(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】マニュアル管理装置、マニュアル管理システム、および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20220621BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20220621BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06Q50/04
(21)【出願番号】P 2018125311
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-06-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】杉本 泰明
(72)【発明者】
【氏名】能西 豊茂
(72)【発明者】
【氏名】武田 美智也
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-040160(JP,A)
【文献】特開2007-323222(JP,A)
【文献】特開2011-034234(JP,A)
【文献】特開2006-190166(JP,A)
【文献】特開2018-045395(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0175013(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業マニュアルに対応する1つ以上の作業工程を所定の習熟度の作業者が実際に行った作業を示す第1作業データと、前記所定の習熟度よりも低い習熟度の作業者により行われた前記作業工程の作業を示す第2作業データと、を取得する取得部と、
取得した前記第2作業データを前記第1作業データと比較することで、前記作業工程を比較する比較部と、
前記比較部の比較結果で、前記第1作業データの作業時間に対する前記第2作業データの作業時間の長さが所定値以上長い、もしくは比率が所定値以上大きい前記作業工程、または、特定の作業に関する動作が異なる前記作業工程を抽出する抽出部と、
前記抽出部が抽出した前記作業工程を暗黙知の情報を含む作業工程と判定し、抽出した前記作業工程を特定する情報とともに該作業工程を含む前記作業マニュアルに対する改善を促す改善通知を行う通知部と、
を備える、マニュアル管理装置。
【請求項2】
前記第1、第2作業データは、カメラにより、作業者により行われた前記作業工程を撮影した画像データである、請求項1に記載のマニュアル管理装置。
【請求項3】
前記第1作業データを行った前記作業者は、前記作業マニュアルの作成者、または該作成者と同レベルの習熟度の作業者である、請求項1または請求項2に記載のマニュアル管理装置。
【請求項4】
前記通知部は、通知先として、前記作業マニュアルの作成者、または管理者の少なくとも一方に対して、前記改善を促す改善通知を行う、請求項1から請求項3のいずれかに記載のマニュアル管理装置。
【請求項5】
前記取得部は、異なる作業者それぞれにより行われた前記作業工程の作業を記録した前記第2作業データを複数取得し、
前記通知部は、前記抽出部により、前記第1作業データとの比較により、複数の前記第2作業データで共通して抽出した前記作業工程があれば、該作業工程に前記暗黙知の情報が含まれると判定する、請求項1から請求項4のいずれかに記載のマニュアル管理装置。
【請求項6】
前記取得部は、前記作業者の前記習熟度を示す属性情報を記録した記憶部から、前記属性情報を取得し、
前記通知部の前記改善通知には、前記第2作業データに記録された前記作業工程を行った前記作業者の前記習熟度を示す属性情報が含まれる、請求項1から請求項5のいずれかに記載のマニュアル管理装置。
【請求項7】
作業工程の作業を記録する記録装置と、
1つ以上の作業工程を所定の習熟度の作業者が実際に行った作業を示す第1作業データと、作業マニュアルを関連付けて記憶した記憶部と、
請求項1から請求項6のいずれかに記載のマニュアル管理装置と、を備え、
前記マニュアル管理装置の比較部は、前記記録装置により記録された、前記所定の習熟度よりも低い習熟度の作業者により行われた前記作業工程の作業を示す第2作業データを、前記記憶部に記憶されている前記第1作業データと比較することで、前記作業工程を比較する、マニュアル管理システム。
【請求項8】
前記記録装置は、作業工程の作業を撮影するカメラであり、
前記第1作業データ、および前記第2作業データは、作業工程の作業を撮影した画像データである、請求項7に記載のマニュアル管理システム。
【請求項9】
作業マニュアルに対応する1つ以上の作業工程を所定の習熟度の作業者が実際に行った作業を示す第1作業データと、前記所定の習熟度よりも低い習熟度の作業者により行われた前記作業工程の作業を示す第2作業データと、を取得するステップ(a)と、
取得した前記第2作業データを前記第1作業データと比較することで、前記作業工程を比較するステップ(b)と、
前記ステップ(b)の比較結果で、前記第1作業データの作業時間に対する前記第2作業データの作業時間の長さが所定値以上長い、もしくは比率が所定値以上大きい前記作業工程、または、特定の作業に関する動作が異なる前記作業工程を抽出するステップ(c)と、
前記ステップ(c)で抽出した前記作業工程を暗黙知の情報を含む作業工程と判定し、抽出した前記作業工程を特定する情報とともに該作業工程を含む前記作業マニュアルに対する改善を促す改善通知を行うステップ(d)と、を含む処理をコンピューターに実行させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マニュアル管理装置、マニュアル管理システム、および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、製品の生産現場の作業工程や、製品のメンテナンスや導入を行う際の作業工程では、作業手順を示す作業マニュアルを作成する。そして、初めて作業を行う作業者は、この作業マニュアルを参照しながら、作業手順を学習する。この作業マニュアルも、書類形式のものだけではなく、動画で作成した作業マニュアルが用いられている。この動画の作業マニュアルは、作業手順を十分理解した熟練者が行う作業工程を撮影し、その撮影画像を作業マニュアルとして用いるものである。
【0003】
また、特許文献1では、生産現場での作業工程のムダの原因究明を行う画像処理装置が開示されている。この画像処理装置では、ワンサイクル作業の映像データを、標準作業を撮影した映像データと比較し、標準作業と比較した作業時間のずれに応じて、各工程のタイムチャートを色分けして表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、2つの映像データを比較することで、ワンサイクル作業の効率性などの動作分析を行えるが、問題となるのはあくまで停滞等が生じる作業そのもので、作業自体の改善が言及されている。しかし、作業自体に問題がなくても作業内容の伝わり方が習熟度の低いユーザーによってばらつきがあり、それが原因で作業が滞る場合があった。そのため、習熟度の低い様々なユーザーが作業を行う度に上記課題が発生し作業効率を十分に効率化するには至らなかった。
【0006】
特に作業マニュアルは、一般に、作業の習熟度が高い、いわゆる熟練者が作成したり、この熟練者の監修の元で作成したりする。熟練者は、自分の知識や習熟度をベースとして、作業マニュアルを作成しがちであり、そのため、意識せずに行っている暗黙知が作業マニュアル内に含まれない場合がある。このような状況下、習熟度の低い者にとっては、作業マニュアルに必要な情報が不足することになる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、暗黙知も踏まえて作業の改善をより効果的に行うためのマニュアル管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0009】
(1)作業マニュアルに対応する1つ以上の作業工程を所定の習熟度の作業者が実際に行った作業を示す第1作業データと、前記所定の習熟度よりも低い習熟度の作業者により行われた前記作業工程の作業を示す第2作業データと、を取得する取得部と、
取得した前記第2作業データを前記第1作業データと比較することで、前記作業工程を比較する比較部と、
前記比較部の比較結果で、前記第1作業データの作業時間に対する前記第2作業データの作業時間の長さが所定値以上長い、もしくは比率が所定値以上大きい前記作業工程、または、特定の作業に関する動作が異なる前記作業工程を抽出する抽出部と、
前記抽出部が抽出した前記作業工程を暗黙知の情報を含む作業工程と判定し、抽出した前記作業工程を特定する情報とともに該作業工程を含む前記作業マニュアルに対する改善を促す改善通知を行う通知部と、
を備える、マニュアル管理装置。
【0010】
(2)前記第1、第2作業データは、カメラにより、作業者により行われた前記作業工程を撮影した画像データである、上記(1)に記載のマニュアル管理装置。
【0011】
(3)前記第1作業データを行った前記作業者は、前記作業マニュアルの作成者、または該作成者と同レベルの習熟度の作業者である、上記(1)または上記(2)に記載のマニュアル管理装置。
【0012】
(4)前記通知部は、通知先として、前記作業マニュアルの作成者、または管理者の少なくとも一方に対して、前記改善を促す改善通知を行う、上記(1)から上記(3)のいずれかに記載のマニュアル管理装置。
【0013】
(5)前記取得部は、異なる作業者それぞれにより行われた前記作業工程の作業を記録した前記第2作業データを複数取得し、
前記通知部は、前記抽出部により、前記第1作業データとの比較により、複数の前記第2作業データで共通して抽出した前記作業工程があれば、該作業工程に前記暗黙知の情報が含まれる判定する、上記(1)から上記(4)のいずれかに記載のマニュアル管理装置。
【0014】
(6)前記取得部は、前記作業者の前記習熟度を示す属性情報を記録した記憶部から、前記属性情報を取得し、
前記通知部の前記改善通知には、前記第2作業データに記録された前記作業工程を行った前記作業者の前記習熟度を示す属性情報が含まれる、上記(1)から上記(5)のいずれかに記載のマニュアル管理装置。
【0015】
(7)作業工程の作業を記録する記録装置と、
1つ以上の作業工程を所定の習熟度の作業者が実際に行った作業を示す第1作業データと、作業マニュアルを関連付けて記憶した記憶部と、
上記(1)から上記(6)のいずれかに記載のマニュアル管理装置と、を備え、
前記マニュアル管理装置の比較部は、前記記録装置により記録された、前記所定の習熟度よりも低い習熟度の作業者により行われた前記作業工程の作業を示す第2作業データを、前記記憶部に記憶されている前記第1作業データと比較することで、前記作業工程を比較する、マニュアル管理システム。
【0016】
(8)前記記録装置は、作業工程の作業を撮影するカメラであり、
前記第1作業データ、および前記第2作業データは、作業工程の作業を撮影した画像データである、上記(7)に記載のマニュアル管理システム。
【0017】
(9)作業マニュアルに対応する1つ以上の作業工程を所定の習熟度の作業者が実際に行った作業を示す第1作業データと、前記所定の習熟度よりも低い習熟度の作業者により行われた前記作業工程の作業を示す第2作業データと、を取得するステップ(a)と、
取得した前記第2作業データを前記第1作業データと比較することで、前記作業工程を比較するステップ(b)と、
前記ステップ(b)の比較結果で、前記第1作業データの作業時間に対する前記第2作業データの作業時間の長さが所定値以上長い、もしくは比率が所定値以上大きい前記作業工程、または、特定の作業に関する動作が異なる前記作業工程を抽出するステップ(c)と、
前記ステップ(c)で抽出した前記作業工程を暗黙知の情報を含む作業工程と判定し、抽出した前記作業工程を特定する情報とともに該作業工程を含む前記作業マニュアルに対する改善を促す改善通知を行うステップ(d)と、を含む処理をコンピューターに実行させるための制御プログラム。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、所定の習熟度の作業者により行われた作業を示す第1作業データと、これよりも低い習熟度の作業者により行われた作業を示す第2作業データとを比較し、この比較結果により抽出した作業工程の作業マニュアルに対する改善を促す通知を行う。これにより、通知を受けた作業マニュアルの管理者等は、改善が必要なことを知ることができ、ひいては、作業マニュアルおよび作業を適切に改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】マニュアル管理システムの全体構成を示す図である。
【
図2】マニュアル管理装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】記憶部に記憶されるユーザーリストの例を示す図である。
【
図4】端末装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図5】マニュアル管理装置の機能を示す機能ブロック図である。
【
図6】記憶部に記憶された通知先リストの例を示す図である。
【
図7A】第1の実施形態における作業マニュアルの改善処理の手順を示すフローチャートである。
【
図8】作業マニュアルの抽出結果、および改善要リストの例を示す図である。
【
図9】作業マニュアルの編集画面の例を示す図である。
【
図10A】作業マニュアルの編集画面(編集前)の例を示す図である。
【
図10B】作業マニュアルの編集画面(編集後)の例を示す図である。
【
図11】第2の実施形態における作業マニュアルの改善処理の手順を示すフローチャートである。
【
図12】作業マニュアルの抽出結果、および改善要リストの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0021】
(全体構成)
図1は本実施形態に係るマニュアル管理システムの全体構成を示す図である。
【0022】
図1に示すように、マニュアル管理システム1は、マニュアル管理装置10、およびカメラ20を備える。これらは、有線や無線によって、LAN(Local Area Network)、電話網またはデータ通信網等のネットワーク40を介して、端末装置30等の他の装置と相互に通信可能に接続される。ネットワーク40には、端末装置30が接続される。ネットワーク40は、通信信号を中継するリピーター、ブリッジ、ルーターまたはクロスコネクト等の中継機を備えてもよい。
【0023】
(マニュアル管理装置10)
図2は、マニュアル管理装置10の概略構成を示すブロック図である。マニュアル管理装置10は、いわゆるサーバーであり、制御部11、通信部12、および記憶部13を備え、これらはバスによって、相互に接続されている。
【0024】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、ならびにRAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、およびHDD(Hard Disk Drive)のメモリから構成される。メモリに保存したプログラムにしたがって各部の制御および演算処理を行う。
【0025】
通信部12は、ネットワーク40を介して、他の装置と通信するためのインターフェース回路(例えばLANカード等)である。
【0026】
記憶部13は、半導体メモリ、および/または磁気記録媒体メモリにより構成される。記憶部13は、データベースとして機能し、作業マニュアル、ユーザーリスト、等の各種情報を記憶する。マニュアル管理装置10と記憶部13は、一体で同じ筐体内に配置されてもよく、分離して配置されてもよい。マニュアル管理装置10、および記憶部13の一方、または両方は、カメラ20を設置した作業場と同じ建物内に設けられてもよく、遠隔地に設けられてネットワークを介して接続可能であってもよい。例えば、記憶部13は、インターネット等のネットワーク上に配置された複数のファイルサーバーによって仮想的に構築されるクラウドサーバーであってもよい。
【0027】
ここで「作業マニュアル」とは、装置、部品、設備等の物品や事象に関する、組立方法、交換方法、操作方法、導入方法等の作業の手順または動作の手順を示す、ユーザーに教示、説明することを目的としたマニュアルである。作業工程の作業手順を記録したこの作業マニュアルは、テキストデータや静止画で構成されるだけでなく、さらに動画や音声を含ませてもよい。本実施形態では、この作業マニュアルは、例えば、MFP(Multifunction Peripheral)のメンテナンス作業や導入作業(ネットワーク設定、認証設定等を含む)の作業工程をサービスマンに説明するための動画データである。この動画データには音声データも一緒に記録されている。この作業マニュアルの動画データは、カメラ20により、MFPのメンテナンス作業を行う指導者(後述する習熟度「高」の作業者)を撮影したものである。この作業マニュアルの動画データには、動画データへの編集作業により、説明を行うための字幕(キャプション)を追加してもよい。
【0028】
図3は、ユーザーリストの例である。「ユーザーリスト」には、UserID、氏名、入社年数、継続年数、経験回数、保有資格、および習熟度(習熟度レベル)が含まれる。以下においては、入社年数、継続年数、経験回数、保有資格、および習熟度を属性情報ともいう。UserIDは、主キーであり、社員番号とも称され、それぞれのユーザーに付与されたユニークな英数字番号である。入社年数は、会社への入社からの年数を示す。経験年数は、ある技術分野の経験年数である。例えば、MFPのサービスに関する技術分野の経験年数である。経験回数は、ある作業に関する経験回数である。例えばMFPが電子写真方式の画像形成部を備え、その感光体ドラムや定着装置に関するメンテナンス部品の交換を行う場合は、その交換回数である。これらは、保守交換のサービス業務を行う毎に、サービス内容毎にカウントアップされ、記憶部13に蓄積される。保有資格は、業務に関する資格を保有している場合に記録されるものである。
図3の例は、MFPのメンテナンスに関する社内資格を示している。習熟度は、業務に関する習熟度を示す指標であり、入社年数、継続年数、経験回数、および保有資格の少なくとも1つを加味して判定される。習熟度は、複数のレベル(層)に分けてもよい。本実施形態においては、例えば、入社年数に応じて3つのレベルに分けており、3年目以下を習熟度「低」、4~7年目を習熟度「中」、8年目以上を習熟度「高」のレベルに自動的に分類している。なお、この分類の閾値は、管理者が適宜変更してもよい。また、ユーザー個人の習熟度のレベルは、適正等の個別事情を考慮して、管理者が適宜、変更するようにしてもよい。
【0029】
(カメラ20)
カメラ20は、記録装置として機能する。カメラ20は、壁や天井などに設けられた固定カメラ、または撮影者が把持するハンディカメラである。これらの固定カメラとハンディカメラを組み合わせて用いてもよい。カメラ20は、作業工程の作業場を撮影する。例えば、カメラ20は、MFP50、およびその周辺を撮影する(
図1参照)。作業者91は、MFP50に関する作業を行い、その作業工程は、カメラ20により撮影される。カメラ20は、例えばビデオカメラであり、可視光によるカラーの映像を、音声と共に記録する。
【0030】
(端末装置30)
図4は、端末装置30の概略構成を示すブロック図である。端末装置30は、いわゆるPC(Personal Computer)であり、制御部31、通信部32、表示部33、および入力部34を備える。制御部31、通信部32は、上述の制御部11、通信部12と同様であることから説明を省略する。表示部33は、例えば液晶で構成されたディスプレイであり、入力部34は、キーボード、テンキー、マウス、等で構成される。作業マニュアルの管理者は、端末装置30を通じて、作業マニュアルに関する改善要望の通知を受けたり、表示部33に表示した改善要望の箇所の動画等の内容を参照しながら、入力部34を通じて作業マニュアルに対する編集作業を行ったりする。
【0031】
ユーザー92は、端末装置30からID、パスワード情報を入力することにより、または所持するIDカードのID情報を端末装置30の近距離無線方式の読取部(図示せず)によりスキャンさせることで、ログイン認証処理を行う。マニュアル管理装置10は、メールサーバーを介してログインしたユーザー92に対してeメールによる作業マニュアルの改善要望等の通知を行う。また、ログインしたユーザー92は、その権限に応じて、記憶部13に記憶している作業マニュアルの閲覧、編集作業(更新)を行える。これらの通知、編集作業については後述する。
【0032】
図5は、マニュアル管理装置10の機能を示す機能ブロック図である。マニュアル管理装置10の制御部11は、取得部111、比較部112、抽出部113、分析部114、通知部115、および編集部116として機能する。このうち取得部111、通知部115、および編集部116は、通信部12と協働することで実現される機能である。
【0033】
取得部111は、カメラ20の撮影により得られた画像データ(第1作業データ、第2作業データ)を取得する。例えば作業者91は、メンテナンス作業に関する習熟度「高」の作業者(以下、「熟練者」ともいう)であり、この熟練者による、実際に行った作業工程の作業を、カメラ20により撮影した画像データ(第1作業データ)は、作業マニュアルと関連付けて記憶される、あるいは、作業マニュアルとして記憶部13に記憶される。なお、この動画の作業マニュアルに、作業の内容や、注意事項を示す字幕を追記(重畳)してもよい。
【0034】
また、カメラ20により、習熟度「低」(「中」でもよい)の作業者による作業工程の作業を撮影する。取得部111は、この撮影により得られた画像データ(第2作業データ)を取得し、これを比較部112に送る。
【0035】
比較部112は、記憶部13に記憶していた第1作業データ(作業マニュアル)と、取得部111から送られた、カメラ20の撮影により得られた第2作業データとを比較する。この比較において比較部112は、第1作業データの動画データに含まれる1または複数の作業工程、および各作業工程に含まれる1または複数の作業を認識する。そして、第1作業データと同一の作業工程を撮影した第2作業データの対応する作業を認識する。そして、両作業データの認識した作業を比較する。例えば、対応する作業の作業時間を比較する、またはこれらの作業を複数含む作業工程の作業時間を比較する。あるいは、各作業の動作自体を比較する。例えば、作業工程が、部品交換に関するメンテナンス作業工程であれば、画像認識処理により、ネジを締める作業において、装置、または部品の位置に対するドライバーの挿入方向を比較する。
【0036】
この画像認識処理は、時間差分法、背景差分法、クラスタリング法、等の公知の種々の技術を適用できる。例えば、複数の撮影画像(動画像)から作業者、交換部品、装置等の物体のシルエット(以下、「物体シルエット」と称する)を検出する。物体シルエットは、例えば、連続した前後の画像を差分する時間差分法により差分が相対的に大きい画素の範囲を抽出することで検出され得る。また、物体シルエットは、撮影画像から予め記録しておいた背景画像を差分する背景差分法により検出されてもよい。また、物体シルエットは、画素値の色データの類似度から画素をクラスタリングすることで検出されてもよい。また、装置、交換部品、等の形、サイズ等の形状情報が事前に判明している人、装置、等の物体については、記憶部13にそのサイズ情報を登録しておき、その物体の形状情報とマッチングすることで、さらに物体の種類を識別するようにしてもよい。そして検出した物体シルエットから、物体の種類が作業者(人)である場合に、その作業者の動きを認識する。
【0037】
抽出部113は、比較結果により所定条件を満たす作業工程を抽出する。この所定条件は、時間の比較または動作の比較により行う。抽出結果の例については後述するが、主に以下の手法により作業工程の抽出を行う。
【0038】
時間の比較で行う場合、抽出部113は、第1作業データ(作業マニュアル)の作業工程の作業時間に対する、第2作業データの同じ作業工程の作業時間が所定時間以上長い作業工程を抽出する。または第1作業データの作業工程の作業時間に対する、第2作業データの作業工程の作業時間の比率が所定以上大きい作業工程を抽出する。例えば、第1作業データに作業工程1~5までが含まれていれば、その各作業工程の作業時間に対する、第2作業データの同じ作業工程1~5の作業時間の差分または比率をそれぞれ求める。そして、差分時間が5分以上の作業工程があれば、または比率が2倍以上の作業工程があれば、その作業工程を抽出する。
【0039】
動作の比較により行う場合、抽出部113は、比較部112が認識した作業者の動きから、作業工程に含まれる特定の作業に関する動作を比較する。特定の作業とは、例えば、ネジ締め作業、部品の移動作業、または装置の取付け順、もしくは装填順である。この特定の作業は、予め作業マニュアル毎に登録(選択)するようにしてもよい。上述のようにメンテナンス作業工程であれば、その中の1つのネジ締め作業において、ドライバーの挿入方向を比較する。また、装置から複数の部品を順に取り外したり、移動したり、取り付けたりする一連の作業の順番を認識し、第1作業データと第2作業データとの比較において、作業が異なれば、その作業工程を抽出する。この作業が異なるか否かの判断は、例えばドライバーの挿入方向であれば、上方向からの挿入と、左方向からの挿入では、動作が異なると判断できる。また作業の順番であれば、いずれかの作業の順序が入れ替わっていれば「作業が異なる」と判断できる。
【0040】
分析部114は、抽出部113が抽出した作業工程に暗黙知が含まれるか否かを判定する(すなわち作業マニュアルに暗黙知の情報が含まれていない)。分析部114は、第2の通知部であり、通知部115の一部として機能する。分析部114は、抽出部が抽出した作業工程を暗黙知の情報が含まれる作業工程と判定(推定)する。ここでいう「暗黙知」とは、言語化されていない、すなわち作業マニュアルに記述されていない主観的な知識である。これに対する概念として「形式知」がある。形式知とは、言語化された、すなわち作業マニュアルに記述された客観的な知識である。本実施形態に係るマニュアル管理装置10では、分析部114が、作業工程に暗黙知の情報が含まれている(すなわち、暗黙知の情報が作業マニュアルで形式知になっていない)と判定した場合には、この作業マニュアルの作成者、等の管理者に通知し、これを形式知として、作業マニュアルに追加、修正してもらうことを主題とするものである。
【0041】
分析部114は、上述のように作業工程が抽出されることで、この作業工程に暗黙知の情報が含まれていると判定したが、これに限られず、抽出した上で更に、以下に説明する(1)遅延作業への指示の有無、(2)動作が異なる作業への指示の有無、(3)複数の作業者による複数回の抽出、の3通りのいずれかの条件に当てはまる場合に、作業工程に暗黙知の情報が含まれる判定してもよい。
【0042】
(1)遅延作業への指示の有無、により行う場合は、抽出部113が抽出した作業工程において、第2作業データで第1作業データに比べて要する時間が長い作業を抽出し、その作業に関する指示の記載が作業マニュアル(第1作業データ)に不十分であるか否かを判定する。この作業に関する指示の記載が不十分であるとは、例えば、動画の作業マニュアルにおいて、指示として、作業に関する注意や手順を記述する字幕が記述されていないか、または不足している場合である。
【0043】
(2)動作が異なる作業への指示の有無、により行う場合は、抽出部113が抽出した作業工程において、第2作業データで、第1作業データに比べて動作が異なる作業を抽出し、作業マニュアル(第1作業データ)で、その作業に関する指示の記載が不十分であるか否かを判定する。
【0044】
(3)複数の作業者による複数回の抽出は、習熟度「低」(または「中」)の複数の作業者が行う同一の作業工程を撮影することにより複数の第2作業データを生成する。そして、比較部112、および抽出部113の処理により、複数の第2作業データで共通して抽出した作業工程があれば、この作業工程には、暗黙知の情報が含まれていると判定する。例えば、習熟度「低」(または「中」)の複数の作業者が、同じ作業工程で手間取れば、この作業工程には暗黙知の情報が含まれており、作業マニュアルには、この暗黙知の情報を、形式知としておらず、必要な情報が不足していると判断できる。
【0045】
通知部115は、抽出部113が抽出した作業工程を含む作業マニュアルに対する改善を促す通知を、通知先に行う。通知先は、作業マニュアル毎にリスト化されている。
図6は、記憶部13に記憶されている、ある作業マニュアル(作業マニュアル1)の通知先リストの例を示す図である。この通知先リストには、作業マニュアルの管理者(作成者)、または習熟度レベルの高い者が含まれる。通知部115は、この通知先リストのメールアドレスに改善を促す通知を行う。この通知には、作業マニュアルの抽出した作業工程を示す情報が含まれる。この通知には、第2作業データに記録された作業工程を行った作業者の習熟度を示す属性情報を含ませてもよい。例えば習熟度のレベル、入社年数、経験年数、等である。
【0046】
また、分析部114で作業工程に暗黙知の情報が含まれていると判定した場合には、この暗黙知を、作業マニュアルで形式知とするための補足情報として含ませてもよい。例えば、上述の(1)、(2)(時間、動作の差違)であれば対象となる作業を特定する情報、(3)(複数回抽出)であれば、その回数(作業者の人数)である。
【0047】
編集部116は、通知先のユーザーから端末装置30等を通じて、記憶部13に記憶している作業マニュアルの編集を受け付け、受け付けた編集内容で作業マニュアルを更新する。作業マニュアルを編集可能な権限を持つユーザーは、例えば、それぞれの作業マニュアルの通知先リストに記載されたユーザーである。
【0048】
(第1の実施形態における作業マニュアルの改善処理)
図7A、
図7Bは、第1の実施形態に係るマニュアル管理システム1が実行する作業マニュアルの改善処理の手順を示すフローチャートである。
図7Bは、
図7Aに続いて実行される処理手順である。
【0049】
(ステップS101)
制御部11(取得部111)は、カメラ20で作業者の作業工程の作業を撮影して得られた動画データである第1作業データを取得し、記憶部13に記憶する。この第1作業データは、上述のとおり作業マニュアルとして用いられるものであり、作業者は、例えば習熟度「高」の指導者である。この作業マニュアルは、撮影により得られた動画データを編集すること指示(字幕)が追加されている。
【0050】
(ステップS102)
制御部11は、作業マニュアルの評価開始の指示の入力を待ち、評価開始の指示があれば(YES)、処理をステップS103に進める。開始指示は、例えば、端末装置30を通じて行われる。
【0051】
(ステップS103)
制御部11は、作業者の属性情報を取得する。この属性情報の取得は、例えば端末装置30から、これから作業を行う作業者のUserIDを入力することにより、記憶部13のユーザーリストから対応する属性情報を取得するようにしてもよい。また、ID入力に替えて、カメラ20が撮影した画像データから、作業者の顔を認識し、これを記憶部13に記憶している顔の特徴情報との一致度を判定することでユーザー個人を特定するようにしてもよい。ここで作業する作業者は、ステップS101の第1作業データの作業を行った所定の習熟度の作業者よりも習熟度が低い者である。例えば、
図3に示すユーザーリストにおいて、UserID0250のCさんであり、習熟度「低」の作業者である。
【0052】
(ステップS104)
ここでは、ステップS103で属性情報を取得した作業者によって、作業工程の作業を行い、カメラ20により撮影する。この作業工程は、ステップS101と同じ作業工程である。
【0053】
制御部11は、カメラ20での作業を撮影して得られた動画データである第2作業データを取得する。この動画データは、リアルタイムのデータであってもよく、記憶部13に一時的に記憶したデータを用いてもよい。
【0054】
(ステップS105)
制御部11(比較部112)は、ステップS104で取得した第2作業データを、ステップS101で取得した第1作業データと比較する。比較処理については上述のとおりであり、両作業データの対応する作業工程の作業を比較し、対応する作業の作業時間を比較したり、各作業の動作自体を比較したりする。
【0055】
(ステップS106)
制御部11(抽出部113)は、ステップS105の比較の結果、第2作業データにおいて、作業遅延が発生した作業工程があるか否かを判定する。両作業データの同じ作業工程同士の比較で、第1作業データに対して第2作業データの作業時間が所定値以上長い場合、または、比率が所定値以上である場合には、遅れが発生したと判定し(YES)、処理をステップS107に進める。一方で、所定以上の遅れが発生した作業工程がないと判定した場合(NO)、処理をステップS108に進める。
【0056】
(ステップS107)
制御部11は、ステップS106で作業遅延が発生したと判定された作業を特定し、または作業遅延が発生した作業工程を改善要リストに追記する。
【0057】
(ステップS108)
制御部11(抽出部113)は、ステップS105の比較の結果、両作業データの作業において、特定の作業において動作が異なる作業があるか否かを判定する。特定の作業で動作が異なれば(YES)、処理をステップS109に進め、異ならなければ(NO)、処理をステップS121(
図7B)に進める。
【0058】
(ステップS109)
制御部11は、ステップS108で動作が異なると判定された作業を改善要リストに追記する。
図8は、作業マニュアルの抽出結果、および改善要リストの例を示す図である。
図8(a)は、抽出部113が上述の判定処理(ステップS106、S108)により抽出した、作業マニュアルの抽出結果の例である。
図8(b)は、
図8(a)の抽出結果に基づいて作成された改善要リストの例である。同図に示す例では、「作業マニュアル1」は、作業工程1~5により構成され、このうちの作業工程2、4で作業遅延が発生し、作業工程4では異なる作業があることを示している。
【0059】
図8(b)の改善要リストでは、作業遅延が発生した、または異なる作業が存在する作業工程2、4は改善要であることを示している。
【0060】
(ステップS121)
図7BのステップS121では、制御部11(通知部115)は、通知先リスト(
図6参照)を記憶部13から取得する。
【0061】
(ステップS122)
制御部11は、通信部12により通知先リストにある通知先に、改善を促す通知(改善通知)を行う。この通知には、抽出した作業工程を特定する情報とともに、この作業工程を含む作業マニュアルに対する改善を促す旨の内容を含む。例えば、
図8(b)の改善要リストに対応して、改善を促す通知は「作業マニュアル1の作業工程2、4に改善が必要である」とする。この通知には、さらに、第2作業データに記録された作業工程を行った作業者、すなわちステップS103で取得した属性情報を含ませてもよい。この属性情報としては、例えば、個人を特定する情報(氏名)、および/または習熟度のレベルである。作業マニュアルの管理者は、作業者の属性情報を知ることで、習熟度のレベルに応じて、作業マニュアルに対して、どの程度までの情報の記載が求められているかを知ることができる。
【0062】
(ステップS123)
制御部11(編集部116)は、通知先のユーザーから作業マニュアルの編集を受け付けたならば(YES)、処理をステップS124に進める。
【0063】
図9から
図10Bは、作業マニュアルの編集画面331から333を示す図である。これらの編集画面は、例えば端末装置30の表示部33に表示される画面である。同図に示す作業マニュアルは、MFP50の画像形成部のトナー現像器の現像剤を交換する作業工程を説明するものである。例えば作業工程1はトナー現像器を装置本体から取り外す手順を説明する工程であり、作業工程2は、古い現像剤をトナー現像器から排出する手順を説明する工程である。この編集画面331は、例えば、端末装置30において、ユーザーが、ステップS122の通知に記載されているwebアドレスを選択することで、表示部33に表示される。
【0064】
編集画面331の欄a11には、改善通知の内容が表示される。欄a12には、作業マニュアルの画像(動画)が表示される。欄a13には、作業マニュアル全体の概略を示す一覧マップ(タイムライン)を表示しており、この一覧マップには3段に渡って最上段の左上を先頭に、最下段の右下まで時系列に各作業工程の代表作業のサムネイル画像を一覧表示している。欄a14には、欄a11に表示している画像の内容を示している。同図の例では、一時停止中であり、作業マニュアル1の先頭の作業マニュアル1の作業工程1の作業1を表示していることを示している。また、現在の再生位置(一時停止位置)は、縦棒のアイコンi11により示している。また、欄a13の一覧マップにおいて、作業工程2の作業1、および作業工程4の作業2には、改善が必要な作業であることを示す矩形のアイコンi12、i13を表示している。ユーザーは再生ボタンを操作することで、作業マニュアルを再生(閲覧)できる。
【0065】
図10Aは、
図9に続く編集画面332であり、同図では、作業工程2の作業1を再生している。ユーザー(作業マニュアル管理者)は、字幕入力ボタンb1を操作することで、字幕を追加できる。具体的には、
図10Aで字幕入力ボタンb1を操作することで、
図10Bのように、それまでグレイアウトしていたボタンb11、b12,b13が有効化される。また、ユーザーは、マウスを操作することで文字入力枠i31のサイズ、位置を設定し、その文字入力枠i31に文字を入力できる。
図10Bに示す例では、作業工程2の作業1に対して、注意を喚起し、作業に手間取ることを防ぐための指示コメントとして「カップリングを指定方向に回転させる」の文字を入力している。また、ボタンb11、b12を操作することで、文字入力枠i31に入力した字幕の動画における表示時間(開始点、終了点)を設定できる。この入力は、ボタンb13を操作することで確定する。以下は、同様に、次の改善が必要な作業工程4の作業2についても、同様の手順で字幕を追加できる。
【0066】
(ステップS124)
制御部11は、このような手順によって、ユーザーによる編集作業を受け付けることに応じて、作業マニュアルの更新を行う。
【0067】
このように本実施形態においては、作業マニュアルに対応する作業工程を、所定の習熟度の作業者により実際に行った作業を示す第1作業データと、これよりも低い習熟度の作業者により行われた作業を示す第2作業データとを比較し、この比較結果により抽出した作業工程の作業マニュアルに対する改善を促す通知を行う。これにより、通知を受けた作業マニュアルの管理者等は、作業マニュアルに対して改善が必要なことを知り、これに応じて作業マニュアルを改善できる。一般に、作業マニュアルの作成者等の習熟度が高いユーザーは、これよりも習熟度が低いユーザーがどのような点で作業マニュアルの理解に手間取るのかを把握するのが困難である。このような状況において、作業マニュアルの管理者等は、習熟度が相対的に低いユーザーであっても理解が容易になるように作業マニュアルを改善できる。また、このような作業マニュアルを用いることで作業の改善をより効果的に行える。
【0068】
(第2の実施形態)
次に第2の実施形態について説明する。以下に説明する第2の実施形態では、分析部114による作業工程に暗黙知の情報が含まれているか否か(作業マニュアルに暗黙知が含まれていない(形式知になっていない))の判定結果を用いて、作業マニュアルの改善を行う。
【0069】
図11は、第2の実施形態に係るマニュアル管理システム1が実行する作業マニュアルの改善処理の手順を示すフローチャートである。
図11に示す処理手順は、第1の実施形態の
図7Aに続いて実行される。
図11に示す以外の構成は、第1の実施形態と同様であり説明を省略する。
【0070】
(ステップS201)
制御部11(分析部114)は、抽出部113が上述の判定処理(ステップS106、S108)により抽出した、改善要リスト(
図8(b))の作業工程に対して、作業工程に含まれる作業の分析を行う。
【0071】
この分析は、上述のように(1)遅延作業への指示の有無、(2)動作が異なる作業への指示の有無、(3)複数の作業者による複数回の抽出、の3通りのいずれかにより行える。以下においては、このうちの(3)複数の作業者による複数回の抽出により判定する例について説明する。
図12(a)は、
図8(a)と対応する抽出結果を示す図であり、
図12(b)は、
図12(b)と対応する改善要リストの例である。
図12(a)は、習熟度「低」のUserID0251のDさん(
図3参照)により行われた、作業マニュアル1の作業工程を撮影して得られた第2作業データを用いて、抽出部113が上述の判定処理(ステップS106、S108)により抽出して得られた抽出結果である。一方で、
図8(a)は上述のようにCさんが行った作業工程を撮影することにより得られた第2作業データを用いて得られた抽出結果である。
【0072】
図12(a)と、
図8(a)を比較することで分かるように、作業工程4は、Cさん、Dさんの両方の作業者で抽出されている。分析部114は、
図12(b)に示すように、両方の作業者で共通して抽出された作業工程4に対して、暗黙知の情報が含まれていると判定し、判定結果を抽出部113に送る。
【0073】
(ステップS202)
抽出部113は、分析部114の判定結果により、
図8(b)の改善要リストから作業工程2を除外し、共通して抽出された作業工程4のみを残す。
【0074】
(ステップS203)
ここでは、
図7BのステップS121と同様に、制御部11(通知部115)は、通知先リストを記憶部13から取得する。
【0075】
(ステップS204)
ここでは、制御部11は、通信部12により通知先リストにある通知先に、ステップS122と同様に、改善を促す通知を行う。なお、この通知は「作業マニュアル1の作業工程4に改善が必要である」とし、さらに「暗黙知の情報が含まれていない恐れがある」のように、暗黙知の情報が含まれていないことを示唆する通知を含ませる。この暗黙知の情報が含まれていないことを示唆する通知については、例えば「**作業に遅れが見られます、**作業に関する指示が不足している可能性があります。」、または動作が異なる作業に関し「作業者は**の動作の理解が不十分のようです。動作に関する説明が不足している可能性があります。」のような通知であってもよい。また、この通知には、さらに、第2作業データに記録された作業工程を行った作業者、すなわちCさん、Dさんの属性情報(習熟度レベル等を)を含ませてもよい。以降は、
図7BのステップS123の処理を行い終了する。
【0076】
このように、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。さらに第2の実施形態では、暗黙知の情報が含まれていないか否かを判定し、その判定結果に応じて作業マニュアルの改善を促す通知を行うことで、より有効な改善を促す通知を行える。
【0077】
以上に説明したマニュアル管理装置10、およびこれを備えたマニュアル管理システム1の構成は、上記の実施形態の特徴を説明するにあたって主要構成を説明したのであって、上記の構成に限られず、特許請求の範囲内において、以下に説明するように種々改変することができる。また、一般的なマニュアル管理装置10が備える構成を排除するものではない。
【0078】
上述の実施形態においては、記録装置としてカメラ20を用い、第2作業データとして習熟度が相対的に低い作業者による作業を撮影した動画データを用いた例を説明したが、これに限られない。例えば、第2作業データとして、作業工程の各作業の時間を記録できる工程管理データを用いてもよい。例えば、この工程管理データは、記録装置として、作業者が携帯する近距離無線装置等を用い、これにより作業者の位置を検知し、その位置情報の時間推移を知ることにより、どの作業を行っているかを記録したものである。そして、これを第1作業データの工程管理データ(標準作業時間)と比較する。
【0079】
また、動画の作業マニュアルに含まれる指示として、テキストデータによる字幕の例(
図10B等)を示したが、これに限られず、音声データ、または、重要な位置、もしくは部品に関して注意を促す矩形等のアノテーションマークであってもよい。
【0080】
さらに、第2の実施形態においては、複数回の抽出として2人の作業者の例を示したがこれに限られない。3人以上の複数の作業者による第2作業データを用いて、3人以上の作業者のうち2人以上、または全員で共通して抽出された場合に、暗黙知の情報が含まれると判定するようにしてもよい。
【0081】
上述した各実施形態および各変形例に係る制御システムにおける各種処理を行う手段および方法は、専用のハードウェア回路、またはプログラムされたコンピューターのいずれによっても実現することが可能である。上記プログラムは、たとえば、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等のコンピューター読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。この場合、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムは、通常、ハードディスク等の記憶部に転送され記憶される。また、上記プログラムは、単独のアプリケーションソフトとして提供されてもよいし、点字デバイス連携システムの一機能としてその装置のソフトウエアに組み込まれてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 マニュアル管理システム
10 マニュアル管理装置
11制御部
111 取得部
112 比較部
113 抽出部
114 分析部
115 通知部
116 編集部
12 通信部
13 記憶部(データベース)
20 カメラ
30 端末装置
40 ネットワーク
50 MFP