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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】永久磁石電動機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/28 20060101AFI20220621BHJP
   H02K 1/30 20060101ALI20220621BHJP
   H02K 5/16 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
H02K1/28 A
H02K1/30 Z
H02K5/16 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018058723
(22)【出願日】2018-03-26
(65)【公開番号】P2019170143
(43)【公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-02-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】村上 正憲
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慎悟
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-220473(JP,A)
【文献】特開2014-112038(JP,A)
【文献】特開2015-106928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00- 1/16
H02K 1/18- 1/26
H02K 1/28- 1/34
H02K 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ外郭に固定された固定子と前記固定子の内側に配置された回転子を備え、
前記回転子は、永久磁石を配置した環状の外周側鉄心と、前記外周側鉄心の内径側に位置する環状の内周側鉄心と、前記外周側鉄心と前記内周側鉄心の間に位置する絶縁部材と、前記内周側鉄心を支持し、前記モータ外郭に軸受によって回転自在に支持されたシャフトを備え、
前記絶縁部材は、軸方向の一端面に開口する第1軸方向穴と、軸方向の他端面に開口する第2軸方向穴と、前記第1軸方向穴と前記第2軸方向穴の間に形成する壁部を設け、
前記第1軸方向穴と前記第2軸方向穴のそれぞれは、内径側の側壁と外径側の側壁と底部とを有し、前記内径側の側壁と前記外径側の側壁と前記底部とは金型による成型で形成され、
前記第1軸方向穴および前記第2軸方向穴の少なくとも一方には、前記内径側の側壁と前記底部の境界部分の周辺、および、前記外径側の側壁と前記底部との境界部分の周辺熱応力を緩和するための2段以上の応力緩和傾斜部を形成したことを特徴とする永久磁石電動機。
【請求項2】
前記第1軸方向穴および前記第2軸方向穴の少なくとも一方の前記側壁と前記底部の境界部分の周辺には、前記壁部の軸方向の熱膨張を吸収することで熱応力を緩和することができる前記底部からの軸方向長さに相当する前記第1軸方向穴および前記第2軸方向穴の少なくとも一方の側壁の端部から軸方向に対して第1傾斜角により傾斜する第1応力緩和傾斜部が形成され、前記第1応力緩和傾斜部と前記底部の間に第2傾斜角により傾斜する第2応力緩和傾斜部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の永久磁石電動機。
【請求項3】
前記第2応力緩和傾斜部の軸方向に対する第2傾斜角は、前記第1応力緩和傾斜部の軸方向に対する第1傾斜角より大きく設定されていることを特徴とする請求項2に記載の永久磁石電動機。
【請求項4】
前記第1軸方向穴と前記第2軸方向穴は、円周方向に複数設けられ、複数の前記第1軸方向穴のそれぞれの間、および、複数の前記第2軸方向穴のそれぞれの間に隔壁が形成され、前記第1軸方向穴と前記第2軸方向穴の端面形状が円周方向に沿う円弧状に形成されることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の永久磁石電動機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁部材を有する回転子を備えた永久磁石電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の永久磁石電動機には、回転磁界を発生する固定子の内側に、永久磁石を有する回転子を回転可能に配置したインナーロータ型の永久磁石電動機が知られている。この永久磁石電動機は、例えば、空気調和機に搭載する送風ファンを回転駆動するために用いられる。
【0003】
この永久磁石電動機は、高周波スイッチングを行うPWM方式のインバータで駆動すると、軸受の内輪と外輪の間に電位差(軸電圧)を生じる。この軸電圧が軸受内部の油膜の絶縁破壊電圧に達すると、軸受内部に電流が流れて軸受に電食を発生させる。この軸受の電食を防止するために、例えば、絶縁部材を有する回転子を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この回転子は、例えば、環状の永久磁石と、永久磁石の内径側に位置する環状の外周側鉄心と、外周側鉄心の内径側に位置する環状の内周側鉄心と、外周側鉄心と内周側鉄心の間に位置する絶縁部材と、内周側鉄心の中心軸の方向に貫通する貫通孔に固着されたシャフトを備えている。
【0004】
このような回転子の絶縁部材は、例えば、外周側鉄心と内周側鉄心の間に充填された樹脂で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-39875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した軸受の電食は、永久磁石電動機をPWM方式のインバータで駆動すると、固定子の巻線の中性点電位が零にならず、コモンモード電圧と呼ばれる電圧が発生する。このコモンモード電圧は、スイッチングによる高周波成分が含まれるため、永久磁石電動機の内部の浮遊容量によって、軸受の外輪と内輪の間に軸電圧を発生させる。
【0007】
コモンモード電圧は、固定子の巻線とシャフトの間の静電容量と、シャフトとインバータ駆動用回路基板の間の静電容量により、軸受の内輪側(シャフト側)の電位として分圧される。そして、コモンモード電圧は、固定子の巻線とブラケットの間の静電容量とブラケットとインバータ駆動用回路基板の間の静電容量により、軸受の外輪側(ブラケット側)の電位として分圧される。この軸受の内輪側と外輪側の電位差が軸電圧となる。
【0008】
回転子の絶縁部材の厚みの上限が構造上規制され、且つ材料としてPBT樹脂を使用しても回転子側(軸受内輪側)のインピーダンスが低く、軸電圧が高い場合に、軸電圧を抑制するため、特許文献1に記載の先行技術では、絶縁部材の一部に空気層や空孔を形成するようにしている。空気の比誘電率は、ほぼ1であるため、3程度のPBTに比べて小さい。したがって、空気層や空孔を設けることによって回転子の静電容量を小さくすることが可能となり、回転子側(軸受内輪側)のインピーダンスを高くするようにしている。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の回転子のように、絶縁部材に空気層を形成するために空孔として貫通孔を形成する場合には、絶縁部材の強度が低下することから、貫通孔の内部に、貫通孔を絶縁部材の軸方向の一端側に開口する第1軸方向穴と、絶縁部材の軸方向の他端側に開口する第2軸方向穴に区切る壁部を設け、この壁部により絶縁部材の強度を確保することが考えられている。この壁部を設けることで、壁部の一端側には第1軸方向穴の底部が形成され、壁部の他端側には第2軸方向穴の底部が形成される。
一方で、永久磁石電動機の使用環境や駆動時の固定子巻線からの発熱によって、絶縁部材に熱応力が生じる。特に、第1軸方向穴の軸方向側壁と底部が交わる部分や、第2軸方向穴の軸方向側壁と底部が交わる部分に熱応力が集中する。熱応力が集中すると、絶縁部材の耐久性の低下や割れやクラックの発生が懸念される。この熱応力集中を緩和するために、第1軸方向穴の軸方向側壁と底部が交わる部分や、第2軸方向穴の軸方向側壁と底部が交わる部分にR面取りやC面取りを形成することが行われている。
【0010】
第1軸方向穴および第2軸方向穴は、図3及び図4に示すように、例えば、端面形状が円周方向に沿う円弧状に形成され、端面から軸方向に沿う方向に深さを有している。
しかし、半径が小さく軸方向に厚い回転子に対して静電容量を低減させる場合、第1軸方向穴および第2軸方向穴の深さを深くする必要がある。そして、絶縁部材の機械的強度や、第1軸方向穴および第2軸方向穴の成形時の金型の抜き勾配を考慮した場合、図3及び図4に示すように、第1軸方向穴および第2軸方向穴の半径方向の長さRを十分に取ることができない。
【0011】
結果、図8(a)に示すように、第1軸方向穴の軸方向側壁と底部が交わる部分や、第2軸方向穴の軸方向側壁と底部が交わる部分の熱応力集中を緩和するために、C面取りによって軸方向に対して、例えば、45度の傾斜角θ1の傾斜部を形成する。なお、第2軸方向穴は、壁部に対して第1軸方向穴と対称に形成されているので、図示を省略する。第1軸方向穴および第2軸方向穴を形成する絶縁部材は、壁部を形成する領域A、傾斜部を形成する領域B、軸方向側壁を形成する領域Cを有する構造になっている。第1軸方向穴と第2軸方向穴はそれぞれ、傾斜部と軸方向側壁との境界部分(P3、P4)と、傾斜部と底部との境界部分(P1、P2)の間の領域Bが狭くなり、領域Bの軸方向長さL1を十分にとることができない。この場合には、領域Aでの熱膨張を領域Bで吸収することができず、領域Bと領域Cで示す熱膨張の方向が大きく異なるため、領域Bと領域Cとの境界部分(P3、P4)に熱応力が集中してしまう。
【0012】
一方、図8(b)に示すように、第1軸方向穴の軸方向側壁と底部が交わる部分や、第2軸方向穴の軸方向側壁と底部が交わる部分の熱応力集中を緩和するために、C面取りによって軸方向に対して、例えば、22.5度の傾斜角θ2の傾斜部を形成する。第1軸方向穴と第2軸方向穴はそれぞれ、傾斜部と軸方向側壁との境界部分(P3、P4)と、傾斜部と底部との境界部分(P1、P2)の間の領域Bが図8(a)と比べて広くなり、領域Bの軸方向長さL1を十分にとることができる。この場合には、領域Bと領域Cとの境界部分(P3、P4)での熱応力集中を緩和することができる反面、領域Aと領域Bでは矢印で示す熱膨張の方向が大きく異なるため、領域Bと領域Aの境界部分(P1、P2)に熱応力が集中してしまう。
このように、図8(a)や図8(b)のように、C面取りによって軸方向に対して傾斜部を形成して、第1軸方向穴の軸方向側壁と底部が交わる部分や、第2軸方向穴の軸方向側壁と底部が交わる部分の熱応力集中を緩和するようにしても、第1軸方向穴の傾斜部と軸方向側壁との境界部分(P3、P4)や、第2軸方向穴の傾斜部と軸方向側壁との境界部分(P3、P4)に熱応力が集中したり、第1軸方向穴の傾斜部と底部との境界部分(P1、P2)や、第2軸方向穴の傾斜部と底部との境界部分(P1、P2)に熱応力が集中してしまう。
【0013】
そこで、本発明は、上記特許文献1に記載された先行技術の課題に着目してなされたものであり、絶縁部材の貫通孔の内部に第1軸方向穴と第2軸方向穴に区切る壁部を設け、壁部の一端側に第1軸方向穴の底部が形成され、壁部の他端側に第2軸方向穴の底部が形成される場合に、第1軸方向穴および第2軸方向穴の少なくとも一方の軸方向側壁と底部の境界部分や、第1軸方向穴および第2軸方向穴の傾斜部と軸方向側壁の境界部分や、第1軸方向穴および第2軸方向穴の傾斜部と底部との境界部分に対する熱応力の集中を緩和できる永久磁石電動機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の永久磁石電動機の一態様は、モータ外郭に固定された固定子と固定子の内側に配置された回転子を備え、回転子は、永久磁石を配置した環状の外周側鉄心と、外周側鉄心の内径側に位置する環状の内周側鉄心と、外周側鉄心と内周側鉄心の間に位置する絶縁部材と、内周側鉄心を支持し、モータ外郭に軸受によって回転自在に支持されたシャフトを備え絶縁部材は、軸方向の一端面に開口する第1軸方向穴と、軸方向の他端面に開口する第2軸方向穴と、第1軸方向穴と第2軸方向穴の間に形成する壁部を設け、第1軸方向穴と前記第2軸方向穴のそれぞれは、内径側の側壁と外径側の側壁と底部とを有し、内径側の側壁と外径側の側壁と底部とは金型による成型で形成され、第1軸方向穴および第2軸方向穴の少なくとも一方には、内径側の側壁と底部の境界部分の周辺、および、外径側の側壁と底部との境界部分の周辺熱応力を緩和するための2段以上の応力緩和傾斜部を形成した永久磁石電動機である
【発明の効果】
【0015】
本発明の永久磁石電動機の一態様によれば、軸受の電食を防止するために、絶縁部材に軸方向に延びる第1軸方向穴と第2軸方向穴に区切る壁部を設け、壁部の一端側に第1軸方向穴の底部が形成され、壁部の他端側に第2軸方向穴の底部が形成される場合に、第1軸方向穴および第2軸方向穴の軸方向側壁と底部の境界部分や、第1軸方向穴および第2軸方向穴の傾斜部と軸方向側壁の境界部分や、第1軸方向穴および第2軸方向穴の傾斜部と底部との境界部分に対する熱応力の集中を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る永久磁石電動機を示す説明図である。
図2】本発明に係る永久磁石電動機の回転子の第1実施形態を示す斜視図である。
図3図2の回転子の平面図である。
図4図2の回転子の底面図である。
図5図3のA-A断面図である。
図6図5のC部の部分断面図である。
図7】外周側鉄心に永久磁石を装着した状態を示す回転子の平面図である。
図8】従来の第1軸方向穴の底部周辺における熱応力集中と、本発明の第1軸方向穴の底部周辺における熱応力集中の緩和を説明する図であり、(a)と(b)は従来の説明図であり、(c)は本発明の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な構成部品については以下の説明を参酌して判断すべきものである。
【0018】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0019】
以下に、本発明の一実施形態に係る永久磁石電動機について説明する。
【0020】
<電動機の全体構成>
図1乃至図6は、第1実施形態における永久磁石電動機1の構成を説明する図である。図1乃至図6に示すように、この永久磁石電動機1は、例えば、ブラシレスDCモータである。この永久磁石電動機1は、空気調和機の室内機に搭載される送風ファンを回転駆動するために用いられる。
【0021】
以下では、回転磁界を発生する固定子2の内部に、永久磁石31を有する回転子3を回転可能に配置したインナーロータ型の永久磁石電動機1を例に説明する。本実施形態における永久磁石電動機1は、固定子2と、回転子3と、モータ外郭6を備えている。
【0022】
<固定子と回転子>
固定子2は、円筒形状のヨーク部とヨーク部から内径側に延びる複数のティース部を有した固定子鉄心21と、インシュレータ22を介してティース部に巻回された巻線23を備えている。この固定子2は、固定子鉄心21の内周面を除いて、樹脂で形成されたモータ外郭6で覆われている。
【0023】
回転子3は、固定子2の固定子鉄心21の内周側に所定の空隙(ギャップ)を持って回転自在に配置されている。この回転子は、固定子鉄心21に対向する外周面に環状に永久磁石31を配置した表面磁石形である。永久磁石31は、後述する外周側鉄心32、絶縁部材33および内周側鉄心34を介してシャフト35の周囲に固定されている。このシャフト35は、第1軸受41および第2軸受42によって支持され、第1軸受41が第1ブラケット51に、第2軸受42が第2ブラケット52にそれぞれ支持されることで、回転子3が回転自在に支持されている。
【0024】
<軸受とブラケット>
第1軸受41は、回転子3のシャフト35の一端側(出力側)を支持している。第2軸受42は、回転子3のシャフト35の他端側(反出力側)を支持している。第1軸受41および第2軸受42は、例えば、ボールベアリングが用いられる。
【0025】
第1ブラケット51は、金属製(鋼板やアルミニウムなど)であり、モータ外郭6の一端側すなわちシャフト35の出力側に固定されている。この第1ブラケット51は、一端を開放し、他端を底面板部510で閉塞した円筒形状のブラケット本体511と、底面板部510に設けられ第1軸受41を収容するための第1軸受収容部512を有する。ブラケット本体511は、開放端側がモータ外郭6の外周面に圧入されている。第1軸受収容部512は、底面板部510の中央部からモータ外郭6とは反対側に突出された底部を有する円筒状に形成されている。この第1軸受収容部512の円筒内面に第1軸受41の外輪が圧入され、この第1軸受41の内輪に支持されたシャフト35の出力側が底部の中央に形成された貫通孔から外部に突出されている。
【0026】
第2ブラケット52は、金属製(鋼板やアルミニウムなど)であり、モータ外郭6の他端側すなわちシャフト35の反出力側に配置されている。この第2ブラケット52は、第2軸受42を収容するための第2軸受収容部521と、第2軸受収容部521の開放端から周りに広がるフランジ部522を有する。第2軸受収容部521は、底部を有する円筒形状に形成されており、第2ブラケット52のフランジ部522は、モータ外郭6の成形時にインサート成形され、モータ外郭6と一体になっている。
【0027】
第1軸受41は、第1ブラケット51に設けられた第1軸受収容部512に収容され、第2軸受42は、第2ブラケット52に設けられた第2軸受収容部521に収容されている。そして、第1軸受41と第1軸受収容部512、第2軸受42と第2軸受収容部521はそれぞれ電気的に導通している。
【0028】
<回転子の具体的な構成>
以上のように構成された永久磁石電動機1では、第1軸受41や第2軸受42に電食が生じないようにするため、図1に示すように、回転子3の一部に絶縁部材33を備えている。以下、回転子3の具体的構成について説明する。
【0029】
回転子3は、図1乃至図6に示すように、外径側から内径側に向かって、永久磁石31と、外周側鉄心32と、絶縁部材33と、内周側鉄心34と、シャフト35を備えている。
【0030】
永久磁石31は、図1及び図7に示すように、N極とS極が周方向に等間隔に交互に表れるように複数(例えば8個)の永久磁石片311で環状に形成されている。なお、永久磁石31は、磁石粉末を樹脂で固めることで環状に形成されたプラスチックマグネットを用いてもよい。
【0031】
外周側鉄心32は、図3に示すように、環状に形成されており、永久磁石31の内径側に位置している。外周側鉄心32には、図示を省略するが、後述する絶縁部材33との回り止めの機能を確保するために、内周面321(図5参照)から内径側に突出する複数(例えば4個)の外周側凸部と内周面321から外径側に凹む外周側凹部を備えている。複数の外周側凸部および外周側凹部は、中心軸Oの方向に延びるとともに周方向に等間隔に配置されている。
【0032】
内周側鉄心34は、図3に示すように、環状に形成されており、外周側鉄心32の内径側に位置している。内周側鉄心34には、図示を省略するが、後述する絶縁部材33との回り止めの機能を確保するために、外周面341(図5参照)から内径側に凹む複数(例えば8個)の内周側凹部を備えている。複数の内周側凹部は、中心軸Oの方向に延びるとともに周方向に等間隔に配置されている。そして、内周側鉄心34には、中心に中心軸Oの方向に貫通する貫通穴343を備えている。
【0033】
絶縁部材33は、PBTやPETなどの誘電体の樹脂で形成されており、外周側鉄心32と内周側鉄心34の間に位置している。絶縁部材33は、外周側鉄心32と内周側鉄心34の間に樹脂が充填されることで、外周側鉄心32と内周側鉄心34と一体に成形されている。この絶縁部材33は、外周側鉄心32と内周側鉄心34の間の静電容量(固定子2の巻線23とシャフト35の間の静電容量の一部)を小さくして第1軸受41および第2軸受42の内輪側の電位を下げて内輪側と外輪側の電位を合わせている。
【0034】
シャフト35は、内周側鉄心34に備えた貫通穴343に圧入やカシメなどによって固着されている。
【0035】
<本発明に係る回転子の構造、作用および効果>
次に、本実施形態における永久磁石電動機1において、図2乃至図5を用いて、本発明に係る回転子3の構造やその作用および効果について説明する。
【0036】
空気調和機に搭載する送風ファンを回転駆動するために用いられる永久磁石電動機1は、PWM方式のインバータで駆動されるため、巻線の中性点電位が零にならず、コモンモード電圧と呼ばれる電圧が発生する。このコモンモード電圧に起因して、永久磁石電動機1の内部の浮遊容量によって、第1軸受41や第2軸受42の外輪と内輪の間に電位差(軸電圧)が発生する。この軸電圧が軸受内部油膜の絶縁破壊電圧に達すると、軸受内部に電流が流れて軸受内部に電食を発生させる。
【0037】
上記した回転子3の構成において、絶縁部材33は、図2乃至図4に示すように、円筒形状を有し、回転子3の静電容量を低減させるために、軸方向の一端に第1軸方向穴331が形成され、軸方向の他端に同様に回転子3の静電容量を低減させるための第2軸方向穴332が形成されている。これらの第1軸方向穴331および第2軸方向穴332は、円周方向に等間隔に複数(例えば8個)形成されている。複数の第1軸方向穴331のそれぞれの間、および、複数の第2軸方向穴332のそれぞれの間には、隔壁334が形成され、隣接する第1軸方向穴331同士、および、隣接する第2軸方向穴332同士を区切っている。
【0038】
さらに、第1軸方向穴331と第2軸方向穴332は、図3乃至図5に示すように、軸方向で互いに対向しており、軸方向中央位置で互いの深さが同じになるように区切る壁部333が設けられている。この壁部333を設けることで、壁部333の一端側には第1軸方向穴331の底部335cが形成され、壁部333の他端側には第2軸方向穴332の底部335cが形成されている。そして、第1軸方向穴331と第2軸方向穴332のそれぞれの底部335cから軸方向に沿って側壁335aおよび側壁335bが形成されている。このように、第1軸方向穴331と第2軸方向穴332は、壁部333と隔壁334の形成によって、端面形状が円周方向に沿う円弧状に形成され、端面から軸方向に沿う方向に深さを有する構造になっており、それぞれが等間隔に複数(例えば8個)形成されている。
【0039】
ここで、例えば、半径が小さく軸方向に厚い回転子3に対して第1軸方向穴331と第2軸方向穴332を形成するときは、回転子3の半径が小さくなるので、第1軸方向穴331と第2軸方向穴332の半径方向の長さ(幅)Rも小さくなる。このような回転子3の静電容量を低減させるには、第1軸方向穴331と第2軸方向穴332の深さを深くする必要がある。しかしながら、第1軸方向穴331と第2軸方向穴332の深さを深くしすぎると、第1軸方向穴331と第2軸方向穴332を区切る壁部333の厚さが薄くなり、絶縁部材33の機械的強度が低下することから、機械的強度を確保するためには適当な厚さの壁部333が必要となる。
【0040】
したがって、第1軸方向穴331と第2軸方向穴332の深さは、回転子3の静電容量の低減と機械的強度の確保の両方を考慮して設定する。
【0041】
そして、絶縁部材33は、PBTやPETなどの誘電体の樹脂を外周側鉄心32および内周側鉄心34とともに一体成型することから、回転子3の機械的強度や、第1軸方向穴331と第2軸方向穴332の成型時の金型の抜き勾配を考慮した場合には、上記で説明したように、図2乃至図5に示すように、第1軸方向穴331と第2軸方向穴332は、壁部333と隔壁334の形成により、端面形状が円周方向に沿う円弧状に形成され、端面から軸方向に沿う方向に深さを有する構造になっており、第1軸方向穴331および第2軸方向穴332の半径方向の長さ(幅)Rを十分にとることができない。
【0042】
ところで、一般的に、絶縁部材33の線膨張係数は、周囲の金属製の外周側鉄心32および内周側鉄心34の線膨張係数に比較して大きく、温度上昇時の膨張量や温度降下時の収縮量が外周側鉄心32および内周側鉄心34に比較して大きくなる。
【0043】
絶縁部材33は、図6に示すように、絶縁部材33における側壁335a、335bの膨張量や収縮量は、側壁335a、335bが半径方向に薄く、軸方向に厚いため、半径方向に比較して軸方向の方が大きくなる。
【0044】
また、絶縁部材33の壁部333の膨張量や収縮量は、半径方向の成分と軸方向の成分に分けられるが、半径方向は外周側鉄心32および内周側鉄心34によって規制されるので、半径方向の膨張や収縮に比べて軸方向の膨張や収縮の方が大きくなる。
【0045】
このため、温度上昇による壁部333の膨張を考えたときに、半径方向への膨張に比べて軸方向への膨張が多くなり、この壁部333の膨張の影響により、第1軸方向穴331の底部335cと側壁335aおよび335bが交わる部分や、第2軸方向穴332の底部335cと側壁335aおよび335bが交わる部分に熱応力が集中する。
【0046】
ここで、第1軸方向穴331について熱応力の集中度合いを検討する。通常は、図8(a)で点線図示のように、第1軸方向穴331を形成する絶縁部材33の互いに対向する側壁335aおよび335bに対して底部335cがほぼ直角となっており、第1軸方向穴331を形成する絶縁部材33は、壁部333を形成する領域A、側壁335aおよび335bを形成する領域Cを有するものとなり、このままでは、領域Aと領域Cで矢印が示す熱膨張の方向が大きく異なるため、側壁335aと底部335cとの境界部分P0aおよび側壁335bと底部335cとの境界部分P0bで熱応力が集中する。
【0047】
このため、境界部分P0aおよびP0bへの熱応力の集中を緩和するために、図8(a)に示すように、側壁335aおよび335bと底部335cの間に、例えば45度の角度でカットするC面取りを行って傾斜部335dおよび335eを形成することが考えられる。この場合には、第1軸方向穴331を形成する絶縁部材33は、壁部333を形成する領域A、傾斜部335dおよび335eを形成する領域B、側壁335aおよび335bを形成する領域Cを有するものとなり、傾斜部335dの形成によって、底部335cと側壁335aの境界部分P0aでの熱応力の緩和を行い、傾斜部335eの形成によって、底部335cと側壁335bの境界部分P0bでの熱応力の緩和を行い、熱応力の集中を抑制することができる。
【0048】
ところで、第1軸方向穴331を形成する絶縁部材33は、壁部333を形成する領域Aの軸方向厚さや、側壁335aおよび335bを形成する領域Cの径方向厚さや、回転子3の半径の長さや、面取りの形状によっては、傾斜部335dおよび335eを形成する領域Bの軸方向長さL1を、壁部333を形成する領域Aの軸方向の熱膨張を吸収することで熱応力を緩和することができる軸方向長さLSにすることができないことがある。例えば、領域Aの軸方向厚さが領域Cの径方向厚さよりも十分に大きく、回転子3の半径の長さも十分大きいものとした場合、第1軸方向穴331の半径方向の長さRが十分大きくなるため、45度の角度でカットするC面取りによって傾斜部335dおよび335eを形成する領域Bの軸方向長さL1を長く形成することができるので、この軸方向長さL1を熱応力を緩和することができる軸方向長さLSに設定することができる。
しかしながら、図8(a)に示すように、第1軸方向穴331の半径方向の長さRが小さいとき、領域Bの軸方向長さに相当する、側壁335aと傾斜部335dの境界部分P3と、側壁335aと底部335cの境界部分P0aとの間と、側壁335bと傾斜部335eの境界部分P4と、側壁335bと底部335cの境界部分P0bとの間のそれぞれの軸方向長さL1が熱応力を緩和することができる軸方向長さLsに比較して短くなる。このため、側壁335aと傾斜部335dの境界部分P3と、側壁335bと傾斜部335eの境界部分P4に熱応力が集中してしまう。
【0049】
この側壁335aと傾斜部335dの境界部分P3および側壁335bと傾斜部335dの境界部分P4での熱応力の集中を緩和するためには、図8(b)に示すように、境界部分P3およびP4と底部335cの間の軸方向長さL1を熱応力を緩和することができる軸方向長さLsに設定する必要がある。このように、軸方向長さL1を熱応力を緩和することができる軸方向長さLsに設定するため、例えば、図8(b)に示す寸法により22.5度の面取りを行って傾斜部335dおよび335eを形成すると、傾斜部335dの側壁335aに対する傾斜角θ2と、傾斜部335eの側壁335bに対する傾斜角θ2がそれぞれ、図8(a)に示す傾斜角θ1より緩やかとなり、側壁335aと傾斜部335dの境界部分P3と、側壁335bと傾斜部335eの境界部分P4での熱応力の集中を緩和することができる。しかしながら、傾斜部335dと底部335cの境界部分P1と、傾斜部335eと底部335cの境界部分P2では、図8(b)で熱膨張の方向が矢印で示すように、底部335cでは軸方向となるのに対して傾斜部335dおよび335eでは熱膨張の方向がC面に相当する傾斜面に対して垂直方向となって、その方向が軸方向に対して90度近く大きく異なるため、境界部分P1およびP2に熱応力が集中してしまう。
【0050】
このように、側壁335aおよび335bと底部335cの間に一箇所に面取りを行ってC面に相当する傾斜面を有する傾斜部335dおよび335eを形成する場合には、側壁335a側の境界部分P3および側壁335b側の境界部分P4に熱応力が集中するか、または、底部335c側の境界部分P1およびP2に熱応力が集中することになる。図8(a)のC面取りに代えてR面取りを行った場合でも、R面取りの湾曲部と側壁335aおよび335bの境界部分は、C面取りの傾斜部335dと側壁335aの境界部分P3および傾斜部335eと側壁335bの境界部分P4と同じ位置となり、境界部分P3およびP4と底部335cの間の軸方向長さL1は熱応力を緩和することができる軸方向長さLsより短くなり、熱応力緩和を十分に行うことができない。
【0051】
そこで、本実施形態では、図8(c)に示すように、底部335cから熱応力を緩和することができる軸方向長さLsに相当する側壁335aおよび335bの端部から軸方向に対して、例えば、図8(c)に示す寸法により約6.4度の面取りを行って第1傾斜角θ3の第1応力緩和傾斜部336aおよび336bを形成し、底部335c側については応力緩和を行うことができる図8(a)に示すような、例えば、図8(c)に示す寸法により45度の面取りを行って第2傾斜角θ4の第2応力緩和傾斜部336cおよび336dを形成している。45度の面取りを行った第2応力緩和傾斜部336cおよび336dの形成によって、第2応力緩和傾斜部336cと側壁335aとの間と、第2応力緩和傾斜部336dと側壁335bとの間の角度θ4はそれぞれ45度に形成され、第2応力緩和傾斜部336cおよび336dと底部335cとの間の角度θ5は45度に形成される。これにより、第1軸方向穴331の側壁335aおよび335bと底部335cの間には、第1応力緩和傾斜部336aと第2応力緩和傾斜部336c、第1応力緩和傾斜部336bと第2応力緩和傾斜部336dの組合わせにより、それぞれ2段の応力緩和傾斜部336が形成されている。したがって、絶縁部材33に形成される第1軸方向穴331の側壁335aと底部335cの境界部分P0aの周辺や、第1軸方向穴331の側壁335bと底部335cの境界部分P0bの周辺には、壁部333を形成する領域A、第2応力緩和傾斜部336cおよび336dを形成する領域B-1と、第1応力緩和傾斜部336aおよび336bを形成する領域B-2と、側壁335aおよび335bを形成する領域Cを有するものとなる。なお、半径方向に対向する側壁335aおよび335bと底部335cの間に2段の応力緩和傾斜部336を形成する場合に限らず、円周方向の両端部の側壁334にも底部335cとの間に2段の応力緩和傾斜部を形成してもよい。
【0052】
また、上記のように、第2応力緩和傾斜部336c、336dの軸方向に対する第2傾斜角θ4は、第1応力緩和傾斜部336a、336bの軸方向に対する第1傾斜角θ3より大きく設定されている。そして、図8(c)に示すように、第1傾斜角θ3および第2傾斜角θ4は、壁部333の熱膨張による軸方向の膨張量に応じて熱応力の集中を緩和可能な角度に設定されている。
【0053】
このように、2段の応力緩和傾斜部336を形成することにより、側壁335aと第1応力緩和傾斜部336aの境界部分P13と底部335cの間、および、側壁335bと第1応力緩和傾斜部336bの境界部分P14と底部335cの間の軸方向長さL1を熱応力を緩和することができる軸方向長さLsとすることができるとともに、第1応力緩和傾斜部336aおよび336bを形成する領域B-2と、側壁335aおよび335bを形成する領域Cの間で熱膨張の方向の変化が小さくなるため、境界部分P13およびP14での壁部333の軸方向の熱膨張による熱応力の集中を緩和することができる。
【0054】
そして、底部335cと第2応力緩和傾斜部336cの境界部分P11と、底部335cと第2応力緩和傾斜部336dの境界部分P12においても、壁部333を形成する領域Aと、第2応力緩和傾斜部336cおよび336dを形成する領域B-1の間で熱膨張の方向の変化が図8(b)に比べて小さく、熱膨張の方向が大きく変化するのを抑制するため、境界部分P11およびP12での壁部333の軸方向の熱膨張による熱応力の集中を緩和することができる。
【0055】
さらに、第1応力緩和傾斜部336aと第2応力緩和傾斜部336cの境界部分と、第1応力緩和傾斜部336bと第2応力緩和傾斜部336dの境界部分においても、第2応力緩和傾斜部336cおよび336dを形成する領域B-1と、第1応力緩和傾斜部336aおよび336bを形成する領域B-2の間で熱膨張の方向の変化が大きく変化するのを抑制するため、第1応力緩和傾斜部336aと第2応力緩和傾斜部336cの境界部分P15、第1応力緩和傾斜部336bと第2応力緩和傾斜部336dの境界部分P16での壁部333の軸方向の熱膨張による熱応力の集中を緩和することができる。
【0056】
本出願人により実際に熱応力解析を行った結果では、第1軸方向穴331の半径方向の長さRを例えば3mmしか取れない構造であっても、図8(a)および図8(b)のように、1段の面取りを行って傾斜部335dおよび335eを形成した場合に比較して熱応力を約3分の2まで低下させることが可能となった。
【0057】
したがって、側壁335aおよび335bと底部335cの間に2段の応力緩和傾斜部336を形成することにより、壁部333の軸方向の熱膨張による第1軸方向穴331の底部335cの周辺(底部周辺)における熱応力の集中を解消することができ、絶縁部材33の繰り返しの熱応力の集中による耐久性の低下を抑制することができ、割れやクラックの発生を抑制して長寿命化することができる。ここで、第1軸方向穴331の底部335cの周辺(底部周辺)とは、第1軸方向穴331の側壁335aと底部335cの境界部分P0aの周辺や、第1軸方向穴331の側壁335bと底部335cの境界部分P0bの周辺のことを示す。以下の説明では底部周辺と省略して表記することとする。
【0058】
また、第1軸方向穴331と同様に、第2軸方向穴332についても、第2軸方向穴332の底部周辺には、第1応力緩和傾斜部336aおよび336bと、第2応力緩和傾斜部336cおよび336dが形成されており、2段の応力緩和傾斜部336を形成することにより、上記と同様の作用効果を得ることができる。
【0059】
以上のとおり説明してきた本実施形態によれば、回転子3の直径が小さく、回転子3の静電容量を低減させる場合で、第1軸方向穴331および第2軸方向穴332の底部周辺に十分な大きさの1段の面取りを行うことができないときでも、熱応力の集中を緩和して絶縁部材33の第1軸方向穴331と第2軸方向穴332の底部周辺の熱応力を低減させて、絶縁部材33を割れやクラックか発生しづらくさせることができ、耐久性を向上させることができる。
【0060】
上記説明では、永久磁石電動機1の使用環境や駆動状態で固定子2の巻線23での発熱によって壁部333が熱膨張する場合について説明したが、永久磁石電動機1の使用環境や駆動状態によって温度降下する際の熱収縮時にも第1軸方向穴331および第2軸方向穴332の底部周辺における熱応力の集中を緩和することができる。
【0061】
したがって、シャフト35を支持する第1軸受41および第2軸受42の電食を防止するために回転子3に絶縁部材33を配置し、絶縁部材33に第1軸方向穴331と第2軸方向穴332を形成した場合に、直径の小さな回転子3を製作する際に問題となる絶縁部材33に発生する熱応力の集中を緩和させることができる。結果、回転子3の静電容量を低減するとともに、耐久性を有する小型の回転子3を製作することができ、永久磁石電動機1自体も小型化することができる。
【0062】
なお、上記実施形態では、第1応力緩和傾斜部336aおよび336bと第2応力緩和傾斜部336cおよび336dを、それぞれ平面による面取りの形状とした場合について説明したが、これに限定されるものではなく、平面による面取りに代えて湾曲面による面取りを適用することもできる。
【0063】
また、上記実施形態では、第1軸方向穴331および第2軸方向穴332の底部周辺に2段の熱応力緩和傾斜部336を形成した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、3段以上の熱応力傾斜部を形成するようにしてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、第1軸方向穴331および第2軸方向穴332の端面形状は、円周方向に沿う円弧状に形成する場合に限らず、円周方向の両端部を半円形状とすることができる。また、第1軸方向穴331および第2軸方向穴332の個数は8個に限定されるものではなく、絶縁部材33の機械的強度を確保できれば、任意の個数とすることができる。また、第1軸方向穴331および第2軸方向穴332の個数は、複数に限定されるものではなく、第1軸方向穴331および第2軸方向穴332を1個の穴として円周方向に連続する形状に形成する場合でもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、第1軸方向穴331と第2軸方向穴332を壁部333に対して対称形状に形成しているので、第1軸方向穴331と第2軸方向穴332のそれぞれの底部周辺に応力緩和傾斜部336を形成するようにしたが、これに限定されるものではなく、第1軸方向穴331と第2軸方向穴332を壁部333に対して非対称形状に形成した場合には、第1軸方向穴331および第2軸方向穴332のいずれか一方の、熱応力の集中度合いの強い方の底部周辺に応力緩和傾斜部を形成してもよい。
【0066】
さらに、上記実施形態では、外周側鉄心32の外周面に永久磁石31を配置した表面磁石形の回転子3に本発明を適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、外周側鉄心32の外周面に対する弦位置に軸方向に延長するスロットを形成し、このスロット内に永久磁石を配置した埋込磁石形の回転子にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1…永久磁石電動機
2…固定子
21…固定子鉄心
22…インシュレータ
23…巻線
3…回転子
31…永久磁石
311…永久磁石片
32…外周側鉄心
321…内周面
33…絶縁部材
33a…一端面
33b…他端面
331…第1軸方向穴
332…第2軸方向穴
333…壁部
334…隔壁
335a,335b…側壁
335c…底部
335d、335e…傾斜部
336…応力緩和傾斜部
336a,336b…第1応力緩和傾斜部
336c,336d…第2応力緩和傾斜部
34…内周側鉄心
341…外周面
343…貫通穴
35…シャフト
41…第1軸受
42…第2軸受
51…第1ブラケット
511…ブラケット本体
512…第1軸受収容部
52…第2ブラケット
521…第2軸受収容部
522…フランジ部
O…中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8