(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】生タイヤの製造ライン
(51)【国際特許分類】
B29D 30/08 20060101AFI20220621BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20220621BHJP
B29D 30/26 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
B29D30/08
G01B11/00 D
B29D30/26
(21)【出願番号】P 2018102576
(22)【出願日】2018-05-29
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】種元 健二
(72)【発明者】
【氏名】井原 洋
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-052277(JP,A)
【文献】特公昭40-012374(JP,B1)
【文献】特開2012-236392(JP,A)
【文献】特開2012-000963(JP,A)
【文献】特開2012-131167(JP,A)
【文献】特開平09-239862(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0037318(US,A1)
【文献】国際公開第2015/024272(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/083086(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29D 30/08-30/32
G01B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のトレッド部材を形成するトレッド成形用のドラムと、
前記トレッド部材をその外周面側から把持する把持手段を具えたトレッドトランスファー
とを含む生タイヤの製造ラインであって、
前記把持手段は、周方向に隔置され、かつ半径方向内方への移動によって前記トレッド部材の外周面に当接しうる当接面部を有する複数のセグメントを含み、
前記複数のセグメントの前記当接面部には、半径方向内方に突出する1つの突起部が設けられており、
前記移動は、前記トレッド部材を把持する第1移動と、前記ドラムの縮径による前記トレッド部材の切り離しと同期して、前記セグメントを半径方向内方にさらに移動させる第2移動とを含んでいる生タイヤの製造ライン。
【請求項2】
前記突起部は、円錐形状又は角錐形状をなす請求項1記載の
生タイヤの製造ライン。
【請求項3】
前記突起部は、前記当接面部の図心の位置に配される請求項1又は2記載の
生タイヤの製造ライン。
【請求項4】
前記把持手段は、各前記セグメントを半径方向内外に移動させる拡縮径手段を含むとともに、
前記拡縮径手段は、各前記セグメントから半径方向外側にのびかつ一側面に歯溝部を有するラック状の支持軸、軸心周りで回動可能に支持されかつ内周面に歯溝部を具え
た回転リング、及び前記回転リングの歯溝部と前記支持軸の歯溝部とにそれぞれ噛み合う連結ギヤーを含む請求項1~3の何れかに記載の
生タイヤの製造ライン。
【請求項5】
前記トレッド部材と前記把持手段との軸心方向の位置ずれを検査するための撮像手段をさらに具える請求項1~4の何れかに記載の
生タイヤの製造ライン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム上に形成された円筒状のトレッド部材を、ドラムから受け取る際の位置ずれを防止しうるトレッドトランスファーに関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、ドラムから受け取った円筒状のトレッド部材(所謂トレッドリング)を、シェーピングフォーマに保持された円筒状の生タイヤ基体の半径方向外側のトレッド貼付位置まで搬送し、かつこのトレッド貼付位置でトレッド部材を保持するトレッドトランスファーが記載されている。
【0003】
このトレッドトランスファーは、内周面が縮径することによりトレッド部材の外周面に当接して該トレッド部材を同心に把持するトレッド保持リングを具える。
【0004】
しかし、このトレッドトランスファーの場合、ドラムからトレッド部材を受け取る際、トレッド部材とトレッド保持リングとの間にタイヤ軸方向のズレが生じやすく、生タイヤの形成精度を減じるという問題がある。具体的には、トレッド保持リングを縮径させ、ドラム上に形成されたトレッド部材をその外周面側から把持する。この把持において、ドラムを縮径させ、トレッド部材のドラムからの切り離しが行われる。しかしこのとき、ドラムの縮径に伴ってトレッド部材が若干縮径し、かつ変形しやすくなる。その結果、トレッド保持リングによる把持に弛みが生じ、トレッド部材の位置ずれを招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、ドラムからトレッド部材を受け取る際の位置ずれを防止しうるトレッドトランスファーを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、円筒状のトレッド部材をその外周面側から把持する把持手段を具えたトレッドトランスファーであって、
前記把持手段は、周方向に隔置され、かつ半径方向内方への移動によって前記トレッド部材の外周面に当接しうる当接面部を有する複数のセグメントを含み、かつ各セグメントの前記当接面部に、半径方向内方に突出する1つの突起部を設けている。
【0008】
本発明に係るトレッドトランスファーでは、前記突起部は、円錐形状又は角錐形状をなすのが好ましい。
【0009】
本発明に係るトレッドトランスファーでは、前記突起部は、前記当接面部の図心の位置に配されるのが好ましい。
【0010】
本発明に係るトレッドトランスファーでは、前記把持手段は、各前記セグメントを半径方向内外に移動させる拡縮径手段を含むとともに、
前記拡縮径手段は、各前記セグメントから半径方向外側にのびかつ一側面に歯溝部を有するラック状の支持軸、軸心周りで回動可能に支持されかつ内周面に歯溝部を具え回転リング、及び前記回転リングの歯溝部と前記支持軸の歯溝部とにそれぞれ噛み合う連結ギヤーを含むのが好ましい。
【0011】
本発明に係るトレッドトランスファーでは、前記トレッド部材と前記把持手段との軸心方向の位置ずれを検査するための撮像手段をさらに具えるのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明において、把持手段は、各セグメントの当接面部がトレッド部材の外周面に当接することで、トレッド部材を外周面側から把持する。このとき、当接面部から突出する突起部は、トレッド部材内に食い込まれている。
【0013】
従って、把持後に、ドラムの切り離しに伴ってトレッド部材が縮径かつ変形しやすくなった際にも、突起部が食い込むことでトレッド部材の位置ずれを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のトレッドトランスファーを用いた生タイヤの製造ラインの一部を概念的に示す側面図である。
【
図3】拡縮径手段の一例を外面的に示す斜視図である。
【
図6】撮像手段の一例を外面的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1は、生タイヤの製造ラインの一部を示し、この製造ラインは、円筒状のトレッド部材Aを形成するトレッド成形用のドラム2、生タイヤ基体Bを円筒状からトロイド状に膨張させるシェーピングフォーマ3、及びドラム2とシェーピングフォーマ3との間を往復移動しうるトレッドトランスファー1を具える。
【0016】
製造ラインでは、トレッドトランスファー1を用い、ドラム2から受け取ったトレッド部材Aを、シェーピングフォーマ3に保持された円筒状の生タイヤ基体Bの半径方向外側のトレッド貼付位置Qまで搬送するとともに、このトレッド貼付位置Qにてトレッド部材Aを保持して待機する。しかる後、シェーピングフォーマ3によって生タイヤ基体Bをトロイド状に膨張させ、その膨張部分をトレッド部材Aの内周面に押し付けて一体に接合させることにより生タイヤが形成される。
【0017】
ドラム2は、拡縮径可能な周知構造をなし、その上で、例えばベルトプライ、トレッドゴムを含むトレッド構成材を順次積層することにより、トレッド部材Aが形成される。
【0018】
シェーピングフォーマ3は、周知構造をなし、円筒状の生タイヤ基体Bを保持する。シェーピングフォーマ3としては、バンドドラム上で別途形成された生タイヤ基体Bを保持する、所謂セカンドステージ形成方法で使用されるセカンドフォーマであっても良く、又このシェーピングフォーマ3上で生タイヤ基体Bを直接形成する所謂シングルステージ形成方法で使用されるフォーマであっても良い。生タイヤ基体Bは、例えばインナーライナゴム、カーカスプライ、ビードコア、ビードエーペックスゴム、サイドウォールゴムなどを含むタイヤ構成材を順次積層することにより形成される。
【0019】
トレッドトランスファー1は、トレッド部材Aをその外周面As側から把持する把持手段11を具える。
【0020】
本例のトレッドトランスファー1は、ドラム2とシェーピングフォーマ3との間を往復しうる移動手段10と、この移動手段10に支持されかつ内周面11Sが縮径することによりトレッド部材Aの外周面Asに当接して該トレッド部材Aを同心に把持する把持手段11とを具える。
【0021】
具体的には、
図2に示すように、移動手段10は、例えばガイドレール12に沿って走行しうる移動台10Aと、この移動台10A上に立設されるリング状のフレーム10Bとを具える。本例のフレーム10Bは、リング状本体10B1とその両側面に配される側板10B2とを含む。又フレーム10Bは、ドラム2及びシェーピングフォーマ3とは同芯に配される。
【0022】
把持手段11は、周方向に隔置された複数のセグメント15と、各セグメント15を半径方向内外に移動させるための拡縮径手段17とを含む。
【0023】
各セグメント15は、拡縮径手段17による半径方向内方への移動によってトレッド部材Aの外周面Asに当接しうる円弧面状の当接面部15Sを有する。本例のセグメント15は、例えばリング状体を周方向に分割した分割片状をなし、各セグメント15が協働して内周面11Sが拡縮径可能なリング状体を構成する。又当接面部15Sが協働して前記内周面11Sを構成する。
【0024】
図2、3に示すように、拡縮径手段17は、本例では、支持軸18と、回転リング19と、連結ギヤー20とを含んで構成される。
【0025】
支持軸18は、各セグメント15から半径方向外側にのびる。この支持軸18は、その一側面に歯溝部18aを設けたラック状をなす。なおフレーム10Bには、各支持軸18が通る複数の挿通孔21が配される。
【0026】
回転リング19は、内周面に歯溝部19aを設けた内歯歯車状をなし、フレーム10Bと同心な軸心周りで回動可能に支持される。本例では、回転リング19は、リング状本体10B1の内周面に摺動可能に支持される。
【0027】
連結ギヤー20は、回転リング19の歯溝部19aと支持軸18の歯溝部18aとにそれぞれ噛み合う。従って、回転リング19が回動することで、連結ギヤー20及び支持軸18を介して、各セグメント15を半径方向内外に移動しうる。なお支持軸18は、セグメント15の半径方向外面かつその図心位置に配されるのが好ましい。
【0028】
なお拡縮径手段17は、回転リング19を駆動させる駆動具23をさらに含む。本例では、駆動具23は、フレーム10Bに取り付くシリンダ23Aを具える。又回転リング19の外周面にはレバー部24が突出するとともに、このレバー部24の先端部に、シリンダ23Aのロッド端が連結している。従って、シリンダ23Aの伸縮動作によって、回転リング19を所定角度で回動しうる。なお符号25は、レバー部24が通るフレーム10Bの切欠き部である。
【0029】
本例では、各セグメント15の半径方向の移動を安定して行うためのガイド26がさらに配される。ガイド26は、各セグメント15から前記支持軸18と平行にのびるガイド軸26Aと、各ガイド軸26Aを摺動可能に案内するガイド部26Bとを具える。なおガイド部26Bは、フレーム10Bの側面(側板10B2)に固定される。
【0030】
図5(A)に示すように、各セグメント15の当接面部15Sには、半径方向内方に突出する1つの突起部28が形成される。この突起部28は、各セグメント15の当接面部15Sがトレッド部材Aの外周面Asに当接してトレッド部材Aを把持する際、外周面As内に食い込まれる。
【0031】
従って、
図5(B)に示すように、把持後に、ドラム2の切り離しに伴ってトレッド部材Aが縮径かつ変形しやすくなった際にも、突起部28が食い込んでいることで、トレッド部材Aの位置ずれを防ぐことができる。
【0032】
なお、突起部28は、外周面As内への食い込みを容易とするために、先端鋭利な円錐形状又は角錐形状で形成するのが好ましい。又突起部28は、当接面部15Sの図心の位置で突出するのが好ましい。特には、前記支持軸18と一直線状に配されるのがさらに好ましい。
【0033】
突起部28の当接面部15Sからの突出高さHは、2mm以上、さらには4mm以上であるのが位置ずれ防止の観点から好ましい。トレッド部材Aの真円度に影響を与えないためには10mm以下とすることが好ましい
【0034】
なおトレッドトランスファー1では、ドラム2の切り離しと同期して、各セグメント15を、半径方向内方にさらに距離Lを移動させ、トレッド部材Aへの把持力を高めることも好ましい。即ち、各セグメント15の半径方向内方への移動を、ドラム2上のトレッド部材Aを把持する第1移動Y1(
図5(A)に示す)と、ドラム2の切り離しと同期して把持力を高める第2移動Y2(
図5(B)に示す)との2段階で行うことが好ましい。
【0035】
本例のトレッドトランスファー1は、トレッド部材Aを把持する際に、トレッド部材Aと把持手段11との軸心方向の位置ずれを検査するための撮像手段30をさらに具える。
【0036】
図6に示すように、撮像手段30には、トレッド部材Aの外周面Asに形成する位置決め用のマーキング31を撮影するカメラ(ビデオカメラを含む)30Aが好適に採用しうる。
【0037】
なおマーキング31は、トレッド部材Aの赤道(幅中心)に沿ってのびる周方向線として形成される。又撮像手段30は、撮影した画像からマーキング31を抽出し、例えば突起部28の位置とマーキング31の位置との軸心方向の位置ずれを検出する。位置ずれが無いとき、拡縮径手段17を作動することで、トレッド部材Aを精度良く把持することができる。なお位置ずれを検出した場合には、移動台10Aを作動し、位置ずれが無くなる位置までトレッドトランスファー1が移動される。
【0038】
本例では、撮像手段30は、
図2に示すように、フレーム10Bに取り付き、セグメント15が半径方向外側に移動した拡径状態におけるセグメント15、15間の隙間Dから、トレッド部材Aの外周面As、特にはマーキング31を撮影する。
【0039】
トレッドトランスファー1には、その両側面側に、それぞれステッチ手段33(
図4に示す)が配される。ステッチ手段33は、周知の如く、シェーピングの際、トレッド部材Aの軸心方向両側部分を、生タイヤ基体Bの膨張部分に押し付けて、トレッド部材Aの全体を生タイヤ基体Bに接合させる。
【0040】
図4には、トレッドトランスファー1の一側面側に配されるステッチ手段33が示される。なお
図2では、ステッチ手段33が省略して描かれている。
図4に示すように、ステッチ手段33は、フレーム10Bの側面(側板10B2)に取り付く第1のステッチ手段34と、移動台10Aに取り付く第2のステッチ手段35とを具える。
【0041】
第1のステッチ手段34は、半径方向内外に伸縮可能なロッドを有するシリンダ34Aと、そのロッド端に回転可能に支持されるステッチローラ34Bとを具える。本例では3つの第1のステッチ手段34が、周方向に位置を違えて配される。
【0042】
第2のステッチ手段35は、軸心方向に移動可能な移動台36に支持されるシリンダ35Aと、そのロッド端に回転可能に支持されるステッチローラ35Bとを具える。シリンダ35Aのロッドは、半径方向内外に伸縮しうる。
【0043】
第1のステッチ手段34では、フレーム10Bからのトレッド部材Aのはみ出し部の内の根元部分を、生タイヤ基体Bに強固に押し付けて接合する。第2のステッチ手段35では、ステッチローラ35Bが軸心方向外側へ移動することで、前記はみ出し部を、根元部分から軸心方向外端に向かって順位、生タイヤ基体Bに押し付ける。
【0044】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【符号の説明】
【0045】
1 トレッドトランスファー
11 把持手段
15 セグメント
15S 当接面部
17 拡縮径手段
18 支持軸
18a 歯溝部
19 回転リング
19a 歯溝部
20 連結ギヤー
28 突起部
30 撮像手段
A トレッド部材
As 外周面