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  • 特許-射出成形機の画面表示制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】射出成形機の画面表示制御装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
B29C45/76
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018101378
(22)【出願日】2018-05-28
(65)【公開番号】P2019206097
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 僚
(72)【発明者】
【氏名】岡本 昭男
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-227720(JP,A)
【文献】特開平04-059325(JP,A)
【文献】特開2016-159481(JP,A)
【文献】特開平09-076321(JP,A)
【文献】特開平09-104051(JP,A)
【文献】特開2016-215541(JP,A)
【文献】特開2003-245962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機の情報を画面に表示する機能を備えた画面表示制御装置であって、
該射出成形機の射出装置の長手方向に配置され、個別に温度検出及び温度制御が可能な複数の加熱手段毎の下限温度、及び、選択された該加熱手段の冷間起動防止解除温度の少なくとも一方と、
冷間起動防止に要する冷間起動防止時間と、
を設定可能で、
射出成形機起動後、前記加熱手段毎の温度の、前記下限温度への到達、及び、選択された前記加熱手段の前記冷間起動防止解除温度への到達、の少なくとも一方の温度への到達により、前記冷間起動防止時間の計測が開始されると共に、
前記冷間起動防止時間の残時間が、前記画面に優先的に表示され
前記射出成形機の稼働時に、前記画面に優先的に表示させる少なくとも1つの項目をユーザーパラメータとして設定可能で、
前記冷間起動防止時間の経過後、予め設定した所定時間、前記画面からの入力操作、又は、前記画面以外からの入力操作がない場合、直前に表示された情報から、前記少なくとも1つ項目の表示に自動的に切り替えられる
ことを特徴とする、射出成形機の画面表示制御装置。
【請求項2】
前記下限温度が、前記加熱手段毎に設定される成形用設定温度よりも、下限温度基準温度差だけ低い温度で規定され、
前記冷間起動防止解除温度が、前記成形用設定温度よりも、冷間起動防止解除温度基準温度差だけ低い温度で規定される
ことを特徴とする、請求項1に記載の射出成形機の画面表示制御装置。
【請求項3】
複数の前記加熱手段毎の前記下限温度への到達、及び、選択された前記加熱手段の前記冷間起動防止解除温度への到達により、前記冷間起動防止時間の計測が開始されると共に、前記冷間起動防止時間の前記残時間が前記画面に優先的に表示される
ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の射出成形機の画面表示制御装置。
【請求項4】
選択された前記加熱手段の前記冷間起動防止解除温度への到達により、前記冷間起動防止時間の計測が開始されると共に、前記冷間起動防止時間の前記残時間が前記画面に優先的に表示される
ことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の射出成形機の画面表示制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機の情報を画面に表示する機能を備えた画面表示制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は操作盤や制御盤を備え、これら操作盤や制御盤は、射出成形機の射出装置や型締装置等の各種成形条件や、使用する樹脂材料や金型に応じた必要な情報を設定入力したり、設定入力された項目を必要に応じて表示したりする画面(タッチパネル)及び該画面の画面表示制御装置を備えている。
【0003】
安全に直結する、あるいは重要な操作等は、操作盤や制御盤に配置された押釦(ボタン)やダイヤル式のセレクトレバー等の操作スイッチによる操作が主流である。しかしながら、多種多様化する入力・表示情報に対応するため、入力や表示が可能な画面(タッチパネル)が、操作盤や制御盤に配置される形態が近年の主流である。これら入力・表示情報を、限られたサイズの画面に効率的に表示させ、また、これらを設定入力・選択する押釦や操作スイッチも、図やイラストとして、タッチパネル上の選択された各種設定画面上に必要に応じて表示され、操作盤や制御盤にいたずらに押釦や操作スイッチ等が増える状況を回避し、操作ミスの軽減に繋がっている。
【0004】
このような、多種多様化する入力・表示情報を、限られたサイズの画面に効率的に表示させる成形状態表示装置(特許文献1)や、画面表示制御装置(特許文献2)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-173220号公報
【文献】特開2006-297671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、射出成形機、特に、加熱バレル内のスクリュを回転させて、加熱バレル(スクリュ)の後方から加熱バレル内に供給させた樹脂材料等の樹脂材料を、スクリュの前方に流動させる間に可塑化させるインラインスクリュ式射出装置を備える射出成形機においては、射出装置(射出ノズル及び加熱バレル)の長手方向に、個別に温度検出及び温度制御が可能な複数のバンドヒーター等の加熱手段が配置され、加熱バレル内の樹脂材料の可塑化(溶融)を促進する。
【0007】
このようなインラインスクリュ式射出装置を備える射出成形機においては、射出成形機の稼働を停止させる際、加熱バレル後方からの樹脂材料の供給を停止させた後も、スクリュを回転させて加熱バレル内の樹脂材料を全て可塑化させ、加熱バレル内の樹脂材料をできるだけ射出ノズルから加熱バレル外へ排出させて、次の稼働に備えて加熱バレル内に樹脂材料が残らないようにすることが一般的である。
【0008】
しかしながら、スクリュの回転動作や前進動作だけで加熱バレル内の樹脂材料を完全に加熱バレル外へ排出させることは実質的には困難である。
【0009】
そして、次に射出成形機を冷間状態で起動させる際(冷間起動)、射出装置の上記加熱手段にも通電され、射出装置全体の加熱が開始される。ここで、加熱バレル内(特に先端部/射出ノズル近傍)に、前回稼働停止時、完全に可塑化された後、その部位で冷却固化した状態で残存している樹脂材料があった場合、このような樹脂材料は加熱バレル内に投入した際のペレット状ではなく、加熱バレル内周面及びスクリュ外周間の隙間や、スクリュ表面に固着した状態であることが多い。そのため、これら樹脂材料が完全に可塑化(溶融)される前にスクリュを回転させたり、前進や後退をさせたりすると、スクリュの駆動に想定以上の負荷が発生し、駆動用の電動モータがトリップしたり、想定以上の負荷でのスクリュの駆動により、スクリュの回転・移動の駆動支持部位が破損したりする虞がある。
【0010】
このような射出成形機の冷間起動時における射出装置の破損等を防止し、射出装置を保護することを目的として、射出成形機メーカーでは、出荷時に、射出装置の加熱手段の温度等に基づく冷間起動防止条件を設定することが一般的である。通常、このような冷間起動防止条件は、メーカーパラメータとして設定されており、射出成形機のユーザーや現場オペレータへの開示や、現場オペレータによる設定変更は許容されていない。そのため、射出成形機の稼働管理を行う現場オペレータには、射出成形機の冷間起動後、どのタイミングで冷間起動防止条件が解除されるのかが判断できない。
【0011】
そのため、射出成形機の起動後、射出装置を手動操作により作動させ、スクリュの回転や前進・後退等の動作確認をして良いか、また、実際に樹脂材料の供給を開始して成形を行い、計量精度や成形品の成形不良の有無の確認をして良いか、あるいは、樹脂材料の種類や成形色の変更の準備を開始して良いか、等の判断基準となる情報が、操作盤や制御盤の画面に表示されることはなく、射出成形機のユーザーや現場オペレータは、経験的にその判断を行っていた。
【0012】
先に挙げた特許文献1や特許文献2には、多種多様化する入力情報や表示情報を、限られたサイズの画面に効率的に表示させる表示装置や画面表示制御方法について開示されているが、このような、射出成形機の冷間起動時における冷間起動防止条件の解除やその表示については、何ら言及はない。
【0013】
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたもので、具体的には、冷間起動防止状態であることと、その解除を現場オペレータが判断することができる、射出成形機の画面表示制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記目的は、射出成形機の情報を画面に表示する機能を備えた画面表示制御装置であって、
該射出成形機の射出装置の長手方向に配置され、個別に温度検出及び温度制御が可能な複数の加熱手段毎の下限温度、及び、選択された該加熱手段の冷間起動防止解除温度の少なくとも一方と、
冷間起動防止に要する冷間起動防止時間と、
を設定可能で、
射出成形機起動後、前記加熱手段毎の温度の、前記下限温度への到達、及び、選択された前記加熱手段の前記冷間起動防止解除温度への到達、の少なくとも一方の温度への到達により、前記冷間起動防止時間の計測が開始されると共に、
前記冷間起動防止時間の残時間が、前記画面に優先的に表示される
射出成形機の画面表示制御装置によって達成される。
【0015】
また、本発明に係る、射出成形機の画面表示制御装置は、前記下限温度が、前記加熱手段毎に設定される成形用設定温度よりも、下限温度基準温度差だけ低い温度で規定され、
前記冷間起動防止解除温度が、前記成形用設定温度よりも、冷間起動防止解除温度基準温度差だけ低い温度で規定されても良い。
【0016】
一方、本発明に係る、射出成形機の画面表示制御装置は、複数の前記加熱手段毎の前記下限温度への到達、及び、選択された前記加熱手段の前記冷間起動防止解除温度への到達により、前記冷間起動防止時間の計測が開始されると共に、前記冷間起動防止時間の前記残時間が前記画面に優先的に表示されても良い。
【0017】
また、本発明に係る、射出成形機の画面表示制御装置は、選択された前記加熱手段の前記冷間起動防止解除温度への到達により、前記冷間起動防止時間の計測が開始されると共に、前記冷間起動防止時間の前記残時間が前記画面に優先的に表示されても良い。
【0018】
さらに、本発明に係る、射出成形機の画面表示制御装置は、前記射出成形機の稼働時に、前記画面に優先的に表示させる少なくとも1つの項目を設定可能で、
前記冷間起動防止時間の経過後、予め設定した所定時間、前記画面からの入力操作、又は、前記画面以外からの入力操作がない場合、直前に表示された情報から、前記少なくとも1つ項目の表示に自動的に切り替えられることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る、射出成形機の画面表示制御装置は、射出成形機の情報を画面に表示する機能を備えた画面表示制御装置であって、
該射出成形機の射出装置の長手方向に配置され、個別に温度検出及び温度制御が可能な複数の加熱手段毎の下限温度、及び、選択された該加熱手段の冷間起動防止解除温度の少なくとも一方と、
を設定可能で、
射出成形機起動後、前記加熱手段毎の温度の、前記下限温度への到達、及び、選択された前記加熱手段の前記冷間起動防止解除温度への到達、の少なくとも一方の温度への到達により、前記冷間起動防止時間の計測が開始されると共に、
前記冷間起動防止時間の残時間が、前記画面に優先的に表示されるため、冷間起動防止状態であることと、その解除を現場オペレータが判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態に係る、射出成形機の画面表示制御装置の、冷間起動防止時間の残時間表示に関する制御フローチャートである。
図2】第1実施形態に係る、射出成形機の画面表示制御装置の、冷間起動防止時間の残時間に関連する各種画面表示のイメージ図である。
図3】第2実施形態に係る、射出成形機の画面表示制御装置の、冷間起動防止時間の残時間表示に関する制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
[第1実施形態]
図1及び図2を参照しながら本発明の第1実施形態に係る、射出成形機の画面表示制御装置の、冷間起動防止時間の残時間表示に関する制御フローチャートを説明する。図1に示す本制御フローチャートは、冷間起動防止時間の残時間表示の制御の説明に必要な工程を図示したものであり、関連する制御工程のすべてを図示したものではない。また、本明細書においては、「メーカーパラメータ」が、射出成形機ユーザーや現場オペレータにより操作盤や制御盤からの設定入力や入力値の変更・修正ができない設定入力項目を意味するものとする。また、「ユーザーパラメータ」が、射出成形機ユーザーや現場オペレータにより操作盤や制御盤からの設定入力や入力値の変更・修正ができる設定入力項目を意味するものとする。
【0023】
また、図2は、第1実施形態に係る、射出成形機の画面表示制御装置の、冷間起動防止時間の残時間に関連する各種画面表示のイメージ図である。それぞれの画面表示については都度説明する。
【0024】
まず、射出成形機の主電源を入れ射出成形機を起動させる(工程ST1)。射出成形機の起動後、工程ST2において、予め設定入力されている冷間起動判断情報から、起動された射出成形機の射出装置が冷間起動状態であるかどうかを判断させる。この工程ST2は、射出成形機の簡易な調整やメンテナンス等で、短時間、射出成形機の稼働を停止した後の再稼働等、冷間起動防止条件を適用する必要のない場合を射出成形機側で自動的に判断させるためのものである。
【0025】
このような冷間起動判断情報は、具体的には、前回稼働停止時からの経過時間や、加熱手段の実温度情報等の項目毎に、冷間起動状態であるか否かの判断基準が設定されるもので良く、射出成形機メーカーの設計思想等に合わせて選択・決定された項目や該項目毎の判断基準がメーカーパラメータとして、出荷時に制御装置に設定入力されれば良い。
【0026】
ここで、工程ST2において、起動された射出成形機が冷間起動状態ではない(N)と判断された場合は、工程ST9に移行し、冷間起動防止項目として、動作させることを禁止していた各種動作のインターロックが解除される。冷間起動防止項目も基本的にはメーカーパラメータとすることが一般的である。
【0027】
工程ST2において、起動された射出成形機が冷間起動状態である(Y)と判断された場合は、冷間起動の解除条件を満たすか否かが判断される。第1実施形態においては、射出装置の複数の加熱手段毎に設定された下限温度への到達を解除条件とする冷間起動解除条件1を各加熱手段からの実温度情報等から判断する工程ST3と、選択された加熱手段に設定された冷間起動防止解除温度への到達を解除条件とする冷間起動解除条件2を、選択された加熱手段からの実温度情報等から判断する工程ST4と、を備え、さらに、これら冷間起動解除条件1と冷間起動解除条件2との両方の解除条件を満たすか否かを判断する工程ST5を備える。
【0028】
第1実施形態においては、上記2つの冷間起動解除条件を備え、その2つの解除条件を満たした場合に、後述するように、予め設定された冷間起動防止時間のカウントダウンが開始され、該冷間起動防止時間の残時間がゼロになると、冷間起動防止項目のインターロックが解除される。例えば、射出成形機ユーザーが様々な樹脂材料を使用するため、一般的に樹脂材料が残存し易い加熱バレルの先端部や射出ノズル近傍以外にも樹脂材料が残存する可能性がある場合等、あるいは、融点が高い樹脂材料を使用するため、射出成形機の起動後、できるだけ早く、射出装置全体を昇温したい場合等、射出装置の複数の加熱手段毎に設定された下限温度への到達を解除条件とする冷間起動解除条件1があれば、射出装置の保護及び射出成形機ユーザーの要求を両立させることができる。
【0029】
そのため、冷間起動解除条件1の加熱手段毎に設定する下限温度は、ユーザーパラメータとして設定される、加熱手段毎に設定される成形用設定温度を基準に、メーカーパラメータとして予め設定される下限温度基準温度差だけ低い温度で規定されることが好ましい。このような下限温度の規定により、射出成形機ユーザーや現場オペレータが、加熱手段毎にどのような成形用設定温度を設定した場合でも、これに準じた適切な下限温度が規定され、射出装置の保護及び射出成形機ユーザーの要求を両立させることができる。
【0030】
また、選択された加熱手段に設定された冷間起動防止解除温度への到達を解除条件とする冷間起動解除条件2があれば、一般的に樹脂材料が残存し易い加熱バレルの先端部や射出ノズル近傍の加熱手段を選択して、該選択された加熱手段に適切な冷間起動防止解除温度が設定されることにより、射出成形機の冷間起動時における射出装置の破損等を防止し、射出装置の保護をより確実にすることができる。そのため、冷間起動解除条件2においても、メーカーパラメータとして、加熱バレルの先端部や射出ノズル近傍の加熱手段が選択され、該選択された加熱手段に、ユーザーパラメータとして設定される成形用設定温度を基準に、メーカーパラメータとして予め設定される冷間起動防止解除温度基準温度差だけ低い温度で冷間起動防止解除温度が規定されることが好ましい。このような冷間起動防止解除温度の規定により、射出成形機ユーザーや現場オペレータが、加熱手段毎にどのような成形用設定温度を設定した場合でも、射出装置の保護に好適な加熱手段に対して、これに準じた適切な冷間起動防止解除温度が規定され、射出装置の保護及び射出成形機ユーザーの要求を両立させることができる。
【0031】
制御フローチャート(図1)の説明に戻る。工程ST5において、冷間起動解除条件1と冷間起動解除条件2との両方の解除条件を満たすと判断された場合、冷間起動防止残時間が表示される(工程ST6)。具体的には、各種情報が表示された図2(a)の画面表示から、図2(b)に示すような、冷間起動防止時間の残時間が表示される画面表示に自動的に切り換えられる。図2(b)においては、本冷間起動防止時間が5分である旨が表示されている。この表示により、現場オペレータが、該当射出成形機の射出装置が冷間起動防止状態であることと、その冷間起動防止状態が解除されるまでの時間とを把握することができる。
【0032】
冷間起動防止時間の残時間は、冷間起動解除条件1と冷間起動解除条件2との両方の解除条件を満たしたタイミングで、予めメーカーパラメータとして設定されている冷間起動防止時間が図2(b)のように表示される(「5(min)」)と共に、そのカウントダウンが開始される。具体的には、図2(b)のように冷間起動防止時間が表示される(工程ST6)と共に、表示された該冷間起動防止時間のカウントダウンが開始され、この表示部分にそのまま残時間が表示される(工程ST7)。説明のため、工程ST6及び工程ST7を分けて図示したが、実質的には同じ工程と考えて良い。
【0033】
冷間起動防止時間は、冷間起動解除条件1と冷間起動解除条件2との両方の解除条件を満たしたタイミングと同時に、冷間起動防止項目のインターロックを解除させるのではなく、該両方の解除条件が所定時間維持されたことを持って解除させるための、一種の安全対策である。ここで、加熱手段と合わせて、射出装置の加熱バレルや射出ノズルにも温度検出手段を設け、これらが所望する温度に到達することを冷間起動解除条件としたり、これら部位の昇温状況から、所望する温度に到達する時間を、冷間起動防止時間として推定・算出させて画面表示させたりすることも可能である。しかしながら、射出装置の保護を主目的とするのであれば、該両方の解除条件が維持される所定時間が、射出成形機メーカーの設計思想等に合わせてメーカーパラメータとして適宜設定されれば良い。
【0034】
冷間起動防止時間の残時間は、工程ST7~工程ST8間で、それがゼロになるまで(工程ST8/N)カウントダウンが継続され、残時間の表示(工程ST7)が継続される。そして、残時間がゼロになる(工程ST8/Y)と、冷間起動防止項目のインターロックが解除され(工程ST9)、残時間ゼロが表示される(工程ST10)。
【0035】
工程ST10で、図2(b)に示すような、冷間起動防止時間の残時間が表示される画面表示がゼロ表示になると、このゼロ表示を所定時間継続した後、図2(c)に示すような、予め、ユーザーパラメータとして、射出成形機ユーザーや現場オペレータが設定した優先表示項目の表示画面に自動的に切り換えられる。このような、冷間起動防止時間の残時間が表示されることや、該残時間が表示される画面表示が、優先表示項目の表示画面に自動的に切り換えられることにより、現場オペレータは、該当射出成形機の射出装置の冷間起動防止条件が解除されるタイミングや、冷間起動防止条件の解除を、例え、残時間ゼロの表示を見落としても判断することができる。
【0036】
図2(c)に示す優先表示項目の表示画面は、「サイクルタイム(1回の成形時間)」と「ショットカウント(成形回数)」と、「ロット数(設定ロット数/実ロット数)」と、の3項目が優先表示項目として設定されている場合である。これに限定されず、優先表示項目は、他の項目を複数組み合わせても良いし、1つの項目のみを表示させても良い。
【0037】
ここで、多岐に亘る入力・表示情報を、限られたサイズの画面に効率的に表示させるとしても、1画面に多くの項目を表示させた場合、操作盤や制御盤から離れた位置で、現場オペレータがそれらを目視で確認することは容易ではない。そのため、予め、画面に優先的に表示させる項目をユーザーパラメータとして設定し、冷間起動防止状態の解除と共に自動的にこれら項目を表示させることにより、個々の項目を拡大表示させて、操作盤や制御盤から離れた位置における現場オペレータのこれら項目の視認性を向上させることができる。
【0038】
また、優先表示項目は、予め、ユーザーパラメータとして設定されるが、成形準備作業や成形稼働管理等、あるいは、現場オペレータの経験や好みにより、優先的に表示させたい項目は必ずしも同じではない。そのため、優先表示項目は、都度、あるいは、任意で変更可能にしても良い。例えば、図2(c)に示す優先表示項目の表示画面の右下に「戻る」ボタン等を設けて、これを押すと、図2(d)に示すように、優先表示項目の変更画面をポップアップ表示させれば、優先表示項目の変更が容易である。
【0039】
一方、射出成形機の起動時に、図1の工程ST2において、射出成形機が冷間起動状態だと判断された場合であっても、スクリュの駆動を伴わない操作や準備作業、具体的には、射出成形機の射出装置や型締装置等の各種成形条件や、使用する樹脂材料や金型に応じた必要な情報の新たな設定入力を行ったり、入力済情報の変更・修正入力を行ったりする操作や準備作業までも制約する必要はない。むしろ、このような操作や準備作業は、射出成形機の起動後、冷間起動防止状態が解除されるまでに済ませておきたい操作(作業)である。
【0040】
そのため、射出成形機の起動時に、図1の工程ST2において、射出成形機が冷間起動状態だと判断された場合に、図2(e)に示すように、操作盤や制御盤の画面(タッチパネル)の片隅(図2(e)においては右下)に、射出成形機が冷間起動防止状態である旨の表示を小さく表示させ、点滅させても良い。このような画面表示により、例え小さな画面表示であっても、射出成形機が冷間起動防止状態であることを現場オペレータが容易に認識できると共に、現場オペレータによる、該画面(タッチパネル)上での上記のような新たな設定入力や入力済情報の変更・修正入力が妨げられない。当然ではあるが、射出成形機が冷間起動防止状態である旨の表示は、上記のような新たな設定入力や入力済情報の変更・修正入力が妨げられないように画面設計により確保されたスペースに小さく表示させるか、その表示を該画面(タッチパネル)上で自由に移動可能にされることが好ましい。また、その表示の表示サイズを該画面(タッチパネル)上で変更可能する、あるいは、表示自体を消せるようにしても良い。
【0041】
また、現場オペレータが、冷間起動防止状態における、上記のような操作や準備作業中、画面上の冷間起動防止状態である旨の小さな表示を見落として、あるいは、操作や準備作業の妨げになるためこの表示を消した場合に、メーカーパラメータとして予め設定入力されている冷間起動防止項目の操作を行った場合には、図2(b)や図2(f)に示すように、射出成形機が冷間起動防止状態である旨の表示を該画面中央に拡大表示(ポップアップ表示)させたり、同表示を点滅させる、あるいは、警告音を発生させたりする等の制御がなされることが好ましい。図2(b)や図2(f)では、冷間起動防止が解除されるまでの残時間がそのまま数字(「5(min)」)で表示されているが、残時間の表示は必ずしも数字でなくても良い。図示はしていないが、画面に表示された複数個の丸が、残時間が減少する割合に合わせて、表示個数を減少させるような表示であっても良いし、1つの大きな丸が、残時間が減少する割合に合わせて、円弧になり、この中心角度が減少していくような表示でも良い。さらに、図2(b)や図2(f)に示すような、射出成形機が冷間起動防止状態である旨の拡大表示時に、図示はしていないが、冷間起動防止項目(スクリュ回転・前進・後退動作)等を合わせて表示させても良く、このような表示により現場オペレータの冷間起動防止項目への認識を深めることができる。尚、冷間起動防止条件を満たしておらず、冷間起動防止時間の残時間カウントがスタートしていない状態における、冷間起動防止状態である旨の拡大表示(ポップアップ表示)には、当然ながら残時間を表示させることはできない。そのため、このような場合には、冷間起動防止時間の残時間カウントがスタートしていない状態であることを現場オペレータへアナウンスする表示が好ましい。
【0042】
このように、射出成形機が冷間起動防止状態である旨の拡大表示が成された場合、現場オペレータがこれを認識したことを確認する目的で、同拡大表示を元に戻すリセットボタンも合わせて表示させても良い。
【0043】
ここで、優先表示項目は、冷間起動防止状態が解除された後に表示されることを説明したが、予め設定した所定時間、該画面(タッチパネル)からの入力操作や、該画面以外からの入力操作、具体的には、操作盤や制御盤に配置された押釦(ボタン)やダイヤル式のセレクトレバー等の操作スイッチによる操作がない場合、直前に表示された情報から、図2(c)に示すような、優先表示項目の表示に自動的に切り換えられることが好ましい。
【0044】
[第2実施形態]
図3を参照しながら本発明の第2実施形態に係る、射出成形機の画面表示制御装置の、冷間起動防止時間の残時間表示に関する制御フローチャートを説明する。図1と同様に、図3に示す本制御フローチャートは、冷間起動防止時間の残時間表示の制御の説明に必要な工程を図示したものであり、関連する制御工程のすべてを図示したものではない。
【0045】
第1実施形態においては、2つの冷間起動解除条件を備え、その2つの解除条件を満たした場合に、予め設定された冷間起動防止時間のカウントダウンが開始されるとしたが、第2実施形態は、これら第1実施形態の2つの冷間起動解除条件の内、複数の加熱手段毎に設定された下限温度への到達を解除条件とする冷間起動解除条件1を設定せず、選択された加熱手段に設定された冷間起動防止解除温度への到達を解除条件とする冷間起動解除条件2のみが設定され、これを満たした場合に、予め設定された冷間起動防止時間のカウントダウンが開始される点のみが第1実施形態と異なる。そのため、第1実施形態と異なる点のみ説明し、それ以外の点については、同じ構成については、第1実施形態と同じ符号を使用すると共に、重複する説明は割愛する。
【0046】
図1の、第1実施形態における冷間起動防止時間の残時間表示に関する制御フローチャートと比較すると、先に説明したように、図3に示す、第2実施形態における冷間起動防止時間の残時間表示に関する制御フローチャートは、工程ST3及び工程ST5を備えず、工程ST4において、選択された加熱手段に設定された冷間起動防止解除温度への到達を解除条件とする冷間起動解除条件2が判断される。工程ST4以降の、工程ST6から工程ST11までの各制御工程や表示画面については、第1実施形態と同じであるため説明を割愛する。
【0047】
第2実施形態は、1つの冷間起動解除条件(冷間起動解除条件2)のみを備える。第1実施形態で説明したように、冷間起動解除条件2は、装置保護を主目的として、メーカーパラメータとして設定されることが好ましい。
【0048】
様々な樹脂材料を使用する射出成形機ユーザーや、特殊な成形条件等を採用する射出成形機ユーザーであれば、複数の加熱手段毎に設定された下限温度への到達を解除条件とする冷間起動解除条件1により、その要求に対応することが容易になる。しかしながら、一般的な樹脂材料を一般的な成形条件で成形する射出成形機ユーザーであれば、装置保護を主目的とした冷間起動解除条件2のみが設定されれば、所望する成形作業には支障はなく、仕様を単純化することで、射出成形機のユーザーパラメータを減らせることや、射出成形機の初期コストが下げられるメリットの方が大きい。
【0049】
以上、発明を実施するための形態について、第1実施形態及び第2実施形態を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された内容を逸脱しない範囲で、色々な形で実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0050】
ST1 射出成形機起動工程、ST2 冷間起動判断工程、ST3 冷間起動解除条件1判断工程、ST4 冷間起動解除条件2判断工程、ST5 2解除条件判断工程、ST6 冷間起動防止時間表示工程、ST7 冷間起動防止時間カウントダウン工程、ST8 残時間判断工程、ST9 冷間起動防止項目インターロック解除工程、ST10 冷間起動防止時間残時間ゼロ表示工程、ST11 優先表示項目表示工程
図1
図2
図3