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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】水性拭き取りクレンジング化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20220621BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20220621BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
A61K8/86
A61Q1/14
A61Q19/10
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018222869
(22)【出願日】2018-11-28
(65)【公開番号】P2020083837
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124349
【弁理士】
【氏名又は名称】米田 圭啓
(72)【発明者】
【氏名】坊地 昌
(72)【発明者】
【氏名】村井 将紀
(72)【発明者】
【氏名】関口 孝治
(72)【発明者】
【氏名】三田地 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】松藤 孝志
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-128542(JP,A)
【文献】特開2002-265989(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)を0.5~25質量%、成分(B)を0.5~20質量%、成分(C)を55~95質量%含有する水性拭き取りクレンジング化粧料。
(A)式(I)で表されるアルキレンオキシド誘導体
R-O-(AO)-[(PO)/(EO)]-H ・・・(I)
(Rは炭素数4~36の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。AOは炭素数3又は4のオキシアルキレン基、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基である。a 、b及びcはそれぞれオキシアルキレン基、オキシプロピレン基、オキシエチレン基の1分子あたりの平均付加モル数であり、1≦a≦40、1≦b≦40、1≦c≦80、(a+b+c)≧20である。[(PO)b/(EO)c] はbモルのPOとcモルのEOがランダム状に結合してなるポリオキシアルキレン基を示し、式(II)で表されるランダム率xが0.1≦x<1である。)
x=(b+c)/(a+b+c)・・・(II)
(B)ポリオキシエチレン基と、炭素数12~22の炭化水素基又は炭素数12~22のアシル基とを有し、HLBが6~16である非イオン性界面活性剤
(C)水
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コットンに含ませて拭き取るタイプの皮膚清浄料として有用な水性クレンジング化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、まつげエクステンションの登場や、すすぎに水を用いず手軽にメイクオフできる時短化粧料への関心、ライト(ナチュラル)メイクの流行により、油性成分を含まず、拭き取りによってメイク料を簡便に除去できる水性クレンジング化粧料の需要が高まりつつある。
しかしながら、クレンジング化粧料として広く普及しており、油性成分を含んだオイルクレンジングやジェルクレンジングに比べるとクレンジング力が弱く、クレンジング力を高めるために界面活性剤を多く含有させると、界面活性剤由来のべたつき感が生じることがあった。べたつき感を抑えつつクレンジング力を高めるために、界面活性剤、グリセリン誘導体および多価アルコールを含む水性クレンジング化粧料(特許文献1)、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリルと多価アルコールを含む水性クレンジング化粧料(特許文献2)が提案されている。これらの化粧料では、べたつき感を改善することはできたが、使用後に乾燥しやすくつっぱり感が生じることがあった。
【0003】
べたつかず、乾燥を防ぎ、つっぱり感を抑える技術として、ポリオキシエチレン(カプリル/カプリン酸)グリセリルと多価アルコールを含む技術(特許文献3)、テトラ脂肪酸ポリオキシエチレンソルビトール、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリル、水およびアルキレンオキシド誘導体を含む技術(特許文献4)が提案されている。
しかしながら、水性クレンジング化粧料では、低いクレンジング力を補うために拭き取り時に力を入れすぎたり、複数回拭き取るうちにコットンが乾燥して毛羽立ったりして、肌とコットンの間で過度な摩擦が起き易く、赤みやかゆみといった肌トラブルにつながるという問題があった。
このため、コットンを使ってメイク料を十分に除去しつつ、使用後の肌のべたつき感やつっぱり感が少なく、またコットン上での保液性が高く、拭き取り使用時に肌とコットンの間で過度な摩擦が起きにくい水性クレンジング化粧料の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-232719号公報
【文献】特開2016-41660号公報
【文献】特開2010-70521号公報
【文献】特開2017-197449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、コットンを使ってメイク料を十分に除去しつつ、使用後の肌のべたつき感やつっぱり感が少なく、またコットン上での保液性が高く、拭き取り使用時に肌とコットンの間で過度な摩擦が起きにくい水性クレンジング化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、特定の2種の非イオン性界面活性剤および水を含有し、油性成分を含まないことを特徴とする水性クレンジング化粧料が上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち本発明は、下記の成分(A)を0.5~25質量%、成分(B)を0.5~20質量%、成分(C)を55~95質量%含有する水性クレンジング化粧料である。
(A)式(I)で表されるアルキレンオキシド誘導体
R-O-(AO)-[(PO)/(EO)]-H ・・・(I)
(Rは炭素数4~36の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。AOは炭素数3又は4のオキシアルキレン基、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基である。a 、b及びcはそれぞれオキシアルキレン基、オキシプロピレン基、オキシエチレン基の1分子あたりの平均付加モル数であり、1≦a≦40、1≦b≦40、1≦c≦80、(a+b+c)≧20である。[(PO) b/( EO) c] はbモルのPOとcモルのEOがランダム状に結合してなるポリオキシアルキレン基を示し、ランダム率xが0.1≦x<1である。)
(B)ポリオキシエチレン基と、炭素数12~22の炭化水素基又は炭素数12~22のアシル基とを有し、HLBが6~16である非イオン性界面活性剤
(C)水
【発明の効果】
【0008】
本発明の水性クレンジング化粧料は、コットンを使ってメイク料を十分に除去しつつ、使用後の肌のべたつき感やつっぱり感が少なく、またコットン上での保液性が高く、拭き取り使用時に肌とコットンの間で過度な摩擦が起きにくいという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の水性クレンジング化粧料は、成分(A) 、成分(B)および成分(C)を少なくとも含有する。以下、各成分(A) ~(C)について順に説明する。
なお、本明細書において記号「~」を用いて規定された数値範囲は「~」の両端(上限および下限)の数値を含むものとする。例えば「2~10」は2以上10以下を表す。
【0010】
〔アルキレンオキシド誘導体(成分(A))〕
成分(A)は式(I)で表されるアルキレンオキシド誘導体である。
R-O-(AO)-[(PO)/(EO)]-H ・・・(I)
【0011】
式(I)中のRは炭素数4~36の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示す。Rの炭素数は4~28が好ましく、4~26がより好ましい。Rの炭素数が小さすぎると、クレンジング力が低下することがある。Rの炭素数が大きすぎると、結晶性が高まり常温で固体となり、ハンドリング性が低下することがある。また、Rの炭素数が大きすぎると、塗布時にべたつき感が生じることがある。
【0012】
式(I)のアルキレンオキシド誘導体は、通常、アルコールを用いて製造され、式(I)中のRは式(I)のアルキレンオキシド誘導体の製造時に用いられるアルコールに由来する。かかるアルコールは、炭素数4~36の直鎖又は分岐鎖のアルコールである。
上記アルコールとしては、例えば、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール(ラウリルアルコール)、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、ドコサノール、テトラコサノール、ヘキサコサノール、オクタコサノール、トリアコンタノール、ヘキサトリアコンタノール等の直鎖アルコール;2-エチルヘキサノール、2-ヘキシルオクタノール、1-メチルヘプタデカノール、イソデカノール、2-オクチルデカノール、2-デシルテトラデカノール、2-テトラデシルオクタデカノール、2-ヘキサデシルエイコサノール等の分岐アルコール;ヘキサデセノール、オクタデセノール、エイコセノール、ドコセノール等の直鎖アルケノール;1-メチルヘプタデセノール、イソトリデセノール等の分岐アルケノール等が挙げられる。式(I)のアルキレンオキシド誘導体の製造時に、これらのアルコールの1種又は2種以上を用いることができる。
【0013】
式(I)中のAOは炭素数3又は4のオキシアルキレン基であり、オキシプロピレン基、オキシイソブチレン基、オキシ1-エチルエチレン基、オキシ2-ブチレン基、オキシテトラメチレン基が例示できるが、オキシプロピレン基が好ましい。
AOの平均付加モル数aが2以上の場合、2以上のAOは同種の基であっても、異種の基であってもよい。AOが2種以上の異種の基である場合は、ランダム状付加でもブロック状付加のいずれでもよい。
【0014】
式(I)中のPOはオキシプロピレン基であり、EOはオキシエチレン基である。式(I)中のa、b、cは、それぞれ、AO、PO、EOの1分子あたりの平均付加モル数である。
【0015】
aは1~40の数である。aは2~30が好ましく、5~25がより好ましい。aが小さすぎると、クレンジング力が低下することがあり、aが大きすぎると、塗布時にべたつき感が生じることがある。
【0016】
bは1~40の数である。bは2~30が好ましく、5~20がより好ましい。bが小さすぎると、常温で固体となりハンドリング性が低下したり、べたつき感が生じたりすることがある。bが大きすぎると、水への溶解性が低下しクレンジング力が低下したり、またコットン上での保液性が低下することがある。
【0017】
cは1~80の数である。cは2~60が好ましく、10~40がより好ましい。cが小さすぎると、コットン上での保液性が低下することがある。cが大きすぎると、結晶性が高まり常温で固体となり、ハンドリング性が低下したり、べたつき感が生じたりすることがある。
【0018】
上記a、b及びcの総和(a+b+c)は20以上であり、好ましくは30以上、より好ましくは35以上である。(a+b+c)が小さすぎると、コットン上での保液性が低下したり、摩擦性が高くなったりすることがある。また、取り扱い易さの点から、(a+b+c)は好ましくは100以下であり、80以下がより好ましく、50以下がさらに好ましく、40以下が特に好ましい。
【0019】
式(I)におけるPOおよびEOの結合部分は[(PO) b/(EO) c] と記載され、この記載は本発明においてbモルのPOとcモルのEOが、ブロック状ではなく、ランダム状に結合していることを示す。EOおよびPOがブロック状に結合していると、常温で固体となり、コットン上での保液性が低下することがある。
【0020】
式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体は、ランダム率をxとすると、0.1≦x<1であり、好ましくは0.3≦x≦0.97、より好ましくは0.5≦x≦0.9、さらに好ましくは0.6≦x≦0.9である。ランダム率xが小さすぎると、室温で固体の性状を示し、コットン上での保液性が低下したり、摩擦性が高くなったりすることがある。また、ランダム率xが大きすぎると、クレンジング力が低下したり、べたつき感が生じたりすることがある。
【0021】
式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体中のランダム率は、式(I)中のAO、PO、EOの1分子あたりの各平均付加モル数a、b、cから下記の式(II)により求めることができる。
x=(b+c)/(a+b+c)・・・(II)
【0022】
式(I)で示されるアルキレンオキシド誘導体は、公知の方法で製造することができる。例えば、炭素数が4~36個である直鎖又は分岐鎖のアルキルもしくはアルケニルアルコールに、アルカリ触媒下、50~160℃、0.5MPa(ゲージ圧) 以下にてアルキレンオキシドを付加重合した後に、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの混合物を付加重合し、塩酸、リン酸、酢酸などの酸にて中和し、さらに水分および中和塩を除去することで式(I)のアルキレンオキシド誘導体を得ることができる。
【0023】
成分(A)の含有量は0.5~25質量%であり、好ましくは2~15質量%であり、より好ましくは5~12質量%である。成分(A)の含有量が少なすぎると、メイク料の除去効果を十分に与えることが困難となり、またコットン上での保液性が低下し、コットンが乾燥しやすくなることがある。成分(A)の含有量が多すぎると、コットン上での保液性が低下し、肌への摩擦性が強くなり、また使用後の肌のつっぱり感が強くなることがある。
成分(A)は1種を単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよいが、メイク料の除去効果を高める観点から、2種以上を併用することが好ましい。
【0024】
〔非イオン性界面活性剤(成分(B))〕
成分(B)は、ポリオキシエチレン基と、炭素数12~22の炭化水素基又は炭素数12~22のアシル基とを有し、HLBが6~16である非イオン性界面活性剤である。なお、ポリオキシエチレンを以下ではPOEと表記することもある。
【0025】
HLBとは、Hydrophile-Lipophile Balanceの略であり、界面活性剤の親水基および親油基のバランスを数値化した概念である。一般に、HLBは0から20の範囲内の数値で示され、数値のより大きい方が親水性がより高いことを示す。HLBは、下記(a)又は(b)の式により算出できる。
【0026】
(a)1価アルコールにエチレンオキシドを付加した非イオン性界面活性剤の場合
HLB=E/5
E:界面活性剤分子中に含まれるポリオキシエチレン部分の含有量(質量%)
【0027】
(b)脂肪酸又は多価アルコール脂肪酸エステルにエチレンオキシドを付加した非イオン性界面活性剤の場合
HLB=20(1-S/A)
S:非イオン界面活性剤のケン化価(S.V.)
A:原料脂肪酸の酸価(A.V.)
なお、ケン化価および酸価は、JIS K0070により求めることができる。
【0028】
HLBが小さすぎると、水への溶解性が低下し、製剤の透明性が損なわれ、安定性が低下することがある。HLBが大きすぎると、油汚れとのなじみが悪くなり、クレンジング力が低下することがあり、またべたつき感が生じることがある。
このような観点から成分(B)のHLBは、8~16が好ましく、9~16がより好ましい。
【0029】
成分(B)における炭素数12~22の炭化水素基としては、例えば、ラウリル基、トリデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、イソパルミチル基、ステアリル基、イソステアリル基、オレイル基、オクチルドデシル基、ベヘニル基等が挙げられる。また、炭素数12~22のアシル基としては、例えば、ラウロイル基、トリデシロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、イソパルミトイル基、ステアロイル基、イソステアロイル基、オレオイル基、オクチルドデカノイル基、ベヘノイル基等が挙げられる。
成分(B)は、これらの炭化水素基及びアシル基のうち1種を有していてもよく、又は2種以上を含む混合炭化水素基もしくは混合アシル基を有していてもよい。その中でも、相溶性や透明性の観点から、炭素数12~22の分岐飽和炭化水素基、炭素数12~22の分岐飽和アシル基、炭素数12~22の不飽和炭化水素基及び炭素数12~22の不飽和アシル基が好ましい。このような親油基としてより好ましいのは、炭化水素基としては、オレイル基、イソパルミチル基、イソステアリル基であり、アシル基としては、オレオイル基、イソパルミトイル基、イソステアロイル基である。炭化水素基またはアシル基の炭素数が小さすぎると、クレンジング力が低下することがあり、炭素数が大きすぎると、水への溶解性が低下し透明性が損なわれることがある。
なお、成分(B)が炭素数12~22の炭化水素基及び炭素数12~22のアシル基を有していてもよい。また、混合炭化水素基及び混合アシル基は、通常、混合脂肪酸を由来とするので、混合炭化水素基及び混合アシル基における炭素数は、混合脂肪酸を構成する各脂肪酸の炭素数に対して各脂肪酸の組成比を重みとした加重平均により算出することができる。
【0030】
成分(B)は、エステル型、エーテル型、直鎖型、多鎖型の何れでもよい。また、エステル化率も特に限定されない。
【0031】
成分(B)としては、例えば、POE(ポリオキシエチレン)オレイルエーテル、POEイソパルミチルエーテル、POEイソステアリルエーテル、モノオレイン酸POE、モノイソステアリン酸POE、ジオレイン酸POE、ジイソステアリン酸POE、モノオレイン酸POEソルビトール、ジオレイン酸POEソルビトール、トリオレイン酸POEソルビトール、テトラオレイン酸POEソルビトール、ペンタオレイン酸POEソルビトール、ヘキサオレイン酸POEソルビトール、モノイソステアリン酸POEソルビトール、ジイソステアリン酸POEソルビトール、トリイソステアリン酸POEソルビトール、テトライソステアリン酸POEソルビトール、ペンタイソステアリン酸POEソルビトール、ヘキサイソステアリン酸POEソルビトール、モノオレイン酸POEグリセリル、ジオレイン酸POEグリセリル、トリオレイン酸POEグリセリル、モノイソステアリン酸POEグリセリル、ジイソステアリン酸POEグリセリル、トリイソステアリン酸POEグリセリル、モノオレイン酸POEソルビタン、セスキオレイン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン、モノイソステアリン酸POEソルビタン、セスキイソステアリン酸POEソルビタン、トリイソステアリン酸POEソルビタン、モノヤシ油脂肪酸POEグリセリルなどが例示できる。
【0032】
これらのうち、コットン上での保液性を良好にするためには、アシル基を有するエステル型が好ましい。したがって、成分(B)として好ましくは、モノオレイン酸POE、モノイソステアリン酸POE、ジオレイン酸POE、ジイソステアリン酸POE、テトラオレイン酸POEソルビトール、テトライソステアリン酸POEソルビトール、トリイソステアリン酸POEグリセリル、モノイソステアリン酸POEグリセリル、モノオレイン酸POEソルビタン、モノイソステアリン酸POEソルビタン、モノヤシ油脂肪酸POEグリセリルなどが例示できる。
【0033】
また、肌への摩擦性を低減するためには多鎖型であることがさらに好ましい。このような多鎖型の非イオン界面活性剤としては、例えば、テトラオレイン酸POEソルビトール、テトライソステアリン酸POEソルビトール、トリイソステアリン酸POEグリセリル、モノイソステアリン酸POEグリセリル、モノオレイン酸POEソルビタン、モノヤシ油脂肪酸POEグリセリルが挙げられる。中でも、テトラオレイン酸POEソルビトール、テトライソステアリン酸POEソルビトールがより好ましい。
【0034】
成分(B)の含有量は、水性クレンジング化粧料の全質量に対して、0.5~20質量%であり、好ましくは1~10質量%であり、より好ましくは2~8質量%である。成分(B)の含有量が少なすぎる場合、クレンジング力が低下したり、コットンへの保液性が低下することがある。また、成分(B)の含有量が多すぎる場合、洗浄後にべたつき感が生じたり、コットンへの保液性が下がり、肌への摩擦性が強くなることがある。なお、成分(B)は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
〔水(成分(C))〕
成分(C)の水であり、化粧料の原料として使用できるものであれば特に限定されないが、精製水、温泉水、芳香水などが例示される。
成分(C)の含有量は55~95質量%であり、好ましくは60~85質量%であり、より好ましくは65~80質量%である。成分(C)の含有量が少なすぎると、使用時にべたつき感が強くなることがあり、またコットン上での保液性が低下し、拭き取り時に肌への摩擦性が強くなることがある。成分(C)の含有量が多すぎると、メイク料の除去効果を十分に与えることが困難となり、またコットン上での保液性が低下し、コットンが乾燥しやすくなることがある。
【0036】
〔エデト酸(塩)(成分(D)〕
本発明の水性クレンジング化粧料は、メイク料の除去効果(クレンジング力の向上)とべたつき感軽減の観点から、成分(D)としてエデト酸およびエデト酸塩のうち少なくとも一方をさらに含有することが好ましい。
【0037】
エデト酸塩としては、例えば、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム(エチレンジアミン四酢酸(EDTA))などが挙げられるが、入手のしやすさから、エデト酸二ナトリウムが好ましい。
【0038】
本発明の水性クレンジング化粧料が成分(D)を含有する場合、その含有量は、水性クレンジング化粧料中、好ましくは0.01~1質量%であり、より好ましくは0.05~0.8質量%であり、さらに好ましくは0.1~0.5質量%である。成分(D)の含有量が上記の範囲内であると、クレンジング力の向上やつっぱり感の低減の点でさらに好適である。
【0039】
〔その他の成分〕
本発明の水性クレンジング化粧料には、つっぱり感を抑え、使用後の保湿感を向上させる観点から、多価アルコールを含有させることができる。
多価アルコールとしては、グリコール類、グリセリン類が挙げられる。グリコール類の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-オクタンジオールなどを挙げることができる。
グリセリン類としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンなどを挙げることができる。
これら多価アルコールのうちグリセリンやジプロピレングリコールが好ましい。これら多価アルコールは1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
本発明の水性クレンジング化粧料が多価アルコールを含有する場合、その含有量は特に限定されないが、水性クレンジング化粧料中、通常、1~20質量%、好ましくは3~15質量%である。
【0040】
本発明の水性クレンジング化粧料においては、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて、前述の成分に加え、化粧料、医薬部外品、医薬品等に使用される添加剤を含有してもよい。例えば、嗜好性を高める目的で天然香料、合成香料を加えることができる。
天然香料は、植物の花、幹、葉、果物、果皮、根から水蒸気蒸留法などで得られる精油であり、分離された水も芳香水として使用することができる。合成香料は、エステル、エーテル、アルデヒド、ケトン、芳香族アルコール、炭化水素など特に制限はない。また添加剤としては、例えば、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール;乳糖、ショ糖等の糖類;アシルメチルタウリン塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アミドエーテル硫酸エステル塩等の陰イオン性界面活性剤、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の水溶性高分子;セラミド、コレステロール、カチオン化セルロース等のカチオン性高分子;キサンタンガム等の増粘性多糖類;クエン酸塩、リンゴ酸塩、食塩等の有機又は無機塩類(但し、エデト酸およびエデト酸塩を除く。);pH調製剤としての酸、アルカリ;パラベン類;防腐剤;動植物由来のエキス;ビタミン類;アミノ酸類;色素;顔料等が挙げられる。
また、本発明の水性クレンジング化粧料は、常法により製造することができる。
【実施例
【0041】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0042】
〔実施例1~8及び比較例1~6〕
成分(A)~(C)、成分(A’)、共通成分を表2、表3に示す組成で配合して水性クレンジング化粧料を調製し、下記の方法により評価を行った。表2、表3に示される配合成分について下記に示す。
【0043】
[成分(A)(化合物1~化合物4)]
[成分(A’)(化合物5~化合物6)]
※1:表1に示す成分を用いた。
[B成分]
※2:テトラオレイン酸ソルベス-30〔テトラオレイン酸POE(30)ソルビット〕、HLB:11.2〔日油(株)製「ユニオックスST-30E」〕
※3:テトライソステアリン酸ソルベス-30〔テトライソステアリン酸POE(30)ソルビット〕、HLB:11.1〔日油(株)製「ユニオックスST-30IS」〕
※4:ポリソルベート80〔オレイン酸POE(20)ソルビタン〕、HLB:15.0〔日油(株)製「NOFABLE ESO-8520」〕
[共通成分]
表2、表3に記載された共通成分は表4に示す8種の成分からなるものである。
【0044】
(1)メイク料の除去評価(ファンデーション)
メイク料(ファンデーション)を施した20名の女性(25~45才)をパネラーとし、コットン(5.5cm×3.5cm)にクレンジング化粧料を4g含ませ、このコットンを使用した拭き取りによりメイク料を除去した後の肌の状態について下記の基準で評価した。詳細には、20名の合計点が35点以上の場合を「◎」、25~34点の場合を「○」、15~24点の場合を「△」、14点以下の場合を「×」とそれぞれ評価した。
2点:メイク料(ファンデーション)がほぼ全て除去できたと感じた場合。
1点:メイク料(ファンデーション)がある程度除去できた、又は除去できていないメイク料(ファンデーション)が少しあると感じた場合。
0点:メイク料(ファンデーション)が除去できていないと感じた場合。
【0045】
(2)べたつき感
メイク料(ファンデーション)を施した20名の女性(25~45才)をパネラーとし、コットン(5.5cm×3.5cm)にクレンジング化粧料を4g含ませ、メイク料を除去した後の肌の状態について下記の基準で評価した。詳細には、20名の合計点が35点以上の場合を「◎」、25~34点の場合を「○」、15~24点の場合を「△」、14点以下の場合を「×」とそれぞれ評価した。
2点:コットン使用後、べたつき感がないと感じた場合。
1点:コットン使用後、べたつき感が少しあると感じた場合。
0点:コットン使用後、べたつき感があると感じた場合。
【0046】
(3)肌のつっぱり感
メイク料(ファンデーション)を施した20名の女性(25~45才)をパネラーとし、コットン(5.5cm×3.5cm)にクレンジング化粧料を4g含ませ、メイク料を除去した5分後の肌の状態について下記の基準で評価した。詳細には、20名の合計点が35点以上の場合を「◎」、25~34点の場合を「○」、15~24点の場合を「△」、14点以下の場合を「×」とそれぞれ評価した。
2点:コットン使用の5分後、肌につっぱり感がないと感じた場合。
1点:コットン使用の5分後、肌につっぱり感が少しあると感じた場合。
0点:コットン使用の5分後、肌につっぱり感があると感じた場合。
【0047】
(4)肌への摩擦性
中指と薬指の上(手のひら側)にコットン(5.5cm×3.5cm)を載せ、人差し指と小指で挟みクレンジング料を4g含ませた後、このコットンを使用して頬上を拭き取った際の肌への摩擦性について、下記の基準で評価した。詳細には、20名の合計点が35点以上の場合を「◎」、25~34点の場合を「○」、15~24点の場合を「△」、14点以下の場合を「×」とそれぞれ評価した。
2点:肌との引っかかりを感じなかった場合。
1点:肌との引っかかりをあまり感じなかった場合。
0点:肌との引っかかりを感じた場合。
【0048】
(5)コットン上での保液性
コットン(5.5cm×3.5cm)にクレンジング化粧料を4g含ませた後、1日室温に放置した後のコットン上での保液性について、20名の女性(25~45才)をパネラーとし、下記の基準で評価した。詳細には、20名の合計点が35点以上の場合を「◎」、25~34点の場合を「○」、15~24点の場合を「△」、14点以下の場合を「×」とそれぞれ評価した。
2点:コットンは乾燥せず、水分を十分保っていると感じた場合。
1点:コットンは乾燥していないが、水分は十分には保たれていないと感じた場合。
0点:コットンは乾燥し、水分は十分でないと感じた場合。
【0049】
【表1】
【0050】
【表2】
【0051】
【表3】
【0052】
【表4】
【0053】
表2に示される結果から明らかなように、実施例1~6の水性クレンジング化粧料は、コットンを使ってメイク料を十分に除去しつつ、使用後の肌のべたつき感やつっぱり感が少なく、またコットン上での保液性が高く、拭き取りによる肌への摩擦性が低かった。
【0054】
一方、比較例1~6の水性クレンジング化粧料では、十分な性能は得られなかった。
比較例1では、成分(A)が配合されていなかったため、メイク料の除去効果が得られず、また肌への摩擦性やコットン上での保液性が劣っていた。
比較例2では、成分(B)が配合されていなかったため、メイク料の除去効果が十分には得られず、また肌への摩擦性やコットン上での保液性が劣っていた。
比較例3では、成分(A)の含有量が25質量%を超えていたため、べたつき感やつっぱり感が生じ、また肌への摩擦性やコットンでの保液性が劣っていた。
比較例4では、成分(B)の含有量が20質量%を超えていたため、べたつき感が生じ、また肌への摩擦性やコットンでの保液性が劣っていた。
比較例5では、式(I)において(a+b+c)≧20の条件を満たさない化合物5を成分(A’)として用いているため、メイク料の除去効果が得られず、肌への摩擦性やコットン上での保液性が劣っていた。
比較例6では、式(I)におけるbが0でありオキシエチレン基を含有しない化合物6を成分(A’)として用いているため、メイク料の除去効果が得られず、べたつき感が生じ、肌への摩擦性やコットン上での保液性が劣っていた。