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特許7091991接着剤組成物、それを用いた積層体及び包装材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】接着剤組成物、それを用いた積層体及び包装材
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20220621BHJP
   C09J 175/08 20060101ALI20220621BHJP
   C09J 175/06 20060101ALI20220621BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220621BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20220621BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J175/08
C09J175/06
B32B27/00 H
B32B27/40
B65D65/40 D
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2018197906
(22)【出願日】2018-10-19
(65)【公開番号】P2020066639
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】396009595
【氏名又は名称】東洋モートン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】内山 裕清
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-151497(JP,A)
【文献】国際公開第2018/101242(WO,A1)
【文献】特表2007-510020(JP,A)
【文献】特開2016-121351(JP,A)
【文献】特開2016-53121(JP,A)
【文献】特開2015-129246(JP,A)
【文献】特開2001-172602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 175/04
C09J 175/08
C09J 175/06
B32B 27/00
B32B 27/40
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネート成分(A)とポリオール成分(B)とを含む接着剤組成物であって、
前記ポリイソシアネート成分(A)が、ポリオール成分(X)とジイソシアネート成分との反応生成物である末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a1)、及び、分子量500以下であるモノアルコール成分とジイソシアネート成分との反応生成物(a2)を含む、接着剤組成物。
【請求項2】
前記ポリオール成分(X)がポリエーテルポリオールを含有する、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記ポリオール成分(X)中のポリエーテルポリオールの含有率が、70~100質量%である、請求項2に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記ジイソシアネート成分が、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート及びトリレンジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種を必須とする、請求項1~3いずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記ジイソシアネート成分が、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを含有する、請求項1~4いずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記ポリイソシアネート成分(A)が、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート及びトリレンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し、
前記ポリイソシアネート成分(A)100質量%中における、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート及びトリレンジイソシアネートの合計量が、20~40質量%である、請求項1~5いずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記モノアルコール成分が、炭素数2~20の、1級又は2級アルコールである、請求項1~6いずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
前記モノアルコール成分の分子量が、200以下である、請求項1~7いずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
前記ポリイソシアネート成分(A)におけるイソシアネート基含有率が、18~22質量%である、請求項1~8いずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
前記ポリオール成分(B)が、ポリエステルポリオールを含有する、請求項1~9いずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
前記ポリエステルポリオールの数平均分子量が1,000~3,000である、請求項10に記載の接着剤組成物。
【請求項12】
接着剤組成物における、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート及びトリレンジイソシアネートの含有率が16%以下である、請求項1~11いずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項13】
無溶剤型である、請求項1~12いずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項14】
包装材形成用ラミネート用接着剤である、請求項1~13いずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項15】
請求項1~14いずれか1項に記載の接着剤組成物が、少なくとも2つのシート状基材の間に積層された積層体。
【請求項16】
請求項1~14いずれか1項に記載の接着剤組成物を第1のシート状基材に塗布して接着剤層を形成し、前記接着剤層に第2のシート状基材を重ね合わせた後、前記接着剤層を硬化する積層体の製造方法。
【請求項17】
請求項15に記載の積層体からなる包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、並びにそれを用いた積層体及び包装材に関し、より詳細には、食品、医療品、化粧品等の包装用材料として有用な無溶剤型接着剤組成物、それを用いた積層体及び包装材に関する。
【0002】
各種プラスチックフィルム同士の貼り合わせや、プラスチックフィルムと金属蒸着フィルムや金属箔との張り合わせは、従来、水酸基/イソシアネート系の溶剤型接着剤組成物を用いるドライラミネート方式により行われていた。しかし、ドライラミネート方式は有機溶剤を含有する接着剤組成物を用いるので、環境汚染や火災を抑止・防止する特別な設備が必要である。
【0003】
近年、簡便な設備への要求から接着剤組成物の脱有機溶剤化の要求が強くなり、無溶剤化の研究が盛んに行われている。
例えば、特許文献1には、ポリオール成分(1)と2種類のポリイソシアネート化合物からなるポリイソシアネート成分(2)とを含有する無溶剤型のラミネート用接着剤組成物が開示されている。
また、特許文献2には、ポリオール成分(1)と3官能ポリイソシアネート化合物を必須とするポリイソシアネート成分(2)とを含有する、分岐点濃度が特定の範囲にあり、水酸基モル数:イソシアネート基モル数=1:1~1:3である無溶剤型ラミネート接着剤組成物が開示されている。
【0004】
また、特許文献3には、ポリイソシアネートコンポーネント(a)とポリオールコンポーネント(b)とを含有する接着剤組成物であって、前記ポリイソシアネートコンポーネント(a)が、モノマー系4,4’メチレンジフェニルジイソシアナート(i)とイソシアナート官能性プレポリマー(ii)とを含む接着剤組成物が開示されている。
また、特許文献4にはポリイソシアネート成分(A)とポリオール成分(B)とを含み、ポリイソシアネート成分(A)が、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(a1)と4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(a2)と、ポリエーテルポリオール(a3)を必須とするポリオールとをイソシアネート基過剰の条件下に反応させてなる反応性生成物であり、ポリオール成分(B)が、数平均分子量500以上、3000以下のポリエステルジオール(b1)を必須とし、更に数平均分子量50以上、500未満のジオール(b2)又はトリオール(b3)の少なくともいずれか一方を含む接着剤組成物が開示されている。
また、特許文献5の請求項2には、外装のポリエチレンテレフタレートフィルム層(F1)、印刷インキの乾燥被膜層(P)、コート樹脂の乾燥皮膜層(C)、無溶剤型接着剤層(A)、金属蒸着層又は金属箔(M)、内装プラスチックフィルム層(F2)をこの順に有するプラスチックフィルム積層体が記載されている。
【0005】
また、特許文献6には、ポリエーテルポリオールを原料とするウレタンプレポリマー、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート及び2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート等を含む特定のポリイソシアネート成分(A)と、ポリエステルジオールを必須成分とする特定のポリオール成分(B)とを含む、無溶剤型の接着剤組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-60131号公報
【文献】特開2003-96428号公報
【文献】特開2012-131980号公報
【文献】特開2014-159548号公報
【文献】特開2010-280122号公報
【文献】特許第5812219号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
包装用材料としての積層体は、透明基材の一方の面(以下、裏面、裏側ともいう)に印刷インキ層、接着剤層、基材とを有する。印刷インキ層は、前記透明基材の反対側(以下、表面、表側ともいう)から見られることとなる。印刷インキ層は、全面を覆うように設けられている場合もあるし、部分的に設けられている場合もある。印刷インキ層は単層の場合もあるし複数の層が重ねられている場合もある。印刷インキ層が設けられている部分はインキ部とも呼ばれ、印刷インキ層の設けられてない部分は無地部とも呼ばれる。
【0008】
溶剤を含まない接着剤組成物は、乾燥工程がなく溶剤の排出がないこと、省エネルギーでランニングコストが良いこと、プラスチックフィルム同士を貼り合せた後の積層体や、プラスチックフィルムと金属箔や金属蒸着層とを貼り合せた後の積層体に溶剤が残留する懸念がないこと等の多くのメリットを持つ。しかし、無溶剤接着剤組成物と、フィルム上に金属蒸着層が設けられたガスバリア性の高い基材(以下、バリア性基材ともいう)とを用いて包装用材料としての積層体を形成すると、インキ部上にゆず肌状の外観不良が生じやすいという問題があった。
【0009】
特許文献1、2には、ポリイソシアネート成分として、反応が比較的穏やかなもの、具体的には脂環族系ポリイソシアネート成分や脂肪族系ポリイソシアネート成分を使用する旨、記載されている。しかし、反応が比較的穏やかなポリイソシアネート成分では、エージング工程に40~50℃で2~5日間を要するという問題点があった。また、特許文献1、2には、インキ部における外観不良の改良は記載されていない。なお、エージング工程とは「接着剤層の硬化を進行させる工程」の意である。
【0010】
特許文献3には、4,4’-MDI及び4,4’-MDI由来のプレポリマーを含むポリイソシアネート成分を用いる旨、記載されている。しかし、特許文献3記載の接着剤組成物は、ポットライフが極めて短いという問題があった。特に無溶剤型とした場合、短時間での粘度増加は、生産性に多大な影響を及ぼすだけでなく、塗工性を悪化させ、中でもガスバリア性の高いフィルム基材に対して用いた場合、塗工面の荒れが著しい。
【0011】
また、特許文献4には水分との反応性を制御し、高湿度化においても良好な接着性能と良好なポットライフを有する接着剤組成物が開示されている。しかし、特許文献4もインキ部における外観不良の改良には言及してない。
【0012】
特許文献5の[0013]、[0014]には、外装のポリエチレンテレフタレートフィルム層(F1)と、コート樹脂の乾燥皮膜層(C)の間に、印刷インキの乾燥被膜層(P)を設ける場合、前記コート樹脂の乾燥皮膜層(C)を構成するコート樹脂は、印刷インキ用のバインダーを用い、インキ部の外観を向上させようとする旨、開示されている。しかし、実施例に具体的に示される加工スピード、即ち、接着剤の塗工速度はわずか10m/分と低速である。無溶剤型接着剤組成物は、無溶剤であるが故にこれまでは塗工速度を上げると、塗工面が荒れるので、塗工速度の向上と外観向上の両立を図ることはできなかった。生産性の向上の点から、無溶剤型接着剤組成物にも、溶剤型接着剤組成物と同レベル、例えば200m/分程度の塗工速度で、インキ部の外観が良好な積層体が望まれるようになってきた。
【0013】
また、特許文献6には、200m/分以上の速度で塗工し、低温かつ短時間でエージングし、外観に優れる積層体が得られる旨記載されているが、経済的理由から、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの比率を高めつつ、印刷部の外観を向上させることが望まれていた。
【0014】
すなわち、本発明の目的は、印刷層を有する基材の印刷面とバリア性基材とを接着剤組成物を用いてラミネートした場合においても、優れた外観及び接着強度を発揮し且つ経済的に有利な接着剤組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、印刷層を有する基材の印刷面とバリア性基材とを接着剤組成物を用いてラミネートした場合においても、優れた外観と接着強度を発揮し且つ経済的に有利な積層体及び包装材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は以下の〔1〕~〔17〕に関する。
【0016】
〔1〕 ポリイソシアネート成分(A)とポリオール成分(B)とを含む接着剤組成物であって、
前記ポリイソシアネート成分(A)が、ポリオール成分(X)とジイソシアネート成分との反応生成物である末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a1)、及び、分子量500以下であるモノアルコール成分とジイソシアネート成分との反応生成物(a2)を含む、接着剤組成物。
【0017】
〔2〕 前記ポリオール成分がポリエーテルポリオールを含有する、〔1〕に記載の接着剤組成物。
【0018】
〔3〕 前記ポリオール成分中のポリエーテルポリオールの含有率が、70~100質量%である、〔2〕に記載の接着剤組成物。
【0019】
〔4〕 前記ジイソシアネート成分が、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート及びトリレンジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種を必須とする、〔1〕~〔3〕いずれか1項に記載の接着剤組成物。
【0020】
〔5〕 前記ジイソシアネート成分が、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを含有する、〔1〕~〔4〕いずれか1項に記載の接着剤組成物。
【0021】
〔6〕 前記ポリイソシアネート成分(A)が、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート及びトリレンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含有し、
前記ポリイソシアネート成分(A)100質量%中における、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート及びトリレンジイソシアネートの合計量が、20~40質量%である、〔1〕~〔5〕いずれか1項に記載の接着剤組成物。
【0022】
〔7〕 前記モノアルコール成分が、炭素数2~20の、1級又は2級アルコールである、〔1〕~〔6〕いずれか1項に記載の接着剤組成物。
【0023】
〔8〕 前記モノアルコール成分の分子量が、200以下である、〔1〕~〔7〕いずれか1項に記載の接着剤組成物。
【0024】
〔9〕 前記ポリイソシアネート成分(A)におけるイソシアネート基含有率が、18~22質量%である、〔1〕~〔8〕いずれか1項に記載の接着剤組成物。
【0025】
〔10〕 前記ポリオール成分(B)が、ポリエステルポリオールを含有する、〔1〕~〔9〕いずれか1項に記載の接着剤組成物。
【0026】
〔11〕 前記ポリエステルポリオールの数平均分子量が1,000~3,000である、〔10〕に記載の接着剤組成物。
【0027】
〔12〕 接着剤組成物における、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート及びトリレンジイソシアネートの含有率が16%以下である、〔1〕~〔11〕いずれか1項に記載の接着剤組成物。
【0028】
〔13〕 無溶剤型である、〔1〕~〔12〕いずれか1項に記載の接着剤組成物。
【0029】
〔14〕 包装材形成用ラミネート用接着剤である、〔1〕~〔13〕いずれか1項に記載の接着剤組成物。
【0030】
〔15〕 〔1〕~〔14〕いずれか1項に記載の接着剤組成物が、少なくとも2つのシート状基材の間に積層された積層体。
【0031】
〔16〕 〔1〕~〔14〕いずれか1項に記載の接着剤組成物を第1のシート状基材に塗布して接着剤層を形成し、前記接着剤層に第2のシート状基材を重ね合わせた後、前記接着剤層を硬化する積層体の製造方法。
【0032】
〔17〕 〔15〕に記載の積層体からなる包装材。
【発明の効果】
【0033】
本発明により、印刷層を有する基材の印刷面とバリア性基材とを接着剤組成物を用いてラミネートした場合においても、優れた外観及び接着強度を発揮し且つ経済的に有利な接着剤組成物を提供することができる。また、印刷層を有する基材の印刷面とバリア性基材とを接着剤組成物を用いてラミネートした場合においても、優れた外観と接着強度を発揮し且つ経済的に有利な積層体及び包装材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の接着剤組成物は、ポリイソシアネート成分(A)とポリオール成分(B)とを含み、前記ポリイソシアネート成分(A)が、ポリオール成分(X)とジイソシアネート成分との反応生成物である末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a1)、及び、分子量500以下であるモノアルコール成分とジイソシアネート成分との反応生成物(a2)を含むことを特徴とする。
分子量500以下であるモノアルコール成分とジイソシアネート成分との反応生成物(a2)を含むことにより、印刷層を有する基材の印刷面とバリア性基材とを接着剤組成物を用いてラミネートした場合においても、高い接着強度を維持するだけでなく、反応生成物(a2)が滑剤と同様の働きをして、接着剤塗工時に良好なレベリング性を発現し、印刷インキ上においても、優れた外観を示すことが可能となる。
【0035】
<ポリイソシアネート成分(A)>
ポリイソシアネート成分(A)は、ポリオール成分(X)とジイソシアネート成分との反応生成物である両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a1)、及び、分子量500以下であるモノアルコール成分と、ジイソシアネート成分との反応生成物(a2)を含む。
【0036】
[ウレタンプレポリマー(a1)]
本発明のウレタンプレポリマー(a1)は、末端にイソシアネート基を有するものであり、好ましくは、ポリオール成分(X)とジイソシアネート成分とを、ポリオール中の水酸基に対しイソシアネート基過剰の条件下で反応させてなるウレタンプレポリマーである。
【0037】
(ポリオール成分(X))
本発明のポリオール成分は、特に限定されるものではなく、例えばポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、ヒマシ油系ポリオール、フッ素系ポリオール等を単独で使用、又は2種類以上を併用することができる。中でも、無溶剤下においてポリイソシアネート成分(A)を得る際に溶融状態での粘度が低いポリオール成分を選択することが好ましい為、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールから選ばれる少なくとも1種が好ましく、より好ましくはポリエーテルポリオールを必須とするものである。
【0038】
≪ポリエーテルポリオール≫
ポリエーテルポリオールは、一般にポリエステルポリオールと比較して溶融状態での粘度が低く、無溶剤下でウレタンプレポリマー(a1)を得る際のポリオールとして最適かつ重要な成分である。ポリエーテルポリオールの製造方法は特に限定されないが、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分子量ポリオールを開始剤として重合して得られる。 ポリエーテルポリオールの官能基数は限定されないが、2官能の他、3官能以上のものを用いることができ、通常、2官能ポリプロピレングリコール、3官能ポリプロピレングリが好適に用いられる。
【0039】
また、ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、好ましくは200以上10,000以下であり、より好ましくは300以上3,000以下であり、特に好ましくは200以上2,000以下である。これらポリエーテルポリオールは、官能基数の異なるものや数平均分子量の異なるものを複数組み合わせて用いることもできる。(B)との相溶性を高めると共に、接着剤組成物の凝集力を高めることができる。
【0040】
ポリエーテルポリオールの含有量は、全ポリオール成分に対して60~100質量%が好ましく、より好ましくは70~100質量%であり、特に好ましくは80~100質量%である。この範囲であることで、低粘度なポリイソシアネート成分を調整でき、レベリング性向上効果をより発揮する。
【0041】
≪ポリエステルポリオール≫
ポリエステルポリオールとしては、多価カルボン酸成分とグリコール成分とを反応させて得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。
多価カルボン酸成分としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の多価カルボン酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物が挙げられる。グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のグリコール類若しくはそれらの混合物とが挙げられる。
【0042】
上記低分子ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、2-メチル-1,3-プロパンジオール等の低分子ジオール類又はそれらの混合物が挙げられる。
【0043】
ポリエーテルポリオールに、ポリエステルポリオールを併用する場合には、ポリオール100質量%中、接着剤組成物の粘度の点から50質量%以下であることが好ましい。
【0044】
(ジイソシアネート成分)
本発明のジイソシアネート成分、即ち2官能のイソシアネート成分は、特に限定されるものではなく、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIともいう)、トリレンジイソシアネート(以下、TDIともいう)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、4,4’-MDIともいう)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、2,4’-MDIともいう)、キシリレンジイソシアネート(以下、XDIともいう)、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIともいう)等、を挙げることができる。なお、ジイソシアネート(2官能イソシアネート)を、2官能イソシアネートから誘導されるビュレット体やヌレート体と区別する趣旨で「モノマー」又は「イソシアネートモノマー」と表現することがある。
【0045】
ジイソシアネート成分は、反応性向上の観点から、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート及びトリレンジイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも1種を必須とすることが好ましく、より好ましくは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを必須とすることである。経済的な観点から、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートの含有量は多い方が好ましく、より好ましくは全ジイソシアネート成分に対して50質量%以上であり、特に好ましくは100質量%である。
【0046】
[反応生成物(a2)]
反応生成物(a2)は、分子量500以下であるモノアルコール成分と、前述のジイソシアネート成分との反応生成物であり、ジイソシアネート成分の1つのイソシアネート基にモノアルコール成分が反応したものと、ジイソシアネート成分の2つのイソシアネート基にモノアルコール成分が反応したものとの混合物である。このような、イソシアネート成分の一部のイソシアネート基と分子量500以下であるモノアルコール成分の水酸基との反応生成物が存在することで、ポリイソシアネート成分(A)の粘度を下げることが可能となり、無溶剤型接着剤組成物として塗工した際に、基材への濡れ性が向上し、良好な外観を得ることができる。
【0047】
(分子量500以下であるモノアルコール成分)
分子量500以下であるモノアルコール成分は、特に限定されるものではなく、例えば、メタノール、エタノール、プロパン-1-オール、ブタン-1-オール、ペンタン-1-オール、ヘキサン-1-オール、ヘプタン-1-オール、オクタン-1-オール、ノナン-1-オール、デカン-1-オール、ウンデカン-1-オール、ドデカン-1-オール、トリデカン-1-オール、テトラデカン-1-オール、ペンタデカン-1-オール、ヘキサデカン-1-オール、ヘプタデカン-1-オール、オクタデカン-1-オール、ノナデカン-1-オール、イコサン-1-オール、ヘネイコサン-1-オール、ドコサン-1-オール、トリコサン-1-オール、テトラコサン-1-オール、ペンタコサン-1-オール、ヘキサコサン-1-オール、ヘプタコサン-1-オール、オクタコサン-1-オール、ノナコサン-1-オール、2-メチルプロパン-1-オール、2-エチルヘキサン-1-オール、3-メチルブタン-1-オールなどの第1級アルコール、
プロパン-2-オール、ブタン-2-オール、ペンタン-2-オール、ヘキサン-2-オール、ヘプタン-2-オール、シクロヘキサノールなどの第2級アルコール、
2-メチルプロパン-2-オール、2-メチルブタン-2-オール、2-メチルペンタン-2-オール、2-メチルヘキサン-2-オール、2-メチルヘプタン-2-オール、3-メチルペンタン-3-オール、3-メチルオクタン-3-オールなどの第3級アルコールが挙げられ、中でも、炭素数2~20の1級又は2級アルコールであることが好ましい。
【0048】
また、モノアルコール成分のモノアルコール成分の分子量は、好ましくは300以下であり、より好ましくは200以下である。上記範囲であることで、変性時に著しい増粘が抑制され、塗工性向上の効果を発揮する。モノアルコール成分は、イソシアネート基に対して1~50%当量の範囲が好ましい。
【0049】
ポリイソシアネート成分(A)は、数平均分子量が200~2,000であることが好ましく、より好ましくは300以上1,500以下であり、特に好ましくは500以上1500以下である。ポリイソシアネート成分(A)は、ウレタンプレポリマー(a1)及び反応生成物(a2)を含むものでありながらも、更に、イソシアネートモノマーを含むことによって、上記のような分子量を呈することが好ましい。イソシアネートモノマーは、前述のジイソシアネート成分の項目と同義である。
【0050】
ポリイソシアネート成分(A)は、イソシアネートモノマーを含有することが好ましく、より好ましくは、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート及びトリレンジイソシアネートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。
ポリイソシアネート成分(A)100質量%中における、イソシアネートモノマー合計の含有量は20質量%以上40質量%以下が好ましい。より詳細には、ポリイソシアネート成分(A)100質量%中において、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート及びトリレンジイソシアネートの合計量が20~40質量%であることが好ましい。
【0051】
また、ポリイソシアネート成分(A)におけるイソシアネート基含有率は、好ましくは10質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは15質量%以上25質量%以下であり、特に好ましくは18質量%以上22質量%以下である。上記範囲内にあることで、ガスバリア性の高いフィルム基材を用いた場合に、より外観の良好な積層体を形成することができる。イソシアネート基の含有率(質量%)は塩酸による滴定で求める。
【0052】
<ポリオール成分(B)>
ポリオール成分(B)は、特に限定されるものではなく、例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、ヒマシ油系ポリオール、フッ素系ポリオール等を単独で使用、又は2種類以上を併用することができる。中でも、ポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールから選ばれる少なくとも1種が好適に用いられ、より好ましくはポリエステルポリオールである。ポリエステルポリオールを必須として用いることで、十分な接着強度が得られる。
【0053】
[ポリエステルポリオール(b1)]
ポリエステルポリオールとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の二塩基酸もしくはそれらのジアルキルエステルまたはそれらの混合物と、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3′-ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のグリコール類、トリメチロールプロパン、グリセリンもしくはそれらの混合物と、を反応させて得られるポリエステルポリオール、あるいはポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオールが挙げられる。また、ヒマシ油等の植物油及び植物油由来のポリエステル化合物を使用することもできる。
【0054】
植物油として代表的ものは、アサ実油、アマニ油、エノ油、オイチシカ油、オリーブ油、カカオ油、カポック油、カヤ油、カラシ油、キョウニン油、キリ油、ククイ油、クルミ油、ケシ油、ゴマ油、サフラワー油、ダイコン種油、大豆油、大風子油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、ニガー油、ヌカ油、パーム油、ヒマシ油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、ヘントウ油、松種子油、綿実油、ヤシ油、落花生油、脱水ヒマシ油などが挙げられる。
【0055】
ポリエステルポリオールは、その数平均分子量が好ましくは500~5,000であり、より好ましくは700~4,000であり、さらに好ましくは1,000~3,000であり、特に好ましくは1,200~2,600である。上記範囲であることで、塗工性と接着性能、耐熱性のバランスを取る効果を発揮する。
【0056】
(ポリエステルポリウレタンポリオール)
また、ポリエステルポリオールとして、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの反応生成物であるポリエステルポリウレタンポリオールを使用することもできる。ポリエステルポリウレタンポリオールは例えば、上述のポリエステルポリオールとポリイソシアネートとをNCO/OHモル比が1未満、好ましくは0.3~0.98となるように配合し、反応させて得られる。ウレタン結合を導入してなるポリエステルポリウレタンポリオールは、凝集力が高く、金属への接着性が優れるため好ましい。
【0057】
(酸変性)
また、上述のポリエステルポリオールは、ポリエステルポリオール中の水酸基の一部に、無水トリメリット酸およびトリメリット酸エステル無水物を反応させてなる反応生成物であってもよい。酸無水物を付加したポリエステルポリオールを用いることにより、密着し難いシート状基材に適用する場合に、密着性を向上できる。付加させる無水トリメリット酸等の使用量は、反応後のポリエステルポリオール100質量%中、0.1~5質量%が好ましい。ポリエステルポリオールとして数平均分子量が上述の範囲内のものを用いることによって、特にポリイソシアネート成分(A)がポリエーテルポリウレタンを含む場合、相溶性が向上し、十分な接着性能を発現できる。
【0058】
[ポリエーテルポリオール(b2)]
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分子量ポリオールを開始剤として重合して得られるポリエーテルポリオール等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、2官能の他、3官能以上のものを用いることができる。また、官能基数の異なるものを複数組み合わせて用いることもできる。ポリエーテルポリオールとしては、数平均分子量が100以上5,000以下のものが好ましい。より好ましくは500以上5,000以下であり、特に好ましくは1,000以上3,000以下である。また、異なる分子量のものを複数組み合わせて用いることもできる。
【0059】
(ポリエーテルポリウレタンポリオール)
また、ポリエーテルポリオールとして、ポリエーテルポリオールとポリイソシアネートとを水酸基過剰の条件下に反応させた反応生成物であるポリエーテルポリウレタンポリオールを使用することもでき、通常、数平均分子量約400~2,000の2官能ポリプロピレングリコールや数平均分子量約400~4,000の3官能ポリプロピレングリコールと、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネートやトリレンジイソシアネート等のイソシアネート成分とから、ポリエーテルポリウレタンポリオールを合成することができる。中でも、ポリエーテルポリウレタンポリオールの硬化剤成分としてイソシアネート成分としては、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネートを必須とすることが好ましい。
【0060】
前記イソシアネート成分は、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIともいう)、トリレンジイソシアネート(以下、TDIと略す場合がある)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、4,4’-MDIと略す場合がある)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、2,4’-MDIと略す場合がある)、キシリレンジイソシアネート(以下、XDIと略す場合がある)、イソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略す場合がある)等、を挙げることができる。
【0061】
[その他ポリオール]
ポリオール成分(B)は、ポリオール成分(B)は、既述のポリオール成分の他に、本発明の目的を損なわない範囲で、その他のポリオール成分を含むことができる。中でも好ましくは、数平均分子量500以上5,000以下のポリエステルポリオールを必須とし、更に、数平均分子量50以上500未満のジオール、数平均分子量50以上500未満のトリオール、及び数平均分子量500以上5,000以下のポリエーテルポリオール、数平均分子量500以下の水酸基を1個持つ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種をふくむものである。
数平均分子量50以上500未満のジオール、数平均分子量50以上500未満のトリオール、及び数平均分子量500以上5,000以下のポリエーテルポリオール、数平均分子量500以下の水酸基を1個持つ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことで、高湿度下における強度が向上する。より好ましくは、数平均分子量50以上500未満のジオール、及び数平均分子量500以上5,000以下のポリエーテルポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むものである。
【0062】
数平均分子量50以上500未満のジオールとしては、例えば、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリエーテルエステルジオール、ポリエステルアミドジオール、アクリルジオール、ポリカーボネートジオールやエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、2-メチル-1,3-プロパンジオール、等の低分子ジオール類又はそれらの混合物が挙げられる。これらのなかでも、反応性の観点から、低分子ジオール類が好ましい。
【0063】
ポリエーテルジオールとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、等の2官能低分量ポリオールを開始剤として重合して得られるポリエーテルジオールが挙げられる。
【0064】
ポリエーテルエステルポリオールとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物と、上記ポリエーテルジオールを反応させて得られるポリエーテルエステルジオールが挙げられる。
【0065】
ポリエステルアミドジオールとしては、上記エステル化反応に際し、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアミノ基を有する脂肪族ジアミンを原料としてあわせて使用することによって得られる。
【0066】
アクリルジオールの例としては、1分子中に1個以上の水酸基を含むアクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロプル、アクリルヒドロキシブチル等、或いはこれらの対応するメタクリル酸誘導体等と、例えばアクリル酸、メタクリル酸又はそのエステルとを共重合することによって得られる。
【0067】
ポリカーボネートジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,8-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、の中から選ばれた1種又は2種以上のグリコールをジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等との反応によって得られたものが挙げられる。
【0068】
数平均分子量50以上500未満のトリオールとしては、ポリエーテルトリオール、ひまし油やトリメチロールプロパン、グリセリン等の低分子トリオール類又はそれらの混合物が挙げられる。これらのなかでも、反応性の観点から、低分子トリオール類やポリエーテルトリオールが好ましい。
【0069】
ポリエーテルトリオールとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分量トリオールを開始剤として重合して得られるポリエーテルトリオールが挙げられる。
【0070】
数平均分子量500以上5,000未満のポリエーテルジオールとして用いるポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分子量ポリオールを開始剤として重合して得られるポリエーテルポリオール等が挙げられる。
【0071】
水酸基を1個持つ化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパン-1-オール、ブタン-1-オール、ペンタン-1-オール、ヘキサン-1-オール、ヘプタン-1-オール、オクタン-1-オール、ノナン-1-オール、デカン-1-オール、ウンデカン-1-オール、ドデカン-1-オール、トリデカン-1-オール、テトラデカン-1-オール、ペンタデカン-1-オール、ヘキサデカン-1-オール、ヘプタデカン-1-オール、オクタデカン-1-オール、ノナデカン-1-オール、イコサン-1-オール、ヘネイコサン-1-オール、ドコサン-1-オール、トリコサン-1-オール、テトラコサン-1-オール、ペンタコサン-1-オール、ヘキサコサン-1-オール、ヘプタコサン-1-オール、オクタコサン-1-オール、ノナコサン-1-オール、トリアコンタン-1-オール、ポリコサノール、2-メチルプロパン-1-オール、2-エチルヘキサン-1-オール、3-メチルブタン-1-オールなどの第1級アルコール、プロパン-2-オール、ブタン-2-オール、ペンタン-2-オール、ヘキサン-2-オール、ヘプタン-2-オール、シクロヘキサノールなどの第2級アルコール、2-メチルプロパン-2-オール、2-メチルブタン-2-オール、2-メチルペンタン-2-オール、2-メチルヘキサン-2-オール、2-メチルヘプタン-2-オール、3-メチルペンタン-3-オール、3-メチルオクタン-3-オールなどの第3級アルコールなどが挙げられる。
【0072】
ポリオール成分(B)は、ポリオール成分(B)100質量%中に、数平均分子量500以上5,000以下のポリエステルポリオールを60質量%以上99質量%以下、より好ましくは80質量%以上99質量%以下含み、数平均分子量50以上500未満のジオール、数平均分子量50以上500未満のトリオール、及び数平均分子量500以上5,000以下のポリエーテルポリオールを合わせて1質量%以上40質量%以下、好ましくは1質量%以上20質量%以下含むことが好ましい。また、場合によっては、数平均分子量500以下の水酸基を1個持つ化合物を併用することが好ましい。上記範囲内にあることで、ガスバリア性の高いフィルム基材を用い、高速で塗工・貼りあわせる場合に、より良好な外観の積層体を得ることができる。数平均分子量500以下の水酸基を1個持つ化合物は、低粘度の反応性希釈剤として機能するために、高速で塗工・貼りあわせる場合に、粘度を下げることが可能となり、更にいっそう良好な外観の積層体を得ることができる。
【0073】
<接着剤組成物>
本発明の接着剤組成物は、ポリオール成分(B)中の水酸基モル数を100モルとした場合、ポリイソシアネート成分(A)中のイソシアネート基のモル数が、好ましくは100モル以上300モル以下であり、より好ましくは100モル以上200モル以下であり、特に好ましくは100モル以上150モル以下である。上記範囲内にあることで、高湿度下でエージングしても、良好な接着力を発現できる。
【0074】
本発明における接着剤組成物は、ポリイソシアネート成分(A)とポリオール成分(B)との合計100質量%中に含まれる、イソシアネートモノマー合計の含有率は、好ましくは10%以上であり、より好ましくは12%以上である。また、好ましくは20%以下であり、より好ましくは17%以下であり、更に好ましくは16%以下であり、特に好ましくは15%以下である。上記範囲内にあることで、ガスバリア性の高いフィルム基材を用いる場合に、より良好な外観の積層体を得ることができる。
【0075】
本発明における接着剤組成物は、溶剤を含有しないことが好ましく、各成分の配合は、流動性が確保できる範囲でできるだけ低温で行うことが好ましく、具体的には25℃以上、80℃以下で配合することが好ましい。ポリイソシアネート成分(A)とポリオール成分(B)を混合した直後の60℃での粘度は、好ましくは50mPa・s以上5,000mPa・s以下、より好ましくは50mPa・s以上3,000mPa・s以下である。
なお、本発明において、混合した直後とは、均一混合後1分以内であることを意味し、溶融粘度はB型粘度計により求めた値を示す。60℃における溶融粘度が5,000mPa・s超では、塗工が困難になり良好な作業性を確保することが難しく、塗工温度が60℃以下になると良好な塗装外観が得られない可能性がある。一方、60℃における溶融粘度が50mPa・s未満では、初期凝集力が弱いために十分な接着性能が得られなかったり、基材に接着剤組成物を塗工する際に塗膜の厚みが均一にならず外観不良を生じたり、反りが発生する場合がある。
【0076】
接着剤組成物は、更に、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、防黴剤、増粘剤、可塑剤、消泡剤、顔料、充填剤等の添加剤を必要に応じて使用することができる。また、接着性能を更に高めるために、シランカップリング剤、リン酸、リン酸誘導体、酸無水物、粘着性樹脂等の接着助剤を使用することができる。また、硬化反応を調節するため公知の触媒、添加剤等を使用することができる。
【0077】
シランカップリング剤としては、ビニル基、エポキシ基、アミノ基、イミノ基、メルカプト基等の官能基と、メトキシ基、エトキシ基等の官能基を有するものを使用することができる。例えば、ビニルトリクロルシラン等のクロロシラン、N-(ジメトキシメチルシリルプロピル)エチレンジアミン、N-(トリエトキシシリルプロピル)エチレンジアミン等のアミノシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルシラン等が挙げられる。シランカップリング剤の添加量は全接着剤組成物に対して0.1~5質量%が好ましい。
【0078】
リンの酸素酸又はその誘導体の内、リンの酸素酸としては、遊離の酸素酸を少なくとも1個以上有しているものであればいずれでもよく、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸等のリン酸類、メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸等の縮合リン酸類が挙げられる。又、リンの酸素酸の誘導体としては、上記のリンの酸素酸を遊離の酸素酸を少なくとも1個以上残した状態でアルコール類と部分的にエステル化されたもの等が挙げられる。これらのアルコールとしては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等の脂肪族アルコール、フェノール、キシレノール、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノール等の芳香族アルコール等が挙げられる。リンの酸素酸又はその誘導体は、1種又は2種以上を用いてもよい。リンの酸素酸又はその誘導体の添加量は、全組成物に対して0.01~10質量%、好ましくは0.05~5質量%、更に好ましくは0.1~1質量%である。
【0079】
<積層体、包装材>
本発明の積層体は、前述の接着剤組成物を用いて、少なくとも2つのシート状基材を積層してなる。具体的には、第1のシート状基材と第2のシート状基材の間に、本発明の接着剤組成物からなる接着剤層を有するものであり、詳細には、本発明の接着剤組成物を第1のシート状基材に塗布して接着剤層を形成し、前記接着剤層に第2のシート状基材を重ね合わせ、両シート状基材の間に位置する前記接着剤層を硬化したものである。例えば、接着剤組成物を、ロールコーター塗工方式で第1のシート状基材に塗布し、次いで、乾燥工程を経ることなく、第2のシート状基材を貼り合わせる方法が挙げられる。塗工条件は、通常のロールコーターにおいては、30℃~90℃に加熱した状態で、接着剤の配合液粘度が40℃で300~3000mPa・s程度が好ましい。また塗布量は、0.5~5g/mが好ましく、より好ましくは0.5~3g/m程度である。
本発明の接着剤組成物が無溶剤型である場合、ラミネートした後、常温または加温下で12~72時間経過することで接着剤組成物の硬化反応が進行し、実用物性を発現する。
【0080】
第1のシート状基材としては、プラスチックフィルムが好ましく、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、ナイロンフィルム、OPP(2軸延伸ポリプロピレン)フィルム、ポリ塩化ビニリデン等のKコートフィルム、各種蒸着フィルム等のベースフィルムやアルミ箔等が挙げられる。
前記第1のシート状基材は、基材上に、印刷インキをグラビア又はフレキソ印刷して印刷インキ層を設けたものを用いてもよく、この場合であっても良好なラミネート外観を呈することができる。前述の印刷インキとしては、制限なく用いることができ、溶剤型、水性型又は活性エネルギー線硬化型インキ等を使用することができる。
【0081】
また、第2のシート状基材としては、プラスチックフィルムが好ましく、第1のシート状基材で挙げた基材の他、CPP(無延伸ポリプロピレン)フィルム、VMCPP(アルミ蒸着無延伸ポリプロピレンフィルム)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)、LDPE(低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、VMLDPE(アルミ蒸着無低密度ポリエチレンフィルム)フィルム等のシーラントフィルムが挙げられる。
【0082】
本発明の接着剤組成物を用いることで、無溶剤型接着剤の形態で高速ラミネート加工した場合においても、優れた積層フィルム外観を発揮する積層体を得ることができる。例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム/ VMCPP(アルミ蒸着無延伸ポリプロピレンフィルム)のフィルム構成の場合は200m/分以上、OPP/CPPのフィルム構成の場合は350m/分以上の高速加工であっても、優れたラミネート外観を発揮することができる。さらに、この積層体を用いることで、優れた積層フィルム外観を発揮する包装材を得ることができる。
【実施例
【0083】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。実施例及び比較例中の%及び部は、断りのない限りは全て質量基準である。
【0084】
<水酸基価(OHV)の測定方法>
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。水酸基価は次の(式1)により求めた。水酸基価は樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)。
(式1)
水酸基価(mgKOH/g)=[{(b-a)×F×28.25}/S]/(不揮発分濃度/100)+D
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0085】
<酸価(AV)の測定方法>
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容積比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持した後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。酸価は次の(式2)により求めた。酸価は樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)
(式2):酸価(mgKOH/g)={(5.611×a×F)/S}/(不揮発分濃度/100)
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0086】
<NCO含有率(質量%)の測定方法>
200mLの三角フラスコに試料約1gを量り採り、これに0.5Nジ-n-ブチルアミン(トルエン溶液)10mL、トルエン10mLを加えて溶解した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間保持した後、溶液が淡紅色を呈するまで0.25N塩酸溶液で滴定した。NCO含有率(質量%)は以下の(式3)によって求めた。
(式3):NCO(質量%)={(b-a)×4.202×F×0.25}/S
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.25N塩酸溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.25N塩酸溶液の消費量(ml)
F:0.25N塩酸溶液の力価
【0087】
<数平均分子量(Mn)の測定方法>
数平均分子量(Mn)の測定は、昭和電工社製GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)「ShodexGPCSystem-21」を用いた。GPCは溶媒に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、溶媒としてはテトロヒドロフランを用い、ポリスチレン換算した値を用いた。
【0088】
<ポリイソシアネート成分(A)の製造>
(合成例101)ポリイソシアネート成分A-(1)
数平均分子量約400のポリプロピレングリコール(以下、PPG-400という)300部、数平均分子量約2,000のポリプロピレングリコール(以下、PPG-2000という)300部、グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した数平均分子量約400のトリオール(以下、PPG-400-3官能という)40部、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、4,4’-MDIという)800部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃~90℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、イソシアネート基含有率が12.4%、4,4’-MDI(以下、MDIモノマーともいう)含有率が20.9%の、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(以下、ポリエーテルポリウレタンポリイソシアネート樹脂ともいう)((a1)に相当する)を得た。
次に、分子量約60のモノアルコールであるイソプロピルアルコール50部を添加して、60℃で1時間加熱して、残存したMDIモノマーを、イソプロピルアルコールと反応させ、モノアルコール成分とポリイソシアネート成分との反応生成物((a2)に相当する)を得た。このポリエーテルポリウレタンポリイソシアネート樹脂と、モノアルコール成分とポリイソシアネート成分との反応生成物との混合物に、ポリイソシアネート成分として、4,4’-MDIを150部、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、2,4’-MDIという)を150部、ポリメリックMDIと4,4’-MDIの混合物であるクルードMDI(以下、クルードMDIという)650部を加え、30分間撹拌して、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a1)と、分子量500以下であるモノアルコール成分とイソシアネート成分との反応生成物(a2)とを含むポリイソシアネート成分A-(1)を得た。
【0089】
(合成例102~107)ポリイソシアネート成分A-(2)~(7)
表1に示す原料の種類及び配合量に変更した以外は、合成例101と同様にして、ポリイソシアネート成分A-(2)~(7)を得た。
【0090】
(合成例108)ポリイソシアネート成分A-(8)
残存MDIモノマーとイソプロピルアルコールとの反応生成物を得る工程を実施しない以外は、合成例101と同様にして、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(a1)を含み、数平均分子量500以下であるモノアルコール成分とイソシアネート成分との反応生成物(a2)を含まない、ポリイソシアネート成分A-(8)を得た。
【0091】
【表1】
【0092】
以下に、表1中の略称を示す。
PPG-400:数平均分子量約400のポリプロピレングリコール
PPG-2000:数平均分子量約2,000のポリプロピレングリコール
PPG-400-3官能:グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した数平均分子量約400のトリオール
PPG-1000-3官能:グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した数平均分子量約1,000のトリオール
ポリエステルポリオール1:アジピン酸304部、イソフタル酸115部、ネオペンチルグリコール75部、ジエチレングリコール305部の反応生成物である数平均分子量約1,400のポリエステルポリオール
4,4’-MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート
2,4’-MDI:2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート
TDI:トリレンジイソシアネート
XDI:キシリレンジイソシアネート
クルードMDI:ポリメリックMDIと4,4’-MDIとの混合物
HDI3量体:ヘキサメチレンジイソシアネートのビュレット体
イソプロピルアルコール:分子量60のモノアルコール
ベンジルアルコール:分子量108のモノアルコール
ステアリルアルコール:分子量270のモノアルコール
【0093】
<ポリオール成分(B)の製造>
[ポリエステルポリオールの合成]
(合成例201)ポリエステルポリオール(b1)-1
テレフタル酸(以下、TPAという)115部、アジピン酸(以下、ADAという)304部、ジエチレングリコール(以下、DEGという)305部、ネオペンチルグリコール(以下、NPGという)75部を反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら150℃~240℃に加熱してエステル化反応を行った。酸価が10.0(mgKOH/g)以下になったところで反応温度を200℃にし、反応容器内部を徐々に減圧し、1.3kPa以下で反応させ、酸価0.4(mgKOH/g)、水酸基価135(mgKOH/g)、数平均分子量約800の、両末端に水酸基を有するポリエステルジオール樹脂であるポリエステルポリオール(b1)-1を得た。
【0094】
(合成例202~205)ポリエステルポリオール(b1)-2~5
表2に示す組成に変更した以外は、合成例201と同様にして、両末端に水酸基を有するポリエステルジオール樹脂であるポリエステルポリオール(b1)-2~(b1)-5を得た。
【0095】
[ポリエーテルポリオールの合成]
(合成例301)ポリエーテルポリオール(b2)
PPG-400を330部、PPG-2000を190部、PPG-400-3官能を330部、4,4’-MDIを130部、反応容器に仕込み、窒素ガス気流下で攪拌しながら80℃~90℃で3時間加熱してウレタン化反応を行い、IRにてイソシアネート基の消失を確認して、ポリエーテルポリウレタン樹脂であるポリエーテルポリオール(b2)を得た。
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
【0098】
以下に、表2及び表3中の略称を示す。
IPA:イソフタル酸
TPA:テレフタル酸
ADA:アジピン酸
EG:エチレングリコール
1,6HD:1,6-ヘキサンジオール
DEG:ジエチレングリコール
NPG:ネオペンチルグリコール
PPG-400:数平均分子量約400のポリプロピレングリコール
PPG-2000:数平均分子量約2,000のポリプロピレングリコール
PPG-400-3官能:グリセリンにポリプロピレングリコールを付加した数平均分子量約400のトリオール
4,4’-MDI:4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート
【0099】
[ポリオール成分(B)の配合]
(配合例401)
合成例201で得たポリエステルジオール(b1)-1を94部、2-メチル-1,3-プロパンジオールを6部にて混合し、ポリオール成分B-(1)を得た。
【0100】
(配合例402~408)
表4に示す組成に変更した以外は、配合例401と同様にして、ポリオール成分B-(2)~(8)を得た。表4に示すB-(6)は、ひまし油単独で、B-(8)は、ポリエーテルポリウレタン樹脂であるポリエーテルポリオール(b2)単独で、ポリオール成分(B)として使用した。
【0101】
【表4】
【0102】
<接着剤組成物の製造>
[実施例1]
(製造例501:接着剤組成物AD1)
ポリイソシアネート成分A-(1)75部と、ポリオール成分B-(4)100部とを40℃で混合し、無溶剤型の接着剤組成物AD1を得た。なお、前記接着剤組成物AD1は、ポリオール成分(B)中の水酸基100モルに対し、ポリイソシアネート成分(A)由来のイソシアネート基を130モル含有する。
水酸基100モルに対するイソシアネート基のモル量は、以下のようにして求める。
水酸基100モルに対するイソシアネート基のモル量=[イソシアネート基(eq.)/水酸基(eq.)]×100
イソシアネート基(eq.)=ポリイソシアネート成分(A)のNCO基含有率(質量%)/(42×100)
水酸基(eq.)=水酸基価(mgKOH/g)/56100
【0103】
また、前記接着剤組成物100質量%中に含まれる、4,4’-MDI、2,4’-MDI、TDI、XDI(以下、イソシアネートモノマーという)の合計含有率は、14.6%であった。イソシアネートモノマー含有率は、GPCチャート上に観察される、Mn=200~300付近のMDIモノマー由来のピーク面積と、Mn=100~200付近のTDIモノマー、XDIモノマー由来のピーク面積との合計面積を、GPCチャート上に観察される全ピークの合計面積で除したものである。
イソシアネートモノマー含有率(%)
=(イソシアネートモノマーのピーク面積の合計/全ピークの合計面積)×100
【0104】
[実施例2~18、比較例1~3]
(製造例502~521:接着剤組成物AD2~AD21)
表5に示す組成に従って、製造例501と同様にして、接着剤組成物AD2~AD21を得た。ポリオール成分(B)中の水酸基100モルに対する、ポリイソシアネート成分(A)由来のイソシアネート基量、及び、接着剤組成物100質量%中に含まれるイソシアネートモノマーの合計含有率について、表5に示す。
【0105】
<接着剤組成物の評価>
得られた接着剤組成物について積層体を作製して、下記の方法に従い、積層体の接着強度及びラミネート外観を評価した。結果を表5に示す。
【0106】
[積層体の作製]
ウレタン型ラミネートインキ(Dynastar;東洋インキ(株)製)を離合社製ザーンカップ#3で14秒(25℃)に調整し、版深30μmグラビア版を備えたグラビア印刷機によって、印刷速度50m/分で、第1のシート状基材であるコロナ処理PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(東洋紡エステルフィルムE5100#12)に印刷し、60℃のオーブンを通過させることで乾燥ないし硬化させ、PETフィルム上に印刷層を形成した。次に、無溶剤テストコーターを用い、PETフィルムに印刷された印刷層の表面に、無溶剤型の接着剤組成物AD1を、温度50℃、湿度60%RHの環境下で、塗工速度200m/分にて塗布し(塗布量:2g/m)、この塗布面に第2のシート状基材であるアルミニウム蒸着無延伸ポリプロピレンフィルム(以下、VMCPPという。厚さ:25μm)の蒸着面を重ね、プレ積層体を得た。次に、プレ積層体を30℃、65%RHの環境下にて1日間エージングを行い、接着剤層を硬化させ、PET/印刷層/接着剤層/VMCPPの構成である積層体を作製した。
【0107】
(接着強度)
得られた積層体を長さ300mm、幅15mmに切り取り、テストピースとした。インストロン型引張試験機を使用し、25℃の環境下にて、剥離速度300mm/分の剥離速度で引張り、15mm幅でPET/VMCPP間のT型剥離強度(N)を測定した。この試験を5回行い、その平均値を求め以下の基準にて評価した。
5:接着力が1.5N以上(非常に良好)
4:接着力が1.0N以上、1.5N未満(良好)
3:接着力が0.6N以上、1.0N未満(使用可能)
2:接着力が0.3N以上0.6N未満(使用不可)
1:接着力が0.3N未満(不良)
【0108】
(積層体のラミネート外観)
PET側からインキ層及び接着剤層を透して蒸着面を目視観察し、以下の基準にて評価した。
5:蒸着面に、ゆず肌状の模様や小さな斑点状の模様がなく、接着剤層が均一である(非常に良好)
4:蒸着面に、小さな斑点状の模様はないが、ゆず肌状の模様が僅かに存在する(良好)
3:蒸着面に、小さな斑点状の模様はないが、ゆず肌状の模様が多数存在する(使用可能)
2:蒸着面に、ゆず肌状の模様や小さな斑点状の模様が僅かに存在する(使用不可)
1:蒸着面に、ゆず肌状の模様や小さな斑点状の模様が多数存在する(不良)
【0109】
【表5】
【0110】
表5に示すように、本発明における接着剤組成物で接着剤層を形成した実施例1~18は、30℃、65%RH、1日間エージング後の接着強度とラミネート外観双方が、使用上問題ないレベル以上性能を示した。一方、比較例1~3は、接着性能は使用上問題ないレベルであるが、ラミネート外観が十分ではない結果であった。これは、系中に存在するイソシアネートモノマーとモノアルコールとの反応生成物が滑剤と同様の働きをすることによって、フィルム塗工時に接着剤が良好なレベリング性を発現し、ラミネート外観が向上したためと推察される。
また、組成物中のイソシアネートモノマー含有率が15%以下である場合に、特に良好なラミネート外観を示した。これは、イソシアネートモノマー含有率が低い方が、フィルム塗工時及びエージング中に起こるイソシアネートモノマーと大気中の水分との反応で生じる炭酸ガス発泡による気泡状のラミネート外観不良が起こりにくいことに起因すると推察される。