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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】電動機駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20220621BHJP
   H02P 25/22 20060101ALI20220621BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02P25/22
H02P27/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018124803
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2019208349
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-05-14
(31)【優先権主張番号】P 2018100198
(32)【優先日】2018-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】岩堀 道雄
(72)【発明者】
【氏名】馬場 謙二
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5917295(US,A)
【文献】特開2012-23821(JP,A)
【文献】特開2009-268277(JP,A)
【文献】特開平2-188190(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/42- 7/98
H02P 21/00-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源から入力された直流の電力を交流の電力に変換して、互いに絶縁されておりn個(nは以上の整数)の巻線を有する電動機に、複数相の前記交流の電力を出力するm個(mは3以上の整数)のインバータユニットと、制御部とを備え、
前記m個のインバータユニットには、それぞれ、前記n個の巻線のうちの第1の前記巻線に接続された第1単相フルブリッジ回路と、第2の前記巻線に接続された第2単相フルブリッジ回路と、前記第1単相フルブリッジ回路および前記第2単相フルブリッジ回路の前記直流電源側の端子に接続されている共通コンデンサとが設けられており、
前記制御部は、前記第1単相フルブリッジ回路から前記第1の巻線に出力される第1電力と、前記第2単相フルブリッジ回路から前記第2の巻線に出力される第2電力との前記共通コンデンサにおける合成波形の脈動成分の振幅が、前記第1電力または前記第2電力のいずれか一方の脈動成分の振幅以下となるように、前記第1単相フルブリッジ回路および前記第2単相フルブリッジ回路を制御する、電動機駆動装置。
【請求項2】
前記制御部は、同一の前記インバータユニット内において、前記第1単相フルブリッジ回路から前記第1の巻線に出力される第1基本波出力電圧の位相と、前記第2単相フルブリッジ回路から前記第2の巻線に出力される第2基本波出力電圧の位相との位相差が、60度以上120度以下となるように、前記第1単相フルブリッジ回路および前記第2単相フルブリッジ回路を制御する、請求項1に記載の電動機駆動装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1基本波出力電圧の位相と前記第2基本波出力電圧の位相との位相差が、前記n個の巻線に出力される基本波出力電圧同士の位相差のうちの最も90度に近い位相差に対応する状態となるように、前記第1単相フルブリッジ回路および前記第2単相フルブリッジ回路を制御する、請求項2に記載の電動機駆動装置。
【請求項4】
前記mは、前記nの半数であり、
前記制御部は、前記m個のインバータユニットから出力され、m個の前記第1基本波出力電圧の電圧ベクトルである第1電圧ベクトルと、前記m個のインバータユニットから出力されるm個の前記第2基本波出力電圧の電圧ベクトルである第2電圧ベクトルとを含む、所定角度ずつ互いに位相が異なる前記n個の基本波出力電圧ベクトルを構成するように、前記第1単相フルブリッジ回路および前記第2単相フルブリッジ回路を制御する、請求項3に記載の電動機駆動装置。
【請求項5】
前記mは、前記nの半数でかつ奇数であり、
前記制御部は、前記m個のインバータユニットから出力され、所定角度ずつ互いに位相が異なるm個の前記第1基本波出力電圧の電圧ベクトルである第1電圧ベクトルからなる第1の基本波出力電圧ベクトル群を構成するとともに、前記m個のインバータユニットから出力され、前記所定角度ずつ互いに位相が異なるm個の前記第2基本波出力電圧の電圧ベクトルである第2電圧ベクトルからなる第2の基本波出力電圧ベクトル群を構成するように、前記第1単相フルブリッジ回路および前記第2単相フルブリッジ回路を制御する、請求項3に記載の電動機駆動装置。
【請求項6】
前記m個のインバータユニットには、それぞれ、単一の前記共通コンデンサが設けられている、請求項1~5のいずれか1項に記載の電動機駆動装置。
【請求項7】
前記第1単相フルブリッジ回路および前記第2単相フルブリッジ回路は、それぞれ、スイッチング素子と前記スイッチング素子に逆並列に接続されたダイオードとを有し、
前記共通コンデンサは、前記第1単相フルブリッジ回路の正負の両端子および前記第2単相フルブリッジ回路の正負の両端子に接続されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の電動機駆動装置。
【請求項8】
前記スイッチング素子および前記ダイオードの少なくとも一方は、炭化珪素を含む、請求項7に記載の電動機駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数相の交流の電力を出力する複数個のインバータユニットを備える電動機駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数相の交流の電力を出力する複数個のインバータユニットを備える電動機駆動装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、複数相の交流の電力を出力する複数個の単相パルス幅変調方式インバータ(以下、「単相インバータ」という)を備える多相電動機駆動装置が開示されている。この多相電動機駆動装置の各単相インバータには、直流電源に接続されている単相フルブリッジ回路と、単相フルブリッジ回路の直流電源側の端子に接続された平滑コンデンサとが設けられている。そして、各単相インバータは、それぞれ、単相フルブリッジ回路と平滑コンデンサとにより、直流電源からの直流の電力を交流の電力に変換して、電動機の巻線に交流の電力を出力するように構成されている。これにより、多相電動機駆動装置は、複数相の交流の電力を電動機に出力するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-268277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1に記載のような多相電動機駆動装置では、各単相インバータにおいて、出力電力(基本波出力電圧と基本波出力電流とを乗算したもの)は、基本波出力電圧の角周波数の2倍の角周波数(2ω)で振動する波形となる。すなわち、出力電力をp、振幅をVとする基本波出力電圧をv、振幅をIとする基本波出力電流をi、力率をcosθ、角周波数をω、および、時間をtとすると、下記の式(1)~(3)のように表すことができる。
【数1】
すなわち、出力電力pの波形には、一般的に、振幅がVIの2分の1の大きさの脈動成分が重畳する。ここで、単相インバータのフルブリッジ回路にはエネルギー蓄積要素がないことから、単相インバータ内の損失を無視すれば、この出力電力pと、入力電力とは、等しくなるので、単相フルブリッジ回路に流入する直流電流id1も、出力電力pと略相似の波形となる。なお、平滑コンデンサの電圧が一定ならば、完全に相似な波形となるが、実際には、この電圧は変動するため、完全な相似ではない。また、直流電流id1は、単相インバータの入力端子から流入する電流id1aと平滑コンデンサC1から流れる電流ic1とを加えたものであり、以下の式(4)のように表せる。
【数2】
ここで、単相インバータの直流入力端子のインピーダンスが、略0で、平滑コンデンサのインピーダンスより充分小さければ、上記の周波数2ωの電流成分は、平滑コンデンサにはほとんど流れず、この直流入力端子間で打ち消される。すなわち、周波数2ωの電流成分のほとんどは、電流id1aに流れる。しかしながら、大容量機では、直流入力端子間のインピーダンスが無視できない程度に大きくなるので、平滑コンデンサに分流する周波数2ωの電流が比較的大きくなる。ここで、上記特許文献1に記載されているような、多巻線交流電動機を駆動するための電動機駆動装置は、大容量のものが多く、単相インバータ自体も大型化し、単相インバータの直流入力端子や直流電源の出力端子の間を接続する配線も長くなり、無視できないインピーダンスとなるため、平滑コンデンサに流れる周波数2ωの電流が比較的大きくなる。また、この平滑コンデンサには、単相インバータのPWM制御などに伴う大きな高調波のリプル電流が流れるため、この平滑コンデンサの温度上昇や寿命などに影響を及ぼす。ここで更に、上記のように、比較的大きな周波数2ωの電流(上記高調波の全リプル電流実効値の数十%にも及ぶ場合がある)が平滑コンデンサに流れるため、周波数2ωの電流(脈動成分)が平滑コンデンサの損失増加、寿命短縮や容量増加による大型化などに拍車をかけるという問題点があった。なお、単相インバータおよび電動機の巻線を複数群に分割した場合にも、各単相インバータの構成は上記と同様であるため、上記と同様の課題があった。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、コンデンサに流れる脈動成分を低減することができ、コンデンサの責務を低減することが可能な電動機駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による電動機駆動装置は、直流電源から入力された直流の電力を交流の電力に変換して、互いに絶縁されておりn個(nは以上の整数)の巻線を有する電動機に、複数相の交流の電力を出力するm個(mは3以上の整数)のインバータユニットと、制御部とを備え、m個のインバータユニットには、それぞれ、n個の巻線のうちの第1の巻線に接続された第1単相フルブリッジ回路と、第2の巻線に接続された第2単相フルブリッジ回路と、第1単相フルブリッジ回路および第2単相フルブリッジ回路の直流電源側の端子に接続されている共通コンデンサとが設けられており、制御部は、第1単相フルブリッジ回路から第1の巻線に出力される第1電力と、第2単相フルブリッジ回路から第2の巻線に出力される第2電力との共通コンデンサにおける合成波形の脈動成分が、第1電力または第2電力のいずれか一方の脈動成分の振幅以下となるように、第1単相フルブリッジ回路および第2単相フルブリッジ回路を制御する。
【0008】
この発明の一の局面による電動機駆動装置では、上記のように、m個のインバータユニットには、それぞれ、第1単相フルブリッジ回路と第2単相フルブリッジ回路と共通コンデンサ(好ましくは、単一の共通コンデンサ)とを設けることにより、単一の単相フルブリッジ回路と平滑コンデンサとを備えたm個のインバータユニットを2組以上設ける場合に比べて、部品点数を低減することができる。そして、第1電力と第2電力との共通コンデンサにおける合成波形の脈動成分の振幅を、第1電力または第2電力のいずれか一方の脈動成分の振幅以下にすることができる。ここで、m個のインバータユニットのうちの第1のインバータユニットにおいて、第1単相フルブリッジ回路から第1の巻線に出力される第1基本波出力電圧をva1-1、第1基本波出力電流をia1-1とし、第2単相フルブリッジ回路から第2の巻線に出力される第2基本波出力電圧をva2-1、第2基本波出力電流をia2-1とし、基本波力率をcosθとし、第1基本波出力電圧va1-1および第2基本波出力電圧va2-1の位相差をαとすると、以下の式(5)~(8)のように表すことができる。なお、以下の式では、高調波は無視するものとして記載している。なお、以下の記載では、第1のインバータユニットの作用および効果について説明するが、第2~第mのインバータユニットにおいても、第1のインバータユニットと同様の作用および効果を奏する。
【数3】
ここで、Vは、第1基本波出力電圧および第2基本波出力電圧の振幅であり、Iは、第1基本波出力電流および第2基本波出力電流の振幅であり、ωは角周波数であり、tは時間である。そして、第1単相フルブリッジ回路から出力される第1電力p1-1は以下の式(9)のように表すことができる。
【数4】
式(9)によれば、第1電力p1-1の波形には、それぞれ、角周波数2ωでかつVIの2分の1の振幅の脈動成分が含まれている。また、第2電力p2-1の波形にも、同様に、角周波数2ωでかつVIの2分の1の振幅の脈動成分が含まれる。ここで、第1電力p1-1と第2単相フルブリッジ回路から出力される第2電力p2-1とを合成すると、式(10)のように表すことができる。
【数5】
この場合、合成した電力「(p1-1)+(p2-1)」は、一定値VIcosθに、角周波数2ωの脈動成分の波形が重畳する波形となる。ここで、第1単相フルブリッジ回路および第2単相フルブリッジ回路には、エネルギー蓄積要素がないことから、回路内の損失を無視すれば、第1単相フルブリッジ回路および第2単相フルブリッジ回路の出力電力「(p1-1)+(p2-1)」と、入力電力とは等しくなる。ここで、第1単相フルブリッジ回路に流入する電流をid1-1とし、第2単相フルブリッジ回路に流入する電流をid2-1とする(図1参照)と、電流「(id1-1)+(id2-1)」は、出力電力「(p1-1)+(p2-1)」と略相似の波形となる。また、電流「(id1-1)+(id2-1)」は、入力端子から流入する電流id1aと共通コンデンサから流れる電流ic1とを加えたものであり、以下の式(11)のように表せる。
【数6】
ここで、入力端子のインピーダンスが略0で、共通コンデンサのインピーダンスより充分小さければ,周波数2ωの脈動成分は、共通コンデンサにはほとんど流れず、この端子間で打ち消される。すなわち、2ωの脈動成分は、ほとんど電流id1aに流れる。しかし、大容量機では、端子間のインピーダンスが無視できない程度に大きくなるので、共通コンデンサに分流する周波数2ωの電流が比較的大きくなる。これに対して、本発明では、上記のように構成することにより、共通コンデンサにおける合成波形の脈動成分の振幅を、第1電力または第2電力のいずれか一方の脈動成分の振幅以下にすることができるので、コンデンサを第1単相フルブリッジ回路および第2単相フルブリッジ回路の各々に設ける場合と異なり、この電力脈動によって生じる共通コンデンサの責務増加を抑制することができる。この結果、共通コンデンサにおける損失増加、寿命短縮や容量増加を抑制することができる。
【0009】
上記一の局面による電動機駆動装置において、好ましくは、制御部は、同一のインバータユニット内において、第1単相フルブリッジ回路から第1の巻線に出力される第1基本波出力電圧の位相と、第2単相フルブリッジ回路から第2の巻線に出力される第2基本波出力電圧の位相との位相差が、60度以上120度以下となるように、第1単相フルブリッジ回路および第2単相フルブリッジ回路を制御する。ここで、本出願の発明者は、上記式(10)の内容に着目して、下記の構成を見出した。すなわち、本出願の発明者は、合成した電力「(p1-1)+(p2-1)」の脈動成分について、以下の式(12)および(13)が成り立つことを見出した。
【数7】
式(13)によると、合成した電力「(p1-1)+(p2-1)」の脈動成分の振幅VIcosα(最大値がVIの2分の1)が、式(9)に示す第1電力p1-1のみの脈動成分の振幅(VIの2分の1)以下または第2電力p2-1のみの脈動成分の振幅以下になる。すなわち、制御部により、同一のインバータユニット内において、第1基本波出力電圧の位相と第2基本波出力電圧の位相との位相差(α)が、60度以上120度以下となるように、第1単相フルブリッジ回路および第2単相フルブリッジ回路を制御すれば、脈動成分を、VIの2分の1以下に抑制することができる。
【0010】
また、位相差αが90度の場合、下記の式(14)に示すように、cosαを0にすることができるので、αを90度に最も近い値にすることにより、脈動成分の振幅を0に近い値に低減することができる。
【数8】
上記一の局面による電動機駆動装置において、好ましくは、制御部は、第1基本波出力電圧の位相と第2基本波出力電圧の位相との位相差が、n個の巻線に出力される基本波出力電圧同士の位相差のうちの最も90度に近い位相差に対応する状態となるように、第1単相フルブリッジ回路および第2単相フルブリッジ回路を制御する。このように構成すれば、同一のインバータユニットにおいて、第1基本波出力電圧の位相と第2基本波出力電圧の位相との位相差が略90度となるように、第1単相フルブリッジ回路と第2単相フルブリッジ回路とを制御することができる。この結果、共通コンデンサに流れる脈動成分の振幅をより一層低減することができるので、共通コンデンサの責務を低減することができる。また、共通コンデンサに流れる脈動成分の振幅をより一層低減することができることにより、共通コンデンサの温度上昇を抑制することができ、共通コンデンサの長寿命化を図ることができる。そして、共通コンデンサに流れる脈動成分の振幅をより一層低減することができるので、共通コンデンサの容量を小さくすることができ、共通コンデンサをより一層小型化することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、mは、nの半数であり、制御部は、m個のインバータユニットから出力され、m個の第1基本波出力電圧の電圧ベクトルである第1電圧ベクトルと、m個のインバータユニットから出力されるm個の第2基本波出力電圧の電圧ベクトルである第2電圧ベクトルとを含む、所定角度ずつ互いに位相が異なるn個の基本波出力電圧ベクトルを構成するように、第1単相フルブリッジ回路および第2単相フルブリッジ回路を制御する。このように構成すれば、n相(nは偶数)の電力が供給される電動機を駆動する際に、電動機を駆動させるため全てのインバータユニットから出力される電力の脈動成分の振幅を低減することができるので、電動機駆動装置に配置される全ての共通コンデンサにおいて、損失増加、寿命短縮や容量増加を抑制することができる。
【0012】
上記位相差を90度に近い位相差になるように制御する電動機駆動装置において、好ましくは、mは、nの半数でかつ奇数であり、制御部は、m個のインバータユニットから出力されるm個の第1基本波出力電圧の電圧ベクトルである第1電圧ベクトルからなる第1の基本波出力電圧ベクトル群を構成するとともに、m個のインバータユニットから出力されるm個の第2基本波出力電圧の電圧ベクトルである第2電圧ベクトルからなる第2の基本波出力電圧ベクトル群を構成するように、第1単相フルブリッジ回路および第2単相フルブリッジ回路を制御する。このように構成すれば、奇数であるm相の電力が供給される電動機を駆動させる場合でも、奇数のm個のうちの1つの第1単相フルブリッジ回路と、奇数のm個のうちの1つの第2単相フルブリッジ回路とを同一のインバータユニットに設けて、駆動させることができる。この結果、奇数であるm相の電力が供給される電動機を駆動させる場合にも、電動機を駆動させるため全てのインバータユニットから出力される電力の脈動成分の振幅を低減することができるので、電動機駆動装置に配置される全ての共通コンデンサにおいて、損失増加、寿命短縮や容量増加を抑制することができることができる。
【0013】
上記一の局面による電動機駆動装置において、好ましくは、m個のインバータユニットには、それぞれ、単一の共通コンデンサが設けられている。このように構成すれば、複数の共通コンデンサを設ける場合に比べて、部品点数を低減することができる。
【0014】
上記一の局面による電動機駆動装置において、好ましくは、第1単相フルブリッジ回路および第2単相フルブリッジ回路は、それぞれ、スイッチング素子とスイッチング素子に逆並列に接続されたダイオードとを有し、共通コンデンサは、第1単相フルブリッジ回路の正負の両端子および第2単相フルブリッジ回路の正負の両端子に接続されている。このように構成すれば、第1電力と第2電力との共通コンデンサにおける合成波形の脈動成分が、第1電力または第2電力のいずれか一方の脈動成分の振幅以下となるように、第1の巻線に第1単相フルブリッジ回路を容易に接続することができるとともに、第2の巻線に第2単相フルブリッジ回路を容易に接続することができる。
【0015】
この場合、好ましくは、スイッチング素子およびダイオードの少なくとも一方は、炭化珪素を含む。このように構成すれば、スイッチング素子およびダイオードの両方を、シリコンにより構成される素子により構成する場合に比べて、電力損失を低減することができる。この結果、第1単相フルブリッジ回路および第2単相フルブリッジ回路の冷却機構部を小型化することができるので、第1単相フルブリッジ回路および第2単相フルブリッジ回路を同一のインバータユニットに容易に配置(単一のユニットとして容易に構成)することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上記のように、コンデンサに流れる脈動成分を低減することができ、コンデンサの責務を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態による電動機駆動装置の構成を示す回路図である。
図2】本発明の第1実施形態による基本波出力電圧(電圧ベクトル)を説明するための図である。
図3】本発明の第1実施形態による各インバータユニットの基本波出力電圧ベクトルを説明するための図である。
図4】本発明の第1実施形態による第1のインバータユニットにおける基本波出力電圧の波形および基本波出力電流の波形を示す図である。
図5】本発明の第1実施形態による第1電力と第2電力との合成された波形(合成波形)を説明するための図である。
図6】本発明の第2実施形態による電動機駆動装置の構成を示す回路図である。
図7】本発明の第2実施形態による第1単相フルブリッジ回路における基本波出力電圧(電圧ベクトル)を説明するための図である。
図8】本発明の第2実施形態による第2単相フルブリッジ回路における基本波出力電圧(電圧ベクトル)を説明するための図である。
図9】本発明の第2実施形態による各インバータユニットの基本波出力電圧ベクトルを説明するための図である。
図10】本発明の第2実施形態による第1電力と第2電力との合成された波形(合成波形)を示す図である。
図11】本発明の第1および第2実施形態の変形例による電動機駆動装置の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
[第1実施形態]
(電動機駆動装置の構成)
図1図5を参照して、第1実施形態による電動機駆動装置100の構成について説明する。
【0020】
図1に示すように、電動機駆動装置100は、直流電源101からの直流の電力を、複数相(n相:nは3以上の整数)の交流の電力に変換するとともに、複数相の交流の電力を電動機102(負荷)に出力するように構成されている。直流電源101は、好ましくは、単一の直流電源装置として構成されている。
【0021】
電動機102は、好ましくは、複数相(多相)巻線交流電動機(モーター)として構成されている。たとえば、電動機102は、船舶を推進させるためのプロペラを回転させるモータとして構成されている。具体的には、電動機102には、互いに絶縁されたn個の巻線120が設けられている。n個の巻線120は、複数の第1巻線121と複数の第2巻線122とを含む。複数の第1巻線121は、互いに絶縁されており、m個(mは3以上の整数)設けられている。複数の第2巻線122は、互いに絶縁されており、m個(mは3以上の整数)設けられている。ここで、mは、nの半数である。そして、m個の第1巻線121には、それぞれ、異なる相の交流の電力が供給される。また、m個の第2巻線122には、それぞれ、異なる相の交流の電力が供給される。すなわち、電動機102は、n相のモータとして構成されている。
【0022】
電動機駆動装置100は、電動機102に複数相の交流の電力を出力するm個のインバータユニット1を備える。なお、図1では、m個のインバータユニット1に、順に、符号「U1」、「U2」、・・・、「Um」を付すことにより互いに区別して図示している。また、各インバータユニット1と電動機102とは、たとえば、配線103(符号W11、W12、・・・、W1m、W21、W22、・・・、W2m)により接続されている。具体的には、第1(U1)のインバータユニット1と電動機102とは、配線103(W11およびW21)を介して接続されている。また、第m(Um)のインバータユニット1と電動機102とは、配線103(W1mおよびW2m)を介して接続されている。
【0023】
m個のインバータユニット1には、それぞれ、第1巻線121に接続された第1単相フルブリッジ回路10と、第2巻線122に接続された第2単相フルブリッジ回路20と、第1単相フルブリッジ回路10の直流電源101側の電源側正極端子11および電源側負極端子12に接続されているとともに、第2単相フルブリッジ回路20の直流電源101側の電源側正極端子21および電源側負極端子22に接続されている共通コンデンサ30と、筐体40とが設けられている。たとえば、第1単相フルブリッジ回路10と第2単相フルブリッジ回路20と共通コンデンサ30とは、共通の筐体40に配置(実装)されている。また、直流電源101の正極端子P(P1、P2、・・・、Pm)と、負極端子N(N1、N2、・・・、Nm)とは、第1単相フルブリッジ回路10および第2単相フルブリッジ回路20に、それぞれ、接続されている。また、直流電源101から正極端子P1に入力される電流をid1aとする。また、第1単相フルブリッジ回路10に流入する電流をid1-1とし、第2単相フルブリッジ回路20に流入する電流をid2-1する。また、共通コンデンサ30から流れる電流をic1とすると、上記式(11)が成り立つ。なお、第1のインバータユニット1に限らず、第2~第mのインバータユニット1においても、上記式(11)と同様の関係が成り立つ。
【0024】
m個のインバータユニット1の各第1単相フルブリッジ回路10は、電圧va1-1、va1-2、・・・、va1-m(以下、特に区別しない場合、「電圧va1」とする)を出力し、各第2単相フルブリッジ回路20は、電圧va2-1、va2-2、・・・、va2-m(以下、特に区別しない場合、「電圧va2」とする)を出力する。以下、m個のインバータユニット1のうちの第1(U1)のインバータユニット1について説明するが、第2(U2)~第m(Um)のインバータユニット1は、第1のインバータユニット1と同様に構成されているため、説明を省略する。なお、電圧va1は、特許請求の範囲の「第1基本波出力電圧」の一例であり、電圧va2は、特許請求の範囲の「第2基本波出力電圧」の一例である。
【0025】
ここで、第1実施形態では、電動機駆動装置100は、m=6として、n=12として構成されている。すなわち、電動機駆動装置100は、12相の交流の電力を出力するように構成されている。また、電動機102は、12相の交流電動機として構成されている。
【0026】
第1単相フルブリッジ回路10および第2単相フルブリッジ回路20は、それぞれ、単相インバータ動作を行う回路として構成されている。具体的には、第1単相フルブリッジ回路10では、複数(たとえば、4個)のスイッチング素子13と、複数のスイッチング素子13のそれぞれに逆並列に接続されたダイオード14とにより、フルブリッジ回路が構成されている。第2単相フルブリッジ回路20においても、第1単相フルブリッジ回路10と同様に、スイッチング素子23およびダイオード24からなるフルブリッジ回路が構成されている。
【0027】
ここで、第1実施形態では、スイッチング素子13および23、および、ダイオード14および24、のうちの少なくとも一方、好ましくは両方が、炭化珪素(SiC)を含む。スイッチング素子13および23は、たとえば、炭化珪素を含む電界効果型の半導体素子(SiC-MOSFET)として構成されている。ダイオード14および24は、たとえば、炭化珪素を含むフリーホイールダイオード(SiC-FWD)である。
【0028】
そして、第1単相フルブリッジ回路10の出力側端子15aおよび15bは、対応する第1巻線121に配線103(符号W11)を介して接続されている。第1単相フルブリッジ回路10は、電圧va1-1を出力する。その結果、第1巻線121には基本波出力電流ia1-1(以下「電流ia1-1」とする)が流れる。このとき、第1単相フルブリッジ回路10から出力される電力を第1電力p1-1とする。
【0029】
また、第2単相フルブリッジ回路20の出力側端子25aおよび25bは、対応する第2巻線122に配線103(符号W21)を介して接続されている。第2単相フルブリッジ回路20は、電圧va2-1を出力する。その結果、第2巻線122には、基本波出力電流ia2-1(以下「電流ia2-1」とする)が流れる。このとき、第2単相フルブリッジ回路20から出力される電力を第2電力p2-1とする。
【0030】
電動機駆動装置100には、制御部50が設けられている。制御部50は、第1単相フルブリッジ回路10に設けられている各スイッチング素子13、および、第2単相フルブリッジ回路20に設けられている各スイッチング素子23に制御信号(ゲート駆動信号)を伝達することにより、各スイッチング素子13および各スイッチング素子23を駆動させる(オンオフさせる)ように構成されている。
【0031】
また、第1単相フルブリッジ回路10の電源側正極端子11と、第2単相フルブリッジ回路20の電源側正極端子21とは、直流電源101の正極端子P(P1)に接続されている。また、第1単相フルブリッジ回路10の電源側負極端子12と、第2単相フルブリッジ回路20の電源側負極端子22とは、直流電源101の負極端子N(N1)に接続されている。
【0032】
ここで、第1実施形態では、共通コンデンサ30は、たとえば、単一のコンデンサC1として構成されている。具体的には、共通コンデンサ30は、直流電源101と、第1単相フルブリッジ回路10および第2単相フルブリッジ回路20との間に配置されており、インバータユニット1における平滑コンデンサ(直流コンデンサ)として機能する。具体的には、共通コンデンサ30の正極端子31は、第1単相フルブリッジ回路10の電源側正極端子11および第2単相フルブリッジ回路20の電源側正極端子21と、正極端子P(P1)に接続されている。また、共通コンデンサ30の負極端子32は、第1単相フルブリッジ回路10の電源側負極端子12および第2単相フルブリッジ回路20の電源側負極端子22と、負極端子N(N1)に接続されている。
【0033】
(制御部の構成)
制御部50は、たとえば、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)からなり、制御プログラムに基づいて、m個のインバータユニット1の各第1単相フルブリッジ回路10から出力される電圧va1-1、va1-2、・・・、va1-mおよび各第2単相フルブリッジ回路20から出力される電圧va2-1、va2-2、・・・、va2-mの振幅、周波数および位相を制御するように構成されている。また、制御部50には、ゲート駆動回路が設けられており、ゲート駆動回路は各スイッチング素子13および各スイッチング素子23にゲート駆動信号を伝達するように構成されている。
【0034】
ここで、第1実施形態では、制御部50は、第1(U1)のインバータユニット1において、第1巻線121に出力される電力p1-1と、第2巻線122に出力される電力p2-1との共通コンデンサ30における合成波形の脈動成分の振幅が、電力p1-1または電力p2-1のいずれか一方の脈動成分の振幅VIの2分の1以下となるように、第1単相フルブリッジ回路10と第2単相フルブリッジ回路20とを制御するように構成されている。
【0035】
具体的には、第1のインバータユニット1において、第2単相フルブリッジ回路20は、第1単相フルブリッジ回路10が接続される第1巻線121との位相差が60度以上120度以下となる第2巻線122に接続されている。そして、第2単相フルブリッジ回路20は、第1単相フルブリッジ回路10が第1巻線121に対して出力する第1電圧va1-1に対して60度以上120度以下の位相差となる第2電圧va2-1を出力する。
【0036】
好ましくは、第1実施形態では、同一のインバータユニット1において、第1単相フルブリッジ回路10は第1巻線121に接続されており、図2に示すように、第2単相フルブリッジ回路20は第1巻線121と最も90度に近い位相差となる第2巻線122に接続されている。したがって、第2単相フルブリッジ回路20は、第1単相フルブリッジ回路10が出力する第1電圧va1の位相に対して最も90度に近い位相差である第2電圧va2を出力する。
【0037】
すなわち、制御部50は、同一のインバータユニット1において、第1電圧va1の位相と、第2電圧va2の位相との位相差が、60度以上120度以下(好ましくは、略90度)となるように、第1単相フルブリッジ回路10および第2単相フルブリッジ回路20を制御するように構成されている。
【0038】
具体的には、図2に示すように、制御部50は、m個のインバータユニット1の第1単相フルブリッジ回路10からm個の第1巻線121に出力される電圧va1-1、va1-2、・・・、va1-mを制御するとともに、m個のインバータユニット1の第2単相フルブリッジ回路20からm個の第2巻線122に出力される電圧va2-1、va2-2、・・・、v2-mを制御するように構成されている。
【0039】
すなわち、制御部50は、m個のインバータユニット1から電動機102のn相(12相)の巻線に対して出力され、基本波出力電圧ベクトルvb1、vb2、・・・、vbn(12)(以下、「電圧ベクトルvb」とする)が等角度間隔で(基本波出力電圧が等しい位相差をもって)出力されるように、各インバータユニット1の出力電圧を制御するように構成されている。詳細には、制御部50は、電圧ベクトルvb同士の位相差が、360度をnにより除した角度分ずれるように各第1単相フルブリッジ回路10および各第2単相フルブリッジ回路20の出力電圧を制御するように構成されている。なお、360度をnにより除した角度は、特許請求の範囲の「所定角度」の一例である。また、電圧ベクトルvbx(xは奇数)は、特許請求の範囲の「第1電圧ベクトル」の一例である。また、電圧ベクトルvby(yは偶数)は、特許請求の範囲の「第2電圧ベクトル」の一例である。
【0040】
図2に示すように、m=6とすると、制御部50は、電圧va1-1、va1-2、および、va1-3の位相が順に30度ずつずれるように、かつ、電圧va1-4、va1-5、および、va1-6の位相が順に30度ずつずれるように、さらに電圧va1-1と電圧va1-4の位相差が180度となるように、各第1単相フルブリッジ回路10を制御するように構成されている。また、制御部50は、電圧va2-1、va2-2、および、va2-3の位相が順に30度ずつずれるように、かつ、電圧va2-4、va2-5、および、va2-6の位相が順に30度ずつずれるように、さらに電圧va2-1と電圧va2-4の位相差が180度となるように、各第2単相フルブリッジ回路20を制御するように構成されている。
【0041】
たとえば、図2の例では、第1のインバータユニット1において、第1単相フルブリッジ回路10が第1巻線121に接続されており、第2単相フルブリッジ回路20は第1巻線121と90度の位相差となる第2巻線122に接続されている。この場合、第1単相フルブリッジ回路10が出力する電圧va1-1(電圧ベクトルvb1)の位相と第2単相フルブリッジ回路20が出力する電圧va2-1(電圧ベクトルvb4)の位相との位相差は、90度である。第2のインバータユニット1~第6のインバータユニット1においても、第1のインバータユニット1と同様に、第1単相フルブリッジ回路10が出力する電圧va1-2~1-6の位相と第2単相フルブリッジ回路20が出力する電圧va2-2~2-6の位相との位相差は、それぞれ、90度である。
【0042】
これにより、図4に示すように、電圧va1-1の波形(正弦波)の位相と、電圧va2-1の波形(正弦波)の位相とは、90度(=π/2)の位相差となる。電流ia1-1の波形(正弦波)の位相と、電流ia2-1の波形(正弦波)の位相とは、90度(=π/2)の位相差となる。なお、図4では、力率がcosθ=0.8となる例を示している。また、電圧va1-1の振幅および電圧va2-1の波形の振幅を、Vとし、電流ia1-1の振幅および電流ia2-1を、Iとした場合、電力p1-1の波形は、以下の式(15)により表され、電力p2-1の波形は、以下の式(16)により表される。
【数9】
【0043】
この場合、図5に示すように、電力p1-1と電力p2-1とが合成された電力(p1-1+p2-1)の波形は、0.8VIとなり、一定値となる。すなわち、電力(p1-1+p2-1)は、以下式(17)により表される。
【数10】
【0044】
これにより、第1実施形態では、第1のインバータユニット1において、電力(p1-1+p2-1)の脈動成分は、略0(高調波成分等を無視した場合、0)となる。したがって、第1のインバータユニット1において、共通コンデンサ30に流れる電流の脈動成分が低減される。そして、第2(U2)~第6(U6)のインバータユニット1においても、第1のインバータユニット1と同様に、共通コンデンサ30に流れる電流の脈動成分が低減される。
【0045】
[第1実施形態の効果]
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0046】
第1実施形態では、上記のように、m個のインバータユニット1には、それぞれ、第1単相フルブリッジ回路10と第2単相フルブリッジ回路20および単一の共通コンデンサ30を設ける。これにより、単相フルブリッジ回路と平滑コンデンサとを備えたm個のインバータユニットを2組設ける場合に比べて、部品点数を低減することができる。
【0047】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部50を、同一のインバータユニット1において、第1電圧va1と第2電圧va2との位相差が60度以上120度以下となるように、第1単相フルブリッジ回路10と第2単相フルブリッジ回路20とを制御するように構成する。これにより、共通コンデンサ30に流れる電流の脈動成分の振幅を、1つの単相フルブリッジ回路のみがコンデンサに接続されている場合の振幅の2分の1以下に抑制することができる。これにより、共通コンデンサ30に流れる脈動成分を低減することができ、共通コンデンサ30の責務を低減することができる。
【0048】
また、第1実施形態では、上記のように、制御部50を、第1電圧va1と第2電圧va2との位相差が、基本波出力電圧同士の位相差のうちの最も90度に近い位相差に対応する状態となるように、第1単相フルブリッジ回路10および第2単相フルブリッジ回路20を制御するように構成する。これにより、インバータユニット1において、第1電圧va1と第2電圧va2との位相差が略90度となるように、第1単相フルブリッジ回路10と第2単相フルブリッジ回路20とを制御することができる。この結果、共通コンデンサ30に流れる脈動成分をより一層低減することができる。これにより、共通コンデンサ30における電力損失を大幅に低減することができ、インバータユニット1の効率を向上することができる。また、共通コンデンサ30に流れる脈動成分をより一層低減することができることにより、共通コンデンサ30の温度上昇を抑制することができ、共通コンデンサ30の長寿命化を図ることができる。そして、共通コンデンサ30に流れる脈動成分をより一層低減することができるので、共通コンデンサ30の容量を小さくすることができ、共通コンデンサ30をより一層小型化することができる。
【0049】
また、第1実施形態では、上記のように、スイッチング素子13(23)およびダイオード14(24)の少なくとも一方は、炭化珪素を含む。これにより、スイッチング素子13(23)およびダイオード14(24)の両方を、シリコンにより構成される素子により構成する場合に比べて、電力損失を低減することができる。この結果、第1単相フルブリッジ回路10および第2単相フルブリッジ回路20の冷却機構部を小型化することができるので、第1単相フルブリッジ回路10および第2単相フルブリッジ回路20を同一のインバータユニット1に容易に配置(単一のユニットとして容易に構成)することができる。
【0050】
[第2実施形態]
次に、図6図10を参照して、第2実施形態の電動機駆動装置200の構成について説明する。第2実施形態による電動機駆動装置200では、mが偶数として構成されていた第1実施形態による電動機駆動装置100と異なり、mが奇数として構成され、奇数のm相の交流の電力が電動機302に供給されるように構成されている。なお、上記第1実施形態と同一の構成については、図中において同じ符号を付して図示し、その説明を省略する。
【0051】
図6に示すように、第2実施形態では、電動機駆動装置200は、奇数のm個のインバータユニット201と、各インバータユニット201の駆動を制御する制御部250とを含む。m個の各インバータユニット201には、第1単相フルブリッジ回路210と第2単相フルブリッジ回路220と、第1単相フルブリッジ回路210と第2単相フルブリッジ回路220とに接続されている共通コンデンサ30とが設けられている。また、電動機302には、n個(mの2倍)の巻線320が設けられている。そして、第1単相フルブリッジ回路210は、巻線320のうちの第1巻線321に接続されている。第2単相フルブリッジ回路220は、巻線320のうちの第2巻線322に接続されている。
【0052】
第2実施形態では、制御部250は、m個のインバータユニット201において、図7に示す第1巻線321に出力されるm相の電圧va11-1~va11-m(以下、特に区別しない場合、「電圧va11」とする)と、図8に示す第2巻線322に出力されるm相の電圧va12-1~va12-m(以下、特に区別しない場合、「電圧va12」とする)とが同期するように第1単相フルブリッジ回路210および第2単相フルブリッジ回路220を制御する。
【0053】
具体的には、制御部250は、各インバータユニット201の第1単相フルブリッジ回路210の電圧ベクトルvb11-1~vb11-mを、360度をmにより除した位相差になるように制御するように構成されている。また、制御部250は、各インバータユニット201の第2単相フルブリッジ回路220の電圧ベクトルvb12-1~vb12-mを、360度をmにより除した位相差になるように制御するように構成されている。なお、360度をmにより除した位相差は、特許請求の範囲の「所定角度」の一例である。また、電圧ベクトルvb11-1~vb11-mは、特許請求の範囲の「第1の基本波出力電圧ベクトル群」の一例であり、電圧ベクトルvb12-1~vb12-mは、特許請求の範囲の「第2の基本波出力電圧ベクトル群」の一例である。
【0054】
そして、制御部250は、電圧va11-1(電圧ベクトルvb11-1)と電圧va12-1(電圧ベクトルvb12-1)とが同一の位相になるように、電圧va11-2と電圧va12-2とが同一の位相になるように、・・・、電圧va11-mと電圧va12-mとが同一の位相になるように各インバータユニット201の駆動を制御するように構成されている。すなわち、電圧va11-1~va11-mが印加される第1巻線321は、m相の第1の群の巻線を構成する。また、電圧va12-1~va12-mが印加される第2巻線322は、m相の第2の群の巻線を構成する。
【0055】
ここで、第2実施形態では、制御部250は、同一のインバータユニット201において、電圧va11の位相と、電圧va12の位相との位相差が、第1巻線321に出力されるm相の電圧va11-1~va11-mと、第2巻線322に出力されるm相の電圧va12-1~va12-mとの位相差のうちの最も90度に近い位相差(電圧ベクトルの組み合わせとなる)となるように、第1単相フルブリッジ回路210と第2単相フルブリッジ回路220とを制御する。
【0056】
たとえば、m=11の場合、11個のインバータユニット201は、図7に示す第1巻線321に出力される11相の電圧va11-1~va11-11と、図8に示す第2巻線322に出力される11相の電圧va12-1~va12-11とが同期するように交流の電力が出力されるように構成されている。詳細には、制御部250は、電圧va11-1(電圧ベクトルvb11-1)と電圧va12-1(電圧ベクトルvb12-1)とが同一の位相になるように、電圧va11-2と電圧va12-2とが同一の位相になるように、・・・、電圧va11-11と電圧va12-11とが同一の位相になるように各インバータユニット201の駆動を制御するように構成されている。
【0057】
この場合、電圧ベクトルvb11-1と位相差が最も90度に近い値となるのは、電圧ベクトルvb11-4(vb12-4)および電圧ベクトルvb11-9(vb12-9)であり、98.2度(6π/11)となる。この場合、第2実施形態では、第1(U1)のインバータユニット201では、第1単相フルブリッジ回路210には、電圧ベクトルvb11-1に対応する電圧va11-1が印加されるとともに、第2単相フルブリッジ回路220には、電圧ベクトルvb12-4に対応する電圧va12-4が印加されるように、制御部により制御される。図9に示すように、第1のインバータユニット201以外の各インバータユニット201においても、第1単相フルブリッジ回路210に印加される電圧と、第2単相フルブリッジ回路220に印加される電圧との位相差が、98.2度(6π/11)となるように、制御部250により制御される。
【0058】
そして、図10に、力率cosθを、第1実施形態と同様に、0.8を例とした場合に、電圧v11-1に対応する第1単相フルブリッジ回路210から出力される電力である第1電力p11-1と、電圧v12-4に対応する第2単相フルブリッジ回路220から出力される電力である第2電力p12-4と、第1電力p11-1と第2電力p12-4とが合成された波形(電力(p11-1+p12-4))を示す。この合成された波形は、上記式(17)において、α=6π/11(98.2度)とした波形に相当する。この場合、合成された波形の振幅は、約0.07×VIとなり、第1電力p11-1または第2電力p12-4の一方の振幅0.5×VIに比べて小さくなる。また、第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態の構成と同様である。
【0059】
[第2実施形態の効果]
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0060】
第2実施形態では、上記のように、mは、nの半数でかつ奇数であり、制御部250を、m個のインバータユニット201から出力され、互いに360度をmにより除した位相差となるm個の電圧ベクトルvb11-1~11-mの群を構成するとともに、互いに360度をmにより除した位相差となるm個の電圧ベクトルvb12-1~12-mの群を構成ように、第1単相フルブリッジ回路210および第2単相フルブリッジ回路220を制御するように構成する。これにより、奇数であるm相の電力が供給される電動機302を駆動させる場合でも、奇数のm個のうちの1つの第1単相フルブリッジ回路210と、奇数のm個のうちの1つの第2単相フルブリッジ回路220とを同一のインバータユニット201に設けて、駆動させることができる。この結果、奇数であるm相の電力が供給される電動機302を駆動させる場合にも、電動機302を駆動させるため全てのインバータユニット201から出力される電力の脈動成分の振幅を低減することができるので、電動機駆動装置200に配置される全ての共通コンデンサ30において、電力損失の低減、温度上昇の抑制および長寿命化を行うことができる。なお、第2実施形態のその他の効果は、第1実施形態の効果と同様である。
【0061】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0062】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、同一のインバータユニットに、2つの単相フルブリッジ回路(第1単相フルブリッジ回路および第2単相フルブリッジ回路)を設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。すなわち、同一のインバータユニットに、3つ以上の単相フルブリッジ回路を設けてもよい。
【0063】
たとえば、図11に示す変形例によるインバータユニット401では、第1単相フルブリッジ回路402および第2単相フルブリッジ回路403に加えて、第3単相フルブリッジ回路404が設けられている。そして、インバータユニット401に設けられている共通コンデンサ430は、第1単相フルブリッジ回路402、第2単相フルブリッジ回路403、および、第3単相フルブリッジ回路404の平滑コンデンサとして機能する。そして、同一のインバータユニット401において、第1単相フルブリッジ回路402の電圧va21の位相と、第2単相フルブリッジ回路403の電圧va22の位相との位相差が、60度に近い値(たとえば、60度)となるとともに、電圧va22の位相と第3単相フルブリッジ回路404の電圧va23の位相との位相差が、60度に近い値(たとえば、60度)となるとともに、電圧va23の位相と電圧va21の位相との位相差が、60度に近い値(たとえば、60度)となるように、第1単相フルブリッジ回路402と第2単相フルブリッジ回路403と第3単相フルブリッジ回路404とが、制御部450により制御されるように構成されている。
【0064】
また、上記第1および第2実施形態では、同一のインバータユニットにおいて、電圧va1(電圧va11)の位相と電圧va2(電圧va12)の位相との位相差が90度(98.2度)とする例を示したが、本発明は、これに限られない。すなわち、同一のインバータユニットに2つの単相フルブリッジ回路を設ける場合、位相差を60度以上120度以下の範囲内において、90度および98.2度以外の大きさになるように、電動機駆動装置を構成してもよい。
【0065】
また、上記第1実施形態では、mを6とするとともに、nを12とする例を、上記第2実施形態では、mを11とするともに、nを22とする例を示したが、本発明は、これに限られない。すなわち、mを6および11以外の3以上の整数として、nを12および22以外の3以上の整数として電動機駆動装置を構成してもよい。
【0066】
また、上記第1および第2実施形態では、スイッチング素子およびダイオードのうちの少なくとも一方を、炭化珪素を含むように構成する例を示したが、本発明は、これに限られない。スイッチング素子およびダイオードにおける損失の増大および大型化が問題なければ、スイッチング素子およびダイオードの両方を、シリコンからなる素子により構成してもよい。
【0067】
また、上記第1および第2実施形態では、共通コンデンサを単一のコンデンサにより構成する例を示したが、本発明は、これに限られない。すなわち、共通コンデンサを複数のコンデンサにより構成してもよい。
【符号の説明】
【0068】
1、201、401 インバータユニット
10、210、402 第1単相フルブリッジ回路
11、21 電源側正極端子(直流電源側の端子、単相フルブリッジ回路の端子)
12、22 電源側負極端子(直絵電源側の端子、単相フルブリッジ回路の端子)
13、23 スイッチング素子
14、24 ダイオード
20、220、403 第2単相フルブリッジ回路
30、430 共通コンデンサ
50、250、450 制御部
100、200 電動機駆動装置
101 直流電源
102、302 電動機
120、320 巻線
121、321 第1巻線(第1の巻線)
122、322 第2巻線(第2の巻線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11