(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】車両用変速機
(51)【国際特許分類】
F16H 3/093 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
F16H3/093
(21)【出願番号】P 2018129021
(22)【出願日】2018-07-06
【審査請求日】2021-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】特許業務法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 将英
(72)【発明者】
【氏名】北岡 圭史
【審査官】長清 吉範
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-0410806(KR,B1)
【文献】特開2010-174945(JP,A)
【文献】特開2002-340138(JP,A)
【文献】特開2015-78706(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源からトルクコンバータを介して動力が伝達される入力軸と、
前記入力軸に設けられた遊星歯車機構と、
前記入力軸に相対回転自在に設けられた複数の入力ギヤと、
前記入力ギヤに噛み合う複数の出力ギヤを有する出力軸と、
前記入力軸に設けられ、前記複数の入力ギヤを選択的に前記入力軸に連結する同期装置と、
前記入力軸に設けられたクラッチ機構とを備えた車両用変速機であって、
前記入力軸は、主入力軸と、前記主入力軸と同軸上に位置して前記主入力軸の外周部に設けられた副入力軸とを備えており、
前記トルクコンバータは、前記主入力軸の一端部に連結されており、
前記遊星歯車機構は、前記主入力軸と前記副入力軸の一端部とを連結し、前記主入力軸の回転を減速しながら前記副入力軸に動力を伝達可能に構成されており、
前記クラッチ機構は、前記主入力軸の他端部と前記副入力軸の他端部に設けられ、前記主入力軸の動力を前記副入力軸に伝達可能または動力の伝達を遮断可能に構成されており、
前記複数の入力ギヤおよび前記同期装置は、前記副入力軸の軸方向において前記トルクコンバータと前記クラッチ機構の間に位置して前記副入力軸に設置されて
おり、
前記遊星歯車機構と前記副入力軸との間にワンウェイクラッチが設置されており、
前記ワンウェイクラッチは、前記主入力軸から前記副入力軸に動力を伝達し、前記副入力軸から前記主入力軸に動力を伝達不能とすることを特徴とする車両用変速機。
【請求項2】
前記入力軸、前記トルクコンバータ、前記遊星歯車機構および前記クラッチ機構を収容する変速機ケースを有し、
前記遊星歯車機構は、3つの回転要素と、ブレーキ装置とを備えており、
前記ブレーキ装置は、前記3つの回転要素のうちの1つの回転要素を回転不能とする状態と回転を許容する状態とに切換えるブレーキ部と、前記変速機ケースに固定され、前記ブレーキ部を収容するブレーキケースとを備えており、
前記ブレーキケースは、前記主入力軸が貫通される貫通孔を有し、前記主入力軸を回転自在に支持していることを特徴とする請求項1に記載の車両用変速機。
【請求項3】
前記遊星歯車機構の前記3つの回転要素は、前記主入力軸に連結される第1の回転要素と、前記ワンウェイクラッチを介して前記副入力軸に連結される第2の回転要素と、前記ブレーキ部によって前記ブレーキケースに固定される第3の回転要素とを備えており、
前記遊星歯車機構は、前記第3の回転要素が前記ブレーキケースに固定された場合に、前記主入力軸の回転を減速しながら前記主入力軸の動力を前記ワンウェイクラッチを介して前記副入力軸に伝達することを特徴とする請求項2に記載の車両用変速機。
【請求項4】
オイルを送り出すオイルポンプを有し、
前記主入力軸は、前記オイルポンプを貫通しており、
前記ブレーキケースは、前記変速機ケースと共に前記オイルポンプのポンプ室を形成する壁面を有し、
前記ブレーキケースにはオイルが流れる油路が形成されていることを特徴とする
請求項2または請求項3に記載の車両用変速機。
【請求項5】
前記第1の回転要素は、前記主入力軸にスプライン嵌合される内端部を有し、前記内端部は、前記主入力軸と前記副入力軸との間に入り込んでいることを特徴とする請求項
3に記載の車両用変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
同軸上に設置される第1入力軸および第2入力軸と、第1入力軸および第2入力軸と平行に設置された中間軸、アイドル軸および出力軸とを備え、2つのクラッチを用いて動力伝達経路を切換えることにより、変速段を多段化した平行軸式の変速機が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この変速機は、第1入力軸上に設けられた第1クラッチを解放し、アイドル軸に設けられた第2クラッチを締結することによって、第1入力軸からアイドル軸および中間軸を経て出力軸に動力を伝達する経路を有する。この経路においては、第1入力軸の回転をアイドル軸によって減速して中間軸に伝達可能である。
【0004】
また、この変速機は、第1入力軸上に設けられた第1クラッチを締結し、アイドル軸に設けられた第2クラッチを解放することによって、第1入力軸から第2入力軸とアイドル軸と中間軸とを経て出力軸に動力を伝達する経路を有する。この経路においては、第1入力軸の回転が減速されずに第2入力軸に伝達される。
【0005】
また、この変速機は、第1入力軸上に設けられた第1クラッチを解放し、アイドル軸に設けられた第2クラッチを締結することによって、第1入力軸からアイドル軸と第2入力軸とを経て出力軸に動力を伝達する経路を有する。この経路においては、第1入力軸の回転が減速されて第2入力軸に伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような従来の車両用変速機は、入力軸に第1クラッチが設けられているとともに、入力軸と別軸のアイドル軸に第2クラッチが設けられており、入力軸とアイドル軸とが減速用の第1歯車組と第2歯車組とによって連結されて、減速させている。
【0008】
このため、入力軸の径方向外方に別軸を設け、クラッチ、第1歯車組および第2歯車組からなる減速機構を設置する必要があり、減速機構を設置する分だけ変速機が大型化する。
【0009】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、変速機の小型化を容易に図ることができる車両用変速機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、駆動源からトルクコンバータを介して動力が伝達される入力軸と、 前記入力軸に設けられた遊星歯車機構と、前記入力軸に相対回転自在に設けられた複数の入力ギヤと、前記入力ギヤに噛み合う複数の出力ギヤを有する出力軸と、前記入力軸に設けられ、前記複数の入力ギヤを選択的に前記入力軸に連結する同期装置と、前記入力軸に設けられたクラッチ機構とを備えた車両用変速機であって、前記入力軸は、主入力軸と、前記主入力軸と同軸上に位置して前記主入力軸の外周部に設けられた副入力軸とを備えており、前記トルクコンバータは、前記主入力軸の一端部に連結されており、前記遊星歯車機構は、前記主入力軸と前記副入力軸の一端部とを連結し、前記主入力軸の回転を減速しながら前記副入力軸に動力を伝達可能に構成されており、前記クラッチ機構は、前記主入力軸の他端部と前記副入力軸の他端部に設けられ、前記主入力軸の動力を前記副入力軸に伝達可能または動力の伝達を遮断可能に構成されており、前記複数の入力ギヤおよび前記同期装置は、前記副入力軸の軸方向において前記トルクコンバータと前記クラッチ機構の間に位置して前記副入力軸に設置されており、前記遊星歯車機構と前記副入力軸との間にワンウェイクラッチが設置されており、前記ワンウェイクラッチは、前記主入力軸から前記副入力軸に動力を伝達し、前記副入力軸から前記主入力軸に動力を伝達不能とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このように上記の本発明によれば、変速機の小型化を容易に図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係る車両用変速機の軸の配置を示す左側面図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施例に係る車両用変速機のスケルトン図である。
【
図3】
図3は、変速機ケースを除いた
図1のIII-III方向矢視断面図である。
【
図4】
図4は、トルクコンバータ側となる主入力軸の一端部の構成図である。
【
図5】
図5は、クラッチ装置側となる主入力軸の他端部の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施の形態に係る車両用変速機は、駆動源からトルクコンバータを介して動力が伝達される入力軸と、入力軸に設けられた遊星歯車機構と、入力軸に相対回転自在に設けられた複数の入力ギヤと、入力ギヤに噛み合う複数の出力ギヤを有する出力軸と、入力軸に設けられ、複数の入力ギヤを選択的に入力軸に連結する同期装置と、入力軸に設けられたクラッチ機構とを備えた車両用変速機であって、入力軸は、主入力軸と、主入力軸と同軸上に位置して主入力軸の外周部に設けられた副入力軸とを備えており、 トルクコンバータは、主入力軸の一端部に連結されており、遊星歯車機構は、主入力軸と副入力軸の一端部とを連結し、主入力軸の回転を減速しながら副入力軸に動力を伝達可能に構成されており、クラッチ機構は、主入力軸の他端部と副入力軸の他端部に設けられ、主入力軸の動力を副入力軸に伝達可能または動力の伝達を遮断可能に構成されており、複数の入力ギヤおよび同期装置は、副入力軸の軸方向においてトルクコンバータとクラッチ機構の間に位置して副入力軸に設置されている。
これにより、変速機の小型化を容易に図ることができる。
【実施例】
【0014】
以下、本発明の一実施例に係る車両用変速機について、図面を用いて説明する。
図1から
図7は、本発明に係る一実施例の車両用変速機を示す図である。
図1から
図7において、上下前後左右方向は、搭載される車両の上下前後左右方向を基準として車両に設置された状態の車両用変速機の上下前後左右方向とし、前後方向に対して直交する方向が左右方向、車両用変速機の高さ方向が上下方向である。
【0015】
まず、構成を説明する。
図1において、自動車等の車両に搭載される車両用変速機(以下、単に変速機という)1は、前進7速、後進1速の変速段を有する。
【0016】
変速機1は、エンジン2のクランク軸3(
図2参照)からトルクコンバータ4を介して動力が伝達される入力軸5と、それぞれ入力軸5と平行に設置される前進用アイドル軸6、後進用アイドル軸7、中間軸8および出力軸9とを備えている。本実施例のエンジン2は、クランク軸3が車幅方向に延びるように設置される横置きエンジンから構成されている。エンジン2は、本発明の駆動源を構成する。
【0017】
また、本実施例の変速機1は、トルクコンバータ4の回動軸、入力軸5、前進用アイドル軸6、後進用アイドル軸7、中間軸8および出力軸9が車幅方向に延びるように車両に搭載されている。
【0018】
図3において、トルクコンバータ4は、ドライブプレート4Aを介してクランク軸3に連結されるフロントカバー4Bと、フロントカバー4Bに連結されたシェル4Cとを備えており、エンジン2と変速機1との間でオイルを介して動力を伝達する流体継手を構成している。
【0019】
クランク軸3と連結されたシェル4Cの内面には、図示しないポンプインペラが固定されている。シェル4Cの内部には、タービンランナ4D(
図4にはその一部が図示されている)がポンプインペラに対向して設置されており、タービンランナ4Dは、入力軸5に接続されている。ポンプインペラとタービンランナ4Dの間には図示しないステータが設置されている。
【0020】
トルクコンバータ4において、クランク軸3が回転すると、ドライブプレート4Aを介してフロントカバー4B、シェル4Cおよびポンプインペラが一体で回転する。このとき、ポンプインペラの回転による遠心力によって、トルクコンバータ4の内部の流体に、ポンプインペラからタービンランナ4Dに向かう流れが生じる。
【0021】
この流体の流れによりタービンランナ4Dが回転され、タービンランナ4Dに接続された入力軸5が回転する。ステータは、タービンランナ4Dからの流体の流れをポンプインペラの回転方向に沿うように変換することにより、エンジン2の動力を増幅させる。
【0022】
図2、
図3に示すように、入力軸5は、内部に油路が形成された主入力軸10と、主入力軸10の外周部に主入力軸10と同軸上に設けられ、主入力軸10と相対回転する副入力軸11とを有する。つまり、副入力軸11は、軸方向の両端が開放した中空な円筒状の部材であって、その内部に主入力軸10が相対回転自在に配置されている。主入力軸10は、副入力軸11よりも軸方向に長尺な部材であって、副入力軸11の内部を軸方向に貫通するように配置されている。
【0023】
図示は省略するが、変速機ケース12は、変速機全体の外殻を成すものであって、トルクコンバータ4を収納するトルクコンバータ室と、変速ギヤ類を収納する変速室と、クラッチ装置51を収納するクラッチ室を有し、トルクコンバータ室と変速室とを区画する隔壁12Aと、変速室とクラッチ室を区画する隔壁12Bを有している。
【0024】
言い換えると、隔壁12Aはトルクコンバータ4と変速ギヤとの間に配置され、隔壁12Bは変速ギヤとクラッチ装置51の間に配置されている。つまり、隔壁12Aは変速機ケース12のトルクコンバータ4側の隔壁であり、隔壁12Bは変速機ケース12のクラッチ装置51側の隔壁であり、それぞれ左右方向に垂直な面を基本面とする隔壁である。
図4に示すように、主入力軸10は、変速機ケース12の一方の隔壁12Aの貫通孔12aを貫通しており、
図5に示すように、主入力軸10および副入力軸11は、変速機ケース12の他方の隔壁12Bの貫通孔12bを貫通している。
【0025】
図5に示すように、主入力軸10と副入力軸11との間にはニードルベアリング13A、13Bが入力軸の軸方向で離れた位置に設けられており、副入力軸11は、ニードルベアリング13A、13Bを介して主入力軸10に対して相対回転自在に配置されて、副入力軸11と主入力軸10とは相互に支持されている。
【0026】
図4に示すように、主入力軸10の一端部10a(トルクコンバータ4側の端部)は、トルクコンバータ4の内部に挿入されており、主入力軸10の一端部10aに形成されたスプラインはトルクコンバータ4のタービンランナ4Dとスプライン嵌合されている。このため、エンジン2の動力(回転、回転力)は、トルクコンバータ4を介して主入力軸10に伝達される。
【0027】
主入力軸10の外周部には遊星歯車機構21が設けられており、遊星歯車機構21は、主入力軸10と副入力軸11の一端部11a(トルクコンバータ4側の端部)とに連結されており、主入力軸10の回転を減速しながら副入力軸11に伝達可能に構成されている。
【0028】
詳細には、遊星歯車機構21は、主入力軸10の副入力軸11に覆われていない範囲に、主入力軸10と同軸上に配置されている。つまり、遊星歯車機構21と副入力軸11は、遊星歯車機構21をトルクコンバータ4側として主入力軸10の軸方向に並んで配置されている。このように配置することで、変速機の小型化を図ることができる。なお、遊星歯車機構21のクラッチ装置51側端部と副入力軸11のトルクコンバータ4側の端部は、動力を伝達するために主入力軸10の軸方向でオーバーラップして配置されている。
【0029】
具体的には、遊星歯車機構21は、キャリア22、サンギヤ23およびリングギヤ24を備えている。
【0030】
図4に示すように、キャリア22は、プラネタリピニオン22Aを回転自在に支持している。キャリア22は、その回転の中心に主入力軸10が貫通配置されており、径方向の内端部22aがニードルベアリング13Cを介して主入力軸10に回転自在に取付けられている。
【0031】
また、キャリア22は、主入力軸10の軸方向において、スラストベアリング13Nとスラストベアリング13Mにて挟まれて位置決めされている。キャリア22は、トルクコンバータ4側が径方向外方に広がり、リングギヤ24のトルクコンバータ4側の側方を通過して屈曲し、リングギヤ24の外方をクラッチ装置51側に延びて外端部22bが形成されている。
【0032】
リングギヤ24に対してクラッチ装置51側の外端部22bには、ワンウェイクラッチ25が取付けられている。なお、キャリア22のワンウェイクラッチ25が取付けられる部分は、副入力軸11のトルクコンバータ4側の端部と主入力軸10の軸方向においてオーバーラップする位置となっている。この構造によって、主入力軸10の軸方向において遊星歯車機構21を小型化することができる。
【0033】
図4に示すように、サンギヤ23は、後述するブレーキ装置31によって回転不能とされる状態(変速機ケース12に固定される状態)と回転が許容される状態とに切換えられる。サンギヤ23は、その内径部がニードルベアリング13Nを介してキャリア22の径方向の内端部22aに相対回転自在に支持されている。
【0034】
また、サンギヤ23は、キャリア22とブレーキケース32の間の位置において主入力軸10の軸方向に垂直な面を有し、スラストベアリング13Mとスラストベアリング13Gにて挟まれて、主入力軸10の軸方向の位置決めがなされている。サンギヤ23は、トルクコンバータ4側からキャリア22の内部に挿入されてプラネタリピニオン22Aに噛み合っている。
【0035】
サンギヤ23は、そのトルクコンバータ4側が主入力軸10の軸方向において軸受15とオーバーラップする位置までブレーキケース32の内部に挿入され、ブレーキケース32の内部部分が摩擦プレート34に係合している。この構造によって、主入力軸10の軸方向において遊星歯車機構21とブレーキ装置31を小型化することができる。
【0036】
図4に示すように、リングギヤ24は、中心に主入力軸10が貫通配置されている。リングギヤ24の径方向の内端部24aの内径部分にはスプラインが形成されており、主入力軸10のスプラインとスプライン嵌合されており、主入力軸10と一体で回転する。
【0037】
リングギヤ24は、リングギヤ24に対してトルクコンバータ4側に配置される主入力軸10の段部(異なる直径の部分の間に形成される主入力軸10の軸方向に垂直な面)とスラストベアリング13Fとの間に挟まれて、主入力軸10の軸方向の位置決めがなされている。
【0038】
リングギヤ24は、内端部24aからキャリア22と副入力軸11との間を通過するとともに、プラネタリピニオン22Aのクラッチ装置51側の側方を通過するように外径方向に延び、その後、トルクコンバータ4側に屈曲してキャリア22内に延びて、その内径部がプラネタリピニオン22Aに噛み合っている。この構造によって、主入力軸10の軸方向において遊星歯車機構21を小型化することができる。
【0039】
つまり、キャリア22の径方向の外端部22bは、リングギヤ24の径方向の外端部24bよりも外方に位置しており、主入力軸10の軸方向でリングギヤ24の径方向の外端部24bを完全に覆うように主入力軸10の一端部10a側から他端部10b側まで伸びるように配置されている。
【0040】
主入力軸10の他端部10b側に位置するキャリア22の径方向の外端部22bと副入力軸11の一端部11aとの間にはワンウェイクラッチ25が設置されており、ワンウェイクラッチ25は、サークリップ26によってキャリア22の径方向の外端部22bに取付けられている。
【0041】
ワンウェイクラッチ25は、内輪と外輪の相対回転において、一方向の相対回転では連結されて差回転が不可能となりトルクを伝達し、他方向の相対回転では差回転が可能となってトルクを伝達しない。本発明のワンウェイクラッチ25は、キャリア22が副入力軸11の回転速度を高める速度で回転しようとするときキャリア22から副入力軸11に動力を伝達し、副入力軸11がキャリア22の回転速度よりも早い速度で回転する時に副入力軸11からキャリア22に動力を伝達しないように構成されている。
【0042】
これにより、ワンウェイクラッチ25は、主入力軸10から副入力軸11に遊星歯車機構21を介する動力伝達を可能とし、遊星歯車機構21を介して副入力軸11から主入力軸10に動力を伝達することを不能とする。
【0043】
主入力軸10の軸方向においてキャリア22とリングギヤ24との間にはスラストベアリング13Eが設けられている。キャリア22とリングギヤ24は、スラストベアリング13Eを介して主入力軸10の軸方向の相対位置が規定されつつ、主入力軸10の軸周りに相対回転自在に支持されている。
【0044】
主入力軸10の軸方向においてリングギヤ24と副入力軸11の一端部11aとの間にはスラストベアリング13Fが設けられており、リングギヤ24と副入力軸11とは、スラストベアリング13Fを介して主入力軸10の軸方向の相対位置が規定されつつ、主入力軸10の軸周りに相対回転自在に支持されている。
【0045】
図4に示すように、キャリア22は、そのクラッチ装置51側に潤滑油導入プレート13Dを有している。潤滑油導入プレート13Dは、プラネタリピニオン22Aの支持軸に対向するようにその外周縁がキャリア22に取付けられており、キャリア22との間にオイル溜りを形成する。
【0046】
潤滑油導入プレート13Dは、主入力軸10の放射孔10hから径方向に流れる潤滑油を受け止めて、プラネタリピニオン22Aの支持軸に形成された油路に潤滑油を供給する。すなわち、潤滑油導入プレート13Dは、スラストベアリング13Eを通過して主入力軸10の径方向の外方に流れる潤滑油を受け止めるように設置されている。
【0047】
これにより、キャリア22の径方向の外端部22bにて覆われた状態の遊星歯車機構21であっても、プラネタリピニオン22Aの潤滑が良好に行われ、潤滑不足の不具合が防止される。以下、径方向とは、主入力軸10および副入力軸11の径方向である。
【0048】
キャリア22の径方向の内端部22aの外径とサンギヤ23の内径との間にはニードルベアリング13Nが設けられており、キャリア22とサンギヤ23とは、ニードルベアリング13Nを介して相対回転自在に支持されている。
つまり、主入力軸10の軸心から径方向で、主入力軸10、ニードルベアリング13C、キャリア22の内端部22a、ニードルベアリング13N、サンギヤ23、プラネタリピニオン22A、リングギヤ24の外端部24b、キャリア22の外端部22bの順に同心に配置されている。
【0049】
図3に示すように、副入力軸11の内径に関し、他の箇所に比較して一端部11a側の開口部分の内径が大きく形成されている。そして、主入力軸10の外径と副入力軸11の内径との隙間に関し、他の箇所に比較して一端部11a側の開口部分の隙間が大きくなっている。
【0050】
リングギヤ24の径方向の内端部24aの一部(筒状の内端部24aに関し、クラッチ装置51側の端部)は、主入力軸10と副入力軸11との間に入り込んでいる。主入力軸10のスプライン10sは、軸方向位置でニードルベアリング13Eの位置から副入力軸11の一端部11aの径方向の内方に亙って形成されており、リングギヤ24の径方向の内端部24aは、副入力軸11の一端部11aの内方に入り込んでスプライン10sにスプライン嵌合されている。
【0051】
これにより、リングギヤ24の径方向の内端部24aの軸方向長さを長くでき、主入力軸10からリングギヤ24に動力を伝達可能な強度を十分に確保できることに加えて、リングギヤ24が倒れ込むことをより効果的に抑制できる。
【0052】
このため、歯車の噛み合い精度を向上でき、異音の発生を抑制することができる。また、キャリア22の内端部22aにおいて、キャリア22のニードルベアリング13Cを介した軸支位置を適切に配置することができる。
【0053】
さらに、リングギヤ24の径方向の内端部24aの一部を副入力軸11の径方向の内方に入り込ませることにより、リングギヤ24の径方向の内端部24aを長くしても、変速機1が主入力軸10の軸方向に長くなることを抑制して、変速機1の小型化を図ることができる。
【0054】
主入力軸10の径方向外方にはブレーキ装置31が設置されている。ブレーキ装置31は、筒状のブレーキケース32を備えており、ブレーキケース32は、隔壁12Aに固定されている。詳細には、ブレーキケース32は、隔壁12Aのクラッチ装置51側の面(反トルクコンバータ4側の面)に固定されている。
【0055】
ブレーキケース32には、筒状のクラッチハブ33、環状の摩擦プレート34、35、ピストン36およびリターンスプリング37が収容されている。クラッチハブ33は、筒状に形成されてサンギヤ23と一体に設けられており、サンギヤ23から拡径して主入力軸10と同軸に主入力軸10に沿って延びてブレーキケース32の内部に入り込んでいる。
【0056】
摩擦プレート34は、クラッチハブ33の外周部にスプライン嵌合されており、クラッチハブ33と一体で回転可能で、かつ、主入力軸10の軸方向に移動自在となっている。
【0057】
摩擦プレート35は、ブレーキケース32の内周部にスプライン嵌合しており、ブレーキケース32に対して主入力軸10の回転方向に回転不能で、かつ、主入力軸10の軸方向に移動自在となっている。
【0058】
本実施例の摩擦プレート34、35は、主入力軸10の軸方向に並んでそれぞれ3つ設けられており、摩擦プレート34、35は、主入力軸10の軸方向において交互に設置されている。
【0059】
最もクラッチ装置51側に配置される摩擦プレート35に関して、そのキャリア22側にはリテーナプレート38が設けられている。リテーナプレート38は、ブレーキケース32の内周部にスプライン嵌合しており、ブレーキケース32に対して主入力軸10の回転方向に回転不能で、かつ、ブレーキケース32に嵌合されたスナップリング39によって主入力軸10の軸方向においてキャリア22側への移動が規制されている。
【0060】
リテーナプレート38は、摩擦プレート34、35よりも主入力軸10の軸方向の厚みが大きく形成されており、ピストン36の押圧力を受け止めて摩擦プレート34、35の倒れを防止する。
【0061】
ピストン36は、摩擦プレート35のうちの最もトルクコンバータ4側の摩擦プレート35に対向するように、摩擦プレート34、35のトルクコンバータ4側のブレーキケース32に配置されており、油圧が作用すると主入力軸10の軸方向でクラッチ装置51側に移動し、摩擦プレート35を押圧する。
【0062】
なお、主入力軸10の軸方向に対する摩擦プレート34、35の移動は、リテーナプレート38によって規制されているので、摩擦プレート34、35はピストン36とリテーナプレート38によって挟持される。
【0063】
トルクコンバータ4側の摩擦プレート35がピストン36によって押圧されると、摩擦プレート34と摩擦プレート35とが摩擦接触し、サンギヤ23をブレーキケース32に固定する。これにより、サンギヤ23が変速機ケース12に対して回転不能となる。
【0064】
なお、隔壁12Aおよびブレーキケース32にはオイル通路44Aが形成されており、オイル通路44Aには図示しないオイル配管からオイルが供給されてピストン36が作動する。ピストン36は摩擦プレート34、35よりも隔壁12A側に配置されており、ピストン36への油路の形成が容易となっている。
【0065】
サンギヤ23が回転不能となると、主入力軸10からリングギヤ24を介してキャリア22に動力(回転力)が伝達される。つまり、サンギヤ23が固定でリングギヤ24が回転することにより、サンギヤ23の周りをプラネタリピニオン22Aが公転してキャリア22が回転する。そして、キャリア22の回転力(動力)は、キャリア22からワンウェイクラッチ25を介して副入力軸11に伝達される。
【0066】
遊星歯車機構21は、プラネタリピニオン22A、サンギヤ23およびリングギヤ24のギヤ比を任意に設定することにより、主入力軸10の回転を減速して副入力軸11に伝達できる。すなわち、遊星歯車機構21は、減速機として機能する。
【0067】
摩擦プレート34に対して主入力軸10の径方向外方には環状のリターンスプリング37が設けられている。リターンスプリング37は、円錐形状を有する皿ばねであって摩擦プレート35の間に設けられている。
【0068】
リターンスプリング37は、主入力軸10の軸方向において隣接する摩擦プレート35同士の距離が大きくなるように摩擦プレート35を付勢している。これにより、ピストン36に油圧が作用しなくなりピストン36の押圧力の作用がなくなると、リターンスプリング37によって摩擦プレート35が移動し、摩擦プレート35が摩擦プレート34から引き離される。
【0069】
このため、ピストン36に油圧が作用しなくなると、摩擦プレート34、35の間の摩擦力が減少し、サンギヤ23の回転が許容される。サンギヤ23の回転が許容されると、リングギヤ24はキャリア22を回転させることができずに空転し、主入力軸10から副入力軸11に動力が伝達されない。
【0070】
本実施例のキャリア22、サンギヤ23およびリングギヤ24は、本発明の回転要素を構成し、サンギヤ23は、本発明の3つの回転要素のうちの1つの回転要素を構成する。リングギヤ24は、本発明の第1の回転要素を構成し、キャリア22は、本発明の第2の回転要素を構成する。サンギヤ23は、本発明の第3の回転要素を構成する。
【0071】
クラッチハブ33、摩擦プレート34、35、ピストン36およびリターンスプリング37は、本発明のブレーキ部を構成する。すなわち、ブレーキ部は、サンギヤ23を固定した状態と回転を許容する状態とに切換える。
【0072】
ブレーキケース32には貫通孔32aが形成されており、貫通孔32aには主入力軸10が貫通されている。ブレーキケース32と主入力軸10との間には軸受15が設けられており、主入力軸10は、軸受15を介してブレーキケース32に回転自在に支持されている。
【0073】
ブレーキケース32はクラッチハブ33の内側に入り込む部分を有し、当該入り込んだ部分に軸受15が配置されている。つまり、ブレーキケース32は、クラッチハブ33の内部にて軸受15を保持し、主入力軸10を軸支している。この構造にて、変速機1が主入力軸10の軸方向に長くなることを抑制して、変速機1の小型化を図ることができる。また、ブレーキケース32の貫通孔32aには、円筒部材18が圧入固定されている。円筒部材18には、トルクコンバータ4のステータが取付けられる。
【0074】
主入力軸10の軸方向においてブレーキケース32とクラッチハブ33との間にはスラストベアリング13Gが設けられており、クラッチハブ33は、スラストベアリング13Gを介してブレーキケース32で主入力軸10の軸方向の位置決めがなされている。
【0075】
主入力軸10の軸方向においてキャリア22とクラッチハブ33との間にはスラストベアリング13Mが設けられており、キャリア22は、スラストベアリング13Mを介してクラッチハブ33で主入力軸10の軸方向の位置決めがなされている。
【0076】
図5に示すように、主入力軸10の他端部10bと副入力軸11の他端部11bにはクラッチ装置51が設けられている。クラッチ装置51は、クラッチドラム52とクラッチハブ53とを有する。
【0077】
クラッチドラム52は、その回転中心に配置された軸受にて変速機ケース12に軸支されている。なお、この軸受はクラッチハブ53の内部に入り込んでおり、変速機1が主入力軸10の軸方向に長くなることを抑制して、変速機1の小型化を図ることができる。
【0078】
クラッチドラム52は、主入力軸10の軸端にスプライン嵌合されており、主入力軸10と一体で回転する。クラッチハブ53は、副入力軸11の軸端にスプライン嵌合されており、副入力軸11と一体で回転する。
【0079】
詳細には、クラッチハブ53は、副入力軸11の軸端の外径に形成されたスプラインが挿入されて嵌合している。また、クラッチドラム52は、主入力軸10の軸端と副入力軸11の軸端の間に入り込んで、主入力軸10の軸端の外径に形成されたスプラインに外嵌している。
【0080】
つまり、クラッチドラム52と主入力軸10とのスプライン嵌合位置と、クラッチハブ53と副入力軸11のスプライン嵌合位置とは、主入力軸10の軸方向でオーバーラップし、変速機1が主入力軸10の軸方向に長くなることを抑制して、変速機1の小型化が図られている。なお、主入力軸10の軸端は、副入力軸11の軸端から突出し、クラッチドラム52は、クラッチハブ53と副入力軸11のスプライン嵌合よりも長く主入力軸10とスプライン嵌合している。
【0081】
クラッチドラム52の内周部には環状の摩擦プレート54がスプライン嵌合されており、摩擦プレート54は、クラッチドラム52と一体で回転し、かつ、主入力軸10の軸方向に移動自在となっている。
【0082】
クラッチハブ53の外周部には摩擦プレート55がスプライン嵌合しており、摩擦プレート55は、クラッチハブ53と一体で回転し、かつ、主入力軸10の軸方向に移動自在となっている。
【0083】
本実施例の摩擦プレート54、55は、主入力軸10の軸方向に並んでそれぞれ3つ設けられており、摩擦プレート54、55は、主入力軸10の軸方向において交互に設置されている。
【0084】
主入力軸10の軸方向において摩擦プレート55とクラッチドラム52との間にはリテーナプレート56が設けられている。リテーナプレート56は、クラッチドラム52に片面が接触することにより、主入力軸10の軸方向への移動が規制されており、後述するCSC57の摩擦プレート54、55への押圧力を受け止めている。リテーナプレート56は、摩擦プレート54、55よりも主入力軸10の軸方向の厚みが大きく形成されており、摩擦プレート54、55の倒れを防止する。
【0085】
クラッチ装置51には、コンセントリックスレーブシリンダ(Concentric Slave Cylinder、以下「CSC」という)57が設けられている。CSC57にはオイル通路57aが形成されており、オイル通路57aには図示しないオイル配管から隔壁12Bに形成されたオイル通路12cを通してオイルが供給される。
【0086】
CSC57にはピストン57Aが設けられており、ピストン57Aは、オイル通路57aに導入されたオイルによってサポートリング58をクラッチハブ53側に押圧する。
【0087】
サポートリング58は、変速機ケース12に対して回転しない部品であって、径方向の内端がピストン57Aに取付けられており、径方向の外端に軸受59のインナレース59Aが取付けられている。
【0088】
また、軸受59のアウタレース59Bにはプレスフランジ60の径方向内端が取付けられている。つまり、サポートリング58とプレスフランジ60とは、軸受59を介して取り付けられており、CSC57による押圧力を伝達すると共に、相対回転差を許容している。プレスフランジ60の径方向外端は、主入力軸10の軸方向において最もトルクコンバータ4側に位置する摩擦プレート54にトルクコンバータ4側から対向している。
【0089】
プレスフランジ60は、クラッチドラム52に嵌合されたスナップリング61によって主入力軸10の軸方向においてCSC57側への移動が規制されている。
【0090】
サポートリング58とプレスフランジ60とは、軸受59によって主入力軸10の軸方向に位置決めされており、主入力軸10の軸方向へは一体的に移動自在となっている。
【0091】
クラッチ装置51において、CSC57のピストン57Aに油圧が作用すると、ピストン57Aは、サポートリング58側に突出してサポートリング58を押圧する。サポートリング58がピストン57Aによって押圧されクラッチドラム52側に移動すると、軸受59を介してプレスフランジ60がクラッチドラム52側に移動する。プレスフランジ60がクラッチドラム52側に移動すると、プレスフランジ60が摩擦プレート54を押圧することにより、摩擦プレート54と摩擦プレート55とが摩擦接触する。
【0092】
これにより、CSC57のピストン57Aに油圧が作用すると、クラッチドラム52とクラッチハブ53とが一体で回転し、エンジン2の動力(回転力)が主入力軸10から副入力軸11に伝達される。また、主入力軸10の軸方向に対する摩擦プレート54、55の移動は、リテーナプレート56によって規制され、ピストン57Aによる押圧力はクラッチドラム52および軸受を介して変速機ケース12で受け止められる。
【0093】
摩擦プレート55に対して径方向外方には環状のリターンスプリング62が設けられている。リターンスプリング62は、円錐形状を有する皿ばねであって摩擦プレート54の間に設けられている。リターンスプリング62は、主入力軸10の軸方向において隣接する摩擦プレート54同士の距離が大きくなるように摩擦プレート54を付勢している。
【0094】
これにより、ピストン57Aに油圧が作用しなくなると、リターンスプリング62によって摩擦プレート54が離れる方向に移動し、摩擦プレート54が摩擦プレート55から引き離される。このため、ピストン57Aに油圧が作用しなくなると、クラッチ装置51を介する主入力軸10から副入力軸11へのエンジン2の動力伝達がされなくなる。
【0095】
このように本実施例のクラッチ装置51は、主入力軸10の他端部10bと副入力軸11の他端部11bに設けられており、主入力軸10の動力を副入力軸11に伝達可能または遮断可能としている。本実施例のクラッチ装置51は、本発明のクラッチ機構を構成する。
【0096】
副入力軸11の他端部11bは、軸受63によって隔壁12Bに回転自在に支持されている。副入力軸11の他端部11b側には段部11f(異なる直径の部分の間に形成される主入力軸10の軸方向に垂直な面)が形成されており、段部11fのクラッチ装置51側には軸受63のインナレース63Aが嵌合している。なお、段部11fのトルクコンバータ4側は、スプラインが形成された軸部11dとなっている。
【0097】
主入力軸10の軸方向において、CSC57と軸受63のインナレース63Aとの間にはスナップリング64が設けられている。スナップリング64は、副入力軸11に形成された溝に嵌合しており、軸受63のインナレース63Aのクラッチ装置51側に接触している。
【0098】
なお、軸受63のインナレース63Aのトルクコンバータ4側は、入力アイドルギヤ73に接触している。つまり、軸受63のインナレース63Aは、入力アイドルギヤ73、スペーサ17、ハブ76とともに、スナップリング64と段部11eとの間に配置されて、副入力軸11に位置決めされている。
【0099】
インナレース63Aは、ボール部材63Cを介してアウタレース63Bに回転自在に連結されている。アウタレース63Bの外周部にはスナップリング65が嵌合しており、スナップリング65は、隔壁12Bの貫通孔12bに嵌合している。これにより、軸受63は、主入力軸10の軸方向で位置決めされて隔壁12Bに固定される。
【0100】
そして、軸受63のインナレース63Aに副入力軸11の段部11eおよびスナップリング64により、軸受63が主入力軸10の軸方向に位置決めされて副入力軸11に取付けられているので、副入力軸11が隔壁12Bに位置決めされた状態で取り付けられている。
【0101】
副入力軸11の軸方向においてトルクコンバータ4とクラッチ装置51の間には4速段用の変速ギヤ71、5速段用の変速ギヤ72、入力アイドルギヤ73および同期装置74が設けられている。詳細には、副入力軸11は、副入力軸11の他端部11bの軸端にクラッチ装置51のクラッチハブ53に嵌合するスプラインが形成され、このスプラインの遊星歯車機構21側に軸受63が配置されている。そして、副入力軸11は、軸受63から遊星歯車機構21側に向かって順に、入力アイドルギヤ73、4速段用の変速ギヤ71、同期装置74、5速段用の変速ギヤ72が配置され、一端部11aがワンウェイクラッチ25用の部分となっている。
【0102】
副入力軸11は、一端部11aの径が最も大きく形成されており、一端部11aから他端部11bに向かうに従って径が順次小さくなる軸部11c、11dを有し、軸方向において軸部11dに隣接する他端部11bの径が最も小さく形成されている。軸部11dにはスプラインが形成されており、入力アイドルギヤ73とハブ76がスプライン嵌合している。つまり、入力アイドルギヤ73とハブ76は、同一のスプラインに嵌合している。
【0103】
4速段用の変速ギヤ71は、その内径に配置されたニードルベアリング13Hを介して副入力軸11の軸部11dに外嵌されたスペーサ17に相対回転自在に支持されている。スペーサ17は、その両端が入力アイドルギヤ73とハブ76に当接している。
【0104】
すなわち、スペーサ17は、ニードルベアリング13Hの転送面を構成するとともに、入力アイドルギヤ73とハブ76の間で変速ギヤ71の軸方向の位置決めをし、軸受63と段部11e(軸部11dと軸部11cの間の段部)の間においてハブ76と入力アイドルギヤ73の軸方向の位置決めをしつつ副入力軸11に取付けられている。
【0105】
5速段用の変速ギヤ72は、その内径に配置されたニードルベアリング13Iを介して副入力軸11の軸部11cに相対回転自在に支持されている。変速ギヤ72は、ハブ76と段部(軸部11cと一端部11aの間の段部)に挟まれて軸方向に位置決めされて副入力軸11に取付けられている。
【0106】
すなわち、軸部11cは、ニードルベアリング13Iの転送面を構成するとともに、変速ギヤ72の軸方向の位置決めをしている。本実施例の4速段用の変速ギヤ71および5速段用の変速ギヤ72は、本発明の入力ギヤを構成する。
【0107】
入力アイドルギヤ73は、副入力軸11の軸部11dにスプライン嵌合しており、副入力軸11と一体で回転する。同期装置74は、ハブ76、スリーブ77およびシンクロナイザリング78A、78Bを備えている。
【0108】
ハブ76は、副入力軸11の軸部11dにスプライン嵌合しており、副入力軸11と一体で回転する。ハブ76は、スペーサ17と段部11eに挟まれて軸方向に位置決めされて副入力軸11に取付けられている。スリーブ77は、ハブ76にスプライン嵌合されており、副入力軸11の軸方向に移動自在となっている。
【0109】
スリーブ77は、シフト操作によって変速段が4速段または5速段にシフトされると、中立位置から図示しないシフトフォークによって4速段用の変速ギヤ71側または5速段用の変速ギヤ72側に移動される。
【0110】
例えば、自動によるシフト操作が行われる場合には、スリーブ77は、図示しないアクチュエータによって駆動される。アクチュエータは、運転者によって操作されるシフトレバーがドライブレンジにシフトされた状態あるいはリバースレンジにシフトされた状態において、予めスロットル開度と車速とをパラメータとして設定された変速マップに基づいて同期装置74および後述する同期装置89、90、114を操作して変速段の制御を行う。
【0111】
スリーブ77の内周面にはスプライン77a、77bが形成されている。4速段用の変速ギヤ71にはスプライン77aに嵌合するスプライン71aが形成されており、5速段用の変速ギヤ72にはスプライン77bに嵌合するスプライン72aが形成されている。
【0112】
スリーブ77が中立位置から4速段用の変速ギヤ71側に移動すると、スリーブ77のスプライン77aがスプライン71aに嵌合することにより、スリーブ77を介して副入力軸11と4速段用の変速ギヤ71とが連結され、4速段用の変速ギヤ71が副入力軸11と一体で回転する。
【0113】
スリーブ77が中立位置から5速段用の変速ギヤ72側に移動すると、スリーブ77のスプライン77bがスプライン72aに嵌合することにより、スリーブ77を介して副入力軸11と5速段用の変速ギヤ72とが連結され、5速段用の変速ギヤ72が副入力軸11と一体で回転する。
【0114】
シンクロナイザリング78Aは、ハブ76と4速段用の変速ギヤ71との間に設けられており、外周面にスリーブ77のスプライン77aに嵌合するスプライン78aが形成されている。
【0115】
シンクロナイザリング78Bは、ハブ76と5速段用の変速ギヤ72との間に設けられており、外周面にスリーブ77のスプライン77bに嵌合するスプライン78bが形成されている。
【0116】
シンクロナイザリング78Aは、スリーブ77が中立位置から4速段の変速ギヤ71側に移動したときに、スプライン78aがスリーブ77のスプライン77aに係合し、さらに、4速段の変速ギヤ71のテーパ面71bに押圧されることで摩擦接触することにより、4速段用の変速ギヤ71の回転をスリーブ77の回転(副入力軸11の回転)に同期させる。
【0117】
シンクロナイザリング78Bは、スリーブ77が中立位置から5速段の変速ギヤ72側に移動したときに、スプライン78bがスリーブ77のスプライン77bに係嵌合し、さらに、5速段の変速ギヤ72のテーパ面72bに押圧されることで摩擦接触することにより、5速段用の変速ギヤ72の回転をスリーブ77の回転(副入力軸11の回転)に同期させる。
【0118】
このように本実施例の同期装置74は、4速段用の変速ギヤ71と5速段用の変速ギヤ72を選択的に副入力軸11に連結し、連結時に同期動作を行うことで変速ショックや異音が発生することを抑制する。
【0119】
4速段用の変速ギヤ71のニードルベアリング13Hと副入力軸11の軸部11dとの間にはスペーサ17が設けられている。スペーサ17は、入力アイドルギヤ73とハブ76が嵌合する軸部11dのスプラインに外嵌して、ニードルベアリング13Hの転走面を構成している。スペーサ17によって、入力アイドルギヤ73とハブ76の取付に同一のスプラインを使用することが可能となって、副入力軸11の製造が容易となる。
【0120】
軸部11cと軸部11dとの境界には段部11eが形成されており、段部11eと軸受63のインナレース63Aとの間に入力アイドルギヤ73、スペーサ17およびハブ76が挟み込まれるように設置されている。
【0121】
これにより、4速段用の変速ギヤ71、入力アイドルギヤ73およびハブ76が副入力軸11の軸方向に位置決めされる。このように軸部11dは、4速段用の変速ギヤ71、入力アイドルギヤ73およびハブ76を副入力軸11の軸方向に位置決めして設置する設置部を構成する。
【0122】
図4において、隔壁12Aには環状のオイルポンプ41が設けられており、主入力軸10は、オイルポンプ41を貫通している。オイルポンプ41は、シェル4Cのポンプ軸4cに係合して回転駆動されるインナロータ41Aと、インナロータ41Aの径方向の外方に設けられたアウタロータ41Bとを備えている。
【0123】
オイルポンプ41は、例えば、トロコイド式のオイルポンプから構成されており、アウタロータ41Bに形成された内歯とインナロータ41Aに形成された外歯とが接触することにより、外歯と内歯との間にオイルを吸排する作動室が形成されている。
【0124】
オイルポンプ41において、エンジン2の動力(回転)がシェル4Cのポンプ軸4cによってインナロータ41Aに伝達されることにより、インナロータ41Aとアウタロータ41Bとが一方向に回転すると、作動室の容積増加および容積減少が連続して発生する。これにより、オイルポンプ41は、吸入ポート42からオイルを吸入し、吐出ポート43にオイルを吐出する。
【0125】
図6、
図7において、ブレーキケース32と隔壁12Aには吸入ポート42と吐出ポート43が形成されており、吸入ポート42と吐出ポート43は、ブレーキケース32の合わせ面32fと隔壁12Aの合わせ面12fとが合わされた状態で各ポートの空間が形成される。
【0126】
本実施例の吸入ポート42および吐出ポート43は、本発明のポンプ室を構成し、ブレーキケース32の合わせ面32fは、本発明のブレーキケースの壁面を構成する。合わせ面32fと隔壁12Aの合わせ面12fとが合わされた状態では、吸入ポート42と吐出ポート43の周囲の各合わせ面32f、12fは完全に密着され、オイルが漏出することが防止されている。
【0127】
隔壁12Aには図示しないオイルストレーナによって浄化されたオイルが流れるオイル通路が形成されており、オイル通路を流れるオイルは、吸入ポート42から作動室に吸入される。変速機ケース12にはオイルが貯留されており、オイルポンプ41は、変速機ケース12に貯留されるオイルをオイルストレーナ、オイル通路を介して吸い込む。
【0128】
オイルポンプ41の上方に配置されたオイル供給孔44Aからピストン36に作動オイルが供給される。オイル供給孔44Aからピストン36に供給される作動オイルは、オイルポンプ41が関係しないオイルであって、図示しないオイルコントロールバルブによって制御される。
【0129】
吐出ポート43から吐出されるオイルの一部は、図示しないオイルコントロールバルブによって制御され、オイル供給孔44B、44C、44Dに供給される。オイル供給孔44Cから供給されるオイルは、主入力軸10のオイル通路10A(
図4参照)に流れてトルクコンバータ4に供給される。
【0130】
オイル供給孔44Bから供給されるオイルは、主入力軸10のオイル通路10B(
図4参照)に流れて副入力軸11やクラッチ装置51に供給される。オイル供給孔44Dから供給されるオイルは、円筒部材18の周囲を流れてトルクコンバータ4に供給される。本実施例のオイル供給孔44A、44B、44C、44Dは本発明の油路を構成する。
【0131】
図4において、オイル通路10A、10Bは、主入力軸10の軸心を軸方向に沿って延びており、仕切部10Cによって仕切られている。オイル通路10Aは、仕切部10Cから主入力軸10の一端部10aまで延びており、一端部10a側がトルクコンバータ4内で開口している。
【0132】
オイル通路10Bは、仕切部10Cから主入力軸10の他端部10bまで延びており、他端部10b側がプラグ16によって閉じられている(
図5参照)。
【0133】
主入力軸10とブレーキケース32との間には円筒部材18が設けられており、主入力軸10は、メタルベアリング13Jを介して円筒部材18に回転自在に支持されている。円筒部材18には油孔18a、18bが形成されている。
【0134】
吐出ポート43から吐出されるオイルの一部は、オイル供給孔44Cから円筒部材18に形成された油孔18bおよび主入力軸10に形成された放射孔10dを通してオイル通路10Aに導入される。
【0135】
吐出ポート43から吐出されるオイルの一部は、オイル供給孔44Bから円筒部材18に形成された油孔18aおよび主入力軸10に形成された放射孔10eを通してオイル通路10Bに導入される。
【0136】
また、吐出ポート43から吐出されるオイルの一部は、オイル供給孔44Dからオイルポンプ41のインナロータ41Aの内径側を通過してトルクコンバータ4のポンプ軸4cと円筒部材18の間を通してトルクコンバータ4に導入される。
【0137】
オイル通路10Aに導入されるオイルは、トルクコンバータ4に導入される。また、図示しないオイルコントロールバルブの切換えによってトルクコンバータ4から排出されるオイルは、オイル通路10Aに導入可能となる。
【0138】
オイル通路10Bに導入されるオイルは、主入力軸10の回転による遠心力によって放射孔10f、10g、10h、10i、10j、10k、10mを通して主入力軸10の外部に吐出される。なお、主入力軸10の放射孔から副入力軸11の内部に吐出されるオイルは、副入力軸11の遠心力によって副入力軸11の放射孔から径方向外方や軸方向の両端開口から軸方向に吐出される。
【0139】
放射孔10fは、遊星歯車機構21とブレーキ装置31の間の位置に対応して主入力軸10に形成されている。放射孔10fから吐出されるオイルは、軸受15、スラストベアリング13G、13Mおよび摩擦プレート34、35に供給されることにより、軸受15、スラストベアリング13G、13Mおよび摩擦プレート34、35が潤滑および冷却される。
【0140】
放射孔10gは、ニードルベアリング13Cの位置に対応して主入力軸10に形成されている。放射孔10gから吐出されるオイルは、ニードルベアリング13C、13Nに供給されることにより、ニードルベアリング13C、13Nが潤滑および冷却される。また、ニードルベアリング13C、13Nを潤滑および冷却したオイルは、遊星歯車機構21を潤滑および冷却する。
【0141】
放射孔10hは、キャリア22とリングギヤ24の間の位置に対応して主入力軸10に形成されている。放射孔10hから吐出されるオイルは、スラストベアリング13Eに供給されることにより、スラストベアリング13Eが潤滑および冷却される。また、スラストベアリング13Eを潤滑および冷却したオイルは、リングギヤ24の内部に流れ込み遊星歯車機構21を潤滑および冷却する。
【0142】
放射孔10iは、ニードルベアリング13Aの位置に対応して主入力軸10に形成されている。放射孔10iから吐出されるオイルは、ニードルベアリング13Aに供給されることにより、ニードルベアリング13Aが潤滑および冷却される。
【0143】
また、ニードルベアリング13Aを潤滑および冷却したオイルは、スラストベアリング13Fを潤滑および冷却するとともに、副入力軸11に形成された図示しない放射孔等を通してニードルベアリング13I、シンクロナイザリング78Bおよびワンウェイクラッチ25を潤滑および冷却する。
【0144】
放射孔10jは、ニードルベアリング13Hの位置に対応して主入力軸10に形成されている。放射孔10jから吐出されるオイルは、副入力軸11内に供給されるとともに、副入力軸11、スペーサ17に形成された図示しない放射孔等を通してニードルベアリング13H、シンクロナイザリング78Aに供給されることにより、ニードルベアリング13H、シンクロナイザリング78Aが潤滑および冷却される。
【0145】
放射孔10kは、ニードルベアリング13Bの位置に対応して主入力軸10に形成されている。放射孔10kから吐出されるオイルは、ニードルベアリング13Bに供給されることにより、ニードルベアリング13Bが潤滑および冷却される。なお、軸受63は、主入力軸10のオイル通路10A、10Bとは別の経路からオイルが供給されることにより、潤滑および冷却される。
【0146】
放射孔10mは、端部10bに形成されたスプラインとニードルベアリング13Bとの間の位置に対応して主入力軸10に形成されている。放射孔10mから吐出されるオイルは、主入力軸10と副入力軸11との間からクラッチ装置51の軸受59および摩擦プレート54、55に供給されることにより、軸受59および摩擦プレート54、55が潤滑および冷却される。
【0147】
図3において、前進用アイドル軸6は、軸受80A、80Bを介して左右の隔壁12B、12Aに回転自在に支持されている。
図2、
図3において、前進用アイドル軸6にはアイドルギヤ81、82が設けられている。
【0148】
アイドルギヤ81は、前進用アイドル軸6の軸方向においてクラッチ装置51側に設けられており、入力アイドルギヤ73に噛み合っている。アイドルギヤ81は、前進用アイドル軸6にスプライン嵌合しており、前進用アイドル軸6と一体で回転する。これにより、アイドルギヤ81は、入力アイドルギヤ73からの動力を前進用アイドル軸6に伝達可能である。
【0149】
アイドルギヤ82は、前進用アイドル軸6の軸方向においてトルクコンバータ4側に設けられており、前進用アイドル軸6と一体で形成されて前進用アイドル軸6と一体で回転する。
【0150】
図3において、中間軸8は、軸受83A、83Bを介して左右の隔壁12B、12Aに回転自在に支持されている。
図2、
図3において、中間軸8にはクラッチ装置51側からトルクコンバータ4側に向かって1-2速段用の変速ギヤ84、3速段用の変速ギヤ85、6速段用の変速ギヤ86、7速段用の変速ギヤ87、アイドルギヤ88が設けられている。
【0151】
変速ギヤ84から変速ギヤ87は、クラッチ装置51側からトルクコンバータ4側に向かうに従って径が大きくなる。すなわち、中間軸8の軸線方向において、変速ギヤ84から変速ギヤ87のうち、クラッチ装置51側の変速ギヤ84の径が最も小さく形成されており、トルクコンバータ4側の変速ギヤ87の径が最も大きく形成されている。
【0152】
変速ギヤ84から変速ギヤ87は、中間軸8に相対回転自在に設けられており、アイドルギヤ88は、中間軸8と一体で回転するように中間軸8にスプライン嵌合されている。アイドルギヤ88は、前進用アイドル軸6のアイドルギヤ82に噛み合っており、アイドルギヤ88にはアイドルギヤ82から動力が伝達される。
【0153】
1-2速段用の変速ギヤ84と3速段用の変速ギヤ85との間には同期装置89が設けられており、6速段用の変速ギヤ86と7速段用の変速ギヤ87との間には同期装置90が設けられている。
【0154】
同期装置89は、シフト操作によって1速段または2速段にシフトされると、1-2速段用の変速ギヤ84を中間軸8に連結する。これにより、1-2速段用の変速ギヤ84は、中間軸8と一体で回転する。
【0155】
同期装置89は、シフト操作によって3速段にシフトされると、3速段用の変速ギヤ85を中間軸8に連結する。これにより、3速段用の変速ギヤ85は、中間軸8と一体で回転する。
【0156】
同期装置90は、シフト操作によって6速段にシフトされると、6速段用の変速ギヤ86を中間軸8に連結する。これにより、6速段用の変速ギヤ86は、中間軸8と一体で回転する。
【0157】
同期装置90は、シフト操作によって7速段にシフトされると、7速段用の変速ギヤ87を中間軸8に連結する。これにより、7速段用の変速ギヤ87は、中間軸8と一体で回転する。
【0158】
同期装置74、90、114は、所謂、シングルコーン式であり、同期装置89は、所謂、トリプルコーン式であるが、同期装置89、90、114は、同期装置74と同ように動作するので、具体的な説明は省略する。
【0159】
出力軸9は、
図3において、軸受91A、91Bを介して左右の隔壁12B、12Aに回転自在に支持されている。
図2、
図3において、出力軸9にはクラッチ装置51側からトルクコンバータ4側に向かって1-2-4速段用の出力ギヤ92、3-5速段用の出力ギヤ93、6速段用の出力ギヤ94、7速段用の出力ギヤ95および前進用のファイナルドライブギヤ96が設けられている。
出力ギヤ92から出力ギヤ95は、クラッチ装置51側からトルクコンバータ4側に向かうに従って小径に形成されている。すなわち、出力ギヤ92から出力ギヤ95のうち、クラッチ装置51側の出力ギヤ92は、径が最も大きく形成されており、トルクコンバータ4側の出力ギヤ95は、径が最も小さく形成されている。
【0160】
出力ギヤ92から出力ギヤ95は、出力軸9にスプライン嵌合しており、出力軸9と一体で回転する。 前進用のファイナルドライブギヤ96は、出力軸9と一体に形成されており、出力軸9と一体で回転する。
【0161】
1-2-4速段用の出力ギヤ92は、4速段用の変速ギヤ71と1-2速段用の変速ギヤ84とに噛み合っている。1-2-4速段用の出力ギヤ92は、1-2速段用の変速ギヤ84よりも大径に形成されており、4速段用の変速ギヤ71は、1-2-4速段用の出力ギヤ92よりも小径で、かつ、1-2速段用の変速ギヤ84よりも大径に形成されている。
【0162】
3-5速段用の出力ギヤ93は、3速段用の変速ギヤ85と5速段用の変速ギヤ72とに噛み合っている。3-5速段用の出力ギヤ93は、3速段用の変速ギヤ85よりも大径に形成されており、5速段用の変速ギヤ72は、3-5変速段用の出力ギヤ93よりも大径に形成されている。
【0163】
6速段用の出力ギヤ94は、6速段用の変速ギヤ86に噛み合っており、6速段用の変速ギヤ86よりも小径に形成されている。7速段用の出力ギヤ95は、7速段用の変速ギヤ87に噛み合っており、7速段用の変速ギヤ87よりも小径に形成されている。
【0164】
このように、各ギヤ71、72、84、85、86、87、92、93、94、95の径を設定することにより、各変速段に応じたギヤ比が設定される。本実施例の1-2-4速段用の出力ギヤ92および3-5速段用の出力ギヤ93は、本発明の出力ギヤを構成する。なお、ギヤ比に関しては、アイドルギヤのギヤ比も関係する。
【0165】
前進用のファイナルドライブギヤ96は、ディファレンシャル装置97のファイナルドリブンギヤ97Aに噛み合っている。これにより、出力軸9の動力は、前進用のファイナルドライブギヤ96およびファイナルドリブンギヤ97Aを経てディファレンシャル装置97に伝達される。
【0166】
図2において、ディファレンシャル装置97にはドライブシャフト98L、98Rを介して駆動輪99L、99Rが連結されており、ディファレンシャル装置97は、エンジン2の動力を差動機構97Bによって左右のドライブシャフト98L、98Rに分配して駆動輪99L、99Rに伝達する。
【0167】
図3に示すように、後進用アイドル軸7は、軸受100A、100Bを介して左右の隔壁12B、12Aに回転自在に支持されている。後進用アイドル軸7には後進用のアイドルギヤ101、102が設けられている。
【0168】
アイドルギヤ101は、クラッチ装置51側に設けられており、後進用アイドル軸7にスプライン嵌合されて後進用アイドル軸7と一体で回転する。
【0169】
アイドルギヤ102は、トルクコンバータ4側に設けられており、後進用アイドル軸7と一体に形成されて後進用アイドル軸7と一体で回転する。
【0170】
変速機1は、後進軸110を備えており、後進軸110は、入力軸5(主入力軸10、副入力軸11)と平行に設置されている。
【0171】
図3に示すように、後進軸110は、軸受111A、111Bを介して隔壁12Aおよび変速機ケース12の側壁12Bに回転自在に支持されている。
【0172】
図2、
図3において、後進軸110には後進ギヤ112と、後進ギヤ112よりも小径に形成された後進用のファイナルドライブギヤ113とが設けられている。後進ギヤ112は、後進軸110に相対回転自在に設けられている。後進用のファイナルドライブギヤ113は、後進軸110と一体に形成されており、後進軸110と一体で回転する。
【0173】
図1に示すように、後進用アイドル軸7は、入力軸5、前進用アイドル軸6、中間軸8、出力軸9および後進軸110よりも高い位置に設置されており、本実施例に係る車両用変速機の中で最も高い位置に設置されている。なお、入力軸5は、後進用アイドル軸7および後進軸110を除いて最も高い位置に設置されている。
【0174】
これにより、入力軸5の上側に後進段を構成する軸を集中して設置できるとともに、入力軸5の下側に前進段を構成する軸を集中して設置でき、多軸であっても動力の伝達経路を構成する軸を変速機ケース12内に効率よく設置できる。
【0175】
後進ギヤ112は、アイドルギヤ102に噛み合っており、後進用のファイナルドライブギヤ113は、ファイナルドリブンギヤ97Aに噛み合っている。
【0176】
後進軸110には同期装置114が設けられている。同期装置114は、シフト操作によって後進段にシフトされると、後進ギヤ112を後進軸110に連結する。これにより、後進ギヤ112は、後進軸110と一体で回転する。
【0177】
このとき、後進用のファイナルドライブギヤ113からファイナルドリブンギヤ97Aに動力が伝達され、ファイナルドリブンギヤ97Aが前進時と反対方向に回転し、車両が後進される。なお、同期装置114は、同期装置74と同ように動作するので、具体的な説明は省略する。
【0178】
次に、各変速段における動力伝達経路を説明する。
後進用アイドル軸7および後進軸10は、第1の仮想平面L1よりも上側に配置され、かつ、後進用アイドル軸7の軸心は、第2の仮想平面L2よりも後側に配置されている。
(変速段が1速段の場合の動力伝達経路)
1速段においては、クラッチ装置51が解放された状態、すなわち、CSC57のピストン57Aにオイルが供給されずに摩擦プレート54、55が離隔した状態となるとともに、ブレーキ装置31によってサンギヤ23がブレーキケース32に固定されて回転不能となる。
【0179】
さらに、同期装置89が中立位置から1-2速段用の変速ギヤ84側に移動し、1-2速段用の変速ギヤ84を中間軸8に連結する。
【0180】
これにより、エンジン2の動力は、クランク軸3からトルクコンバータ4、主入力軸10、リングギヤ24、キャリア22、ワンウェイクラッチ25を経て副入力軸11に伝達される。
【0181】
このように遊星歯車機構21を介して主入力軸10から副入力軸11に動力が伝達される場合には、遊星歯車機構21によって主入力軸10の回転が減速されて副入力軸11に伝達される。
【0182】
次いで、副入力軸11に伝達されたエンジン2の動力は、副入力軸11から入力アイドルギヤ73、アイドルギヤ81、前進用アイドル軸6、アイドルギヤ82、アイドルギヤ88を経て中間軸8に伝達される。
【0183】
次いで、中間軸8に伝達されたエンジン2の動力は、同期装置89によって中間軸8に連結された1-2速段用の変速ギヤ84から1-2-4速段用の出力ギヤ92、出力軸9、前進用のファイナルドライブギヤ96を経てファイナルドリブンギヤ97Aに伝達された後、差動機構97Bからドライブシャフト98L、98Rを介して駆動輪99L、99Rに伝達される。
【0184】
(変速段が2速段の場合の動力伝達経路)
2速段においては、クラッチ装置51が締結された状態、すなわち、CSC57のピストン57Aにオイルが供給されて摩擦プレート54、55が摩擦接触した状態となるとともに、ブレーキ装置31が開放された状態となってサンギヤ23がブレーキケース32に固定されずに回転可能となる。また、同期装置89は、1速段の場合と同じように1-2速段用の変速ギヤ84を中間軸8に連結した状態とする。
【0185】
これにより、エンジン2の動力は、クランク軸3からトルクコンバータ4、主入力軸10、クラッチ装置51を経て副入力軸11に伝達され、以後の動力伝達経路は、1速段の動力伝達経路と同じとなる。
【0186】
また、主入力軸10からクラッチ装置51を経て副入力軸11に動力が伝達される際(つまり、主入力軸10と副入力軸11が一体になって回転する際)には、ワンウェイクラッチ25の作用によって遊星歯車機構21を介して副入力軸11から主入力軸10に動力が伝達されることがない。
【0187】
また、主入力軸10からクラッチ装置51を経て副入力軸11に動力が伝達される際には、副入力軸11の回転が遊星歯車機構21によって減速されることがないので、副入力軸11の回転は主入力軸10の回転速度と同じになり、ワンウェイクラッチ25にて副入力軸11から遊星歯車機構21に動力が伝達されることを確実に防止できる。
【0188】
すなわち、クラッチ装置51が締結されてクラッチ装置51を介して主入力軸10から副入力軸11に動力が伝達される場合には、遊星歯車機構21を介して主入力軸10から副入力軸11に動力が伝達される場合に比べて、副入力軸11の回転速度は大きくなり、ワンウェイクラッチ25は動力を伝達できない方向の差回転状態となる。
【0189】
以上のようなワンウェイクラッチ25の作用によって、1速段から2速段に変速される場合には、クラッチ装置51を締結することで遊星歯車機構21からクラッチ装置51に動力の伝達経路を切換えることができ、同期装置89は解除する必要が無くて1-2速段用の変速ギヤ84を中間軸8に連結した状態を維持するので、同期装置89を操作することにより発生するトルク抜け(駆動力の途切れ)を防止でき、円滑な変速を行うことができる。
【0190】
(変速段が3速段の場合の動力伝達経路)
3速段においては、クラッチ装置51が締結された状態となるとともに、ブレーキ装置31が開放された状態となってサンギヤ23がブレーキケース32に固定されずに回転可能となる。このとき、同期装置89は、中立位置から3速段用の変速ギヤ85側に移動し、3速段用の変速ギヤ85を中間軸8に連結する。
【0191】
これにより、エンジン2の動力は、クランク軸3からトルクコンバータ4、主入力軸10、を経て副入力軸11に伝達される。
【0192】
主入力軸10からクラッチ装置51を経て副入力軸11に動力が伝達される場合には、遊星歯車機構21によって主入力軸10の回転が減速されずに副入力軸11に伝達される。
【0193】
次いで、副入力軸11に伝達されたエンジン2の動力は、副入力軸11から入力アイドルギヤ73、アイドルギヤ81、前進用アイドル軸6、アイドルギヤ82、アイドルギヤ88を経て中間軸8に伝達される。
【0194】
次いで、中間軸8に伝達されたエンジン2の動力は、同期装置89によって中間軸8に連結された3速段用の変速ギヤ85から3-5速段用の出力ギヤ93、出力軸9、前進用のファイナルドライブギヤ96を経てファイナルドリブンギヤ97Aに伝達された後、差動機構97Bからドライブシャフト98L、98Rを介して駆動輪99L、99Rに伝達される。
【0195】
(変速段が4速段の場合の動力伝達経路)
4速段においては、クラッチ装置51が締結された状態となるとともに、ブレーキ装置31が開放された状態となってサンギヤ23がブレーキケース32に固定されずに回転可能となる。このとき、同期装置74は、中立位置から4速段用の変速ギヤ71側に移動し、4速段用の変速ギヤ71を副入力軸11に連結する。
【0196】
これにより、エンジン2の動力は、クランク軸3からトルクコンバータ4、主入力軸10、クラッチ装置51を経て副入力軸11に伝達される。
【0197】
次いで、副入力軸11に伝達されたエンジン2の動力は、同期装置74によって副入力軸11に連結された4速段用の変速ギヤ71、1-2-4速段用の出力ギヤ92、出力軸9、前進用のファイナルドライブギヤ96を経てファイナルドリブンギヤ97Aに伝達される。次いで、ファイナルドリブンギヤ97Aに伝達されたエンジン2の動力は、差動機構97Bからドライブシャフト98L、98Rを介して駆動輪99L、99Rに伝達される。
【0198】
(変速段が5速段の場合の動力伝達経路)
5速段においては、クラッチ装置51が締結された状態となるとともに、ブレーキ装置31が開放された状態となってサンギヤ23がブレーキケース32に固定されずに回転可能となる。このとき、同期装置74は、中立位置から5速段用の変速ギヤ72側に移動し、5速段用の変速ギヤ72を副入力軸11に連結する。
【0199】
これにより、エンジン2の動力は、クランク軸3からトルクコンバータ4、主入力軸10、クラッチ装置51を経て副入力軸11に伝達される。
【0200】
次いで、副入力軸11に伝達されたエンジン2の動力は、同期装置74によって副入力軸11に連結された5速段用の変速ギヤ72、3-5速段用の出力ギヤ93、出力軸9、前進用のファイナルドライブギヤ96を経てファイナルドリブンギヤ97Aに伝達される。次いで、ファイナルドリブンギヤ97Aに伝達されたエンジン2の動力は、差動機構97Bからドライブシャフト98L、98Rを介して駆動輪99L、99Rに伝達される。
【0201】
(変速段が6速段の場合の動力伝達経路)
6速段においては、クラッチ装置51が締結された状態となるとともに、ブレーキ装置31が開放された状態となってサンギヤ23がブレーキケース32に固定されずに回転可能となる。このとき、同期装置90は、中立位置から6速段用の変速ギヤ86側に移動し、6速段用の変速ギヤ86を中間軸8に連結する。
【0202】
これにより、エンジン2の動力は、クランク軸3からトルクコンバータ4、主入力軸10、クラッチ装置51を経て副入力軸11に伝達される。
【0203】
次いで、副入力軸11に伝達されたエンジン2の動力は、副入力軸11から入力アイドルギヤ73、アイドルギヤ81、前進用アイドル軸6、アイドルギヤ82、アイドルギヤ88を経て中間軸8に伝達される。
【0204】
次いで、中間軸8に伝達されたエンジン2の動力は、同期装置90によって中間軸8に連結された6速段用の変速ギヤ86から6速段用の出力ギヤ94、出力軸9、前進用のファイナルドライブギヤ96を経てファイナルドリブンギヤ97Aに伝達された後、差動機構97Bからドライブシャフト98L、98Rを介して駆動輪99L、99Rに伝達される。
【0205】
(変速段が7速段の場合の動力伝達経路)
7速段においては、クラッチ装置51が締結された状態となるとともに、ブレーキ装置31が開放された状態となってサンギヤ23がブレーキケース32に固定されずに回転可能となる。このとき、同期装置90は、中立位置から7速段用の変速ギヤ87側に移動し、7速段用の変速ギヤ87を中間軸8に連結する。
【0206】
これにより、エンジン2の動力は、クランク軸3からトルクコンバータ4、主入力軸10、クラッチ装置51を経て副入力軸11に伝達される。
【0207】
次いで、副入力軸11に伝達されたエンジン2の動力は、副入力軸11から入力アイドルギヤ73、アイドルギヤ81、前進用アイドル軸6、アイドルギヤ82、アイドルギヤ88を経て中間軸8に伝達される。
【0208】
次いで、中間軸8に伝達されたエンジン2の動力は、同期装置90によって中間軸8に連結された7速段用の変速ギヤ87から7速段用の出力ギヤ95、出力軸9、前進用のファイナルドライブギヤ96を経てファイナルドリブンギヤ97Aに伝達された後、差動機構97Bからドライブシャフト98L、98Rを介して駆動輪99L、99Rに伝達される。
【0209】
(変速段が後進段の場合の動力伝達経路)
後進段においては、クラッチ装置51が解放された状態となるとともに、ブレーキ装置31によってサンギヤ23がブレーキケース32に固定されて回転不能となる。
【0210】
さらに、同期装置114が中立位置から後進ギヤ112側に移動し、後進ギヤ112を後進軸110に連結する。
【0211】
これにより、エンジン2の動力は、クランク軸3からトルクコンバータ4、主入力軸10、リングギヤ24、キャリア22、ワンウェイクラッチ25を経て副入力軸11に伝達される。
【0212】
なお、遊星歯車機構21を介して主入力軸10から副入力軸11に動力が伝達される場合には遊星歯車機構21によって主入力軸10の回転が減速されて副入力軸11に伝達される。
【0213】
次いで、副入力軸11に伝達されたエンジン2の動力は、副入力軸11から入力アイドルギヤ73、アイドルギヤ101、後進用アイドル軸7、アイドルギヤ102、同期装置114によって後進軸110に連結された後進ギヤ112を経て後進軸110に伝達される。
【0214】
次いで、後進軸110に伝達されたエンジン2の動力は、後進軸110から後進用のファイナルドライブギヤ113を経てファイナルドリブンギヤ97Aに伝達された後、差動機構97Bからドライブシャフト98L、98Rを介して駆動輪99L、99Rに伝達される。
【0215】
このように、本実施例の変速機によれば、入力軸5は、主入力軸10と、主入力軸10と同軸上に位置して主入力軸10の外周部に設けられた副入力軸11とを備えており、トルクコンバータ4が主入力軸10の一端部10aに連結されている。
【0216】
さらに、遊星歯車機構21は、主入力軸10と副入力軸11の一端部とを連結し、主入力軸10の回転を減速しながら副入力軸11に動力を伝達可能に構成されており、クラッチ装置51は、主入力軸10の他端部10bと副入力軸11の他端部10bに設けられ、主入力軸10の動力を副入力軸11に伝達可能または動力の伝達を遮断可能に構成されている。
【0217】
これに加えて、4速段用の変速ギヤ71、5速段用の変速ギヤ72および同期装置74は、副入力軸11の軸方向においてトルクコンバータ4とクラッチ装置51の間に位置して副入力軸11に設置されている。
【0218】
これにより、入力軸5の軸長が長軸となるのを抑制しつつ、入力軸5の径方向に別軸にて減速機として機能する遊星歯車機構21を設置することを不要にできる。
【0219】
このため、入力軸5に前進用アイドル軸6、後進用アイドル軸7、出力軸9および後進軸110を近づけて設置することができ、変速機1の小型化を容易に図ることができる。
【0220】
これに加えて、主入力軸10から副入力軸11に遊星歯車機構21およびクラッチ装置51から動力を伝達して、副入力軸11に設置された4速段用の変速ギヤ71、5速段用の変速ギヤ72および入力アイドルギヤ73から前進用アイドル軸6、後進用アイドル軸7、出力軸9および後進軸110に動力を伝達できる。これにより、変速機1を容易に多段化できる。
【0221】
また、本実施例の変速機1によれば、遊星歯車機構21と副入力軸11との間にワンウェイクラッチ25が設置されており、ワンウェイクラッチ25は、主入力軸10から副入力軸11に副入力軸11の回転速度を増速する方向の動力を伝達可能とし、副入力軸11から主入力軸10に主入力軸10の回転速度を増速する方向の動力を伝達不能としている。
【0222】
これにより、クラッチ装置51を締結する簡単な操作によって、主入力軸10から遊星歯車機構21を介して副入力軸11に動力を伝達する状態から主入力軸10からクラッチ装置51を介して副入力軸11に動力を伝達する状態に容易に切換えることができる。
【0223】
このため、これにより、同期装置89を動作させずに、単一の1-2速段用の変速ギヤ84の接続を維持したまま1速段と2速段との切換えを行うことができ、同期装置89を操作することにより発生するトルク抜けを防止でき、円滑な変速を行うことができる。
【0224】
また、本実施例の変速機1によれば、トルクコンバータ4、入力軸5、遊星歯車機構21およびクラッチ装置51を収容する変速機ケース12を有し、遊星歯車機構21は、キャリア22、サンギヤ23と、リングギヤ24と、ブレーキ装置31とを備えている。
【0225】
さらに、ブレーキ装置31は、サンギヤ23を回転不能とする状態と回転を許容する状態とに切換えるクラッチハブ33、摩擦プレート34、35、ピストン36およびリターンスプリング37と、これらを収容し変速機ケース12に固定されるブレーキケース32とを備えている。
【0226】
これに加えて、ブレーキケース32は、主入力軸10が貫通される貫通孔32aを有し、軸受15を介して主入力軸10を回転自在に支持している。
【0227】
これにより、ブレーキ装置31のブレーキケース32を用いて主入力軸10を支持することができ、主入力軸10を支持する支持部を新たに設けることを不要にできる。このため、専用の支持部が不要な分だけ入力軸5を短くでき、変速機1のより一層の小型化を図ることができる。
【0228】
また、本実施例の変速機1によれば、遊星歯車機構21は、主入力軸10に連結されるリングギヤ24と、ワンウェイクラッチ25を介して副入力軸11に連結されるキャリア22と、クラッチハブ33を一体に有し摩擦プレート34、35によってブレーキケース32に固定されるサンギヤ23とを備えている。
【0229】
遊星歯車機構21は、サンギヤ23がブレーキケース32に固定された場合に、リングギヤ24に入力される主入力軸10の回転を減速しながらワンウェイクラッチ25を介してキャリア22から副入力軸11に伝達する。
【0230】
これにより、入力軸5と同軸上に減速機として機能する遊星歯車機構21を設置して、主入力軸10の回転を容易に減速して副入力軸11に伝達できる。このため、入力軸5の軸長が長軸となるのを抑制しつつ、入力軸5の径方向に別軸の遊星歯車機構21を設置することを不要にできる。
【0231】
また、本実施例の変速機1によれば、オイルを送り出すオイルポンプ41を有し、主入力軸10は、オイルポンプ41を貫通している。ブレーキケース32は、変速機ケース12の隔壁12Aと共にオイルポンプ41の吸入ポート42および吐出ポート43を形成するための合わせ面32fを有し、ブレーキケース32にはオイルが流れるオイル供給孔44Aからオイル供給孔44Dが形成されている。
【0232】
これにより、油路や油路が設けられたポンプカバー等を新たに設けることを不要にでき、その分だけ入力軸5を短くできる。
【0233】
また、本実施例の変速機1によれば、リングギヤ24は、主入力軸10にスプライン嵌合される内端部24aを有し、内端部24aの一部は、主入力軸10と副入力軸11との間に入り込んでいる。これにより、入力軸5をより一層短くできる。
【0234】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0235】
1...車両用変速機、2...エンジン(駆動源)、4...トルクコンバータ、5...入力軸、10...主入力軸、10a...一端部(主入力軸の一端部)、10b...他端部(主入力軸の他端部)、11...副入力軸、11a...一端部(副入力軸の一端部)、11b...他端部(副入力軸の他端部)、12...変速機ケース、21...遊星歯車機構、22...キャリア(回転要素、第2の回転要素)、23...サンギヤ(回転要素、第3の回転要素、3つの回転要素のうちの1つの回転要素)、24...リングギヤ(回転要素、第1の回転要素)、24a...内端部(第1の回転要素の内端部)、25...ワンウェイクラッチ、31...ブレーキ装置、32...ブレーキケース、32a...貫通孔(ブレーキケースの貫通孔)、32f...合わせ面(ブレーキケースの壁面)、33...クラッチハブ(ブレーキ部)、34,35...摩擦プレート(ブレーキ部)、36...ピストン(ブレーキ部)、37...リターンスプリング(ブレーキ部)、41...オイルポンプ、42...吸入ポート(ポンプ室)、43...吐出ポート(ポンプ室)、44A、44B、44C、44D...オイル供給孔(油路)、51...クラッチ装置(クラッチ機構)、71...4速段用の変速ギヤ(入力ギヤ)、72...5速段用の変速ギヤ(入力ギヤ)、92...1-2-4速段用の出力ギヤ(出力ギヤ)、93...3-5速段用の出力ギヤ(出力ギヤ)