(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】化粧板および化粧板の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20220621BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20220621BHJP
B32B 27/42 20060101ALI20220621BHJP
E04F 13/08 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/12
B32B27/42 102
E04F13/08 E
(21)【出願番号】P 2018066254
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2021-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】武田 幸典
(72)【発明者】
【氏名】中谷 正樹
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-074703(JP,A)
【文献】特開2017-035810(JP,A)
【文献】特開昭60-042039(JP,A)
【文献】特開2001-071447(JP,A)
【文献】特開2001-191474(JP,A)
【文献】特開昭61-108795(JP,A)
【文献】特開2017-159608(JP,A)
【文献】特開2017-154359(JP,A)
【文献】特開2017-074679(JP,A)
【文献】国際公開第2015/016255(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
D21B 1/00-1/38
D21C 1/00-11/14
D21D 1/00-99/00
D21F 1/00-13/12
D21G 1/00-9/00
D21H 11/00-27/42
D21J 1/00-7/00
E04F 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
難燃性繊維を含む芯材層と、
前記芯材層の一方の面上に設けられた基材層と、
前記基材層の前記芯材層とは反対側に設けられた印刷層と、
前記印刷層および前記基材層を含んで構成され、メラミン系樹脂を含む樹脂層と、を備え、
前記樹脂層は、前記印刷層よりも前記基材層とは反対側に露出した表面層を有し、
前記表面層の最小厚さは、
2μm以上であ
り、
前記表面層の最大厚さは、18μm以下であることを特徴とする化粧板。
【請求項2】
前記樹脂層は、メラミン系樹脂を含む樹脂材料と、前記樹脂材料中に分散されたフィラーとを有している請求項
1に記載の化粧板。
【請求項3】
前記印刷層は、水系分散媒と、前記水系分散媒中に分散されたラテックス粒子とを含むインクにより形成されたものである請求項1
または2に記載の化粧板。
【請求項4】
基材層と、前記基材層上に設けられた印刷層とを有する第1の積層体と、難燃性繊維を含む芯材層と、を用意する用意工程と、
前記第1の積層体にメラミン系樹脂の前駆体を含む樹脂材料を含浸して第2の積層体を得る含浸工程と、
前記芯材層を前記第2の積層体
の前記基材層に接合する接合工程と、を有し、
前記印刷層よりも前記基材層とは反対側に露出し、最小厚さが
2μm以上
で、最大厚さが18μm以下の表面層を形成することを特徴とする化粧板の製造方法。
【請求項5】
前記接合工程では、2MPa以上8MPa以下の圧力で前記第2の積層体および前記芯材層を加圧する請求項
4に記載の化粧板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧板および化粧板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビル、ホテル、マンションのロビーや会議室、オフィスの壁面には、化粧板(化粧板)を複数壁に取り付けることで、見栄えの良い空間が演出されている。また、このような化粧板は不動産だけでなく、電車等の車両用内装材としても使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような化粧板は、表面に、メラミン樹脂等で構成された硬質材料層を有し、優れた硬度を有し、傷がつきにくいものとなっている。そして、化粧板には、一般に、木目調や石材調等の各パターンが印刷により設けられている。すなわち、化粧板は、硬質材料層と印刷層とが積層された積層体となっている。
【0004】
しかしながら、従来のメラミン化粧板では、硬度等には優れるものの、さらに優れた難燃特性(難燃性)が要求されている。
【0005】
さらに、このような化粧板は、設置された後等に、アセトン等の有機溶剤によって表面(硬質材料層)を洗浄されることがある。硬質材料層の材料や厚さによっては、硬質材料層を有機溶剤が透過し、印刷層に到達する可能性が有る。この場合、印刷層のインクにもよるが、印刷層に変色が生じる、すなわち、汚染されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、難燃特性に優れ、かつ、耐汚染性に優れた化粧板および化粧板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)~(5)の本発明により達成される。
(1) 難燃性繊維を含む芯材層と、
前記芯材層の一方の面上に設けられた基材層と、
前記基材層の前記芯材層とは反対側に設けられた印刷層と、
前記印刷層および前記基材層を含んで構成され、メラミン系樹脂を含む樹脂層と、を備え、
前記樹脂層は、前記印刷層よりも前記基材層とは反対側に露出した表面層を有し、
前記表面層の最小厚さは、2μm以上であり、
前記表面層の最大厚さは、18μm以下であることを特徴とする化粧板。
【0009】
(2) 前記樹脂層は、メラミン系樹脂を含む樹脂材料と、前記樹脂材料中に分散されたフィラーとを有している上記(1)に記載の化粧板。
【0010】
(3) 前記印刷層は、水系分散媒と、前記水系分散媒中に分散されたラテックス粒子とを含むインクにより形成されたものである上記(1)または(2)に記載の化粧板。
【0011】
(4) 基材層と、前記基材層上に設けられた印刷層とを有する第1の積層体と、難燃性繊維を含む芯材層と、を用意する用意工程と、
前記第1の積層体にメラミン系樹脂の前駆体を含む樹脂材料を含浸して第2の積層体を得る含浸工程と、
前記芯材層を前記第2の積層体の前記基材層に接合する接合工程と、を有し、
前記印刷層よりも前記基材層とは反対側に露出し、最小厚さが2μm以上で、最大厚さが18μm以下の表面層を形成することを特徴とする化粧板の製造方法。
【0012】
(5) 前記接合工程では、2MPa以上8MPa以下の圧力で前記第2の積層体および前記芯材層を加圧する上記(4)に記載の化粧板の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、難燃特性に優れ、かつ、耐汚染性に優れる化粧板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】本発明の化粧板の製造方法を説明するための断面図であって、(a)が、基材層用意工程を示す断面図、(b)が、インク付与工程を示す断面図、(c)が、芯材層用意工程を示す断面図、(d)が、樹脂層形成工程を示す断面図である。
【
図4】本発明の化粧板の製造方法を説明するための図であって、(a)が、接合工程を示す断面図、(b)が、接合工程において加熱・加圧を行っている状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の化粧板を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<実施形態>
図1は、本発明の化粧板の実施形態の断面図である。
図2は、
図1に示す化粧板の断面図である。
【0016】
なお、
図1では、上側を「上」または「表」と言い、下側を「下」または「裏」とも言う。また、本明細書で参照する図面では、一部を誇張して図示しており、実際の寸法とは大きく異なる。
【0017】
<化粧板>
化粧板1は、難燃性繊維を含む芯材層2と、芯材層2の一方の面(上面)上に設けられた基材層3と、基材層3の芯材層2とは反対側に設けられた印刷層4と、印刷層4および基材層3を含んで構成され、メラミン系樹脂を含む樹脂層5と、を備えている。また、樹脂層5は、印刷層4よりも基材層3とは反対側に露出した表面層51を有している。この表面層51の最小厚さは、1μm以上である。
【0018】
このような本発明によれば、難燃特性に優れ、かつ、耐汚染性に優れる化粧板を得ることができる。
【0019】
以下、各層の構成について、詳細に説明する。
<芯材層>
芯材層2は、難燃性繊維を含んで構成されている。これにより、化粧板1の難燃特性を高めることができ、さらに、化粧板1の安定性、取り扱いのし易さを特に優れたものとすることができる。
【0020】
芯材層2は、例えば、ガラスクロスで構成されたもの、フェノール系樹脂で構成された層を有するもの、金属層を有するもの等が挙げられる。
【0021】
中でも、芯材層2としては、ガラスクロスで構成されたものが好ましい。
これにより、化粧板1の剛性、可撓性等を最適なものとしつつ、化粧板1の耐熱性、不燃性等を特に優れたものとすることができる。
【0022】
ガラスクロスとしては、特に限定されず、例えば、ガラス織布、ガラス不織布等が挙げられ、中でも不燃性、強度の点からガラス織布が好ましい。
【0023】
また、ガラスクロスを構成するガラスとしては、例えば、Eガラス、Cガラス、Aガラス、Sガラス、Dガラス、NEガラス、Tガラス、Hガラス等が挙げられる。これらの中でもTガラスを用いた場合、ガラスクロスの熱膨張係数を小さくすることができる。また、Eガラスを用いた場合、十分な機能を確保しつつ、化粧板1の生産コストをより低いものとすることができる。
【0024】
ガラスクロスの重量は、特に限定するものではないが、建築基準法第2条第9号の不燃性適合要件である「燃焼後の亀裂・貫通があってはならない」を満たす必要がある場合は、坪量80g/m2以上とすることが好ましい。また、重量の上限は特に制約を必要としないが、材料コストと加工性の面から坪量250g/m2以下が好ましい。
【0025】
また、芯材層2は、複数の層が積層されたものであってもよい。例えば、フェノール系樹脂を繊維性の基材(例えば、クラフト紙等の紙で構成された基材)に含浸させてなる部材を複数重ね合わせて接合したものを芯材層2として用いることができる。
【0026】
芯材層2の厚さ(平均厚さ)は、100μm以上であるのが好ましい。
これにより、化粧板1の耐熱性、不燃性を特に優れたものとすることができる。また、厚さの上限については、特に限定されないが、厚さが大きいほど化粧板1の厚さと重量が増大するとともに、コストも上昇するため、最終的な製品における設計上、許容される範囲で設定することが好ましく、具体的には、例えば、350μm以下であるのが好ましい。
【0027】
<基材層>
基材層3は、一方の面上に後述する印刷層4が印刷により設けられる層である。この基材層3としては、特に限定されないが、紙基材を用いることができる。これにより、化粧板の製造時において、インクジェット法により付与されたインクが紙基材の内部に過度に浸透し、印刷層の発色性、化粧板の審美性を十分に優れたものとすることができない。
【0028】
また、紙は、安定的かつ容易に入手が可能であるため、化粧板1の安定的な供給の観点から有利である。また、紙は、一般に、隠蔽性に優れているため、化粧板1の背面側に配された部材等が、印刷層4の外観に悪影響を与えることを効果的に防止することができ、印刷層4の視認性、化粧板1の審美性等をより確実に優れたものとすることができる。また、紙は、一般に安価であるため、化粧板1の生産コストを抑制する観点からも有利である。
【0029】
基材層3としての紙は、例えば、普通紙等であってもよいし、受容層が設けられた専用紙(例えば、インクジェット用専用紙)や、パルプ、リンター、合成繊維、ガラス繊維等を用いることができる。また、必要に応じて、酸化チタン等の顔料を含有する酸化チタン含有化粧紙等を用いることができる。
【0030】
また、紙基材を用いた場合には、印刷層4を設けても、化粧板全体としての曲げ弾性率が小さいものとなり、コシ(張り)を十分なものとすることができず、化粧板1の取扱いのし易さ(例えば、壁などに貼着する作業の容易性)が低いものとなるため、さらに、コア材等を設ける必要があったが、本発明では、
図2に示すように、コア材を有さない場合でも、基材と印刷層と硬質材料層とを有すれば、十分なコシが得られ、化粧板1の取扱いのし易さを優れたものとすることができる。また、コア材等を設けなくてもよいため、化粧板を好適に軽量化することができ、曲げ加工性等を特に優れたものとすることができる。
【0031】
特に、基材層3が酸化チタンを含有するものであると、基材層3に設けられた印刷層4の発色性をより優れたものとすることができ、化粧板1の審美性をより優れたものとすることができる。また、化粧板1の難燃特性をより優れたものとすることができる。
【0032】
基材層3の坪量は、特に限定されないが、40g/m2以上150g/m2以下であることが好ましい。
【0033】
表面層基材の厚さは、特に限定されないが、50μm以上300μm以下であるのが好ましく、80μm以上200μm以下であるのがより好ましく、90μm以上110μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、化粧板1の加工性をより優れたものとすることができる。
【0034】
<印刷層>
印刷層4は、例えば、インクジェット法により形成される。このようにインクジェット法を採用することにより、グラビア印刷等と異なり、版の準備が不要となり、短期間で、種々のパターンの印刷部(印刷層)を好適に形成することができる。したがって、多品種の化粧板を好適に提供することができる。また、パターンの微妙な調整等にも好適に対応することができるため、需要者の要求に的確に応えることができる。
【0035】
印刷層4は、いかなるパターンで設けられたものであってもよいが、通常、需要者の要求等に応じて決定されたものである。
【0036】
印刷層4のパターンとしては、例えば、木目調、石材調、筋目加工等が施された金属調、各種幾何学模様等が挙げられる。
【0037】
印刷層4の形成に用いるインクとしては、水(水系分散媒)とともに熱可塑性樹脂(ラテックス粒子)を含むラテックスインクを好適に用いることができる。
【0038】
ラテックスインクは、基材層3にインクジェット法によりインク(硬化系インク)を付与した後に、乾燥処理で水を除去し、引き続き加熱により熱可塑性樹脂を軟化させ、その後冷却することにより、基材層3に強固に定着した印刷層4を形成することができる。また、ラテックスインクは、除去される液体成分として水を含むものであるため、環境にも優しい。
【0039】
特に、ラテックスインクは、水が基材層3に染み込むが、熱可塑性樹脂が基材層3の表面に膜を生成して、基材層3に熱可塑性樹脂が染み込むのを防止することができる。よって、印刷層4がにじんで見えるのを防止することができる。すなわち、鮮明な印刷層4を得ることができる。
【0040】
<樹脂層>
樹脂層5は、メラミン系樹脂を含んで構成されている。また、メラミン系樹脂を含む樹脂層5と、を備えている。また、樹脂層5は、表面層51と、表面層51よりも下側の内側層52とを有している。
【0041】
表面層51は、印刷層4よりも基材層3とは反対側に露出しており、化粧板1の表面に位置している。内側層52は、印刷層4および基材層3を含んで構成されている、すなわち、含浸している。
このような樹脂層5による効果は、後に詳述する。
【0042】
まず、メラミン系樹脂について説明する。
メラミン系樹脂は、少なくとも、メラミン化合物とアルデヒド化合物とを構成成分として含む重合体である。
【0043】
メラミン系樹脂を構成するメラミン化合物は、1,3,5-トリアジン骨格を有する化合物で、トリアジン環に3つのアミノ基が導入された化合物である。
【0044】
メラミン化合物の好ましい構造としては、例えば、下記式(3)で表されるもの等が挙げられる。
【0045】
【化1】
(式(3)中、R
1、R
2およびR
3は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数が1以上4以下の炭化水素基である。)
メラミン化合物としては、特に、式(3)のR
1、R
2およびR
3がいずれも水素原子である化合物(メラミン)が好ましい。
【0046】
これにより、化粧板1の硬度および加工性をより高いレベルで両立することができる。また、化粧板1を構成するメラミン系樹脂の合成をより効率よく行うことができる。
【0047】
メラミン系樹脂を構成するアルデヒド化合物は、分子内にアルデヒド基(-CHO)を有するものであればよく、下記式(2)で表されるもの等が挙げられる。
【0048】
【化2】
(式(2)中、Rは、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数が1以上10以下の炭化水素基である。)
アルデヒド化合物としては、特に、ホルムアルデヒドが好ましい。
【0049】
これにより、化粧板1の硬度および加工性をより高いレベルで両立することができる。また、化粧板1を構成するメラミン系樹脂の合成をより効率よく行うことができる。
【0050】
樹脂層5に含まれるメラミン系樹脂は、少なくとも、メラミン化合物とアルデヒド化合物とを構成成分として含む重合体であればよく、その他の構成成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、グアナミン化合物、スルホンアミド化合物等が挙げられる。
【0051】
樹脂層5に含まれるメラミン系樹脂が構成成分としてグアナミン化合物を含むものであると、表面層(メラミン系樹脂層)11の硬度を十分に高いものとし、傷が十分に付き難いものとしつつ、化粧板1の加工性をより優れたものとすることができる。
【0052】
グアナミン化合物は、1,3,5-トリアジン骨格を有する化合物で、トリアジン環に2つのアミノ基が導入された化合物である。
【0053】
グアナミン化合物の好ましい構造としては、例えば、下記式(1)で表されるもの等が挙げられる。
【0054】
【化3】
(式(1)中、Rは、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数が1以上10以下の炭化水素基である。)
【0055】
グアナミン化合物としては、例えば、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、ホルムグアナミン等が挙げられ、特に、式(1)のRがメチル基である化合物(アセトグアナミン)が好ましい。
【0056】
これにより、化粧板1の硬度および加工性をより高いレベルで両立することができる。また、化粧板1を構成するメラミン系樹脂の合成をより効率よく行うことができる。
【0057】
グアナミン化合物は、メラミン系樹脂中に所定の含有率で添加されている。
メラミン系樹脂が構成成分としてスルホンアミド化合物を含むものであると、化粧板1の耐湿性、防汚性、耐久性等を特に優れたものとすることができる。
【0058】
スルホンアミド化合物としては、例えば、p-トルエンスルホンアミド(CH3-C6H5-SO2NH2)、スルホンアミド、メタンスルホンアミド、ベンゼンスルホンアミド、トルエン-4-スルホンアミド、4-クロロベンゼンスルホンアミド、4-アミノベンゼンスルホンアミド、N-ブチル-4-メチル-ベンゼンスルホンアミド、N-フェニル-ベンゼンスルホンアミド、N-フェニル-4-メチル-ベンゼンスルホンアミド、4-アミノ-N-ピリジン-2-イルベンゼンスルホンアミド、4-アミノ-N-(5-メチル-チアゾール-2-イル)-ベンゼンスルホンアミド、4-アミノ-N-チアゾール-2-イル-ベンゼンスルホンアミド、4-アミノ-N-(5-メチル-イソキサゾール-3-イル)-ベンゼンスルホンアミド、4-アミノ-N-(2,6-ジメトキシ-ピリミジン-4-イル)-ベンゼンスルホンアミド、1,2-ベンズイソチアゾール-3(2H)-オン1,1-ジオキシド、4-アミノ-6-クロロ-ベンゼン-1,3-ジスルホン酸ジアミド、6-エトキシ-ベンゾチアゾール-2-スルホン酸アミド、5-ジメチルアミノ-ナフタレン-1-スルホン酸アミド、4-ナトリウムオキシ-ベンゼンスルホンアミド、N-(4-ベンゼンスルホニルアミノ-フェニル)-ベンゼンスルホンアミド等が挙げられるが、中でも、p-トルエンスルホンアミドが好ましい。
【0059】
これにより、化粧板1の耐湿性、防汚性、耐久性等をさらに優れたものとすることができる。また、化粧板1を構成するメラミン系樹脂の合成をより効率よく行うことができる。
【0060】
樹脂層5は、前述したメラミン系樹脂以外の材料を含むものであってもよい。
例えば、フィラー、2価以上のポリアルキレングリコールやその誘導体、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系共重合体、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、フッ素またはシリコンを含む構造の化合物、増粘剤、浸透促進剤、消泡剤等が挙げられる。
【0061】
前述したように、樹脂層5には、フィラーが含まれている。これにより、後述するようなアセトンを含む溶剤が樹脂層5(表面層51)を透過しにくくすることができる。よって、化粧板1の耐汚染性を高めることができる。このようなフィラーとしては、例えば、アルミナ、シリカ等の粒子やセルロース、ガラスファイバー等の繊維が挙げられる。
【0062】
2価以上のポリアルキレングリコールやその誘導体を含む場合、硬化した樹脂の弾性率を下げ、加工性や靭性(割れにくさ)等をより優れたものとすることができる。
【0063】
2価以上のポリアルキレングリコールおよびその誘導体の具体例としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリ(オキシエチレン-オキシプロピレン)グリコール、ポリ(オキシエチレン-オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレン-オキシテトラメチレン)グリコール(以上、2価のポリアルキレングリコールまたはその誘導体)、ポリエチレングリコールグリセリルエーテル、ポリプロピレングリコールグリセリルエーテル、ポリブチレングリコールグリセリルエーテル、ポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)グリセリルエーテル、ポリ(プロピレングリコール-テトラメチレングリコール)グリセリルエーテル(以上、3価のポリアルキレングリコール多価エーテル)、ポリエチレングリコールペンタエリスリトールエーテル、ポリプロピレングリコールペンタエリスリトールエーテル、ポリブチレングリコールペンタエリスリトールエーテル、ポリ(エチレングリコール-プロピレングリコール)ペンタエリスリトールエーテル(以上、4価のポリアルキレングリコール多価エーテル)等が挙げられる。
【0064】
また、ウレタン系樹脂を含むことにより、樹脂層5と芯材層2との接合強度をより優れたものとすることができるとともに、化粧板1により優れた柔軟性を付与することができ、化粧板1の曲げ加工性をより優れたものとすることができる。
【0065】
ウレタン系樹脂は、いかなる形態で含まれるものであってもよく、例えば、前述したメラミン系樹脂と混合された状態で含まれるものであってもよいが、樹脂層5中において粒子の状態で含まれるもの(特に、ウレタン系樹脂を含む材料で構成された粒子が溶剤に分散したエマルジョンを付与した後、溶剤を除去することにより得られたもの)であるのが好ましい。
【0066】
これにより、樹脂層5と芯材層2との接合強度をさらに優れたものとすることができるとともに、化粧板1にさらに優れた柔軟性を付与することができ、化粧板1の曲げ加工性をさらに優れたものとすることができる。
【0067】
前記粒子は、例えば、ウレタン系樹脂のみで構成されるものであってもよいが、ウレタン系樹脂とともにアクリル系樹脂を含むもの、特に、単一粒子内にアクリル系樹脂とウレタン系樹脂との異相構造を有する粒子(ウレタンアクリル複合粒子)であるのが好ましい。
【0068】
ウレタン系樹脂とアクリル系樹脂とは、各々が芯材層2との接着強度に優れているため、ウレタンアクリル複合粒子を用いることで、芯材層2との良好な接着強度を発現することができる。さらに、ウレタン系樹脂が有する優れた特徴(優れた強靭性、弾性、柔軟性)という特徴と、アクリル系樹脂が有する優れた特徴(優れた透明性、耐久性、耐候性、耐薬品性、造膜性)とがともに効果的に発揮される。
【0069】
なお、本明細書中において「異相構造」とは、1個の粒子内に異なる種類の樹脂からなる相が複数存在する構造を意味し、例えば、コアシェル構造、局在構造、海島構造等が挙げられる。
【0070】
前述した中でも、前記ウレタンアクリル複合粒子は、アクリル成分をコアとし、ウレタン成分をシェルとするコアシェル構造を有するものであるのが好ましい。
【0071】
ウレタンアクリル複合粒子が上記コアシェル構造であると、ウレタン系樹脂およびアクリル系樹脂の両方の特性を有しつつ、外郭にウレタン系樹脂の特性が付与される。
【0072】
前述した説明では、樹脂層5中に含まれる粒子が、ウレタン系樹脂を含むものである場合について代表的に説明したが、その他の熱可塑性樹脂(例えば、酢酸ビニル系共重合体、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)等)で構成された粒子を含む場合であっても、前記と同様の効果が得られる。
【0073】
樹脂層5が前記粒子を含む場合、当該粒子は、樹脂層5のうち第2の面502側に偏在しているのが好ましい。すなわち、
これにより、前記粒子を含むことによる効果がより顕著に発揮されるとともに、前述したようなメラミン系樹脂を含む材料で構成されたことによる効果をより顕著に発揮させることができる。
【0074】
また、樹脂層5の第2の面502側における粒子間の配列状態は、特に限定されず、例えば、直鎖構造等が挙げられる。粒子の構造および粒子間の配列状態は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)により確認することができる。
【0075】
前記粒子の平均粒径は、30nm以上100nm以下であるのが好ましく、60nm以上90nm以下であることがより好ましい。
【0076】
これにより、樹脂層5を基材層3に含浸させる場合、粒子の繊維間への含浸性が向上し、基材層3のより深い部位にまでエマルジョン樹脂粒子を含浸させることができるため、樹脂層5の柔軟性を特に優れたものとすることができる。
【0077】
本明細書において、平均粒径とは、特に断りのない限り、体積基準の平均粒子径のことを指す。
【0078】
ここで、粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD-7000を用いて、水中に対象粒子を1分間超音波処理することにより分散させ、測定することができる。
【0079】
これにより、例えば、前述した樹脂材料(メラミン系樹脂、前記粒子を構成する樹脂等)を含浸させた状態で好適に担持することができ、化粧板1の耐久性等を特に優れたものとすることができる。
【0080】
特に、基材層3を有することにより、樹脂層5の一方の面(第1の面501)側にメラミン系樹脂を偏在させ、かつ、他方の面(第2の面502)側に前記粒子を偏在させることができる。すなわち、主ワニスとして、メラミン系樹脂を表面層51側に偏在させ、補助ワニスとして、前記粒子を表面層51とは反対側に偏在させることができる。これにより、これらが不本意に混合することを効果的に防止することができ、これらの機能をより効果的に発揮させることができる。また、樹脂層5が表面層基材を備えるものとすることにより、表面層基材として予め印刷等が施されたものを用いることにより、化粧板1の審美性(美的外観)を容易かつ確実に優れたものとすることができる。
【0081】
樹脂層5の第1の面501側に担持される樹脂中のメラミン系樹脂の含有量は、特に限定されないが、80質量%以上100質量%以下であるのが好ましく、95質量%以上100質量%以下であるのがより好ましい。
これにより、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0082】
樹脂層5の厚さは、特に限定されないが、50μm以上300μm以下であるのが好ましく、80μm以上200μm以下であるのがより好ましく、90μm以上110μm以下であるのがさらに好ましい。
【0083】
これにより、化粧板1の形状の安定性、加工性のバランスを特に優れたものとすることができるとともに、化粧板1の硬度等も特に優れたものとすることができる。
【0084】
樹脂層5の表面(第1の面501)のマルテンス硬度は、300N/mm2以上700N/mm2以下であるのが好ましく、350N/mm2以上650N/mm2以下であるのがより好ましく、400N/mm2以上600N/mm2以下であるのがさらに好ましい。
【0085】
これにより、樹脂層5の硬度が十分に高いものとなり、傷が特に付き難いものになるとともに、化粧板1の加工性も特に優れたものとなる。
【0086】
なお、本明細書におけるマルテンス硬度は、表面皮膜物性試験機(PICODENTOR HM-500、株式会社フィッシャー・インストルメンツ製)を用いて測定される値であり、具体的な測定方法は次の通りである。この測定方法では、
図5(a)に示されるダイヤモンド圧子(ビッカーズ圧子)を用いて、
図5(b)に示すように測定試料にダイヤモンド圧子を押し込み、表面にできたピラミッド形のくぼみの対角線の長さからその表面積A(mm
2)を計算し、試験荷重F(N)を割ることにより硬さを求める。押し込み条件は、室温(実験室環境温度)において、
図5(c)に示される通り、先ず0~5mNまでの負荷を10秒間で加え、次に5mNの負荷で5秒間保持し、最後に5~0mNまでの除荷を10秒間で行う。そして、表面積A、試験荷重Fに基づきF/Aにより求められる硬度が前記マルテンス硬度である。
【0087】
また、化粧板1は、全体厚さ(平均厚さ)が0.1mm以上2mm以下であるのが好ましく、0.1mm以上1.2mm以下であるのがより好ましい。
【0088】
これにより、化粧板1は、十分な強度を有しつつ、加工性、取り扱い性が特に優れたものとなる。
【0089】
さて、アセトンを含む有機溶剤を布等に含ませて、化粧板1の表面、すなわち、表面層51を洗浄することがある。表面層51の厚さが薄すぎた場合、前記有機溶剤が表面層51を透過して、印刷層4に達することがある。その結果、アセトンにより印刷層4が変色することがある、すなわち、汚染されることがある。このことは、芯材層2の構成に起因することを本発明者らは見出した。以下、このことについて説明する。
【0090】
図2に示すように、基材層3の上面には、微細な凹凸が形成されている。これは、芯材層2中の難燃性繊維の形状に倣って、芯材層2の上面に凹凸が形成され、その上に基材層3が積層されているためである。
【0091】
このような凹凸が形成された基材層3上の印刷層4も同様に上面に凹凸が形成される。そして、印刷層4の凹凸に倣って、表面層51も凹凸に倣って波打った形状となる。
【0092】
また、表面層51の上面を平坦面とするため、凹凸の程度によっては、表面層51の厚さが極端に薄くなったりすることがある。この場合、前記有機溶剤が透過しやすく、耐汚染性が不十分となる。
【0093】
このように表面層51の厚さを十分に確保しないと、化粧板1の耐汚染性の低下を招く。そこで、本発明らは、表面層51の最小厚さを1μm以上とすることにより、上記課題を解決することを見出した。表面層51の最小厚さを1μm以上とすることにより、前記有機溶剤が表面層51を透過して、印刷層4に達するのを防止することができ、印刷層4がアセトンにより変色するのを防止することができる。すなわち、化粧板1は、耐汚染性に優れる。
【0094】
なお、表面層51の最小厚さを1μm以上とすれば、化粧板1の耐汚染性を優れたものとすることができるが、表面層51の最小厚さを2μm以上とした場合、さらに優れた耐汚染性を得ることができる。
【0095】
また、表面層51の最大厚さは、20μm以下であるのが好ましく、18μm以下であるのがより好ましい。表面層51が厚すぎると、化粧板1を例えば曲げ変形させた際、表面層51にクラックが生じやすくなり、該クラックを介して有機溶剤が印刷層4に達する可能性が有る。
【0096】
また、前述したように、表面層51には、フィラーが分散されているため、フィラーが有機溶剤の浸透を阻止することができる。よって、化粧板1の耐汚染性をさらに高めることができる。
【0097】
さらに、化粧板1は、前述したように、難燃特性に優れる。
以上より、化粧板1は、難燃特性に優れ、かつ、耐汚染性に優れる。
【0098】
<化粧板の製造方法>
次に、本発明の化粧板の製造方法について説明する。
【0099】
図3は、本発明の化粧板の製造方法を説明するための断面図であって、(a)が、基材層用意工程を示す断面図、(b)が、インク付与工程を示す断面図、(c)が、芯材層用意工程を示す断面図、(d)が、樹脂層形成工程を示す断面図である。
図4は、本発明の化粧板の製造方法を説明するための図であって、(a)が、接合工程を示す断面図、(b)が、接合工程において加熱・加圧を行っている状態を示す断面図である。
【0100】
本発明の化粧板の製造方法は、基材層3と、基材層3上に設けられた印刷層4とを有する第1の積層体10と、難燃性繊維を含む芯材層2と、を用意する用意工程と、第1の積層体10にメラミン系樹脂の前駆体を含む樹脂材料を含浸して第2の積層体20を得る含浸工程と、芯材層2を第2の積層体20に接合する接合工程と、を有している。
【0101】
<用意工程A>
用意工程は、基材層用意工程と、インク付与工程と、芯材層用意工程とを有している。
【0102】
(基材層用意工程A-1)
基材層用意工程では、前述したような基材層3を用意する(
図3(a)参照)。
【0103】
基材層3としては、フィルム状のものを好適に用いることができる。また、本工程では、例えば、ロール状に巻き取られた長尺の基材を用いることができ、本工程に際して、または、本工程よりも後に、当該基材を所定の長さに切断してもよい。
【0104】
また、本工程で準備する基材層3は、後のインク付与工程に先立ち、例えば、プラズマ処理、紫外線照射処理、プライマー処理等の各種表面処理(表面活性化処理)等が施されたものであってもよい。これにより、基材層3と印刷層4との密着性を特に優れたものとすることができる。
【0105】
(インク付与工程A-2)
次に、基材層3に対して、インクジェット法により、基材層3を構成する樹脂材料を溶解または膨潤させる溶剤を含むインク2’を付与する(
図3(b)参照)。
【0106】
インクジェット法を用いてインク2’を付与することにより、グラビア印刷等を採用する場合と異なり、版の準備が不要となり、短期間で、種々のパターンの印刷層4を好適に形成することができる。したがって、多品種の化粧板1を好適に提供することができる。
【0107】
また、パターンの微妙な調整等にも好適に対応することができるため、需要者の要求に的確に応えることができる。
【0108】
このような基材層用意工程およびインク付与工程を経ることにより、第1の積層体10を得ることができる。
【0109】
(芯材層用意工程A-3)
芯材層用意工程では、前述したような芯材層2を準備する(
図3(c)参照)。
【0110】
芯材層2としては、フィルム状のものを好適に用いることができる。また、本工程では、例えば、ロール状に巻き取られた長尺の基材を用いることができ、本工程に際して、または、本工程よりも後に、当該基材を所定の長さに切断してもよい。
【0111】
なお、基材層用意工程、インク付与工程および芯材層用意工程は、上記の順に限定されないのは言うまでもない。
【0112】
<樹脂層形成工程(Bステージ層形成工程)>
本実施形態の製造方法では、Bステージの硬化性樹脂を含む材料で構成されたBステージ層5’を形成し、第2の積層体20を得る(
図3(d)参照)。Bステージ層5’は、前述した樹脂層5となる層である。
【0113】
特に、本実施形態では、Bステージ層5’は、第1の積層体10を一方の面側から未硬化の硬化性樹脂を含有する樹脂組成物に含浸し(含浸工程)、他方の面に前述したようなエマルジョンの固形分を担持させ(付与工程)、その後硬化させて形成される。
【0114】
エマルジョンの固形分を第1の積層体10に担持させる方法としては、例えば、エマルジョンを、スプレー装置、シャワー装置、キスコーター、コンマコーター等の公知の装置を用いて付与する方法等が挙げられる。
【0115】
また、本工程では、印刷層4よりも基材層3とは反対側に、表面層51となる露出層51’が形成されるように含浸を行い、第2の積層体20を得る。
【0116】
このとき、露出層51’の厚さは、3μm以上30μm以下であるのが好ましい。これにより、後述する接合工程において、露出層51’に圧力が加わったとしても、表面層51の厚さを十分に確保することができる。
【0117】
また、前述した硬化性樹脂組成物は、シリカ、セルロース等のフィラーを含んで構成されているため、基材層3の繊維の隙間に入り込み、その状態で繊維の隙間を塞ぐこととなる。よって、露出層51’が繊維の間に浸透するのを防止することができる。その結果、露出層51’の厚さを容易に確保することができる。
【0118】
このような含浸工程は、上面側、すなわち、印刷層4側から行ってもよく、下面側、すなわち、基材層3側から行ってもよく、双方側から行ってもよい。
【0119】
含浸工程を印刷層4側から行う場合、前述したようにフィラーを含んで構成されているため、露出層51’の厚さを十分に確保しやすくなる。
【0120】
一方、含浸工程を基材層3側から行う場合、基材層3側から樹脂を上側に押し上げていくこととなり、基材層3に樹脂材料が沈み込むのを防止することができる。その結果、露出層51’の厚さを十分に確保しやすくなる。
【0121】
また、基材層3側および印刷層4側の双方側から含浸工程を行う場合、印刷層4側から前述したような主ワニスを含浸し、基材層3側から前述したような補助ワニスを含浸することができる。よって、露出層51’を主ワニスで確実に形成することができるとともに、基材層3側に補助ワニスを偏在させることができる。その結果、基材層3と芯材層2との密着性を効果的に高めることができる。
【0122】
<接合工程>
次に、芯材層2を、Bステージ層5’のBステージの硬化性樹脂を含有する樹脂組成物が付与された側の面と対向するように配置、接触させ(
図4(a)参照)、その接触状態で加熱、加圧する(
図4(b)参照)。
【0123】
これにより、Bステージ層5’と基材層3とが熱圧着し、化粧板1が得られる。また、この加熱により、Bステージ層5’中に含まれる硬化性樹脂を含有する樹脂組成物が重合・硬化する(硬化工程)。これにより、化粧板1の表面硬度(表面層51の表面硬度)が優れたものとなる。
【0124】
また、上記の加熱の条件は、特に限定されないが、加熱温度130℃以上150℃以下、加熱時間は、10分間以上60分間以下であるのが好ましい。これにより、比較的速やかに樹脂組成物の効果を行うことができる。
【0125】
また、上記の加圧条件は、2MPa以上8MPa以下で行うのが好ましく、3MPa以上7MPa以下であるのがより好ましい。これにより、得られる化粧板1の各層の密着性を高めることができ、層間剥離を防止することができる。
【0126】
以上、本発明の化粧板について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、化粧板を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【実施例】
【0127】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。
1.化粧板の製造
(実施例1)
まず、坪量80g/m2の酸化チタン含有化粧紙(KJ特殊紙業(株)製)で構成された基材層を用意し、一方の面側からラテックスインク(MIMAKI社製)をインクジェット法により付与して基材層上に印刷層を形成した。
【0128】
次に、メラミン系樹脂(反応モル比1.4、樹脂固形分50質量%)を印刷層側から含浸し、基材層側から、ウレタンアクリル複合粒子のエマルジョン(中央理化工業社製「SU-100」、平均粒径:84nm、分散媒:水)を固形分で10g/m2となるように塗工した。
【0129】
その後、120℃の熱風乾燥機にて90秒乾燥し、基材層および印刷層を含んで構成されたBステージ層(Bステージの硬化性樹脂(メラミン系樹脂)を有する積層体を得た。
【0130】
なお、前記メラミン系樹脂は反応釜に原料メラミンとホルマリンを所定配合比率で仕込み触媒添加後、沸点まで昇温して還流反応し、メラミン溶解が完了したことを確認した上で、反応終点に達したら脱水処理にて樹脂固形分を調整し冷却する方法により合成した。
【0131】
一方で、Eガラスのガラス繊維で構成され、坪量が104g/m
2のガラスクロスで構成された芯材層を用意した。そして、基材層側(ウレタンアクリル複合粒子のエマルジョンが塗工された側)から上記積層体を芯材層に接触させ、140℃、2MPaの条件で40分間加熱加圧成形して、
図4に示すような化粧板を得た。得られた化粧板では、印刷層上の表面層の最小厚さは、2μmであり、基材層の平均厚さは、80μmであり、芯材層の平均厚さは、200μmであった。
【0132】
(実施例2)
化粧板における表面層の最小厚さ等を、表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして実施例2の化粧板を得た。
【0133】
(実施例3)
化粧板における表面層の最小厚さ等を、表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして実施例3の化粧板を得た。
【0134】
(実施例4)
化粧板における表面層の最小厚さ等を、表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして実施例4の化粧板を得た。
【0135】
(実施例5)
化粧板における表面層の最小厚さ等を、表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして実施例5の化粧板を得た。
【0136】
(実施例6)
化粧板における表面層の最小厚さ等を、表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして実施例6の化粧板を得た。
【0137】
(実施例7)
化粧板における表面層の最小厚さを、表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして実施例7の化粧板を得た。
【0138】
(比較例1)
化粧板における表面層の最小厚さを表1に示すように変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして比較例の化粧板を得た。
【0139】
2.評価
各実施例および比較例の化粧板を、以下の方法で評価した。
【0140】
<2-1.耐汚染性試験>
アセトンを表面層に塗布し、24時間後の表面層の変色の有無を目視により観察し、以下の評価基準で評価を行った。なお、変色が少ないほど、耐汚染性に優れるものとする。
【0141】
◎:変色が見られなかった。
○:若干変色が見られた。
△:変色が目立った。
【0142】
<2-2.耐煮沸性試験>
各実施例および比較例の化粧板を、沸騰水中30分浸漬という条件で煮沸性試験を行い、膨れが見られたか否かを目視で観察し、以下の評価基準で評価を行った。
【0143】
○:膨れが確認できなかった。
△:膨れが若干確認された。
×:膨れが目立った。
【0144】
<2-3.曲げ加工性試験>
各実施例および比較例の化粧板を常温で外曲げ変形を与えた際に化粧板の硬質材料層が設けられた面側から目視により観察した場合のクラックを伴わない最小R形状で、以下の基準に従い、化粧板の曲げ加工性を評価した。
【0145】
○:6未満。
△:6以上10R未満。
×:10R以上。
【0146】
<2-4.耐クラック性試験>
JIS K 6902の耐クラック性試験に準拠した方法で処理を行い、試験後に、クラックの有無・程度を確認し、以下の基準で評価を実施した。
【0147】
◎:等級5以上。
○:等級4。
△:等級3以下。
【0148】
以上のようにして得られた各実施例および比較例の化粧板における評価結果を、それぞれ、下記の表1に示す。
【0149】
【0150】
表1から明らかなように、本発明は、比較例に比べて耐汚染性に優れ、満足のいく結果がえられた。なお、表には記載していないが、難燃性の評価を行ったところ、いずれも高い難燃性が得られた。
【符号の説明】
【0151】
1 化粧板
2 芯材層
2’ インク
3 基材層
4 印刷層
5 樹脂層
5’ Bステージ層
51’ 露出層
51 表面層
52 内側層
10 第1の積層体
20 第2の積層体
501 第1の面
502 第2の面