(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/26 20180101AFI20220621BHJP
F21S 41/143 20180101ALI20220621BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20220621BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20220621BHJP
F21V 5/08 20060101ALI20220621BHJP
F21W 102/155 20180101ALN20220621BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20220621BHJP
F21W 102/20 20180101ALN20220621BHJP
【FI】
F21S41/26
F21S41/143
F21V5/00 320
F21V5/04 400
F21V5/08
F21W102:155
F21Y115:10
F21W102:20
(21)【出願番号】P 2018118491
(22)【出願日】2018-06-22
【審査請求日】2021-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100144048
【氏名又は名称】坂本 智弘
(74)【代理人】
【識別番号】100186679
【氏名又は名称】矢田 歩
(74)【代理人】
【識別番号】100214226
【氏名又は名称】青木 博文
(72)【発明者】
【氏名】小野間 慶
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-091816(JP,A)
【文献】特開2013-145722(JP,A)
【文献】特開2015-106493(JP,A)
【文献】特開2012-119172(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/26
F21S 41/143
F21V 5/00
F21V 5/04
F21V 5/08
F21W 102/155
F21W 102/20
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用灯具において、
第1光源と、
前記第1光源からの光を直接的に透過する第1直射系レンズと、を備え、
前記第1直射系レンズは、光軸を含む中央領域面と、前記中央領域面に隣接して配置された隣接領域面とを有し、
前記第1光源は、
前記中央領域面を介して、第1拡散パターンを照射し、
前記隣接領域面を介して、前記第1拡散パターンより狭く、前記第1拡散パターンに重ねて、カットオフラインの一部を有する集光パターンを照射
し、
前記隣接領域面は、前記中央領域面より車両内側に配置された車両内側隣接領域面を有しており、
前記第1直射系レンズの入射面に前記車両内側隣接領域面と前記中央領域面が設けられ、
前記入射面において、前記車両内側隣接領域面は前記中央領域面よりも車両前方に位置する
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
車両用灯具において、
第1光源と、
前記第1光源からの光を直接的に透過する第1直射系レンズと、を備え、
前記第1直射系レンズは、光軸を含む中央領域面と、前記中央領域面に隣接して配置された隣接領域面とを有し、
前記第1光源は、
前記中央領域面を介して、第1拡散パターンを照射し、
前記隣接領域面を介して、前記第1拡散パターンより狭く、前記第1拡散パターンに重ねて、カットオフラインの一部を有する集光パターンを照射
し、
第2光源と、
前記第2光源からの光を直接的に透過する第2直射系レンズと、を更に備え、
前記第2直射系レンズは、光軸を含む第2中央領域面と、前記第2中央領域面より車両外側に配置された車両外側隣接領域面とを有し、
前記第2光源は、
前記中央領域面及び前記車両外側隣接領域面を介して、前記第1拡散パターンよりも広い第2拡散パターンを照射し、
前記第2光源の焦点距離は、前記第1光源の焦点距離より短い
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項3】
前記隣接領域面は、前記中央領域面より上方に配置された上方隣接領域面又は前記中央領域面より下方に配置された下方隣接領域面を有し、
前記第1光源は、前記上方隣接領域面又は前記下方隣接領域面を介して、前記第1拡散パターンより狭く、前記第1拡散パターンに重ねて、前記カットオフラインの一部を有する集光パターンを照射する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
前記隣接領域面は、前記中央領域面より斜め上方に配置された斜上方隣接領域面又は前記中央領域面より斜め下方に配置された斜下方隣接領域面を有している
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記第1拡散パターン、前記集光パターン及び前記第2拡散パターンは、ロービーム配光パターンの少なくとも一部を形成する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記第1光源の焦点距離は、25mm以下である
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記第1直射系レンズは単体のレンズで構成されており、
前記第1直射系レンズの出射面は車両の前方に向けて凸の球面状に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項8】
前記第1直射系レンズは単体のレンズで構成されており、
前記第1直射系レンズの出射面は車両の前方に向けて凸の球面状に形成され、
前記第2直射系レンズは単体のレンズで構成されており、
前記第2直射系レンズの出射面は車両の前方に向けて凸の球面状に形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の光源が設けられた光源ユニットと、光源からの直接的な光を透過して、ロービーム用のロービーム配光パターンを照射する直射系レンズとを備えた直射型の車両用灯具がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、直射型の車両用灯具において、直射系レンズを小型化する要請がある。直射系レンズを小型にすると、正面視における直射系レンズの投影面積が狭くなる。ここで、小型化の要請に応じるにあたり、光源から直射系レンズへ直接的に入射させる光の配光有効領域(立体角)は限られていることから、光源からの直接的な光を効率良く使用するため、光源の位置基準となるべき直射系レンズの焦点距離を比較的短くすることが有効となる。しかしながら、焦点距離を短くすると、光源の投影像が大きくなるに伴い暗くなって、遠方視認性が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、遠方視認性の低下を抑制しつつ、直射系レンズを小型にできる車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために以下の構成によって把握される。
(1)本発明の車両用灯具は、第1光源と、前記第1光源からの光を直接的に透過する第1直射系レンズと、を備え、前記第1直射系レンズは、光軸を含む中央領域面と、前記中央領域面に隣接して配置された隣接領域面とを有し、前記第1光源は、前記中央領域面を介して、第1拡散パターンを照射し、前記隣接領域面を介して、前記第1拡散パターンより狭く、前記第1拡散パターンに重ねて、カットオフラインの一部を有する集光パターンを照射する。
(2)上記(1)の構成において、前記隣接領域面は、前記中央領域面より上方に配置された上方隣接領域面又は前記中央領域面より下方に配置された下方隣接領域面を有し、前記第1光源は、前記上方隣接領域面又は前記下方隣接領域面を介して、前記第1拡散パターンより狭く、前記第1拡散パターンに重ねて、前記カットオフラインの一部を有する集光パターンを照射する。
(3)上記(1)又は(2)の構成において、前記隣接領域面は、前記中央領域面より斜め上方に配置された斜上方隣接領域面又は前記中央領域面より斜め下方に配置された斜下方隣接領域面を有している。
(4)上記(1)から(3)のいずれかの構成において、前記隣接領域面は、前記中央領域面より車両内側に配置された車両内側隣接領域面を有している。
(5)上記(1)から(4)のいずれかの構成において、第2光源と、前記第2光源からの光を直接的に透過する第2直射系レンズと、を更に備え、前記第2直射系レンズは、光軸を含む第2中央領域面と、前記第2中央領域面より車両外側に配置された車両外側隣接領域面とを有し、前記第2光源は、前記中央領域面及び前記車両外側隣接領域面を介して、前記第1拡散パターンよりも広い第2拡散パターンを照射する。
(6)上記(5)の構成において、前記第1拡散パターン、前記集光パターン及び前記第2拡散パターンは、ロービーム配光パターンの少なくとも一部を形成する。
(7)上記(5)又は(6)の構成において、前記第2光源の焦点距離は、前記第1光源の焦点距離より短い。
(8)上記(1)から(7)のいずれかの構成において、前記第1光源の焦点距離は、25mm以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、遠方視認性の低下を抑制しつつ、直射系レンズを小型にできる車両用灯具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る車両用灯具における側面視の概略図である。
【
図3】第1実施形態に係る車両用灯具によるロービーム配光パターンを示す図である。
【
図4】第2実施形態に係る車両用灯具における平面視の概略図である。
【
図6】第2実施形態に係る車両用灯具によるロービーム配光パターンを示す図である。
【
図7】(a)は第2実施形態に係る車両用灯具における側面視の概略図であり、(b)は上下の対辺が水平な四辺形状の像を示す
図6におけるD部詳細説明図であり、(c)は上下の対辺が斜めに傾斜した平行四辺形状の像を示す
図6におけるD部詳細説明図である。
【
図8】第3実施形態に係る車両用灯具における平面視の概略図である。
【
図10】第3実施形態に係る車両用灯具によるロービーム配光パターンを示す図である。
【
図11】第4実施形態に係る車両用灯具における平面視の概略図である。
【
図13】第4実施形態に係る車両用灯具によるロービーム配光パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、図面を参照して、本発明を実施するための第1の形態(以下、「第1実施形態」と称する。)について詳細に説明する。実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号又は符号を付している。なお、実施形態において、特に断りがない場合、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」、「後」は、各々、車両に乗車する運転者から見た方向を示す。なお、直進方向を基準として、車両の中心側を「内」、外側を「外」という場合がある。なお、配光パターンは、車両から進行方向に所定距離隔てた位置(例えば25m)にて、車両に対向する鉛直な平面である仮想スクリーンSCに投影された光源Cの像による明るさ(照度等)の分布を意味する。
【0010】
図1は、第1実施形態に係る車両用灯具100における側面視の概略図である。
図2は、
図1におけるA矢視図である。
図3は、第1実施形態に係る車両用灯具100によるロービーム配光パターンLPを示す図である。
【0011】
第1実施形態の車両用灯具100は、第1光源C1からの光によってロービーム用のロービーム配光パターンLPを照射するものである。
車両用灯具100は、通常、車両(不図示)の左前方及び右前方に配置される。車両用灯具100は、自車線(Own lane)側が左側車両用灯具であり、対向車線(Opposite lane)側が右側車両用灯具である。車両用灯具100は、左側通行用の車両用灯具である。以下では、左側車両用灯具を代表として説明する。
【0012】
図1に示すように、車両用灯具100は、第1光源C1と、第1光源C1からの光を直接的に透過する第1直射系レンズ2と、それらを収容するランプハウジング(不図示)と、を備えている。第1光源C1は、光源ユニット10に配置されている。
【0013】
(光源ユニット10)
光源ユニット10は、第1光源C1が第1直射系レンズ2における焦点Fの近傍になるように、第1直射系レンズ2との位置関係が固定されて配置されている。
第1光源C1としては、例えば、LED等の発光素子が用いられる。第1光源C1は、駆動制御装置(不図示)によって、点灯又は消灯を切り換え制御可能になっている。
第1光源C1は、基板上に、樹脂材料で封止された発光チップを備えたものである。第1光源C1は、平面視において正方形又は長方形の矩形状となっている。第1光源C1は、横並びに複数設けられている。なお、第1光源C1は、マトリクス状に配列してもよい。
【0014】
(第1直射系レンズ2)
第1直射系レンズ2は、第1光源C1に対向する入射面21と、車両の前方に対向する出射面22とを有している。出射面22は車両の前方に向けて凸の球面状に形成されている。入射面21又は出射面22には、所望の明るさの分布を有する像を照射するため、適宜、ローレット等による光拡散部が形成されている。
第1直射系レンズ2は、車両の前方にある運転視界に向けられた、車両の進行方向に沿う光軸Xを有している。また、第1直射系レンズ2は、主点から焦点距離f1(例えば、25mm以下)隔てた位置に焦点Fを有している。
【0015】
詳細には、
図2に示すように、第1直射系レンズ2は、光軸Xを含む中央領域面s1と、中央領域面s1に隣接して配置された隣接領域面s2とを有している。
中央領域面s1及び隣接領域面s2は入射面21に設けられている。なお、中央領域面s1又は隣接領域面s2は、何れか一方又は両方が出射面22に設けられていてもよい。
【0016】
第1直射系レンズ2を経る第1光源C1からの光の道筋を説明すると、
図1に示すように、まず、第1光源C1からの光は、第1直射系レンズ2の入射面21における中央領域面s1に入射する。次に、中央領域面s1に入射した光は、出射面22から出射する。そして、
図3に示すように、出射面22から出射した光は、仮想スクリーンSCに投影された像の明るさが一様になるような第1拡散パターンP1を照射する。
【0017】
ここで、第1拡散パターンP1の領域は、ロービーム配光パターンLPの領域と一致している。つまり、本実施形態に係る車両用灯具100による第1拡散パターンP1は、ロービーム配光パターンLPの全域に対して形成されている。なお、第1拡散パターンP1の領域は、カットオフラインCLの一部を有し、ロービーム配光パターンLPの領域内であれば、ロービーム配光パターンLPの領域より上下方向に狭くても、左右方向に狭くてもよい。
【0018】
一方、同時に、第1光源C1からの光は、
図1に示すように、第1直射系レンズ2の入射面21における隣接領域面s2に入射する。次に、隣接領域面s2に入射した光は、出射面22から出射する。そして、
図3に示すように、出射面22から出射した光は、カットオフラインCLの一部を有し、第1拡散パターンP1より狭く、第1拡散パターンP1に重ねて、集光パターンP2を照射する。
【0019】
すなわち、第1光源C1は、中央領域面s1を介して、遠方を照射する境界線となるカットオフラインCLを有するロービーム配光パターンLPの領域内に、第1拡散パターンP1を照射する。また、第1光源C1は、隣接領域面s2を介して、第1拡散パターンP1より狭く、第1拡散パターンP1に重ねて、カットオフラインCLの一部を有する集光パターンP2を照射する。
これにより、第1直射系レンズ2を小さくすることで焦点距離f1が小さくなっても、光度が弱くなる比較的大きい面積の像を投影する中央領域面s1を介した光で第1拡散パターンP1を形成し、光度が強くなる比較的小さい面積の像を投影する隣接領域面s2を介した光で集光パターンP2を形成するので、第1光源C1からの光を有効に利用して、遠方を照射するカットオフラインCLの近傍を明るくできる。よって、本実施形態に係る車両用灯具100は、遠方視認性の低下を抑制しつつ、第1直射系レンズ2を小型にできる。
【0020】
また、隣接領域面s2は、中央領域面s1より上方に配置された上方隣接領域面s21又は中央領域面s1より下方に配置された下方隣接領域面s22を有している。そして、第1光源C1は、上方隣接領域面s21又は下方隣接領域面s22を介して、第1拡散パターンP1より狭く、第1拡散パターンP1に重ねて、カットオフラインCLの一部を有する集光パターンP2を照射する。
これにより、ロービーム配光パターンLPの左右方向における中央部に配置された左右の横幅の狭い集光パターンP2を形成できるので、特に、カットオフラインCLの中央部の近傍における配光パターンを明るくでき、遠方視認性を高められる。
【0021】
(第2実施形態)
次に、図面を参照して、本発明を実施するための第2の形態(以下、「第2実施形態」と称する。)について詳細に説明する。なお、以下では、第2実施形態に係る車両用灯具200と第1実施形態に係る車両用灯具100との共通する部分について、説明を省略する場合がある。
【0022】
図4は、第2実施形態に係る車両用灯具200における平面視の概略図である。
図5は、
図4におけるB矢視図である。
図6は、第2実施形態に係る車両用灯具200によるロービーム配光パターンLPを示す図である。
図7(a)は第2実施形態に係る車両用灯具200における側面視の概略図であり、
図7(b)は上下の対辺が水平な四辺形状の像Z23cを示す
図6におけるD部詳細説明図であり、
図7(c)は上下の対辺が斜めに傾斜した平行四辺形状の像Z23hを示す
図6におけるD部詳細説明図である。なお、
図4及び
図7における矢印は、第1光源C1からの光のうちの代表的な光の光路Lを示している。なお、
図6及び
図7における四辺形の枠は、第1光源C1からの光のうちの代表的な光の光路Lを経て仮想スクリーンSCに照射された範囲を示している。
【0023】
第2実施形態の車両用灯具200は、第1実施形態の車両用灯具100と同様に、第1光源C1からの光によってロービーム用のロービーム配光パターンLPを照射するものである。以下では、左側車両用灯具を代表として説明する。
【0024】
図4に示すように、車両用灯具200は、第1光源C1が配置された光源ユニット10と、第1光源C1からの光を直接的に透過する第1直射系レンズ2と、それらを収容するランプハウジング(不図示)と、を備えている。
【0025】
光源ユニット10は、第1実施形態と同様に、第1光源C1が第1直射系レンズ2における焦点Fの近傍になるように、第1直射系レンズ2との位置関係が固定されて配置されている。
【0026】
第1直射系レンズ2は、基本的には、第1実施形態と同様に、第1光源C1に対向する入射面21と、車両の前方に対向する出射面22とを有している。出射面22は車両の前方に向けて凸の球面状に形成されている。
【0027】
図5に示すように、第1直射系レンズ2は、光軸Xを含む中央領域面s1と、中央領域面s1に隣接して配置された隣接領域面s2とを有している。中央領域面s1及び隣接領域面s2は入射面21に設けられている。なお、中央領域面s1又は隣接領域面s2は、何れか一方又は両方が出射面22に設けられていてもよい。
【0028】
詳細には、隣接領域面s2は、中央領域面s1より斜め上方に配置された斜上方隣接領域面s23又は中央領域面s1より斜め下方に配置された斜下方隣接領域面s24を有している。
【0029】
このような第1直射系レンズ2を経る第1光源C1からの光の道筋を説明すると、
図4に示すように、まず、第1光源C1からの光は、第1直射系レンズ2の入射面21における中央領域面s1(
図4において不図示、
図5参照)に入射する。次に、中央領域面s1に入射した光は、出射面22から出射する。そして、
図6に示すように、出射面22から出射した光は、仮想スクリーンSCに投影された像の明るさが一様になるような第1拡散パターンP1を形成するように照射される。
【0030】
ここで、第1拡散パターンP1の領域は、ロービーム配光パターンLPの領域と一致している。つまり、本実施形態に係る車両用灯具200による第1拡散パターンP1は、ロービーム配光パターンLPの全域に対して形成されている。なお、第1拡散パターンP1の領域は、カットオフラインCLの一部を有し、ロービーム配光パターンLPの領域内であれば、ロービーム配光パターンLPの領域より上下方向に狭くても、左右方向に狭くてもよい。
【0031】
一方、同時に、第1光源C1からの光は、
図4に示すように、第1直射系レンズ2の入射面21における隣接領域面s2に入射する。次に、隣接領域面s2に入射した光は、光路L2を経て、出射面22から出射する。そして、
図6に示すように、出射面22から出射した光は、カットオフラインCLの一部を有し、第1拡散パターンP1より狭く、第1拡散パターンP1に重ねて、集光パターンP2を照射する。
ここで、
図6に示すように、光源Cからの光が隣接領域面s2を介して仮想スクリーンSCに投影される像Z2の大きさ(
図6における四辺形の大きさ)は、仮想スクリーンSCの中心から離れるにつれて小さくなっている。
【0032】
さらに、同時に、第1光源C1からの光は、
図4に示すように、第1直射系レンズ2の入射面21における斜上方隣接領域面s23に入射する。同様に、第1光源C1からの光は、第1直射系レンズ2の入射面21における斜下方隣接領域面s24(
図4において不図示、
図5参照)に入射する。続いて、斜上方隣接領域面s23に入射した光は、光路L23を経て、出射面22から出射する。同様に、斜下方隣接領域面s24に入射した光は、出射面22から出射する。そして、
図6に示すように、出射面22から出射した光は、集光パターンP2の中でもカットオフラインCLに特に近い箇所に、像Z2に比べて面積の小さい、すなわち、明るい四辺形の像Z23を投影するように照射される。
【0033】
これにより、斜上方隣接領域面s23及び斜下方隣接領域面s24を介した光で集光パターンP2の一部を形成するので、第1光源C1からの光を有効に利用して、遠方を照射するカットオフラインCLの近傍をより明るくできる。よって、本実施形態に係る車両用灯具200は、遠方視認性の低下を抑制しつつ、第1直射系レンズ2を小型にできる。
【0034】
ここで、斜上方隣接領域面s23を介した、上下の対辺が水平な四辺形の第1光源C1からの光は、第1直射系レンズ2がいわゆる凸レンズであることから、例えば
図7(a)において光路L23cが示すように、第1直射系レンズ2における上下方向の中心近傍を通過した場合、
図7(b)に示すように、上下の対辺が水平な四辺形状の像Z23cを投影して集光パターンP2の一部を形成する。
また、例えば
図7(a)において光路L23hが示すように、第1直射系レンズ2における上下方向に離れた箇所を通過した場合、
図7(c)に示すように、上下の対辺が斜めに傾斜した平行四辺形状の像Z23hを投影して集光パターンP2の一部を形成する。
したがって、像Z23hの平行四辺形状を構成する辺を、カットオフラインCLの斜めの部分に沿わせられるので、遠方を照射するカットオフラインCLの近傍をより明るくできるとともに、カットオフラインCLをくっきりさせることができる。斜下方隣接領域面s24を介した光についても同様である。
【0035】
(第3実施形態)
次に、図面を参照して、本発明を実施するための第3の形態(以下、「第3実施形態」と称する。)について詳細に説明する。なお、以下では、第3実施形態に係る車両用灯具300と、第1実施形態に係る車両用灯具100又は第2実施形態に係る車両用灯具200との共通する部分について、説明を省略する場合がある。
【0036】
図8は、第3実施形態に係る車両用灯具300における平面視の概略図である。
図9は、
図8におけるE矢視図である。
図10は、第3実施形態に係る車両用灯具300によるロービーム配光パターンLPを示す図である。なお、
図8における矢印は、第1光源C1からの光のうちの代表的な光の光路Lを示している。
【0037】
第3実施形態の車両用灯具300は、第1実施形態の車両用灯具100と同様に、第1光源C1からの光によってロービーム用のロービーム配光パターンLPを照射するものである。以下では、左側車両用灯具を代表として説明する。
【0038】
図8に示すように、車両用灯具300は、第1光源C1が配置された光源ユニット10と、第1光源C1からの光を直接的に透過する第1直射系レンズ2と、それらを収容するランプハウジング(不図示)と、を備えている。
ここで、車両用灯具300は、ランプハウジング等の遮光体Wの外側に近接して配置されている。
【0039】
光源ユニット10は、第1実施形態と同様に、第1光源C1が第1直射系レンズ2における焦点Fの近傍になるように、第1直射系レンズ2との位置関係が固定されて配置されている。
【0040】
第1直射系レンズ2は、基本的には、第1実施形態と同様に、第1光源C1に対向する入射面21と、車両の前方に対向する出射面22とを有している。出射面22は車両の前方に向けて凸の球面状に形成されている。
【0041】
図9に示すように、第1直射系レンズ2は、光軸Xを含む中央領域面s1と、中央領域面s1に隣接して配置された隣接領域面s2とを有している。中央領域面s1及び隣接領域面s2は入射面21に設けられている。なお、中央領域面s1又は隣接領域面s2は、何れか一方又は両方が出射面22に設けられていてもよい。
【0042】
詳細には、隣接領域面s2は、中央領域面s1より車両内側に配置された車両内側隣接領域面s25を有している。
【0043】
このような第1直射系レンズ2を経る第1光源C1からの光の道筋を説明すると、
図8に示すように、まず、第1光源C1からの光は、第1直射系レンズ2の入射面21における中央領域面s1に入射する。続いて、中央領域面s1に入射した光は、出射面22から出射する。そして、
図10に示すように、出射面22から出射した光は、仮想スクリーンSCに投影された像の明るさが一様になるような第1拡散パターンP1を形成するように照射される。
【0044】
ここで、第1拡散パターンP1の領域は、ロービーム配光パターンLPの領域と一致している。つまり、本実施形態に係る車両用灯具300による第1拡散パターンP1は、ロービーム配光パターンLPの全域に対して形成されている。なお、第1拡散パターンP1の領域は、カットオフラインCLの一部を有し、ロービーム配光パターンLPの領域内であれば、ロービーム配光パターンLPの領域より上下方向に狭くても、左右方向に狭くてもよい。
【0045】
一方、同時に、第1光源C1からの光は、
図8に示すように、第1直射系レンズ2の入射面21における車両内側隣接領域面s25に入射する。続いて、車両内側隣接領域面s25に入射した光は、出射面22から出射する。そして、
図10に示すように、出射面22から出射した光は、カットオフラインCLの一部を有し、第1拡散パターンP1より狭く、第1拡散パターンP1に重ねて、集光パターンP2を照射する。
特に、集光パターンP2は、ロービーム配光パターンLPの車両内側に形成される。
【0046】
このように、車両内側隣接領域面s25を介した光で集光パターンP2を形成するので、車両用灯具300が遮光体Wの外側に近接して配置されていても、車両内側隣接領域面s25を介した光を第1拡散パターンP1に利用せずに、集光パターンP2に利用することで、入射面21又は出射面22の全域でロービーム配光パターンLPと一致する第1拡散パターンP1を形成するのに比べて、第1光源C1からの光を有効に利用でき、遠方を照射するカットオフラインCLの近傍を明るくできる。特に、カットオフラインCLの近傍における車両内側を明るくできる。よって、本実施形態に係る車両用灯具300は、遠方視認性の低下を抑制しつつ、第1直射系レンズ2を小型にできる。
【0047】
(第4実施形態)
次に、図面を参照して、本発明を実施するための第4の形態(以下、「第4実施形態」と称する。)について詳細に説明する。なお、以下では、第4実施形態に係る車両用灯具400と、第1実施形態に係る車両用灯具100、第2実施形態に係る車両用灯具200、第3実施形態に係る車両用灯具300との共通する部分について、説明を省略する場合がある。
【0048】
図11は、第4実施形態に係る車両用灯具400における平面視の概略図である。
図12は、
図11におけるF矢視図である。
図13は、第4実施形態に係る車両用灯具400によるロービーム配光パターンLPを示す図である。
【0049】
図11に示すように、第4実施形態の車両用灯具400は、第1光源C1及び第2光源C2からの光によってロービーム用のロービーム配光パターンLPを照射するものである。
以下では、左側車両用灯具を代表として説明する。
【0050】
図11に示すように、車両用灯具400は、第1灯具ユニット20と、第2灯具ユニット40とを備えている。車両用灯具400は、第1光源C1が配置された光源ユニット10と、第1光源C1からの光を直接的に透過する第1直射系レンズ2と、を備えている。また、車両用灯具400は、第1光源C1の車両外側に並ぶ第2光源C2が配置された光源ユニット30と、第2光源C2からの光を直接的に透過する第2直射系レンズ4と、を備えている。また、車両用灯具400は、それらを収容するランプハウジング(不図示)と、を備えている。
【0051】
光源ユニット10は、第1実施形態と同様に、第1光源C1が第1直射系レンズ2から焦点距離f1だけ離れた焦点F1の近傍になるように、第1直射系レンズ2との位置関係が固定されて配置されている。
【0052】
第1直射系レンズ2は、基本的には、第1実施形態と同様に、第1光源C1に対向する入射面21と、車両の前方に対向する出射面22とを有している。出射面22は車両の前方に向けて凸の球面状に形成されている。
【0053】
光源ユニット30は、第2光源C2が第2直射系レンズ4から焦点距離f1より短い焦点距離f2だけ離れた焦点F2の近傍になるように、第2直射系レンズ4との位置関係が固定されて配置されている。
【0054】
第2直射系レンズ4は、基本的には、第1実施形態と同様に、第2光源C2に対向する入射面41と、車両の前方に対向する出射面42とを有している。出射面42は車両の前方に向けて凸の球面状に形成されている。
【0055】
図12に示すように、第2直射系レンズ4は、光軸Xを含む第2中央領域面t1と、第2中央領域面t1より車両外側に隣接して配置された車両外側隣接領域面t2とを有している。第2中央領域面t1及び車両外側隣接領域面t2は入射面41に設けられている。なお、第2中央領域面t1又は車両外側隣接領域面t2は、何れか一方又は両方が出射面42に設けられていてもよい。
【0056】
ここで、
図13に示すように、第1光源C1は、中央領域面s1を介して、第1拡散パターンP1を照射する。また、第1光源C1は、隣接領域面s2を介して、第1拡散パターンP1より狭く、第1拡散パターンP1に重ねて、カットオフラインCLの一部を有する集光パターンP2を照射する。
【0057】
そして、第2光源C2は、第2中央領域面t1を介して、ロービーム配光パターンLPにおける車両内側に、第4拡散パターンP4を照射する。同時に、第2光源C2は、車両外側隣接領域面t2を介して、ロービーム配光パターンLPにおける車両外側に、第3拡散パターンP3を照射する。
したがって、第2光源C2は、第2中央領域面t1及び車両外側隣接領域面t2を介して、ロービーム配光パターンLPに、第1拡散パターンP1よりも広い第2拡散パターンP34を照射する。
【0058】
このように、第1光源C1によって、集光パターンP2が重なった第1拡散パターンP1を照射し、第2光源C2によって、第1拡散パターンP1よりも広い第2拡散パターンP34を照射することで、ロービーム配光パターンLPの全域を照射できるとともに、カットオフラインCL近傍を明るく照射できる。よって、本実施形態に係る車両用灯具400は、遠方視認性の低下を抑制しつつ、第1直射系レンズ2又は第2直射系レンズ4を小型にできる。
【0059】
また、
図11に示すように、第2光源C2の焦点距離f2は、第1光源C1の焦点距離f1(例えば、25mm以下)より短くなっている。
これにより、ロービーム配光パターンLPを、二つの灯具ユニット、すなわち、第1灯具ユニット20及び第2灯具ユニット40で形成した場合、車両内側に配置される第1灯具ユニット20の焦点距離f1を長くして、小さい光源像によって狭く集光する配光パターンを形成する一方で、車両外側に配置される第2灯具ユニット40の焦点距離f2を短くして、大きい光源像によって広く拡散する配光パターンを形成できる。よって、車両外側に配置される第2灯具ユニット40における車両前後方向の寸法を短く設定できるので、車両用灯具全体がスラントしていて車両外側のスペースが狭くなっていても、その狭いスペースに第2灯具ユニット40を配置することができる。
そして、第1直射系レンズ2及び第2直射系レンズ4が小さくても、第1光源C1のみでロービーム配光パターンLPを形成するのに比べて、ロービーム配光パターンLPの全域の光量をあげつつ、カットオフラインCLの近傍を特に明るくできる。
【0060】
以上、具体的な実施形態を基に本発明の説明を行ってきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0061】
本発明の車両用灯具100、200、300、400によれば、第1光源C1が配置された光源ユニット10と、第1光源C1からの光を直接的に透過する第1直射系レンズ2と、を備え、第1直射系レンズ2は、光軸Xを含む中央領域面s1と、中央領域面s1に隣接して配置された隣接領域面s2とを有し、第1光源C1は、中央領域面s1を介して、カットオフラインCLを有するロービーム配光パターンLPに内に、第1拡散パターンP1を照射し、隣接領域面s2を介して、第1拡散パターンP1より狭く、第1拡散パターンP1に重ねて、カットオフラインCLの一部を有する集光パターンP2を照射するので、遠方視認性の低下を抑制しつつ、第1直射系レンズ2を小型にできる。
【符号の説明】
【0062】
10、30 光源ユニット
2 第1直射系レンズ
20 第1灯具ユニット
21、41 入射面
22、42 出射面
4 第2直射系レンズ
40 第2灯具ユニット
100、200、300、400 車両用灯具
C 光源
C1 第1光源
C2 第2光源
CL カットオフライン
F、F1、F2 焦点
L、L23c、L23h 光路
LP ロービーム配光パターン
P1 第1拡散パターン
P2 集光パターン
P3 第3拡散パターン
P4 第4拡散パターン
P34 第2拡散パターン
SC 仮想スクリーン
W 遮光体
X 光軸
f1、f2 焦点距離
Z2、Z23、Z23c、Z23h 像
s1 中央領域面
s2 隣接領域面
s21 上方隣接領域面
s22 下方隣接領域面
s23 斜上方隣接領域面
s24 斜下方隣接領域面
s25 車両内側隣接領域面
t1 第2中央領域面
t2 車両外側隣接領域面