(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】電子機器の振動発電機
(51)【国際特許分類】
H02K 35/02 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
H02K35/02
(21)【出願番号】P 2018102461
(22)【出願日】2018-05-29
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002675
【氏名又は名称】特許業務法人ドライト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋草 順
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 和則
(72)【発明者】
【氏名】森 智広
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-225650(JP,A)
【文献】特開2003-236470(JP,A)
【文献】特開平06-036749(JP,A)
【文献】特開平10-023729(JP,A)
【文献】実開平02-030647(JP,U)
【文献】特開2018-008642(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0057629(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102437631(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 35/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に設けた収容部に収容される電池から前記筐体内の回路に電力を供給する電子機器の振動発電機において、
前記収容部に少なくとも第1の方向に移動自在に収容される前記電池の表面に固定された複数の磁石を有する磁石部と、
前記磁石部を設けた前記電池の表面に対面する前記収容部の壁面に固定され、前記第1の方向への前記磁石部の移動によって誘導起電力を発生させる複数のコイルを有するコイル部と、
前記収容部内で前記第1の方向における前記電池の
一端と前記筐体との間に
固定された
第1の弾性部材と
、前記収容部内で前記第1の方向における前記電池の他端と前記筐体との間に固定された第2の弾性部材とを備え
、
前記第1及び第2の弾性部材は、導電性を有するコイルバネであって、前記電池に設けた電極と、前記筐体に設けられ前記筐体内の回路に接続された接点との間に固定され、前記電池と前記筐体内の回路とを電気的に接続し、
外部からの振動により、前記電池が前記第1の方向に移動すると前記第1の弾性部材が伸張され前記第2の弾性部材が圧縮され、前記電池が前記第1の方向と逆向きに移動すると前記第1の弾性部材が圧縮され前記第2の弾性部材が伸張され、前記電池が前記第1の方向に振動している間、前記磁石部は前記第1の方向に往復動する
ことを特徴とする電子機器の振動発電機。
【請求項2】
前記複数の磁石は、N極とS極とが交互に並ぶように格子状に配置され、
前記複数のコイルは、格子状に配置されている
ことを特徴とする請求項
1に記載の電子機器の振動発電機。
【請求項3】
前記複数の磁石は、前記第1の方向にN極とS極とが交互に並ぶように配置され、
前記複数のコイルは、前記第1の方向と直交する第2の方向に延びた形状であり前記第1の方向に配置されている
ことを特徴とする請求項
1に記載の電子機器の振動発電機。
【請求項4】
前記コイル部は、前記コイルが積層されていることを特徴とする請求項1ないし
3のいずれか1項に記載の電子機器の振動発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の振動発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯型の電子機器に内蔵された振動発電機が知られている(例えば特許文献1を参照)。特許文献1に記載された振動発電機は、N極とS極とが交互に並ぶように磁石が配置された可動部と、複数のコイルが平面上に並べられ可動部を挟むように固定された一対のコイル部とを備えている。この振動発電機は、歩く時の振動、乗り物による振動によって、可動部がコイル部と平行な面内で振動することにより、コイルに誘導起電力を発生させている。このように振動発電機で発電された電力は、例えば電子機器に内蔵した充電式電池の充電に利用される。
【0003】
また、振動発電機として、電子回路基板であるマザーボードにコイルを、ケースに磁石をそれぞれ設け、マザーボードを振動自在に保持した構成が特許文献2によって知られている。この特許文献2の振動発電機では、マザーボードの振動による上述のコイルと磁石との相対的な移動によって発電を行っている。さらに、円筒形の缶内に組み込まれた振動発電機が非特許文献1で知られている。非特許文献1に記載された振動発電機は、円筒形の中空な内筒と、この内筒内に配された可動磁石と、この可動磁石を内筒の軸心方向に振動可能に吊す一対のコイルバネと、内筒の周囲に設けられたコイルと、これらを内部に収容した外筒とから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-225650号公報、段落0009~段落0015
【文献】特開2011-150696号公報、段落0011
【非特許文献】
【0005】
【文献】スミダコーポレーション株式会社,“製品情報 「高効率(従来比4倍)振動発電器の開発・販売」”,[Online],INTERNET,[2017年8月16日検索],<URL:http://www.sumida.com/news/index.php?lang=jp&categoryId=3&newsId=47&m=&y=&tag=&viewall=>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、振動発電機では、外部の振動から効率良く発電を行うには、振動する部材は、質量が大きく、振動時に大きな振動(運動)エネルギーを蓄えることが好ましい。しかしながら、上記特許文献1及び非特許文献1の振動発電機では、磁石のみからなる可動部を振動させる構成であり十分な質量を有していない。一方で、質量の大きな磁石等を用いる等により可動部の質量を大きくした場合には、その振動発電機を搭載する電子機器の重量が増大して携帯性を損ねるという問題が生じる。特許文献2の振動発電機においては、マザーボードは十分に大きな質量を有しているとは言えない。さらには、マザーボードは、電子機器の他の回路基板や電気部品との間を電気的に接続するコネクタや接続ケーブルが多く必要であるが、それらに可撓性を持たせる必要が生じ、構造の複雑化を招く他、コネクタや接続ケーブルがマザーボードの振動エネルギーを減衰させ、発電の効率を低下させる原因になるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、電子機器の携帯性を損ねることなく振動発電の効率を高くすることができる電子機器の振動発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点は、筐体に設けた収容部に収容される電池から前記筐体内の回路に電力を供給する電子機器の振動発電機において、前記収容部に少なくとも第1の方向に移動自在に収容される前記電池の表面に固定された複数の磁石を有する磁石部と、前記磁石部を設けた前記電池の表面に対面する前記収容部の壁面に固定され、前記第1の方向への前記磁石部の移動によって誘導起電力を発生させる複数のコイルを有するコイル部と、前記収容部内で前記第1の方向における前記電池の両端と前記筐体との間にそれぞれ配置された弾性部材とを備えるものである。
【0009】
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、前記弾性部材が、導電性を有し、前記電池に設けた電極と、前記筐体に設けられ前記筐体内の回路に接続された接点との間に配置され、前記電池と前記筐体内の回路とを電気的に接続するものである。
【0010】
本発明の第3の観点は、第1の観点または第2の観点に基づく発明であって、前記複数の磁石が、N極とS極とが交互に並ぶように格子状に配置され、前記複数のコイルが格子状に配置されているものである。
【0011】
本発明の第4の観点は、第1の観点または第2の観点に基づく発明であって、前記複数の磁石が、前記第1の方向にN極とS極とが交互に並ぶように配置され、前記複数のコイルが、前記第1の方向と直交する第2の方向に延びた形状であり前記第1の方向に配置されているものである。
【0012】
本発明の第5の観点は、第1ないし第4の観点のいずれかに基づく発明であって、前記コイル部が、前記コイルが積層されているものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第1の観点によれば、第1の方向に振動可能に収容部に収容される電池の表面に複数の磁石を有する磁石部を固定し、磁石部を設けた電池の表面に対面する収容部の壁面にコイル部を固定した構成としたので、電子機器内でも質量が大きい電池の振動エネルギーが電気エネルギーに変換されるため、電子機器の携帯性を損ねることなく振動発電の効率を高くすることができる。
【0014】
本発明の第2の観点によれば、導電性のある弾性部材を用い、電池と筐体内の回路とを電気的に接続するので、電池と筐体内の回路とを電気的に接続する部材を別途設ける必要がなく、部品点数の低減とともに、電池の振動の抵抗を小さくできるため振動発電の効率をより高くすることができる。
【0015】
本発明の第3の観点によれば、磁石部の磁石をN極とS極とを交互に並べて格子状に配置するとともに、コイル部のコイルを格子状に配置したので、振動発電の効率をより高くすることができる。
【0016】
本発明の第4の観点によれば、磁石部の磁石を第1の方向にN極とS極とが交互に並ぶように配置するとともに、コイル部では第1の方向と直交する第2の方向に延びた複数のコイルを配置したので、振動発電の効率をより高くすることができる。
【0017】
本発明の第5の観点によれば、前記コイル部のコイルを積層した構成としたので、コイル部の単位面積当たりの発電量を大きくすることができ、振動発電の効率をより高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係る電子機器の背面カバー及び電池パックを外した状態を示す斜視図である。
【
図2】シート状に形成されたコイル部の断面を示す断面図である。
【
図3】コイルを2層に設けたコイル部の断面を示す断面図である。
【
図4】電子機器の電源装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】第2実施形態に係る電子機器の背面カバー及び電池パックを外した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
図1において、携帯型の電子機器10は、内蔵する電池パック11からの電力供給を受けて動作するものであり、携帯して利用可能な機器である。このような電子機器10としては、例えば携帯電話、スマートフォン等と呼ばれる高機能携帯電話端末、タブレットPC、ノートPC、携帯型のラジオ、テレビ、ビデオカメラ等を挙げることができる。この電子機器10は、振動発電機12を内蔵している。振動発電機12は、磁石部14とコイル部15等とで構成される。なお、以下の説明では、図中に示されるように、互いに直交する電子機器10の長手方向、幅方向、厚み方向を、X、Y、Z方向として説明する。また、この例では第1の方向がX方向であり、第1の方向に直交する第2の方向がY方向である。
【0020】
電子機器10は、例えば筐体16の背面に対して背面カバー17が着脱可能になっている。筐体16から背面カバー17を外すと、筐体16の背面に設けられた凹状の収容部18が露呈される。この収容部18には、電池パック11が収容される。電池パック11は、例えば複数の電池とそれら電池を収容したケースとから構成される。この例における電池パック11は、厚みの薄い直方体形状であるが、これに限定されない。電池パック11の表面(XY面)に磁石部14が設けられている。
【0021】
電池パック11は、磁石部14を収容部18の底面に向けた姿勢で収容部18内に収容される。収容部18の底面には、コイル部15が設けられている。したがって、磁石部14は、コイル部15に対面した姿勢で収容部18に収容される。収容部18は、そのX方向の長さが、電池パック11のX方向の長さよりも大きくされている。これにより、電池パック11は、収容部18内でX方向に移動自在である。なお、収容部18の幅(Y方向の長さ)及び深さ(Z方向の長さ)は、電池パック11のY方向の長さ及びZ方向の長さと同じか僅かに大きくされており、電池パック11はX方向にのみ移動することができる。
【0022】
磁石部14は、電池パック11の表面に固定された複数の薄板状の磁石14aから構成されている。この磁石部14は、その表面にN極とS極とがX方向及びY方向にそれぞれ交互に並ぶように、磁石14aが格子状に配置されている。
図1では、各磁石14aの磁極を「N」と「S」との文字で示してある。磁石14aは、例えば正方形であり、そのサイズは、特に限定されないが、例えば1mm角、1.5mm角、2mm角、3mm角等の種々の大きさのものを選択できる。
【0023】
コイル部15は、磁石部14の移動によって誘導起電力を発生させる複数のコイル15aを有しており、これらコイル15aがX方向及びY方向にそれぞれ所定の配列ピッチで格子状に配置されている。コイル15aは、円形あるいは略矩形のループ状又はスパイラル状の導線パターンで構成された平面コイルである。この例では、コイル15aのXYサイズ(導線パターンが円形の場合は直径、略矩形の場合はX方向、Y方向の各長さ)は、磁石14aの1辺の長さと同じにしてあり、各コイル15aの配列ピッチは磁石部14の磁石14aの配列ピッチ(磁石14aの1辺の長さ)と同じにしてある。なお、厳密には、コイル15aの導線パターンのXYサイズは、磁石14aのXYサイズより多少小さく、隣接したコイル15a同士の最外周の導線パターンが互いに接触しないようにしてある。また、効率的な発電のために、上述のように磁石14aのピッチとコイル15aの配列ピッチは同じにしてある。
【0024】
例えば、磁石14aとしては、2mm角のものが用いられ、電池パック11の60mm×60mmの表面にX方向とY方向とにそれぞれ2mmピッチで並べている。また、コイル15aとしては、断面サイズが450μm(高さ)×450μm(幅)の導線パターンを40μmの間隔でスパイラル状に2巻きした外径が約2mmのものが用いられ、収容部18の底面にX方向とY方向とにそれぞれ2mmピッチで並べている。
【0025】
電池パック11のX方向の両端部に正極11aと負極11bとが2個ずつ設けられている。収容部18のX方向の各壁面には、正極11a及び負極11bに対面する位置に接点22a、22bが設けられている。各正極11aには、それぞれコイルバネ23aの一端が固定され、各負極11bには、それぞれコイルバネ23bの一端が固定されている。電池パック11を収容部18に収容した状態で、各コイルバネ23aの他端が係合等によって接点22aにそれぞれ固定される。同様に、各コイルバネ23bの他端が接点22bにそれぞれ固定される。接点22a、22bには、筐体16内の回路が電気的に接続されている。コイルバネ23a、23bは、導電性を有する材料で形成されている。なお、電池パック11は、正極11a及び負極11bの他に、参照電極を設けたものであってもよい。
【0026】
上記の構成により、コイルバネ23a、23bを介して電池パック11を筐体16内の回路に電気的に接続し、電池パック11から筐体内の回路に電力を供給する。このように、電池パック11を筐体16内の回路に電気的に接続する機能をコイルバネ23a、23bに持たせているため、部品点数を少なくすることができるとともに、電池パック11が振動する際の抵抗を小さくできるため、振動発電の効率を高めることができる。
【0027】
上記のように電池パック11のX方向の両端部とこれら両端部に対面する各壁面に端部が取り付けられたコイルバネ23a、23bは、電子機器10に与えられたX方向の運動により電池パック11をX方向に振動させる。振動発電機12は、この電池パック11の振動エネルギーを電気エネルギーに変換する。
【0028】
なお、この例では、コイルバネ23a、23bを電池パック11の正極11a、負極11bと一体にしているが、これに代えてコイルバネ23a、23bを接点22a、22bと一体にしたり、コイルバネ23a、23bを正極11a、負極11b及び接点22a、22bと別々の部品としたりしてもよい。また、コイルバネ23a、23bに代えて、板バネ等を弾性部材として設けてもよい。
【0029】
電池パック11を振動させるための弾性部材と、電池パック11を筐体16側の回路と電気的に接続するための接続部材とを別々に設けてもよい。この場合には、接続部材として導電性、可撓性を有する細いワイヤーを用いることができる。参照電極を含めても電池パック11と筐体16側の回路とを接続するのに必要なワイヤーは数本であるから、電池パック11の振動の抵抗になりにくい。また、電池パック11の表面、電池パック11が接触するコイル部15の表面や筐体16及び背面カバー17の壁面は、電池パック11が振動する際の摩擦抵抗を小さくする素材を用いたり表面処理を施したりすることが好ましい。
【0030】
さらに、この例のように電池パック11側に磁石部14を設けた構成であれば、コイル部15と筐体16内の回路とを接続する配線を、電池パック11と筐体16との間に設ける必要がなく、電池パック11の振動の抵抗を小さくして効率的な発電を行う上で有利である。
【0031】
図2に示すように、コイル部15は、例えば、上述のように配置された各コイル15aを絶縁性の樹脂材24で封入した薄いシート状に形成されている。このようにシート状にされたコイル部15が収容部18の底面に貼り付けられている。各コイル15aは、それぞれに生じる起電力を互いに強め合う向きで直列に接続されている。このコイル部15に生じる起電力が振動発電機12から出力される。
【0032】
振動発電機12が発生する起電力は、直列に接続するコイル15aの個数を増減することによって所望とするものを得ることができる。上記のように複数の磁石14aとコイル15aを配置することにより、振動発電機12が発生する起電力を大きくすることができ、電子機器10に必要な電圧(起電力)を得ることができる。例えば、一般的な集積回路(IC)を動作させるためには、約3V程度の起電力が必要であり、このような起電力を得ることもできる。磁石14aとコイル15aの大きさ(XYサイズ)をそれぞれより小さくし、直列に接続するコイル15aの個数を増加すれば、さらに高い起電力を得ることができる。
【0033】
なお、この例では、コイル部15に層状に一層でコイル15aを設けているが、
図3に示すように、コイル15aを二層、あるいはそれ以上の層数で積層してもよい。このようにコイル15aを積層した場合では、コイル部15の単位面積当たりの発電量を大きくすることができる。
【0034】
また、電池パック11の各表面に磁石部14をそれぞれ配置するとともに、それら表面に対面する収容部18の壁面、すなわち収容部18の底面と背面カバー17の内面とにコイル部15をそれぞれ配置し、2組の磁石部14とコイル部15とを設けた構成としてもよい。このような構成にすることによって、1組の磁石部14とコイル部15とを設けた構成に対して発電量を2倍にすることができる。なお、背面カバー17にコイル部15を設けた場合、背面カバー17と筐体16との間に、背面カバー17に設けたコイル部15と筐体16内の回路とを接続する配線を設ける。
【0035】
図4に電子機器10の電源装置25の構成の一例を示す。電源装置25は、電池パック11、振動発電機12、電源制御部26を備える。本体回路部27は、電源装置25以外の電子機器10の回路であって、例えば液晶ディスプレイやその駆動回路、CPUや記憶素子等で構成される演算回路等である。電池パック11から供給される電力は、電源制御部26を介して本体回路部27に供給される。電源制御部26は、充電制御回路、整流回路、昇圧回路などを有している。電源制御部26は、外部電源から入力がある場合にその外部電源からの電力で電池パック11を充電する。また、電源制御部26は、振動発電機12からの出力電力、すなわちコイル部15からの電力により電池パック11を充電する。なお、振動発電機12の出力電力で電池パック11を充電しているが、振動発電機12の出力電力の用途は、これに限定されない。例えば、振動発電機12の出力電力によって電池パック11とは異なる蓄電器に蓄電し、その蓄電器に蓄積された電力を微小電力で動作する回路に供給して駆動するようにしてもよい。
【0036】
次に上記構成の作用について説明する。電子機器10を携帯して歩いたり、自動車や電車に乗ったりすることで生じる電子機器10のX方向の振動によって、電池パック11がX方向に振動する。もちろん、電子機器10を振って電池パック11をX方向に振動させることもできる。
【0037】
外部からの振動により、X方向に電池パック11が変位すると、例えばコイルバネ23aが伸張され、コイルバネ23bが圧縮される。この後、コイルバネ23a、23bの復元力により、先の変位とは逆向きに電池パック11が変位するが、電池パック11は、慣性力により、コイルバネ23a、23bの弾性力がバランスする中立位置を通過してさらに変位し、コイルバネ23aが圧縮され、コイルバネ23bが伸張される。さらに、この後、コイルバネ23a、23bの復元力により、中立位置に向って変位し、慣性力により中立位置を超えて変位する。このようにして、電池パック11は、X方向で振動する。
【0038】
外部からの作用で電子機器10がX方向に継続的に振動されれば、この電池パック11の振動も継続するが、その外部からの作用がなくなれば、電池パック11の振動は減衰し、最終的に電池パック11は停止する。なお、減衰は、電池パック11と収容部18の壁面との摩擦の他、振動発電機12による電磁気的な作用によるものがある。
【0039】
上記のように、電池パック11がX方向に振動している間では、電池パック11とともに磁石部14の各磁石14aがX方向に往復動する。このため、コイル部15の各コイル15aを貫く磁界に繰り返し変化が生じ、各コイル15aに誘導起電力が生じる。これにより、コイル部15から各コイル15aの誘導起電力による電力が電源制御部26に出力される。そして、この電源制御部26の制御の下でコイル部15の電力によって電池パック11が充電される。
【0040】
上記のように振動発電機12によって生成される電力すなわち電気エネルギーは、電池パック11の振動エネルギーを変換したものであるから、電池パック11の質量が大きいほど大きな電気エネルギーを得ることができる。
【0041】
振動発電機12と同視できる振動発電機の等価モデルにおいて、理論上得られる最大の発電量Pmaxは、式(1)のように表すことができる。等価モデルは、振動発電機に外部振動を与えて、バネで支えられた質量mの錘を振幅y0、周波数fで振動させ、その錘が筐体に対して相対的に運動するときに、発電のための電磁誘導等によって錘の動きを妨げる反力を生じる、としたものである。式(1)中において、値Zlimは、錘の振幅の最大値であり、振動発電機に加えた振動の周波数fが、錘やバネ等で構成される振動系の共振周波数と合致するときに、錘の振幅値は最大となる。等価モデルの錘、バネ、反力は、振動発電機12のコイルバネ23a、23b、磁石部14を含む電池パック11に相当する。また、電磁誘導方式の発電の場合、反力は、錘の速度に比例して大きくなる。
【0042】
【0043】
上記の式(1)から、与えられた一定の外部振動の周波数fと振幅y0の下で、発電量を大きくするには、錘の質量m、錘の振幅の最大値Zlimを大きくすれば良いことが分かる。すなわち、錘の質量mを大きくすれば、外部から与えられた振動を効率良く発電することが可能になることが分かる。そして、錘に相当する電池パック11は、一般的に体積密度が大きく質量も大きいので、効率良く発電することができることが分かる。そして、電池パック11は、電子機器10にそもそも内蔵されるものであるから、電子機器10の質量を増大させることがないので、携帯性が損なわれない。
【0044】
上記第1実施形態では、X方向にのみ電池パック11が変位する構成であるが、磁石14a及びコイル15aを格子状に配置した場合には、X方向とY方向に電池パック11が変位するようにしてもよい。
【0045】
[第2実施形態]
第2実施形態は、磁石部の磁石とコイル部のコイルを電池パックの振動する方向にのみ並べたものである。なお、この第2実施形態では、以下に詳細を説明するように、磁石部及びコイル部における磁石とコイル及びそれらの配列が異なる他は、第1実施形態と同じであり、その他の構成は、第1実施形態と同じであって実質的に同じ部材には同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0046】
図5において、磁石部34は、Y方向に延びた長方形状の複数の薄板状の磁石34aから構成されている。磁石34aは、表にN極とS極とがX方向に交互に並ぶように一列に配置されている。磁石34aのY方向の長さは、電池パック11の長さとほぼ同じである。また、磁石34aのX方向の長さは、特に限定されないが、例えば1mm、2mm、3mm等種々の長さを選択できる。磁石部34における磁石34aの個数は、その磁石14aのX方向の長さによって異なる。なお、
図5では、各磁石34aの磁極を「N」と「S」との文字で示してある。
【0047】
コイル部35には、X方向に所定の配列ピッチで複数のコイル35aが並べられている。各コイル35aの配列ピッチは、例えば磁石部34の磁石34aの配列ピッチと同じである。各コイル35aは、Y方向に長い楕円形あるいは略矩形のループ状又はスパイラル状の導線パターンで構成された平面コイルである。
【0048】
例えば、磁石34aとしては、X方向の長さが2mm、Y方向の長さが60mmのものが用いられ、電池パック11の60mm×60mmの表面にX方向に2mmピッチで並べている。また、コイル35aとしては、断面サイズが70μm(高さ)×450μm(幅)の導線パターンを40μmの間隔で略矩形のスパイラル状に2巻きした、X方向の長さが約2mm、Y方向の長さが約60mmのものが用いられ、収容部18の底面にX方向に2mmピッチで並べている。
【0049】
この例においても、起電力を互いに強め合う向きで各コイル35aを直列に接続することで、振動発電機の起電力を高めることができる。また、この例では、直列に接続するコイル35aの個数を増やしてさらに高い起電力を得る場合には、磁石34aとコイル35aのX方向の長さをそれぞれ小さくし、それらのX方向に並ぶ個数を増加すればよい。
【0050】
上記のように構成した場合でも、第1実施形態と同様な効果が得られ、電子機器10の携帯性を損ねることなく効率よく発電を行うことができ、大きな発電量を得ることができる。
【0051】
上記各実施形態では、電池としてケース内に電池を収容した電池パックを用いた例について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、本発明の電池としては、電池それ自体や、複数本の電池を樹脂フィルムで被覆して一体にしたもの等であってもよい。また、磁石部を構成する磁石を電池に取り付ける際に、磁石を固定する例えば板状の保持板を電池に取り付けてもよい。
【0052】
また、上記の各実施形態では、筐体側に設けたコイル部に対して電池パックに設けた磁石部を移動させることによる電磁誘導方式の発電方式であるが、発電方式としては圧電方式、静電誘導方式、磁歪方式を用いることができる。
【符号の説明】
【0053】
10 電子機器
11 電池パック
12 振動発電機
14、34 磁石部
14a、34a 磁石
15、35 コイル部
15a、35a コイル
16 筐体
18 収容部
23a、23b コイルバネ