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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】カメラモジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20220621BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20220621BHJP
【FI】
G02B7/02 D
G02B7/02 Z
G02B7/02 C
G02B7/04 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018100812
(22)【出願日】2018-05-25
(65)【公開番号】P2019204056
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000102500
【氏名又は名称】SMK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095636
【弁理士】
【氏名又は名称】早崎 修
(72)【発明者】
【氏名】真野 伸之
(72)【発明者】
【氏名】金 宇征
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0307099(US,A1)
【文献】特開2006-235575(JP,A)
【文献】特開2016-184082(JP,A)
【文献】国際公開第2016/158397(WO,A1)
【文献】特開2000-065181(JP,A)
【文献】特開昭61-098309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
G03B 17/02
H04N 5/222-5/257
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズが筒体内に取り付けられ、前記レンズの光軸周りの前記筒体の外周面に雄ねじが刻設されたレンズホルダと、
該レンズホルダを上方の開口から収容する収容孔が形成され、前記収容孔の内周面に前記雄ねじに螺合する雌ねじが刻設されたハウジング本体と、
前記ハウジング本体の前記レンズの光軸方向の下方に配置された撮像素子と、を備え、
前記雌ねじに前記雄ねじを螺合させた前記レンズホルダを前記光軸周りに回転して、前記レンズと前記撮像素子間の距離を調整し、前記レンズの焦点距離を調整するカメラモジュールにおいて、
前記雄ねじと前記雌ねじの少なくともいずれか一方を、同一ピッチで連続する上方の螺合部と下方の遊嵌部とに分け、
前記遊嵌部のねじ山の山頂を削って湾曲面とし、前記湾曲面に対向する他方の前記雌ねじ若しくは前記雄ねじとの間にダストトラップを形成するとともに、前記遊嵌部のねじ山の前記湾曲面から谷底に連続する上面及び下面を対向する他方の前記雌ねじ若しくは前記雄ねじに当接させることを特徴とするカメラモジュール。
【請求項2】
レンズが筒体内に取り付けられ、前記レンズの光軸周りの前記筒体の外周面に雄ねじが刻設されたレンズホルダと、
該レンズホルダを上方の開口から収容する収容孔が形成され、前記収容孔の内周面に前記雄ねじに螺合する雌ねじが刻設されたハウジング本体と、
前記ハウジング本体の前記レンズの光軸方向の下方に配置された撮像素子と、を備え、
前記雌ねじに前記雄ねじを螺合させた前記レンズホルダを前記光軸周りに回転して、前記レンズと前記撮像素子間の距離を調整し、前記レンズの焦点距離を調整するカメラモジュールにおいて、
前記雄ねじと前記雌ねじの少なくともいずれか一方を、同一ピッチで連続する上方の螺合部と下方の遊嵌部とに分け、
前記遊嵌部とした前記雄ねじのねじ山の上面若しくは前記雌ねじのねじ山の下面を削り、対向する他方の前記雌ねじ若しくは前記雄ねじとの間にダストトラップを形成するとともに、上面を削った前記雄ねじのねじ山の下面若しくは下面を削った前記雌ねじのねじ山の上面を対向する他方の前記雌ねじ若しくは前記雄ねじに当接させることを特徴とするカメラモジュール。
【請求項3】
遊嵌部とした前記雄ねじのねじ山の上面を削って、谷底に向かって下方に傾斜する傾斜面としたことを特徴とする請求項2に記載のカメラモジュール。
【請求項4】
遊嵌部のねじ山はねじ山の一部を10μm未満の深さで削った形状であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング本体の雌ねじに、雄ねじを螺合させたレンズホルダを回転して、ハウジング本体に取り付けられた撮像素子とレンズホルダに取り付けられたレンズとの距離を調整し、レンズの焦点距離を調整するカメラモジュールに関し、更に詳しくは、雄ねじと雌ねじが摺動接触することにより発生するダストを貯留するダストトラップを設けたカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラモジュールに備えられるレンズと撮像素子は、個別に組み付けられるので、その間をレンズの焦点距離に精度良く一致させて組み立てることができない。このため、レンズを筒体内に取り付けたレンズホルダの外周面に雄ねじを刻設するとともに、ハウジング本体のレンズホルダを収容する収容孔の内周面に雄ねじに螺合する雌ねじを刻設し、工場出荷時に撮像素子が取り付けられたハウジング本体に対してレンズホルダを回転させて、レンズと撮像素子間の距離を調整してレンズの焦点を調節していた。
【0003】
撮像素子は、ハウジング本体のレンズホルダを収容する収容孔の下方に受光面を露出させて配置されているので、レンズホルダを組み付ける前の開口する収容孔からダストが落下して受光面に付着したり、上記レンズの焦点を調節する工程において、雄ねじと雌ねじが摺動接触し、その間に微小な粒子状のダストが発生して、その下方に配置された撮像素子の受光面上に落下することがあり、これらのダストで受光路の一部が遮断され撮像素子の取り込み画像の品質が著しく悪化するという問題が生じていた。
【0004】
そこで、従来、レンズホルダがハウジング本体の収容孔内で回転することにより発生するダストが、その下方の撮像素子に落下しないように、ダストを貯留するダストトラップを設けたカメラモジュールが、特許文献1乃至特許文献3等で知られている。
【0005】
このうち、特許文献1に開示されたカメラモジュール100は、図7に示すように、ハウジング本体101の雌ねじ105が刻設された収容孔102の下方に段部103を形成し、この段部103を内側から覆う円筒状のブーツ104を、レンズホルダ108と撮像素子109の周囲の収容孔102の底面との間に配置している。これにより、ブーツ104と段部103の間に、ダストトラップ107が形成され、レンズホルダ108を回転し、レンズホルダ108の雄ねじ106と雌ねじ105が摺動接触することにより発生するダストが、雄ねじ106と雌ねじ105の隙間から落下しても、ダストトラップ107で補足され、撮像素子109に達することがない。
【0006】
また、特許文献2に開示された図8に示すカメラモジュール110は、上方に開口する収容孔111の内底面に撮像素子114が配設されたハウジング本体112と、筒体113a内にレンズが取り付けられたレンズホルダ113とからなっている。レンズホルダ113は、筒体113aの外面の上方に形成された螺旋状の傾斜路を、収容孔111の内面の上方に形成された螺旋状の傾斜路に係合させることにより、収容孔111内に回転自在に収容され、回転させることにより、レンズホルダ113のレンズが、撮像素子114に対して進退移動し、レンズの焦点が調整される。
【0007】
収容孔111の内面は、上方から下方に向かって内径が小さくなる第1内壁面111a、第2内壁面111b、第3内壁面111c及び第4内壁面111dの4つの面に分かれ、これにより隣り合う内壁面間に第2段部115b、第3段部115c及び第4段部115dの3つの段部が形成される。一方、レンズホルダ113の筒体113aの各段部115b、115c、115dの内方の外面は、それぞれ、その下方の第2内壁面111b乃至第4内壁面111dの内径よりわずかに短い外径の第2外壁面116b、第3外壁面116c及び第4外壁面116dとなっていて、これにより、収容孔111の内面とレンズホルダ113の隙間を通して落下するダストは、各段部115b、115c、115dに形成されるダストトラップ117で補足され、撮像素子114に達することがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許5118147号公報
【文献】特表2010-509620号公報
【文献】特開2006-166398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ここで上述のカメラモジュール100は、外周面が2段に分かれた円筒形のブーツ104を用いるので、部品点数が増加して構造も複雑になるので製造コストが上昇する。また、レンズホルダ108と収容孔102の内底面との間に、撮像素子109を囲うようにブーツ104を組み付ける必要があり、ブーツ104を介在させることによって、カメラモジュール100の全高が高くなり、低背化の障害となる。
【0010】
また、従来のカメラモジュール110は、ダストトラップ117を形成するために、ハウジング本体112側の収容孔111の内面に内径が異なる複数の内壁面111a、111b、111c、111dを形成するとともに、レンズホルダ113の外面にも複数の内壁面111b、111c、111dの内径に外径を合わせた複数の外壁面116b、116c、116dを形成する必要があり、ハウジング本体112とレンズホルダ113の形状が複雑で、高精度に成形する必要があった。
【0011】
更に、レンズホルダ113が収容孔111の開口の付近で、相互の傾斜路を係合させながら回転させる工程では、各段部115b、115c、115dの内側がレンズホルダ113の各外壁面116b、116c、116dで覆われていない場合があり、その隙間からダストが落下する恐れがあり、撮像素子114へダストが落下することを完全に防止することはできい。
【0012】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、従来のカメラモジュールに対して簡単な加工を施すだけでダストトラップを形成するカメラモジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成するため、請求項1に記載のカメラモジュールは、レンズが筒体内に取り付けられ、レンズの光軸周りの筒体の外周面に雄ねじが刻設されたレンズホルダと、該レンズホルダを上方の開口から収容する収容孔が形成され、収容孔の内周面に雄ねじに螺合する雌ねじが刻設されたハウジング本体と、ハウジング本体のレンズの光軸方向の下方に配置された撮像素子と、を備え、 雌ねじに雄ねじを螺合させたレンズホルダを光軸周りに回転して、レンズと撮像素子間の距離を調整し、レンズの焦点距離を調整するカメラモジュールにおいて、
雄ねじと雌ねじの少なくともいずれか一方を、同一ピッチで連続する上方の螺合部と下方の遊嵌部とに分け、
前記遊嵌部のねじ山の山頂を削って湾曲面とし、湾曲面に対向する他方の雌ねじ若しくは雄ねじとの間にダストトラップを形成するとともに、遊嵌部のねじ山の湾曲面から谷底に連続する上面及び下面を対向する他方の雌ねじ若しくは雄ねじに当接させることを特徴とする。
【0014】
遊嵌部のねじが噛み合う相手側のねじは、同一ピッチでねじ山が形成されているので、相手側ねじと干渉することなく、その上方の螺合部が相手側のねじと螺合するまで、レンズホルダを回転させることができる。
【0015】
螺合部が相手側のねじに螺合することによって、遊嵌部での相手側のねじのねじ山との間隔は、螺合部での間隔と同一の間隔に保持され、ねじ山の山頂を削った湾曲面がそのまま対向する相手側のねじとの隙間となって、雄ねじと雌ねじが螺合することにより生じるダストを貯留するダストトラップが形成される。
【0016】
ダストトラップは、遊嵌部のねじ山の湾曲面から谷底に連続する上面及び下面が対向する他方の雌ねじ若しくは雄ねじに当接するので、レンズの光軸周りに螺旋状に連続する。
【0017】
請求項2に記載のカメラモジュールは、レンズが筒体内に取り付けられ、レンズの光軸周りの筒体の外周面に雄ねじが刻設されたレンズホルダと、該レンズホルダを上方の開口から収容する収容孔が形成され、収容孔の内周面に雄ねじに螺合する雌ねじが刻設されたハウジング本体と、ハウジング本体のレンズの光軸方向の下方に配置された撮像素子と、を備え、 雌ねじに雄ねじを螺合させたレンズホルダを光軸周りに回転して、レンズと撮像素子間の距離を調整し、レンズの焦点距離を調整するカメラモジュールにおいて、
雄ねじと雌ねじの少なくともいずれか一方を、同一ピッチで連続する上方の螺合部と下方の遊嵌部とに分け、
遊嵌部とした雄ねじのねじ山の上面若しくは雌ねじのねじ山の下面を削り、対向する他方の雌ねじ若しくは雄ねじとの間にダストトラップを形成するとともに、上面を削った雄ねじのねじ山の下面若しくは下面を削った雌ねじのねじ山の上面を対向する他方の雌ねじ若しくは雄ねじに当接させることを特徴とする。
【0018】
遊嵌部のねじが噛み合う相手側のねじは、同一ピッチでねじ山が形成されているので、相手側ねじと干渉することなく、その上方の螺合部が相手側のねじと螺合するまで、レンズホルダを回転させることができる。
【0019】
螺合部が相手側のねじに螺合することによって、遊嵌部での相手側のねじのねじ山との間隔は、螺合部での間隔と同一の間隔に保持され、雄ねじのねじ山の上面若しくは雌ねじのねじ山の下面を削った凹部がそのまま対向する相手側のねじとの隙間となって、雄ねじと雌ねじが螺合することにより生じるダストを貯留するダストトラップが形成される。
【0020】
ダストトラップは、遊嵌部の上面を削った雄ねじのねじ山の下面若しくは下面を削った雌ねじのねじ山の上面が対向する他方の雌ねじ若しくは雄ねじに当接するので、レンズの光軸周りに螺旋状に連続する。
【0021】
レンズホルダの雄ねじを収容孔の開口に形成された雌ねじに螺合させる際には、雄ねじのねじ山の上面若しくは雌ねじのねじ山の下面が削られた遊嵌部が相手側のねじ山に螺合するので、遊びを有する遊嵌部のねじを相手側のねじに呼び込みやすい。
【0022】
請求項3に記載のカメラモジュールは、遊嵌部とした雄ねじのねじ山の上面を削って、谷底に向かって下方に傾斜する傾斜面としたことを特徴とする。
【0023】
遊嵌部の雄ねじのねじ山の上面は、ねじ山の山頂から谷底に向かって下方に傾斜する傾斜面となっているので、ダストは、ねじ山の基端である谷底側に移動し、相手側の雌ねじねじとの隙間があるねじ山の先端から落下しにくい。
【0024】
請求項4に記載のカメラモジュールは、遊嵌部のねじ山は、螺合部のねじ山の一部を10μm未満の深さで削った形状であることを特徴とする。
【0025】
遊嵌部で噛み合う雄ねじと雌ねじの隙間は、10μm未満となるので、10μm以上の大きさのダストを通過させないフィルターとして作用する。
【発明の効果】
【0026】
請求項1の発明によれば、従来のカメラモジュールに対して、雄ねじ若しくは雌ねじのねじ山の山頂を削って湾曲面とする簡単な加工で、撮像素子へのダストの落下を防止するダストトラップを形成できる。
【0027】
上方の螺合部の雄ねじと雌ねじが螺合することにより生じるダストは、螺旋状に連続するダストトラップを通して徐々に落下するので、下方に配置された撮像素子まで到達しにくい。
【0028】
請求項2の発明によれば、従来のカメラモジュールに対して、雄ねじのねじ山の上面若しくは雌ねじのねじ山の下面を削る簡単な加工で、撮像素子へのダストの落下を防止するダストトラップを形成できる。
【0029】
上方の螺合部の雄ねじと雌ねじが螺合することにより生じるダストは、螺旋状に連続するダストトラップを通して徐々に落下するので、下方に配置された撮像素子まで到達しにくい。
【0030】
請求項3の発明によれば 遊嵌部の雄ねじのねじ山の上面に貯留されたダストは、上面が谷底に向かって下方に傾斜する傾斜面となっているので、ダストは、相手側の雌ねじのねじとの間に隙間が生じているねじ山の先端側の山頂から基端側の谷底へ移動するように誘導され、相手側のねじとの隙間から落下しにくい。
【0031】
請求項4の発明によれば、10μm未満のダストのみが遊嵌部のねじ山に沿って移動するので、撮像素子に落下することがあっても、撮像素子の取り込み画像の品質に影響しない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本願発明の一実施の形態に係るカメラモジュール1のハウジング本体2を示す断面図である。
図2】レンズユニット3の断面図である。
図3】収容孔4の内周面の雌ねじ5とレンズユニット3の外周面の雄ねじ6の遊嵌部6Bが螺合する状態を示す断面図である。
図4】収容孔4の内周面の雌ねじ5とレンズユニット3の外周面の雄ねじ6の螺合部6Aが螺合する状態を示す断面図である。
図5図4の(a)は、雌ねじ5と雄ねじ6の螺合部6Aと遊嵌部6Bとが噛み合う部分を示す、(b)は、(a)の雄ねじ6の螺合部6Aと遊嵌部6Bのみを示す、要部拡大端面図である。
図6】他の実施の形態に係るカメラモジュール20の(a)は、雌ねじ5と雄ねじ6の螺合部6Aと遊嵌部20Bとが噛み合う部分を、(b)は、(a)の雄ねじ6の螺合部6Aと遊嵌部20Bのみを、それぞれ示す要部拡大端面図である。
図7】従来のカメラモジュール100を示す断面図である。
図8】従来のカメラモジュール110を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の一実施の形態に係るカメラモジュールは1、レンズ7を筒体内に取り付けたレンズホルダ3と、レンズホルダ3を収容する収容孔4が形成されたハウジング本体2と、レンズ3の光軸OA上の下方に受光面8aを配置した撮像素子8とから構成され、以下、その各部を、図1乃至図5を用いて、各図で図示する上下方向を上下方向として説明する。
【0034】
レンズホルダ3は、図2に示すように、合成樹脂などで鉛直方向に貫通孔2aが貫通する円筒形に成形され、貫通孔2aの上方の開口近傍に、光軸OAが貫通孔2aの中心軸に一致するようにレンズ7が取り付けられている。
【0035】
また、合成樹脂などで成形されるハウジング本体2には、円筒形のレンズホルダ3を、上記光軸OAに沿って上方から収容する円筒形の収容孔4が穿設され、収容孔4の下方に撮像素子8を位置決め収容する位置決め室9が連通して形成されている。位置決め室9は、プリント配線基板10上に実装される撮像素子8の受光面8aが光軸OAに直交して収容孔4の底面に臨むように撮像素子8を位置決めする。ハウジング本体2は、その内方に位置決めする撮像素子8とともにプリント配線基板10上に実装することにより、カメラモジュール1の撮像素子8が、プリント配線基板10の導電パターンを介してカメラホスト装置に接続する。
【0036】
本実施の形態に係るカメラモジュール1は、ドライブレコーダー等の一部として車両の周囲を撮像する目的で、車両に設置される車載用のカメラモジュールであり、工場出荷時に、パンフォーカスで車両周囲の画像を撮像する所定の過焦点距離とするように、レンズ7を収容孔4内で光軸OAに沿って撮像素子8に向けて進退移動し、レンズ7と撮像素子8間の焦点距離を調整する。この焦点距離の調整工程では、光軸OAに沿ったレンズ7と撮像素子8間の距離を微調整する必要があるので、レンズホルダ3の円筒の外周面に光軸OA周りに雄ねじ6が刻設されるとともに、円筒形の収容孔4の内周面に光軸OA周りに雄ねじ6に螺合する雌ねじ5が刻設されている。
【0037】
このうちレンズホルダ3に刻設される雄ねじ6は、図4で破線で囲う部分を図5(a)(b)に拡大して示すように、上方の螺合部6Aと下方の遊嵌部6Bに分けられ、雄ねじ6の螺合部6Aと雌ねじ5のねじ山は、それぞれ、ねじ山の角度が60度のメートル並み目ねじの標準山形の互いに相補する形状に形成され、ねじ山のピッチは、レンズホルダ3や収容孔4の大きさにかかわらず、光軸OAに沿って等しく0.5mmピッチとなっている。
【0038】
一方、雄ねじ6の遊嵌部6Bは、図5(b)に示すように、螺合部6Aの破線で示すねじ山の山頂を削り、湾曲面6B1とした形状となっていて、これによって、遊嵌部6Bの各ねじ山と対向する雌ねじ5の谷底との間に、螺合部6Aと雌ねじ5が摺動することによって発生するダストを貯留するダストトラップ11が形成される。この雄ねじ6の遊嵌部6Bは、例えば、螺合部6Aを形成する刃を備えたねじ切りダイスを用いてレンズホルダ3の外周面全体に螺合部6Aを形成しておき、その下方から、ねじ山の山頂を削って湾曲面6B1とする刃を備えたねじ切りダイスでねじ山の山頂を切削し、螺合部6Aの下方に遊嵌部6Bを形成する。
【0039】
雌ねじ5と雄ねじ6の光軸OAに沿った長さは、ほぼ等しく、雄ねじ6の上端が雌ねじ5の上端まで螺合する位置、すなわち螺合部6Aの全体が雌ねじ5に螺合する位置でレンズホルダ3の底面が撮像素子8の受光面8aに近接して対向するように、雌ねじ5と雄ねじ6の各長さが設定されている。また、雄ねじ6の全体に対して、ここでは、螺合部6Aと遊嵌部6Bの長さをほぼ等しくし、螺合部の6Aの中間位置まで雌ねじ5にねじ込んだ位置でのレンズ7と撮像素子8間の距離が、設計上、所定距離に設定する過焦点距離にレンズ7と撮像素子8間の焦点距離に一致するように、レンズホルダ3の外周面に刻設する螺合部6Aの長さを設定する。
【0040】
このように構成されたレンズホルダ3を、ハウジング本体3の収納孔4へ収納する際には、初めに図3に示すように、ハウジング本体3の収納孔4の上端開口部に光軸OAを一致させてレンズホルダ3を配置し、レンズホルダ3を上方からみて時計回りに回転させる。この際に、遊嵌部6Bのねじ山は、山頂を削った湾曲面6B1となっていて、雌ねじ5との間に隙間が生じているので、遊嵌部6Bは、雌ねじ5のねじ山と干渉することなく、スムーズに雌ねじ5のねじ山の間に呼び込まれて噛み合う。
【0041】
レンズホルダ3を更に時計回りに回転させる際にも、螺合部6Aのねじ山の山頂を削って形成した遊嵌部6Bのねじ山は、螺合部6Aが螺合する雌ねじ5と同一の0.5mmピッチであるので、遊嵌部6Bは、雌ねじ5のねじ山に案内されながら、雌ねじ5に沿ってスライドし、レンズホルダ3は、収納孔4内に徐々に下降する。ここで遊嵌部6Bは、雌ねじ5との間に隙間が形成され、また、雌ねじ5に対向する遊嵌部6Bのねじ山は、エッジを削った湾曲面6B1となっているので、スライド中のダストは発生しにくい。
【0042】
更に、レンズホルダ3を時計回りに回転させると、遊嵌部6Bの上方で同一ピッチで連続する螺合部6Aが雌ねじ5に螺合し、螺合部6Aと雌ねじ5を螺合させながら、レンズホルダ3を時計回りに回転させると、レンズホルダ3が光軸OAに沿って収納孔4内を下降してレンズ7と撮像素子8間の距離が接近し、逆にレンズホルダ3の半時計回りに回転させると、レンズホルダ3が収納孔4内を上昇し、レンズ7と撮像素子8間の距離が長くなる。これにより、螺合部6Aと雌ねじ5が螺合する状態で、レンズホルダ3を時計方向若しくは半時計方向に回転させて、レンズ7と撮像素子8間の距離を、過焦点距離となる焦点距離に調整できる。この焦点距離を調整する工程において、雄ねじ6の螺合部6Aと雌ねじ5は、相応の接触圧で摺動接触するので、その間にダストが発生することがある。しかしながら、発生したダストは、レンズホルダ3を繰り返して回転操作する間に、螺合部6Aと雌ねじ5の隙間に沿って螺旋状に下降し、雄ねじ6の遊嵌部6Bまで達すると、遊嵌部6Bと雌ねじ5との隙間に形成されたダストトラップ11に貯留されるので、ダストは更にその下方まで落下しにくく、撮像素子8の受光面8a上に付着して、撮像素子8の画像品質を劣化させるようなことがない。
【0043】
過焦点距離となる焦点距離となるように、レンズ7と撮像素子8間の距離を調整した回転位置で、レンズホルダ3を接着剤、熱溶着などでハウジング本体2に固着し、レンズホルダ3の回転を固定する。
【0044】
しかしながら、パンフォーカスとせずに、被写体との距離に合わせて、その都度レンズ7と撮像素子8間の距離を調整する車載用以外の他の用途で用いられるカメラモジュールであっても本発明を適用できるので、そのようなカメラモジュールでは、レンズホルダ3の回転を固定しない。
【0045】
また、雄ねじ6の遊嵌部のねじ山の形状は、螺合部6Aのねじ山の一部を削って形成するものであれば、どのような形状でもよい。以下、雄ねじ6の遊嵌部20Bのねじ山の形状を遊嵌部6Bと異なる形状とした本発明の第2実施の形態のカメラモジュール20を、図6(a)、(b)を用いて説明する。第2実施の形態のカメラモジュール20は、遊嵌部20Bのねじ山の形状のみが第1実施の形態と異なるので、第1実施の形態と同一若しくは同様に作用する各部の構成については、同一の番号を付してその説明を省略する。
【0046】
雄ねじ6の遊嵌部20Bは、図6(b)に示すように、破線で示す螺合部6Aのねじ山の上方を10μm未満の深さで削り、上面を図中右方の谷底に向かって下方に傾斜する傾斜面20B1としている。遊嵌部20Bと雌ねじ5との上下方向の相対位置は、雄ねじ6の螺合部6Aと雌ねじ5が螺合することにより、一定で変化しないので、図6(a)に示すように、遊嵌部20Bの傾斜面20B1と雌ねじ5のねじ山との間にダストを貯留するダストトラップ21が形成される。
【0047】
このダストトラップ21の隙間は、10μm未満であるので、ダストトラップ21は、10μm以上の大きさのダストが通過しないフィルターとして作用し、撮像素子8で認識されるような大きさのダストが受光面8aに付着することがない。
【0048】
また、ダストトラップ21の底面となる傾斜面20B1は、ねじ山の谷底に向かって下方に傾斜しているので、ダストトラップ21に進入したダストは、谷底寄りに移動し遊嵌部20Bのねじ山の山頂と対向する雌ねじ5の谷底との間の隙間から下方に落下しにくい。
【0049】
上述の各実施の形態では、レンズホルダ3に刻設された雄ねじ6を上方の螺合部6Aと下方の遊嵌部6B、20Bとに分けたが、収容孔4の内周面に刻設する雌ねじ5を同一ピッチで上下に連続する上方の螺合部と下方の遊嵌部とに分け、遊嵌部のねじ山を、雌ねじ5の螺合部のねじ山の一部を削った形状とするものであってもよい。
【0050】
また、撮像素子8は、レンズホルダ3に固定されたレンズ7の光軸OA上に配置されるものであれば、ハウジング本体2やハウジング本体2と一体の他の部品上に取り付けられるものであってもよい。
【0051】
また、雄ねじ6若しくは雌ねじ5に形成される遊嵌部の長さは、少なくともその上方の螺合部が相手側のねじに螺合し、レンズホルダ3ががたつきなくハウジング本体2に固定されれば、任意の長さとすることができる。
【0052】
更に、上述の第2実施の形態では、ダストトラップ21の隙間を10μm未満としているが、ダストトラップ11、21は、遊嵌部6B、20Bがダストが落下しない十分な長さであれば、必ずしもで10μm未満の隙間とする必要はない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、レンズホルダを手動若しくは自動で回転し、最適な焦点距離に調整するカメラモジュールに適用できる。
【符号の説明】
【0054】
1、20 カメラモジュール
2 ハウジング本体
3 レンズホルダ(筒体)
4 収容孔
5 雌ねじ
6 雄ねじ
6A 螺合部
6B 遊嵌部
6B1 湾曲面
7 レンズ
8 撮像素子
8a 受光面
11、21 ダストトラップ
20B 遊嵌部
20B1 傾斜面
OA レンズの光軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8