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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】止水構造及び止水構造の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 1/62 20060101AFI20220621BHJP
   E04B 1/64 20060101ALI20220621BHJP
   E04B 1/682 20060101ALI20220621BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
E06B1/62 A
E04B1/64 C
E04B1/682 A
E04B2/56 603A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018096898
(22)【出願日】2018-05-21
(65)【公開番号】P2019203247
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】平 浩和
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-120007(JP,A)
【文献】特開2010-053591(JP,A)
【文献】実開昭59-015789(JP,U)
【文献】特開平09-209656(JP,A)
【文献】特開2001-295554(JP,A)
【文献】特開2011-080267(JP,A)
【文献】特開2014-114660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 1/00-1/70
E04B 1/62-1/99
E04B 2/56-2/70
E04B 2/88-2/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋内外方向に互いに間隔を隔てて対面する外板部及び内板部と、前記外板部と前記内板部とを連結する複数の連結部が一体をなす壁部材と、
前記壁部材と面内方向に隣接して設けられ前記外板部及び前記内板部の端面と対向する外周部を備えた枠体と、
を有し、
前記外板部と前記外周部との間にシーリング材が介在されて一次止水面が形成され、
前記内板部と前記外周部との間にシーリング材が介在されて二次止水面が形成されており、
前記一次止水面を形成する前記シーリング材と、前記二次止水面を形成する前記シーリング材は、前記壁部材の厚み方向における内側にバックアップ部材が各々設けられており、
前記厚み方向に並ぶ2つの前記バックアップ部材は互いに間隔が隔てられていることを特徴とする止水構造。
【請求項2】
請求項1に記載の止水構造であって、
前記枠体は、矩形状をなし、当該枠体を囲む四方に前記壁部材が設けられており、
前記枠体の屋内外方向の幅は、前記壁部材の厚みよりも広いことを特徴とする止水構造。
【請求項3】
屋内外方向に互いに間隔を隔てて対面する外板部及び内板部と、前記外板部と前記内板部とを連結する複数の連結部が一体をなす壁部材と、
前記壁部材と面内方向に隣接して設けられ前記外板部及び前記内板部の端面と対向する外周部を備えた枠体と、
を有し、
前記外板部と前記外周部との間にシーリング材が介在されて一次止水面が形成され、
前記内板部と前記外周部との間にシーリング材が介在されて二次止水面が形成されており、
前記枠体は、矩形状をなし、当該枠体を囲む四方に前記壁部材が設けられており、
前記枠体の屋内外方向の幅は、前記壁部材の厚みよりも広く、
前記枠体の四方に設けられている前記壁部材のうちの前記枠体の上に位置する前記壁部材が載置される載置部材と、
前記載置部材と当該載置部材に載置されている載置壁部材との間に介在され、前記載置壁部材の屋内側に進入した水を屋外側に案内する水切り部材と、
を有し、
前記水切り部材は、載置されている前記載置壁部材と水平方向に隣接する隣接壁部材の屋内側にて当該隣接壁部材と間隔を隔てて対面する水切り対向部を有し、
前記隣接壁部材と前記水切り対向部との間にシーリング材が介在されていることを特徴とする止水構造。
【請求項4】
請求項3に記載の止水構造の施工方法であって、
前記水切り対向部と前記隣接壁部材とを間隔を隔てて対面させて、前記載置部材上に前記水切り部材を載置する水切り部材載置ステップと、
前記水切り対向部と前記隣接壁部材との間にシーリング材を充填するシーリング材充填ステップと、
前記水切り部材上に前記載置壁部材を載置する載置壁部材載置ステップと、
を有することを特徴とする止水構造の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の止水構造及び止水構造の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁として、例えば押出成形セメント板でなる複数の壁部材を面内方向において縦横に配置して形成した外壁が知られており、壁部材の一部を切除した部位に、枠体を有するサッシを配置して窓を設けることが知られている。押出成形セメント板でなる壁部材は、屋内外方向に互いに間隔を隔てて配置される外板部と内板部とが、複数箇所にて屋内外方向に繋がって一体をなしており、外板部と内板部との間には複数の中空部が形成されている。そして、壁部材同士が隣接する部位では、隣接する壁部材の外板部同士の間にシール部材が介在されて一次止水面が形成され、隣接する壁部材の内板部同士の間にシール部材が介在されて二次止水面が形成されている。また、サッシの周囲では、外板部の端面とサッシを構成する枠体との間にシール部材が介在されて一次止水面が形成され、一次止水面の屋内側に二次止水面が形成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の止水構造では、枠体の屋内外方向の幅が狭く、壁部材の内板部と対向する位置には枠体が存在しない、若しくは、枠体を固定するピースなどの障害物が存在する。このため、枠体と内板部との間にシール材を介在させることができない。このため、壁部材が隣接している部位の二次止水面と、サッシの周囲の二次止水面とを直線状に繋げて形成することができないという課題がある。また、従来のサッシの周囲の二次止水面は、壁部材の中空部と対向する位置に設けざるを得ないため、シール部材を介在させるために、中空部の枠体と対向する部位を埋める必要がある。このため、作業が繁雑であるとともに、十分な止水性能が得られ難いという課題がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、より高い止水性能を備えた止水構造及び止水構造の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
かかる目的を達成するために本発明の止水構造は、
屋内外方向に互いに間隔を隔てて対面する外板部及び内板部と、前記外板部と前記内板部とを連結する複数の連結部が一体をなす壁部材と、
前記壁部材と面内方向に隣接して設けられ前記外板部及び前記内板部の端面と対向する外周部を備えた枠体と、
を有し、
前記外板部と前記外周部との間にシーリング材が介在されて一次止水面が形成され、
前記内板部と前記外周部との間にシーリング材が介在されて二次止水面が形成されており、
前記一次止水面を形成する前記シーリング材と、前記二次止水面を形成する前記シーリング材は、前記壁部材の厚み方向における内側にバックアップ部材が各々設けられており、
前記厚み方向に並ぶ2つの前記バックアップ部材は互いに間隔が隔てられていることを特徴とする止水構造である。
【0005】
このような止水構造によれば、壁部材の外板部の端面と枠体の外周部との間に一次止水面が形成され、内板部の端面と枠体の外周部との間に二次止水面が形成されるので、壁部材と枠体との間をより確実に止水することが可能である。すなわち、枠体の周りには、壁部材の外板部の端面に沿って一次止水面が形成され、内板部の端面に沿って二次止水面が形成される。このため、枠体の周りに配置される壁部材の外板部の端面に沿う一次止水面と、枠体の周りの一次止水面とを、壁部材の厚み方向において同一の位置に形成することが可能であり、また、枠体の周りに配置される壁部材の内板部の端面に沿う二次止水面と、枠体の周りの二次止水面とを、壁部材の厚み方向において同一の位置に形成することが
可能である。このため、隣接する壁部材及び枠体の間において、壁全体として一次止水面及び二次止水面を連続させて設けることができるので、より高い止水性能を備えた止水構造を提供することが可能である。
【0007】
また、このような止水構造によれば、屋外側の一次止水面が損傷して二次止水面との間に水が進入したとしても、一次止水面及び二次止水面の内側に設けられ、壁部材の厚み方向に並ぶ2つのバックアップ部材の間からスムーズに水を流すことが可能である。
【0008】
かかる止水構造であって、前記枠体は、矩形状をなし、当該枠体を囲む四方に前記壁部材が設けられており、前記枠体の屋内外方向の幅は、前記壁部材の厚みよりも広いことを特徴とする。
【0009】
このような止水構造によれば、枠体の屋内外方向の幅が、矩形状をなす枠体を囲む四方に設けられている壁部材の屋内外方向の幅より広いので、壁部材の外板部と内板部をいずれも枠体の外周部と対向させて配置することが可能である。このため、枠体の外周部と外板部及び内板部との間に確実にシーリング材を設けることができるので、より高い止水性を備えることが可能である。
【0010】
また、屋内外方向に互いに間隔を隔てて対面する外板部及び内板部と、前記外板部と前記内板部とを連結する複数の連結部が一体をなす壁部材と、
前記壁部材と面内方向に隣接して設けられ前記外板部及び前記内板部の端面と対向する外周部を備えた枠体と、
を有し、
前記外板部と前記外周部との間にシーリング材が介在されて一次止水面が形成され、
前記内板部と前記外周部との間にシーリング材が介在されて二次止水面が形成されており、
前記枠体は、矩形状をなし、当該枠体を囲む四方に前記壁部材が設けられており、
前記枠体の屋内外方向の幅は、前記壁部材の厚みよりも広く、
前記枠体の四方に設けられている前記壁部材のうちの前記枠体の上に位置する前記壁部材が載置される載置部材と、
前記載置部材と当該載置部材に載置されている載置壁部材との間に介在され、前記載置壁部材の屋内側に進入した水を屋外側に案内する水切り部材と、
を有し、
前記水切り部材は、載置されている前記載置壁部材と水平方向に隣接する隣接壁部材の屋内側にて当該隣接壁部材と間隔を隔てて対面する水切り対向部を有し、
前記隣接壁部材と前記水切り対向部との間にシーリング材が介在されていることを特徴とする止水構造である。
【0011】
このような止水構造によれば、載置壁部材と載置部材との間に設けられる水切り部材は、載置壁部材と水平方向に隣接する隣接壁部材と屋内側にて対面する水切り対向部を有しているので、水切り対向部と隣接壁部材との間により確実にシーリング材を介在させることが可能である。
【0012】
また、上記止水構造の施工方法であって、
前記水切り対向部と前記隣接壁部材とを間隔を隔てて対面させて、前記載置部材上に前記水切り部材を載置する水切り部材載置ステップと、
前記水切り対向部と前記隣接壁部材との間にシーリング材を充填するシーリング材充填ステップと、
前記水切り部材上に前記載置壁部材を載置する載置壁部材載置ステップと、
を有することを特徴とする止水構造の施工方法である。
【0013】
このような止水構造の施工方法によれば、水切り部材が水切り対向部を有しているので、水切り部材を載置部材上に配置するだけで、水切り対向部を隣接壁部材と間隔を隔てて対面させることが可能である。また、載置部材上に載置された水切り部材は、水切り対向部と隣接壁部材とが間隔を隔てて対面しているので、水切り対向部と隣接壁部材との間により確実にシーリング材を充填することが可能である。このため、水切り対向部と隣接壁部材との間を、容易により確実に止水することが可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、より高い止水性能を備えた止水構造及び止水構造の施工方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る止水構造が適用された外壁の一例を示す外観図である。
図2図1におけるA-A断面図である。
図3図1におけるB-B断面図である。
図4】水切り部材を示す斜視図である。
図5図1におけるC-C断面図である。
図6】枠体の上に配置される押出成形セメント板が載置される部位を説明する図をである。
図7】水切り部材の周辺を止水する止水構造の施工方法を提供するを示す図である。
図8図7(a)を下側から見た斜視図である。
図9図7(b)を下側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の止水構造を図を用いて説明する。
図1に示すように、本実施形態の止水構造を備える外壁は、例えば、複数の壁部材としての押出成形セメント板1が面内方向において鉛直方向及び水平方向に並べて配置されている外壁の一部に、サッシ2が設けられている。
【0017】
以下の説明においては、屋外から建物を見たときに、上下となる方向を上下方向、左右となる方向を左右方向、壁の厚み方向となる奥行き方向を屋内外方向として示す。建物の各部位であっても、また、建物を構成する各部材については単体の状態であっても、建物が建っている状態にて上下方向、左右方向、屋内外方向となる方向にて方向を特定して説明する。
【0018】
外壁を構成する押出成形セメント板1は、図2に示すように、屋内外方向に互いに間隔を隔てて対面する外板部10及び内板部11と、外板部10と内板部11とを連結する複数の連結部12と、が一体に形成されている。連結部12は、押出方向に沿って設けられており、隣り合う連結部12間は中空部1aをなしている。本実施形態の押出成形セメント板1は、押出方向が上下方向に向けられており、中空部1aは上下方向に貫通している。
【0019】
押出成形セメント板1の左右の端部のうちの一方には、面内方向において外側に突出する側面突出部1bが設けられており、他方は、面内方向において内側に窪む側面凹部1cをなしている。より具体的には、押出成形セメント板1の左側の端部は、外板部10の端部と内板部11の端部とが連結部12により連結されており、連結部12の厚み方向における中央に位置させて側面突出部1bが突出させて設けられている。このため、外板部10の左側の端面10aは、押出成形セメント板1における側面突出部1bよりも屋外側の側面の一部をなし、内板部11の左側の端面11aは、押出成形セメント板1における側面突出部1bよりも屋内側の側面の一部をなしている。
【0020】
押出成形セメント板1の右側の端部は、最も右側に位置する連結部12より右側に外板部10と内板部11とが張り出すように形成されており、張り出している外板部10及び内板部11と、最も右に位置する連結部12とにより側面凹部1cが形成されている。
【0021】
本実施形態の建物の壁は、階高とほぼ同じ高さを有する押出成形セメント板1が上下方向及び左右方向に並べて配置されている。左右に隣り合う2つの押出成形セメント板1のうちの右側に位置する押出成形セメント板1の側面突出部1bが、左に位置する押出成形セメント板1の側面凹部1cに挿入されるように配置されている。
【0022】
上下及び左右に隣接する各押出成形セメント板1間には、図2に示すように、隣接する押出成形セメント板1の互いに対面する外板部10の端面10a間に、不定形材料でなるシーリング材8aが介在されて一次止水面S1をなす目地が形成されている。隣接する押出成形セメント板1の互いに対面する内板部11の端面11a間には所定形状に成形された軟質樹脂製のガスケット9が介在されて二次止水面S2をなしている。
【0023】
一次止水面S1をなすシーリング材8aは、押出成形セメント板1の内側に設けられ合成樹脂製のスポンジ等でなるバックアップ部材20の屋外側に充填されている。バックアップ部材20は、押出成形セメント板1の左右の端部にて側面凹部1cと、側面凹部1cに入り込む側面突出部1bとにより保持されている。
【0024】
本実施形態の建物の壁は、図1に示すように、左右方向に隣り合う2枚の押出成形セメント板1の、上下方向における中間部分が切除されてFIX窓用のサッシ2が設けられている。FIX窓用のサッシ2は、例えばガラス2aと、ガラス2aの周端部を収容する枠体2bと、を有している。枠体2bは、合成樹脂製の押出成形部材が接合されて形成されている。合成樹脂製の枠体を、アルミニウム製の枠体と同形状で形成すると剛性が低くなるため、合成樹脂製の場合には、例えば、押出方向に沿う中空部を形成するなどして剛性が高められている。このため、合成樹脂製の枠体は、アルミニウム製の枠体と比較して屋内外方向の幅が広く形成されている。ここで、壁に設けられるサッシは、FIX窓用のサッシに限らない。
【0025】
枠体2bは、矩形状に枠組みされており、外周部2cは平坦な外周面2dをなしている。枠体2bは、図3図5に示すように、押出成形セメント板1に囲まれて配置された際には、外周部2cにおける屋外側の縁部が外板部10よりも屋外側に突出しており、外周部2cにおける屋内側の縁部が内板部11よりも屋内側に突出している。すなわち、サッシ2が有する枠体2bの屋内外方向における幅Wは、押出成形セメント板1の厚みtよりも広く形成されている。このため、枠体2bの外周面2dは、枠体2bの全周において隣接する押出成形セメント板1の外板部10及び内板部11の端面10a、11aと、互いに間隔を隔てて対面している。また、枠体2bと左右方向に隣接する押出成形セメント板1であって、枠体2b側に突出している側面突出部1bは、枠体2bの外周面2dと対向する部位においては切除されている。ここで、枠体2bの外周面2dは平坦でなくとも、外板部10及び内板部11の端面10a、11aと対面する部位を有していれば構わない。
【0026】
枠体2bの上に位置する押出成形セメント板1と枠体2bとの間の接合部近傍には、建物の躯体と繋がっている支持アングル部材4が設けられており、枠体2bの上に位置する押出成形セメント板1は、図3に示すように、下端部側に固定されている固定部材5が支持アングル部材4と係合することにより倒れないように構成されている。
【0027】
支持アングル部材4は、断面がL字状をなす2つの板部4a、4b、すなわち、水平な面をなし梁に固定されている第一板部4aと、第一板部4aの屋外側の縁から延出されて鉛直な面をなす第二板部4bとを有している。
【0028】
押出成形セメント板1の下端部側に固定されている固定部材5は、段差を有するように屈曲された板状の部材である。固定部材5は、押出成形セメント板1の屋内側の面における下端側に固定され、支持アングル部材4の第二板部4bと係合することによって倒れないように保持されている。
【0029】
また、枠体2bの上に位置する押出成形セメント板1は、下端部が支持アングル部材4に固定された載置部材としての載置アングル部材6に、水切り部材7を介して載置されている。載置アングル部材6も、支持アングル部材4と同様に、断面がL字状をなす2つの板部6a、6bを有しており、支持アングル部材4の第二板部4bの屋外側に当接されて接合される縦板部6aと、縦板部6aの下端から屋外側に向かって水平に延出された横板部6bとを有している。
【0030】
枠体2bの上に位置する押出成形セメント板1は、横板部6b上に水切り部材7を介して載置される。ここで、枠体2bの上に位置して、載置アングル部材6上に水切り部材7を介して載置される押出成形セメント板1は載置壁部材に相当し、以下の説明においては、載置押出成形セメント板100ともいう。本実施形態においては、載置押出成形セメント板100と左右に隣接する押出成形セメント板1と枠体2bの左右に隣接する押出成形セメント板1とは同一の押出成形セメント板1であり、隣接壁部材に相当する。
【0031】
以下の説明においては、載置押出成形セメント板100及び枠体2bと左右に隣接する押出成形セメント板1を隣接押出成形セメント板101ともいう。本実施形態においては、図1に示すように、枠体2bの上に位置する載置押出成形セメント板100が2枚である例について説明するが、載置押出成形セメント板の数は、1枚であっても、また、3枚以上であっても構わない。
【0032】
水切り部材7は、図3図4に示すように、縦板部6aの屋外側の面と対面して当接される縦対面部7aと、縦対面部7aと繋がり横板部6bの上面と対面して当接される横対面部7bと、横対面部7bの屋外側の縁から下方に垂れるように設けられた垂板部7cとを有している。縦対面部7aは、横対面部7bよりも左右方向に長く延出された水切り対向部7dを有している。また、垂板部7cは、横板部6b上に載置された横対面部7bの上に上側の押出成形セメント板1の下端が載置された状態で、横板部6bよりも屋外側に位置している。本実施形態においては、水切り部材7が一部材で構成されている例を挙げて説明しているが、これに限らず、例えば、水切り部材が2つ以上の部材を有し、それらの連結部がブチルテープ等により止水されている構成であっても構わない。
【0033】
図3に示すように、枠体2bの下に位置する押出成形セメント板1と枠体2bとの間の接合部近傍にも、建物の躯体と繋がっている支持アングル部材4が設けられている。枠体2bの下端近傍に設けられている支持アングル部材4は、枠体2bの上端近傍に設けられている支持アングル部材4とは上下の向きを反転させて設けられている。このため、枠体2bの上端近傍及び下端近傍に設けられている2つの支持アングル部材4は、第一板部4aが互いに上下に間隔を隔てて対向している。
【0034】
枠体2bの上端近傍に位置する支持アングル部材4は、第一板部4aの屋外側の縁から上方に第二板部4bが延出しており、枠体2bの下端近傍に位置する支持アングル部材4は、第一板部4aの屋外側の縁から下方に第二板部4bが延出している。枠体2bの上下の端部近傍に設けられている2つの支持アングル部材4の対向する第一板部4a間には、左右方向の端部に支持アングル部材4が、長手方向を上下方向に沿わせて設けられている。図5に示すように、上下方向に沿わせて設けられている支持アングル部材4は、第一板部4aが互いに左右に間隔を隔てて対向している。
【0035】
枠体2bの左端近傍に位置する支持アングル部材4は、第一板部4aの屋外側の縁から左側に第二板部4bが延出しており、右端近傍に位置する支持アングル部材4は、第一板部4aの屋外側の縁から右側に第二板部4bが延出している。そして、4つの支持アングル部材4は矩形状に接合されており、矩形状に接合された4つの支持アングル部材4の第一板部4aの内側に枠体2bが配置される。
【0036】
図3図5に示すように、4つの支持アングル部材4の内側に配置された枠体2bは、枠体2bの外周面2dと第一板部4aとが対面しており、枠体2bの外周面2dと第一板部4aとの間を連結する枠体連結部材21により枠体2bが固定されている。
【0037】
枠体2bの外周部2cと、当該枠体2bの四方にて対向する押出成形セメント板1との間には、不定形材料でなるシーリング材8a、8bが介在されている。より具体的には、枠体2bの四周の外周面2dと、当該枠体2bの四方に位置する押出成形セメント板1の外板部10の端面10aとの間には、押出成形セメント板1の厚み方向における奥側にバックアップ部材20が設けられており、バックアップ部材20の屋外側にシーリング材8aが充填されて一次止水面S1となしている。一次止水面S1は、外壁において押出成形セメント板1同士が隣接する部位に充填されているシーリング材8aと、枠体2bと押出成形セメント板1の外板部10の端面10aとが隣接する部位に充填されているシーリング材8aとが切れ目なく連続させて設けられている。
【0038】
枠体2bの下側の外周面2d及び左右の外周面2dと、当該枠体2bの下及び左右に位置する押出成形セメント板1の内板部11の端面11aとの間には、押出成形セメント板1の厚み方向における奥側にバックアップ部材20が設けられており、バックアップ部材20の屋内側にシーリング材8bが充填されて二次止水面S2をなしている。枠体2bの左右の外周面2dと、枠体2bの左右に位置する隣接押出成形セメント板101の内板部11の端面11aとの間に介在されたシーリング材8bと、このシーリング材8bの上下に位置して、載置押出成形セメント板100と隣接押出成形セメント板101の内板部11同士間に介在されたガスケット9とは切れ目なく連続させて設けられている。また、枠体2bの左右の外周面2dと、枠体2bの左右に位置する隣接押出成形セメント板101の内板部11の端面11aとの間に介在されたシーリング材8bは、枠体2bの下に位置する押出成形セメント板1の内板部11の端面11aとの間に介在されたシーリング材8bとも切れ目なく連続させて設けられている。
【0039】
枠体2bの左右の外周面2dには、左右の隣接押出成形セメント板101の外板部10の端面10aとの間に形成された一次止水面S1をなすシーリング材8aと、隣接押出成形セメント板101の内板部11の端面11aとの間に形成された二次止水面S2をなすシーリング材8bとが上下方向に沿って設けられている。枠体2bの左右の外周面2dにて一次止水面S1をなすシーリング材8aの屋内側に設けられたバックアップ部材20と、二次止水面S2をなすシーリング材8bの屋外側に設けられたバックアップ部材20とは、屋内外方向に間隔が隔てられて、それらのバックアップ部材20の間に空隙Rが形成されている。
【0040】
枠体2bの上側の外周面2dと、載置押出成形セメント板100との間に入り込んでいる載置アングル部材6における横板部6bの下面との間にも、押出成形セメント板1の厚み方向における奥側にバックアップ部材20が設けられており、バックアップ部材20の屋内側にシーリング材8bが充填されており、二次止水面S2となしている。横板部6bの下面と枠体2bの上面との間に介在されているシーリング材8bは、屋内外方向において、載置押出成形セメント板100の内板部11の端面11aと同じ位置に設けられている。
【0041】
また、枠体2bの上に位置する載置アングル部材6に水切り部材7を介して載置されている載置押出成形セメント板100は、水切り部材7の縦対面部7aと屋内側の面が対面している。また、図6に示すように、水切り部材7の縦対面部7aにおいて水平方向の両側に設けられている水切り対向部7dは、載置押出成形セメント板100の左右に隣接する隣接押出成形セメント板101の屋内側の面と対面している。水切り対向部7dと隣接押出成形セメント板101の屋内側の面との間にもシーリング材8cが充填されている。また、水切り部材7が載置されている載置アングル部材6の側端面6cと内板部11の端面11aとの間にもシーリング材8dが充填されている。そして、水切り対向部7dと隣接押出成形セメント板101の屋内側の面との間のシーリング材8c、載置アングル部材6の側端面6cと内板部11の端面11aとの間のシーリング材8d、及び、枠体2bの上にて左右に位置する隣接押出成形セメント板101の間に介在されたガスケット9とが、切れ目なく連続させて設けられている。
【0042】
また、図2図7(d)に示すように、水切り部材7の縦対面部7aと、この水切り部材7上の載置押出成形セメント板100の内板部11との間には、左右の水切り対向部7dと内板部11の端面11aとの間に介在されたシーリング材8cと連続するようにガスケット90が介在されている。
【0043】
図3に示すように、枠体2bの上の外周面2dには、載置押出成形セメント板100の外板部10の端面10aとの間に形成された一次止水面S1をなすシーリング材8aと、載置アングル部材6における横板部6bの下面との間に形成された二次止水面S2をなすシーリング材8bとが左右方向に沿って設けられている。枠体2bの上の外周面2dにて一次止水面S1をなすシーリング材8aの屋内側に設けられたバックアップ部材20と、二次止水面S2をなすシーリング材8bの屋外側に設けられたバックアップ部材20とは、屋内外方向に間隔が隔てられて、それらのバックアップ部材20の間に空隙Rが形成されている。枠体2bの上の外周面2d上に設けられた空隙Rと、枠体2bの左右の外周面2d側に設けられた空隙Rとは連通している。また、枠体2bの上の外周面2d上に設けられた空隙Rの上方に水切り部材7の垂板部7cが位置している。
【0044】
水切り部材7の垂板部7cから滴る水は、枠体2bの上側の外周面のバックアップ部材20の間に形成されている空隙Rにて上側の外周面2dを伝って、枠体2bの左右の外周面2dのバックアップ部材20の間に形成されている空隙Rに至り、一次止水面S1と二次止水面S2との間に進入した水は、下層への流れ落ちた後、最終的には屋外に排出される。
【0045】
枠体2bの上部に配置される水切り部材7の縦対面部7aにおいて、載置押出成形セメント板100の左右に隣接する隣接押出成形セメント板101における内板部11の屋内側の面と、屋内外方向に間隔を隔てて対向している水切り対向部7dとの間にシーリング材8cを充填する止水構造の施工方法について説明する。
【0046】
枠体2bの上部に配置される水切り部材7上の載置押出成形セメント板100の、左右に隣接する隣接押出成形セメント板101が配置されている状態で、隣接押出成形セメント板101の間に、支持アングル部材4と支持アングル部材4に固定された載置アングル部材6とが位置している。
【0047】
まず、図7(a)に示すように、載置アングル部材6上に水切り部材7を載置する(水切り部材載置ステップ)。このとき、水切り部材7の横対面部7bが載置アングル部材6の横板部6bに当接され、水切り部材7の縦対面部7aが載置アングル部材6の縦板部6aに当接され、図8に示すように、水切り対向部7dが左右に配置されている隣接押出成形セメント板101の内板部11と間隔を隔てて対面する。
【0048】
次に、図7(b)、図9に示すように、縦対面部7aの水切り対向部7dと、対向している隣接押出成形セメント板101の内板部11との間にシーリング材8cを充填する(シーリング材充填ステップ)。
【0049】
シーリング材8cは、例えば、水切り対向部7dの上端から充填し、図9に示すように、水切り対向部7dの下端側から繋げて充填する。また、載置アングル部材6の側端面6cと内板部11の端面11aとの間にもシーリング材8dを充填し、内板部11に貼り付けられているガスケット9と繋げておく。
【0050】
次に、図7(c)に示すように、水切り部材7の縦対面部7aの屋外側に、縦対面部7aの上端側に沿ってガスケット90を貼り付ける。
次に、内板部11において載置アングル部材6より下に位置する端面11aにガスケット9を貼り付ける。内板部11の端面11aに貼り付けたガスケット9は、縦対面部7aの上端側に貼り付けたガスケット90の屋外側に設置される為、ガスケット9とガスケット90とは、最終的にその交点が密着する。
最後に、図7(d)に示すように、水切り部材7上に載置押出成形セメント板100を載置する(載置壁部材載置ステップ)。
【0051】
本実施形態の止水構造によれば、押出成形セメント板1の外板部10の端面10aと枠体2bの外周面2dとの間に充填されたシーリング材8aが一次止水面S1をなし、内板部11の端面11aと枠体2bの外周面2dとの間に充填されたシーリング材8bが二次止水面S2をなすので、より確実に止水することが可能である。すなわち、枠体2bの周りには、押出成形セメント板1の外板部10の端面10aに沿って一次止水面S1が形成され、内板部11の端面11aに沿って二次止水面S2が形成される。このため、枠体2bの周りに配置される押出成形セメント板1の外板部10の端面10aに沿う一次止水面S1と、枠体2bの周りの一次止水面S1とを、押出成形セメント板1の厚み方向において同一の位置に形成することが可能であり、また、枠体2bの周りに配置される押出成形セメント板1の内板部11の端面11aに沿う二次止水面S2と、枠体2bの周りの二次止水面S2とを、押出成形セメント板1の厚み方向において同一の位置に形成することが可能である。このため、押出成形セメント板1とサッシ2とにより形成される壁の全体において、一次止水面S1及び二次止水面S2を連続させて設けることができるので、より高い止水性能を備えた止水構造を提供することが可能である。
【0052】
また、押出成形セメント板1の厚み方向において、一次止水面S1をなすシーリング材8aの奥側に設けられているバックアップ部材20と、二次止水面S2をなすシーリング材8bの奥側に設けられているバックアップ部材20とは、互いに間隔が隔てられて、それらバックアップ部材20の間に空隙Rが形成されているので、たとえ一次止水面S1が損傷し、二次止水面S2との間に水が進入したとしても、一次止水面S1及び二次止水面S2の内側に設けられているバックアップ部材20の間から水をスムーズに流すことが可能である。
【0053】
また、枠体2bの屋内外方向の幅Wが、矩形状をなす枠体2bを囲む四方に設けられている押出成形セメント板1の厚みtより広いので、押出成形セメント板1の外板部10の端面10a及び内板部11の端面11aをいずれも枠体2bの外周面2dと対向させて配置することが可能である。このため、枠体2bの外周面2dと外板部10及び内板部11との間に確実にシーリング材8a、8bを設けることができるので、より高い止水性を備えることが可能である。
【0054】
また、枠体2bの上側の外周面2dは、枠体2bの上の載置押出成形セメント板100との間に介在されている載置アングル部材6の横板部6bの下面と枠体2bの外周面2dとにシーリング材8bを充填することにより枠体2bの上側にも高い止水性を備えることが可能である。また、枠体2bの外周面2dのうちの下面と左右の両側面とは、外板部10の端面10a及び内板部11の端面11aと直接対向しているので、枠体2bの全周を容易に止水することが可能である。
【0055】
また、枠体2bの上に位置する載置押出成形セメント板100と、当該載置押出成形セメント板100が載置される載置アングル部材6との間に設けられる水切り部材7は、載置押出成形セメント板100と水平方向に隣接する隣接押出成形セメント板101と屋内側にて対面する水切り対向部7dを有しているので、水切り対向部7dと隣接押出成形セメント板101との間にシーリング材8cを確実に充填することが可能である。更に、水切り部材7が載置されている載置アングル部材6の側端面6cと内板部11の端面11aとの間にもシーリング材8dを充填し、水切り対向部7dと隣接押出成形セメント板101の屋内側の面との間にもシーリング材8c、載置アングル部材6の側端面6cと内板部11の端面11aとの間にもシーリング材8d、及び、枠体2bの上にて左右に位置する隣接押出成形セメント板101の間に介在されたガスケット9とを、切れ目なく連続させて二次止水面S2を形成することが可能である。このため、枠体2bと載置押出成形セメント板100とが上下方向に繋がる繋ぎ目部分であっても高い止水性を備えることが可能である。
【0056】
また、本実施形態の止水構造の施工方法によれば、水切り部材7が水切り対向部7dを有しているので、水切り部材7を載置アングル部材6上に配置するだけで、水切り対向部7dを隣接押出成形セメント板101と間隔を隔てて対面させることが可能である。また、載置アングル部材6上に載置された水切り部材7は、水切り対向部7dと隣接押出成形セメント板101とが間隔を隔てて対面しているので、水切り対向部7dと隣接押出成形セメント板101との間により確実にシーリング材8cを充填することが可能である。また、水切り部材7が載置アングル部材6に載置されているので、載置アングル部材6の側端面6cと内板部11の端面11aとの間にもシーリング材8dを充填し、水切り対向部7dと隣接押出成形セメント板101の屋内側の面との間にもシーリング材8c、及び、枠体2bの上にて左右に位置する隣接押出成形セメント板101の間に介在されたガスケット9とが切れ目なく連続する二次止水面S2を容易に形成することが可能である。このため、水切り対向部7dと隣接押出成形セメント板101との間を、容易に且つより確実に止水することが可能である。
【0057】
以上、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0058】
1 押出成形セメント板(壁部材)、2b 枠体、2c 外周部、2d 外周面、
3 梁、4 支持アングル部材、6 載置アングル部材、7 水切り部材、
7d 水切り対向部、8a 一次止水面をなすシーリング材、
8b 枠体と内板部との間で二次止水面をなすシーリング材、
8c 押出成形セメント板と水切り対向部との間で二次止水面をなすシーリング材、
8d 載置アングル部材6の側端面と内板部の端面との間で二次止水面をなすシーリング材、
10 外板部、10a 外板部の端面、11 内板部、11a 内板部の端面、
12 連結部、20 バックアップ部材、
100 載置押出成形セメント板、101 隣接押出成形セメント板、
R 空隙、S1 一次止水面、S2 二次止水面、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9