(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】車両の前部車体構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
B62D25/08 E
(21)【出願番号】P 2018174756
(22)【出願日】2018-09-19
【審査請求日】2021-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100133916
【氏名又は名称】佐藤 興
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 重昭
(72)【発明者】
【氏名】松岡 秀典
【審査官】岩本 薫
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-016180(JP,A)
【文献】特開平06-144291(JP,A)
【文献】特開2001-233246(JP,A)
【文献】特開2014-024490(JP,A)
【文献】特開平08-175426(JP,A)
【文献】特開2015-150932(JP,A)
【文献】特開2015-077819(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0025095(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0008570(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延びるフロントフレームと、
前記フロントフレームに連結されて、サスペンションアームおよびダンパを有するサスペンションが取り付けられるサスハウジングと、を備え、
前記サスハウジングは、車幅方向に延びて前記ダンパを支持するダンパ支持部と、前記ダンパ支持部の車幅方向内側縁から下方に略垂直に延びて下端部において前記フロントフレームに連結される垂下部と、前記ダンパ支持部の車幅方向外側縁から車幅方向外側に延びる延出部
と、前記フロントフレームに固定される第1被固定部と、当該第1被固定部よりも後方に設けられて前記フロントフレームに固定される第2被固定部と、前記第1被固定部よりも後方且つ前記第2被固定部よりも前方に設けられて前記フロントフレームに固定される第3被固定部とを有し、
前記第1被固定部と前記第2被固定部とは、前記フロントフレームのうち車幅方向について互いに異なる部分にそれぞれ固定されており、
前記ダンパは、上側ほど後方に位置するように傾斜した姿勢で前記サスハウジングに支持されており、
前記第2被固定部と前記第3被固定部とは、前後方向に連続して延びる平面状に形成されており、
前記垂下部は、上下方向に延びる補強部を備え、
前記延出部は、前記サスペンションアームの回動軌跡に沿って上方に膨出する膨出部を備え、
前記補強部は、車幅方向内側に突出するように形成され、かつ、車両前後方向において前記ダンパ支持部と重なる範囲に配置され
、かつ、上側ほど後方に位置するように傾斜して設けられている、
ことを特徴とする車両の前部車体構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の前部車体構造において、
前記ダンパは、上側ほど車幅方向内側に位置するように傾斜した状態で前記ダンパ支持部に支持される、ことを特徴とする車両の前部車体構造。
【請求項3】
請求項2に記載の車両の前部車体構造において、
前記ダンパ支持部は、車幅方向内側ほど下側に位置するように傾斜している、ことを特徴とする車両の前部車体構造。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の車両の前部車体構造において、
前記ダンパ支持部は、上面視で中央において、前記ダンパが挿通される貫通孔が形成され、
前記補強部は、車両前後方向において前記貫通孔と重なる範囲に配置されている、ことを特徴とする車両の前部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンションの構成部材が取り付けられるサスハウジングを前部に備えた車両の前部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の前部には、サスペンションのダンパ等の部品が取り付けられるサスハウジングが備えられている。サスハウジングは、車両前後方向に延びるフロントフレームに固定されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
サスハウジングは、一般に鋼鈑をプレス成型する方法によって製造される。一方、プレス成形では形状の自由度が比較的低いという点、また、より車体の軽量化を図るという点から、サスハウジングをアルミニウムで鋳造(アルミダイキャスト)する方法も検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダンパの姿勢が適切な姿勢からずれると、操舵安定性能、NVH(Noise, Vibration, Harshness)性能、強度耐久性能などに影響が及ぶ。そのため、ダンパが取り付けられるサスハウジングには、ダンパから荷重が加えられたときに容易に変形しないことが求められる。
【0006】
本発明の目的は、サスハウジングの変形を抑制してダンパを適切な姿勢で維持できる車両の前部車体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するためのものとして、本発明の車両の前部車体構造は、車両前後方向に延びるフロントフレームと、前記フロントフレームに連結されて、サスペンションアームおよびダンパを有するサスペンションが取り付けられるサスハウジングと、を備え、サスハウジングは、車幅方向に延びて前記ダンパを支持するダンパ支持部と、前記ダンパ支持部の車幅方向内側縁から下方に略垂直に延びて下端部において前記フロントフレームに連結される垂下部と、前記ダンパ支持部の車幅方向外側縁から車幅方向外側に延びる延出部と、前記フロントフレームに固定される第1被固定部と、当該第1被固定部よりも後方に設けられて前記フロントフレームに固定される第2被固定部と、前記第1被固定部よりも後方且つ前記第2被固定部よりも前方に設けられて前記フロントフレームに固定される第3被固定部とを有し、前記第1被固定部と前記第2被固定部とは、前記フロントフレームのうち車幅方向について互いに異なる部分にそれぞれ固定されており、前記ダンパは、上側ほど後方に位置するように傾斜した姿勢で前記サスハウジングに支持されており、前記第2被固定部と前記第3被固定部とは、前後方向に連続して延びる平面状に形成されており、前記垂下部は、上下方向に延びる補強部を備え、前記延出部は、前記サスペンションアームの回動軌跡に沿って上方に膨出する膨出部を備え、前記補強部は、車幅方向内側に突出するように形成され、かつ、車両前後方向において前記ダンパ支持部と重なる範囲に配置され、かつ、上側ほど後方に位置するように傾斜して設けられていることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、ダンパ支持部の車幅方向内側縁から下方に略垂直に延びて下端部においてフロントフレームに連結される垂下部が設けられているとともに、この垂下部に補強部が設けられ、さらに、補強部は、車幅方向内側に突出するように形成され、かつ、車両前後方向においてダンパ支持部と重なる範囲に配置され、かつ、上側ほど後方に位置するように傾斜して設けられていることで、ダンパからサスハウジングに荷重が加えられたときに垂下部が車幅方向の内向きに変形するのを抑制できる。つまり、サスハウジングの変形を抑制できる。従って、垂下部とダンパ支持部とによって、すなわち、サスハウジングによって、ダンパを適切な姿勢に維持することができる。
また、上記の構成では、前記サスハウジングは、前記フロントフレームに固定される第1被固定部と、当該第1被固定部よりも後方に設けられて前記フロントフレームに固定される第2被固定部とを備える。前記第1被固定部と前記第2被固定部とは、前記フロントフレームのうち車幅方向について互いに異なる部分にそれぞれ固定されている。
この構成によれば、サスハウジングの車両前後方向回りの変形を抑制することができ、サスハウジングの車幅方向内向きの変形を一層抑制することができる。
さらに、上記の構成では、前記ダンパは、上側ほど後方に位置するように傾斜した姿勢で前記サスハウジングに支持されている。前記サスハウジングは、前記第1被固定部よりも後方且つ前記第2被固定部よりも前方に設けられて前記フロントフレームに固定される第3被固定部を備えている。前記第2被固定部と前記第3被固定部とは、前後方向に連続して延びる平面状に形成されている。
この構成によれば、第1被固定部よりも後方に設けられた第2被固定部と第3被固定部とにおいて、サスハウジングの比較的後側の部分がフロントフレームに強固に固定され、これによりサスハウジングの比較的後側の部分の剛性が高められる。そのため、上側ほど後方に位置するように傾斜した姿勢で支持されることで、ダンパからサスハウジングに比較的大きな荷重が後向きに入力されるのに対して、この荷重によってサスハウジングが変形するのを抑制することができる。
【0009】
しかも、この構成では、サスハウジングにダンパ支持部の車幅方向外側縁から車幅方向外側に延びる延出部が設けられていることで、フロントフレームの上方且つ車幅方向外側の車体構成部材に延出部を連結することができ、ダンパ支持部回りの剛性を高めてサスハウジングの変形を抑制することが可能になる。ただし、このような延出部を設けると、サスハウジングの車幅方向の長さが長くなってサスペンションアームの回動時にサスペンションアームとサスハウジングとが干渉するおそれがある。これに対して、この構成では、延出部にサスペンションアームの回動軌跡に沿って上方に膨出する膨出部が設けられているので、前記のように延出部によってダンパ支持部回りの剛性を高めつつ、サスペンションアームとサスハウジングとの干渉を回避できる。
【0010】
前記構成において、ダンパとしては、上側ほど車幅方向内側に位置するように傾斜した状態でダンパ支持部に支持されるものが挙げられる(請求項2)。
【0011】
このように、ダンパが上側ほど車幅方向内側に位置するように傾斜した状態で支持されている場合では、ダンパおよびサスハウジングが車幅方向内側に倒れやすい。これに対して、本発明では、前記のようにこの内倒れを抑制することができるので、ダンパが前記の状態で支持されるものに本発明が適用されると効果的である。
【0012】
前記構成において、好ましくは、前記ダンパ支持部は、車幅方向内側ほど下側に位置するように傾斜している(請求項3)。
【0013】
この構成によれば、前記のように上側ほど車幅方向内側に位置するように傾斜した状態で支持されているダンパからサスハウジングに加えられた荷重を、ダンパ支持部全体でより均一に受け止めることができ、ダンパ支持部の変形を抑制できる。
【0017】
前記構成において、好ましくは、前記ダンパ支持部は、上面視で中央において、前記ダンパが挿通される貫通孔が形成され、前記補強部は、車両前後方向において前記貫通孔と重なる範囲に配置されている(請求項4)。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、サスハウジングの変形を抑制してダンパを適切な姿勢で維持できる車両の前部車体構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る車両の前部車体構造を概略的に示す斜視図である。
【
図2】車両の前部車体構造を概略的に示す上面図である。
【
図3】車両の前部車体構造の一部を車幅方向外側から見た概略側面図である。
【
図7】車両の前部車体構造の一部を車幅方向外側から見た概略斜視図である。
【
図8】
図3のVIII-VIII線断面の概略図である。
【
図9】サスハウジングを車幅方向内側から見た概略側面図である。
【
図10】サスハウジングを車幅方向外側から見た概略側面図である。
【
図13】
図9のXIII-XIII線断面の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。
図1は、本発明に係る車両Vの前部車体1の構造を概略的に示す斜視図である。
図2は、車両Vの前部車体1の構造を概略的に示す上面図である。
図3は、車両Vの前部車体1の一部を概略的に示す側面図である。
図3は、車両Vの前部車体1のうち前方を向いた状態で右側となる部分の一部を、車幅方向外側から見た図である。以下では、車両の前後方向を単に前後方向といい、車幅方向を、適宜、左右方向という。また、前方を向いた状態での右、左を、単に、右、左と示す。また、図面において「内」は車幅方向内側を表し、「外」は車幅方向外側を表す。
【0021】
車両Vの前部には、車室Sの前端部分を構成し、エンジンルームE(エンジンやトランスミッション等から構成される図略のエンジンユニットが搭載される部分)と車室Sとを区画するダッシュパネル2が設けられている。ダッシュパネル2は、上下方向および車幅方向に延びるパネルである。本実施形態では、車両Vは、前部に搭載されたエンジンの出力が後輪に伝達されるように構成されたいわゆるFR車(フロントエンジン・リアドライブ方式の車両)であり、ダッシュパネル2の車幅方向中央にはプロペラシャフトが挿通されるトンネル部2aが形成されている。
【0022】
車両Vの前部には、フロントフレーム3、エプロンレイン4、サスハウジング5が設けられている。車両Vの前部には、サスハウジング5とダッシュパネル2との間に介在する連結パネル6が設けられている。フロントフレーム3、エプロンレイン4、サスハウジング5および連結パネル6は、それぞれ左右一対の車体構成部材である。車両Vの前部には、サスペンション10が設けられている。サスペンション10は、左右一対の前輪に対応して左右にそれぞれ1つずつ設けられている。なお、
図1、
図2では、サスペンション10の図示は省略している。
【0023】
車両Vの前部構造は左右対称であり、以下では、左右一方側の構造について説明する。
【0024】
<エプロンレイン>
エプロンレイン4は、前後方向に延びるレインフォースメント部材である。エプロンレイン4は、車両前部のドアのヒンジが取り付けられるヒンジピラー7から前方に延びている。エプロンレイン4は、その前部においてはエプロンレイン4単体で前後方向に延びる閉断面部を構成し、その後部においては後述するようにサスハウジング5とによって前後方向に延びる閉断面部を構成している。
【0025】
<フロントフレーム>
図4は、
図2のIV-IV線断面を拡大して示した概略図である。
図5は、
図2のV-V線断面を拡大して示した概略図である。
図6は、
図2のVI-VI線断面を拡大して示した概略図である。
【0026】
フロントフレーム3は、前後方向に延びる閉断面部C1を形成する車体剛性部材である。フロントフレーム3は、ダッシュパネル2に固定されておりダッシュパネル2から前方に延びている。フロントフレーム3は、エプロンレイン4よりも下方且つエプロンレイン4よりも車幅方向内側の位置に配置されている。例えば、右側のエプロンレイン4に対して、右側のフロントフレーム3は、左斜め下約45度の方位に配置されている。エプロンレイン4とフロントフレーム3との間には、図略の前輪を覆うホイールハウスWHを形成可能な空間が設けられている。
【0027】
図4に示すように、閉断面部C1は、上下方向に長い略直方形状を有しており、フロントフレーム3は、上下方向および前後方向に延びてフロントフレーム3の車幅方向外側面を構成する第1側面部3aと、第1側面部3aの上縁から車幅方向内側に延びてフロントフレーム3の上面を構成する上面部3bと、第1側面部3aの下縁から車幅方向内側に延びてフロントフレーム3の下面を構成する下面部3cと、上面部3bの車幅方向内側縁と下面部3cの車幅方向内側縁との間にわたって上下方向に延びてフロントフレーム3の車幅方向内側面を構成する第2側面部3dとを備える。また、フロントフレーム3は、上面部3bつまりフロントフレーム3の上面の車幅方向内側縁近傍から上方に延びる上側フランジ部3eと、下面部3cつまりフロントフレーム3の下面の車幅方向内側縁近傍から下方に延びる下側フランジ部3fとを備える。上側フランジ部3eおよび下側フランジ部3fは、フロントフレーム3の全長にわたって前後方向に延びている。
【0028】
フロントフレーム3は、例えば板状の鋼材からそれぞれなり、車幅方向外側に設けられて車幅方向外側に膨出する略ハット状の断面を有するフロントフレームアウタ3sと、車幅方向内側に設けられて車幅方向内側にわずかに膨出する略ハット状の断面を有するフロントフレームインナ3tと、これらの間に介在して上下方向に延びる板状のフランジ構成パネル3uの3つの部材が接合されることで構成されている。例えば、上側フランジ部3eは、フロントフレームアウタ3sに形成されたフランジ部分と、フランジ構成パネル3uの上端部分と、フロントフレームインナ3tに形成されたフランジ部分とが接合されることで、形成されている。
【0029】
<サスペンション>
本実施形態では、サスペンション10として、ダブルウィッシュボーン式のサスペンションが用いられている。サスペンション10は、タイヤ(不図示)に固定されるナックル(不図示)と、ナックルに連結されてナックルを介してタイヤを支持するロアアーム(不図示)と、ロアアームよりも上方に配置されるとともにロアアームと同様にナックルに連結されてナックルを介してタイヤを支持するアッパアーム12(いわゆるAアーム)と、ダンパ11とを有する。ダンパ11は、ショックアブソーバー11aと、これの外周を囲むように配設されたコイルスプリング11bとを含む。
【0030】
図7は、車両Vの前部車体1の右側部分の一部を右斜め下方から見た概略斜視図である。
図7では、
図3に対してダンパ11は省略されている。
【0031】
アッパアーム12には、ナックルの上端部が固定されるナックル固定部12aが設けられている。ナックル固定部12aは、アッパアーム12の車幅方向の最外端部に設けられており、アッパアーム12は、このナックル固定部12aから車幅方向内側且つ前方に湾曲しながら延びる第1アーム部13と、ナックル固定部12aから車幅方向内側且つ後方に湾曲しながら延びる第2アーム部14とを備える。
【0032】
第1アーム部13の車幅方向内側の端部と第2アーム部14の車幅方向内側の端部とには、それぞれサスハウジング5に軸支される第1被軸支部13aと第2被軸支部14aとが設けられている。これら第1被軸支部13aと第2被軸支部14aとは前後方向に延びる軸回りに回転可能にサスハウジング5に固定されており、アッパアーム12は、これら被軸支部13a、14aの回転中心軸回りに上下方向に回動可能にサスハウジング5に支持されている。
【0033】
ダンパ11は、サスハウジング5とロアアームとに、上下方向に延びる姿勢で支持されている。具体的には、ダンパ11の下端部はロアアームに支持され、ダンパ11の上端部はサスハウジング5に支持されている。
図3に示すように、ダンパ11は、上斜め後方に傾斜した後倒れの姿勢(つまり上側ほど後方に位置する姿勢)で支持されている。また、
図3のVIII-VIII線断面の概略図である
図8に示すように、ダンパ11は、上斜め内側に傾斜した内倒れの姿勢(つまり上側ほど車幅方向内方に位置する姿勢)で支持されている。
【0034】
<サスハウジング>
サスハウジング5は、サスペンション10の構成部材が取り付けられる部材である。前記のように、サスハウジング5には、ダンパ11の上端部およびアッパアーム12の各被軸支部13a、14aが取り付けられる。
【0035】
サスハウジング5は、ダンパ11を収容する下端開口のハウジング形状を有し、ホイールハウスWHの上方を覆うようにフロントフレーム3とエプロンレイン4とに固定されている。前記のように、フロントフレーム3は、エプロンレイン4よりも下方且つエプロンレイン4よりも車幅方向内側に配置されている。これに伴い、サスハウジング5は、全体として、エプロンレイン4からフロントフレーム3に向かって車幅方向内側且つ下方に向かって延びる形状を有し、これらを橋絡している。
【0036】
図2等に示すように、サスハウジング5の後端部は、さらに連結パネル6に固定されている。連結パネル6は、パネル部材であり、その後部は略水平に延び、その前部は前側ほど上方に位置するように前斜め上方に傾斜している。連結パネル6は、ダッシュパネル2から前方に延びるようにダッシュパネル2に固定されている。これにより、サスハウジング5は、フロントフレーム3と連結パネル6とを介してダッシュパネル2に連結されている。連結パネル6の車幅方向外側縁は、さらにヒンジピラー7に固定されている。
【0037】
本実施形態では、サスハウジング5は、アルミダイキャストにて形成されており、軽量で且つ複雑な形状のサスハウジング5が実現されている。なお、サスハウジング5は、板金部材のプレス加工等によって形成されてもよい。
【0038】
図9は、サスハウジング5単体を車幅方向内側から見た概略側面図である。
図10は、サスハウジング5単体を車幅方向外側から見た概略側面図である。
図11は、サスハウジング5単体の概略上面図である。
図12は、サスハウジング5単体の概略正面図である。
図13は、
図9のXIII-XIII線断面の概略図である。
【0039】
図11に示すように、サスハウジング5は、大略的に、サスハウジング5の後端部分と車幅方向外側部分とを除く部分であってサスペンション10が固定されるサス固定部51と、サス固定部51から後方に延びてサスハウジング5の後端部分を構成する後側連結部52と、サス固定部51と後側連結部52から車幅方向外側に延びてサスハウジング5の車幅方向外側部分を構成する外側連結部53とからなる。これら各部51、52、53は一体に形成されている。
【0040】
サス固定部51は、機能および構造上、サス固定部51の前端部分を構成する第1アーム支持部60と、サス固定部51の後端部分を構成する第2アーム支持部70と、第1アーム支持部60と第2アーム支持部70との間の部分を構成する本体部80とを含む。
【0041】
<第1アーム支持部>
第1アーム支持部60は、アッパアーム12の第1アーム部13を支持する部分である。
【0042】
第1アーム支持部60は、上下方向および車幅方向に延びる第1立壁61と、第1立壁61よりも後方において第1立壁61と略平行に延びる第2立壁62と、第1立壁61の車幅方向内側縁と第2立壁62の車幅方向内側縁とにわたって上下方向および前後方向に延びる第1内壁63と、第1立壁61の上縁と第2立壁62の上縁との間にわたって車幅方向および前後方向に延びる第1上壁64とを備える。第1アーム支持部60は、これら壁61~64によって、車幅方向外側に開口する開断面部を形成している。なお、本明細書でいう開断面部(open cross-section)とは、前述の閉断面部C1のように完全に、或いは僅かな開口を除いて板材によって閉じられた断面ではないが、平面に対して角柱型、V字型などの膨らみを持つよう複数の折れ曲がり部によって形成された、開口を備えた断面である。
【0043】
また、第1アーム支持部60は、第1立壁61の前面から前方に延びる前側延長部65と、前側延長部65の前縁から下方に延びる前フランジ部66と、前側延長部65と第1内壁63とから下方に延びる第1被固定部67とを備える。
【0044】
第1上壁64は、サスハウジング5の頂面の一部を構成する。第1上壁64は、第1内壁63の上縁から、車幅方向外側に向かって、第1立壁61および第2立壁62よりも車幅方向外側の位置まで延びている。
【0045】
第1内壁63は、サスハウジング5の車幅方向内側面の一部を構成する。
図4等に示すように、第1内壁63の上側部分は略垂直に延び、第1内壁63の下側部分は下方に向かうに従って車幅方向外側に位置するように傾斜している。
【0046】
第1立壁61と前側延長部65と前フランジ部66とは、サスハウジング5の前端部分の一部を構成する。前側延長部65と第1立壁61とは複数のリブR1によって橋絡されており、第1立壁61は、前側延長部65とこれらリブR1とによってその剛性が高められている。また、
図10に示すように、前側延長部65の下面にも複数のリブが設けられており、これによっても、前側延長部65ひいては第1立壁61の剛性が高められている。
【0047】
図13に示すように、第2立壁62の車幅方向の長さは第1立壁61の車幅方向の長さよりも短く設定されている。第2立壁62は、
図4等に示すように、上側ほど車幅方向の寸法が大きくなるような形状を有している。
【0048】
図4、
図12等に示すように、第1立壁61と第2立壁62の上下方向の略中央には、それぞれ第1アーム部13を軸支するための軸部材が挿入される軸孔61a、62aが形成されている。
図7等に示すように、第1アーム部13の第1被軸支部13aは、第1立壁61と第2立壁62との間には収容されている。そして、この収容状態で第1被軸支部13aに形成された孔(不図示)と各立壁61、62の軸孔61a、62aに前後方向に延びる軸部材が挿通されて、この軸部材が第2立壁62に固定されることで、第1アーム部13は第1アーム支持部60によって上下方向に回動可能に支持される。
【0049】
本実施形態では、軸部材の固定ひいては第1アーム部13の固定は、第2立壁62の後方において行われるようになっている。具体的には、軸部材を固定するための固定用部材が第2立壁62の後方において軸部材に装着されて、第2立壁62の後方において工具により固定用部材および軸部材が第2立壁62に固定されるようになっている。
【0050】
<第2アーム支持部>
第2アーム支持部70は、アッパアーム12の第2アーム部14を支持する部分である。
【0051】
第2アーム支持部70は、第2立壁62の後方においてこれと略平行に延びる(つまり、上下方向および車幅方向に延びる)第3立壁71と、第3立壁71よりも後方において第3立壁71と略平行に延びる(つまり、上下方向および車幅方向に延びる)第4立壁72と、第3立壁71の車幅方向内側縁と第4立壁72の車幅方向内側縁との間にわたって上下方向および前後方向に延びる第2内壁73と、第3立壁71の上縁と第4立壁72の上縁との間にわたって車幅方向および前後方向に延びる第2上壁74とを備える。第2アーム支持部70は、これら壁71~74によって、車幅方向外側に開口する開断面部を形成している。
【0052】
また、第2アーム支持部70は、第2内壁73から下方に延びる第2被固定部77を備える。
【0053】
第2上壁74は、サスハウジング5の頂面の一部を構成する。第2上壁74は、第2内壁73の上縁から車幅方向外側に向かって、車幅方向外側の方が上方に位置するようにわずかに傾斜して延びている。
【0054】
第2内壁73は、サスハウジング5の車幅方向内側面の一部を構成する。第2内壁73も、第1内壁63と同様に、その上側部分は略垂直に延び、その下側部分は下方に向かうに従って車幅方向外側に位置するように傾斜している。
【0055】
図5等に示すように、第3立壁71も、第2立壁62と同様に、上側ほど車幅方向の寸法が大きくなるような形状を有している。ただし、
図13に示すように、第3立壁71の方が、第2立壁62よりも車幅方向外側まで延びている。また、第4立壁72は、第1、第2、第3立壁61、62、71よりも車幅方向外側まで延びており、その車幅方向の寸法は他の立壁よりも長くなっている。さらに、第4立壁72は、下面に複数のリブR2が形成された後側連結部52につながっている。このような構成に伴い、本実施形態では、第2アーム支持部70の方が、第1アーム支持部60よりも高い剛性を有している。
【0056】
第3立壁71の上下方向の略中央と第4立壁72の車幅方向内側部分の上下方向の略中央には、それぞれ第2アーム部14を軸支するための軸部材が挿入される軸孔71a、72aが形成されている。第2アーム部14の第2被軸支部14aは第3立壁71と第4立壁72との間に収容されている。そして、この収容状態で第2被軸支部14aに形成された孔(不図示)と各立壁71、72の軸孔71a、72aとに前後方向に延びる軸部材が挿通されて、この軸部材が第3立壁72に固定されることで、第2アーム部14は第2アーム支持部70によって上下方向に回動可能に支持される。
【0057】
本実施形態では、軸部材の固定ひいては第2アーム部14の固定は、第3立壁71の前方において行われるようになっている。具体的には、軸部材を固定するための固定用部材が第3立壁71の前方において軸部材に装着されて、第3立壁71の前方において工具により固定用部材および軸部材が第3立壁71に固定されるようになっている。
【0058】
第3立壁71および第4立壁72に形成された軸孔71a、72aの高さ位置は、第1立壁61および第2立壁62に形成された軸孔61a、62aの高さ位置よりも低い。これに伴い、アッパアーム12は、第2アーム部14の第2被軸支部14aの高さ位置の方が第1アーム部13の第1被軸支部13aの高さ位置よりも低くなり、側面視で後ろ斜め下方に傾斜した姿勢で、サスハウジング5に支持される。
【0059】
<本体部>
本体部80は、第1上壁64と第2上壁74との間にわたって車幅方向および前後方向に延びる第3上壁84と、第3上壁84の車幅方向内側縁から下方に向かって略垂直に延びる第3内壁83とを備える。
【0060】
第3上壁84は、
図5等に示すように、車幅方向内側ほど下方に位置するように傾斜している。第3上壁84には、ダンパ11の上端部が固定されるダンパ固定部84aが設けられている。ダンパ固定部84aは、第3上壁84の略中央において上方に膨出しており、上面視で中央に貫通孔84bが形成された略円板状を有している。
図13に示すように、ダンパ11は、側面視で第2立壁62と第3立壁71との間に収容され、その上端部がダンパ固定部84aの貫通孔84bに挿通された状態でダンパ固定部84aに固定されるようになっている。ダンパ固定部84aの周囲には、上下方向に延びる複数のリブR3が形成されており、これらリブR3によってダンパ固定部84aの剛性は高められている。
【0061】
このように、本実施形態では、ダンパ固定部84aにダンパ11が固定されて、第3上壁84によってダンパ11が支持されるようになっており、この第3上壁84が、請求項の「ダンパ支持部」として機能する。
【0062】
また、本体部80は、第3内壁83から下方に延びる第3被固定部87を備える。第3被固定部87と第2被固定部77とは前後方向に連続しており、これら被固定部77、87は、前後方向に延びる平面状に形成されている。つまり、これら被固定部77、87は、その車幅方向の内側面と外側面とが連続して前後方向に延びる平面となるように形成されている。第3被固定部87の下縁と第2被固定部77の下縁の高さ位置は、第1被固定部67の下縁の高さ位置よりも高くなっている。つまり、第1被固定部67の方が、第3被固定部87と第2被固定部77よりも下方まで延びている。
【0063】
第3内壁83は、前記のように、基本的に鉛直方向に延びているが、第3内壁83のうち第2立壁62に連なる部分の一部、および、第3立壁71に連なる部分の一部は、車幅方向内側に膨出している。詳細には、
図10、
図13等に示すように、第3内壁83の前側部分のうち側面視で第2立壁62の軸孔62aを囲む部分は、第3内壁83の前後方向の中央の鉛直に延びる部分83cから前方に向かって車幅方向内側に膨出するように湾曲しており、この部分に、車幅方向内側に膨出する前側膨出部83aが形成されている。また、第3内壁83の後側部分のうち側面視で第3立壁71の軸孔71aを囲む部分は、第3内壁83の前後方向の中央部分83cから後方に向かって車幅方向内側に膨出するように湾曲しており、この部分に車幅方向内側に膨出する後側膨出部84bが形成されている。
【0064】
第3内壁83のうちこれら前側膨出部83aと後側膨出部84bとの間の部分83cには、車幅方向内側に突出する補強部83dが形成されている。補強部83dは、車幅方向内側に凸となるように屈曲している。本実施形態では、補強部83dは、第3内壁83の一部が板厚一定で車幅方向内側に突出するように押し出されることで形成されている。補強部83dは、第3内壁83の前後方向の略中央部分に形成されており、この部分において上下方向に延びている。この補強部83dによって第3内壁83ひいては本体部80の剛性は高められている。
【0065】
<後側連結部>
後側連結部52は、第4立壁72の後面から後方に延びている。後側連結部52は、車幅方向内側且つ下方に向かって湾曲するような形状を有している。本実施形態では、第4立壁72の後面と後側連結部52の上面とをつなぐように延びる複数のリブR4が設けられており、これらリブR4によって、第4立壁72と後側連結部52の剛性が高められている。また、後側連結部52の下面には、前記のように複数のリブR2が格子状に設けられており、これらリブR2によっても後側連結部52、および、これに連なる第4立壁72の剛性が高められている。
【0066】
後側連結部52の下端部は、上下方向に延びており、第4被固定部52aとして機能する。なお、第4被固定部52aは後側連結部52の車幅方向の内側端部でもある。第4被固定部52aは、第1被固定部67と同等の高さ位置まで延びており、第3被固定部87と第2被固定部77よりも下方まで延びている。
【0067】
<外側連結部>
外側連結部53は、第1上壁64、第2上壁74、第3上壁84、後側連結部52の各車幅方向の内側縁から車幅方向外側に延びている。外側連結部53には、その車幅方向外側部分の方が車幅方向内側部分よりも下方に位置するように段部が形成されており、外側連結部53は、その車幅方向外側部分を構成して車幅方向および前後方向に延びる第1横壁53bと、第1横壁53bの車幅方向内側縁から上方に延びる立ち上がり壁53cと、立ち上がり壁53cの上縁から車幅方向内側に延びる第2横壁53dとを備える。
図4等に示すように、第1横壁53bは、略水平に延びており、第2横壁53dは、車幅方向内側の方が下側の位置となるようにわずかに内斜め下方に傾斜している。
【0068】
図4等に示すように、サスハウジング5は、外側連結部53がエプロンレイン4に下側から当接するように配置されており、外側連結部53においてサスハウジング5はエプロンレイン4に固定されている。そして、これにより、前記のように、エプロンレイン4と外側連結部53の上面との間には、前後方向に延びる閉断面部C2が形成されている。
【0069】
第1横壁53bの前後方向の略中央部分には、上方に膨出する回避部53fが設けられている。回避部53fは、立ち上がり壁53cから車幅方向外側に膨出している。本実施形態では、回避部53fは、立ち上がり壁53cから車幅方向外側に膨らむ半円状を有している。この回避部53fの形状は、ナックル固定部12aの車幅方向外側部分の形状に対応している。具体的には、ナックル固定部12aは平面視で略円形を有しており、回避部53fは、このナックル固定部12aの車幅方向外側部分が平面視で半円状であるのに対応して、半円状を有している。なお、前記のように構成された回避部53fは、請求項の「膨出部」に相当する。また、この回避部53fが形成された外側延出部53であって第3上壁84から車幅方向外側に延びる部分は、請求項の「延出部」に相当する。
【0070】
回避部53fは、
図12に示すように、ナックル固定部12aの回動軌跡上に、この回動軌跡に沿って上下方向に延びるように形成されている。これにより、
図13の破線に示す状態から鎖線に示す状態へとアッパアーム12が上方に回動したときに、ナックル固定部12aが回避部53f内に入ることでナックル固定部12aとサスハウジング5とが干渉しないようになっている。詳細には、回避部53fは、アッパアーム12が最も上方に回動したときにナックル固定部12aの車幅方向外側部分が回避部53f内に入るように形成されている。本実施形態では、回避部53fは、ダンパ固定部84aの車幅方向外側であって、前後方向の位置がダンパ固定部84aの位置とほぼ同じ位置となる部分に設けられている。
【0071】
<サスハウジングとフロントフレームとの取付構造>
前記のように構成されたサスハウジング5は、各被固定部67、77、87、52aがフロントフレーム3に接合されることでフロントフレーム3に固定されている。
【0072】
図4、
図9に示すように、第1被固定部67は、フロントフレーム3の車幅方向外側面を構成する第1側面部3aに接合されている。つまり、フロントフレーム3の第1側面部3aには第1被固定部67が固定される第1固定部167が設けられており、この第1固定部167と第1被固定部67とが接合されている。
【0073】
図5、
図9に示すように、第2被固定部77と第3被固定部87とは、フロントフレーム3の上側フランジ部3eに接合されている。つまり、フロントフレーム3の上側フランジ部3eには第2被固定部77と第3被固定部87とがともに固定される第2固定部168が設けられており、この第2固定部168と第2被固定部77および第3被固定部87とがともに接合されている。前記のように、第2被固定部77と第3被固定部87とは前後方向に連続しており、第2固定部168は前後方向について広い範囲にわたって延びている。具体的には、第2被固定部77と第3被固定部87とで構成される被固定部の前後方向の長さは、第1被固定部67の長さよりも、また、第4被固定部52aの長さよりも長く、第2固定部168は、第1固定部167および第3被固定部187が固定される後述する第3固定部169よりも前後方向の長さが長くなっている。
【0074】
図6、
図9に示すように、第4被固定部52aは、第1被固定部67と同様に、フロントフレーム3の車幅方向外側面を構成する第1側面部3aに接合されている。つまり、フロントフレーム3の第1側面部3aには第4被固定部52aが固定される第3固定部169が設けられており、この第3固定部169と第4被固定部52aとが接合されている。
【0075】
前後方向について、第1固定部167、第2固定部168、第3固定部169は、この順で前方から並んでいる。各被固定部67、77、87、52aと、フロントフレーム3の各固定部167~169とは、溶接や接着剤による接着等によって接合されている。
【0076】
図4に示すように、また、前記のように、フロントフレーム3の上側フランジ部3eは、第1側面部3aよりも車幅方向内側に位置しており、第2固定部168は、第1固定部167および第3固定部169よりも車幅方向内側にオフセットし、第2被固定部77と第3被固定部87とは、第1被固定部67および第4被固定部52aよりも車幅方向内側にオフセットした位置でフロントフレーム3に接合されている。
【0077】
各被固定部67、77、87、52aは、各固定部167~169の車幅方向外側面(第1側面部3aの車幅方向外側面、上側フランジ部3eの車幅方向外側面)に当接した状態でこれに接合されている。例えば、車幅方向外側から各被固定部67、77、87、52aが各固定部167~169の車幅方向外側面に押し当てられて、その状態でこれらが溶接されること、あるいは、車幅方向外側から各被固定部67、77、87、52aが接着剤を介して各固定部167~169の車幅方向外側面に押し当てられることで、サスハウジング5はフロントフレーム3に接合される。
【0078】
<作用等>
以上のように、本実施形態では、ダンパ固定部84aを介してダンパ11を支持する第3上壁84の車幅方向内側縁から下方に向かって、第3内壁83が略垂直に延びている。そして、第3内壁83の下端部に第3被固定部87が設けられて、この第3被固定部87がフロントフレーム3に固定されている。さらに、第3内壁83に上下に延びる補強部83dが設けられている。そのため、第3上壁84にダンパ11から荷重が加えられたときに、第3内壁83および第4上壁84が変形するのが抑制され、これら第3内壁83および第3上壁84によって、つまり、サスハウジング5によってダンパ11を適切な姿勢に維持することができる。
【0079】
特に、本実施形態では、ダンパ11が、上側ほど車幅方向内側に位置するような姿勢(内倒れの姿勢)で支持されるため、ダンパ11から第3上壁84に車幅方向内向きの荷重が加えられやすいが、この荷重による第3内壁83および第4上壁84の変形が効果的に抑制される。
【0080】
また、第3上壁84の車幅方向外側縁から車幅方向外側に外側連結部53が延びて、この外側連結部53がエプロンレイン4に連結されている。そのため、第3上壁84ひいてはサスハウジング5の剛性を高めてこれらによってダンパ11をより安定して支持することができる。ここで、このように外側連結部53を設けると、サスハウジング5の車幅方向の長さが長くなるため、アッパアーム12とサスハウジング5とが干渉するおそれがある。これに対して、本実施形態では、外側連結部53に回避部53fを設けているため、前記のように、アッパアーム12(ナックル固定部12a)とサスハウジング5との干渉を回避することができる。
【0081】
また、本実施形態では、第3上壁84が車幅方向内側ほど下側に位置するように傾斜している。つまり、第3上壁84に対してダンパ11(ダンパ11の中心軸)が直角またはより直角に近い角度で固定されるようになっている。そのため、ダンパ11から加えられた荷重を第3上壁84全体でより均一に受け止めることができ、第3上壁84の変形を抑制することができる。
【0082】
また、本実施形態では、サスハウジング5の第1被固定部67と第4被固定部52aとがフロントフレーム3の第1側面部3aに固定される一方、第2被固定部87と第3被固定部77とはフロントフレーム3の上側フランジ部3eであって第1側面部3aよりも車幅方向内側に位置する部分に固定されている。つまり、本実施形態では、フロントフレーム3のうち車幅方向の位置が互いに異なる複数の部分でサスハウジング5が固定されるようになっている。そのため、サスハウジング5の車両前後方向回りの変形をさらに抑制することができる。
【0083】
また、本実施形態では、ダンパ11が上側ほど後方に位置する姿勢(後倒れの姿勢)で支持されており、サスハウジング5にはダンパ11から後向きの荷重が加えられやすい。これに対して、第1被固定部67よりも後方に設けられた第2被固定部77と第3被固定部87とが連続して延びる平面状とされてフロントフレーム3に固定されている。つまり、サスハウジング5の比較的後側の部分が広い範囲にわたって連続してフロントフレーム3に固定されている。そのため、サスハウジング5の後側部分の剛性を高めることができ、サスハウジング5の後向きの変形を抑制して、ダンパ11が後方に倒れるのを効果的に防止できる。
【0084】
<変形例>
前記実施形態では、サスペンションとしてダブルウィッシュボーン式のものを用いた場合について説明したが、サスペンションはこれに限らずサスハウジング5に支持されるダンパを備えるものであればよい。例えば、マルチリンク式のサスペンションが用いられてもよい。具体的には、各アームに代えてタイヤとサスハウジングとをそれぞれ個別に連結する複数のリンク部材を設けてもよい。
【0085】
サスハウジング5の詳細構造は前記に限らない。例えば、後側連結部52や各リブR1~R4等は省略してもよい。
【符号の説明】
【0086】
1 前部車体
2 ダッシュパネル
3 フロントフレーム
4 エプロンレイン
5 サスハウジング
11 ダンパ
12 アッパアーム
52a 第4被固定部
53 外側連結部(延出部)
53f 回避部(膨出部)
60 第1アーム支持部
67 第1被固定部
70 第2アーム支持部
77 第2被固定部
80 本体部
83 第3内壁(垂下部)
83d 補強部
84 第3上壁(ダンパ支持部)
87 第3被固定部