(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】放射線撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20220621BHJP
A61B 6/12 20060101ALI20220621BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20220621BHJP
G06T 5/50 20060101ALI20220621BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20220621BHJP
【FI】
A61B6/00 350P
A61B6/12
G06T1/00 290A
G06T5/50
G06T7/00 616
(21)【出願番号】P 2018146185
(22)【出願日】2018-08-02
【審査請求日】2020-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100155608
【氏名又は名称】大日方 崇
(72)【発明者】
【氏名】丹野 圭一
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-219654(JP,A)
【文献】特開2006-230512(JP,A)
【文献】特開2011-134118(JP,A)
【文献】特開2015-092913(JP,A)
【文献】特開2017-196301(JP,A)
【文献】国際公開第2013/073627(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を透過した放射線に基づいて放射線画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部により生成された時系列に連続する複数の前記放射線画像を
特徴点の位置が揃うように位置合わせが行われた状態で合成して、前記放射線画像中の強調対象物を強調した強調画像をリアルタイムに生成する画像処理部と、を備え、
前記画像処理部は、前記複数の放射線画像のうちの基準画像の前記特徴点の位置と、前記複数の放射線画像のうちの前記基準画像以外の画像の前記特徴点の位置との
位置合わせ前の特徴点間距離に応じて、前記複数の放射線画像の各々に重み付けして前記複数の放射線画像を合成するように構成されている、放射線撮影装置。
【請求項2】
前記特徴点は、第1の特徴点と第2の特徴点とを含み、
前記画像処理部は、前記基準画像と前記基準画像以外の画像との前記第1の特徴点同士の前記特徴点間距離、および、前記基準画像と前記基準画像以外の画像との前記第2の特徴点同士の前記特徴点間距離を用いて、前記放射線画像に重み付けするように構成されている、請求項1に記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記第1の特徴点および前記第2の特徴点は、それぞれ、第1のマーカおよび第2のマーカであり、
前記画像処理部は、前記第1のマーカおよび前記第2のマーカのうちの基準位置から遠い遠位のマーカと、前記第1のマーカおよび前記第2のマーカのうちの前記基準位置に近い近位のマーカとに基づいて、前記基準画像と前記基準画像以外の画像との前記遠位のマーカ同士の前記特徴点間距離、および、前記基準画像と前記基準画像以外の画像との前記近位のマーカ同士の前記特徴点間距離を取得するように構成されている、請求項2に記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記画像処理部は、前記特徴点間距離が大きくなるのに従って重みの減少度が小さくなるように、前記放射線画像に重み付けするように構成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記画像処理部は、前記特徴点間距離が大きくなるのに従って指数関数的に重みが減少するように、前記放射線画像に重み付けするように構成されている、請求項4に記載の放射線撮影装置。
【請求項6】
前記画像処理部は、0よりも大きく1以下の範囲において、前記放射線画像に重み付けするように構成されている、請求項4または5に記載の放射線撮影装置。
【請求項7】
前記画像生成部は、心拍に伴い形状が変化する位置に前記強調対象物が位置した状態で前記被検体を透過した放射線に基づいて前記放射線画像を生成するように構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の放射線撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射線撮影装置に関し、特に、複数の放射線画像を合成して、放射線画像中の強調対象物を強調した強調画像を生成する放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の放射線画像を合成して、放射線画像中の強調対象物を強調した強調画像を生成する装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、血管内インターベンション治療に用いられる医用ビューイングシステムが開示されている。血管内インターベンション治療は、血栓などに起因して血管内に生じた狭窄部位に対して行う治療である。具体的には、血管内インターベンション治療では、ステントが取り付けられたバルーンを血管内の狭窄部位まで挿入してバルーンを膨張させる。そして、膨張させたバルーンにより狭窄部位およびステントを拡張した状態で、ステントを狭窄部位に留置する。この結果、留置したステントにより狭窄部位を拡張した状態で支えることができるので、狭窄部位の再狭窄率を低下させることができる。
【0004】
また、血管内インターベンション治療では、X線(放射線)を用いた狭窄部位の撮影が行われる。医師は、X線を用いて画像化された狭窄部位を確認しつつ、ステントが取り付けられたバルーンを狭窄部位に配置する作業を行う。この際、上記特許文献1に記載された医用ビューイング装置は、X線を用いて取得されたX線画像(放射線画像)同士を時間積分した(合成した)シーケンス画像を生成して表示手段に表示するように構成されている。シーケンス画像では、X線画像同士を時間積分することにより、ステントが強調表示されているため、ステントおよびバルーンを狭窄部位に配置する作業を容易化可能である。
【0005】
ここで、ステントは、血管内に配置されているため、心拍に伴い移動して形状が変化する。このため、単にX線画像同士を時間積分した場合、ステントの形状が互いに異なるX線画像同士が時間積分されてしまい、シーケンス画像においてステントがぼけてしまう。そこで、上記特許文献1に記載された医用ビューイング装置は、X線画像同士の類似性情報を取得して、取得した類似性情報に応じて、X線画像に重み付けするように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載された医用ビューイング装置では、X線画像同士の類似性情報に応じて重み付けするため、重み付けのための処理負荷が大きくなることから、重み付けのための処理負荷を軽くすることが困難である。このため、心拍に伴って被検体中のステント(強調対象物)の形状が変化する場合に、重み付けのための処理負荷を軽くしつつ、ステントを明確に強調したシーケンス画像(強調画像)を生成することが困難であるという問題点がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、心拍に伴って被検体中の強調対象物の形状が変化する場合にも、重み付けのための処理負荷を軽くしつつ、強調対象物を明確に強調した強調画像を生成することが可能な放射線撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による放射線撮影装置は、被検体を透過した放射線に基づいて放射線画像を生成する画像生成部と、画像生成部により生成された時系列に連続する複数の放射線画像を特徴点の位置が揃うように位置合わせが行われた状態で合成して、放射線画像中の強調対象物を強調した強調画像をリアルタイムに生成する画像処理部と、を備え、画像処理部は、複数の放射線画像のうちの基準画像の特徴点の位置と、複数の放射線画像のうちの基準画像以外の画像の特徴点の位置との位置合わせ前の特徴点間距離に応じて、複数の放射線画像の各々に重み付けして複数の放射線画像を合成するように構成されている。なお、本願明細書では、リアルタイムとは、画像生成部による放射線画像の生成と画像処理部による強調画像の生成とを並行して行うことを意味する広い概念である。
【0010】
ここで、特徴点間距離と心拍の位相と強調対象物の形状とには、相関がある。具体的には、特徴点間距離が小さい程心拍の位相が揃っているため、基準画像と基準画像以外の放射線画像とにおける強調対象物の形状が揃っており、特徴点間距離が大きい程心拍の位相が揃っていないため、基準画像と基準画像以外の放射線画像とにおける強調対象物の形状が揃っていないという相関がある。
【0011】
そこで、このような相関があることを利用して、この発明の一の局面による放射線撮影装置では、上記のように、特徴点間距離に応じて、複数の放射線画像の各々に重み付けすることによって、強調対象物の形状が揃っている放射線画像である程重みを大きくし、強調対象物の形状が揃っていない放射線画像である程重みを小さくして、複数の放射線画像を合成することができる。その結果、精度良く重み付けを行うことができるので、強調対象物を明確に強調した強調画像を生成することができる。また、放射線画像に与える重みを取得するために特徴点間距離を取得するだけでよいので、放射線画像同士の類似性情報に応じて重み付けする場合に比べて、重み付けのための処理負荷を軽くすることができる。これらの結果、心拍に伴って被検体中の強調対象物の形状が変化する場合にも、重み付けのための処理負荷を軽くしつつ、強調対象物を明確に強調した強調画像を生成することが可能な放射線撮影装置を提供することができる。なお、この発明の一の局面による放射線撮影装置のように、強調画像をリアルタイムに生成する場合、重み付けのための処理負荷を軽くしつつ、強調対象物を明確に強調した強調画像を生成することができることは、非常に効果的である。
【0012】
上記一の局面による放射線撮影装置において、好ましくは、特徴点は、第1の特徴点と第2の特徴点とを含み、画像処理部は、基準画像と基準画像以外の画像との第1の特徴点同士の特徴点間距離、および、基準画像と基準画像以外の画像との第2の特徴点同士の特徴点間距離を用いて、放射線画像に重み付けするように構成されている。このように構成すれば、第1の特徴点同士の特徴点間距離と第2の特徴点同士の特徴点間距離との両方を用いて放射線画像に重み付けすることができるので、第1の特徴点同士の特徴点間距離と第2の特徴点同士の特徴点間距離とのいずれか一方のみを用いて放射線画像に重み付けする場合に比べて、より精度良く重み付けを行うことができる。
【0013】
この場合、好ましくは、第1の特徴点および第2の特徴点は、それぞれ、第1のマーカおよび第2のマーカであり、画像処理部は、第1のマーカおよび第2のマーカのうちの基準位置から遠い遠位のマーカと、第1のマーカおよび第2のマーカのうちの基準位置に近い近位のマーカとに基づいて、基準画像と基準画像以外の画像との遠位のマーカ同士の特徴点間距離、および、基準画像と基準画像以外の画像との近位のマーカ同士の特徴点間距離を取得するように構成されている。このように構成すれば、遠位のマーカと近位のマーカとを明確に区別した状態で、遠位マーカ同士および近位のマーカ同士において特徴点間距離を個別に取得することができるので、個々の特徴点の特徴点間距離をより精度良く取得することができる。
【0014】
上記一の局面による放射線撮影装置において、好ましくは、画像処理部は、特徴点間距離が大きくなるのに従って重みの減少度が小さくなるように、放射線画像に重み付けするように構成されている。このように構成すれば、特徴点間距離が大きくなるのに従って重みが単調に減少するように放射線画像に重み付けする場合に比べて、特徴点間距離が小さい放射線画像に与える重みをより大きくしつつ、特徴点間距離が大きい放射線画像に与える重みをより小さくすることができる。その結果、より精度良く重み付けを行うことができるので、強調対象物をより明確に強調した強調画像を生成することができる。
【0015】
この場合、好ましくは、画像処理部は、特徴点間距離が大きくなるのに従って指数関数的に重みが減少するように、放射線画像に重み付けするように構成されている。このように構成すれば、特徴点間距離が大きくなるのに従って重みが単調に減少するように放射線画像に重み付けする場合に比べて、特徴点間距離が小さい放射線画像に与える重みをより確実に大きくしつつ、特徴点間距離が大きい放射線画像に与える重みをより確実に小さくすることができる。
【0016】
上記特徴点間距離が大きくなるのに従って重みの減少度が小さくなるように放射線画像に重み付けする構成において、好ましくは、画像処理部は、0よりも大きく1以下の範囲において、放射線画像に重み付けするように構成されている。このように構成すれば、放射線画像に過度に大きい重みが与えられることを抑制することができるので、複数の放射線画像に重み付けして合成した際、画素値のバランスが崩れることを抑制することができる。
【0017】
上記一の局面による放射線撮影装置において、好ましくは、画像生成部は、心拍に伴い形状が変化する位置に強調対象物が位置した状態で被検体を透過した放射線に基づいて放射線画像を生成するように構成されている。このように構成すれば、強調対象物が写り込んだ放射線画像を容易に生成することができるので、強調対象物を強調した強調画像を容易に生成することができる。なお、本願明細書では、心拍に伴い形状が変化する位置に強調対象物が位置した状態とは、たとえば、強調対象物が心臓の冠動脈に位置した状態である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、上記のように、心拍に伴って被検体中の強調対象物の形状が変化する場合にも、重み付けのための処理負荷を軽くしつつ、強調対象物を明確に強調した強調画像を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態による放射線撮影装置の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】ステントを含む治療具を説明するための図であって、(A)は、未拡張時のステントを含む治療具を示す図であり、(B)は、拡張時のステントを含む治療具を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態による放射線撮影装置における複数の放射線画像に基づく強調画像の生成を説明するための図である。
【
図4】本発明の一実施形態の放射線撮影装置における重みと特徴点間距離との関係を示すグラフである。
【
図5】本発明の一実施形態の放射線撮影装置における強調画像の順次生成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
(X線撮影装置の構成)
図1~
図5を参照して、本発明の一実施形態によるX線撮影装置100の構成について説明する。なお、X線撮影装置100は、特許請求の範囲の「放射線撮影装置」の一例である。
【0022】
本発明の一実施形態によるX線撮影装置100は、
図1に示すように、人体などの被検体Tの外側からX線(放射線)を照射することによって、被検体T内を画像化する装置である。X線撮影装置100は、冠動脈などの血管内インターベンション治療に用いられる。血管内インターベンション治療は、血栓などに起因して血管B内に生じた狭窄部位に対して行う治療である。
【0023】
血管内インターベンション治療では、
図2に示すように、治療具200が用いられる。治療具200は、ステント201と、ステント201が取り付けられたバルーン202と、ステント201およびバルーン202が先端近傍に取り付けられたガイドワイヤ203と、ガイドワイヤ203が内部に収容されるカテーテル204とを含む。ステント201は、細い金属などで形成された網目構造を有するとともに筒状に形成されており、X線が透過しやすくX線画像P(
図3参照)に写りにくい。このため、ステント201が取り付けられたバルーン202には、X線透過性の低い(または不透過の)素材で構成された一対のマーカ205が、目印として設けられている。一対のマーカ205は、ステント201を挟み込むように、ステント201の両端近傍にそれぞれ設けられている。また、ステント201は、バルーン202が膨張することにより、拡張するように構成されている。なお、ステント201は、特許請求の範囲の「強調対象物」の一例である。また、マーカ205は、特許請求の範囲の「特徴点」の一例である。また、X線画像Pは、特許請求の範囲の「放射線画像」の一例である。
【0024】
血管内インターベンション治療では、まず、医師は、カテーテル204を被検体Tの血管B内に挿入し、ステント201およびバルーン202を血管Bの狭窄部位に到達させる。そして、医師は、X線撮影装置100により生成される後述する強調画像M(
図3参照)を参照しながら、ステント201およびバルーン202の狭窄部位への位置決めを行う。そして、医師は、バルーン202を膨張させることにより血管Bの狭窄部位およびステント201を拡張させる。これにより、ステント201によって血管Bの狭窄部位が内側から支えられる。また、医師は、強調画像Mを参照しながら、ステント201が正しく留置されたか否かの確認を行う。そして、医師は、ステント201が正しく留置されている場合、カテーテル204を血管Bから抜いて、治療を終了する。また、医師は、ステント201が正しく留置されていない場合には、バルーン202を再度膨張させることなどによってステント201の拡張状態を調整する。
【0025】
次に、
図1を参照して、X線撮影装置100の構成について説明する。
図1に示すように、X線撮影装置100は、X線照射部1と、X線検出部2と、天板3と、移動機構4と、天板駆動部5と、制御部6と、表示部7と、操作部8と、記憶部9と、画像処理装置10と、を備えている。
【0026】
X線照射部1は、治療具200のステント201(
図2参照)が導入された被検体TにX線を照射する。X線検出部2は、被検体Tを透過したX線を検出する。X線照射部1とX線検出部2とは、被検体Tを挟んで互いに対向するように配置されている。X線照射部1およびX線検出部2は、移動機構4に移動可能に支持されている。天板3は、天板駆動部5により水平方向に移動可能である。移動機構4および天板駆動部5は、制御部6に接続されている。制御部6は、被検体Tの血管Bの狭窄部位を含む領域を撮影できるように、移動機構4および天板駆動部5を介してX線照射部1、X線検出部2および天板3を移動させる制御を行う。
【0027】
X線照射部1は、X線源1aを含んでいる。X線源1aは、図示しない高電圧発生部に接続されており、高電圧が印加されることによりX線を発生させるX線管である。X線源1aは、X線出射方向をX線検出部2の検出面に向けて配置されている。X線照射部1は、制御部6に接続されている。制御部6は、管電圧、管電流およびX線照射の時間間隔などの予め設定された撮影条件に従ってX線照射部1を制御し、X線源1aからX線を発生させる。
【0028】
X線検出部2は、X線照射部1から照射され、被検体Tを透過したX線を検出し、検出したX線強度に応じた検出信号を出力する。X線検出部2は、たとえば、FPD(Flat Panel Detector)により構成されている。X線検出部2は、所定の解像度のX線検出信号を画像処理装置10に出力する。画像処理装置10は、X線検出部2からX線検出信号を取得して、X線画像P(
図3参照)を生成する。
【0029】
制御部6は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含んで構成されたコンピュータである。制御部6は、CPUが所定の制御プログラムを実行することにより、X線撮影装置100の各部を制御する制御部として機能する。制御部6は、X線照射部1および画像処理装置10の制御、および、移動機構4および天板駆動部5の駆動制御などを行う。
【0030】
表示部7は、たとえば、液晶ディスプレイなどのモニタであり、画像処理装置10により生成されたX線画像Pや強調画像Mなどを表示可能である。制御部6は、画像処理装置10により生成されたX線画像Pや強調画像Mなどを表示部7に表示させる制御を行うように構成されている。
【0031】
操作部8は、X線撮影に関するユーザの入力を受け付けることが可能に構成されている。制御部6は、ユーザによる入力操作を、操作部8を介して受け付けるように構成されている。
【0032】
記憶部9は、たとえばハードディスクドライブなどの記憶装置により構成されている。記憶部9は、画像データ、撮影条件および各種の設定値を記憶するように構成されている。表示部7、操作部8および記憶部9の各々は、画像処理装置10に設けられていてもよい。
【0033】
また、X線撮影装置100は、X線透視とX線撮影との2種類の方法で、X線画像Pを取得可能に構成されている。なお、X線透視では、X線撮影よりも少ないX線量が被検体Tに照射されることによって、被検体Tの被ばく量を低減可能である一方、低画質のX線画像Pが取得される。一方、X線撮影では、ある程度高画質のX線画像Pが取得される。
【0034】
画像処理装置10では、被検体Tの撮影中にリアルタイムで画像処理が行われる。画像処理装置10は、たとえば、CPUあるいはGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサ11と、ROMおよびRAMなどの記憶部12とを含んで構成されるコンピュータである。すなわち、画像処理装置10は、記憶部12に記憶された画像処理プログラム15をプロセッサ11に実行させることにより構成される。画像処理装置10は、制御部6と同一のハードウェア(CPU)に画像処理プログラムを実行させることにより、制御部6と一体的に構成されてもよい。
【0035】
記憶部12は、コンピュータを画像処理装置10として機能させるための画像処理プログラム15を記憶している。また、記憶部12は、後述する画像生成部13により生成されたX線画像Pや後述する画像処理部14により生成された強調画像Mなどを画像データ16として一時的に蓄積するように構成されている。
【0036】
画像処理装置10は、画像処理プログラム15を実行することによる機能として、画像生成部13と、画像処理部14と、を含む。画像生成部13および画像処理部14は、それぞれ専用のプロセッサにより個別に構成されていてもよい。
【0037】
画像生成部13は、治療具200のステント201(
図2参照)が導入された被検体Tを透過したX線の検出信号に基づくX線画像Pを生成するように構成されている。つまり、画像生成部13は、血管内インターベンション治療中に心拍に伴い形状が変化する位置にステント201が位置した状態で被検体Tを透過したX線に基づいてX線画像Pを生成するように構成されている。画像生成部13は、X線検出部2からの検出信号に基づき、X線画像Pを動画像の形式で生成する。すなわち、X線照射部1から被検体Tに対してX線が所定時間間隔で断続的に照射され、被検体Tを透過したX線がX線検出部2により順次検出される。画像生成部13は、X線検出部2から順次出力される検出信号を画像化することにより、X線画像Pを所定のフレームレート(たとえば、30FPS)で生成する。X線画像Pは、たとえばグレースケールで所定の階調数(10~12ビットなど)の画素値を有する画像である。そのため、低画素値の画素では輝度値が小さく黒く(暗く)表示され、高画素値の画素では輝度値が大きく白く(明るく)表示される。なお、画像を白黒反転させてもよい。
【0038】
図3に示すように、画像処理部14は、画像生成部13により生成された時系列に連続する複数(N枚(Nフレーム))のX線画像Pを合成(積算)して、X線画像P中のステント201を強調した強調画像Mをリアルタイムに生成するように構成されている。合成されるX線画像Pの枚数Nは、フレームレート(たとえば、30FPS)よりも小さく、たとえば、8である。これにより、X線画像Pの合成のための処理負荷を軽くして、強調画像Mを容易にリアルタイムに生成可能である。
【0039】
強調画像Mを生成する処理では、まず、画像処理部14は、アフィン変換などの画像処理により、合成されるX線画像Pのうちの最新の画像である基準画像Psに対する、合成されるX線画像Pのうちの基準画像Ps以外の画像Poの位置合わせを行う。この際、画像処理部14は、基準画像Ps以外の画像Poの一対のマーカ205の位置が、基準画像Psの一対のマーカ205の位置と一致するように、基準画像Psに対する基準画像Ps以外の画像Poの位置合わせを行う。
【0040】
そして、画像処理部14は、位置合わせ後の画像PoとしてのX線画像Pと、基準画像PsとしてのX線画像Pとを合成して、X線画像P中のステント201を強調した強調画像Mを生成する。これにより、画像中のステント201の位置を合わせた状態で、X線画像P同士を合成することができるので、ステント201を明確に強調した強調画像Mを容易に取得可能である。なお、位置合わせの際、背景画像については位置がずれるため、背景画像についてはぼけた強調画像Mが得られる。
【0041】
ここで、本実施形態では、画像処理部14は、N枚のX線画像Pを合成する際、基準画像Psのマーカ205の位置と、基準画像Ps以外の画像Po(位置合わせ前の画像Po)のマーカ205の位置との特徴点間距離Dに応じて、複数のX線画像Pの各々に重み付けして複数のX線画像Pを合成するように構成されている。
【0042】
具体的には、まず、画像処理部14は、合成されるX線画像Pの各々において、一対のマーカ205のうちの基準位置(心臓の位置など)から遠い遠位のマーカ205aと、一対のマーカ205のうちの基準位置に近い近位のマーカ205bとを検出する。そして、画像処理部14は、検出した遠位のマーカ205bと近位のマーカ205bとに基づいて、基準画像Psと基準画像Ps以外の画像Poとの遠位のマーカ205a同士の特徴点間距離Da、および、基準画像Psと基準画像Ps以外の画像Poとの近位のマーカ205b同士の特徴点間距離Dbを取得する。そして、画像処理部14は、特徴点間距離Da、および、特徴点間距離Dbを用いて、X線画像Pに重み付けする。たとえば、画像処理部14は、特徴点間距離Daと特徴点間距離Dbとの平均値や積算値を、重み付けのために用いる特徴点間距離Dとして取得して、X線画像Pに重み付けする。
【0043】
画像処理部14は、予め記憶部12に記憶されている重み付けデータ17(
図1参照)に基づいて、特徴点間距離Dに応じた重みα(重み係数)を取得する。重み付けデータ17は、特徴点間距離Dと重みαとを対応付けた情報である。重み付けデータ17は、特徴点間距離Dが小さくなる程重みαが大きくなり、特徴点間距離Dが大きくなる程重みαが小さくなるように設定されている。
【0044】
具体的には、重み付けデータ17は、特徴点間距離Dが大きくなるのに従って重みαが減少する指数関数の情報である。画像処理部14は、重み付けデータ17に基づいて、特徴点間距離Dが大きくなるのに従って重みαの減少度が小さくなるように、X線画像Pに重み付けする。より具体的には、画像処理部14は、特徴点間距離Dが大きくなるのに従って指数関数的に重みαが減少するように、X線画像Pに重み付けする。また、重み付けデータ17は、特徴点間距離Dが0である場合に重みαが1となり、特徴点間距離Dが大きくなる程重みαが0に漸近するように設定されている。このため、画像処理部14は、0よりも大きく1以下の範囲において、X線画像Pに重み付けする。
【0045】
図5に示すように、画像処理部14は、N枚目のX線画像Pが生成された後は、新たなX線画像Pが生成される毎に、新たな強調画像Mを順次生成する。これにより、画像処理部14は、強調画像Mを動画像の型式で生成する。具体的には、画像処理部14は、新たなX線画像Pが生成される毎に、新たなX線画像P(最新のX線画像P)を含む時系列に連続する新たなN枚(最新のN枚)のX線画像Pを合成して、新たな強調画像Mを生成する。たとえば、画像処理部14は、N+1枚目のX線画像Pが生成された場合、N+1枚目のX線画像Pを含む時系列に連続する2~N+1枚目のX線画像Pを合成して、新たな2フレーム目の強調画像Mを生成する。同様に、画像処理部14は、N+2枚目のX線画像Pが生成された場合、N+2枚目のX線画像Pを含む時系列に連続する3~N+2枚目のX線画像Pを合成して、新たな3フレーム目の強調画像Mを生成する。
【0046】
また、新たな強調画像Mを生成する際、画像処理部14は、新たなX線画像Pを新たな基準画像Psとし、新たな基準画像Psに基づいて、新たな特徴点間距離Dを取得する。そして、画像処理部14は、新たな特徴点間距離Dに応じて、最新のN枚のX線画像Pの各々に重み付けして最新のN枚のX線画像Pを合成する。これにより、最新の位置のステント201を明確に強調した強調画像Mが生成され続ける。
【0047】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0048】
本実施形態では、上記のように、特徴点間距離Dに応じて、複数のX線画像Pの各々に重み付けすることによって、ステント201の形状が揃っているX線画像Pである程重みを大きくし、ステント201の形状が揃っていないX線画像Pである程重みを小さくして、複数のX線画像Pを合成することができる。その結果、精度良く重み付けを行うことができるので、ステント201を明確に強調した強調画像Mを生成することができる。また、X線画像Pに与える重みを取得するために特徴点間距離Dを取得するだけでよいので、X線画像P同士の類似性情報に応じて重み付けする場合に比べて、重み付けのための処理負荷を軽くすることができる。これらの結果、心拍に伴って被検体T中のステント201の形状が変化する場合にも、重み付けのための処理負荷を軽くしつつ、ステント201を明確に強調した強調画像Mを生成することが可能なX線撮影装置100を提供することができる。なお、本実施形態によるX線撮影装置100のように、強調画像Mをリアルタイムに生成する場合、重み付けのための処理負荷を軽くしつつ、ステント201を明確に強調した強調画像Mを生成することができることは、非常に効果的である。
【0049】
また、本実施形態では、上記のように、画像処理部14を、マーカ205a同士の特徴点間距離Daおよびマーカ205b同士の特徴点間距離Dbを用いて、X線画像Pに重み付けするように構成する。これにより、マーカ205a同士の特徴点間距離Daとマーカ205b同士の特徴点間距離Dbとの両方を用いてX線画像Pに重み付けすることができるので、マーカ205a同士の特徴点間距離Daとマーカ205b同士の特徴点間距離Dbとのいずれか一方のみを用いてX線画像Pに重み付けする場合に比べて、より精度良く重み付けを行うことができる。
【0050】
また、本実施形態では、画像処理部14を、一対のマーカ205のうちの基準位置から遠い遠位のマーカ205aと、一対のマーカ205のうちの基準位置に近い近位の205bに基づいて、基準画像Psと基準画像Ps以外の画像Poとの遠位のマーカ205a同士の特徴点間距離Da、および、基準画像Psと基準画像Ps以外の画像Poとの近位のマーカ205b同士の特徴点間距離Dbを取得するように構成する。これにより、遠位のマーカ205aと近位のマーカ205bとを明確に区別した状態で、遠位マーカ205a同士および近位のマーカ205b同士において特徴点間距離Dを個別に取得することができるので、個々のマーカ205の特徴点間距離Dをより精度良く取得することができる。
【0051】
また、本実施形態では、画像処理部14を、特徴点間距離Dが大きくなるのに従って重みの減少度が小さくなるように、X線画像Pに重み付けするように構成する。これにより、特徴点間距離Dが大きくなるのに従って重みが単調に減少するようにX線画像Pに重み付けする場合に比べて、特徴点間距離Dが小さいX線画像Pに与える重みをより大きくしつつ、特徴点間距離Dが大きいX線画像Pに与える重みをより小さくすることができる。その結果、より精度良く重み付けを行うことができるので、ステント201をより明確に強調した強調画像Mを生成することができる。
【0052】
また、本実施形態では、画像処理部14を、特徴点間距離Dが大きくなるのに従って指数関数的に重みが減少するように、X線画像Pに重み付けするように構成する。これにより、特徴点間距離Dが大きくなるのに従って重みが単調に減少するようにX線画像Pに重み付けする場合に比べて、特徴点間距離Dが小さいX線画像Pに与える重みをより確実に大きくしつつ、特徴点間距離Dが大きいX線画像Pに与える重みをより確実に小さくすることができる。
【0053】
また、本実施形態では、画像処理部14を、0よりも大きく1以下の範囲において、X線画像Pに重み付けするように構成する。これにより、X線画像Pに過度に大きい重みが与えられることを抑制することができるので、複数のX線画像Pに重み付けして合成した際、画素値のバランスが崩れることを抑制することができる。
【0054】
また、本実施形態では、画像生成部13を、心拍に伴い形状が変化する位置にステント201が位置した状態で被検体を透過した放射線に基づいてX線画像Pを生成するように構成する。これにより、ステント201が写り込んだX線画像Pを容易に生成することができるので、ステント201を強調した強調画像Mを容易に生成することができる。
【0055】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0056】
たとえば、上記実施形態では、本発明が、放射線撮影装置としてのX線撮影装置に適用される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、X線撮影装置以外の放射線撮影装置に適用されてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、特徴点としてマーカが用いられる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、特徴点としてマーカ以外が用いられてもよい。たとえば、特徴点として、被検体のうちの他の部分に比べてX線を吸収しやすい部分が用いられてもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、2つのマーカ(特徴点)を用いて重み付けが行われる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、1つの特徴点を用いて重み付けが行われてもよいし、3つ以上の特徴点を用いて重み付けが行われてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、第1のマーカ(特徴点)同士の特徴点間距離と第2のマーカ(特徴点)同士の特徴点間距離との両方を用いて重み付けが行われる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1の特徴点同士の特徴点間距離と第2の特徴点同士の特徴点間距離とのいずれか一方のみを用いて重み付けが行われてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、特徴点間距離が大きくなるのに従って指数関数的に重みが減少するように、X線画像(放射線画像)に重み付けが行われる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、特徴点間距離が大きくなるのに従って重みが減少するように、放射線画像に重み付けが行われれば、どのように放射線画像に重み付けが行われてもよい。たとえば、特徴点間距離が大きくなるのに従って一次関数的に重みが減少するように、放射線画像に重み付けが行われてもよいし、特徴点間距離が大きくなるのに従って二次関数的に重みが減少するように、放射線画像に重み付けが行われてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、0よりも大きく1以下の範囲において、X線画像(放射線画像)に重み付けが行われる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、放射線画像に重みとして0を与える重み付けが行われてもよいし、放射線画像に重みとして1よりも大きい重みを与える重み付けが行われてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、新たなX線画像(放射線画像)が生成される毎に、最新のN枚のX線画像(放射線画像)が合成されて、新たな強調画像が生成される例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、新たな放射線画像が生成される毎に、現在までに生成された放射線画像の全部が合成されて、新たな強調画像が生成されてもよい。
【符号の説明】
【0063】
13 画像生成部
14 画像処理部
100 X線撮影装置(放射線撮影装置)
201 ステント(強調対象物)
205 マーカ(特徴点)
205a マーカ(第1の特徴点、第1のマーカ)
205b マーカ(第2の特徴点、第2のマーカ)
D 特徴点間距離
M 強調画像
P X線画像(放射線画像)
Ps 基準画像
Po 基準画像以外の画像
T 被検体