は、アクセル開度センサ11により検出されたアクセルペダル(図示略)の踏み込み量を示す値である。
【0029】
算出部120は、後述する判定部130により検出圧力値が目標コモンレール圧未満であると判定された場合に、目標コモンレール圧と検出圧力値との差圧(以下、単に、差圧という)差圧、および、燃料ポンプ5から吐出される燃料の量(以下、吐出量という)を算出する。
【0030】
なお、目標コモンレール圧は、入力部110が他の装置(例えばECU)から受け取ってもよいし、算出部120が算出してもよい。後者の場合、例えば、算出部120は、検出角度値に基づいて内燃機関の回転数を算出し、内燃機関の回転数およびアクセル開度に応じて目標コモンレール圧が定められたマップから、算出された内燃機関の回転数および検出されたアクセル開度に対応する目標コモンレール圧を特定する。
【0031】
また、吐出量の算出処理は、次のように行われる。例えば、まず、算出部120は、検出開度値に基づいて内燃機関の回転数を算出する。次に、内燃機関の回転数およびアクセル開度に応じて目標噴射量が定められたマップから、上述したように算出された内燃機関の回転数および検出開度値に対応する目標噴射量(単位は、例えば、mm3/st)を特定する。次に、算出部120は、(目標噴射量)×(内燃機関の回転数)によって吐出量(単位は、例えば、mm3/sec)を算出する。
【0032】
以下では、算出部120により算出された差圧を「算出差圧」といい、算出部120により算出された吐出量を「算出吐出量」という。
【0033】
判定部130は、検出圧力値が目標コモンレール圧未満であるか否かを判定する。検出圧力値が目標コモンレール圧未満である場合、判定部130は、差圧および吐出量の算出を算出部120に指示する。
【0034】
また、判定部130は、算出差圧および算出吐出量が予め定められた範囲(以下、設定範囲という)内にある状態で、予め定められた時間(以下、設定時間という)が経過したか否かを判定する。
【0035】
ここで、
図2を用いて、設定範囲の例について説明する。
図2は、設定範囲の一例を示す図である。
図2において、横軸は吐出量であり、縦軸は差圧である。
【0036】
図2に示した設定範囲Rは、差圧が閾値TH1(第1閾値の一例)以上、閾値TH2(第2閾値の一例)未満であり、かつ、吐出量が閾値TH3(第3閾値の一例)以上、閾値TH4(第4閾値の一例)未満の範囲である。
【0037】
閾値TH1は、例えば、高圧ポンプに備えられた複数のプランジャの全部が正常に動作している場合の差圧の上限値である。
【0038】
閾値TH2は、例えば、複数のプランジャのうち、少なくとも1つが正常に動作しており、かつ、少なくとも1つが故障している場合の差圧の上限値である。
【0039】
閾値TH3は、例えば、複数のプランジャのうち、少なくとも1つが正常に動作しており、かつ、少なくとも1つが故障している場合の高圧ポンプの最大吐出可能量の下限値である。
【0040】
閾値TH4は、例えば、複数のプランジャの全部が正常に動作している場合の高圧ポンプの最大吐出可能量の下限値である。
【0041】
上述した閾値TH1~TH4は、予め実施された実験やシミュレーション等の結果に基づいて設定される。
【0042】
以上、設定範囲について説明した。以下、
図1の説明に戻る。
【0043】
判定部130は、算出差圧および算出吐出量が設定範囲内にある状態で設定時間が経過した場合、燃料ポンプ5の高圧ポンプ7に異常が発生したと判定する。ここで、高圧ポンプ7の異常とは、高圧ポンプ7の複数のプランジャのうち、少なくとも1つのプランジャが故障することである。
【0044】
一方、判定部130は、算出差圧および算出吐出量が設定範囲内にある状態で設定時間が経過しなかった場合、燃料ポンプ5の流量調整弁6に異常が発生したと判定する。
【0045】
そして、判定部130は、異常が発生した箇所(流量調整弁6または高圧ポンプ7)を示す診断結果情報を、所定の装置へ出力または無線送信する。
【0046】
所定の装置は、例えば、車両に搭載された表示装置や記憶装置でもよいし、車両外に設置されたサーバ装置であってもよい。
【0047】
記憶装置またはサーバ装置に出力された診断結果情報は、例えば、異常が発生したデバイスの製造者や、異常が発生したデバイスを修理または交換する修理者によって、利用される。例えば、所定の装置がサーバ装置である場合、そのサーバ装置から修理者の端末装置へ診断結果情報が送信されることにより、修理者は、車両の修理が持ち込まれる前に、異常発生箇所を把握することができる。
【0048】
以上、燃料供給システム1および異常診断装置100の構成について説明した。
【0049】
次に、異常診断装置100の動作について、
図3を用いて説明する。
図3は、異常診断装置100の動作の一例を示す図である。
【0050】
まず、入力部110は、各種検出値を受け取る(ステップS11)。上述したとおり、例えば、入力部110は、圧力センサ9から検出圧力値を受け取り、クランク角度センサ10から検出角度値を受け取り、アクセル開度センサ11から検出開度値を受け取る。
【0051】
次に、判定部130は、検出圧力値が目標コモンレール圧未満であるか否かを判定する(ステップS12)。
【0052】
検出圧力値が目標コモンレール圧以上である場合(ステップS12:NO)、フローは終了する。
【0053】
一方、検出圧力値が目標コモンレール圧未満である場合(ステップS12:YES)、判定部130は、差圧および吐出量を算出するように算出部120に指示する。
【0054】
次に、算出部120は、目標コモンレール圧と検出圧力値との差圧を算出する(ステップS13)。
【0055】
次に、算出部120は、目標噴射量および内燃機関の回転数に基づいて、吐出量を算出する(ステップS14)。
【0056】
なお、ここでは、差圧の算出の後に吐出量の算出が行われる場合を例に挙げたが、吐出量の算出の後に差圧の算出が行われてもよい。
【0057】
次に、判定部130は、算出差圧および算出吐出量が設定範囲内である状態で設定時間が経過したか否かを判定する(ステップS15)。
【0058】
算出差圧および算出吐出量が設定範囲内である状態で設定時間が経過した場合(ステップS15:YES)、判定部130は、高圧ポンプ7に異常が発生したと判定する(ステップS16)。上述したとおり、高圧ポンプ7の異常とは、少なくとも1つのプランジャの故障を意味する。
【0059】
一方、判定部130は、算出差圧および算出吐出量が設定範囲内である状態で設定時間が経過しなかった場合(ステップS15:NO)、流量調整弁6に異常が発生したと判定する(ステップS17)。
【0060】
その後、判定部130は、判定結果を示す診断結果情報を、所定の装置へ出力または無線送信する。
【0061】
以上、異常診断装置100の動作について説明した。
【0062】
ここまで詳述したように、本実施の形態の異常診断装置100は、目標コモンレール圧と検出圧力値との差圧が第1閾値以上、第2閾値未満であり、かつ、燃料ポンプの吐出量が第3閾値以上、第4閾値未満である状態で設定時間が経過したか否かを判定する。そして、異常診断装置100は、上記状態で時間が経過した場合、高圧ポンプに異常が発生したと判定し、上記状態で時間が経過しなかった場合、流量調整弁に異常が発生したと判定する。よって、燃料ポンプ5おいて異常が発生した場合に、燃料ポンプ5を分解して調べる必要がないので、時間や費用をかけずに、燃料ポンプ5における異常発生箇所を特定することができる。
【0063】
なお、本開示は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。以下、変形例について説明する。
【0064】
実施の形態では、異常診断装置100が車両に搭載される場合を例に挙げて説明したが、異常診断装置100は、車両の外部に備えられてもよい。
【0065】
その場合、例えば、車両に搭載された無線通信装置(例えば、テレマティクスで用いられる装置)が、各種検出値(例えば、検出圧力値、検出角度値、検出開度値)を、所定のネットワークを介して、異常診断装置100へ無線送信する。そして、異常診断装置100は、各種検出値を受信し、それらを用いて、上述した算出処理および判定処理を行う。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本開示の異常診断装置および異常診断方法は、燃料ポンプにおける異常発生箇所の特定に有用である。
【符号の説明】
【0067】
1 燃料供給システム
2 燃料タンク
3 フィードポンプ
4 燃料フィルタ
5 燃料ポンプ
6 流量調整弁
7 高圧ポンプ
8 コモンレール
9 圧力センサ
10 クランク角度センサ
11 アクセル開度センサ
100 異常診断装置
110 入力部
120 算出部
130 判定部