(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物及びその成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 67/02 20060101AFI20220621BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20220621BHJP
C08L 69/00 20060101ALI20220621BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20220621BHJP
C08K 3/40 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
C08L67/02
C08K7/14
C08L69/00
C08K5/10
C08K3/40
(21)【出願番号】P 2018131659
(22)【出願日】2018-07-11
【審査請求日】2021-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】594137579
【氏名又は名称】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】日野 浩靖
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/146807(WO,A1)
【文献】特開2018-095669(JP,A)
【文献】特開2015-168819(JP,A)
【文献】国際公開第2014/061429(WO,A1)
【文献】特開2016-216556(JP,A)
【文献】米国特許第06043322(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
C08G63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)と、テレフタル酸残基、1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、及び2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール残基を含むポリエステル樹脂(B)とを含有する熱可塑性樹脂成分と、ガラス充填剤(C)と、エステル化合物(D)とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、
エステル化合物(D)が、炭素数10~22の脂肪族カルボン酸と炭素数22以下の脂肪族アルコールのエステル化合物であり、
ポリカーボネート樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の合計100質量部中にポリカーボネート樹脂(A)を25~65質量部、ポリエステル樹脂(B)を75~35質量部含み、該熱可塑性樹脂成分100質量部に対してガラス充填剤(C)を10~45質量部、エステル化合物(D)を0.5~2.2質量部含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
エステル化合物(D)が、炭素数16~22の脂肪族飽和モノカルボン酸と炭素数16~22の1価脂肪族飽和アルコールとのエステル化合物、及び/又は、炭素数16~22の脂肪族飽和モノカルボン酸と、炭素数2~12の多価アルコールとのフルエステル化合物であることを特徴とする請求項
1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
ガラス充填剤(C)が扁平率1.5~8の断面形状を持つガラス繊維であることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1ないし
3のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を射出成形してなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱可塑性樹脂組成物及びその成形品に係り、詳しくは、ガラス繊維等のガラス充填剤を充填したガラス強化熱可塑性樹脂組成物において、透明性を改善した熱可塑性樹脂組成物と、この熱可塑性樹脂組成物の成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、耐衝撃性、透明性等に優れた樹脂として、多くの分野で幅広く用いられている。中でもガラス繊維等のガラス充填剤を充填したガラス強化ポリカーボネート樹脂組成物は、寸法安定性、剛性(曲げ強度)、耐熱性等の特性に優れることから、カメラ、OA機器、通信機器、精密機器、電気電子部品、自動車部品、一般機械部品等の産業分野で幅広く使用されている。
しかし、ガラス強化ポリカーボネート樹脂組成物は、ガラスとポリカーボネート樹脂との屈折率の差に起因して透明性が大きく低下するという欠点がある。
【0003】
特許文献1には、脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する脂肪族カーボネート繰り返し単位を有するポリカーボネート樹脂に、特定のガラス組成のガラス繊維を組み合わせることで、ポリカーボネート樹脂の屈折率とガラス繊維の屈折率との差を小さくして、透明性を改善したポリカーボネート樹脂組成物が提案されている。しかし、特許文献1のポリカーボネート樹脂組成物では、ポリカーボネート樹脂及びガラス繊維として特定のものを用いる必要があり、材料が限定されるという欠点がある。
【0004】
特許文献2には、透明性、衝撃強度、表面硬度に優れる熱可塑性樹脂組成物として、ポリカーボネート樹脂と、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)コポリエステル樹脂と、リン系酸化防止剤とを所定の割合で含むものが記載されているが、この特許文献2には、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)コポリエステル樹脂の配合で表面硬度が向上することが示されているのみであり、ガラス繊維の配合についての記載はなく、ポリ(1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)コポリエステル樹脂がガラス繊維を配合することによるポリカーボネート樹脂の透明性の低下を改善する効果を奏することを示唆する記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6131264号公報
【文献】特開2016-216556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ポリカーボネート樹脂にガラス繊維等のガラス充填剤を充填したガラス強化熱可塑性樹脂組成物における透明性を改善した熱可塑性樹脂組成物及びその成形品と、この熱可塑性樹脂組成物を用いて透明性により優れた成形品を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂に特定のポリエステル樹脂を所定の割合で配合すると共に、更にエステル化合物を所定の割合で配合すると、ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂で構成される樹脂マトリクスの屈折率をガラス繊維の屈折率に近づけることができ、また、配合したエステル化合物が成形時に成形品表面に浮き出ることで、ガラス強化熱可塑性樹脂成形品の透明性を改善することができることを見出した。
【0008】
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであって、以下を要旨とする。
【0009】
[1] ポリカーボネート樹脂(A)と、テレフタル酸残基、1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、及び2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール残基を含むポリエステル樹脂(B)とを含有する熱可塑性樹脂成分と、ガラス充填剤(C)と、エステル化合物(D)とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、ポリカーボネート樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の合計100質量部中にポリカーボネート樹脂(A)を25~65質量部、ポリエステル樹脂(B)を75~35質量部含み、該熱可塑性樹脂成分100質量部に対してガラス充填剤(C)を10~45質量部、エステル化合物(D)を0.5~2.2質量部含むことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【0010】
[2] エステル化合物(D)が、炭素数10~22の脂肪族カルボン酸と炭素数22以下の脂肪族アルコールのエステル化合物であることを特徴とする[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0011】
[3] エステル化合物(D)が、炭素数16~22の脂肪族飽和モノカルボン酸と炭素数16~22の1価脂肪族飽和アルコールとのエステル化合物、及び/又は、炭素数16~22の脂肪族飽和モノカルボン酸と、炭素数2~12の多価アルコールとのフルエステル化合物であることを特徴とする[2]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0012】
[4] ガラス充填剤(C)が扁平率1.5~8の断面形状を持つガラス繊維であることを特徴とする、[1]ないし[3]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物。
【0013】
[5] [1]ないし[4]のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物を射出成形してなる成形品。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ポリカーボネート樹脂にガラス繊維等のガラス充填剤を充填して寸法安定性、剛性(曲げ強度)、耐熱性等を高めたガラス強化熱可塑性樹脂組成物の欠点であった透明性を顕著に改善して、透明性に優れたガラス強化熱可塑性樹脂組成物及びその成形品を提供することができる。本発明の熱可塑性樹脂組成物及びその成形品によれば、自動車や建物等の窓等を含めたガラス代替材料として、その他透明性が要求される用途に、ガラス強化熱可塑性樹脂組成物の適用範囲を大幅に拡大することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
〔熱可塑性樹脂組成物〕
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)と、テレフタル酸残基、1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、及び2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール残基を含むポリエステル樹脂(B)とを含有する熱可塑性樹脂成分と、ガラス充填剤(C)と、エステル化合物(D)とを含む熱可塑性樹脂組成物であって、ポリカーボネート樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の合計100質量部中にポリカーボネート樹脂(A)を25~65質量部、ポリエステル樹脂(B)を75~35質量部含み、該熱可塑性樹脂成分100質量部に対してガラス充填剤(C)を10~45質量部、エステル化合物(D)を0.5~2.2質量部含むことを特徴とする。
【0017】
[メカニズム]
本発明の熱可塑性樹脂組成物では、テレフタル酸残基、1,4-シクロヘキサンジメタノール残基、及び2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール残基を含むポリエステル樹脂(B)をポリカーボネート樹脂(A)に対して所定の割合で混合して用いることにより、樹脂マトリクスの屈折率をガラスの屈折率に近づけることができ、樹脂マトリクスの屈折率とガラス充填剤(C)の屈折率の差に起因する透明性の低下の問題を軽減することができる。
即ち、ポリカーボネート樹脂(A)は、ガラスよりも屈折率が大きく、ポリカーボネート樹脂(A)にガラス充填剤(C)を充填したガラス強化ポリカーボネート樹脂組成物では、この屈折率差に起因して透明性が大きく低下するが、このようなポリカーボネート樹脂(A)に対して、屈折率の小さいポリエステル樹脂(B)を所定の割合で配合することにより、ポリカーボネート樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)で形成される樹脂マトリクスの屈折率を、用いるガラス充填剤(C)の屈折率に近づけることができ、透明性を顕著に改善することができる。
加えて、エステル化合物(D)を所定の割合で配合することにより、このエステル化合物(D)が成形時に成形品の表面に浮き出ることによっても透明性が改善される。即ち、エステル化合物(D)は、離型剤として機能するものであり、成形品表面に浮き出て離型性を高めるものであるが、本発明では、このようなエステル化合物(D)を離型剤としての配合量よりも若干多めに配合することで、離型性のみならず透明性の改善効果を発揮させることができる。
【0018】
[ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明で用いるポリカーボネート樹脂(A)としては、透明性、耐衝撃性、耐熱性等の面から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物又はこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲン又は炭酸ジエステルと反応させることによって得られる、分岐していてもよい熱可塑性重合体又は共重合体である。芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、従来公知のホスゲン法(界面重合法)や溶融法(エステル交換法)により製造したものを使用することができる。また、溶融法を用いた場合には、末端基のOH基量を調整した芳香族ポリカーボネート樹脂を使用することができる。
【0019】
原料の芳香族ジヒドロキシ化合物としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(=ビスフェノールA)、テトラメチルビスフェノールA、ビス(4-ヒドロキシフェニル)-p-ジイソプロピルベンゼン、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4-ジヒドロキシジフェニル等が挙げられ、好ましくはビスフェノールAが挙げられる。また、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物にスルホン酸テトラアルキルホスホニウムが1個以上結合した化合物を使用することもできる。
【0020】
分岐した芳香族ポリカーボネート樹脂を得るには、上述した芳香族ジヒドロキシ化合物の一部を、以下の分岐剤、即ち、フロログルシン、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプテン-2、4,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,6-ジメチル-2,4,6-トリ(4-ヒドロキシフェニルヘプテン-3、1,3,5-トリ(4-ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1-トリ(4-ヒドロキシフェニル)エタン等のポリヒドロキシ化合物や、3,3-ビス(4-ヒドロキシアリール)オキシインドール(=イサチンビスフェノール)、5-クロルイサチン、5,7-ジクロルイサチン、5-ブロムイサチン等の化合物で置換すればよい。これら置換する化合物の使用量は、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、通常0.01~10モル%であり、好ましくは0.1~2モル%である。
【0021】
芳香族ポリカーボネート樹脂としては、上述した中でも、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンから誘導されるポリカーボネート樹脂、又は、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンと他の芳香族ジヒドロキシ化合物とから誘導されるポリカーボネート共重合体が好ましい。また、シロキサン構造を有するポリマー又はオリゴマーとの共重合体等の、ポリカーボネート樹脂を主体とする共重合体であってもよい。
【0022】
上述した芳香族ポリカーボネート樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量を調節するには、一価の芳香族ヒドロキシ化合物を用いればよく、この一価の芳香族ヒドロキシ化合物としては、例えば、m-及びp-メチルフェノール、m-及びp-プロピルフェノール、p-tert-ブチルフェノール、p-長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。
【0024】
本発明で用いるポリカーボネート樹脂(A)の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量で、好ましくは13,000~22,000、より好ましくは13,000~20,000である。ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が上記下限よりも小さいと熱可塑性樹脂組成物製造時のストランドの引き取りが安定せずにペレット化が困難となるおそれがあり、上記上限よりも大きいとポリエステル樹脂(B)との相溶性が低下して透明性に優れた成形品を得ることができないおそれがある。
【0025】
ポリカーボネート樹脂(A)としては、粘度平均分子量の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記範囲外であるポリカーボネート樹脂を混合してもよい。この場合、混合物の粘度平均分子量が上記範囲となるように用いる。
【0026】
[ポリエステル樹脂(B)]
本発明で用いるポリエステル樹脂(B)は、テレフタル酸残基、1,4-シクロヘキサンジメタノール(以下「CHDM」と称す場合がある。)残基、及び2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール(以下「TMCD」と称す場合がある。)残基を含む非晶性ポリエステル樹脂(B)である。
ここで、「残基」とは、ポリエステル樹脂の製造原料として用いられる化合物に由来して、ポリエステル樹脂中に取り込まれる構造部分をさす。
即ち、ポリエステル樹脂は、ジカルボン酸成分(ジカルボン酸或いはその誘導体)とジオールとをエステル化反応又はエステル化交換反応して得られるものであるが、本発明で用いるポリエステル樹脂(B)は、ジカルボン酸成分として少なくともテレフタル酸成分(テレフタル酸或いはその誘導体)を用い、ジオールとして少なくともCHDMとTMCDを用いて製造されたものである。
なお、CHDMはシス、トランス、或いはこれらの混合物のいずれであってもよく、また、TMCDについてもシス、トランス、或いはこれらの混合物でのいずれあってもよい。
【0027】
本発明で用いるポリエステル樹脂(B)は、ポリエステル樹脂(B)に含まれる全ジオール残基に占めるCHDM残基とTMCD残基の合計の割合が85モル%以上、特に90~100モル%、とりわけ95~100モル%であることが、透明性、耐熱性の観点から好ましい。
また、CHDM残基とTMCD残基の合計100モル%に占めるCHDM残基の割合が10~90モル%で、TMCD残基の割合が90~10モル%であることが好ましく、CHDM残基の割合が20~85モル%でTMCD残基の割合が15~80モル%であることがより好ましく、CHDM残基の割合が30~80モル%でTMCD残基の割合が20~70モル%であることが特に好ましい。全ジオール残基に占めるCHDM残基またはTMCD残基の比率が100モル%に近づくと、ポリエステル樹脂(B)が結晶性となり、透明性が低下するため好ましくない。CHDM残基とTMCD残基とを上記割合で含むことで、透明性、耐熱性を向上させることができるため好ましい。
【0028】
なお、本発明で用いるポリエステル樹脂(B)がジオール残基としてCHDM残基及びTMCD残基以外の他のジオール残基を含む場合、他のジオール残基を構成するジオールとしては、2~16個の炭素原子を含むジオールが挙げられ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、p-キシレングリコール等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0029】
一方で、本発明で用いるポリエステル樹脂(B)は、ポリエステル樹脂(B)に含まれる全ジカルボン酸残基に占めるテレフタル酸残基の割合が50モル%以上、特に80モル%以上、とりわけ90~100モル%であることが、入手性の観点から好ましい。
【0030】
本発明で用いるポリエステル樹脂(B)が、テレフタル酸残基以外の他のジカルボン酸残基を含む場合、他のジカルボン酸残基を構成するジカルボン酸としては、イソフタル酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、1,4-、1,5-、2,6-、2,7-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-スチルベンジカルボン酸の芳香族ジカルボン酸や、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アザレン酸等の脂肪族ジカルボン酸の1種又は2種以上が挙げられる。
【0031】
ポリエステル樹脂(B)についても、1種のみを用いてもよく、CHDM残基とTMCD残基の組成や物性等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
【0032】
[ポリカーボネート樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の割合]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、上記ポリカーボネート樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)とを、これらの合計100質量部中にポリカーボネート樹脂(A)を25~65質量部、ポリエステル樹脂(B)を75~35質量部含む。この範囲よりもポリカーボネート樹脂(A)が多く、ポリエステル樹脂(B)が少なくても、逆にポリエステル樹脂(B)が多く、ポリカーボネート樹脂(A)が少なくても、樹脂マトリクスの屈折率をガラス充填剤(C)の屈折率に近づけることができず、透明性に優れた成形品を得ることができない。
【0033】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、特にポリカーボネート樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の合計100質量部中にポリカーボネート樹脂(A)を26~60質量部、ポリエステル樹脂(B)を40~74質量部含むことが好ましく、ポリカーボネート樹脂(A)を27~55質量部、ポリエステル樹脂(B)を45~73質量部含むことが更に好ましい。
【0034】
なお、ポリカーボネート樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)との混合割合は、用いるガラス充填剤(C)の屈折率と樹脂マトリクスの屈折率とが近似するように設計することが好ましく、従って、用いるガラス充填剤(C)の屈折率に応じて、ポリカーボネート樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の混合割合は適宜調整することが好ましい。
【0035】
[その他の樹脂成分]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、熱可塑性樹脂成分として、上記のポリカーボネート樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)以外の他の熱可塑性樹脂を含有していてもよい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物が含有し得る他の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリメタクリレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、更にはポリカーボネート樹脂(A)以外のポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂(B)以外のポリエステル樹脂や熱可塑性エラストマーなどが挙げられるが、これらの他の熱可塑性樹脂の含有割合は、ポリカーボネート樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)とを併用することによる本発明の効果、即ち透明性の改善効果を有効に得る上で、ポリカーボネート樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)と他の熱可塑性樹脂との合計である全熱可塑性樹脂成分100質量部中に10質量部以下、特に5質量部以下であることが好ましい。
【0036】
[ガラス充填剤(C)]
本発明で用いるガラス充填剤(C)の形態には特に制限はなく、ガラス繊維、ガラスパウダー、ガラスフレーク、ミルドファイバー、ガラスビーズなど様々な形態のものを用いることができ、これらの1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、透明性と補強効果の観点からガラス繊維又はガラスフレークを用いることが好ましく、ガラス繊維を用いることが特に好ましい。
なお、ガラス充填剤(C)のガラス組成には特に制限はないが、好ましくは無アルカリガラス(Eガラス)である。
【0037】
ガラス充填剤(C)として用いるガラス繊維は、断面(ガラス繊維の繊維長さ方向に直交する断面)形状が、円形のものよりも、断面形状が扁平のガラス繊維(以下、「扁平断面ガラス繊維」と称す場合がある。)の方が、成形時の配向性に優れ、寸法安定性等の向上効果に優れる上に、成形品の透明性の向上にも有効であることから好ましい。
ここで、ガラス繊維の断面形状は、繊維の長さ方向に直交する断面の長径をD2、短径をD1とするときの長径/短径比(D2/D1)で示される扁平率で表すことができ、本発明で用いるガラス繊維の扁平率はその平均値で1.5~8であることが好ましく、3~8であることがより好ましい。
【0038】
また、本発明で用いる扁平断面ガラス繊維の断面の長径D1の平均値は、通常10~50μm、好ましくは15~40μm、より好ましくは20~35μm、さらに好ましくは24~30μmであり、特に好ましくは25~30μmである。
【0039】
なお、扁平断面ガラス繊維の断面形状は、扁平状(略長方形状)の他、楕円状、繭状、三つ葉状、及びこれに類する形状の非円形形状が含まれるが、扁平状又は楕円状が好ましく、扁平状が特に好ましい。
【0040】
また、本発明で用いるガラス繊維の平均繊維長と平均繊維径の比(アスペクト比)は、通常2~1000、好ましくは2.5~700、より好ましくは3~600である。ガラス繊維のアスペクト比が2以上であれば、機械的強度の向上効果に優れ、600以下であれば、ソリや異方性を抑え、成形品外観の低下を防止することができる。
【0041】
なお、ガラス繊維の平均繊維径(直径)とは、円形断面のガラス繊維であれば、その直径が該当するが、その他の断面形状のガラス繊維では、その断面形状を同一面積の真円形に換算したときの数平均繊維径(直径)をいう。また、ガラス繊維の平均繊維長とは、繊維の長軸方向の長さの数平均値をいう。なお、ガラス繊維の平均繊維長、平均繊維径は、SEM(走査型電子顕微鏡)観察により任意に選択した100個程度のガラス繊維について測定した繊維長と繊維径の平均値として求めることができるが、市販品についてはカタログ値を採用することができる。
【0042】
ガラスフレークとは、通常、平均粒径が10~4000μm、平均厚みが0.1~10μmで、アスペクト比(平均最大径/平均厚みの比)が2~1000程度の鱗片状のガラス粉末である。本発明で用いるガラスフレークは、平均粒径2000μm以下、特に100~1500μmで、平均厚みが0.1~10μm、特に0.4~6μmで、アスペクト比が10~800、特に50~600のものが好ましい。
【0043】
本発明で用いるガラス充填剤(C)は、樹脂マトリクスとの接着性を改良すると共に、ポリカーボネート樹脂(A)の分解を抑制するために、シランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理したものを用いてもよい。ただし、市販のガラス繊維やガラスフレークは、予め表面処理剤で表面処理されているものが多いため、表面処理品を用いる場合は、表面処理剤を更に用いる必要はない。
【0044】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ガラス繊維等のガラス充填剤(C)を、ポリカーボネート樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)を含む熱可塑性樹脂成分100質量部に対して10~45質量部含む。ガラス充填剤(C)の含有量が10質量部未満では、ガラス充填剤(C)を配合したことによる剛性等の向上効果を十分に得ることができず、45質量部を超えると、ガラス充填剤(C)の高配合に起因してガラス充填剤(C)の表面浮きによる透明性や成形品外観の低下、耐衝撃性の低下が問題となる上に、熱可塑性樹脂組成物の溶融押出(ペレット化)が困難になる場合がある。ガラス充填剤(C)は、熱可塑性樹脂成分100質量部に対して12~43質量部、特に15~40質量部配合することが好ましい。
【0045】
[エステル化合物(D)]
エステル化合物(D)としては、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステル化物が好適に用いられる。
【0046】
エステル化合物(D)を構成する脂肪族カルボン酸としては、飽和又は不飽和の脂肪族モノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸を挙げることができる。ここで脂肪族カルボン酸は、脂環式カルボン酸も包含する。このうち好ましい脂肪族カルボン酸は、炭素数10~22、中でも炭素数16~22のモノ又はジカルボン酸であり、炭素数16~22の脂肪族飽和モノカルボン酸がさらに好ましい。このような脂肪族カルボン酸の具体例としては、パルミチン酸、ステアリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリン酸、ラウリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、テトラトリアコンタン酸、モンタン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸等を挙げることができる。
【0047】
一方、エステル化合物(D)を構成する脂肪族アルコールとしては、飽和又は不飽和の1価アルコール、飽和又は不飽和の多価アルコール等を挙げることができる。これらのアルコールは、フッ素原子、アリール基等の置換基を有していてもよい。これらのアルコールのうち、炭素数22以下の1価又は多価の飽和アルコールが好ましく、さらに炭素数16~22の脂肪族飽和1価アルコール又は炭素数2~12の多価アルコールが好ましい。ここで脂肪族アルコールは、脂環式アルコールも包含する。
【0048】
これらのアルコールの具体例としては、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等の1価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、2,2-ジヒドロキシペルフルオロプロパノール、ネオペンチレングリコール、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールなどを挙げることができる。
【0049】
なお、上記脂肪族アルコールと上記脂肪族カルボン酸とのエステル化合物は、そのエステル化率が必ずしも100%である必要はなく、80%以上であればよい。本発明にかかるエステル化合物(D)のエステル化率は好ましくは85%以上であり、特に好ましくは90%以上である。
【0050】
本発明で用いるエステル化合物(D)は、特に、下記(1)及び/又は(2)であることが、透明性、射出成形時の発生ガスの観点から好ましい。
(1) 炭素数10~22、好ましくは16~22の脂肪族飽和モノカルボン酸と炭素数10~22、特に炭素数16~22の1価脂肪族飽和アルコールとのエステル化合物
(2) 炭素数10~22、好ましくは炭素数16~22の脂肪族飽和モノカルボン酸と、炭素数2~12の多価アルコールのフルエステル化合物
【0051】
上記(1)のモノエステル化合物としては、ステアリルステアレート、ベヘニルベヘネート等が挙げられる。
【0052】
また、上記(2)のフルエステル化合物としては、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート等が挙げられる。
【0053】
これらのエステル化合物(D)は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
本発明の熱可塑性樹脂組成物中のエステル化合物(D)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)を含む熱可塑性樹脂成分100質量部に対し、0.5~2.2質量部であり、好ましくは0.6~2.0質量部である。エステル化合物(D)の含有量が上記下限値未満では、エステル化合物(D)を比較的多く含むことによる透明性の改善効果を十分に得ることができず、上記上限を超えると、エステル化合物(D)の過剰配合による耐加水分解性の低下、射出成形時の金型汚染などの問題を引き起こすことがある。
【0055】
[その他の添加剤]
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、更に種々の添加剤を含有していても良い。このような添加剤としては、リン系熱安定剤等の安定剤(E)、紫外線吸収剤、帯電防止剤、染顔料、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、流動性改良剤、摺動性改質剤、耐衝撃性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤、難燃剤、滴下防止剤などが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物に好適な添加剤の一例について具体的に説明する。
【0056】
<安定剤(E)>
安定剤(E)としては、以下のリン系熱安定剤や、フェノール系酸化防止剤、有機リン酸エステル化合物等が挙げられる。
【0057】
(リン系熱安定剤)
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、リン系熱安定剤を含有していてもよい。リン系熱安定剤は一般的に、樹脂成分を溶融混練する際、高温下での滞留安定性や樹脂成形品使用時の耐熱安定性の向上に有効である。
【0058】
リン系熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜リン酸エステル、リン酸エステル(ただし、後述の有機リン酸エステル化合物を除く。)等が挙げられ、中でも3価のリンを含み、変色抑制効果を発現しやすい点で、ホスファイト、ホスホナイト等の亜リン酸エステルが好ましい。
【0059】
ホスファイトとしては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジラウリルハイドロジェンホスファイト、トリエチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、モノフェニルジデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、水添ビスフェノールAフェノールホスファイトポリマー、ジフェニルハイドロジェンホスファイト、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェニルジ(トリデシル)ホスファイト)、テトラ(トリデシル)4,4’-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、ビス(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジラウリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(4-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、水添ビスフェノールAペンタエリスリトールホスファイトポリマー、ビス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
【0060】
また、ホスホナイトとしては、テトラキス(2,4-ジ-iso-プロピルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-n-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-iso-プロピルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-n-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,3’-ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)-3,3’-ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられる。
【0061】
亜リン酸エステルの中では、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましく、耐熱性が良好であることと加水分解しにくいという点で、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトが特に好ましい。
【0062】
リン系熱安定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
本発明の熱可塑性樹脂組成物がリン系熱安定剤を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)を含む熱可塑性樹脂成分100質量部に対して通常0.01~3質量部、特に0.02~1質量部、とりわけ0.03~0.5質量部であることが好ましい。リン系熱安定剤の配合量が上記下限値以上であることにより、リン系熱安定剤を配合することによる熱安定性の向上効果を十分に得ることができる。ただし、リン系熱安定剤の配合量は多過ぎてもその効果は頭打ちとなり、経済的でないので上記上限以下とする。
【0064】
(フェノール系酸化防止剤)
本発明の熱可塑性樹脂組成物はフェノール系酸化防止剤を含有していてもよく、フェノール系酸化防止剤を含有することで、色相劣化や、熱滞留時の機械物性の低下を抑制することができる。
【0065】
フェノール系酸化防止剤しては、例えばヒンダードフェノール系酸化防止剤が挙げられる。その具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサン-1,6-ジイルビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4-ジメチル-6-(1-メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-tert-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン,2,6-ジ-tert-ブチル-4-(4,6-ビス(オクチルチオ)-1,3,5-トリアジン-2-イルアミノ)フェノール等が挙げられる。
【0066】
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなフェノール系酸化防止剤の市販品としては、例えば、BASF社製「イルガノックス1010」、「イルガノックス1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO-60」、「アデカスタブAO-50」等が挙げられる。
【0067】
フェノール系酸化防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
本発明の熱可塑性樹脂組成物がフェノール系酸化防止剤を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)を含む熱可塑性樹脂成分100質量部に対して通常0.02~3質量部、特に0.03~1質量部、とりわけ0.04~0.5質量部であることが好ましい。フェノール系酸化防止剤の配合量が上記下限値以上であることにより、フェノール系酸化防止剤を配合することによる上記の効果を有効に得ることができる。ただし、フェノール系酸化防止剤の配合量は多過ぎてもその効果は頭打ちとなり、経済的でないので上記上限以下とする。
【0069】
なお、本発明の熱可塑性樹脂組成物においては、リン系熱安定剤とフェノール系酸化防止剤とを共に含有することが好ましく、この場合、リン系熱安定剤とフェノール系酸化防止剤とを、リン系熱安定剤:フェノール系酸化防止剤=1:0.2~3の質量比で、合計量としてポリカーボネート樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)を含む熱可塑性樹脂成分100質量部中に対して0.04~2質量部含有することが好ましい。
【0070】
(有機リン酸エステル化合物)
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、熱安定性の向上のために下記一般式(1)で表される有機リン酸エステル化合物を含有していてもよい。
(RO)nP(O)(OH)3-n …(1)
(式中、Rは総炭素数が2~25の、置換基を有していてもよいアルキル基を表し、nは1又は2を表す。但しnが2の場合に2つのRは同一であってもよく、相互に異なっていてもよい。)
【0071】
上記一般式(1)におけるRが表す非置換のアルキル基としては、オクチル基、2-エチルヘキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ドデシル基、トリデシル基、イソトリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基及びステアリル基などが挙げられる。置換基を有するアルキル基としては、ブチル基やアリル基、メタリル基などの鎖状炭化水素基がエーテル結合やエステル結合によりアルキル基に結合したものが挙げられる。Rとしてはこれらの置換基を有するアルキル基を用いることが好ましい。また置換基の炭素も含めたRにおける総炭素数は5以上であることが好ましい。
【0072】
有機リン酸エステル化合物は一般式(1)におけるRやnが異なる化合物の混合物であってもよい。
【0073】
本発明の熱可塑性樹脂組成物が有機リン酸エステル化合物を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)を含む熱可塑性樹脂成分100質量部に対して通常0.02~3質量部、特に0.03~1質量部、とりわけ0.04~0.5質量部であることが好ましい。有機リン酸エステル化合物の配合量が上記下限値以上であることにより、有機リン酸エステル化合物を配合することによる熱安定性の向上効果を十分に得ることができる。ただし、有機リン酸エステル化合物の配合量は多過ぎてもその効果は頭打ちとなり、経済的でないので上記上限以下とする。
【0074】
<紫外線吸収剤>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤を含有することで、本発明の熱可塑性樹脂組成物の耐候性を向上させることができ、耐候性の向上で透明性の低下を防止することができる。
【0075】
紫外線吸収剤としては、例えば、酸化セリウム、酸化亜鉛などの無機紫外線吸収剤;ベンゾトリアゾール化合物、ベンゾフェノン化合物、サリシレート化合物、シアノアクリレート化合物、トリアジン化合物、オギザニリド化合物、マロン酸エステル化合物、ヒンダードアミン化合物などの有機紫外線吸収剤などが挙げられる。これらの中では有機紫外線吸収剤が好ましく、ベンゾトリアゾール化合物がより好ましい。有機紫外線吸収剤を選択することで、本発明の熱可塑性樹脂組成物の透明性や機械物性が良好なものになる。
【0076】
ベンゾトリアゾール化合物の具体例としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’,5’-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチル-フェニル)-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチル-フェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール)、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミル)-ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2N-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]等が挙げられ、なかでも2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2N-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]が好ましく、特に2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールが好ましい。このようなベンゾトリアゾール化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ701」、「シーソーブ705」、「シーソーブ703」、「シーソーブ702」、「シーソーブ704」、「シーソーブ709」、共同薬品社製「バイオソーブ520」、「バイオソーブ582」、「バイオソーブ580」、「バイオソーブ583」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ71」、「ケミソーブ72」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV5411」、アデカ社製「LA-32」、「LA-38」、「LA-36」、「LA-34」、「LA-31」、チバ・スペシャリティケミカルズ社製「チヌビンP」、「チヌビン234」、「チヌビン326」、「チヌビン327」、「チヌビン328」等が挙げられる。
【0077】
ベンゾフェノン化合物の具体例としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-n-ドデシロキシベンゾフェノン、ビス(5-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-2-メトキシフェニル)メタン、2,2’-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン等が挙げられ、このようなベンゾフェノン化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ100」、「シーソーブ101」、「シーソーブ101S」、「シーソーブ102」、「シーソーブ103」、共同薬品社製「バイオソーブ100」、「バイオソーブ110」、「バイオソーブ130」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ10」、「ケミソーブ11」、「ケミソーブ11S」、「ケミソーブ12」、「ケミソーブ13」、「ケミソーブ111」、BASF社製「ユビヌル400」、BASF社製「ユビヌルM-40」、BASF社製「ユビヌルMS-40」、サイテックインダストリーズ社製「サイアソーブUV9」、「サイアソーブUV284」、「サイアソーブUV531」、「サイアソーブUV24」、アデカ社製「アデカスタブ1413」、「アデカスタブLA-51」等が挙げられる。
【0078】
サリシレート化合物の具体例としては、例えば、フェニルサリシレート、4-tert-ブチルフェニルサリシレート等が挙げられ、このようなサリシレート化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ201」、「シーソーブ202」、ケミプロ化成社製「ケミソーブ21」、「ケミソーブ22」等が挙げられる。
【0079】
シアノアクリレート化合物の具体例としては、例えば、エチル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリレート等が挙げられ、このようなシアノアクリレート化合物としては、具体的には例えば、シプロ化成社製「シーソーブ501」、共同薬品社製「バイオソーブ910」、第一化成社製「ユビソレーター300」、BASF社製「ユビヌルN-35」、「ユビヌルN-539」等が挙げられる。
【0080】
オギザニリド化合物の具体例としては、例えば、2-エトキシ-2’-エチルオキザリニックアシッドビスアリニド等が挙げられ、このようなオキザリニド化合物としては、具体的には例えば、クラリアント社製「サンデュボアVSU」等が挙げられる。
【0081】
マロン酸エステル化合物としては、2-(アルキリデン)マロン酸エステル類が好ましく、2-(1-アリールアルキリデン)マロン酸エステル類がより好ましい。このようなマロン酸エステル化合物としては、具体的には例えば、クラリアントジャパン社製「PR-25」、チバ・スペシャリティケミカルズ社製「B-CAP」等が挙げられる。
【0082】
紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0083】
本発明の熱可塑性樹脂組成物が紫外線吸収剤を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)を含む熱可塑性樹脂成分100質量部に対して、通常0.001~3質量部、好ましくは0.01~1質量部、より好ましくは0.1~0.5質量部であり、さらに好ましくは0.1~0.4質量部である。紫外線吸収剤の含有量が前記範囲の下限値以上であると、耐候性の向上効果を十分に得ることができ、上記上限値以下であれば、モールドデボジット等による金型汚染を防止することができる。
【0084】
<帯電防止剤>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、所望によって帯電防止剤を含有していてもよい。帯電防止剤は特に限定されないが、好ましくは下記一般式(2)で表されるスルホン酸ホスホニウム塩が挙げられる。
【0085】
【0086】
(式中、R3は炭素数1~40のアルキル基又はアリール基であり、置換基を有していても良く、R4~R7は、各々独立して水素原子、炭素数1~10のアルキル基又はアリール基であり、これらは同じでも異なっていてもよい。)
【0087】
上記一般式(2)中のR3は、炭素数1~40のアルキル基又はアリール基であるが、透明性や耐熱性、ポリカーボネート樹脂(A)等の熱可塑性樹脂成分への相溶性の観点からアリール基の方が好ましく、炭素数1~34、好ましくは5~20、特に、10~15のアルキル基で置換されたアルキルベンゼン又はアルキルナフタリン環から誘導される基が好ましい。また、一般式(2)中のR4~R7は、各々独立して水素原子、炭素数1~10のアルキル基又はアリール基であるが、好ましくは炭素数2~8のアルキルであり、更に好ましくは3~6のアルキル基であり、特にブチル基が好ましい。
【0088】
このようなスルホン酸ホスホニウム塩の具体例としては、ドデシルスルホン酸テトラブチルホスホニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリブチルオクチルホスホニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラオクチルホスホニウム、オクタデシルベンゼンスルホン酸テトラエチルホスホニウム、ジブチルベンゼンスルホン酸トリブチルメチルホスホニウム、ジブチルナフチルスルホン酸トリフェニルホスホニウム、ジイソプロピルナフチルスルホン酸トリオクチルメチルホスホニウム等が挙げられる。中でも、ポリカーボネートとの相溶性及び入手が容易な点で、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウムが好ましい。
これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0089】
本発明の熱可塑性樹脂組成物が帯電防止剤を含有する場合、その含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)を含む熱可塑性樹脂成分100質量部に対して、0.1~5.0質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2~3.0質量部、更に好ましくは0.3~2.0質量部、特に好ましくは0.5~1.8質量部である。帯電防止剤の含有量が0.1質量部未満では帯電防止の効果は得られず、5.0質量部を超えると透明性や機械的強度が低下し、成形品表面にシルバーや剥離が生じて外観不良を引き起こし易い。
【0090】
[熱可塑性樹脂組成物の製造方法]
本発明の熱可塑性樹脂組成物を製造するための混練条件については、熱可塑性樹脂組成物に用いる各成分の種類や配合割合により異なり、一概に言えないが、ガラス充填剤(C)として特にガラス繊維を用いる場合は、これを他の成分とは別に溶融混練することが好ましい。特に、ガラス繊維は、押出機を用いて溶融混練する際にサイドフィード法を用いてポリカーボネート樹脂(A)及びポリエステル樹脂(B)等他の成分が十分に溶融混練された溶融混練物に対して押出機の途中から供給して溶融混練することが、溶融混練時のガラス繊維の切断や折曲を防止してガラス繊維の形状を維持することができ好ましい。
【0091】
この場合、ガラス繊維は、樹脂成分が十分に溶融混練された状態で供給されることが好ましいため、この点においては、押出機の下流側でサイドフィードすることが好ましいが、このサイドフィード位置が過度に下流側であると、ガラス繊維が樹脂組成物中で十分に分散されないうちに押出される結果となる。このような観点から、ガラス繊維は、特に押出機の上流(ホッパー部位)から、バレル長さLの1/5~4/5程度の下流位置にサイドフィードすることが好ましい。なお、溶融押出しに用いる押出機のL/D(バレル長さ/スクリュー径)については特に制限はなく、通常25~50程度である。また、スクリュー回転数は150~600rpm、シリンダー温度は250~300℃程度に設定することが好ましい。
【0092】
押出機から溶融押出しされたストランドを水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いて切断することにより、本発明の熱可塑性樹脂組成物のペレットを得ることができる。
【0093】
[熱可塑性樹脂成形品]
本発明の熱可塑性樹脂組成物から成形品を製造する方法は、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂について一般に採用されている成形法、すなわち一般的な射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、多色射出成形法、ガスアシスト射出成形法、断熱金型を用いた成形法、急速加熱冷却金型を用いた成形法、発泡成形(超臨界流体も含む)、インサート成形、IMC(インモールドコーティング成形)成形法、押出成形法、シート成形法、熱成形法、回転成形法、積層成形法、プレス成形法などを採用することができる。また、各種射出成形法においてはホットランナー方式を用いた成形法を選択することもできる。
【0094】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物を他の熱可塑性樹脂組成物と多色複合成形して複合成形品とすることもできる。
【0095】
本発明の熱可塑性樹脂組成物を射出成形する際の成形条件は、通常の射出成形条件でよく、射出成形機のシリンダー温度280~320℃、金型温度60~100℃で常法に従って射出成形を行うことができる。
【0096】
〔用途〕
本発明の熱可塑性樹脂組成物及びその成形品は、ガラス充填剤(C)を配合したことによる優れた寸法安定性、剛性(曲げ強度)、耐熱性等の各種特性を得た上で、透明性に優れたものとすることができるため、カメラ、OA機器、通信機器、精密機器、電気電子部品、自動車部品、一般機械部品等、各種の製品に好適に用いることができる。中でも、透明性が重視されるカメラ、OA機器、電気・電子部品、自動車部品として好適である。
【実施例】
【0097】
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。
【0098】
以下の実施例及び比較例において使用した各成分は以下の表1の通りである。
【0099】
【0100】
〔実施例1~26、比較例1~18〕
[熱可塑性樹脂組成物ペレットの製造]
上記表1に記したガラス充填剤(C)以外の各成分を、後記表2~5に記した割合(質量部)で配合し、タンブラーにて20分混合した後、1ベントを備えた東芝機械社製二軸押出機(TEM26SX)に上流のフィーダーより供給し、さらにガラス充填剤(C)をバレルの途中より供給して(押出機の上流(ホッパー部位)から、バレル長さLの3/5の下流位置)、回転数250rpm、吐出量25kg/時間、バレル温度280℃の条件で混練し、ストランド状に押出された溶融樹脂を水槽にて急冷し、ペレタイザーを用いてペレット化して熱可塑性樹脂組成物のペレットを得た。
【0101】
[平板の作製]
上述の製造方法で得られたペレットを100℃で5時間乾燥させた後、住友重機械工業社製射出成形機(SE50DUZ型)を用いて、シリンダー温度290℃、金型温度100℃の条件で射出成形し、長さ50mm、幅40mm、厚さ2mmの平板を成形した。なお金型として、固定側キャビティ及び可動側キャビティを構成する入れ子の材質がSUS420J2である金型を使用した。
【0102】
[ヘイズの測定]
日本電色工業社製ヘーズメーターNDH4000を用い、上述の方法で得られた平板のヘイズを測定した。ヘイズが小さい程透明性が優れることを意味している。
ヘイズの測定結果を表2~5に示す。
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
表2~5より次のことが分かる。
ポリエステル樹脂(B)の配合量が本発明の範囲を超えて多過ぎる比較例2でも、少な過ぎる比較例1でも、樹脂マトリクスの屈折率をガラス充填剤(C)の屈折率に近づけることができず、それぞれガラス充填剤(C)及びエステル化合物(D)を同配合した実施例に比べて透明性が悪い。
また、エステル化合物(D)を配合していない比較例3,12,16や、エステル化合物(D)の配合量が少な過ぎる比較例4,5,7,8,10,11,13,14,17では、エステル化合物(D)による透明性の改善効果が得られず、それぞれポリカーボネート樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)、ガラス充填剤(C)を同配合とした実施例に比べて透明性が悪い。逆に、エステル化合物(D)の配合量が多過ぎる比較例6,9,15,18でも、それぞれポリカーボネート樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)、ガラス充填剤(C)を同配合した実施例に比べて透明性が悪い。
これに対して、ポリカーボネート樹脂(A)、ポリエステル樹脂(B)、ガラス充填剤(C)、エステル化合物(D)を本発明の範囲内で配合した実施例では、透明性が改善されている。
また、いずれの実施例からも、ガラス充填剤(C)として扁平断面ガラス繊維を用いると、円形断面のガラス繊維を用いた場合よりも透明性が改善されることが分かる。
【0108】
実施例12と実施例14では、扁平率が同一であっても、組成が異なることで屈折率の異なる扁平断面ガラス繊維を用いている。実施例12に対して、実施例14では、ポリエステル樹脂(B)を多く配合してヘイズは同等の結果が得られている。このことは、ポリカーボネート樹脂(A)とポリエステル樹脂(B)の混合割合は、用いたガラス充填剤(C)の屈折率に応じて、本発明の範囲内で調整することが重要であることを示している。