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  • 特許-射出成形機の制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】射出成形機の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
B29C45/76
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018120973
(22)【出願日】2018-06-26
(65)【公開番号】P2020001215
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 僚
(72)【発明者】
【氏名】岡本 昭男
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-515450(JP,A)
【文献】特開平05-031770(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0161108(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型キャビティに連通するバルブゲートを少なくとも1つ備える金型を、型締装置に取り付け可能な射出成形機の制御装置において、
実生産用の成形条件に従って、前記バルブゲート毎にバルブゲート開閉動作を設定可能な生産用バルブゲート設定画面と、
前記生産用バルブゲート設定画面とは別に、開閉動作確認を行う前記バルブゲートの選択と、選択された前記バルブゲート毎の開閉動作の設定又は操作が可能な生産準備用バルブゲート動作確認画面と、
実生産用の成形条件に従って、射出装置の射出条件を設定可能な生産用射出装置設定画面とは別に、前記生産準備用バルブゲート動作確認画面に、バルブゲート動作確認用射出条件として、少なくとも射出速度及び射出圧力の設定が可能な入力部と、
を備えることを特徴とする射出成形機の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の射出成形機の制御装置によるバルブゲート開閉確認方法であって、
前記生産準備用バルブゲート動作確認画面において、開閉動作確認を行う前記バルブゲートを選択するバルブゲート選択工程と、
選択された前記バルブゲートが開状態に移行することを確認するバルブゲート開動作確認工程と、
選択された前記バルブゲートが閉状態に移行することを確認するバルブゲート閉動作確認工程と、
を備えるバルブゲート開閉確認方法。
【請求項3】
予め設定させたバルブゲート動作確認用射出条件に従って
射出装置内で所定量の樹脂を可塑化させる生産準備可塑化工程と、
開状態に移行させた前記バルブゲートから、前記生産準備可塑化工程において可塑化させた樹脂を排出させる生産準備射出工程と、
をさらに備える、請求項に記載のバルブゲート開閉確認方法。
【請求項4】
前記生産準備射出工程が、前記生産準備可塑化工程において、前記射出装置内のスクリュ前方に貯留させた樹脂に、該スクリュを前進させて流動力を付与させる射出工程、
又は、前記生産準備可塑化工程において、前記射出装置内で可塑化させた樹脂に、該スクリュを回転させて流動力を付与させる射出工程である
請求項に記載のバルブゲート開閉確認方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型キャビティに連通するバルブゲートを少なくとも1つ備える金型を、型締装置に取り付け可能な射出成形機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は操作盤や制御盤を備え、これら操作盤や制御盤は、射出成形機の射出装置や型締装置等の各種成形条件や、使用する樹脂材料や金型に応じた必要な情報を設定入力したり、設定入力された項目を必要に応じて表示したりする画面(タッチパネル)を備えている。また、このような画面から設定入力された情報は、射出成形機の制御装置で処理され、該制御装置から必要な制御を行うための各種指令が関連制御対象へと発信され、また、関連制御対象からの各種情報が制御装置へと発信され、射出成形機が制御される。
【0003】
また、射出成形機においては、型締装置に金型が取り付けられ、周辺には、該金型の温度調節を行う温度調節装置や、成形された樹脂成形品を、型開き状態の金型から型外へ搬送する製品取出装置等の周辺装置が配置される。射出成形機の制御装置は、このような金型や周辺装置とも電気的に接続され、射出成形機と共に必要な成形が行われるようにシステムとして制御される。
【0004】
近年の樹脂成形品は、それが部品として採用される機械装置、例えば自動車の軽量化や、組立工数の抑制を目的として、大型化、多数個取り、あるいは成形形状が複雑化する傾向にある。このような生産現場の要求に応えるため、金型に関しては、可動中子等の可動部が設けられたり、あるいは、金型キャビティに連通するゲート(樹脂管路開口部)が複数個所設けられたマルチゲートが採用されたりする。後者のマルチゲートに関しては、それぞれのゲートに、任意に樹脂管路の開閉が可能なバルブゲート(樹脂管路開閉弁)が配置されることが多く、その場合、金型の溶融樹脂供給口から各バルブゲートまでの樹脂管路がホットランナ(加熱樹脂管路)として構成される。そして、射出装置から直前の射出工程において金型内に射出された溶融樹脂を、該ホットランナ内に溶融状態で保持させて、次の射出工程時に、予め設定された開閉動作(開閉タイミングや開放時間等)に基づきバルブゲートを開放状態にして、溶融樹脂を金型キャビティ内に充填させることにより、大型化、多数個取り、あるいは成形形状が複雑化する樹脂成形品を成形可能にする金型構造に対応している。
【0005】
このようなホットランナの温度や、複数のバルブゲート毎の開閉タイミング及び開放時間等のバルブゲートの開閉動作は、金型と電気的に接続される射出成形機の制御装置により制御され、ホットランナの温度設定やバルブゲートの開閉動作設定が、射出成形機の操作盤や制御盤の画面(タッチパネル)から行われる。後者のバルブゲートの開閉動作制御について、特許文献1には、成形条件に従って、バルブゲートの開閉動作制御及び型締力制御を実行する射出成形機や設定画面が開示されている。また、特許文献2には、複数のバルブゲートすべてが開状態になったことが検出された後、射出を開始させる射出成形方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-036973号公報
【文献】特開2009-039912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献のように、バルブゲートの開閉動作制御は、射出装置や型締装置の制御と連動される等、その開閉タイミングや開放時間等の設定は複雑である。そのため、射出成形機のオペレータは、実成形の成形条件に準じて、バルブゲート毎にバルブゲート開閉動作を設定可能な生産用バルブゲート設定画面を操作盤や制御盤の画面に表示させて、これら開閉動作の設定入力を行う(例えば、特許文献1の明細書段落[0031]~[0034])。
【0008】
しかしながら、実生産(実成形)を開始する前の生産準備段階において、これら金型のバルブゲートの開閉動作確認を行う場合、生産用バルブゲート設定画面を呼び出して、バルブゲート毎に手動で開閉動作を確認する必要があった。一方、バルブゲートに連通するホットランナ内に樹脂が残留していないか、あるいは、本当にバルブゲートが開状態に移行しているか、また、本当に閉状態に移行しているか、を確認する方法としては、実際に射出装置で樹脂材料を可塑化・射出させて、金型を開いた状態で、バルブゲートを開状態に移行させ、バルブゲートから溶融樹脂が問題なく排出され、また、バルブゲートを閉状態に移行させ、射出中であっても、バルブゲートから溶融樹脂が排出されなくなることを目視で確認する方法が最も確実である。
【0009】
この場合、生産用バルブゲート設定画面において、バルブゲート毎にそれぞれの開閉タイミングや開放時間等が設定されている場合には、バルブゲートの開閉動作確認を行うために、これら生産用の設定とは異なる設定、すなわち、全てのバルブゲート、あるいは、選択されたバルブゲートについて、射出開始と同時に全開、あるいは、バルブゲートの全開後に射出を開始させるように、あるいは、射出中にバルブゲートを閉状態に移行するように設定を変更する必要がある。
【0010】
また、射出装置についても、生産用の射出条件の設定をバルブゲートの動作確認のために変更する必要がある。何故なら、バルブゲートから溶融樹脂が排出されることを確認する場合、射出速度が生産用の射出条件よりも低速でなければ、バルブゲートから勢いよく排出される溶融樹脂が、開いた他方の金型キャビティ面まで到達し、同面に付着固化した樹脂の清掃作業を余儀なくされるからである。また、射出圧力が生産用の射出条件よりも低圧でなければ、バルブゲートの開閉動作時、バルブゲートに異常があった場合等に、バルブゲートを破損させる虞があるからである。
【0011】
そのため、射出装置の、生産用の射出条件を設定する設定・操作画面を立ち上げ、生産用の射出条件を修正した後、手動で射出装置を操作して溶融樹脂を射出させる必要があった。
【0012】
このようにして、複数のバルブゲートの開閉動作確認を、生産用バルブゲート設定画面や、溶融樹脂の射出を伴う場合は、生産用の射出条件の設定画面での設定変更や操作で行うことは従来においても可能であった。しかしながら、バルブゲートの開閉動作確認後、変更した設定項目を全て元の設定に戻す必要があり、この作業に時間を要するという問題があった。また、変更した設定項目に戻し忘れがあった場合、実成形において、所望する射出条件とは異なる射出条件で射出装置が制御されたり、金型キャビティ内に想定外のタイミングで想定外の溶融樹脂が充填されたりする虞があった。また、これにより、不良品が成形されたり金型を傷めたりする虞があった。
【0013】
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたもので、具体的には、実生産用の成形条件に準じて、バルブゲート毎にバルブゲート開閉動作を設定可能な生産用バルブゲート設定画面とは別に、生産準備段階等でバルブゲートの開閉動作確認を行うことができる、生産準備用バルブゲート動作確認画面を備える射出成形機の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の上記目的は、金型キャビティに連通するバルブゲートを少なくとも1つ備える金型を、型締装置に取り付け可能な射出成形機の制御装置において、
実生産用の成形条件に準じて、前記バルブゲート毎にバルブゲート開閉動作を設定可能な生産用バルブゲート設定画面と、
前記生産用バルブゲート設定画面とは別に、開閉動作確認を行う前記バルブゲートの選択と、選択された前記バルブゲート毎の開閉動作の設定又は操作が可能な生産準備用バルブゲート動作確認画面と、
を備えることを特徴とする射出成形機の制御装置によって達成される。
【0015】
また、本発明に係る、射出成形機の制御装置は、実生産用の成形条件に準じて、射出装置の射出条件を設定可能な生産用射出装置設定画面とは別に、前記生産準備用バルブゲート動作確認画面に、バルブゲート動作確認用射出条件の設定が可能な入力部を備えることが好ましい。
【0016】
本発明の上記目的は、上記射出成形機の制御装置を使用して、前記生産準備用バルブゲート動作確認画面において、開閉動作確認を行う前記バルブゲートを選択するバルブゲート選択工程と、
選択された前記バルブゲートが開状態に移行することを確認するバルブゲート開動作確認工程と、
選択された前記バルブゲートが閉状態に移行することを確認するバルブゲート閉動作確認工程と、
を備えるバルブゲート開閉確認方法によっても達成される。
【0017】
また、本発明に係るバルブゲート開閉確認方法においては、予め設定させたバルブゲート動作確認用射出条件に準じて、
射出装置内で所定量の樹脂を可塑化させる生産準備可塑化工程と、
開状態に移行させた前記バルブゲートから、前記生産準備可塑化工程において可塑化させた樹脂を排出させる生産準備射出工程と、
をさらに備えていても良い。
【0018】
一方、本発明に係るバルブゲート開閉確認方法においては、前記生産準備射出工程が、前記生産準備可塑化工程において、前記射出装置内のスクリュ前方に貯留させた樹脂に、該スクリュを前進させて流動力を付与させる射出工程、
又は、前記生産準備可塑化工程において、前記射出装置内で可塑化させた樹脂に、該スクリュを回転させて流動力を付与させる射出工程であっても良い。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る、射出成形機の制御装置は、金型キャビティに連通するバルブゲートを少なくとも1つ備える金型を、型締装置に取り付け可能な射出成形機の制御装置において、
実生産用の成形条件に準じて、前記バルブゲート毎にバルブゲート開閉動作を設定可能な生産用バルブゲート設定画面と、
前記バルブゲート設定画面とは別に、開閉動作確認を行う前記バルブゲートの選択と、選択された前記バルブゲート毎の開閉動作の設定又は操作が可能な生産準備用バルブゲート動作確認画面と、
を備えるため、生産用バルブゲート設定画面におけるバルブゲートの開閉動作設定を変更することなく、生産用バルブゲート設定画面とは別の、バルブゲート動作確認画面において、生産準備段階等でバルブゲートの動作確認を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】バルブゲートの構成を説明するための、金型の概略断面図である。
図2】第1実施形態に係る、射出成形機の制御装置の、生産用バルブゲート設定画面のイメージ図である。
図3】第1実施形態に係る、射出成形機の制御装置の、バルブゲート動作確認画面のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
[第1実施形態]
図1乃至図3を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る、射出成形機の制御装置の、生産準備用バルブゲート動作確認画面について説明する。図1は、バルブゲートの構成を説明するための、金型の概略断面図であって、図1(a)が型開き状態、図1(b)が型締め状態での射出時のバルブゲートの開放状態を示す。図2は、第1実施形態に係る、射出成形機の制御装置の、生産用バルブゲート設定画面のイメージ図である。図3は、第1実施形態に係る、射出成形機の制御装置の、バルブゲート動作確認画面のイメージ図である。図3(a)は確認用オーバーラップが表示された状態、図3(b)は生産準備用バルブゲート動作確認画面が表示された状態を示す。
【0023】
まず、バルブゲートの構成について図1を参照しながら説明する。図1(a)に示すように、固定金型10と、固定金型10に対向して、可動金型20が図示しない射出成形機の図示しない型締装置に配置されている。図1(a)は、固定金型10と可動金型20とが型開きされた型開き状態である。固定金型10の、可動金型20と対向する面の逆の面には、射出装置30のノズル部が、固定金型10側から溶融樹脂を金型キャビティ40に射出可能に、固定金型10の溶融樹脂供給口11に押圧(ノズルタッチ)されている。尚、固定金型10及び可動金型20が取り付けられる射出成形機の構成については、本発明に直接関係がないため、説明や図示を割愛する。
【0024】
射出装置30のノズル部がノズルタッチされた固定金型10の溶融樹脂供給口11は、樹脂管路12によりゲート13(樹脂管路開口部)に連通され、ゲート13には、バルブゲート14が配置されている。バルブゲートには様々な形態があるが、第1実施形態においては、ゲート13の開状態及び閉状態を、ゲートピン14aの摺動で任意に選択(開閉)可能な一般的な形態である。ゲートピン14aは、該ピンと一体的に形成されたピストン14bで摺動方向に分割される油室14cの一方に、図示しない油圧配管から適宜作動油を供給させることにより駆動される。ゲートピン14aの油室14cから突出する突出部は、樹脂管路12の一部であるゲートピン摺動空間12a内を摺動する。図1(a)は、ゲートピン14aを前進(可動金型20側/図1左側)させて、ゲート13を閉状態に移行させた状態である。ゲートピン14aの金型キャビティ40側端面が、樹脂成形品の製品部分に位置する場合は、同端面が金型キャビティ40と面一に形成される。
【0025】
また、図示はしていないが、固定金型10の溶融樹脂供給口11から連続する樹脂管路12及びゲートピン摺動空間12aの外周部分には、これら領域(樹脂管路)をホットランナ(加熱樹脂管路)として構成させるための加熱手段や温度検出手段が配置されている。これら加熱手段用の電力線や温度検出手段用の制御線は、図示しない射出成形機の制御装置に電気的に接続されている。図1(a)においては、ゲート13がバルブゲート14のゲートピン14aにより閉塞されている(閉状態)ため、連続して行われる実生産中(実成形中)においては、樹脂管路12及びゲートピン摺動空間12a内は連続した密閉空間として構成され、図示しない加熱手段により、直前の射出工程により射出装置30から射出された溶融樹脂を溶融状態で保持させることができる。
【0026】
そして、図1(b)に示すように、ゲートピン14aを後退(図1右側)させて、ゲート13を開放させて開状態に移行させると、固定金型10の溶融樹脂供給口11からゲート13(金型キャビティ40)までの樹脂管路(ホットランナ)が連通され、射出装置30から溶融樹脂を射出させて、ホットランナ内に保持されていた溶融樹脂と共に、金型キャビティ40に射出充填させることができる。
【0027】
バルブゲートの説明を容易にするため、図1には、1つのバルブゲート14が固定金型10側に配置され、単純な形状の金型キャビティ40を備える金型の形態を図示した。しかしながら、先に説明したように、樹脂成形品が、大型化、多数個取り、あるいは成形形状が複雑化する場合、これら要求に応えるため、金型にはマルチゲートが採用され、それぞれのゲートにバルブゲートが配置され、射出装置や型締装置と連動して、それぞれのバルブゲートの開閉動作(開閉タイミングや開放時間等)が制御される。
【0028】
このような、実生産用の成形条件に準じて、バルブゲート毎にバルブゲート開閉動作を設定可能な生産用バルブゲート設定画面の一例を図2に示す。図2に示す生産用バルブゲート設定画面では、実生産において最大16個のバルブゲートの開閉動作の設定が可能である。設定する開閉動作は、「モード選択」(図2のA)において「時間」あるいは「位置」を選択可能である。「時間」モードを選択した場合は、射出開始から何秒遅れでバルブゲートを開かせるかを設定する「開遅延(s)」と、開放状態を何秒間維持させるかを設定する「開時間(s)」とを入力する(共に図2のB)。また、「位置」モードを選択した場合は、バルブゲートを開かせる、射出装置のスクリュ位置(スクリュ前進限位置からの距離)を設定する「開位置(mm)」と、バルブゲートを閉塞させるスクリュ位置(同基準)を設定する「閉位置(mm)」とを入力する(共に図2のC)。これら様々な開閉動作設定項目に、好適な開閉動作を設定することにより、良品を得るためのきめ細やかなバルブゲートの開閉動作が設定できる。
【0029】
しかしながら、生産準備段階において、これらバルブゲートの開閉動作確認を、このように、バルブゲート毎にきめ細やかな開閉動作が設定されている生産用バルブゲート設定画面にて行う場合、バルブゲートの開閉動作確認後、変更した設定項目を全て元の設定に戻す必要があることや、変更した設定項目の戻し忘れに起因する問題については先に説明したとおりである。
【0030】
本発明は、このような生産用バルブゲート設定画面とは別に、開閉動作確認を行うバルブゲートの選択と、選択されたバルブゲート毎の開閉動作の設定又は操作が可能な生産準備用バルブゲート動作確認画面を備えるため、生産用バルブゲート設定画面におけるバルブゲートの開閉動作設定を変更することなく、生産用バルブゲート設定画面とは別の、バルブゲート動作確認画面において、生産準備段階等でバルブゲートの動作確認を行うことができる。
【0031】
図3に生産準備用バルブゲート動作確認画面の一例を示す。実成形用の成形条件に準じて、射出装置、型締装置、金型及び周辺装置に各種条件の設定が可能な画面に、生産準備用バルブゲート動作確認画面をポップアップさせるボタンを設ける。図3(a)は、生産用射出条件設定画面(図3(a)のD)に設けられた、生産準備用バルブゲート動作確認画面をポップアップさせる「生産準備」ボタン(図3(a)のE)を押して、確認用オーバーラップ(図3(a)のF)を表示させた状態を示す。
【0032】
確認用オーバーラップにおいて「OK」ボタンを押すと、図3(b)に示すように、生産準備用バルブゲート動作確認画面(図3(b)のG/「生産準備モード」)がポップアップ表示される。同画面において、開閉動作確認を行うバルブゲートを選択する(図3(b)のH/バルブゲート選択工程)。これは、射出成形機の立ち上げ時に、毎回、必ず、全てのバルブゲートの開閉動作確認を行う必要性の有無を鑑みて、射出成形機のユーザー側で、開閉動作確認を行うバルブゲートの選択を行うものである。必要があると判断すれば、毎回、全てのバルブゲートを選択しても良いし、立ち上げの都度、異なるバルブゲートを選択して、数回の立ち上げを経て全てのバルブゲートの開閉動作確認が一巡できるようにしても良い。また、開閉動作に異常が発生し易いバルブゲートや、ホットランナ内に前回稼働時の樹脂材料が残りやすいバルブゲートが把握できている場合は、それらバルブゲートを選択しても良い。
【0033】
選択されたバルブゲートは、「使用/不要一括設定」ボタン(図3(b)のI)で、全選択及び全不使用が選択できる。複数のバルブゲートの選択を変更する場合は、この「使用/不要一括設定」ボタンを活用して、一度、全選択状態もしくは非全選択状態にしてから変更すると変更が容易である。
【0034】
そして、「VG開SW」ボタン(図3(b)のJ)を押すと、押している間のみ、該バルブゲートが開状態に移行し開状態が維持され、離すとバルブゲートが閉状態に移行する。実際に、開状態に移行させたバルブゲートから溶融樹脂を排出させて、該バルブゲートが開状態に移行したことを目視で確認することが好ましいが、排出させた樹脂の処理等を鑑みると、金型を開いて、射出成形機の安全ドアを閉じた状態で操作者が「VG開SW」ボタンを押し、その間に、安全ドアの透明窓から、画面操作者とは別の確認者に、該当バルブゲートが開状態に移行することと、閉状態に移行することとを目視確認してもらうことで、開閉動作確認としても良い(バルブゲート開動作確認工程/バルブゲート閉動作確認工程)。
【0035】
一方、安全ドアの透明窓から、該当バルブゲートの開閉動作の目視確認が難しい場合は、バルブゲートが配置された金型キャビティ面を撮影可能な位置に撮影手段等を配置させて、同撮影画像を、射出成形機の操作盤や制御盤の画面、あるいは、別モニタで目視確認できるように構成されても良い。
【0036】
また、バルブゲート14には、例えば、図示はしていないが、ピストン14bの射出装置30側(図1の右側)に、油室14cを貫通させるように、ゲートピン14aと同様の突出部を形成させて、該突出部の摺動により作動させる機械式のリミットスイッチや、該突出部の先端等で、ゲートピン14aの摺動量を検出可能な位置センサやストロークセンサを配置させても良い。これらリミットスイッチやセンサにより、バルブゲート14によるゲート13の開状態及び閉状態を検出させて、図3(b)の生産準備用バルブゲート動作確認画面の、「VG開SW」ボタン(図3(b)のJ)の右横等に、各バルブゲートの開閉状態を表示させれば、バルブゲート開動作確認工程及びバルブゲート閉動作確認工程が目視確認だけでなく電気的に行えるようになる。また、同様に、撮影手段等を配置させる場合は、撮像の画像処理により、該当バルブゲートの開閉動作を検出可能にする形態であっても良い。
【0037】
実際に、開状態に移行させたバルブゲートから溶融樹脂を排出させて、該バルブゲートが開状態に移行したこと、また、閉状態に移行したこと、を目視で確認する場合は、開閉動作するバルブゲートの選択と前後して、固定金型10から可動金型20を型開きさせて、両金型間の下方に排出させた樹脂を受ける容器等を設置させておく。可動金型10は開き限まで開く必要は必ずしもなく、排出させる樹脂量に見合う容器が設置できる程度に開いておけば良い。
【0038】
次に、開状態に移行させたバルブゲートから溶融樹脂を排出させるため、射出装置の射出条件を設定する。生産用に、実生産用の成形条件に準じて、射出装置の射出条件を設定可能な生産用射出装置設定画面は、先に図3(a)のDに示したように、様々な設定・入力項目がある。そのため、バルブゲートの開閉動作設定と同様に、生産準備段階において、これら、バルブゲートの開閉動作確認のために射出装置の設定を、生産用射出装置設定画面にて行う場合、バルブゲートの開閉動作確認後、変更した設定項目を全て元の設定に戻す必要があることや、変更した設定項目の戻し忘れに起因する問題について、先に説明したとおりである。
【0039】
第1実施形態においては、実生産用の成形条件に準じて、射出装置の射出条件を設定可能な生産用射出装置設定画面とは別に、先に説明した、生産準備用バルブゲート動作確認画面に、バルブゲート動作確認用射出条件の設定が可能な入力部(図3(b)のK)を備えている。先に説明したように、金型が開いた状態において、バルブゲートから溶融樹脂が排出されることを確認する場合、バルブゲートから排出された溶融樹脂が、勢い余って、開いた他方の金型キャビティ面に付着固化することを回避するため、バルブゲート動作確認用射出条件における射出速度は低速で、且つ、バルブゲートの開閉動作時、バルブゲートに異常があった場合等のバルブゲートの破損を回避するために、射出圧力は低圧で射出されるよう設定されることが好ましい。尚、ポップアップさせた生産準備用バルブゲート動作確認画面は、「閉じる」ボタン(図3(b)のL)を押すと閉じることができる。
【0040】
このような、バルブゲートの開閉動作確認のための射出装置の設定(バルブゲート動作確認用射出条件)を、生産用射出装置設定画面における射出条件の設定を変更することなく、生産準備用バルブゲート動作確認画面中の、バルブゲート動作確認用射出条件の設定が可能な入力部から行うことができれば、従来のように、変更した設定項目を全て元の設定に戻す必要はなく、また、変更した設定項目の戻し忘れに起因する問題も発生しない。
【0041】
ここで、実生産用(実成形用)の成形条件に準じて、計量樹脂量を設定するのは、通常、図3(a)に示す生産用射出装置設定画面の「計量完了(mm)」入力部(図3(a)のN)である。同入力部において所望する計量樹脂量を、スクリュ計量完了位置、すなわち、スクリュ前進限位置からの後退距離で設定する。
【0042】
同画面において、バルブゲートの開閉動作確認のため、計量樹脂量を設定変更することも可能である。しかしながら、第1実施形態においては、計量樹脂量の設定そのものは、実生産用の設定から変える必要はない。射出成形機の射出装置の操作を図示しない操作盤のセレクトスイッチ等で手動操作モードに切り換えて、計量を開始させると、設定された実生産用の計量樹脂量(スクリュ前進限位置からの後退距離/スクリュ計量完了位置)を最大として、計量中の任意のスクリュ位置(任意の計量樹脂量)で計量動作を停止させることが可能であるからである。
【0043】
また、射出装置から金型キャビティに溶融樹脂を射出させる場合も、射出装置の手動操作モードにおいては、計量動作を停止させたスクリュの、上記任意のスクリュ位置から、計量樹脂量の全量ではなく、任意の計量樹脂量分、スクリュを前進・停止させることができる。例えば、実生産用の計量樹脂量(スクリュ前進限位置からの後退距離/スクリュ計量完了位置)を計量させた後、任意の計量樹脂量分を射出させる間に、バルブゲート選択工程において選択されたバルブゲートを1つずつ開閉させて、開状態に移行させたバルブゲートからの溶融樹脂の排出、また、射出中であっても、バルブゲートから溶融樹脂が排出されなくなることを目視で確認しながら、この確認と確認のための射出とを繰り返せば良い。
【0044】
尚、開閉動作確認対象となるバルブゲートの数が少なく、バルブゲートの開閉動作確認のために、実生産と略同じ計量樹脂量(金型キャビティを満たす量)が必ずしも必要ない場合がある。その場合は、余分な計量樹脂をゲートバルブから排出させざるを得ない。このような場合を鑑み、バルブゲートの開閉動作確認のための射出装置の計量樹脂量の設定を、生産準備用バルブゲート動作確認画面中、もしくは同画面中の、バルブゲート動作確認用射出条件の設定が可能な入力部中で、できるように構成されても良い。
【0045】
上記のように、固定金型10から可動金型20を型開きさせて、両金型間の下方に排出させた樹脂を受ける容器等を設置させ、開閉動作確認を行うバルブゲートの選択(バルブゲート選択工程)をし、射出装置の射出条件の設定と、計量樹脂量の設定とを完了させる。その後、射出装置に樹脂材料を供給させて、操作盤の押しボタン等で射出装置を作動させる。設定された計量樹脂量に基づき、射出装置内で所定量の樹脂を可塑化させた(生産準備可塑化工程)後、スクリュ前方に貯留させた樹脂に、スクリュを前進させて流動力を付与させる、所謂、一般的な射出工程を行い、開状態に移行させたバルブゲートから可塑化させた樹脂を排出させる(生産準備射出工程)。先に説明したように、この射出は、開閉動作確認対象となるバルブゲート毎に、確認のために必要な量のみの射出を手動操作で繰り返すものである。
【0046】
射出装置から射出された溶融樹脂は、樹脂管路12及びゲートピン摺動空間12aを経由して、開状態に移行させたゲート13から排出される。これら生産準備可塑化工程及び生産準備射出工程を、安全ドアの透明窓から、画面操作者、あるいは、別の確認者が目視確認する(バルブゲート開動作確認工程)。また、射出中であっても、ゲート13がバルブゲートピン14aの前進により閉状態に移行し、ゲート13から溶融樹脂が排出されなくなることを目視確認する(バルブゲート閉動作確認工程)。
【0047】
先に説明したように、安全ドアの透明窓から、該当バルブゲートからの溶融樹脂排出の目視確認が難しい場合は、バルブゲートが配置された金型キャビティ面を撮影可能な位置に撮影手段等を配置させて、同撮影画像を、射出成形機の操作盤や制御盤の画面、あるいは、別モニタで目視確認できるように構成されても良い。また、画像処理により、該当バルブゲートからの溶融樹脂排出を検出可能にすれば、バルブゲート開動作確認工程及びバルブゲート閉動作確認工程が目視確認だけでなく電気的に行えるようになる。
【0048】
ここで、第1実施形態においては、射出装置内で所定量の樹脂を可塑化させた(生産準備可塑化工程)後、スクリュ前方に貯留させた樹脂に、スクリュを前進させて流動力を付与させる、所謂、一般的な射出工程による生産準備射出工程を説明した。しかしながら、先に説明したように、バルブゲート動作確認用射出条件における射出速度は低速で、且つ、射出圧力は低圧で射出されるよう設定されることが好ましい。そのため、生産準備可塑化工程において可塑化させた樹脂に、スクリュをその位置で回転させて流動力を付与させる射出工程、所謂、イントリュージョン射出を行い、開状態に移行させたバルブゲートから可塑化させた樹脂を排出させる生産準備射出工程であっても良い。
【0049】
また、第1実施形態においては、選択されたゲートバルブの開閉動作を1つずつ確認することを説明した。ここで、選択されたゲートバルブ全ての開閉動作の目視確認が終了した後、金型を開いた状態で、引き続き、実生産用の成形条件に準じて、バルブゲート毎にバルブゲート開閉動作が設定された生産用バルブゲート設定画面の設定のもと、溶融樹脂の射出なしで、全バルブゲートが設定通りの開閉タイミングで開閉制御されることを確認する(実成形バルブゲート開閉動作確認工程)ことがさらに好ましい。
【0050】
以上、発明を実施するための形態について、第1実施形態を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された内容を逸脱しない範囲で、色々な形で実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0051】
10 固定金型、11 溶融樹脂供給口、12 樹脂管路、12a ゲートピン摺動空間、13 ゲート(樹脂管路開口部)、14 バルブゲート、14a ゲートピン、14b ピストン、14c 油室、20 可動金型、30 射出装置、40 金型キャビティ、A モード選択、B 「時間」モード選択時の入力項目、C 「位置」モード選択時の入力項目、D 生産用射出条件設定画面、E 生産準備用バルブゲート動作確認画面をポップアップさせる「生産準備」ボタン、F 確認用オーバーラップ、G 生産準備用バルブゲート動作確認画面(「生産準備モード」)、H 開閉動作確認を行うバルブゲートの選択、I 「使用/不要一括設定」ボタン、J 「VG開SW」ボタン、K バルブゲート動作確認用射出条件の設定が可能な入力部、L 「閉じる」ボタン、N 「計量完了」入力部
図1
図2
図3